特許第6866312号(P6866312)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6866312ジエンエラストマーと熱可塑性エラストマー系を含むトレッドを備えたタイヤ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6866312
(24)【登録日】2021年4月9日
(45)【発行日】2021年4月28日
(54)【発明の名称】ジエンエラストマーと熱可塑性エラストマー系を含むトレッドを備えたタイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 1/00 20060101AFI20210419BHJP
   C08L 9/00 20060101ALI20210419BHJP
   C08L 9/06 20060101ALI20210419BHJP
   C08L 53/02 20060101ALI20210419BHJP
   C08K 3/36 20060101ALI20210419BHJP
   C08L 71/12 20060101ALI20210419BHJP
【FI】
   B60C1/00 A
   C08L9/00
   C08L9/06
   C08L53/02
   C08K3/36
   C08L71/12
【請求項の数】8
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2017-565735(P2017-565735)
(86)(22)【出願日】2016年6月7日
(65)【公表番号】特表2018-519384(P2018-519384A)
(43)【公表日】2018年7月19日
(86)【国際出願番号】EP2016062911
(87)【国際公開番号】WO2016202646
(87)【国際公開日】20161222
【審査請求日】2019年6月7日
(31)【優先権主張番号】1555571
(32)【優先日】2015年6月18日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】514326694
【氏名又は名称】コンパニー ゼネラール デ エタブリッスマン ミシュラン
(74)【代理人】
【識別番号】100179305
【弁理士】
【氏名又は名称】和田 幸大
(72)【発明者】
【氏名】シューヴェル クリストフ
【審査官】 横山 法緒
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−075882(JP,A)
【文献】 特開2014−189697(JP,A)
【文献】 特表2004−506801(JP,A)
【文献】 特開2004−238547(JP,A)
【文献】 特開2002−212339(JP,A)
【文献】 特表2013−531099(JP,A)
【文献】 特開2015−110703(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 1/00
C08L 1/00−101/14
C08K 3/00−13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トレッド、クラウン補強材を含むクラウン、2枚の側壁、2本のビード、これら2本のビードに固定され且つ一方の側壁から他方の側壁まで延びているカーカス補強材を含むタイヤであって、前記トレッドが、少なくとも下記の成分:
・35phr (エラストマー100質量部当りの質量部)と99phrの間の含有量のジエンエラストマー;
・1phrと65phrの間の総含有量の熱可塑性エラストマー系;
をベースとする組成物を含み、
前記熱可塑性エラストマー系は、ポリスチレンとポリ(ブタジエン/スチレン)とのブロックコポリマーと称するブロックコポリマーを少なくとも2種含み、前記少なくとも2種のブロックコポリマーの各々が、
・水素化されていてもよいブタジエン/スチレンランダムコポリマータイプの少なくとも1個のエラストマーブロック;および、
・スチレンタイプの少なくとも1個の熱可塑性ブロック;
を含み、
前記2種のポリスチレンとポリ(ブタジエン/スチレン)とのブロックコポリマーの1つが、ブタジエン成分中の二重結合の95〜100モル%の範囲の割合を水素化するように水素化されており、これを本質的に水素化されたポリスチレンとポリ(ブタジエン/スチレン)とのブロックコポリマーと称し、
前記熱可塑性エラストマー系が、前記本質的に水素化されたポリスチレンとポリ(ブタジエン/スチレン)とのブロックコポリマー以外に、部分的に水素化されていると称し、前記ブタジエン成分中の二重結合の25〜95モル%の範囲の割合を水素化するように水素化されているポリスチレンとポリ(ブタジエン/スチレン)とのブロックコポリマーを含み、
前記熱可塑性エラストマー系が、20〜50phrの本質的に水素化されたポリスチレンとポリ(ブタジエン/スチレン)とのブロックコポリマーと1〜15phrの部分的に水素化されたポリスチレンとポリ(ブタジエン/スチレン)とのブロックコポリマーを含む、ことを特徴とする前記タイヤ。
【請求項2】
ジエンエラストマーの含有量が40〜90phrの範囲内であり、熱可塑性エラストマーの含有量が10〜60phrの範囲内である、請求項1記載のタイヤ。
【請求項3】
前記トレッドの組成物が、さらに補強用充填剤を80phr未満の含有量で含み、その主要な補強用充填剤が、シリカである、請求項1または2記載のタイヤ。
【請求項4】
