(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記シーケンス制御部は、前記インバージョンパルスの印加前に、撮像が行われる流体の速度に基づいて、前記データ収集に係るk空間ラインの数の調整を行う、請求項1に記載の磁気共鳴イメージング装置。
前記シーケンス制御部は、前記インバージョンパルスの印加前に、撮像が行われる流体の速度に基づいて、スライスエンコードの量を決定する、請求項1〜3のいずれか一つに記載の磁気共鳴イメージング装置。
前記シーケンス制御部は、イメージングシーケンスの前に実行されたパルスシーケンスから収集されたデータに基づいて決定された時刻で、前記データ収集を開始する、請求項1〜4のいずれか一つに記載の磁気共鳴イメージング装置。
前記シーケンス制御部は、r−bSSFP(radial balanced Steady State Free Precession)シーケンスを前記イメージングシーケンスとして実行する、請求項1〜10のいずれか一つに記載の磁気共鳴イメージング装置。
前記シーケンス制御部は、FASE(Fast Asymmetric Spin Echo)シーケンスを前記イメージングシーケンスとして実行する、請求項1に記載の磁気共鳴イメージング装置。
前記シーケンス制御部は、2次元ラジアル収集、略同一の方向に複数回のサンプリングを行う2次元データ収集、2次元PETRA(Pointwise Encoding Time Reduction with Radial Acquisition)データ収集、2次元UTE(Ultrashort Echo)データ収集のうち少なくとも一つを用いてデータ収集を行う、請求項16に記載の磁気共鳴イメージング装置。
前記シーケンス制御部は、3次元UTE(Ultrashort Echo)データ収集、3次元PETRA(Pointwise Encoding Time reduction with Radial Acquisition)データ収集及び3次元投影データ収集のうち少なくとも一つを用いて前記データ収集を行う、請求項18に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置100を示すブロック図である。
図1に示すように、磁気共鳴イメージング装置100は、静磁場磁石101と、静磁場電源102と、傾斜磁場コイル103と、傾斜磁場電源104と、寝台105と、寝台制御回路106と、送信コイル107と、送信回路108と、受信コイル109と、受信回路110と、シーケンス制御回路120と、コンピューター130(「画像処理装置」とも称される)とを備える。なお、磁気共鳴イメージング装置100に、被検体P(例えば、人体)は含まれない。また、
図1に示す構成は一例に過ぎない。例えば、シーケンス制御回路120及びコンピューター130内の各部は、適宜統合若しくは分離して構成されてもよい。
【0010】
静磁場磁石101は、中空の略円筒形状に形成された磁石であり、内部の空間に静磁場を発生する。静磁場磁石101は、例えば、超伝導磁石等であり、静磁場電源102から電流の供給を受けて励磁する。静磁場電源102は、静磁場磁石101に電流を供給する。なお、静磁場磁石101は、永久磁石でもよく、この場合、磁気共鳴イメージング装置100は、静磁場電源102を備えなくてもよい。また、静磁場電源102は、磁気共鳴イメージング装置100とは別に備えられてもよい。
【0011】
傾斜磁場コイル103は、中空の略円筒形状に形成されたコイルであり、静磁場磁石101の内側に配置される。傾斜磁場コイル103は、互いに直交するX、Y、及びZの各軸に対応する3つのコイルが組み合わされて形成されており、これら3つのコイルは、傾斜磁場電源104から個別に電流の供給を受けて、X、Y、及びZの各軸に沿って磁場強度が変化する傾斜磁場を発生する。傾斜磁場コイル103によって発生するX、Y、及びZの各軸の傾斜磁場は、例えば、スライス用傾斜磁場Gs、位相エンコード用傾斜磁場Ge、及びリードアウト用傾斜磁場Grである。傾斜磁場電源104は、傾斜磁場コイル103に電流を供給する。
【0012】
寝台105は、被検体Pが載置される天板105aを備え、寝台制御回路106による制御の下、天板105aを、被検体Pが載置された状態で、傾斜磁場コイル103の空洞(撮像口)内へ挿入する。通常、寝台105は、長手方向が静磁場磁石101の中心軸と平行になるように設置される。寝台制御回路106は、コンピューター130による制御の下、寝台105を駆動して天板105aを長手方向及び上下方向へ移動する。
【0013】
送信コイル107は、傾斜磁場コイル103の内側に配置され、送信回路108からRFパルスの供給を受けて、高周波磁場を発生する。送信回路108は、対象とする原子の種類及び磁場強度で定まるラーモア(Larmor)周波数に対応するRFパルスを送信コイル107に供給する。
【0014】
受信コイル109は、傾斜磁場コイル103の内側に配置され、高周波磁場の影響によって被検体Pから発せられる磁気共鳴信号を受信する。受信コイル109は、磁気共鳴信号を受信すると、受信した磁気共鳴信号を受信回路110へ出力する。
【0015】
なお、上述した送信コイル107及び受信コイル109は一例に過ぎない。送信機能のみを備えたコイル、受信機能のみを備えたコイル、若しくは送受信機能を備えたコイルのうち、1つ若しくは複数を組み合わせることによって構成されればよい。
【0016】
受信回路110は、受信コイル109から出力される磁気共鳴信号を検出し、検出した磁気共鳴信号に基づいて磁気共鳴データを生成する。具体的には、受信回路110は、受信コイル109から出力される磁気共鳴信号をデジタル変換することによって磁気共鳴データを生成する。また、受信回路110は、生成した磁気共鳴データをシーケンス制御回路120へ送信する。なお、受信回路110は、静磁場磁石101や傾斜磁場コイル103等を備える架台装置側に備えられてもよい。
【0017】
シーケンス制御回路120は、コンピューター130から送信されるシーケンス情報に基づいて、傾斜磁場電源104、送信回路108及び受信回路110を駆動することによって、被検体Pの撮像を行う。ここで、シーケンス情報は、撮像を行うための手順を定義した情報である。シーケンス情報には、傾斜磁場電源104が傾斜磁場コイル103に供給する電流の強さや電流を供給するタイミング、送信回路108が送信コイル107に供給するRFパルスの強さやRFパルスを印加するタイミング、受信回路110が磁気共鳴信号を検出するタイミング等が定義される。例えば、シーケンス制御回路120は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)等の集積回路、CPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro Processing Unit)等の電子回路である。
【0018】
なお、シーケンス制御回路120は、傾斜磁場電源104、送信回路108及び受信回路110を駆動して被検体Pを撮像した結果、受信回路110から磁気共鳴データを受信すると、受信した磁気共鳴データをコンピューター130へ転送する。コンピューター130は、磁気共鳴イメージング装置100の全体制御や、画像の生成等を行う。コンピューター130は、記憶回路132、入力装置134、ディスプレイ135、処理回路150を備える。処理回路150は、インタフェース機能131、制御機能133、及び画像生成機能136を備える。
【0019】
第1の実施形態では、インタフェース機能131、制御機能133、画像生成機能136にて行われる各処理機能は、コンピューターによって実行可能なプログラムの形態で記憶回路132へ記憶されている。処理回路150はプログラムを記憶回路132から読み出し、実行することで各プログラムに対応する機能を実現するプロセッサである。換言すると、各プログラムを読み出した状態の処理回路150は、
図1の処理回路150内に示された各機能を有することになる。なお、
図1においては単一の処理回路150にて、インタフェース機能131、制御機能133、画像生成機能136にて行われる処理機能が実現されるものとして説明したが、複数の独立したプロセッサを組み合わせて処理回路150を構成し、各プロセッサがプログラムを実行することにより機能を実現するものとしても構わない。
【0020】
換言すると、上述のそれぞれの機能がプログラムとして構成され、1つの処理回路150が各プログラムを実行する場合であってもよいし、特定の機能が専用の独立したプログラム実行回路に実装される場合であってもよい。
【0021】
上記説明において用いた「プロセッサ」という文言は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphical Processing Unit)或いは、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC)、プログラマブル論理デバイス(例えば、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD)、複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD)、及びフィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA))等の回路を意味する。プロセッサは記憶回路132に保存されたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。
【0022】
なお、記憶回路132にプログラムを保存する代わりに、プロセッサの回路内にプログラムを直接組み込むよう構成しても構わない。この場合、プロセッサは回路内に組み込まれたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。なお、寝台制御回路106、送信回路108、受信回路110等も同様に、上記のプロセッサ等の電子回路により構成される。また、シーケンス制御回路120、画像生成機能136は、それぞれシーケンス制御部、画像生成部の一例である。
【0023】
処理回路150は、インタフェース機能131により、シーケンス情報をシーケンス制御回路120へ送信し、シーケンス制御回路120から磁気共鳴データを受信する。また、インタフェース機能131を有する処理回路150は、磁気共鳴データを受信すると、受信した磁気共鳴データを記憶回路132に格納する。記憶回路132に格納された磁気共鳴データは、制御機能133によってk空間に配置される。この結果、記憶回路132は、k空間データを記憶する。
【0024】
記憶回路132は、インタフェース機能131を有する処理回路150によって受信された磁気共鳴データや、制御機能133を有する処理回路150によってk空間に配置されたk空間データ、画像生成機能136を有する処理回路150によって生成された画像データ等を記憶する。例えば、記憶回路132は、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ等の半導体メモリ素子、ハードディスク、光ディスク等である。
【0025】
入力装置134は、操作者からの各種指示や情報入力を受け付ける。入力装置134は、例えば、マウスやトラックボール等のポインティングデバイス、モード切替スイッチ等の選択デバイス、あるいはキーボード等の入力デバイスである。ディスプレイ135は、制御機能133を有する処理回路150による制御の下、撮像条件の入力を受け付けるためのGUI(Graphical User Interface)や、画像生成機能136を有する処理回路150によって生成された画像等を表示する。ディスプレイ135は、例えば、液晶表示器等の表示デバイスである。
【0026】
処理回路150は、制御機能133により、磁気共鳴イメージング装置100の全体制御を行い、撮像や画像の生成、画像の表示等を制御する。例えば、制御機能133を有する処理回路150は、撮像条件(撮像パラメータ等)の入力をGUI上で受け付け、受け付けた撮像条件に従ってシーケンス情報を生成する。また、制御機能133を有する処理回路150は、生成したシーケンス情報をシーケンス制御回路120へ送信する。
【0027】
処理回路150は、画像生成機能136により、k空間データを記憶回路132から読み出し、読み出したk空間データにフーリエ変換等の再構成処理を施すことで、画像を生成する。
【0028】
次に、第1の実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置の背景について簡単に説明する。磁気共鳴イメージングにおいて、信号の感度を増強させるため、ガドリウムをベースにした造影剤が、被検体の体の中にしばしば投入される。しかしながら、ある場合には、造影剤は、有害となる。例えば、腎臓イメージングに使用される造影剤は、腎性全身性繊維症(NSF)に対する危険因子となる。頭部イメージングの場合、投与されたガドリニウムがイメージングの後も脳に残留するが、これは健康に懸念を生じさせる。従って、非造影のイメージング方法が望ましい。
【0029】
このような点で、Time−SLIP(Time−Spatial Labeling Inversion Pulse)法は、造影剤を用いた技術と同等若しくはそれ以上の画質の血管造影をユーザに提供する、動脈スピンラべリング(ASL)による非造影の磁気共鳴血管造影法(MRA)である。Time―SLIP法では、シーケンス制御回路120がインバージョンパルスを印加し、それに続くイメージングシーケンスを実行することにより、データ収集を実行する。Time―SLIP法では、データ収集は、ヌルポイント(ヌルポイント付近)を含んで実行されるが、そこでは背景組織の縦磁化は実質的にゼロになっている。従って、例えば、背景組織は消え、関心のある信号が目立って描出される。データ収集において、カーテシアン収集がTime―SLIP法において普通は用いられる。
【0030】
しかしながら、Time−SLIP法のパルスシーケンスにおけるイメージングシーケンスで採用されるカーテシアン収集が、磁気共鳴イメージング装置がモーションアーチファクトに対する堅牢なサンプリングを実行する際の障害となっている。この一つの理由としては、カーテシアンサンプリングではk空間の中心付近の領域とk空間の中心付近以外の領域とで、サンプリング密度が等しいことが挙げられる。一方で、ラジアルサンプリングの場合、k空間の中心付近以外の領域と比較して、k空間の中心付近で、より多い回数のサンプリングが実行される。換言すると、カーテシアンサンプリングは、ラジアルサンプリングと比較して、k空間の中心付近で、冗長性が少なく、従ってモーションアーチファクトに対して堅牢さがない。従って、Time―SLIP法のイメージングシーケンスにおいては、ラジアルサンプリングが採用されるのが望ましい。更に、ラジアルサプリングは、UTE(Ultrashort Echo Time)シーケンス等のパルスシーケンスを用いることにより、TE(エコー時間)が短くなるという利点がある。
【0031】
しかしながら、真の3次元ラジアル収集は、すなわち、3次元k空間の球状サンプリングは、時間がかかる。
【0032】
そのような背景のもと、以降の実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置のシーケンス制御回路120は、任意の2方向をラジアルで、3番目の方向をカーテシアンで行う3次元収集(別名、積層星型(stack−of−star)ラジアルサンプリングとも呼ばれる)を実行する。真の3次元ラジアル収集(3次元k空間の球状サンプリング)と比較すると、任意の2方向をラジアルで、3番目の方向をカーテシアンで行う3次元収集は、取り扱いが易しい。更に、本質的に分離不可な3次元収集である真の3次元収集と比較すると、任意の2方向をラジアルで、3番目の方向をカーテシアンで行う3次元収集は、互いに独立な2次元収集の寄せ集めである。したがって、真の3次元ラジアル収集と比較して、任意の2方向をラジアルで、3番目の方向をカーテシアンで行う3次元収集は、流速等イメージング対象の性質に応じて、パルスシーケンスのパラメータの調整に関して柔軟性を有する。このような調整は、例えば、所定の時間期間に収集されるべきスライスの数を調整することで実現される。このように、磁気共鳴イメージング装置100は、任意の2方向をラジアルで、3番目の方向をカーテシアンで行う、セグメント化されたTime―SLIP3次元収集を、例えば、ECGゲーティング又は/及び呼吸同期ゲーティングを行って様々な血管の流速に対応する等、ニーズに応じて調整することができる。
【0033】
まとめると、第1の実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置のシーケンス制御回路120は、任意の2方向をラジアルで、3番目の方向をカーテシアンで行う3次元収集と、スピンラべリング技術とを組み合わせることにより、モーションアーチファクトに対する堅牢性を得ることができる。第1の実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置は、撮像の対象の性質に応じてパルスシーケンスのパラメータを調整可能になり、データを迅速に収集することが可能になる。
【0035】
Time―SLIP法には主に3つの変形例がある。すなわち、いわゆる「フローイン」法、いわゆる「フローアウト」法、及び、いわゆる「タグオン/タグオフ」法である。
