(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記造形実行用データ生成段階において、前記複数の造形材料用プロファイルのそれぞれを、前記一つの造形物におけるそれぞれ異なる位置に対する色変換の処理で用いることを特徴とする請求項2に記載の造形方法。
前記造形実行段階において、前記造形装置は、前記着色領域の各部について、その部分に対する色変換に用いた前記造形材料用プロファイルに対応付けられている厚みで形成することを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の造形方法。
前記造形材料用プロファイルは、Lab値を前記複数色の造形用の材料で表現される色に変換するプロファイルであることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の造形方法。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に係る実施形態を、図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る造形方法を実行する造形システム10について説明をする図である。
図1(a)は、造形システム10の構成の一例を示す。
【0020】
本例において、造形システム10は、立体的な造形物を造形するシステムであり、造形装置100及びホストPC200を備える。造形装置100は、造形の動作を実行する造形装置(3Dプリンタ)であり、積層造形法により造形物を造形する。この場合、積層造形法とは、例えば、複数の層を重ねて造形物を造形する方法である。造形物とは、例えば、立体的な三次元構造物のことである。また、造形装置100は、造形の材料として、所定の条件に応じて硬化するインクを用いる。造形装置100のより具体的な構成等については、後に更に詳しく説明をする。
【0021】
ホストPC200は、造形装置100の動作を制御するコンピュータである。本例において、ホストPC200は、造形実行用データ生成装置の一例であり、造形しようとする造形物を示すデータである造形物データに基づき、造形装置100に合わせた形式で造形物を示すデータである造形実行用データを生成する。また、生成した造形実行用データを造形装置100へ供給することにより、造形装置100に造形の動作を実行させる。ホストPC200において行うデータの処理等についても、後に更に詳しく説明をする。
【0022】
尚、本例において、造形物データは、ユーザにより用意された3Dモデルのデータである。3Dモデルのデータとは、例えば、立体的なオブジェクトを示す3次元データのことである。造形物データとしては、造形装置100の機種に依存しない汎用の3次元データを好適に用いることができる。
【0023】
図1(b)は、造形装置100により造形される造形物50の構成の一例をサポート層70と共に示す断面図であり、積層造形法において造形の材料が積層される方向である積層方向(Z方向)と垂直な平面による造形物50の断面の構成を模式的に示す。また、図示した場合において、造形物50は、楕円球状の立体物である。この場合、例えば図中のX方向やY方向と垂直な平面による造形物50の断面の構成も、図示した構成と同一又は同様になる。また、より具体的に、本例において、造形物50は、内部領域52、光反射領域54、及び着色領域56を有する。これらの各領域は、造形物50の内部から外部へ向かう方向へこの順番で並ぶように形成される。
【0024】
尚、後に更に詳しく説明をするように、本例においては、着色領域56について、均一な厚みではなく、位置によって厚みが異なるように形成する。しかし、
図1(b)においては、図示の便宜上、着色領域56を均一の厚みで図示している、着色領域56のより具体的な特徴については、後に更に詳しく説明をする。
【0025】
内部領域52は、造形物50の形状を構成する造形物50の内部の領域(モデル層)である。本例において、内部領域52は、造形専用のインクである造形材インクを用いて形成される。また、内部領域52は、造形材インク以外のインクを用いて形成してもよい。この場合、例えば、サポート層70の材料以外の様々なインクを用いて内部領域52を形成することが考えられる。より具体的には、例えば、着色用のインク(カラーインク)等を用いて内部領域52を形成してもよい。また、例えば、白色のインクや、無色透明色(T色)のクリアインク等を用いて内部領域52を形成してもよい。
【0026】
光反射領域54は、光を反射する性質の材料で形成される光反射性の領域であり、着色領域56を介して造形物50の表面側から入射する光を反射する。着色領域56の内側に光反射領域54を形成することにより、例えば、減法混色法での着色を適切に行うことができる。また、本例において、光反射領域54は、白色(W色)のインクを用いて形成される。
【0027】