前記トレッドの組成物が、置換されていてもよいポリフェニレンエーテル単位をベースとする熱可塑性樹脂を1〜50phrの範囲内の含有量で更に含む、請求項1〜のいずれか1項記載のタイヤ。
【請求項5】
置換されていてもよいポリフェニレンエーテル単位をベースとする前記熱可塑性樹脂が、0〜280℃の範囲内の規格ASTM D3418、1999年に従ってDSCによって測定したガラス転移温度(Tg)を有する、請求項記載のタイヤ。
【請求項6】
置換されていてもよいポリフェニレンエーテル単位をベースとする前記熱可塑性樹脂が、下記の一般式(I)のポリフェニレン単位を主として含む化合物である、請求項又は記載のタイヤ:
(I)
(式中、
・R1、R2、R3およびR4は、互いに独立して、水素、ヒドロキシ、アルコキシ、ハロゲン、アミノ、アルキルアミノまたはジアルキルアミノの各基、或いは少なくとも2個の炭素原子を含み、ヘテロ原子によって遮断されていてもよく、さらに、置換されていてもよい炭化水素系の基から選ばれる同一または異なる基を示し;一方のR1とR3および他方のR2とR4は、これらを結合している炭素原子と一緒に、式(I)の化合物のベンゼン環に融合した1個以上の環を形成し得;
・nは、3〜300の範囲内の整数である)。
【請求項7】
前記トレッドの組成物が、ポリフェニレンエーテル単位をベースとする前記任意構成成分としての熱可塑性樹脂以外の可塑化系を含まないか、或いは可塑化系を20phr未満の総可塑剤含有量でもって含む、請求項1〜のいずれか1項記載のタイヤ。
【請求項8】
前記トレッドの組成物が、可塑化系を含まないか、或いは可塑化系を10phr未満の総可塑剤含有量でもって含む、請求項記載のタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トレッドを備えたタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
通常のタイヤにおいては、そのトレッドは、エラストマーとしてジエンエラストマーを含む。このタイプのトレッドは、周知であって、多くの文献に記載されている。
【0003】
幾つかの文献においては、ジエンエラストマーと熱可塑性エラストマーの混合物を含むトレッドが記載されている。例えば、文献WO 2010/105984号は、スチレン/ブタジエンコポリマー(SBR)、ポリブタジエン(BR)および不飽和熱可塑性スチレンエラストマー(TPS)、さらにまた、タイヤの耐摩耗性を改良するための補強用充填剤を含むトレッド組成物を記載している。
【0004】
タイヤの転がり抵抗性の改良と湿潤グリップ性の改良との間の妥協点に関連にして、本出願人は、以前に、文献WO 2012/152686号において、少なくとも1種の熱可塑性エラストマーを含むトレッドを備えたタイヤを開示しており;上記熱可塑性エラストマーは、少なくとも1個のエラストマーブロックと少なくとも1個の熱可塑性ブロックを含むブロックコポリマーであり、熱可塑性エラストマーの総含有量は65〜100phr(エラストマー100質量部当りの質量部)の範囲内である。特に、本出願人は、熱可塑性エラストマーとしてスチレン/イソプレン/スチレン(SIS)トリブロックコポリマーを含むトレッドを、通常の組成のトレッドと比較して転がり抵抗性の低下を可能にするものとして説明している。
【0005】
タイヤ製造業者の一定の目標は、調和させることが困難である性能特性、即ち、タイヤの転がり抵抗性とタイヤの湿潤グリップ性のバランスを改良することである。
【発明の概要】
【0006】
今回、本出願人は、驚くべきことに、特定の熱可塑性エラストマー系とジエンエラストマーとを含むトレッドを備えたタイヤが転がり抵抗性と湿潤グリップ性との間に優れたバランスを得ることを可能にすることを見出した。
【0007】
本発明の主題は、トレッド、クラウン補強材を含むクラウン、2枚の側壁、2本のビード、これら2本ビードに固定され且つ一方の側壁から他方の側壁まで延びているカーカス補強材を含むタイヤであって、上記トレッドが、35phr (エラストマー100質量部当りの質量部)と99phrの間の含有量のジエンエラストマーと1phrと65phrの間の総含有量の熱可塑性エラストマー系をベースとする組成物を含み;上記熱可塑性エラストマー系は、「ポリスチレンとポリ(ブタジエン/スチレン)とのブロックコポリマー」と称するブロックコポリマーを少なくとも2種含み;前記少なくとも2種のブロックコポリマーの各々が、水素化されていてもよいブタジエン/スチレンランダムコポリマータイプの少なくとも1個のエラストマーブロックとスチレンタイプの少なくとも1個の熱可塑性ブロックを含み;上記2種のポリスチレンとポリ(ブタジエン/スチレン)とのブロックコポリマーの1つがブタジエン成分中の二重結合の95〜00モル%の範囲の割合を水素化するように水素化されており;これを本質的に水素化されたポリスチレンブロックコポリマーとポリ(ブタジエン/スチレン)とのブロックコポリマーと称することを特徴とする上記タイヤである。
【0008】
好ましくは、本発明は、ジエンエラストマーの含有量が40〜90phrの範囲内であり、熱可塑性エラストマーの含有量が10〜60phrの範囲内である、上記で定義するようなタイヤに関する。好ましくは、ジエンエラストマーの含有量は50〜80phrの範囲内であり、熱可塑性エラストマーの含有量は20〜50phrの範囲内である。さらに好ましくは、ジエンエラストマーの含有量は55〜70phrの範囲内であり、熱可塑性エラストマーの総含有量は30〜45phrの範囲内である。
【0009】