図2A、
図3A及び
図4Aは、「フローイン」法を示す。
図2B、
図3B及び
図4Bは、「フローアウト」法を示す。
図2C、
図3C及び
図4Cは、「タグオン/タグオフ」法を示す。
【0036】
はじめに、
図2A、
図3A及び
図4Aを参照して、「フローイン」法について説明する。
図2Aの最上段は、印加されるRFパルス及び、イメージングシーケンスが実行されるデータ収集期間を示す。横軸は時刻を示す。領域選択インバージョンパルス20は、シーケンス制御回路120によって印加される領域選択インバージョンパルスを意味する。データ収集期間10は、イメージングシーケンスが実行される、データ収集に適した時間の期間を意味する。
【0037】
図2Aの最下段において、横軸は時刻を意味する。縦軸は縦磁化を意味する。曲線24bは、時刻の関数として、領域選択インバージョンパルス20が印加されるスピンの縦磁化を表している。一方、曲線24aは、時刻の関数として、領域選択インバージョンパルス20が印加されないスピンの縦磁化を表している。ヌルポイント30は、曲線24bの縦磁化がゼロとなる時間を意味する。
【0038】
図3Aにおいて、「フローイン」腎臓イメージングの典型的な状況が示されている。腎臓42a、42bは、被検体の腎臓を表している。動脈上流位置40a及び動脈下流位置40gは、下行大動脈のそれぞれ、上流及び下流位置を表している。静脈上流位置41a及び静脈下流位置40fは、下大静脈のそれぞれ、上流及び下流位置を表している。腎動脈40b及び40hは、腎動脈を表している。腎静脈41b及び40eは、腎静脈を表している。動脈40cは、腎臓42aの動脈を表している。静脈40dは、腎臓42aの静脈を表している。動脈40iは腎臓42bの動脈を表している。静脈40jは腎臓42bの静脈を表している。動脈上流位置40aの動脈血のほとんどは、動脈下流位置40gに直接流れ込む。静脈上流位置41aの静脈血は、静脈下流位置40fに直接流れ込む。一方、動脈上流位置40aの動脈血のうち一部は、腎動脈40bに入り、続いて動脈40cに、そして静脈40dに戻り、腎静脈40eへ、そして静脈下流位置40fに達する。
【0039】
別の例として、動脈上流位置40aの動脈血のうちのいくらかは、腎動脈40hに入り、続いて動脈40iに、そして静脈40j、腎静脈41bに戻り、そして静脈下流位置40fに到達する。パルス印加領域44は、領域選択インバージョンパルス20が印加される領域を表している。パルス印加領域44は、静脈上流位置41aを含む。イメージング領域43は、データ収集が実行される領域を表す。
【0040】
図4Aは、「フローイン」Time−SLIP法の処理の手続きを示したフローチャートである。
図4Aでは、シーケンス制御回路120は、領域選択インバージョンパルスを、インバージョンパルスとして印加する(ステップS100)。例えば、シーケンス制御回路120は、パルス印加領域44に対して、領域選択インバージョンパルス20を印加する。
【0041】
インバージョンパルスは、インバージョンパルスが印加されたスピンを、180度回転させるRFパルスである。従って、インバージョンパルスが印加されると、縦磁化+M
zを有するスピンは、縦磁化-M
zを有するスピンとなる。
【0042】
また、領域選択インバージョンパルスは、所定の領域にあるスピンを回転させるインバージョンパルスである。一方、領域選択インバージョンパルスは、所定の領域にないスピンを回転させない。
【0043】
例えば、シーケンス制御回路120によって領域選択インバージョンパルス20がパルス印加領域44に印加されると、曲線24bに示されているように、縦磁化は+M
zから−M
zに変化する。一方、パルス印加領域44以外の領域については、曲線24aに示されているように、たとえ領域選択インバージョンパルス20がシーケンス制御回路120によって印加された場合でも、縦磁化は変化しない。
【0044】
図2Aに示されているように、縦磁化は、時間が経過するについてゆっくりと回復する。シーケンス制御回路120は、ヌルポイント30付近まで待機する(ステップS110)。ヌルポイントは、縦磁化がゼロとなる時間である。
【0045】
この時、すなわちデータ収集期間10に、シーケンス制御回路120は、任意の2方向がラジアルで、3番目の方向がカーテシアンで、3次元収集を実行する(ステップS120)。このステップは、後ほどより詳細に説明される。シーケンス制御回路120による、任意の2方向がラジアルで、3番目の方向がカーテシアンでの3次元収集を用いた3次元収集が完了すると、処理回路150は、処理回路150により実行されるデータ収集パルスシーケンスに基づいて画像を生成する(ステップS130)。
【0046】
図3Aでは、シーケンス制御回路120は、パルス印加領域44に、領域選択インバージョンパルス20を印加する。以前説明したように、パルス印加領域44は、例えば静脈上流位置41aのように、静脈の上流領域を含む。シーケンス制御回路120は、パルス印加領域44を、ヌルポイント30において(すなわち、データ収集期間10において)イメージング領域43にある静脈血が、シーケンス制御回路120による領域選択インバージョンパルス20の印加タイミングにおいて、パルス印加領域44にあるように選択する。この条件が満たされる場合、ヌルポイント30においてイメージング領域43にある静脈血は、縦磁化が実質的にゼロになるような血液になる。従って、データ収集期間10において、静脈血の信号は消える。
【0047】
一方、動脈血に関しては、パルス印加領域44は、例えば動脈上流位置40aのような、動脈の上流領域を含まない。シーケンス制御回路120は、ヌルポイント30(すなわち、データ収集期間10)において腎臓42a及び42bにある動脈血が、シーケンス制御回路120による領域選択インバージョンパルス20による印加のタイミングにおいて、パルス印加領域44の外にある動脈血になるように、パルス印加領域44を選択する。この条件が満たされた場合、ヌルポイント30において腎臓42a及び42bにある動脈血は、領域選択インバージョンパルス20の影響を受けなかった血液となる。従って、腎臓42a及び42bにある動脈血の信号は、データ収集期間10において、目立って描出される。
【0048】
第2に、「フローアウト」法を、
図2B、
図3B及び
図4Bを参照しながら説明する。
【0049】
図2Bの最上段は、印加されるRFパルス及び、イメージングシーケンスが実行されるデータ収集期間を示す。横軸は時刻を表す。領域非選択インバージョンパルス21は、シーケンス制御回路120によって印加される領域非選択インバージョンパルスを意味する。領域選択インバージョンパルス22は、シーケンス制御回路120によって印加される領域選択インバージョンパルスを意味する。
図2Bのデータ収集期間10は、イメージングシーケンスが実行される、データ収集に適した期間を意味する。
【0050】
図2Bの最下段では、
図2Aと同様に、横軸は時刻を意味する。縦軸は縦磁化を意味する。曲線25aは、領域選択インバージョンパルス22及び領域非選択インバージョンパルス21が印加されるスピンの縦磁化を、時刻の関数として表している。一方、曲線25bは、領域選択インバージョンパルス22が印加されず、領域非選択インバージョンパルス21のみが印加されるスピンの縦磁化を、時刻の関数として表している。
【0051】
図2Bのヌルポイント30は、曲線25bの縦磁化がゼロになる時刻を意味する。
【0052】
図3Bに、「フローアウト」腎臓イメージングにおける典型的な状況が示されている。パルス印加領域45は、領域非選択インバージョンパルス21が印加される領域を表している。パルス印加領域46は、領域選択インバージョンパルス22が印加される領域を表している。
図3Bのイメージング領域43は、
図3Aと同様に、データ収集が実行される領域を表している。
【0053】
図4Bは、「フローアウト」Time−SLIP法における処理の手続きを示したフローチャートである。
図4Bにおいて、シーケンス制御回路120は、領域選択インバージョンパルスを印加する(ステップS200)。例えば、シーケンス制御回路120は、パルス印加領域45に対して、領域非選択インバージョンパルス21を印加する。領域非選択インバージョンパルスは、すべての領域のスピンを回転させるインバージョンパルスである。
【0054】
例えば、曲線25aに示されているように、領域非選択インバージョンパルス21がシーケンス制御回路120によってパルス印加領域46に印加された場合、縦磁化は、+M
zから−M
zに変化する。更に、曲線25bに示されているように、領域非選択インバージョンパルス21がシーケンス制御回路120によってパルス印加領域46以外の領域に印加されている場合、縦磁化も+M
zから−M
zに変化する。
【0055】
続いて、シーケンス制御回路120は、例えば、パルス印加領域46に対して、領域選択インバージョンパルス22を印加する(ステップS210)。曲線25aに示されるように、シーケンス制御回路120によってパルス印加領域46に領域選択インバージョンパルス22が印加される場合、パルス印加領域46の縦磁化は反転する。一方、曲線25bに示されているように、パルス印加領域46以外の領域については、領域選択インバージョンパルス22がシーケンス制御回路120によってパルス印加領域46に印加されても、縦磁化は変化しない。
【0056】
図2Bに示されているように、縦磁化は、時間が経過するにつれてゆっくりと回復する。シーケンス制御回路120はヌルポイント30付近まで待機する(ステップS220)。ヌルポイントは、パルス印加領域46以外の領域の縦磁化がゼロになる時刻である。
【0057】
この時、すなわち、データ収集期間10では、シーケンス制御回路120は、任意の2方向がラジアルで、3番目の方向がカーテシアンで、3次元収集を実行する(ステップ230)。このステップは、後ほど詳細に説明する。シーケンス制御回路120による、任意の2方向がラジアルで、3番目の方向がカーテシアンでの3次元収集に続いて、処理回路150は、画像を生成する(ステップ240)。
【0058】
図3Bにおいて、シーケンス制御回路120は、パルス印加領域46に対して、領域選択インバージョンパルス22を印加する。以前述べたように、パルス印加領域46は、動脈の上流領域になる。シーケンス制御回路120は、ヌルポイント30において(すなわち、データ収集期間10において)イメージング領域43にある動脈血パルスが、シーケンス制御回路120による領域選択インバージョンパルス22の印加タイミングにおいて、パルス印加領域46にある動脈血となるように、パルス印加領域46を、選択する。この条件が満たされた場合、ヌルポイント30においてイメージング領域43にある動脈血は、1回目に領域非選択インバージョンパルス21によって、2回目に領域選択インバージョンパルス22によって、縦磁化が2回反転した血液となる。かくして、縦磁化は非ゼロになり、データ収集期間10における信号は、顕著に描出される。
【0059】
一方、領域選択インバージョンパルス22の印加タイミングにおいてパルス印加領域46以外の領域にある血液に関しては、ヌルポイント30においてイメージング領域43にある血液は、縦磁化が1回、すなわち、領域非選択インバージョンパルス21により、反転した血液となる。従って、縦磁化は実質的にゼロになり、データ収集期間10における信号は、消える。
【0061】
「タグオン/タグオフ」法において、シーケンス制御回路120は、「タグオン」パルスシーケンス及び「タグオフ」パルスシーケンスの、二つのパルスシーケンスを実行する。処理回路150は、「タグオン」パルスシーケンスから得られた「タグオン」画像と、「タグオフ」パルスシーケンスから得られた「タグオフ」画像との間で差分処理を実行して、出力画像を収集する。
【0062】
大きく分けると、「タグオン/タグオフ」法には2種類ある。
【0063】
第1の方法では、シーケンス制御回路120は、「タグオン」パルスシーケンスに対して、領域選択インバージョンパルスを印加し、シーケンス制御回路120は、「タグオフ」パルスシーケンスに対しては、インバージョンパルスを印加しない。
【0064】
第2の方法では、シーケンス制御回路120は、「タグオン」パルスシーケンスに対して、領域選択インバージョンパルス及び領域非選択インバージョンパルスを印加し、シーケンス制御回路120は、「タグオフ」パルスシーケンスに対しては、領域非選択インバージョンパルスを印加する。
【0065】
以下では、
図2C、
図2D、
図3C及び
図4Cを参照しながら、前者の場合について説明する。続いて、
図4Dを用いて、後者の場合について説明する。
【0066】
図2Cの最上段は、「タグオフ」パルスシーケンスでの、印加されるRFパルス及びイメージングシーケンスが実行されるデータ収集期間について示している。横軸は時間を意味する。「タグオフ」パルスシーケンスでは、インバージョンパルスは印加されない。
図2Cのデータ収集期間10は、イメージングシーケンスが実行される、データ収集に適した期間を意味する。
【0067】
図2Cの最下段で、横軸は時刻を意味する。縦軸は縦磁化を意味する。曲線26aは、
後述する「タグオン」パルスシーケンスにおいて、領域選択インバージョンパルスが印加される領域の縦磁化を意味している。曲線26bは、「タグオン」パルスシーケンスにおいて、領域選択インバージョンパルスが印加されない領域の縦磁化を意味する。
【0068】
図2Dの最上段は、「タグオン」パルスシーケンスにおける、印加されるRFパルス及びイメージングシーケンスが実行されるデータ収集期間について示している。横軸は時刻を意味する。
【0069】
図2Dの最上段は、「タグオン」パルスシーケンスにおいて、印加されるRFパルス及びイメージングシーケンスが実行されるデータ収集期間について示している。横軸は時刻を意味する。領域選択インバージョンパルス23は、シーケンス制御回路120により印加される領域選択インバージョンパルスを意味する。
図2Dにおけるデータ収集期間10は、
図2Cと同様に、イメージングシーケンスが実行される、データ収集に適した期間を意味する。
【0070】
図2Dの最下段では、
図2Cと同様に、横軸は時刻を意味する。縦軸は縦磁化を意味する。曲線27aは、領域選択インバージョンパルス23が印加される領域の縦磁化を時刻の関数として表している。一方、曲線27bは、領域選択インバージョンパルス23が印加されない領域の縦磁化を意味する。
【0071】
図2Dのヌルポイント30は、曲線27bの縦磁化がゼロとなる時刻を意味している。
【0072】
図3Cに、「タグオン」腎臓イメージングの典型例が示されている。パルス印加領域47は、領域非選択インバージョンパルスが印加されている領域を表す。
図3Cのイメージング領域43は、データ収集が実行されている領域を表す。
【0073】
「タグオフ」腎臓イメージングでは、インバージョンパルスは印加されない。続く差分処理の便宜のため、「タグオフ」パルスシーケンスにおけるにおけるイメージング領域は、「タグオン」パルスシーケンスにおけるイメージング領域と同じ領域が選択される。
【0074】
図4Cは、「タグオン/タグオフ」Time−SLIP法の第1の方法の処理の手順について示したフローチャートである。「タグオン/タグオフ」Time−SLIP法では、シーケンス制御回路120は二つのパルスシーケンスを実行する。すなわち、「タグオフ」パルスシーケンスと、「タグオン」パルスシーケンスである。
【0075】
ステップS320AからステップS330Aは、「タグオフ」パルスシーケンスに係るステップである。ステップS300からステップS330Bは、「タグオン」パルスシーケンスに係るステップである。シーケンス制御回路120は、「タグオフ」パルスシーケンスの前に「タグオン」パルスシーケンスを実行してもよいし、その逆でもよい。シーケンス制御回路120は、「タグオフ」パルスシーケンス及び「タグオン」パルスシーケンスを、順番に、同時並列的に、あるいは同時に実行してもよい。
【0076】
この「タグオフ」パルスシーケンスでは、シーケンス制御回路120は、インバージョンパルスを印加しない。データ収集期間10においては、シーケンス制御回路120は、
図3Cのイメージング領域43で、任意の2方向がラジアルで、3番目の方向がカーテシアンで、3次元収集を実行する(ステップS320A)。このステップは、後ほど詳しく説明する。シーケンス制御回路120による、任意の2方向がラジアルで、3番目の方向がカーテシアンでの3次元収集の後、処理回路150は、「タグオフ」画像を生成する(ステップS330A)。
【0077】
「タグオン」パルスシーケンスでは、シーケンス制御回路120は、領域選択インバージョンパルスを印加する(ステップS300)。例えば、シーケンス制御回路120は、パルス印加領域47に対して、領域選択インバージョンパルス23を印加する。
【0078】
領域選択インバージョンパルス23がシーケンス制御回路120により印加された場合、曲線27aに示されているように、縦磁化は反転する。これに対して、曲線27bに示されているように、パルス印加領域47以外の領域については、縦磁化は変化しない。縦磁化は、時間の経過とともにゆっくりと回復する。シーケンス制御回路120は、ヌルポイント30付近になるまで待機する(ステップS310)。
【0079】
データ収集期間10において、シーケンス制御回路120は、任意の2方向がラジアルで、3番目の方向がカーテシアンで、3次元収集を実行する(ステップS320B)。このステップは、後ほど詳しく説明する。シーケンス制御回路120による、任意の2方向がラジアルで、3番目の方向がカーテシアンでの、3次元収集に続いて、処理回路150は、シーケンス制御回路120により収集されたデータに基づいて、タグオン画像を生成する(ステップS330B)。