着色領域56は、着色用のインクにより着色がされる領域(表面カラー層)である。また、本例において、着色領域56は、造形物50の表面形状に沿った層状の領域であり、複数色の着色用のインクと、クリアインクとを用いて形成される。この場合、複数色の着色用のインクは、複数色の造形用の材料の一例である。また、着色用のインクとしては、例えば、シアン色(C色)、マゼンタ色(M色)、イエロー色(Y色)、及びブラック色(K色)のインクを用いることが考えられる。これらの各色のインクは、プロセスカラーの各色のインクの一例である。また、着色用のインクとしては、これらの色のインクに限らず、他の色のインクを更に用いてもよい。例えば、白色のインク等の特色のインク等を更に用いてもよい。また、本例においては、着色領域56の各位置に対する各色の着色用のインクの吐出量を調整することにより、様々な色を表現する。
【0028】
尚、この場合、表現する色の違いによって、着色用のインクの合計量(単位体積あたりの吐出量)に差が生じる場合もある。そこで、本例においては、色の違いによって生じる着色用のインクの合計量の変化を補填するために、クリアインクを更に用いて着色領域56を形成する。このように構成すれば、例えば、着色用のインクにより着色された着色領域56を適切に形成できる。
【0029】
また、図中に示すように、本例においては、必要に応じて、造形物50の周囲にサポート層70を形成する。この場合、サポート層70とは、例えば、造形中の造形物50の外周を囲むことで造形物50を支持する積層構造物のことである。サポート層70は、例えば水溶性の材料で形成される層であり、造形物50の造形時において、必要に応じて形成され、造形の完了後に除去される。
【0030】
尚、造形物50の構成については、上記の構成に限らず、様々に変更可能である。例えば、内部領域52について、光反射領域54と区別せずに、一体に形成すること等も考えられる。この場合、例えば、白色のインク等の光反射性のインクを用いて、内部領域52及び光反射領域54を一体に形成する。また、造形物50に求められる品質等に応じて、上記以外の領域を更に形成すること等も考えられる。この場合、例えば、光反射領域54と着色領域56との間にクリアインクで透明な領域(内部クリア領域)を形成すること等が考えられる。このような内部クリア領域を形成することにより、例えば、光反射領域54と着色領域56との間でインクの混色が生じることを適切に防ぐことができる。また、例えば着色領域56の外側に、造形物50の外面を保護するための透明な領域(表面クリア領域)を形成すること等も考えられる。このような表面クリア領域を形成することにより、例えば、着色領域56等を適切に保護することができる。
【0031】
続いて、造形装置100のより具体的な構成等について、説明をする。
図2は、造形装置100の一例について説明をする図である。
図2(a)は、造形装置100の要部の構成の一例を示す。
【0032】
尚、以下に説明をする点を除き、造形装置100は、公知の造形装置と同一又は同様の構成を有してよい。より具体的に、以下に説明をする点を除き、造形装置100は、例えば、インクジェットヘッドを用いて造形物50の材料となる液滴を吐出することで造形を行う公知の造形装置と同一又は同様の構成を有してよい。また、造形装置100は、図示した構成以外にも、例えば、造形物50の造形や着色等に必要な各種構成を更に備えてよい。
【0033】
本例において、造形装置100は、ヘッド部102、造形台104、走査駆動部106、及び制御部110を備える。ヘッド部102は、造形物50の材料となる液滴を吐出する部分であり、所定の条件に応じて硬化するインクのインク滴を吐出し、硬化させることにより、造形物50を構成する各層を重ねて形成する。この場合、インクとは、例えば、インクジェットヘッドから吐出する液体のことである。インクジェットヘッドとは、例えば、インクジェット方式でインクの液滴(インク滴)を吐出する吐出ヘッドのことである。また、本例において、ヘッド部102は、複数のインクジェットヘッドと、紫外線光源とを有する。ヘッド部102のより具体的な構成については、後に詳しく説明をする。
【0034】
造形台104は、造形中の造形物50を支持する台状部材であり、ヘッド部102におけるインクジェットヘッドと対向する位置に配設され、造形中の造形物50を上面に載置する。また、本例において、造形台104は、少なくとも上面が積層方向へ移動可能な構成を有しており、走査駆動部106に駆動されることにより、造形物50の造形の進行に合わせて、少なくとも上面が移動する。また、本例において、積層方向は、造形装置100において予め設定される主走査方向(図中のY方向)及び副走査方向(図中のX方向)と直交する方向(図中のZ方向)である。
【0035】
走査駆動部106は、造形中の造形物50に対して相対的に移動する走査動作をヘッド部102に行わせる駆動部である。この場合、造形中の造形物50に対して相対的に移動するとは、例えば、造形台104に対して相対的に移動することである。また、ヘッド部102に走査動作を行わせるとは、例えば、ヘッド部102が有するインクジェットヘッドに走査動作を行わせることである。また、本例において、走査駆動部106は、主走査動作(Y走査)、副走査動作(X走査)、及び積層方向走査(Z走査)をヘッド部102に行わせる。