好ましくは、本発明は、上記ポリスチレンとポリ(ブタジエン/スチレン)とのブロックコポリマーの数平均分子量が30 000g/モルと500 000g/モルの間である、上記で定義するようなタイヤに関する。
【0010】
同様に好ましくは、本発明は、上記ポリスチレンとポリ(ブタジエン/スチレン)とのブロックコポリマーのポリ(ブタジエン/スチレン)ブロックが、25℃よりも低いガラス転移温度を有するポリ(ブタジエン/スチレン)から選ばれる、上記で定義するようなタイヤに関する。
【0011】
さらに好ましくは、本発明は、上記ポリ(ブタジエン/スチレン)ブロックが、10〜60%の範囲内のスチレン含有量を有する、上記で定義するようなタイヤに関する。好ましくは、上記ポリ(ブタジエン/スチレン)ブロックは、4モル%〜75モル%の範囲内のブタジエン成分における1,2−結合含有量および20モル%〜96モル%の範囲内の1,4−結合含有量を有する。
【0012】
好ましくは、本発明は、上記本質的に水素化されたブロックコポリマーが、上記ブタジエン成分中の二重結合の96〜100モル%、好ましくは98〜100モル%の割合を水素化するように水素化されている、上記で定義するようなタイヤに関する。
【0013】
同様に好ましくは、本発明は、上記熱可塑性エラストマー系が、上記本質的に水素化されたポリスチレンとポリ(ブタジエン/スチレン)とのブロックコポリマー以外に、部分的に水素化されていると称し、上記ブタジエン成分中の二重結合の25〜95モル%の範囲の割合を水素化するように水素化されているポリスチレンとポリ(ブタジエン/スチレン)とのブロックコポリマーを含む、上記で定義するようなタイヤに関する。好ましくは、上記部分的に水素化されたポリスチレンとポリ(ブタジエン/スチレン)とのブロックコポリマーは上前記ブタジエン成分中の二重結合の25モル%〜80モル%、好ましくは40モル%〜70モル%の範囲の割合を水素化するように水素化されている。
【0014】
さらに好ましくは、本発明は、上記熱可塑性エラストマー系が、20〜50phr、好ましくは25〜35phrの本質的に水素化されたポリスチレンとポリ(ブタジエン/スチレン)とのブロックコポリマーと、1〜15phr、好ましくは3〜10phrの部分的に水素化されたポリスチレンとポリ(ブタジエン/スチレン)とのブロックコポリマーを含む、上記で定義するようなタイヤに関する。
【0015】
好ましくは、本発明は、上記ポリスチレンとポリ(ブタジエン/スチレン)とのブロックコポリマーが80℃よりも高いガラス転移温度を、半結晶性熱可塑性ブロックの場合は80℃よりも高い融点を有するポリマーから選ばれる、上記で定義するようなタイヤに関する。好ましくは、上記ポリスチレンとポリ(ブタジエン/スチレン)とのブロックコポリマー中の熱可塑性スチレンブロックの画分は、5〜70%の範囲内である。好ましくは、上記ポリスチレンとポリ(ブタジエン/スチレン)とのブロックコポリマーの熱可塑性ブロック(1個以上)は、ポリスチレンから、好ましくは非置換スチレン、置換スチレンおよびこれらの混合物からなる群から選ばれるスチレンモノマーから得られたポリスチレンから、さらに好ましくは非置換スチレン、メチルスチレン、パラ−tert−ブチルスチレン、クロロスチレン、ブロモスチレン、フルオロスチレン、パラ−ヒドロキシスチレンおよびこれらの混合物からなる群から選ばれるスチレンモノマーから得られたポリスチレンから選ばれる。極めて好ましくは、上記ポリスチレンとポリ(ブタジエン/スチレン)とのブロックコポリマーの熱可塑性ブロック(1個以上)は、非置換スチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、アルファ−メチルスチレン、アルファ,2−ジメチルスチレン、アルファ,4−ジメチルスチレン、ジフェニルエチレン、パラ−tert−ブチルスチレン、o−クロロスチレン、m−クロロスチレン、p−クロロスチレン、2,4−ジクロロスチレン、2,6−ジクロロスチレン、2,4,6−トリクロロスチレン、o−ブロモスチレン、m−ブロモスチレン、p−ブロモスチレン、2,4−ジブロモスチレン、2,6−ジブロモスチレン、2,4,6−トリブロモスチレン、o−フルオロスチレン、m−フルオロスチレン、p−フルオロスチレン、2,4−ジフルオロスチレン、2,6−ジフルオロスチレン、2,4,6−トリフルオロスチレン、パラ−ヒドロキシスチレンおよびこれらの混合物からなる群から選ばれるスチレンモノマーから得られたポリスチレンから選ばれる。さらに好ましくは、上記ポリスチレンとポリ(ブタジエン/スチレン)とのブロックコポリマーの熱可塑性ブロック(1個以上)は、非置換ポリスチレンから得られる。
【0016】
好ましくは、本発明は、上記ジエンエラストマーが本質的に不飽和のジエンエラストマー類およびこれらのエラストマーの混合物からなる群から選ばれる、上記で定義するようなタイヤに関する。好ましくは、上記ジエンエラストマーは、4〜12個の炭素原子を有する共役ジエンモノマーの重合によって得られるホモポリマー、1種以上の共役ジエンの相互間の共重合または1種以上の共役ジエンと8〜12個の炭素原子を有する1種のビニル芳香族化合物との共重合によって得られるコポリマー、およびこれらの混合物からなる群から選ばれる。さらに好ましくは、上記ジエンエラストマーは、ポリブタジエン、合成ポリイソプレン、天然ゴム、ブタジエンコポリマー、イソプレンコポリマーおよびこれらのエラストマーの混合物からなる群から選ばれる。極めて好ましくは、上記ジエンエラストマーは、ブタジエンとスチレンのコポリマーからなる群から選ばれる。
【0017】