【0080】
図3Cにおいて、シーケンス制御回路120は、パルス印加領域47に領域選択インバージョンパルス23を印加する。パルス印加領域47は、動脈の上流領域である。シーケンス制御回路120は、ヌルポイント30において(すなわち、データ収集期間10において)イメージング領域43にある動脈血が、シーケンス制御回路120による領域選択インバージョンパルス23の印加タイミングにおいて、パルス印加領域47にある動脈血となるように、パルス印加領域47を選択する。この条件が満足された場合、ヌルポイント30においてイメージング領域43にある動脈血は、縦磁化が領域選択インバージョンパルス23によって反転され、ヌルポイントでゼロになった血液となる。このようにして、データ収集期間10において、信号はゼロになる。
【0081】
一方、領域選択インバージョンパルス23の印加タイミングにおいてパルス印加領域47以外の領域にある血液については、データ収集期間10において信号は、非ゼロとなる。実際、領域選択インバージョンパルス23の印加タイミングにおいてパルス印加領域47以外の領域にある血液については、「タグオン」パルスシーケンスの信号は、「タグオフ」パルスシーケンスの信号と同じになる。
【0082】
シーケンス制御回路120による、任意の2方向がラジアルで、3番目の方向がカーテシアンでの、3次元収集に続いて、処理回路150は、シーケンス制御回路120によりステップS320Bにおいて収集されたデータに基づいて、「タグオン」画像を生成する(ステップS330B)。
【0083】
処理回路150によるステップS330Aでの「タグオフ」画像の生成及び、処理回路150によるステップS330Bでのタグオン画像の生成が完了すると、処理回路150は、「タグオフ」画像と「タグオン」画像との間で差分処理を実行して、出力画像を生成する(ステップS340)。
【0084】
以前説明したように、領域選択インバージョンパルス23の印加タイミングにおいてパルス印加領域47以外の領域にある血液については、「タグオン」パルスシーケンスの信号は、「タグオフ」パルスシーケンスの信号と同じになる。したがって、「タグオン」画像と「タグオフ」画像との差分を取るとゼロになる。
【0085】
しかしながら、領域選択インバージョンパルス23の印加タイミングにおいてパルス印加領域47にあり、ヌルポイント30においてイメージング領域43にある血液については、「タグオン」パルスシーケンスの信号は、「タグオフ」パルスシーケンスの信号と異なる。従って、領域選択インバージョンパルス23の印加タイミングにおいてパルス印加領域47にあり、ヌルポイント30においてイメージング領域43にある血液については、処理回路150の差分処理を行うことにより、選択的に描出される。
【0086】
まとめると、「タグオン/タグオフ」法の第1の方法においては、シーケンス制御回路120は、インバージョンパルスが印加されない「タグオフ」パルスシーケンスを実行する。シーケンス制御回路120は、インバージョンパルスを印加する「タグオン」パルスシーケンスを実行することにより、データ収集を実行する。処理回路150は、画像生成機能136により、「タグオン」パルスシーケンスのデータ収集に基づいて、第1の画像を生成する。処理回路150は、画像生成機能136により、「タグオフ」パルスシーケンスに基づいて、第2の画像を生成する。処理回路150は、画像生成機能136により、第1の画像と第2の画像との間で差分処理を実行して、第3の画像を生成する。
【0087】
次に、
図4Dを参照して、「タグオン/タグオフ」法の第2の方法について説明する。第1の方法と第2の方法との違いは、シーケンス制御回路120によって領域非選択インバージョンパルスが印加されるか否かである。第1の方法では、シーケンス制御回路120は、インバージョンパルスが印加されない「タグオフ」パルスシーケンスを実行する。一方、第2の方法では、シーケンス制御回路120は、領域非選択インバージョンパルスが印加される「タグオフ」パルスシーケンスを実行する。第1の方法では、シーケンス制御回路120は、領域選択インバージョンパルスが印加される「タグオン」パルスシーケンスを実行する。一方、第2の方法では、シーケンス制御回路120は、領域非選択インバージョンパルスが、領域選択インバージョンパルスに加えて印加される「タグオン」パルスシーケンスを実行する。処理回路150は、画像生成機能136により、「タグオン」パルスシーケンスのデータ収集に基づいて、第1の画像を生成する。処理回路150は、画像生成機能136により、「タグオフ」パルスシーケンスに基づいて、第2の画像を生成する。処理回路150は、画像生成機能136により、第1の画像と第2の画像との間で差分処理を行って、第3の画像を生成する。
【0088】
図4Dは、「タグオン/タグオフ」Time−SLIP法の第2の方法の処理の手続きについて示したフローチャートである。「タグオン/タグオフ」Time−SLIP法の第2の方法では、第1の方法と同様に、シーケンス制御回路120は、二つのパルスシーケンスを実行する。すなわち、「タグオフ」パルスシーケンス及び「タグオン」パルスシーケンスである。
【0089】
ステップS400AからステップS440Aは、「タグオフ」パルスシーケンスに係るステップである。ステップS400BからステップS440Bは、「タグオン」パルスシーケンスに係るステップである。シーケンス制御回路120は、「タグオフ」パルスシーケンスの前に「タグオン」パルスシーケンスを実行してもよいし、その逆でも良い。シーケンス制御回路120は、「タグオフ」パルスシーケンス及び「タグオン」パルスシーケンスを、順番に、同時並列的に、又は同時に実行してもよい。
【0090】
この「タグオフ」パルスシーケンスでは、シーケンス制御回路120は、領域非選択インバージョンパルスを実行する(ステップS400A)。シーケンス制御回路120は、ヌルポイント付近になるまで待機する(ステップS420A)。この状況は、今の場合は領域非選択インバージョンパルスが印加されているが、
図2Aと同様である。ここで、
図2Aでは、領域選択インバージョンパルス20が印加される。
【0091】
データ収集期間10で、シーケンス制御回路120は、任意の2方向がラジアルで、3番目の方向がカーテシアンで、3次元収集を実行する(ステップS430A)。このステップは、後ほどより詳細に説明する。シーケンス制御回路120による、任意の2方向がラジアルで、3番目の方向がカーテシアンでの、3次元収集に続いて、処理回路150は、「タグオフ」画像を生成する(ステップS440A)。
【0092】
「タグオン」パルスシーケンスでは、シーケンス制御回路120は領域非選択インバージョンパルスを印加する(ステップS400B)。続いて、シーケンス制御回路120は領域選択インバージョンパルスを印加する(ステップS410)。シーケンス制御回路120は、ヌルポイント30付近になるまで待機する(ステップS420B)。この状況は、
図2Bですでに示されたのと同様の状況である。
【0093】
データ収集期間10において、シーケンス制御回路120は任意の2方向がラジアルで、3番目の方向がカーテシアンで、3次元収集を実行する(ステップS430B)。このステップは、後ほど詳細に説明する。シーケンス制御回路120による、任意の2方向がラジアルで、3番目の方向がカーテシアンでの、3次元収集に続いて、処理回路150は、シーケンス制御回路120により収集されたデータに基づいて、タグオン画像を生成する(ステップS440B)。
【0094】
処理回路150によるステップS440Aにおける「タグオフ」画像の生成及び、処理回路150によるステップS440Bにおける「タグオン」画像の生成が完了すると、処理回路150は、「タグオフ」画像と「タグオン」画像との間で差分処理を実行して、出力画像を生成する(ステップS450)。
【0095】
続いて、
図5から
図10Bを参照しながら、シーケンス制御回路120による、任意の2方向がラジアルで、3番目の方向がカーテシアンでの、3次元収集について詳細に説明する。「フローイン」の場合、これは
図4AのステップS120に対応する。「フローアウト」の場合、これは
図4BのステップS230に対応する。「タグオン/タグオフ」の場合、これは
図4CのステップS330AからステップS330Bに対応する。
【0096】
図5は、第1の実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置により実行される処理を示した図である。
図5においては、任意の2方向がラジアルで、3番目の方向がカーテシアンでの、3次元収集についての全体像が可視化されている。
【0097】
データ収集期間10で、シーケンス制御回路120はイメージングシーケンスを実行するが、ここで、シーケンス制御回路120は、二次元k空間の中心を含んで、複数の方向でデータ収集を行う。この状況は
図5に示されている。
図5で、円盤それぞれは、k
x軸とk
y軸との2軸からなる二次元k空間での所定のスライス位置(またはz方向の位置)でのデータ収集を表している。直交する限り、x、y、z方向の選択は任意である。
【0098】
それぞれの円盤は、二次元k空間で異なる方向を有する複数の「ライン」からなる。例えば、k空間ライン50aは、方程式k
y=0で定義される方向のデータ収集を表す。k空間ライン50aは、また、A
1とも表記される。k空間ライン50b、k空間ライン50c、k空間ライン50d、k空間ライン50e、k空間ライン50f、k空間ライン50g、k空間ライン50hそれぞれは、方程式k
y=tan22.5*k
x, k
y=k
x, k
y=tan67.5*k
x , k
x=0, k
y=tan112.5*k
x, k
y=-k
x, k
y=tan157.5*k
xでそれぞれ定められる方向のデータ収集を表す。k空間ライン50b、k空間ライン50c、k空間ライン50d、k空間ライン50e、k空間ライン50f、k空間ライン50g、k空間ライン50hは、それぞれB
1、C
1、D
1、E
1、F
1、G
1及びH
1と表記される。k空間ライン50aからk空間ライン50hは、例えば、第1のスライス位置に係るk空間ラインである。一方、k空間ライン51a、k空間ライン51b、k空間ライン51c及びk空間ライン51dは、例えば、第1のスライス位置とは異なる第2のスライス位置に係るk空間ラインである。k空間ライン52a、k空間ライン52b、k空間ライン52c及びk空間ライン52dは、第3のスライス位置に係るk空間ラインである。k空間ライン53a、k空間ライン53b、k空間ライン53c、k空間ライン53dは、第4のスライス位置に係るk空間ラインである。k空間ライン51a、51b、51c、51d、52a、52b、52c、52d、53a、53b、53c及び53dは、A
2、B
2、C
2、D
2、A
3、B
3、C
3、D
3、A
4、B
4、C
4及びD
4とも表記される。
【0099】
図6Aは、第1の実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置により実行されるパルスシーケンスを示すパルスシーケンス図である。
図6Aでは、シーケンス制御回路120がr−bSSFP(radial balanced Steady State Free Precession)シーケンスを、データ収集期間10において実行する場合について説明する。すなわち、シーケンス制御回路120は、bSSFPシーケンス(例えばr−bSSFPシーケンス)をイメージングシーケンスとして実行する。
図6Aに示されているのは、データ収集期間10の間にシーケンス制御回路120によって実行されるイメージングシーケンスに関するもののみである。例えば
図2Aから
図2Dにあるように、領域選択インバージョンパルスや、任意的要素として領域非選択インバージョンパルスが印加される。
【0100】
印加されるべきインバージョンパルスの数を最小化するため、シーケンス制御回路120は、イメージングシーケンスの間、一つのRFパルスが複数のエコーを生成するような手法をしばしば採用する。生成される複数のエコーに対応して、シーケンス制御回路120は、k空間の複数のラインで、データ収集を実行することができる。
【0101】
説明の簡便のため、シーケンス制御回路120により、一度に4つのk空間ラインのデータ収集が実行される場合について説明する。
図6Aでは、k空間ライン60aは、0度の方角に対応するが、「ラインA」と表記されている。k空間ライン60bは、30度の方角に対応するが、「ラインB」と表記されている。k空間ライン60c及びk空間ライン60dのそれぞれは、60度及び90度の方角に対応するが、「ラインC」及び「ラインD」と表記されている。
【0102】
図6Aのパルスシーケンス図の最上段に、シーケンス制御回路120により印加されるRFパルスが示されている。
図6Aのパルスシーケンス図の2段目に、シーケンス制御回路120により印加されるスライス勾配G
ssが示されている。3段目に、シーケンス制御回路120により印加されるリードアウト勾配G
roが示されている。4段目に、シーケンス制御回路120により印加される位相エンコード勾配G
phが示されている。5段目に、RFパルスから生成されたエコー及び傾斜磁場が示されている。
【0103】
プリパルス62aは、r−bSSFPシーケンスの準備ステージにおいてシーケンス制御回路120により印加されるプレパルスである。α/2度RFパルス62bは、ダミーシーケンス61cの前にシーケンス制御回路120により印加されるRFパルスである。同時に、シーケンス制御回路120によって、スライスエンコード勾配63aがスライス選択のため印加される。ダミーシーケンス61cは、スライスエンコード勾配63bと共に、系が定常状態に達するようにするためにシーケンス制御回路120により印加される一連のRFパルスである。ダミーシーケンス61cの間、シーケンス制御回路120によりリードアウト勾配64aが印加される。データ収集には使用されないものの、ダミーシーケンス61cの間、エコー66aが生成される。系が定常状態に達するまで、例えばN回、RFパルス62c、スライスエンコード勾配63b、リードアウト勾配64aの印加が繰り返される。プリパルス62a、α/2度RFパルス62b及びダミーシーケンス61cは、イメージングシーケンスの準備ステージである準備シーケンス61aを構成する。
【0104】
系が定常状態に達した場合、シーケンス制御回路120がデータ収集を開始する準備が整う。データ収集シーケンス61bの中で、α度パルス62d、62f、62h及び例えば-α度パルス62e、62gが、シーケンス制御回路120により交互に印加される。スライスエンコード勾配63c、63d、63e、63f及び63gは、シーケンス制御回路120により、スライス選択のため、α度パルス或いは-α度パルスと同時に印加されるスライスエンコード勾配を表す。
【0105】
リードアウト勾配64bは、k空間ライン60a(あるいは「ラインA」)の収集中に、シーケンス制御回路120により印加されるリードアウト勾配を表す。期間61dは「ラインA」のデータ収集の期間を表す。エコー66bは、「ライン」のデータ収集に対応するエコーを表す。
【0106】
リードアウト勾配64c及びリードアウト勾配64dは、k空間ライン60b(あるいは「ラインB」)、k空間ライン60c(あるいは「ラインC」)の収集中に、シーケンス制御回路120により印加されるリードアウト勾配を表す。位相エンコード勾配65a、位相エンコード勾配65b及び位相エンコード勾配65cは、k空間ライン60b(あるいは「ラインB」)のデータ収集中に、k空間ライン60c(あるいは「ラインC」)のデータ収集及びk空間ライン60d(あるいは「ラインD」)のデータ収集中に、それぞれシーケンス制御回路120により印加される位相エンコード勾配を表す。期間61e、期間61f、期間61gは、それぞれ、「ラインB」、「ラインC」、「ラインD」のデータ収集の期間を表す。エコー66c、エコー66d、エコー66e及びエコー66fのそれぞれは、「ラインB」のデータ収集、「ラインC」のデータ収集、「ラインD」のデータ収集、その次のk空間ラインに係るデータ収集に対応するエコーをそれぞれ表している。
【0107】
図6Bは、第1の実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置により実行される処理の手続きを示したフローチャートである。
図6Bは、
図4AのステップS110、
図4BのステップS220、
図4CのステップS320A、
図4DのステップS430Aあるいは
図4DのステップS430Bを詳細に説明したフローチャートである。まずはじめに、シーケンス制御回路120は、プレパルスを印加する(ステップS10)。例えば、シーケンス制御回路120は
図6Aに示されるプリパルス62aを印加する。続いて、シーケンス制御回路120は、α/2度RFパルスを印加する。例えば、シーケンス制御回路120は、α/2度RFパルス62bを印加する。続いて、シーケンス制御回路120は、系が定常状態に達するように、データ収集の前に、ダミーシーケンスを実行する。例えば、シーケンス制御回路120は、ダミーシーケンス61cを実行する。
【0108】