【0036】
主走査動作とは、例えば、主走査方向へ移動しつつインクを吐出する動作のことである。本例において、走査駆動部106は、主走査方向における造形台104の位置を固定して、ヘッド部102の側を移動させることにより、ヘッド部102に主走査動作を行わせる。造形装置100の構成の変形例においては、例えば、主走査方向におけるヘッド部102の位置を固定して、例えば造形台104を移動させることにより、造形物50の側を移動させてもよい。
【0037】
また、以下において詳しく説明をするように、本例において、ヘッド部102は、紫外線光源を更に有する。そして、主走査動作時において、走査駆動部106は、ヘッド部102における紫外線光源の駆動を更に行う。より具体的に、走査駆動部106は、例えば、主走査動作時に紫外線光源を点灯させることにより、造形物50の被造形面に着弾したインクを硬化させる。造形物50の被造形面とは、例えば、ヘッド部102により次のインクの層が形成される面のことである。
【0038】
また、副走査動作とは、例えば、主走査方向と直交する副走査方向へ造形台104に対して相対的に移動する動作のことである。より具体的に、副走査動作は、例えば、予め設定された送り量だけ副走査方向へ造形台104に対して相対的に移動する動作である。また、本例において、走査駆動部106は、主走査動作の合間に、ヘッド部102に副走査動作を行わせる。この場合、走査駆動部106は、例えば、副走査方向におけるヘッド部102の位置を固定して、造形台104を移動させることにより、ヘッド部102に副走査動作を行わせる。また、走査駆動部106は、副走査方向における造形台104の位置を固定して、ヘッド部102を移動させることにより、ヘッド部102に副走査動作を行わせてもよい。また、走査駆動部106は、造形しようとする造形物50の大きさに応じて、必要な場合にのみヘッド部102に副走査動作を行わせる。そのため、例えばサイズの小さな造形物50を造形する場合等には、副走査動作を行わずに造形物50を造形してもよい。
【0039】
また、積層方向走査とは、例えば、積層方向へヘッド部102又は造形台104の少なくとも一方を移動させることで造形物50に対して相対的に積層方向へヘッド部102を移動させる動作のことである。この場合、積層方向へヘッド部102を移動させるとは、例えば、ヘッド部102における少なくともインクジェットヘッドを積層方向へ移動させることである。また、積層方向へ造形台104を移動させるとは、例えば、造形台104における少なくとも上面の位置を移動させることである。
【0040】
また、走査駆動部106は、造形の動作の進行に合わせてヘッド部102に積層方向走査を行わせることにより、積層方向において、造形中の造形物50に対するインクジェットヘッドの相対位置を調整する。また、より具体的に、本例において、走査駆動部106は、積層方向におけるヘッド部102の位置を固定して、造形台104を移動させる。走査駆動部106は、積層方向における造形台104の位置を固定して、ヘッド部102を移動させてもよい。
【0041】
制御部110は、例えば造形装置100のCPUであり、造形装置100の各部を制御することにより、造形物50の造形の動作を制御する。この場合、制御部110は、例えば造形しようとする造形物50の形状情報や、カラー画像情報等に基づき、造形装置100の各部を制御する。また、より具体的に、本例において、造形装置100は、ホストPC200(
図1参照)から受け取る造形実行用データに従って造形を行うことにより、造形物50を造形する。造形装置100が受け取る造形実行用データについては、ホストPC200の動作の説明等の中で、後に更に詳しく説明をする。本例によれば、造形物50を適切に造形できる。
【0042】
続いて、ヘッド部102のより具体的な構成について、説明をする。
図2(b)は、ヘッド部102のより詳細な構成の一例を示す。本例において、ヘッド部102は、複数のインクジェットヘッド202s、202mo、202w、202c、202m、202y、202k、202t(以下、インクジェットヘッド202s〜tという)、複数の紫外線光源204、及び平坦化ローラ206を有する。
【0043】
インクジェットヘッド202s〜tは、インクジェット方式でインク滴を吐出する吐出ヘッドである。また、本例において、インクジェットヘッド202s〜tは、紫外線硬化型インクのインク滴を吐出するインクジェットヘッドであり、副走査方向(X方向)における位置を揃えて、主走査方向(Y方向)へ並んで配設される。この場合、紫外線硬化型インクとは、例えば、紫外線の照射に応じて硬化するインクのことである。インクジェットヘッド202s〜tとしては、例えば、公知のインクジェットヘッドを好適に用いることができる。また、これらのインクジェットヘッドは、例えば、造形台104と対向する面に、複数のノズルが副走査方向へ並ぶノズル列を有する。
【0044】