同様に好ましくは、本発明は、上記トレッドの組成物が、さらに、補強用充填剤を80phr未満、好ましくは60phr未満の含有量で含む、上記で定義するようなタイヤに関する。好ましくは、補強用充填剤の含有量は、3〜50phr、好ましくは5〜40phrである。好ましくは、上記補強用充填剤は、カーボンブラックおよび/またはシリカである。好ましい実施態様によれば、主要補強用充填剤はシリカである。互換的に、また、同様に好ましくは、主要補強用充填剤はカーボンブラックである。
【0018】
好ましくは実施態様によれば、本発明は、上記トレッドの組成物が、置換されていてもよいポリフェニレンエーテル単位をベースとする熱可塑性樹脂を1〜50phr、好ましくは2〜40phrの範囲内の含有量で含む、上記で定義するようなタイヤに関する。好ましくは、置換されていてもよいポリフェニレンエーテル単位をベースとする上記熱可塑性樹脂の含有量は、2〜30phr、好ましくは2〜20phrの範囲内である。好ましくは、置換されていてもよいポリフェニレンエーテル単位をベースとする上記熱可塑性樹脂は、0〜280℃、好ましくは5〜250℃の範囲内の規格ASTM D3418、1999年に従ってDSCによって測定したガラス転移温度(Tg)を有する。同様に好ましくは、置換されていてもよいポリフェニレンエーテル単位をベースとする上記熱可塑性樹脂は、下記の一般式(I)のポリフェニレン単位を主として含む化合物である:
【化1】
(I)

(式中、
・R1、R2、R3およびR4は、互いに独立して、水素、ヒドロキシ、アルコキシ、ハロゲン、アミノ、アルキルアミノまたはジアルキルアミノの各基、或いは少なくとも2個の炭素原子を含み、ヘテロ原子によって遮断されていてもよく、さらに、置換されていてもよい炭化水素系の基から選ばれる同一または異なる基を示し;一方のR1とR3および他方のR2とR4は、これらを結合している炭素原子と一緒に、式(I)の化合物のベンゼン環に融合した1個以上の環を形成し得;
・nは、3〜300の範囲内の整数である)。
【0019】
この同じ好ましい実施態様によれば、本発明は、R1およびR2がアルキル基、特にメチル基を示し、R3およびR4が水素原子を示す、上記で定義するようなタイヤに関する。同様に好ましくは、置換されていてもよいポリフェニレンエーテル単位をベースとする上記熱可塑性樹脂は、nが3〜50、好ましくは5〜30、さらに良好には6〜20の範囲内の整数である一般式(1)のポリフェニレン単位を主として含む化合物である。さらに好ましくは、この実施態様によれば、置換されていてもよいポリフェニレンエーテル単位をベースとする上記熱可塑性樹脂は、80質量%よりも多い、好ましくは95質量%よりも多い一般式(1)のポリフェニレン単位を含む化合物である。
【0020】
好ましくは、本発明は、上記トレッドの組成物が、可塑化系を含まないか、或いは可塑化系を20phr未満、好ましくは15phr未満の総可塑剤含有量でもって含む、上記で定義するようなタイヤに関する。さらに好ましくは、上記トレッドの組成物は、置換されていてもよいポリフェニレンエーテル単位をベースとする上記熱可塑性樹脂以外の可塑化系を含まないか、或いは可塑化系を10phr未満、好ましくは5phr未満の総可塑剤含有量でもって含む。
【0021】
好ましくは、本発明は、上記トレッド組成物が架橋系をさらに含む、上記で定義するようなタイヤに関する。
【0022】
本発明は、さらに詳細には、自転車のような非自動車両、或いは、以下のタイプの自動車:乗用車、SUV (“スポーツ用多目的車”)、二輪車(特にオートバイ)または航空機;並びに、バン類、“大型”車両 (即ち、地下鉄列車、バス、大型道路輸送車(トラック、トラクター、トレーラー)、または農業用車両もしくは土木工事機械のような道路外車両、または他の輸送または操作用車両から選ばれる産業用車両に装着することを意図するタイヤに関する。
【発明を実施するための形態】
【0023】
発明の詳細な説明
本説明においては、特に明確に断らない限り、示す百分率(%)は、全て質量パーセントである。
さらにまた、用語“phr”は、本特許出願の関連において、一緒に混合したエラストマー、熱可塑性および非熱可塑性エラストマーの100質量部当りの質量部を意味する。本発明の関連においては、熱可塑性エラストマー(TPE)は、上記エラストマーに包含される。
【0024】
さらにまた、“aとbの間”なる表現によって示される値の範囲は、いずれも、aよりも大きくからbよりも小さいまでに及ぶ値の範囲を示し(即ち、限界値aとbは除外する)、一方、“a〜b”なる表現によって示される値の範囲は、いずれも、aからbまでに及ぶ値の範囲を意味する(即ち、厳格な限定値aおよびbを包含する)。
【0025】
最後に、“主要”化合物に言及する場合、この化合物は、本発明の関連において、この化合物が上記組成物において同じタイプの化合物のうちで主要であること、即ち、この化合物が同じタイプの化合物のうちで最大の質量を示す化合物であることを意味するものとする。従って、例えば、主要補強用充填剤は、上記組成物における補強用充填剤の総質量に対して最大の質量を示す補強用充填剤である。これに対して、“小量”化合物は、同じタイプの化合物のうちで最大質量画分を示さない化合物である。
【0026】
1. トレッドの組成物