準備シーケンス61aが完了すると、シーケンス制御回路120はデータ収集シーケンス61bに移る。データ収集シーケンス61bにおいては、生成されるエコーそれぞれについて、シーケンス制御回路120は、k空間ラインの方向(角度θ)を変えて収集を繰り返す(ステップS20)。例えば、k空間ライン60a(あるいはラインA)について、角度θは0度である。k空間ライン60b(あるいはラインB)について、角度θは30度である。k空間ライン60c(あるいはラインC)について、角度θは60度である。k空間ライン60d(あるいはラインD)について、角度θは90度である。
【0109】
エコーを生成するそれぞれのサイクルの初期に、シーケンス制御回路120は、α度パルス或いは-α度パルスを印加する。α度パルス及び-α度パルスは、運動量のバランスを保持するため、交互に印加される。シーケンス制御回路120は、同時に、スライスエンコード勾配G
ssをスライス選択のために印加する。例えば、シーケンス制御回路120は、ラインAのデータ収集の間、α度パルス62d及びスライスエンコード勾配63cを印加する。シーケンス制御回路120は、ラインBのデータ収集の間、-α度パルス62e及びスライスエンコード勾配63dを印加する。
【0110】
更に、それぞれのエコーについて、シーケンス制御回路120は、リードアウト勾配G
ro=Gcosθ及び位相エンコード勾配G
ph=Gsinθを同時に印加し、データを収集する。Gは、印加される勾配の有効強度である。
【0111】
例えば、ラインAのデータ収集の間、シーケンス制御回路120はGcos0°のリードアウト勾配64bを印加し、位相エンコード勾配は印加しない。ラインBのデータ収集の間、シーケンス制御回路120は、Gcos30°のリードアウト勾配64cを印加し、Gsin30°の位相エンコード勾配65aを同時に印加する。ラインCのデータ収集の間、シーケンス制御回路120は、Gcos60°のリードアウト勾配64dを印加し、Gsin60°の位相エンコード勾配65bを同時に印加する。ラインDのデータ収集の間、シーケンス制御回路120は、リードアウト勾配を印加せず、Gsin90°の位相エンコード勾配65cを同時に印加する。このように、相対強度をわずかに変化させながら二つの勾配を同時印加することで、シーケンス制御回路120は、二次元k空間における特定の方向のデータ収集を実行することができる。
【0112】
まとめると、シーケンス制御回路120は、インバージョンパルスを印加する。続いて、シーケンス制御回路120は、RFパルス(すなわちα度パルス62d)及び、RFパルスと共に同時並列的にスライス方向に印加される勾配磁場(すなわちスライスエンコード勾配63c)とを含んで、データ収集シーケンス61b(イメージングシーケンス)を実行する。シーケンス制御回路120は、RFパルス及び勾配磁場により選択されたスライス位置及びヌルポイント30を含む期間の間に、二次元k空間の中心を含んで複数の方向のデータ収集を実行する。
【0113】
図6Aでは、それぞれのエコーについて、データ収集の方向が30度ずつ異なると仮定した場合について説明した。しかしながら、これは説明の都合によるものにすぎない。実際には、例えば、典型的には128ライン又は256ラインのデータ収集が、一度に(一つのプレパルスで)行われても良い。
図6C、
図6D及び
図6Eに、この状況がより詳細に示されている。
【0114】
図6Cでは、128ラインが一度に収集される、「高―低―高」のデータ収集の場合のデータ収集方法が示されている。ここで、「高―低―高」データ収集とは、例えばk空間の原点を通るk空間ラインに沿ったデータ収集のように、データ収集が、「高」(k空間中心から離れたk空間位置)から開始されて実行され、「低」(k空間の中心付近)に移り、そして「高」へと移ることを意味する。
【0115】
図6Cにおいて、より詳細なデータ収集の前に、データ収集は、例えば、0度、30度、60度、90度、120度、150度及び180度で、実行される。それぞれのデータ収集について、シーケンス制御回路120は、対応する位相エンコード勾配及び対応するリードアウト勾配を、
図6Cに示されているように印加する。
【0116】
続いて、シーケンス制御回路120は、マトリクス数(収集されるべきラインの数)に応じて、それぞれのエコーごとに小さな角度だけ角度を増分しながら、その他のデータ収集を行う。
【0117】
別の例として、
図6Dに示されているように、シーケンス制御回路120は、最初から、0度から180度まで、エコーそれぞれに対して、小さな角度を少しずつ増分していってもよい。この場合、ライン数は128であるから、それぞれのエコーごとに増分されるべき角度は180/128度になる。
【0118】
図6Eに示されているように、UTEパルスシーケンスの場合、
図6Eに示されているように、シーケンス制御回路120は、0度から360度まで、それぞれのエコーごとに小さな角度だけ角度を増加させてもよい。これは、UTEパルスシーケンスにおいては、データ収集は典型的には、「低―高」のように実行されるからである。別の言い方をすると、データ収集はk空間の中心より始まり外側に向かって伸びていく。
図6Eの場合、ライン数は128であるので、それぞれのエコーについて増分されるべき角度は360/128度となる。
【0119】
これまで、一つのスライス位置に対して、一度に複数のk空間ラインについて、2次元ラジアル収集が実行される場合について説明した。すなわち、任意の2方向がラジアルで3番目の方向がカーテシアンでの3次元収集のうち、2次元ラジアルの一つのスライスについての収集が行われる場合について説明した。
図7A及び
図7Bを参照しながら、任意の2方向がラジアルで、3番目の方向がカーテシアンでの3次元収集(複数のスライスについての2次元ラジアル収集)について説明する。
【0120】
図7Aは、第1の実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置により実行される処理を示す図である。
図7Bは、第1の実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置により実行される処理を示す図である。
【0121】
図7Aにおいて、最上段は、シーケンス制御回路120により印加されたRFパルスを示す。インバージョンパルス70aは、シーケンス制御回路120により印加される第1の領域選択インバージョンパルスを表す。インバージョンパルス70b及びインバージョンパルス70cは、それぞれ第2の領域選択インバージョンパルス及び第3の領域選択インバージョンパルスを示す。簡単のため、「フローイン」法が採用された場合について説明する。しかしながら、この方法は、「フローアウト」法や「タグオン/タグオフ」法にも、直接的に適用できる。
【0122】
図7Aの2段目は、縦磁化の時間変化を意味する。ヌルポイント70dは、第1のインバージョンパルス70aの印加に対応するヌルポイントを表す。ヌルポイント70e及びヌルポイント70fのそれぞれは、第2のインバージョンパルス70b及び第3のインバージョンパルス70cそれぞれに対応するヌルポイントを表す。
図7Aの最下段は、データ収集期間を意味する。第1のデータ収集期間70gは、第1のインバージョンパルス70aに係るデータ収集期間を表す。第2のデータ収集期間70h及び第3のデータ収集期間70iは、それぞれ第2のインバージョンパルス70bに係るデータ収集期間及び第3のインバージョンパルス70cに係るデータ収集期間を表す。
【0123】
シーケンス制御回路120は、原則として、インバージョンパルス一つあたり(あるいは一つのペアのインバージョンパルスあたり)、一つのスライス位置のデータ収集を実行する。従って、例えば、シーケンス制御回路120は、第1のデータ収集期間70gの間、第1のスライス位置についてデータ収集を実行し、第2のデータ収集期間70hの間、第2のスライス位置についてデータ収集を実行し、第3のデータ収集期間70iの間、第3のスライス位置についてデータ収集を実行する。第1のスライス位置は、例えば、
図5のk空間ラインA
1からH
1のスライス位置である。第2のスライス位置は、例えば、k空間ラインA
2からD
2のスライス位置である。第3のスライス位置は、例えば、k空間ラインA
3からD
3のスライス位置である。
【0124】
図7Bに、それぞれのデータ収集期間に、シーケンス制御回路120がどのようにデータ収集を行うかが、明示的に示されている。
【0125】
シーケンス制御回路120は、第1のデータ収集期間70gにおいて、
図6Aに示されるような(
図7Bにおいて、「準備」と示されている)準備シーケンス61aを実行し、続いて
図5のk空間ラインA
1、B
1、C
1、D
1…のデータ収集を、この順で行う。シーケンス制御回路120は、第2のデータ収集期間70hの間、
図6Aに示されるような(
図7Bにおいて、「準備」と示されている)準備シーケンス61aを実行し、続いて
図5のk空間ラインA
2、B
2、C
2、D
2…のデータ収集を、この順で行う。シーケンス制御回路120は、第3のデータ収集期間70iの間、
図6Aに示されるような(
図7Bにおいて、「準備」と示されている)準備シーケンス61aを実行し、続いて
図5のk空間ラインA
3、B
3、C
3、D
3…のデータ収集を、この順で行う。
【0126】
シーケンス制御回路120は、RFパルスの周波数及びスライスエンコード勾配を制御することにより、スライス選択を行う。例えば、シーケンス制御回路120は、異なるスライス位置について異なる周波数のRFパルスを適用することにより、スライス選択を実行する。別の例として、シーケンス制御回路120は、データ収集の間スライスエンコーディングを行い、3次元ボリュームデータ収集を実行してもよい。
【0127】
図8A及び
図8Bでは、一つのインバージョンパルスあたり、一つのスライス位置の、二次元k空間平面全体のデータ収集が実行される場合が説明される。しかしながら、実施形態はこれに限られない。実際、シーケンス制御回路120は、全部で複数個のインバージョンパルスを印加して、一つのスライス位置についてのデータ収集を行ってもよい。
【0128】
図8Aは、第1の実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置により実行される処理を示す図である。
図8Bは、第1の実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置により実行される処理を示す図である。
【0129】
図8Aにおいて、最上段は、シーケンス制御回路120により印加されるRFパルスを表す図である。インバージョンパルス71a、インバージョンパルス71b及びインバージョンパルス71cのそれぞれは、シーケンス制御回路120によって印加される第1、第2及び第3の領域選択インバージョンパルスを表す。
【0130】
図8Aの2段目は、縦磁化の時間変化を意味する。ヌルポイント70d、ヌルポイント71e及びヌルポイント71fは、それぞれ、第1のインバージョンパルス71a、第2のインバージョンパルス71b及び第3のインバージョンパルス71cの印加に対応するヌルポイントを表す。
【0131】
図8Aの最下段は、データ収集期間を示す。第1のデータ収集期間71g、第2のデータ収集期間71h及び第3のデータ収集期間71iは、それぞれ第1のインバージョンパルス71a、第2のインバージョンパルス71b及び第3のインバージョンパルス71cに係るデータ収集期間を表す。
【0132】
シーケンス制御回路120は、合計で複数のインバージョンパルスを印加して一つのスライス位置のデータ収集を行う。例えば、シーケンス制御回路120は、第1のデータ収集期間71gの間、第1のスライス位置の第1のセグメントのデータ収集を実行し、第2のデータ収集期間71hの間、第1のスライス位置の第2のセグメントのデータ収集を実行し、第3のデータ収集期間71iの間、第2のスライス位置の第1のセグメントのデータ収集を実行する。第1のスライス位置と第2のスライス位置とは、例えば、それぞれ、
図5におけるk空間ラインA
1からH
1のスライス位置、k空間ラインA
2からD
2のスライス位置に対応する。第1のセグメントは、例えば、2次元k空間におけるk空間ラインA
1からD
1である。第2のセグメントは、例えば、2次元k空間におけるk空間ラインE
1からH
1である。
【0133】
図8Bに、シーケンス制御回路120がどのようにセグメント化を実行するかが明示的に示されている。
【0134】
シーケンス制御回路120は、第1のデータ収集期間71gにおいて、
図6Aに示されるような準備シーケンス61aを実行し、続いて
図5のk空間ラインA
1、B
1、C
1、D
1…のデータ収集を、この順で行う。シーケンス制御回路120は、第2のデータ収集期間71hの間、
図6Aに示されるような準備シーケンス61aを実行し、続いて
図5のk空間ラインE
1、F
1、G
1、H
1…のデータ収集を、この順で行う。シーケンス制御回路120は、第3のデータ収集期間71iの間、
図6Aに示されるような準備シーケンス61aを実行し、続いて
図5のk空間ラインA
2、B
2、C
2、D
2…のデータ収集を、この順で行う。
【0135】
実施形態は、これらの例に限られない。例えば、データ収集を加速するため、処理回路150は、UTE(Ultrashort Echo Time)シーケンスを、イメージングシーケンスとして採用して、任意の2方向がラジアルで、3番目の方向がカーテシアンでの、3次元収集を実行してもよい。
【0136】
図9Aは、第1の実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置により実行されるパルスシーケンスを示したパルスシーケンス図である。
図9Aでは、シーケンス制御回路120が、データ収集期間10の間、UTEシーケンスを実行する場合について説明する。
図9Aは、
図6Aのデータ収集シーケンス61bに対応するが、ここではRFパルスがハーフRFパルスに置き換えられている。
【0137】
図9Aにおいて、k空間ライン72a(「A」と表記されている)、k空間ライン72b(「B」と表記されている)、k空間ライン72c(「C」と表記されている)及びk空間ライン72d(「D」と表記されている)は、それぞれ、0度、30度、60度及び90度の方向に対応する。シーケンス制御回路120は、例えば、0度から360度までのデータ収集(「低―高」のデータ収集)を実行する。換言すると、シーケンス制御回路120は、例えば、Aからデータ収集を開始し、B、C、D,E、F、G、H、I、J、Kに移り、最後にLに到達し、全てのデータ収集が完了する。UTEパルスシーケンスでは、データ収集がk空間の中心から開始された場合、エコー時間が劇的に減少する。従って、データ収集は、中心から開始されるのが望ましい。
【0138】
最上段は、シーケンス制御回路120によって印加されるRFパルスを意味する。ハーフパルス73a、73b、73c及び73dは、シーケンス制御回路120によって印加されるハーフRFパルスを表す。三角形の形をしていることからわかるように、ハーフパルス73aは、例えば、所定の期間の間は信号強度がゆっくりと大きくなり、あるところで突然信号強度がゼロになるようなRFパルスである。この突然の信号強度の降下により、UTEシーケンス中で即時にエコーが作られ、この結果エコー時間は減少する。
【0139】
二段目は、シーケンス制御回路120によって印加されるスライスエンコード勾配G
ssを意味する。スライスエンコード勾配74a、74b、74c及び74dは、シーケンス制御回路120によって印加されるスライスエンコード勾配を表す。シーケンス制御回路120は、例えば、ハーフパルス73aと同時にスライスエンコード勾配74aを印加する。
【0140】
三段目は、シーケンス制御回路120によって印加されたリードアウト勾配G
roを意味する。リードアウト勾配75a、75b及び75cは、シーケンス制御回路120により印加されるリードアウト勾配を表す。リードアウト勾配75a、75b及び75cの強度は、それぞれ、G*cos(0°)、G*cos(30°)、G*cos(60°)である。シーケンス制御回路120によって印加されるリードアウト勾配は、例えば、データ収集の間は、一定値に達するまでは徐々に増加し、所定の期間、一定の強度を維持する。
【0141】
四段目は、シーケンス制御回路120によって印加される位相エンコード勾配G
phを意味する。位相エンコード勾配76b、76c及び76dは、シーケンス制御回路120によって印加される位相エンコード勾配を意味する。位相エンコード勾配76b、76c及び76dの強度は、それぞれ、G*sin(30°)、G*sin(60°)、G*sin(90°)である。シーケンス制御回路120によって印加される位相エンコード勾配は、例えば、データ収集の間は、一定値に達するまでは徐々に増加し、所定の期間、一定の強度を維持する。
【0142】
長方形78a、78b、78c及び78dは、k空間ライン72a、k空間ライン72b、k空間ライン72c及びk空間ライン72dがそれぞれ収集される期間を表す。
【0143】
五段目は、データ収集期間を意味する。データ収集期間77a、77b、77c及び77dのそれぞれは、データ収集が実際に実行されている期間を表している。
【0144】
図9Bは、第1の実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置により実行される処理の手続きについて示しているフローチャートである。
図9Bは、
図6BにおけるステップS20に対応する。
【0145】