尚、インクジェットヘッド202s〜tの並び方については、図示した構成に限らず、様々に変更してもよい。例えば、一部のインクジェットヘッドについて、他のインクジェットヘッドと副走査方向における位置をずらして配設してもよい。また、ヘッド部102は、他の色用のインクジェットヘッドを更に有してもよい。
【0045】
インクジェットヘッド202sは、サポート層70の材料を含むインク滴を吐出するインクジェットヘッドである。サポート層70の材料としては、例えば、造形物50の造形後に水で溶解可能な水溶性の材料を好適に用いることができる。また、この場合、造形物50の造形に用いる造形用の材料よりも紫外線による硬化度が弱く、分解しやすい材料を用いることが好ましい。また、より具体的に、サポート層70の材料としては、例えば、サポート層用の公知の材料を好適に用いることができる。
【0046】
インクジェットヘッド202moは、所定の色の造形材インク(モデル材MO)のインク滴を吐出するインクジェットヘッドである。また、インクジェットヘッド202wは、白色(W)のインクのインク滴を吐出するインクジェットヘッドである。
【0047】
複数のインクジェットヘッド202c、202m、202y、202k(以下、インクジェットヘッド202c〜kという)のそれぞれは、着色用の有彩色のインクのインク滴を吐出するインクジェットヘッドである。本例において、インクジェットヘッド202c〜kは、CMYKの各色の紫外線硬化型インクのインク滴を吐出する。また、インクジェットヘッド202tは、クリアインクのインク滴を吐出するインクジェットヘッドである。
【0048】
複数の紫外線光源204は、インクを硬化させるための構成であり、紫外線硬化型インクを硬化させる紫外線を発生する。紫外線光源204としては、例えば、UVLED(紫外LED)等を好適に用いることができる。また、紫外線光源204として、メタルハライドランプや水銀ランプ等を用いることも考えられる。また、本例において、複数の紫外線光源204のそれぞれは、間にインクジェットヘッドの並び(インクジェットヘッド202s〜t)を挟むように、ヘッド部102における主走査方向の一端側及び他端側のそれぞれに配設される。
【0049】
平坦化ローラ206は、造形物50の造形中に形成されるインクの層を平坦化するための平坦化手段(平坦化部)である。本例において、平坦化ローラ206は、例えば、インクジェットヘッドの並びと、紫外線光源204との間に配設される。平坦化ローラ206を用いることにより、例えば、積層造形法において積層するインクの層を平坦化して、インクの層の厚みを高い精度で適切に調整できる。また、これにより、例えば、積層造形法での造形の動作を高い精度で適切に行うことができる。
【0050】
続いて、ホストPC200において行うデータの処理等について、更に詳しく説明をする。以下において説明をする動作は、例えば
図1(b)を用いて説明をしたような、表面が着色された造形物50を造形する場合の動作である。また、ホストPC200において行うデータの処理等に関連して、先ず、造形物50における着色領域56を造形装置100で形成することで表現可能な色の範囲について、説明をする。
【0051】
上記においても説明をしたように、着色された造形物50を積層造形法で造形する場合、光反射領域54の周りに着色用のインクで着色領域56を形成することにより、減法混色法で様々な色を表現する。そして、この場合、造形物50の外部から着色領域56へ入射した光は、光反射領域54で反射されて、造形物50の外部へ出射することになる。そのため、着色領域56により表現可能な色や明るさの範囲は、着色領域56の透過時に吸収される光の量の影響を受けることになる。
【0052】
また、造形物50を造形する場合、様々な向きから造形物50が観察されることや、造形物50の表面に割れや欠けがある程度生じても色が変化しにくくすること等を考慮して、通常、ある程度の厚みで着色領域56を形成する。そのため、着色された造形物50の造形時には、着色領域56での光の吸収量が大きくなり、表現可能な色や明るさの範囲への影響が大きくなることも考えられる。
【0053】
図3は、着色領域56の厚みと着色領域56で表現可能な色及び明るさとの範囲との関係について説明をする図である。
図3(a)は、表現可能な色及び明るさの範囲を示すガマット(色域)の立体図であり、着色領域56の厚みを様々に異ならせた場合について、ガマットの一例を示す。また、図示した場合においては、着色領域56の厚みについて、300μm、150μm、及び75μmのそれぞれに設定している。また、ガマットについては、Lab表色系で示している。そして、
図3(a)における一番右側の比較図においては、それぞれの厚みに対応するガマットを重ねて示している。
【0054】
図中に示すように、着色領域56の厚みを様々に異ならせた場合、ガマットの範囲やサイズが変化する。また、この場合、ガマット内に入るL値の範囲については、着色領域56の厚みが薄い程大きくなる傾向がある。そのため、明るい色を表現するためには、着色領域56を薄くすることが好ましいといえる。また、暗い色を表現するためには、着色領域56を厚くすることが好ましいといえる。また、着色領域56の厚みを様々に異ならせた場合、表現可能な色相や彩度も変化する。より具体的には、例えば、図中に示すように、着色領域56を薄くした場合、表現可能な色相や彩度の範囲が狭くなる傾向がある。