本発明に従うタイヤは、トレッド、クラウン補強材を含むクラウン、2枚の側壁、2本のビード、これら2本ビードに固定され且つ一方の側壁から他方の側壁まで延びているカーカス補強材を含み;上記トレッドが、少なくとも、35phr (エラストマー100質量部当りの質量部)と99phrの間の含有量のジエンエラストマーと1phrと65phrの間の総含有量の熱可塑性エラストマー系をベースとする組成物を含み;上記熱可塑性エラストマー系は、ポリスチレンとポリ(ブタジエン/スチレン)とのブロックコポリマーと称するブロックコポリマーを少なくとも2種含み;前記少なくとも2種のブロックコポリマーの各々が、水素化されていてもよいブタジエン/スチレンランダムコポリマータイプの少なくとも1個のエラストマーブロックとスチレンタイプの少なくとも1個の熱可塑性ブロックを含み;上記2種のポリスチレンとポリ(ブタジエン/スチレン)とのブロックコポリマーの1つがブタジエン成分中の二重結合の95〜00モル%の範囲の割合を水素化するように水素化されており;これを本質的に水素化されたポリスチレンとポリ(ブタジエン/スチレン)とのブロックコポリマーと称するこという本質的な特徴を有する。
【0027】
1.1 SBRブロックとPSブロックを有する特定の熱可塑性エラストマー(TPE)
一般に、熱可塑性エラストマー(TPEと略称する)は、エラストマーと熱可塑性ポリマーとの間の中間の構造を有する。これらは、可撓性エラストマーブロックによって連結された硬質熱可塑性配列からなるブロックコポリマーである。
【0028】
本発明の目的においては、上記熱可塑性エラストマー系は、ポリスチレン(“PS”で示す)とポリ(ブタジエン/スチレン) (“SBR”で示す)とのブロックコポリマーと称するブロックコポリマーを少なくとも2種含み、前記少なくとも2種のブロックコポリマーの各々が水素化されていてもよいブタジエン/スチレンランダムコポリマータイプの少なくとも1個のエラストマーブロックとスチレンタイプの少なくとも1個の熱可塑性ブロックとを含み、これら2つのポリスチレンとポリ(ブタジエン/スチレン)とのブロックコポリマーのうちの1つは、ブタジエン成分中の二重結合の95〜100モル%の範囲の割合を水素化するように水素化されており、これを本質的に水素化されたポリスチレンとポリ(ブタジエン/スチレン)とのブロックコポリマーと称する。以下の説明においては、SBRブロックに言及する場合、このブロックは、そのように、主として(即ち、50質量%よりも多く、好ましくは80質量%よりも多くが)、ブタジエン/スチレンランダムコポリマーからなり、このコポリマーは水素化していてもしていなくてもよく、そして、スチレンブロックに言及する場合、このブロックは、主として(即ち、50質量%よりも多く、好ましくは80質量%よりも多くが)、ポリスチレンのようなスチレンポリマーからなる。
【0029】
以下の説明においては他で明確に断らない限り、ポリスチレン(PS)とポリ(ブタジエン/スチレン) (SBR)とのブロックコポリマーとも称する、SBRブロックとPSブロックを有する上記TPEについて示す情報は、上記熱可塑性エラストマー系の全ての上記ポリスチレン(PS)とポリ(ブタジエン/スチレン) (SBR)とのブロックコポリマーに対して有効である;即ち、それらのブロックコポリマーが本質的に水素化されているまたは部分的に水素化されているか或いは水素化されていないかのいずれであれ、それらブロックコポリマーの水素化レベルにはかかわらない。
【0030】
1. 1. 1 SBRブロックとPSブロックを有するTPEの構造
SBRブロックとPSブロックを有する上記TPEの数平均分子量(Mnで示す)は、好ましくは30 000g/モルと500 000g/モルの間、さらに好ましくは40 000g/モルと400 000g/モルの間である。上記最低値よりも低いと、特に実施し得る希釈(増量用オイルの存在における)故にSBRブロックとPSブロックを有する上記TPEのSBRエラストマー鎖間の凝集力に影響を与えるリスクが存在する;さらにまた、加工温度の上昇は、機械的諸性質、特に、破断点諸性質に、“高温”性能が低下する結果を伴って影響を及ぼすリスクがある。さらにまた、過度に高いMnは、加工にとって有害であり得る。従って、50 000〜300 000g/モル、さらに良好には60 000〜150 000g/モルの範囲内の値がタイヤトレッド組成物におけるSBRブロックとPSブロックを有する上記TPEの使用に特に良好に適することが観察されている。
【0031】
SBRブロックとPSブロックを有する上記TPEの数平均分子量(Mn)は、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)により、既知の方法で測定する。例えば、スチレン熱可塑性エラストマーの場合、サンプルを、前以って、約1g/lの濃度でテトラヒドロフラン中に溶解し、その後、溶液を、0.45μmの有孔度を有するフィルターにより、注入前に濾過する。使用する装置は、Waters Allianceクロマトグラフィー系である。溶出溶媒はテトラヒドロフランであり、流量は0.7ml/分であり、系の温度は35℃であり、分析時間は90分である。商品名Styragelを有する直列4本のWatersカラムセット(HMW7、HMW6Eおよび2本のHT6E)を使用する。ポリマーサンプル溶液の注入容量は、100μlである。検出器はWaters 2410示差屈折計であり、クロマトグラフデータを使用するその関連ソフトウェアは、Waters Milleniumシステムである。算出した平均分子量を、ポリスチレン標準によって得られた較正曲線と対比する。条件は、当業者であれば、調整し得ることである。
【0032】
SBRブロックとPSブロックを有する上記TPEの多分散性指数PI (注:PI = Mw/Mn;Mwは質量平均分子量、Mnは数平均分子量である)の値は、好ましくは3よりも低く、より好ましくは2よりも低く、さらにより好ましくは1.5よりも低い。
【0033】