データ収集シーケンスにおいて、エコーが生成されるたび、シーケンス制御回路120は、k空間ラインの方向(角度θ)を変化させて、データ収集を繰り返す。
【0146】
より具体的には、各方向ごとに、シーケンス制御回路120は、イメージングシーケンスの間、ハーフRFパルス及びスライスエンコード勾配G
ssを印加する(ステップS30)。例えば、シーケンス制御回路120はハーフパルス73a及びスライスエンコード勾配74aを印加する。続いて、シーケンス制御回路120は、リードアウト勾配G
ro=Gcosθ及び位相エンコード勾配G
ph=Gsinθを、最初は徐々に強度を増加させながら、続いて一定の強度に保ちながら、同時に印加し、データを収集する(ステップS35)。この状況は、
図9Aに示されている。
【0147】
実施形態はこのような状況に限られない。例えば、
図10Aにおいて示されているように、任意の2方向がラジアルで、3番目の方向がカーテシアンで、単純に3次元収集を実行する代わりに、シーケンス制御回路120は、イメージングシーケンスにおいて、カーテシアンサンプリングと、ラジアルサンプリングとの両方を実行してもよい。換言すると、シーケンス制御回路120は、任意の2方向がラジアルで、3番目の方向がカーテシアンでの3次元収集を、点状エンコーディング(Pointwise Encoding)シーケンスを採用したイメージングシーケンスに加えて実行し、更にデータ収集を加速させてもよい。
【0148】
別の例では、
図10Bに示されているように、シーケンス制御回路120は、一つの方向あたり複数回のデータ収集(JET収集)を行い、シーケンス制御回路120により得られたデータがモーションアーチファクトに対してより堅牢になるようにしてもよい。この場合、シーケンス制御回路120は、k空間の原点を含んで、複数の方向で、データ収集を実行する。
【0149】
図10Aでは、シーケンス制御回路120が一層(1スタック)分のPETRA収集を実行する場合が説明されている。
【0150】
図10Bでは、シーケンス制御回路120が一層(1スタック)分のJET収集を実行する場合が説明されている。
【0151】
なお、JET収集は、例えばFSE(Fast Spin Echo)法等から得られた、複数の束(又は「ブレード」)の収集エコーデータを回転させて画像を生成させ、k空間を充填する方法である。
図10Bに示されているように、シーケンス制御回路120は、1「ブレード」のデータ収集で、実質的に同じ方向で、複数回のデータ収集を実行する。シーケンス制御回路120は、典型的には、1「ブレード」のデータ収集での複数回のデータ収集を、複数回のデータ収集のうち、少なくとも一つのラインが、k空間の原点を通るように実行する。続いて、シーケンス制御回路120は、次の「ブレード」のデータ収集を、データ収集ラインを所定の角度だけk空間の原点の周りに回転させて実行する。一揃いの複数の「ブレード」のデータ収集は全体として、k空間の原点付近で密なサンプリングが行われたk空間データを構成し、このことで、モーションアーチファクトを補正することが可能になる。
【0152】
しかしながら、実施形態はこの状況だけに限られない。例えば、シーケンス制御回路120はマルチスライスの2次元PETRA収集を実行してもよい。更に、シーケンス制御回路120は、マルチスライスの2次元 JET収集を実行してもよい。
【0153】
様々なTime−SLIP法(すなわち、「フローイン」法、「フローアウト」法、及び「タグオン/タグオフ」法)及び任意の2方向がラジアルで、3番目の方向がカーテシアン(データ収集シーケンス)での、様々な3次元収集イメージングシーケンスが説明された。第1の実施形態にかかる磁気共鳴イメージング装置は、例えば、任意の2方向がラジアルで、3番目の方向がカーテシアンでの、3次元収集を含むが、それはTime−SLIP法のうちの少なくとも一つの中に組み込まれている。
【0154】
Time−SLIP法と、任意の2方向がラジアルで、3番目の方向がカーテシアンでの、3次元収集との特定の組み合わせに対応するいくつかの例を、更に説明する。
【0155】
図11は、第1の実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置により実行されるパルスシーケンスを示すパルスシーケンス図である。
図11では、「フローイン」法がTime−SLIP法として採用され、bSSFP法がイメージングシーケンスとして採用される場合について説明する。「フローイン」法のフローチャートである
図4Aのフローチャート及び、bSSFP法のフローチャートである
図6Bのフローチャートを参照しながら、説明が行われる。
【0156】
図11において、領域選択インバージョンパルス83aは、シーケンス制御回路120により印加された領域選択インバージョンパルスを意味する。曲線82bは、時刻の関数として、領域選択インバージョンパルス83aが印加されるスピンの縦磁化を表している。換言すると、曲線82bは、タグ領域の縦磁化を意味する。一方、曲線82aは、時刻の関数として、領域選択インバージョンパルス83aが印加されないスピンの縦磁化を表している。換言すると、曲線82aは、非タグ領域の縦磁化を意味する。ヌルポイント82cは、タグ領域の縦磁化がゼロになるヌルポイントを意味する。
【0157】
図11のパルスシーケンス図の最上段は、印加されるRFパルスを示している。シーケンス制御回路120は、領域選択インバージョンパルス83aを印加する。プレパルス83bは、シーケンス制御回路120によって印加され、イメージングシーケンスを開始するためのプレパルスを意味する。α/2度パルスが更に印加される。RFパルス83dは、ダミーシーケンスの間、シーケンス制御回路120によって印加されるα度パルスまたは-α度パルスを表す。RFパルス83e、RFパルス83n、RFパルス83jそれぞれは、シーケンス制御回路120によって印加されるα度パルスを表す。RFパルス83f、RFパルス83i及びRFパルス83kそれぞれは、シーケンス制御回路120によって印加される-α度パルスを表す。α度パルス及び-α度パルスは、bSSFPシーケンスにおいて、交互に印加される。
【0158】
図11におけるパルスシーケンス図の2段目は、印加されるスライスエンコード勾配G
ssを示している。スライスエンコード勾配84aは、α/2度パルスの印加と同時にシーケンス制御回路120によって印加されるスライスエンコード勾配である。スライスエンコード勾配84bは、ダミーシーケンスの間、RFパルス83dと同時にシーケンス制御回路120によって印加されるスライスエンコード勾配である。スライスエンコード勾配84e、84f、84h、84i、84j及び84kは、α度パルス又は-α度パルスと同時にシーケンス制御回路120により印加されるスライスエンコード勾配を表す。
【0159】
図11におけるパルスシーケンス図の最下段は、生成されるエコーを示す。エコー88cは、ダミーシーケンスの間生成されるエコーを表す。しかしながら、エコー88cはデータ収集には使われない。エコー88e、エコー88f、エコー88h、エコー88i及びエコー88jは、イメージングシーケンスの間、シーケンス制御回路120によって印加されるRFパルス及び勾配磁場によって生成されるエコーを表す。一つのインバージョンパルスに対して、複数のエコーが生成される。
【0160】
図11のパルスシーケンス図の三段目は、印加されるリードアウト勾配G
roを示している。リードアウト勾配85aは、領域選択インバージョンパルス83aと同時にシーケンス制御回路120によって印加されるリードアウト勾配を表す。リードアウト勾配85bは、ダミーシーケンスの間、シーケンス制御回路120によって印加されるリードアウト勾配を表す。リードアウト勾配85e、リードアウト勾配85f、リードアウト勾配85e、リードアウト勾配85f、リードアウト勾配85jは、それぞれ、エコー88e、エコー88f、エコー88h、エコー88i及びエコー88jが形成される期間の間、シーケンス制御回路120によって印加されるリードアウト勾配を表す。
【0161】
図11のパルスシーケンス図の四段目は、印加される位相エンコード勾配G
phを示している。位相エンコード勾配86aは、領域選択インバージョンパルス83aと同時にシーケンス制御回路120によって印加される位相エンコード勾配を表す。位相エンコード勾配86f、位相エンコード勾配86h、位相エンコード勾配86i、位相エンコード勾配86jは、それぞれ、エコー88f、エコー88h、エコー88i及びエコー88jが形成される期間の間、シーケンス制御回路120によって印加される位相エンコード勾配を表す。位相エンコード勾配及びリードアウト勾配は、イメージングシーケンスの間、シーケンス制御回路120により同時に印加される。
【0162】
以前説明したように、リードアウト勾配と位相エンコード勾配との相対的な振幅により、データ収集が実行される方向が決定づけられる。エコーが生成されるたび、シーケンス制御回路120は、イメージングが行われるべきk空間ラインの方向に応じて、位相エンコード勾配とリードアウト勾配との相対的強度を変化させながら、位相エンコード勾配及びリードアウト勾配を印加する。
【0163】
図11におけるパルスシーケンス図の五段目は、タグ領域等の位置や方向を微調整するためにシーケンス制御回路120に、任意的要素として印加される周波数オフセットΔfを示す。周波数オフセット87a、87b、87c、87d、87e、87f、87k、87i及び87jは、これらのタイミングにおいて、シーケンス制御回路120により任意的要素として印加される周波数オフセットを表す。
【0164】
図4Aのフローチャートを再び参照しながら、磁気共鳴イメージング装置100により行われる処理について説明する。
【0165】
はじめに、シーケンス制御回路120は、インバージョンパルスとして領域選択インバージョンパルスを印加する(ステップS100)。例えば、シーケンス制御回路120は、パルス印加領域44に対して、領域選択インバージョンパルス83aを印加する。
【0166】
タグ領域の縦磁化は、曲線82bに示されているように、時間が経過するとともに回復する。シーケンス制御回路120は、ヌルポイント82cになるまで待機する(ステップS110)。待機時間はTI(Inversion Time)と呼ばれ、
図11に示されている。
【0167】
ヌルポイント付近で、シーケンス制御回路120は任意の2方向がラジアルで、3番目の方向がカーテシアンで、3次元収集を実行する(ステップS120)。
【0168】
図6Bのフローチャートを参照しながら、このステップはより詳細に説明される。
【0169】
シーケンス制御回路120は、プレパルス83bを印加する(ステップS10)。続いて、シーケンス制御回路120は、α/2度RFパルスを印加する。例えば、シーケンス制御回路120は、系が定常状態に達するようにするために、データ収集の前に、ダミーシーケンスを実行する。
【0170】
準備シーケンスを完了すると、シーケンス制御回路120は、データ収集に移行する。生成されるそれぞれのエコーに対して、シーケンス制御回路120は、k空間ライン(角度θ)の向きを変えてデータ収集を繰り返す(ステップS20)。角度θは、例えば
図6Aに説明されている。
【0171】
エコーを生成するそれぞれのサイクルのはじめにおいて、シーケンス制御回路120はα度パルス又は−α度パルスを印加する。α度パルス及び−α度パルスは交互に印加される。シーケンス制御回路120は、スライス選択として、スライスエンコード勾配G
ssを同時に印加する。一例として、シーケンス制御回路120は、α度パルス83e及びスライスエンコード勾配84eを印加する。
【0172】
また、それぞれのエコーについて、シーケンス制御回路120は、リードアウト勾配G
ro=G cosθ及び位相エンコード勾配G
ph=Gsinθを同時に印加することにより、データを収集する。Gは、印加された傾斜磁場の実効的な振幅である。
【0173】
例えば、シーケンス制御回路120は、角度θが大きくなるにつれて印加されるリードアウト勾配の振幅を減少させながら、リードアウト勾配85e、85f、85h、85i及び85jを印加する。シーケンス制御回路120は、角度θが大きくなるにつれて位相エンコード傾斜磁場の振幅を増大させながら、位相エンコード勾配86f、86h、86i及び86jを印加する。
【0174】
シーケンス制御回路120による、任意の2方向をラジアルで、3番目の方向をカーテシアンで行う3次元収集が完了すると、処理回路150は、処理回路150により実行されたデータ収集パルスシーケンスに基づいて、画像を生成する(ステップS130)。
【0175】
図11に、任意の2方向をラジアルで、3番目の方向をカーテシアンで行う3次元収集を伴うbSSFPシーケンスが、「フローイン」Time−SLIP法に組み込まれている場合が説明されている。ラジアルの積層データ(stack-of-data)収集を用いたk空間中心の密なデータ収集が、造影剤を使わずに背景信号を除去するTime−SLIP法と組み合わせられることで、処理回路150により収集された画像が、モーションアーチファクトに対して堅牢となる。モーションアーチファクトは、例えば被検体の随意運動や、呼吸や心臓の動きなどの非随意運動から生じるアーチファクトである。「フローイン」法では、特定の領域に流入する新鮮な血液が描出される。一方で、「フローアウト」法では、第1の領域から流れ出てその後第2の領域へと流れ込む血液が描出される。前者は、腎臓イメージングなど、特定領域に流入する血液を描出する場合の基本となる選択肢であるのに対して、後者では、心臓から肺システムに流入する血液を描出するなど、血液の動力学を考慮して血液を描出する、高度な選択肢である。
【0176】
図12は、第1の実施形態による磁気共鳴イメージング装置により実行されるパルスシーケンスを示したパルスシーケンス図である。
図12において、磁気共鳴イメージング装置100の別の例が与えられている。
図12において、「フローアウト」法が、Time−SLIP法として採用されている。さらに、
図12において、
図11におけるbSSFPパルスシーケンスが、FASE(Fast Asymmetric Spin Echo)パルスシーケンスに置き換わっている。換言すると、シーケンス制御回路120は、イメージングシーケンスとして、FASEシーケンスを実行する。FASEシーケンスは、ハーフフーリエ法(部分フーリエ法)を用いて位相エンコードの数を減らすことにより、データ収集に必要とされるトータルでの時間を減らす、高速イメージングシーケンスである。部分フーリエ法は、k空間データが、エルミート対称性という所定の対称性を持つことを利用した撮像技術である。エルミート対称性により、k空間の原点を挟む鏡像画像は、収集されなくてもよく、その結果、bSSFPパルスシーケンスの代わりにFASEパルスシーケンスを用いることにより、トータルでのデータ収集時間が、大幅に減少する。
【0177】
図12において、領域非選択インバージョンパルス91a及び領域選択インバージョンパルス91bは、シーケンス制御回路120により印加された領域非選択インバージョンパルス及び、シーケンス制御回路120により印加された領域選択インバージョンパルスをそれぞれ意味する。曲線90a、曲線90bのぞれぞれは、時間の関数として、領域選択インバージョンパルス91bが印加される、及び領域選択インバージョンパルス91bが印加されない、スピンの縦磁化を表している。換言すると、曲線90a及び曲線90bは、それぞれタグ領域と非タグ領域を示している。
【0178】
図12のパルスシーケンス図の最上段は、印加されるRFパルスを示している。シーケンス制御回路120は、領域非選択インバージョンパルス91aを、次に領域選択インバージョンパルス91bを印加する。RFパルス91cは、イメージングシーケンスを開始するための、シーケンス制御回路120により印加される90度パルスを示している。RFパルス91d、RFパルス91e、RFパルス91f及びRFパルス91gのそれぞれは、シーケンス制御回路120により印加される180度パルスを示している。
【0179】
図12のパルスシーケンス図の2段目は、印加されるスライスエンコード勾配G
ssを示している。スライスエンコード勾配92c、92d、92d、92e及び92gは、シーケンス制御回路120によって印加されるスライスエンコード傾斜磁場を表している。スライスエンコード93a、93b、93c、93d、93f及び93gは、スライスエンコードを表している。
【0180】
図12のパルスシーケンス図の最下段は、生成されるエコーを示している。エコー98d、98e、98f及び98gは、生成されるエコーを表している。bSSFPシーケンスの場合と同様に、一つのインバージョンパルスあたり複数のエコーが生成される。
【0181】
図12のパルスシーケンス図の3段目は、印加されるリードアウト勾配G
roを示している。リードアウト勾配94aは、領域選択インバージョンパルスの印加と同時に、シーケンス制御回路120により印加されるリードアウト傾斜磁場を示している。リードアウト勾配94b、94d、95e、95f及び95gは、シーケンス制御回路120により印加されるリードアウト傾斜磁場を示す。
【0182】
図12のパルスシーケンス図の4段目は、印加される位相エンコード勾配G
phを示す。位相エンコード勾配96aは、シーケンス制御回路120により領域選択インバージョンパルスと同時に印加される位相エンコード傾斜磁場を表す。位相エンコード勾配96e、96f及び96gは、シーケンス制御回路120により印加される位相エンコード傾斜磁場を示す。