【0055】
図3(b)は、着色領域56により表現可能な色相及び彩度について更に詳しく説明する図であり、L値を25、50、及び75のそれぞれに固定した場合について、ab平面でのガマットの断面図により、着色領域56のそれぞれの厚みにおいて表現可能な色度の範囲の一例を示す。図中に示すように、着色領域56の厚みを300μm、150μm、及び75μmの厚みの中から選ぶ場合において、L値を25に固定すると、厚みが300μmの場合にのみ色の表現が可能になる。また、L値を50に固定すると、厚みが300μm及び150μmの場合に、色の表現が可能になる。そして、この場合、それぞれの厚みで表現可能な色相及び彩度の範囲は異なっている。また、この場合、概ね、300μmの場合の方が広い範囲になっている。また、L値を75に固定すると、厚みが300μm、150μm、75μmのいずれの場合も、色の表現が可能になる。そして、この場合、それぞれの厚みで表現可能な色相及び彩度の範囲は異なっている。また、この場合、概ね、着色領域56の厚みが厚い程、表現可能な色相及び彩度の範囲が広くなっている。
【0056】
以上のように、着色領域56で表現可能な色及び明るさの範囲は、着色領域56の厚みによって、様々に変化する。そのため、着色された造形物50を造形する場合、着色領域56の厚みをどのように設定するかが重要になる。
【0057】
これに対し、本願の発明者は、上記においても説明をしたように、着色領域56について、均一な厚みではなく、位置によって厚みが異なるように形成することを考えた。また、そのように着色領域56を形成する方法として、より具体的に、複数のデバイスプロファイルを用いて色変換を行うことを考えた。そこで、以下、本例において行う色変換の処理等について、説明をする。
【0058】
図4は、ホストPC200(
図1参照)において行う色変換の処理の一例を示す図であり、ホストPC200において行う処理のうち、色変換に関連する処理(カラー化処理フロー)に着目して、処理の概要を示す。上記においても説明をしたように、本例において、ホストPC200は、造形しようとする造形物50(
図1参照)を示す造形物データに基づき、造形装置100(
図1参照)に合わせた形式で造形物50を示す造形実行用データを生成する。また、より具体的に、着色された造形物50を造形装置100で造形する場合、ホストPC200は、少なくとも一部が着色された造形物50を示す造形物データに対して色変換等を行い、造形装置100に合わせた形式で色が表現された造形実行用データを生成する。
【0059】
また、この場合、色変換を行う前の造形物データとしては、例えば、造形装置100に依存しない形式で色が表現されたデータを用いる。また、このような造形物データにおいて、色の表現は、RGB表色系又はCMYK表色系等の任意の表色系で行うことができる。
【0060】
そして、本例において、ホストPC200は、このような造形物データにおいて表現されている色に対し、予め用意された入力プロファイルに基づき、Lab表色系への色変換を行う。この場合、プロファイルとは、例えば、入出力される色と色空間とを対応付けるデータのことである。また、より具体的に、プロファイルとしては、ICCプロファイルを好適に用いることができる。また、本例において、入力プロファイルとしては、造形物データにおいて使用されている色とLab表色系の色空間とを対応付けるプロファイルを用いる。また、これにより、例えばRGB表色系又はCMYK表色系で造形物データにおいて表現されている色を、Lab表色系で表現される色に変換する。
【0061】
また、Lab表色系への色変換を行った後、ホストPC200は、更に、造形装置100の特性に合わせて予め用意されたデバイスプロファイルを用いて、造形装置100で使用する着色用インクの色に合わせた色変換を行う。また、この場合、デバイスプロファイルとして、図中にデバイスプロファイル1〜3として示すように、互いに異なる複数のプロファイルを使用する。
【0062】
ここで、デバイスプロファイル1〜3は、複数の造形材料用プロファイルの一例である。また、造形材料用プロファイルとは、複数色の造形用の材料に合わせたプロファイルのことである。また、本例において、複数色の造形用の材料とは、着色用のインクとして用いるCMYKの各色のインクのことである。また、この場合、デバイスプロファイル1〜3としては、着色用のインクで表現される色にLab値を変換するプロファイルを用いる。着色用のインクで表現される色にLab値を変換するプロファイルとは、例えば、Lab表色系における色空間でのLab値と着色用のインクで表現される色とを対応付けるプロファイルのことである。また、より具体的に、本例において、デバイスプロファイル1〜3のそれぞれとしては、図中に示すように、Lab表色系の色空間を着色用のインクの色に対応するCMYK表色系の色に対応付けるプロファイルを用いる。