知られている通り、SBRブロックとPSブロックを有する上記TPEは、2つのガラス転移温度ピーク(Tg;ASTM D3418に従って測定)、即ち、SBRブロックとPSブロックを有する上記TPEのエラストマー部分に関連する最低温度およびSBRブロックとPSブロックを有する上記TPEの熱可塑性部分に関連する最高温度を示す。従って、SBRブロックとPSブロックを有する上記TPEの可撓質SBRブロックは、周囲温度(25℃)よりも低いTgによって定義され、一方、硬質PSブロックは、80℃よりも高いTgを有する。
【0034】
本出願においては、SBRブロックとPSブロックを有する上記TPEのガラス転移温度に言及する場合、このガラス転移温度は、SBRエラストマーブロックに関連するTgである。SBRブロックとPSブロックを有する上記TPEは、好ましくは、好ましくは25℃以下、より好ましくは10℃以下であるガラス転移温度(“Tg”)を示す。これらの最低値よりも高いTg値は、極めて低温で使用するときの上記トレッドの性能を低下させ得る;そのような使用においては、SBRブロックとPSブロックを有する上記TPEのTgは、さらにより好ましくは−10℃以下である。同様に好ましくは、SBRブロックとPSブロックを有する上記TPEのTgは−100℃よりも高い。
【0035】
SBRブロックとPSブロックを有する上記TPEは、小数のブロック(5個未満、典型的には2個または3個)を有するコポリマーであり得、この場合、これらのブロックは、好ましくは、15 000g/モルよりも大きい高分子量を有する。SBRブロックとPSブロックを有するこれらのTPEは、例えば、1個の熱可塑性ブロックと1個のエラストマーブロックを含むジブロックコポリマーであり得る。また、これらのTPEは、多くの場合、1個の可撓質セグメントによって連結された2個の硬質セグメントを有するトリブロックエラストマーでもある。硬質および可撓質の各セグメントは、線状に、または星型枝分れまたは枝分れ形状で配置させ得る。典型的には、これらのセグメントまたはブロックの各々は、多くの場合、少なくとも5個よりも多い、一般的には10個よりも多い基本単位(例えば、スチレン/ブタジエン/スチレンブロックコポリマーにおけるスチレン単位とブタジエン単位)を含む。
【0036】
また、SBRブロックとPSブロックを有する上記TPEは、多数のより小さなブロック(30個以上、典型的には50〜500個)を含み得、この場合、これらのブロックは、比較的低い、例えば、500〜5000g/モルの分子量を有する;SBRブロックとPSブロックを有するこれらのTPEは、以降、SBRブロックとPSブロックを有するマルチブロックTPEと称し、エラストマーブロック/熱可塑性ブロック連鎖物である。
【0037】
第1の変形によれば、SBRブロックとPSブロックを有する上記TPEは、線状形である。例えば、SBRブロックとPSブロックを有する上記TPEは、ジブロックコポリマーである:PSブロック/SBRブロック。また、SBRブロックとPSブロックを有する上記TPEは、トリブロックコポリマーであり得る:PSブロック/SBRブロック/PSブロック、即ち、1個の中心エラストマーブロックと該エラストマーブロックの2つの末端の各々における2個の末端熱可塑性ブロック。同様に、SBRブロックとPSブロックを有するマルチブロックTPEは、SBRエラストマーブロック/熱可塑性PSブロックの線状連鎖物であり得る。
【0038】
本発明のもう1つの別の変形によれば、本発明の前提条件において使用するSBRブロックとPSブロックを有する上記TPEは、少なくとも3本の分岐を含む星型枝分れ形状にある。例えば、SBRブロックとPSブロックを有する上記TPEは、その場合、少なくとも3本の分岐を含む星型枝分れSBRエラストマーブロックと、該エラストマーブロックの分岐の各々の末端に位置する熱可塑性PSブロックとからなり得る。中心エラストマーの分岐数は、例えば、3〜12本、好ましくは3〜6本の範囲で変動し得る。
【0039】
本発明のもう1つの変形によれば、SBRブロックとPSブロックを有する上記TPEは、枝分れまたはデンドリマー形で提供される。SBRブロックとPSブロックを有する上記TPEは、その場合、枝分れまたはデンドリマーSBRエラストマーブロックと、該デンドリマーエラストマーブロックの各分岐の末端に位置するPS熱可塑性ブロックからなり得る。
【0040】
1. 1. 2. 上記エラストマーブロックの性質
本発明の前提条件において、SBRブロックとPSブロックを有する上記TPEのエラストマーブロックは、全て、当業者にとって既知のブタジエン/スチレンランダムコポリマータイプのエラストマー(SBR)であり得る。
【0041】
SBRブロックとPSブロックを有する上記TPEにおけるSBRエラストマーブロック画分は、30%〜95%、好ましくは40%〜92%、さらに好ましくは50%〜90%の範囲内にある。
【0042】
これらのSBRブロックは、好ましくは、25℃よりも低い、好ましくは10℃よりも低い、さらに好ましくは0℃よりも低い、極めて好ましくは−10℃よりも低い規格ASTM D3418、1999年に従いDSCによって測定したTg (ガラス転移温度)を有する。同様に好ましくは、上記SBRブロックのTgは、−100℃よりも高い。20℃と−70℃の間、さらに好ましくは0℃と−50℃の間のTgを有するSBRブロックは特に適している。
【0043】
周知の通り、上記SBRブロックは、スチレン成分、ブタジエン成分の1,2−結合成分およびブタジエン成分の1,4−結合成分を含み、1,4−結合成分は、ブタジエン成分が水素化されていない場合、トランス−1,4−結合成分とシス−1,4−結合成分からなる。