【0183】
リードアウト勾配と、位相エンコード勾配は、エコーが形成される時期において、シーケンス制御回路120により同時に印加される。リードアウト勾配と位相エンコード勾配の相対振幅により、データ収集が実行される方向が指定される。エコーが生成されるたび、シーケンス制御回路は、撮像が行われるk空間ラインの向きに応じて、位相エンコード勾配とリードアウト勾配との間の相対振幅を変化させながら、位相エンコード勾配及びリードアウト勾配を印加する。加えて、FASEパルスシーケンスでは、シーケンス制御回路120は、k空間の半分のみでデータ収集を実行する。
【0184】
図12のパルスシーケンス図の5段目は、位置やタグ領域の向きなどの微調整を行うためにシーケンス制御回路120により任意的に印加される周波数オフセットΔfを示す。周波数オフセット97a、97b、97d、97e、97f及び97gは、示されているタイミングでシーケンス制御回路120により任意的に印加される周波数オフセットを示している。
【0185】
図4Bのフローチャートを参照し、磁気共鳴イメージング装置100により実行される処理について説明する。
【0186】
はじめに、シーケンス制御回路120は領域非選択インバージョンパルスを印加する((ステップS200)。例えば、シーケンス制御回路120は、パルス印加領域45に対して、領域非選択インバージョンパルス91aを印加する。
【0187】
続いて、シーケンス制御回路120は、例えば領域選択インバージョンパルス91cをパルス印加領域46に印加する(ステップS210)。時間が経つにつれ、縦磁化が徐々に回復する。シーケンス制御回路120は、ヌルポイントが近付くまで待機する(ステップS220)。シーケンス制御回路120は、任意の2方向がラジアルで、3番目の方向がカーテシアンで、3次元収集を実行する(ステップS230)。
【0188】
このステップをより詳細に説明する。シーケンス制御回路120は、90度パルスであるRFパルス91bを印加する。続いて、シーケンス制御回路120はRFパルスを印加する(例えば、180度パルスであるRFパルス91d、91e、91f、91g)。形成されるそれぞれのエコーについて、シーケンス制御回路120は、k空間ラインの向き(角度θ)を変えてデータ収集を繰り返す。角度θは、例えば、
図6Aにおいて説明されている。スライスエンコード(スライスエンコード93a、93b、93c、93d、93e、93f、及び93g)が、それぞれのエコーに対して導入される。
【0189】
さらに、各エコーについて、シーケンス制御回路120は、リードアウト勾配G
ro=Gcosθ及び位相エンコード勾配G
ph=Gsinθを同時に印加し、データを収集する。Gは、印加される傾斜磁場の実効的な振幅である。
【0190】
例えば、シーケンス制御回路120は、角度θが大きくなるほど、リードアウト勾配の振幅を減らしながら、リードアウト勾配94d、95e、95f及び95gを印加する。シーケンス制御回路120は、角度θが大きくなるにつれて位相エンコード勾配の振幅を増加させながら、位相エンコード勾配96e、96f及び96gを印加する。FASEでは、k空間の半分のみ、データ収集が行われる。
【0191】
シーケンス制御回路120による任意の2方向をラジアルで、3番目の方向をカーテシアンで行う3次元収集に続いて、処理回路150は、画像生成機能136により、画像を生成する(ステップS240)。この時、処理回路150は、k空間のエルミート対称性の助けを借りて、シーケンス制御回路120により行われたデータ収集により収集されたk空間データに基づいて、データ点のないk空間データを補償する。
【0192】
図12で、任意の2方向をラジアルで、3番目の方向をカーテシアンで行う3次元収集によるFASEパルスシーケンスが、「フローアウト」Time−SLIP法の中に組み込まれる場合について説明する。FASEパルスシーケンスなど、ハーフフーリエ法の助けを借りることで、データ収集時間が、劇的に軽減される。加えて、FASEパルスシーケンスは、広い臨床応用性がある。例えば、FASEパルスシーケンスは、頸動脈プラークイメージングのための脆弱性評価等に適用できる。
【0193】
前述のように、信号補償の方法(Time−SLIP)及び3次元収集(2次元ラジアル+カーテシアン)により、非造影MRA(血流が明るく表示)が可能になる。プリパルスによる位置選択及び3Dイメージングの位置選択の組み合わせにより、暗信号血液画像(black blood image)のイメージングを行うことができ、プラークイメージングに役立てることができる。例えば、胸に印加された領域選択タグプリパレーションパルスは、暗い血液としてマーキングされ頸脈へと運ばれ、TI時間だけ待った後、暗信号血液画像として描出される。
【0194】
次に、
図13A、13B及び13Cについて説明する。これらの図では、「タグオン/タグオフ」法が用いられる。イメージングシーケンス中、例えばラジアルbSSFPパルスシーケンスが用いられる。心位相に対して鋭敏な場合には、ECGゲーティングが用いられる。
【0195】
図13Aに、「タグオン/タグオフ」Time−SLIP法と組み合わせたECG(心電図)ゲーティングが説明されている。
【0196】
心臓撮影では、心臓は常に動いており、これによりMRI画像にモーションアーチファクトが生じる。加えて、R−R間隔そのものも時々刻々と変化する。しかしながら、ECGゲーティング技術を用いることにより、モーションアーチファクトが軽減される。ここで、ECGゲーティングとは、インバージョンパルスの印加タイミングを、R波と同期させることを意味する。
【0197】
典型的には、被検体PのR波が際立つような所定の配置で、ECG電極が被検体の胸に配置される。シーケンス制御回路120は、電極から電気信号を読み取り、電気信号に基づいて、後述する処理を行う。典型的には、シーケンス制御回路120は、心臓の動きが最小である拡張期においてデータ収集を行う。
【0198】
図13Aに、被検体の心電図が示されている。R波200a、200b、200c、200d及び200eのそれぞれは、心周期のうちR波を表す。タグオフパルスシーケンス期間201aは、シーケンス制御回路120が「タグオフ」パルスシーケンスを実行している期間を表す。タグオンパルスシーケンス期間201bは、シーケンス制御回路120が「タグオン」パルスシーケンスを実行している期間を表す。シーケンス制御回路120は、R波のタイミングを、パルスシーケンス開始のタイミング(「タグオン」パルスシーケンスまたは「タグオフ」パルスシーケンス)と電気的に同期する。
【0199】
図13Bは、第1の実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置100により実行されるパルスシーケンスを示すパルスシーケンス図である。
図13Bでは、「タグオフ」パルスとbSSFPデータ収集シーケンスとを組み合わせる例について説明する。
【0201】
図13Bのパルスシーケンス図の最上段は、印加されるRFパルスを示している。「B」で示されるパルスは、シーケンス制御回路120により、任意的に印加される領域非選択インバージョンパルスを表す。
【0202】
パルス202a(「A」で示されている)は、仮に「タグオン」パルスシーケンスであったと仮定した場合、印加されていたはずの領域選択インバージョンパルスを表す。実際には、これは「タグオフ」パルスシーケンスであるから、パルス202aは、実際にはシーケンス制御回路120には印加されない。パルス202aは、
図13Bに示される、TI(Time to Inversion)の計測の原点を単に示すものに過ぎない。α/2度パルス202cは、印加されるα/2度パルスを表す。RFパルス202dは、ダミーパルスシーケンス中、シーケンス制御回路120により印加されるRFパルスを表す。α度パルス202e、202g、202i及び−α度パルス202f、202h、202iは、イメージングシーケンス中、シーケンス制御回路120により印加されるRFパルスを表す。
【0203】
図13Bのパルスシーケンス図の第2段目は、印加されるスライスエンコード勾配G
ssを表す。スライスエンコード勾配203c及びスライスエンコード勾配203dは、パルスシーケンスの準備ステージにおいて、シーケンス制御回路120により印加されるスライスエンコード傾斜磁場である。スライスエンコード勾配203e、203f、203g、203h、203i及び203jは、α度パルス又は−α度パルスと同時に、シーケンス制御回路120により印加されるスライスエンコード傾斜磁場を表す。
【0204】
図13Bのパルスシーケンスの最下段は、生成されるエコーを示している。エコー207dは、ダミーシーケンス中に生成されるエコーを表す。エコー207e、207f、207g、207h及び207iは、イメージングシーケンス中、シーケンス制御回路120によって印加されたRFパルス及び傾斜磁場により生成されたエコーを表す。一つのインバージョンパルスあたり、複数のエコーが生成される。
【0205】
図13Bのパルスシーケンス図の第3段目は、印加されるリードアウト勾配G
roを示している。リードアウト勾配204dは、ダミーシーケンス中、シーケンス制御回路120により印加されるリードアウト傾斜磁場を表す。リードアウト勾配204e、204f、204g、204h、204iは、イメージングシーケンス中、シーケンス制御回路120により印加されるリードアウト傾斜磁場を表す。
【0206】
図13Bにおけるパルスシーケンス図の第4段目は、印加される位相エンコード勾配G
phを表す。位相エンコード勾配205f、205g、205h及び205iは、イメージングシーケンス中、シーケンス制御回路120により印加される位相エンコード傾斜磁場を表す。
【0207】
図13Bのパルスシーケンス図の第5段目は、タグ領域等の位置や方向を微調整するためにシーケンス制御回路120により任意的に印加される周波数オフセット傾斜磁場Δfを示す。周波数オフセット206c、206d、206e、206g、206h,206i及び206jは、シーケンス制御回路120により任意的に印加される周波数オフセットを表す。
【0208】
図13Cにおいて、「タグオフ」パルスシーケンスとbSSFPデータ収集シーケンスを組み合わせた例が説明されている。
【0209】
最上段はECG信号を示す。最上段、2段目、3段目、4段目、5段目、最下段は、そぞれRFパルス、スライスエンコード勾配G
ss、リードアウト勾配G
ro、位相エンコード勾配G
pe、任意的に印加される周波数オフセットΔf及びエコーを表す。
【0210】
領域選択インバージョンパルス210a(「A」で示されている)は、シーケンス制御回路120により印加される領域選択インバージョンパルスを表す。リードアウト勾配242a、位相エンコード勾配243aは、それぞれ、シーケンス制御回路120により印加されるリードアウト傾斜磁場及び位相エンコード傾斜磁場を表す。
【0211】
領域選択インバージョンパルス210a(及びリードアウト勾配242a、位相エンコード勾配243a)を除き、
図13Cと
図13Bは同じである。例えば、
図13Cにおけるα/2度パルス210c、α度パルス210d、α度パルス210e、210g、210i、−α度パルス210f、210h、210j、スライスエンコード勾配211c、211d、211e、211f、211g、211h、211i、211j、リードアウト勾配212d、212e、212f、212g、212h、212g、212h、212i、位相エンコード勾配213f、213g、213h、213i、周波数オフセット214c、214d、214e、214f、214g、214h、214i、214j、エコー215d、215e、215f、215g、215h及び215iは、それぞれ、α/2度パルス202c、RFパルス203d(α度パルス)、α度パルス202e、202g、202i、−α度パルス202f、202h、202j、スライスエンコード勾配203c、203d、203e、203f、203g、203i、203j、リードアウト勾配204d、204e、204f、204g、204h及び204i、位相エンコード勾配205f、205g、205h、205i、周波数オフセット206c、206d,206e、206f、206g、206h、206i及び206j、エコー207d、207e、207f、207g、207h及び207iに対応する。
【0212】
図14は、第1の実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置の実行する処理について示した図である。
図14では、処理回路150により実行されるデータ処理方向について、詳細に説明する。
【0213】
図14で、矢印250a、250c及び250eのそれぞれは、
図13Bに示される「タグオフ」パルスシーケンスが開始される時刻を示している。矢印250b及び250dは、
図13Cに示される「タグオン」パルスシーケンスが開始される時刻を示している。データ収集期間251a及びデータ収集期間251cのそれぞれは、
図13Bに示される「タグオフ」パルスシーケンス中、シーケンス制御回路120により実行されるデータ収集が実行される期間を表す。データ収集期間251b及びデータ収集期間251dそれぞれは、
図13Cに示される「タグオン」パルスシーケンス中、シーケンス制御回路120により、データ収集が実行される期間を表す。
【0214】
k空間タグオフ画像212aは、シーケンス制御回路120により実行される「タグオフ」パルスシーケンスにより得られたデータに基づいて処理回路150により生成されたk空間データを表す。k空間タグオン画像212bは、シーケンス制御回路120により実行された「タグオン」パルスシーケンスから得られたデータに基づいて処理回路150により生成されたk空間画像を表す。
【0215】
タグオフ画像213aは、処理回路150により、k空間タグオフ画像212aから再構成された画像を表す。タグオン画像213bは、処理回路150により、k空間タグオン画像212bから再構成された画像を表す。出力画像213cは、画像差分処理により、タグオフ画像213a及びタグオン画像213bから得られた画像である。処理回路は差分処理を実行する。心筋の血液214aは、出力画像213cにより描出される。
【0216】
図4Cを参照し、磁気共鳴イメージング装置100により実行される処理について説明する。
【0217】
シーケンス制御回路120は、二つのパルスシーケンスを実行する。シーケンス制御回路120は、タグオフパルスシーケンス期間201aにおいて、
図13Bに示される「タグオフ」パルスシーケンスを実行し、タグオンパルスシーケンス期間201bにおいて、
図13Cに示される「タグオン」パルスシーケンスを実行する。
【0218】
「タグオフ」パルスシーケンスにおいて、シーケンス制御回路120は、インバージョンパルスを印加しない。データ収集期間10において、シーケンス制御回路120は任意の2方向をラジアルで、3番目の方向をカーテシアンで行う3次元収集を行う(ステップS320A)。このステップは
図11で説明したのと同様であるので、説明の繰り返しは省略する。
【0219】
シーケンス制御回路120により任意の2方向をラジアルで、3番目の方向をカーテシアンで行う3次元収集に続き、処理回路150は「タグオフ」画像を生成する(ステップS330A)。
【0220】
具体的には、処理回路150は、複数のデータ収集期間で収集された複数のデータ片を拾い集めて、k空間タグオフ画像を生成する。例えば、画像生成機能136により、処理回路150は、データ収集期間251a、251c及び251eにおいて収集された複数のデータ片を収集し、k空間タグオフ画像212aを生成する。続いて、処理回路150は、フーリエ変換等、k空間タグオフ画像に対して再構成処理を実行して、タグオフ画像を生成する。例えば、画像生成機能136により、処理回路150はk空間タグオフ画像212aに対してフーリエ変換を実行して、タグオフ画像213aを生成する。
【0221】
「タグオン」パルスシーケンスに関して、シーケンス制御回路120は領域選択インバージョンパルスを印加する(ステップS300)。例えば、シーケンス制御回路120は領域選択インバージョンパルス202aを実行する。
【0222】
シーケンス制御回路120はヌルポイントになるまで待機する(ステップS310)。データ収集期間中、シーケンス制御回路120は、任意の2方向をラジアルで、3番目の方向をカーテシアンで行う3次元収集を行う(ステップS320B)。任意の2方向をラジアルで、3番目の方向をカーテシアンで行う3次元収集の後、処理回路150は、シーケンス制御回路120により収集されたデータに基づいて、タグオン画像を生成する(ステップS330B)。
【0223】
例えば、処理回路150は複数のデータ収集期間において収集された複数のデータ片を拾い集めて、k空間タグオン画像を生成する。例えば、画像生成機能136により、処理回路150は、データ収集期間211b及び211dに収集された複数のデータ片を集め、k空間タグオン画像212bを生成する。かかる後、処理回路150はk空間タグオン画像に対してフーリエ変換等の再構成処理を行い、タグオン画像213bを生成する。例えば、画像生成機能136により、処理回路150は、k空間タグオン画像212bに対してフーリエ変換を実行し、タグオン画像213bを生成する。
【0224】