【0063】
また、この場合、デバイスプロファイル1〜3としては、色再現領域が互いに異なる複数のプロファイルを用いる。プロファイルの色再現領域が互いに異なるとは、例えば、デバイス側(造形装置100側)で表現可能な色の範囲が互いに異なることである。また、より具体的に、本例においては、デバイスプロファイル1〜3として、互いに異なる厚みの着色領域56(
図1参照)と対応付けられているプロファイルを用いる。この場合、対応する着色領域56の厚みが異なることにより、デバイスプロファイル1〜3は、ガマットの範囲やサイズが互いに異なるプロファイルになる。
【0064】
尚、プロファイルが対応付けられる着色領域56の厚みとは、そのプロファイルを用いる場合に形成すべき着色領域56の厚みのことである。また、着色領域56の厚みとは、造形物50の法線方向における厚みのことである。また、造形物50の法線方向とは、造形物50の表面の各位置において表面と直交する方向のことである。
【0065】
また、本例においては、一つの造形物を示す造形実行用データを生成する処理において、複数のデバイスプロファイル(デバイスプロファイル1〜3)を使用する。この場合、互いに異なる位置に対する色変換の処理において、デバイスプロファイル1〜3のそれぞれを使用する。
【0066】
また、この場合、ホストPC200は、着色領域56の各位置に対する色変換の処理に用いたデバイスプロファイルに応じて、その位置における着色領域56の厚みを更に設定する。より具体的には、着色領域56の厚みについて、デバイスプロファイルに対応付けられている厚みに設定する。また、これにより、ホストPC200は、造形実行用データとして、CMYK表色系で表現される色と厚みとが着色領域56の各位置に対して設定されているデータを生成する。
【0067】
このように構成すれば、例えば、造形物50の各位置において表現する色に合わせて、その色を表現可能なデバイスプロファイルをより適切に用いることができる。また、これにより、例えば一つのデバイスプロファイルのみでは造形物50の全体の色を適切に表現できない場合にも、造形物50の全体の色をより適切に表現できる。
【0068】
続いて、造形システム10により行う造形の動作について、更に詳しく説明をする。
図5及び
図6は、造形システム10により行う造形の動作の一例を示す。
図5は、造形システム10により行う造形の動作の一例を示すフローチャートである。
図6は、
図5に示すフローチャートにおける一部の動作を模式的に示す図である。
図6(a)〜(c)は、ホストPC200において行う動作の一部を模式的に示す。
【0069】
尚、
図6では、フローチャートにおける各動作のタイミングに関し、造形物データに対する所定の処理により得られる3Dモデルの断面形状について、模式的に示している。また、
図6においては、図示の便宜上、
図1(b)に示した場合とは異なる形状の造形物50を造形する場合について、造形物50の上面側の一部を省略して、下面及び側面の一部を含む断面図を示している。この場合、上面及び下面とは、積層方向における上側及び下側の面のことである。また、側面とは、例えば、上面と下面とをつなぐ面のことである。
【0070】
以下、フローチャート中の各動作について、説明をする。本例において、造形システム10は、ホストPC200において、造形物データに基づき、造形実行用データの生成を行う(S100)。このステップS100は、造形実行用データ生成段階の一例である。また、ステップS100の動作の中で、ホストPC200は、
図4等を用いて説明をした色変換の処理を行う。
【0071】
また、ステップS100において、ホストPC200は、先ず、造形しようとする造形物50の表面に対する法線ベクトルの算出を行う(S102)。より具体的に、この動作では、例えば
図6(a)に示すように、造形物データにより示される3Dモデルの各面に対し、反転法線ベクトルを求める。
【0072】
この場合、3Dモデルの各面とは、3Dモデルの外周面のことである。また、各面に対して反転法線ベクトルを求めるとは、3Dモデルの外周面を構成する各位置に対し、その位置において外周面と直交する反転法線ベクトルを求めることである。また、反転法線ベクトルとは、例えば
図6(a)に矢印で示すように、3Dモデルの外周面と直交し、かつ、3Dモデルの内側へ向かうベクトル(反転した面法線ベクトル)のことである。
【0073】
ここで、
図6(a)に示す3Dモデルは、色変換を行う前の造形物データにより示される3Dモデルであり、その表面には、着色領域302が設定されている。この着色領域302は、3Dモデルの表面において着色がされている領域であり、例えばRGB表色系又はCMYK表色系等の色を示す色情報が付されることにより、着色がされている。
【0074】
尚、造形の実行時において、造形装置100は、着色領域302に基づき、造形物50の着色領域56(
図1参照)を形成する。この場合、着色領域302に基づいて着色領域56を形成するとは、以下において説明をする色変換の処理等を行った後の着色領域302に基づいて着色領域56を形成することである。また、