【0044】
好ましくは、例えば10質量%〜60質量%、好ましくは20質量%〜50質量%の範囲内のスチレン含有量を、さらに、ブタジエン成分については4%〜75% (モル%)の範囲内の1,2−結合含有量および20%〜96% (モル%)の範囲内の1,4−結合含有量を有するSBRブロックを特に使用する。
【0045】
SBRブロックの水素化の度合に応じて、SBRブロックのブタジエン成分中の二重結合の含有量は、SBRブロックのブタジエン成分中の二重結合の含有量は、完全水素化SBRブロックにおける0モル%の含有量の範囲まで低下し得る。
【0046】
本発明によれば、上記熱可塑性エラストマー系は、本質的に水素化された、即ち、ブタジエン成分中の二重結合の95〜100モル%の範囲の割合を水素化するように水素化されている少なくとも1種のポリスチレンとポリ(ブタジエン/スチレン)とのブロックコポリマーを含む。
【0047】
水素化の度合は、NMR分析によって測定する。スペクトルは、1H−X 5mm Cryoprobeを備えたBruker Avance 500 MHzスペクトロメーターにおいて得られる。定量1H NMR試験は、単純な30°パルスシーケンスおよび獲得毎に5秒間の繰返し時間を使用する。64回の集積を実施する。サンプル(約25mg)を約1mlのCS2溶解中に溶解し、100μlの重水素化シクロヘキサンを添加して獲得中の封じ込みを実施する。各化学シフトを、TMS (0ppmにおける1H δ ppm)を参照して、7.18ppmでのCS2 1H δ ppmのプロトン化不純物に対して較正する。1H NMRスペクトルは、種々の単位に特徴的なシグナルピークの積分によってミクロ構造を定量化するのを可能にする:
・SBRブロックおよびポリスチレンブロックに由来するスチレン。このスチレンは、5個のプロトンに対する6.0ppmと7.3ppmの間の芳香族領域において定量可能である(7.18ppmにおけるCS2不純物シグナルの積分の減算による)。
・SBRに由来するPB1−2。このPBは、2個のプロトンに対する4.6ppmと5.1ppmの間のエチレン系領域において定量可能である。
・SBRに由来するPB1−4。このPBは、2個のプロトンに対する5.1ppmと6.1ppmの間のエチレン系領域において、さらに、PB1−2単位の1個のプロトンの欠失によって定量可能である。
・水素化に由来し、脂肪族プロトンを有するのみの水素化PB1−2。水素化PB1−2の複数のペンダントCH3を同定すると、3個のプロトンに対する0.4ppmと0.8ppmの間の脂肪族領域において定量可能である。
・水素化に由来し、脂肪族プロトンを有するのみの水素化PB1−4。この水素化物は、種々の単位から脂肪族プロトンを減算することによって推定して8個のプロトンに対するものとみなす。
【0048】
ミクロ構造は、次のようにモル%を単位として定量化し得る:1単位のモル%=単位/Σの1Hの積分(各単位の1H積分)。例えば、スチレン単位においては、スチレンのモル% = (スチレンの1H積分)/(スチレンの1H積分 + PB1−2の1H積分 + PB1−4の1H積分 + 水素化PB1−2の1H積分 + 水素化PB1−4の1H積分)。
【0049】
好ましくは、上記本質的に水素化されたブロックコポリマーは、ブタジエン成分中の二重結合の96〜100モル%、好ましくは98〜100モル%の範囲の割合を水素化するように水素化されている。
【0050】
好ましい実施態様によれば、上記熱可塑性エラストマー系は、本質的に水素化されたポリスチレンとポリ(ブタジエン/スチレン)とのブロックコポリマー以外に、部分的に水素化されたと称し、ブタジエン成分中の二重結合の25〜94モル%の範囲の割合を水素化するように水素化されているポリスチレンとポリ(ブタジエン/スチレン)とのブロックコポリマーを含む。好ましくは、上記部分的に水素化されたポリスチレンとポリ(ブタジエン/スチレン)とのブロックコポリマーは、ブタジエン成分中の二重結合の25モル%〜80モル%、好ましくは40モル%〜70モル%の範囲の割合を水素化するように水素化されている。
【0051】
本発明の意義の範囲内において、SBRブロックのスチレン成分は、スチレンモノマーから選ばれ、特に、非置換スチレン、置換スチレンおよびこれらの混合物からなる群から選ばれるモノマーからなり得る。置換スチレンのうちでは、メチルスチレン(好ましくは、o−メチルスチレン、m−メチルスチレンおよびp−メチルスチレン、アルファ−メチルスチレン、アルファ,2−ジメチルスチレン、アルファ,4−ジメチルスチレンおよびジフェニルエチレン)、パラ−tert−ブチルスチレン、クロロスチレン(好ましくは、o−クロロスチレン、m−クロロスチレン、p−クロロスチレン、2,4−ジクロロスチレン、2,6−ジクロロスチレンおよび2,4,6−トリクロロスチレン)、ブロモスチレン(好ましくは、o−ブロモスチレン、m−ブロモスチレン、p−ブロモスチレン、2,4−ジブロモスチレン、2,6−ジブロモスチレンおよび2,4,6−トリブロモスチレン)、フルオロスチレン(好ましくは、o−フルオロスチレン、m−フルオロスチレン、p−フルオロスチレン、2,4−ジフルオロスチレン、2,6−ジフルオロスチレンまたは2,4,6−トリフルオロスチレン)、パラ−ヒドロキシスチレンおよびこれらの混合物からなる群から選ばれる置換スチレンが好ましく選ばれる。
【0052】