処理回路150によるステップS330Aにおける「タグオフ」画像213aの生成、及び処理回路150によるステップS330Bにおける「タグオン」画像213bの生成が終わると、処理回路150は、「タグオフ」画像213a及び「タグオン」画像213bとの間で差分処理を行って、出力画像213cを生成する(ステップS340)。
【0225】
図13Aから
図14まで、ECGゲーティングと「タグオン/タグオフ」法が組み合わせられた例について説明する。「タグオン/タグオフ」法は、流体の動きが遅い場合、又は背景信号の完全な除去を実現したい場合に特に役に立つと考えられている。さらに、ECGゲーティングは、モーションアーチファクトの更なる抑制を可能にする。
【0227】
図13Aにおいて、シーケンス制御回路120がECGゲーティングを行う場合について説明した。しかしながら、実施形態はこのような状況に限られない。例えば、シーケンス制御回路120は、呼吸同期ゲーティングを実行してもよい。別の例として、シーケンス制御回路120はECGゲーティングと呼吸同期ゲーティングとの両方を実行してもよい。
【0228】
まとめると、第1の実施形態における磁気共鳴イメージング装置100においては、造影剤を使わず、背景信号を除去する方法であるTime−SLIP法と、ラジアル積層データ(stack-of-data)収集を用いたk空間中心の密なデータ収集とを組み合わせることにより、処理回路150に収集される画像が、モーションアーチファクトに対して堅牢性を持つ。更に、積層星型(stack-of-star)収集により、素早いデータ収集が可能になる。
【0229】
(第2の実施形態)
第1の実施形態では、シーケンス制御回路120が、イメージングシーケンス中、(シーケンシャル(順番通りの))ラジアル積層星型収集(任意の2方向をラジアルで、3番目の方向をカーテシアンで行う3次元収集)を行う場合について説明した。第2の実施形態では、シーケンス制御回路120が、イメージングシーケンス中、インターリーブ(はさみこみの)ラジアルサンプリングを行う場合について説明する。シーケンシャルラジアル積層星型サンプリング(任意の2方向をラジアルで、3番目の方向をカーテシアンで行う3次元収集)と比較して、インターリーブラジアルサンプリングは、モーションアーチファクトに対して堅牢であるという利点を有する。
【0230】
図15Aは第2の実施形態における磁気共鳴イメージング装置により実行される処理を示した図である。
図15Aは、インターリーブラジアルサンプリングの例を示している。
【0231】
図15Aにおいて、各円板は、k
x軸とk
y軸との2つの軸からなる2次元k空間での、与えられたスライス位置(z方向の位置)のデータ収集を表している。x、y、z方向の選択は、それらが直交する限り任意である。
【0232】
図5と同様に、各円板は、二次元k空間の異なる向きを持つ複数の「直線」からなる。k空間ライン54a(A
1)及びk空間ライン54b(B
1)それぞれは、第1のスライス位置に係る第1のスライスの第1のセグメントに係るk空間ラインを表す。k空間ライン54c(C
1)及びk空間ライン54d(D
1)それぞれは、第2のスライス位置に係る第2のスライスの第1のセグメントに係るk空間ラインを表す。k空間ライン54e(E
1)及びk空間ライン54f(F
1)それぞれは、第1のスライス位置に係る第3のスライスの第1のセグメントに係るk空間ラインを表す。k空間ライン54g(G
1)及びk空間ライン54h(H
1)それぞれは、第4のスライス位置に係る第4のスライスの第1のセグメントに係るk空間ラインを表す。
【0233】
同様にして、k空間ライン55a(A
2)及びk空間ライン55b(B
2)は、第1のスライスにおける第2のセグメントに係るk空間ラインを表す。k空間ライン56a(A
3)及びk空間ライン56b(B
3)は、第1のスライスにおける第3のセグメントに係るk空間ラインを表す。A
4及びB
4それぞれは、第1のスライスの第4のセグメントを表す。
【0234】
同様に、k空間ライン54c(C
1)、k空間ライン54d(D
1)、k空間ライン55d(D
2)、k空間ライン56d(D
3)及びD
4は、第2のスライスにおける第1のセグメント、第2のセグメント、第3のセグメント、第4のセグメント、第1のセグメント、第2のセグメント、第3のセグメント、第4のセグメントをそれぞれ表す。
【0235】
k空間ライン54e(E
1)、k空間ライン55e(E
2)、k空間ライン56e(E
3)、E
4、k空間ライン54f(F
1)、k空間ライン55f(F
2)、F
3及びF
4は、第3のスライスの、それぞれ、第1のセグメント、第2のセグメント、第3のセグメント、第4のセグメント、第1のセグメント、第2のセグメント、第3のセグメント、第4のセグメントを表す。k空間ライン54g(G
1)、k空間ライン55g(G
2)、k空間ライン56g(G
3)、G
4、k空間ライン54h(H
1)、k空間ライン55h(H
2)、k空間ライン56h(H
3)及びH
4は、第4のスライスの、それぞれ、第1のセグメント、第2のセグメント、第3のセグメント、第4のセグメント、第1のセグメント、第2のセグメント、第3のセグメント、第4のセグメントを表す。
【0236】
図15Bは、第2の実施形態における磁気共鳴イメージング装置の実行する処理を示した図である。
図15Bにおいて、シーケンス制御回路120は、インターリーブラジアルサンプリングを行う。インバージョンパルス220a、インバージョンパルス220b、インバージョンパルス220c、インバージョンパルス220d、インバージョンパルス220eは、それぞれ、シーケンス制御回路120により実行される、第1、第2、第3、第4及び第5のデータ収集に対応するインバージョンパルスを表す。ヌルポイント221a、ヌルポイント221b、ヌルポイント221c、ヌルポイント221d、ヌルポイント221eは、それぞれ、第1、第2、第3、第4及び第5のデータ収集において、縦磁化が実質的にゼロになるヌルポイントを表す。
【0237】
シーケンス制御回路120は、インバージョンパルス220aを印加し、第1のデータ収集の間、ヌルポイント221aに近づくまで待機する。シーケンス制御回路120は、例えば、第1のデータ収集期間222aの間、第1のスライスの第1のセグメントのデータ収集を行う。シーケンス制御回路120は、第1のスライスの第1のセグメントのデータ収集において、
図15Aのk空間ラインA
1及びB
1のデータ収集を行う。
【0238】
続いて、シーケンス制御回路120は、インバージョンパルス220bを印加し、第2のデータ収集の間、ヌルポイント221bに近づくまで待機する。シーケンス制御回路120は、例えば、第2のデータ収集期間222bの間、第2のスライスの第1のセグメントのデータ収集を行う。シーケンス制御回路120は、第2のスライスの第1のセグメントのデータ収集で、
図15Aのk空間ラインC
1及びD
1のデータ収集を行う。同様に、シーケンス制御回路120は、第3のデータ収集期間222cの間、第3のスライスの第1のセグメントのデータ収集で、例えば
図15Aのk空間ラインE
1及びF
1のデータ収集を行う。続いて、シーケンス制御回路120は、第4のデータ収集期間222dの間、第4のスライスの第1のセグメントのデータ収集で、例えば
図15Aのk空間ラインG
1及びH
1のデータ収集を行う。
【0239】
「第1のセグメント」のデータ収集が完了すると、シーケンス制御回路120は、第5のデータ収集期間222eの間、第1のスライスの第2のセグメントのデータ収集、例えば
図15Aのk空間ラインA
2及びB
2のデータ収集に移る。その後、シーケンス制御回路120は、第6のデータ収集期間の間で、
図15Aのk空間ラインC
2及びD
2のデータ収集を、第7のデータ収集期間の間で、
図15Aのk空間ラインE
2及びF
2のデータ収集を、第8のデータ収集期間の間で、
図15Aのk空間ラインG
2及びH
2のデータ収集を行う。このように、シーケンス制御回路120は、「第2のセグメント」のデータ収集を行う。
【0240】
インターリーブラジアルサンプリングは、モーションアーチファクトに対して堅牢である。比較として、
図5に示されるシーケンシャルラジアルサンプリングでは、第1のスライス位置(
図5のA
1からH
1)に係るk空間ラインとして、データ収集は一度に行われる。従って、第1のスライス位置のデータ収集が行われている間にもし患者の動きが起こった場合、第1のスライス位置のデータは劣化する。
【0241】
しかしながら、
図15Aに示されるようなインターリーブラジアルサンプリングでは、第1のスライス位置に係るk空間ライン(
図15AのA
1からH
1)について、データ収集が複数回行われる。例えば、A
1及びB
1、これらは第1のセグメントに係るものであるが、第1の期間に収集される。例えば、A
2及びB
2、これらは第2のセグメントに係るものであるが、第2の期間に収集される。A
3及びB
3は第3の期間で収集され、A
4及びB
4は第4の期間で収集される。従って、もし第1のスライス位置のデータ収集が行われているこれらの期間のうちいずれかで患者の動きがあった場合でも、他の3つの期間のデータは無事のままである。従って、第1のスライス位置のデータは、劣化の度合いがより少ない。換言すると、インターリーブラジアルサンプリングでは、データは一極集中化せず、従ってモーションアーチファクトに対して堅牢である。
【0242】
(第3の実施形態)
第1の実施形態では、Time−SLIP法と、任意の2方向をラジアルで、3番目の方向をカーテシアンで行う3次元収集とが組み合わされた場合について説明した。第2の実施形態では、インターリーブラジアルサンプリングを使うことにより、モーションアーチファクトが抑制される場合について説明した。真の3次元ラジアルサンプリング(球状サンプリング)と比較して、任意の2方向をラジアルで、3番目の方向をカーテシアンで行う3次元収集は、収集パラメータが簡単に調整可能であるという点で利点がある。第3の実施形態では、処理回路150は、イメージングシーケンスの前に、任意の2方向をラジアルで、3番目の方向をカーテシアンで行う3次元収集のパラメータを最適化する。
【0243】
シーケンシャルラジアル積層星型サンプリング(任意の2方向をラジアルで、3番目の方向をカーテシアンで行う3次元収集)においては、一つのインバージョンパルスで、二次元k空間全部の一つのスライスが収集される。一方、インターリーブラジアル積層星型サンプリングでは、データ収集が行われるためには、2次元k空間の一つのスライスに対して、複数のインバージョンパルスが必要となる。よって、シーケンシャルラジアル積層星型サンプリング(任意の2方向をラジアルで、3番目の方向をカーテシアンで行う3次元収集)は、データ収集時間という観点で有利である。
【0244】
一方で、第2の実施形態で説明したように、インターリーブラジアル積層星型サンプリング(任意の2方向をラジアルで、3番目の方向をカーテシアンで行う3次元収集)は、モーションアーチファクトに対する堅牢性という観点で有利である。
【0245】
この文脈で、第3の実施形態に係るシーケンス制御回路120は、インバージョンパルスの印加の前に、イメージングシーケンスにおいてインターリーブラジアルサンプリングとシーケンシャルラジアルサンプリングのどちらが実行されるべきかを、撮像が行われる流体の速度に基づいて決定する。この状況は、
図16に示されている。
図16は、第3の実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置により行われる処理について説明したフローチャートである。まずはじめに、処理回路150は、流速の値を収集する(ステップS40)。例えば、処理回路150は、操作者から、ターゲット血管の流速の値の入力を受け付ける。処理回路150から収集した流速の値がもし所定の閾値を上回った場合(ステップS41 Yes)、シーケンス制御回路120はデータ収集期間10中インターリーブラジアル収集を行う(ステップS42)。一方、処理回路150により収集された流速の値が所定の閾値を上回らなかった場合(ステップS41 No)、シーケンス制御回路120はデータ収集期間10中シーケンシャルラジアル収集を行う(ステップS43)。上記のいずれかの方法でのラジアル収集が完了すると、処理回路150は、画像生成機能136により、画像を生成する(ステップS50)。
【0246】
シーケンス制御回路120が、後続のイメージングシーケンスで使われるラジアルサンプリングの方法を決定する場合について説明した。しかしながら、実施形態はこの状況に限られない。実際、シーケンス制御回路120は、インバージョンパルスの印加の前に、撮像が行われる流体の速度に基づいて、データ収集に係るk空間ラインの数を調整してもよい。別の例として、シーケンス制御回路120は、インバージョンパルスの印加の前に、撮像が行われる流体の速度に基づいて、スライスエンコーディングの量を調整しても良い。
【0247】
この状況は
図17A及び
図17Bに示されている。
図17A及び
図17Bは、第3の実施形態における磁気共鳴イメージング装置により行われる処理について示した図である。
図17Aは、流速が比較的早い場合について示している。一方、
図17Bは、流速がより遅い場合について示している。
【0248】
図17AはTime−SLIP法のプリパルス1個あたり二つのスライスエンコードの場合を示している。換言すると、2スライス分のデータが、所定の期間内に収集される。例えば、第1の期間中、領域230aに対応するスライス位置に対して、データ収集が行われる。第2の期間中、領域230bに対応するスライス位置に対して、データ収集が行われる。第3の期間中、領域230cに対応するスライス位置に対して、データ収集が行われる。第4の期間中、領域230dに対応するスライス位置に対して、データ収集が行われる。
【0249】
図17Aは、流速が早い場合に対応する。流速が早いほど、流れが所定の関心領域に留まる時間が短くなる。従って、流速が早くなるほど、所定の期間内にデータ収集が行われるスライスの枚数は少なくなる。
【0250】
図17Bは、一つのTime−SLIPパルスあたり3スライスエンコード数の例を示している。すなわち、所定の期間内に、3スライス分のデータが収集される。例えば、第1の期間中、領域231aに対応するスライス位置に、データ収集が行われる。第2の期間中、領域231bに対応するスライス位置に、データ収集が行われる。第3の期間中、領域231cに対応するスライス位置に、データ収集が行われる。
【0251】
図17Bは、流速が遅い場合に対応する。流速が遅いほど、流れが所定の関心領域に留まる時間が長くなる。従って、流速が遅くなるほど、所定の期間内にデータ収集が行われるスライスの枚数は大きくなる。
【0252】
図17Cは第3の実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置により行われるこの処理について示したフローチャートである。はじめに、処理回路150はインタフェース機能131により、流速の値を収集する(ステップS40)。例えば、処理回路150は、操作者から、ターゲットの血管の流速の値の入力を受け付ける。処理回路150により収集された流速の値がもし所定の閾値を上回るならば(ステップS141 Yes)、シーケンス制御回路120は、少ないセグメント数又はスライスエンコード数でイメージングシーケンスを実行する(ステップS44)。少ないセグメント数とは、例えば、データ収集を行うk空間ラインの数が少ないことを意味する。さらに、少ないセグメント数とは、例えば、セグメント一つ一つが大きいことを意味し、大きいセグメント数とは、セグメント一つ一つが小さいことを意味する。スライスエンコードが少ないとは、例えば、データ収集を行うスライスの数が少ないことを意味する。処理回路150によって収集された流速の値が所定の閾値を超えない場合(ステップS41 No)、シーケンス制御回路120は、大きなセグメント数やスライスエンコードで、イメージングシーケンスを実行する(ステップS45)。上述のいずれかの方法によるラジアル収集が完了すると、処理回路150は、画像生成機能136により画像を生成する(ステップS51)。
【0253】
実施形態はこれらの例に限定されない。例えば、シーケンス制御回路120は、流速に応じて、スライスエンコードの量やセグメント数を切替えても良い。例えば、
図17CのステップS41において、処理回路150は、操作者からターゲットの血管の流速の値の入力を受け付ける。もし流速が第1の所定の閾値を上回らなかった場合(流速が非常に遅い場合)、シーケンス制御回路120は、
図17Bのように、Time−SLIP法のプリパルス1個あたり2スライスエンコードでデータ収集を行う。もし流速が第1の所定の閾値を上回り、しかし第1の所定の閾値より大きな第2の所定の閾値を上回らなかった場合(流速が遅い場合)、シーケンス制御回路120は、
図17Aのように、Time−SLIPのプリパルス1個あたり3スライスエンコードでデータ収集を行う。もし流速が第2の所定の閾値を上回り、しかし第2の所定の閾値より大きな第3の所定の閾値を上回らなかった場合(流速が中程度の場合)、シーケンス制御回路120は、
図5のように、Time−SLIPのプリパルス1個あたり1スライスエンコードでデータ収集を行う。もし流速が第3の所定の閾値を上回り、しかし第3の所定の閾値より大きな第4の所定の閾値を上回らなかった場合(流速が早い場合)、シーケンス制御回路120は、合計で複数のインバージョンパルスを印加して、
図8A及び
図8Bに示されている一つのスライス位置のデータ収集を行う。もし流速が第4の所定の閾値を上回る場合(流速が非常に早い場合)、シーケンス制御回路120は、