図6(a)においては、図示及び説明の便宜上、着色領域302内に、複数の領域402、404、406を示している。しかし、これらの領域は、後に行う色変換の処理において設定する領域である。
【0075】
続いて、色変換の処理と、着色領域302の厚み(幅)の算出とを行う(S104)。この場合、色変換の処理とは、例えば、
図4を用いて説明をした色変換の処理のことである。また、着色領域302の厚みの算出とは、例えば、着色領域302の各位置の法線方向における厚みについて、ステップS102で求められた反転法線ベクトルを利用して、色変換に使用したデバイスプロファイルに対応する厚みに調整することである。
【0076】
ここで、
図4等を用いて上記においても説明をしたように、本例において、ホストPC200は、造形物データにおいて設定されているRGB表色系又はCMYK表色系等で設定されている色に対し、入力プロファイルに基づき、Lab表色系への色変換を行う。また、変換後のLab表色系の色に対し、複数のデバイスプロファイル(デバイスプロファイル1〜3)に基づき、CMYK表色系への色変換を行う。
【0077】
そして、この場合、入力プロファイルを用いて行う色変換は、第1色変換段階の動作の一例である。第1色変換段階とは、例えば、造形物データにおいて表現されている色をLab値に変換する色変換を行う段階のことである。また、また、複数のデバイスプロファイルを用いて行う色変換は、第2色変換段階の動作の一例である。第2色変換段階とは、例えば、第1色変換段階で変換されたLab値に対して複数のデバイスプロファイルに基づく色変換を行う段階のことである。
【0078】
また、本例においては、Lab表色系への色変換を行った後、CMYK表色系への色変換を行う前に、例えば
図6(a)に示すように、着色領域302を複数の領域402、404、406に分割する。この場合、複数の領域402、404、406のそれぞれは、後に行うCMYK表色系への色変換において互いに異なるデバイスプロファイルを用いる領域である。また、領域402は、例えば、複数のデバイスプロファイル1〜3のうち、デバイスプロファイル1を用いて色変換を行う領域である。また、領域404は、例えば、デバイスプロファイル2を用いて色変換を行う領域である。領域406は、例えば、デバイスプロファイル3を用いて色変換を行う領域である。また、ホストPC200は、例えば、予め設定されている色の範囲に基づき、着色領域302を複数の領域402、404、406に分割する。この場合、色の範囲とは、例えば、それぞれのデバイスプロファイルに対してLab表色系で予め設定される色の範囲である。
【0079】
また、上記においても説明をしたように、本例において、CMYK表色系への色変換に用いる複数のデバイスプロファイルのそれぞれは、造形時に形成される着色領域56の厚みについて、互いに異なる厚みと対応付けられている。そのため、3Dモデルにおける着色領域302の厚みの算出において、ホストPC200は、着色領域302の各位置に対して行う色変換に用いるデバイスプロファイルに合わせて、着色領域302の厚みを設定する。この場合、デバイスプロファイルに合わせて着色領域302の厚みを設定するとは、例えば、3Dモデルにおける着色領域302に基づいて造形物50の着色領域56を形成した場合に、着色領域56の厚みがデバイスプロファイルに対応して設定されている厚みになるように、着色領域302の厚みを設定することである。
【0080】
また、より具体的に、本例において、ホストPC200は、着色領域302における複数の領域402、404、406のそれぞれの厚みについて、各領域に対する色変換に用いるデバイスプロファイルに合わせて厚みを設定する。また、これにより、例えば
図6(b)に示すように、複数の領域402、404、406の厚みを互いに異ならせる。
【0081】
また、本例においては、例えば、ステップS104で行う処理の中で、3Dモデルに対し、光反射領域304及び内部領域306を設定する。光反射領域304及び内部領域306は、造形物50における内部領域52及び光反射領域54に対応する領域である。この場合、ホストPC200は、例えば、3Dモデルにおける着色領域302の内側に、予め設定された厚みの光反射領域304を設定する。また、光反射領域304の内側に内部領域306を設定する。
【0082】
尚、光反射領域304の各部の厚みについては、例えば図中に示すように、光反射領域304の厚みと着色領域302の厚みとの合計を一定の厚みにして、着色領域302の各部の厚みの合わせて異ならせることが考えられる。また、ホストPC200の動作の変形例においては、光反射領域304の各部の厚みについて、例えば、その外側に形成される着色領域302の厚みによらず、一定の厚みに設定してもよい。
【0083】
また、ステップS104で行う色変換等の処理に続いて、ホストPC200は、処理後の3Dモデルに基づき、スライス画像の生成を行う(S106)。この場合、スライス画像を生成するとは、例えば、3Dモデルを一定の間隔で輪切り状にしたデータであるスライスデータを生成することである。また、スライス画像とは、例えば、スライスデータに対応して生成されるインクの層で表現される画像のことである。より具体的に、この動作においては、例えば
図6(c)に示すように、造形装置100において形成するインクの層の厚み(インクの積層サイズ)の間隔で3Dモデルをスライスすることで、スライス画像を生成する。また、これにより、造形物データに基づき、積層方向における互いに異なる位置の断面をそれぞれ示す複数のスライス画像を生成する。
【0084】
また、スライス画像の生成後、生成された各スライス画像に基づき、3Dモデルのコマンド化を行う(S108)。この場合、コマンド化とは、造形を実行する造形装置100で実行可能な形式に3Dモデルのデータを変換する処理のことであり、それぞれのスライス画像について、造形装置100での造形が可能な形式のデータに変換する。また、これにより、ホストPC200は、造形装置100に合わせた形式で造形物50を示す造形実行用データを生成する。
【0085】
尚、この場合、コマンド化されたスライス画像は、例えば、造形装置100において造形時に使用するインクが各画素に対して指定されたデータになる。また、造形実行用データは、例えば、コマンド化された複数のスライス画像により構成される。
【0086】
また、ステップS108の実行後、ホストPC200は、生成した造形実行用データを、造形装置100へ供給する。また、これにより、造形装置100は、造形実行用データに基づく造形の動作(積層動作)を実行する(S110)。本例において、ステップS110は、造形実行段階の一例である。
【0087】
また、より具体的に、ステップS110において、造形装置100は、ホストPC200から受け取る造形実行用データに基づいて造形の材料を吐出することにより、造形物50を構成する複数のインクの層を一層ずつ積層して、積層造形法で造形物50を造形する。また、この場合、造形装置100は、造形実行用データにおける着色領域302に対応するデータに基づき、複数色の着色用のインクを用いて、造形物50における着色領域56を形成する。また、この場合、造形装置100は、造形実行用データに基づいて積層動作を実行することにより、着色領域56の各部について、その部分に対する色変換に用いたデバイスプロファイルに対応付けられている厚みで形成する。
【0088】
以上のように、本例においては、ホストPC200におけるデータの処理と、造形装置100による積層動作とを行うことにより、表面がカラー着色された造形物50を製造する。また、この場合、ホストPC200において行う色変換の処理において互いに異なる複数のデバイスプロファイルを用いることにより、造形物50における着色領域56について、位置によって着色領域の厚みを異ならせることができる。また、これにより、着色領域56の各部について、その部分に着色する色に適した厚みで形成することができる。
【0089】
そのため、本例によれば、例えば、着色された造形物50を造形する場合において、より多彩な色を適切に表現できる。また、これにより、例えば、着色された造形物50をより適切に造形できる。
【0090】
尚、上記において説明をしたフローチャートの動作において、例えばスライス画像を生成するステップS106までの動作は、例えば、造形装置100の機種等に依存しないデータを用いて行うことが考えられる。また、コマンド化を行うステップS108以降の動作では、造形装置100の機種等に合わせた形式のデータを用いることが好ましい。また、上記においては、ステップS100の動作をホストPC200が実行し、ステップS110の動作を造形装置100が実行する場合について、説明をした。しかし、造形システム10の動作の変形例においては、例えば、ステップS100における一部又は全体の動作について、造形装置100で行うことも考えられる。
【0091】
また、上記においては、複数のデバイスプロファイルを用いて造形を行う動作に関し、主に、使用するデバイスプロファイルに合わせて造形物50における着色領域56の厚みを異ならせる場合について、説明をした。しかし、本例において行う造形の動作の特徴について、より一般化して考えた場合、造形物50における着色領域56の厚みを位置によって異ならせる場合に限らず、複数のデバイスプロファイルを用いて造形を行う点に着目して考えることもできる。この場合、例えば、着色領域56の位置によって使用するインクの色又は組み合わせ等を異ならせ、その色又は組み合わせ等に合わせた複数のデバイスプロファイルを用いること等も考えられる。より具体的には、例えば、着色用のインクとして、CMYKの各色以外に、少なくとも一部の色(例えばC色及びM色等)の淡色(ライト色)のインクを更に用い、かつ、着色領域56の一部の着色のみに淡色のインクを用いる場合等が考えられる。この場合、複数のデバイスプロファイルとして、例えば、淡色のインクを用いずに着色する部分の色変換に用いるデバイスプロファイルと、淡色のインクを用いて着色する部分の色変換に用いるデバイスプロファイルとを用いることが考えられる。