図15A及び
図15Bのように、インターリーブサンプリングを行う。
【0254】
実施形態はこれらの例に限定されない。例えば、シーケンス制御回路120は最初に予備的なパルスシーケンスを実行し、その後、実行された予備的なパルスシーケンスより得られたデータに基づいて後続のパルスシーケンスにおけるTI(Inversion Time:反転時間)を最適化する。この場合、シーケンス制御回路120は、撮像シーケンスの前に実行されたパルスシーケンスから収集されたデータに基づいて決定された時間に、データ収集を行う。
【0255】
この状況は
図18に示されている。
図18は、第3の実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置の行う処理について示したフローチャートである。
【0256】
図18において、まずはじめに、シーケンス制御回路120は、後続でシーケンス制御回路120により実行されるデータ収集のための最適なTI(反転時間)を決定するための第1のパルスシーケンスを実行する(ステップS61)。例えば、シーケンス制御回路120は、所定のパルスシーケンスを用いて、1スライスのみの撮像を行い、処理回路150は、この1スライスに対応する画像を生成する。この画像は、後続のパルスシーケンスにとって最適なTIを決定するための画像となる。続いて、シーケンス制御回路120は、第2のパルスシーケンスにとって最適なTIを決定する。第2のパルスシーケンスは、例えば、第1の実施形態や第2の実施形態においてシーケンス制御回路120により実行されたようなパルスシーケンスである。第2のパルスシーケンスは、Time−SLIP法と任意の2方向をラジアルで、3番目の方向をカーテシアンで行う3次元収集との組み合わせである(ステップS62)。続いて、シーケンス制御回路120は、第2のパルスシーケンスを実行する(ステップS63)。画像生成機能136により、処理回路150は、シーケンス制御回路120により実行された第2のパルスシーケンスに基づいて、画像を生成する。
【0257】
実施形態はこれに限られない。例えば、ステップS62において、TIを決定する代わりに、シーケンス制御回路120は、第1のパルスシーケンスに基づいて、イメージングシーケンス中で、インターリーブラジアルサンプリング及びシーケンシャルラジアルサンプリングとのうちどちらが行われるべきかを、決定してもよい。別の例として、例えば、ステップS62において、TIを決定する代わりに、シーケンス制御回路120は、第1のパルスシーケンスに基づいて、データ収集に係るk空間ラインの数や、データ収集に係るk空間ラインの数を決定してもよい。
【0258】
第3の実施形態では、処理回路150に実行されるTime−SLIP法のパルスシーケンスの前に、様々なパラメータが最適化される。任意の2方向をラジアルで、3番目の方向をカーテシアンで行う3次元収集は、流速に応じたパルスシーケンスのパラメータの調整に関して柔軟性を有する。このことが理由の一つとなり、この最適化が可能となる。
【0259】
(第4の実施形態)
第4の実施形態では、Time−SLIP法がマルチスライス2次元ラジアル収集と組み合わせられる。換言すると、シーケンス制御回路120は、Time−SLIP法のデータ収集シーケンス中に、マルチバンド同時励起を含むマルチスライス2次元ラジアル収集を行う。以下では、
図4Aにあるような、「フローイン」の場合で説明を行う。しかしながら、実施形態はこれに限られない。実施形態は、「フローアウト」法や、「タグオン/タグオフ」法に、直接的に拡張することができる。
【0260】
はじめに、シーケンス制御回路120は、
図4Aに示されているように、インバージョンパルスとして、領域選択インバージョンパルスを印加する(ステップS100)。例えば、シーケンス制御回路120は、パルス印加領域44に対して、領域選択インバージョンパルス20を印加する。
【0261】
時間の経過とともに、縦磁化がゆっくりと回復する。シーケンス制御回路120は、ヌルポイント30の近くになるまで待機する(ステップS110)。ヌルポイントは、縦磁化がゼロとなる時刻である。
【0262】
データ収集期間10の間、シーケンス制御回路120は、マルチバンド励起を含んで、任意の2方向をラジアルで、3番目の方向をカーテシアンで行う3次元収集を行う。すなわち、シーケンス制御回路120は同時マルチスライス(SMS)シーケンスを実行するが、このシーケンスでは、スライス選択勾配と共に、マルチバンドの複合RF(Radio Frequency)パルスが印加され、複数のスライスを励起する。生成される後続のエコーの間、データ収集が行われるが、このデータ収集では、各スライスのエンコードパターンは、例えば、2次元ラジアル、(
図10Aに示すような)2次元PETRA、 2次元UTE、(
図10Bに示すような)2次元JETなどである。
【0263】
通常の2次元k空間エンコーディングのみでは、同時に励起されたスライスからの画像は分離可能ではない。しかしながら、第4の実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置は、複数の受信コイル(又はチャネル)を有し、これらの受信コイルから、各スライスの信号を抽出することができる。
【0264】
換言すると、はじめに、ステップS120において、シーケンス制御回路120は、マルチバンド複合RFパルスと、マルチバンド複合RFパルスと同時並列的にスライス方向に印加された傾斜磁場とを含んでイメージングシーケンスを実行する。マルチバンド複合RFパルスにより、複数スライスが同時励起される。同時励起に続いて、磁気共鳴イメージング装置100中に備え付けられた複数の受信コイル109が、例えば任意の2方向をラジアルで、3番目の方向をカーテシアンで行う3次元収集を用いて、信号を拾うが、これらの収集はシーケンス制御回路120により行われる。データ収集により収集された信号は処理回路150へと送られる。
【0265】
シーケンス制御回路120による任意の2方向をラジアルで、3番目の方向をカーテシアンで行う3次元収集が完了すると、処理回路150は、処理回路150により実行されたデータ収集パルスシーケンスに基づいて画像を生成する(ステップS130)。具体的には、処理回路150はSENSE(Sensitivity Encoding)や他の適切な再構成処理等の再構成処理を信号に対して行って、同時並列的に複数スライスの画像を取得する。
【0266】
シーケンス制御回路120が、任意の2方向をラジアルで、3番目の方向をカーテシアンで行う3次元収集を行う場合について上述した。しかしながら、実施形態はこの例に限られない。例えば、シーケンス制御回路120は、2次元ラジアル収集、2次元JETデータ収集(略同一方向に複数回のサンプリングを行う2次元データ収集)、2次元PETRAデータ収集及び2次元UTEデータ収集のうち少なくとも一つを含んで、データ収集を行っても良い。
【0267】
第4の実施形態においては、Time−SLIP法、ラジアル収集及びマルチバンド同時励起技術が組み合わされた。この結果、さらなるデータ収集時間の短縮が可能になる。
【0268】
(第5の実施形態)
これまでの実施形態では、シーケンス制御回路120が任意の2方向をラジアルで、3番目の方向をカーテシアンで行う3次元収集を行った。第5の実施形態では、シーケンス制御回路120が3次元k空間データ収集を行う。
【0269】
以下、今回も、
図4Aのような「フローイン」法の場合について説明する。しかしながら、実施形態は、第4の実施形態の場合と同様、これらに限られない。実施形態は、「フローアウト」法や、「タグオン/タグオフ」法に、直接的に拡張することができる。
【0270】
はじめに、シーケンス制御回路120は、
図4Aのように、インバージョンパルスとして、領域選択インバージョンパルスを印加する(ステップS100)。例えば、シーケンス制御回路120は領域選択インバージョンパルス20をパルス印加領域44に印加する。換言すると、シーケンス制御回路120は、RF(Radio Frequency)パルスと、RFパルスと同時並列的にスライス方向に印加された傾斜磁場とを含んで、後続のイメージングシーケンスを実行する。
【0271】
時間が経過するにつれ、縦磁化がゆっくりと回復する。シーケンス制御回路120はヌルポイント30付近になるまで待機する(ステップS110)。ヌルポイントは、縦磁化がゼロとなるような時刻である。
【0272】
データ収集期間10の間、シーケンス制御回路120は、RFパルス及び傾斜磁場により選択されたスライス位置に対して、ヌルポイントを含む期間中、3次元k空間の原点を含んで複数の方向でデータ収集を行う。このデータ収集のエンコード種類は、例えば、3次元 UTE(Ultrashort Echo)データ収集、3次元PETRA(Pointwise Encoding Time Reduction with Radial Acquisition)データ取集及び3次元投影データ収集を含む。
【0273】
図19に、シーケンス制御回路120が3次元k空間データ収集を行う場合について説明されている。例えば、3次元UTEデータ収集は、この種のデータ収集に属する。
【0274】
はじめに、シーケンス制御回路120が3次元UTEデータ収集を行う場合について説明する。
【0275】
図19Aの左右方向、前後方向、垂直方向は、それぞれ、3次元のk空間の、k
x方向、k
y方向、k
z方向を表す。なお、x、y、z方向の選択、すなわちk
x、k
y、k
z方向の選択は任意である。
図19Aに示されている線それぞれは、3次元のk空間の原点から出発し外向きに延びているが、それら一つ一つは、3次元のk空間データ収集の一つのラインを表す。すなわち、3次元UTEデータ収集では、3次元データ収集の複数のラインのそれぞれは、3次元のk空間の原点から始まり(「低」から始まり)、直線状の軌跡で、外側に延伸する(「高」で終わる)。シーケンス制御回路120は、3次元UTEデータ収集の場合、「低―高」タイプのデータ収集を行う。これは、3次元PETRAデータ収集の場合にもあてはまる。換言すると、シーケンス制御回路120は、3次元PETRAデータ収集の場合、「低―高」タイプのデータ収集を行う。
【0276】
UTEデータ収集やPETRAデータ収集以外のデータ収集として、シーケンス制御回路120は、「高―低―高」タイプのデータ収集を行う。「高―低―高」タイプのデータ収集とは、データ収集の1ラインにおいて、シーケンス制御回路120がk空間の外側からデータ収集を開始し(「高」から始まり)、ゆっくりとk空間中心へと近づき(「低」へと近づき)、k空間の外側のうちもう一方の側へと、外側に向かって動いていく(「高」で終わる)。シーケンス制御回路120は、このようにして、データ収集を行う。
【0277】
一例として、シーケンス制御回路120は、3次元投影データ収集を行っても良い。かかる状況は、例えば
図19Bに示されている。
図19Bの左右方向、前後方向、垂直方向は、それぞれ、3次元のk空間の、k
x方向、k
y方向、k
z方向を表す。
図19Bの白丸それぞれは、3次元投影データ収集の一つのラインの端点(開始点または終了点)を表す。ライン500は、シーケンス制御回路120により行われる3次元投影データ収集の複数のラインのうち一つのラインの例を示すが、ここで黒丸501及び黒丸502が端点となる。データ収集の一つのラインにおいて、シーケンス制御回路120は「高−低−高」タイプのデータ収集を行う。例えば、ライン500において、シーケンス制御回路120は黒丸501からデータ収集を開始し、ライン500に沿って3次元k空間の原点の方に動いていき、黒丸502に最終的に到達する。この時、一つのラインのデータ収集が完了する。
【0278】
一つのラインのデータ収集が完了すると、3次元投影データ収集の次のラインの開始点は、最近接の白丸に移る。そのラインのデータ収集が完了すると、3次元投影データ収集のその次のラインの開始点は、例えば、次に近接する白丸に移る。
図19Bにおいて白丸をつないでできる線は、3次元データ収集のそれぞれの一つのラインの開始点(又は終了点)の移り変わりを示している。例えば、3次元投影データ収集のラインそれぞれの開始点は、
図19Bの点A付近から始まり、白丸を、例えば、
図19Bの点B、
図19Bの点C、
図19Bの点D、
図19Bの点E、
図19Bの点F、
図19Bの点G、
図19Bの点Hとつないでいく線の軌跡に沿って動き、最終的に黒丸502へと到達する。一方で、3次元投影データ収集のそれぞれの終了点は、3次元のk空間の原点を挟んで点Aと反対の位置になる点付近から始まり、白丸をつないでいく線の軌跡に沿って動き、最終的に黒丸501へと到達する。この過程で、3次元のk空間全体のデータ収集が完了する。
【0279】
シーケンス制御回路120は、データ収集がそれに沿って行われるラインの二つの端点のそれぞれの軌跡が、仮に2次元k空間上に射影されたならば螺旋となるように、例えば、3次元のk空間のデータ収集を行う。一例として、シーケンス制御回路120は、データ収集がそれに沿って行われるラインの二つの端点のそれぞれの軌跡が、仮に2次元k空間上に射影されたならばアルキメデスの螺旋となるように、例えば、3次元のk空間のデータ収集を行う。実施形態はこれに限られない。例えば、その他の螺旋を設計することも可能である。例えば、シーケンス制御回路120は、球状の積層螺旋(stack−of−spiral)軌跡でデータ収集を行っても良い。
【0280】
シーケンス制御回路120による上述の3次元収集が完了すると、処理回路150は、処理回路150により実行されたデータ収集パルスシーケンスに基づいて、画像を生成する(ステップS130)。
【0281】
(プログラム)
また、上述した実施形態の中で示した処理手順に示された指示は、ソフトウェアであるプログラムに基づいて実行されることが可能である。汎用コンピューターが、このプログラムを予め記憶しておき、このプログラムを読み込むことにより、上述した実施形態の磁気共鳴イメージング装置100による効果と同様の効果を得ることも可能である。上述した実施形態で記述された指示は、コンピューターに実行させることのできるプログラムとして、磁気ディスク(フレキシブルディスク、ハードディスクなど)、光ディスク(CD−ROM、CD−R、CD−RW、DVD−ROM、DVD±R、DVD±RWなど)、半導体メモリ、又はこれに類する記録媒体に記録される。コンピューター又は組み込みシステムが読み取り可能な記憶媒体であれば、その記憶形式は何れの形態であってもよい。コンピューターは、この記録媒体からプログラムを読み込み、このプログラムに基づいてプログラムに記述されている指示をCPUで実行させれば、上述した実施形態の磁気共鳴イメージング装置100と同様の動作を実現することができる。また、コンピューターがプログラムを取得する場合又は読み込む場合は、ネットワークを通じて取得又は読み込んでもよい。
【0282】
また、記憶媒体からコンピューターや組み込みシステムにインストールされたプログラムの指示に基づきコンピューター上で稼働しているOS(Operating System)や、データベース管理ソフト、ネットワーク等のMW(Middleware)等が、上述した実施形態を実現するための各処理の一部を実行してもよい。更に、記憶媒体は、コンピューターあるいは組み込みシステムと独立した媒体に限らず、LAN(Local Area Network)やインターネット等により伝達されたプログラムをダウンロードして記憶又は一時記憶した記憶媒体も含まれる。また、記憶媒体は1つに限られず、複数の媒体から、上述した実施形態における処理が実行される場合も、実施形態における記憶媒体に含まれ、媒体の構成は何れの構成であってもよい。
【0283】
なお、実施形態におけるコンピューター又は組み込みシステムは、記憶媒体に記憶されたプログラムに基づき、上述した実施形態における各処理を実行するためのものであって、パソコン、マイコン等の1つからなる装置、複数の装置がネットワーク接続されたシステム等の何れの構成であってもよい。また、実施形態におけるコンピューターとは、パソコンに限らず、情報処理機器に含まれる演算処理装置、マイコン等も含み、プログラムによって実施形態における機能を実現することが可能な機器、装置を総称している。
【0284】
(ハードウェア構成)
図20は、実施形態に係るコンピューター130(画像処理装置)のハードウェア構成を示す図である。上述した実施形態に係る画像処理装置は、CPU(Central Processing Unit)310等の制御装置と、ROM(Read Only Memory)320やRAM(Random Access Memory)330等の記憶装置と、ネットワークに接続して通信を行う通信I/F340と、各部を接続するバス301とを備えている。
【0285】
上述した実施形態に係る画像処理装置で実行されるプログラムは、ROM320等に予め組み込まれて提供される。また、上述した実施形態に係る画像処理装置で実行されるプログラムは、コンピューターを上述した画像処理装置の各部として機能させ得る。このコンピューターは、CPU310がコンピューター読取可能な記憶媒体からプログラムを主記憶装置上に読み出して実行することができる。
【0286】
以上述べた少なくとも一つの実施形態の磁気共鳴イメージング装置によれば、撮像時間を短縮することができる。
【0287】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。