本発明の好ましい実施態様によれば、SBRブロックとPSブロックを有する上記TPEのエラストマーブロックは、総体的に、25 000g/モル〜350 000g/モル、好ましくは35 000g/モル〜250 000g/モルの範囲の数平均分子量(“Mn”)を有して、タイヤトレッドとしての使用に適合し得る良好なマエラストマー特性と十分な機械的強度を、SBRブロックとPSブロックを有する上記TPEに付与している。
また、上記エラストマーブロックは、上記で定義したような複数個のエラストマーブロックからもなり得る。
【0053】
1. 1. 3. 熱可塑性ブロックの性質
熱可塑性ブロックの定義については、該硬質熱可塑性ブロックのガラス転移温度(Tg)特性を使用する。この特性は、当業者にとって周知である。この特性は、特に、工業的加工(変換)温度を選択することを可能にする。非晶質ポリマー(またはポリマーブロック)の場合は、加工温度は、Tgよりも実質的に高くに選定する。半結晶性ポリマー(またはポリマーブロック)の特定の例においては、ガラス転移温度よりも高い融点が観察され得る。この場合、当該ポリマー(またはポリマーブロック)における加工温度を選定することを可能にするのはむしろ融点(M.p.)である。従って、この後、“Tg (または、M.p.でもよい)”について言及する場合、この温度が加工温度を選定するのに使用する温度であるとみなす必要があろう。
【0054】
本発明の前提条件に関しては、SBRブロックとPSブロックを有する上記TPEエラストマーは、80℃以上のTg (または、M.p.でもよい)を有し且つ重合スチレン(PS)モノマーから形成された1個以上の熱可塑性ブロックを含む。好ましくは、この熱可塑性ブロックは、80℃〜250℃で変動する範囲内のTg (または、M.p.でもよい)を有する。好ましくは、この熱可塑性ブロックのTg (または、M.p.でもよい)は、好ましくは80℃〜200℃、より好ましくは80℃〜180℃である。
【0055】
SBRブロックとPSブロックを有する上記TPE中の熱可塑性PSブロックの画分は、5%〜70%、好ましくは8%~60%、さらに好ましくは10%〜50%の範囲内である。
【0056】
SBRブロックを有する上記TPEの熱可塑性ブロックは、ポリスチレンブロックである。好ましいポリスチレンは、非置換スチレン、置換スチレンおよびこれらの混合物からなる群から選ばれるスチレンモノマーから得られる。置換スチレンのうちでは、メチルスチレン(好ましくは、o−メチルスチレン、m−メチルスチレンおよびp−メチルスチレン、アルファ−メチルスチレン、アルファ,2−ジメチルスチレン、アルファ,4−ジメチルスチレンおよびジフェニルエチレン)、パラ−tert−ブチルスチレン、クロロスチレン(好ましくは、o−クロロスチレン、m−クロロスチレン、p−クロロスチレン、2,4−ジクロロスチレン、2,6−ジクロロスチレンおよび2,4,6−トリクロロスチレン)、ブロモスチレン(好ましくは、o−ブロモスチレン、m−ブロモスチレン、p−ブロモスチレン、2,4−ジブロモスチレン、2,6−ジブロモスチレンおよび2,4,6−トリブロモスチレン)、フルオロスチレン(好ましくは、o−フルオロスチレン、m−フルオロスチレン、p−フルオロスチレン、2,4−ジフルオロスチレン、2,6−ジフルオロスチレンまたは2,4,6−トリフルオロスチレン)、パラ−ヒドロキシスチレンおよびこれらの混合物からなる群から選ばれる置換スチレンが好ましく選ばれる。
【0057】
極めて好ましくは、SBRブロックを有する上記TPEの熱可塑性ブロックは、非置換ポリスチレンから得られるブロックである。
本発明の1つの変形によれば、上記で定義したようなポリスチレンブロックは、少なくとも1種の他のモノマーと共重合させて、上記で定義したようなTg (または、M.p.でもよい)を有する熱可塑性ブロックを調製することができる。
【0058】
実例としては、上記重合モノマーと共重合させ得るこの他のモノマーは、ジエンモノマー、さらに詳細には、4〜14個の炭素原子を有する共役ジエンモノマーおよび8〜20個の炭素原子を有するビニル芳香族タイプのモノマーから選択し得る。
【0059】
本発明によれば、SBRブロックとPSブロックを有する上記TPEの熱可塑性ブロックは、5000g/モル〜150 000g/モルの範囲の数平均分子量(“Mn”)を有して、タイヤトレッドとしての使用に適合し得る良好なマエラストマー特性と十分な機械的強度を、SBRブロックとPSブロックを有する上記TPEに付与している。
また、上記熱可塑性ブロックは、上記で定義したような複数個の熱可塑性ブロックからもなり得る。
【0060】
1. 1. 4. SBRブロックとPSブロックを有するTPEの例
SBRブロックとPSブロックを有する商業的に入手可能なTPEの例としては、Asahi Kasei社から品名SOE S1611、SOE L605またはSOE L606として販売されているSOEタイプのエラストマーを挙げることができる。
【0061】
これらのうちでは、例えば、Asahi Kasei社からの上記SOEのSOE L606は、0.6%のポリブタジエン、49.6%の水素化ポリブタジエン(即ち、98.8%の水素化)および49.7%のスチレンを含む本質的に水素化されたものとして分類される。
【0062】
Asahi Kasei社からの上記SOEのSOE S1611は、例えば、19.7%のポリブタジエン、18.6%の水素化ポリブタジエン(即ち、48.5%の水素化)および61.7%のスチレンを含む部分的に水素化されたものとして分類される。
【0063】
1. 1. 5. SBRブロックとPSブロックを有するTPEの量
本発明のタイヤのトレッド組成物においては、SBRブロックとPSブロックを有する上記TPEエラストマー(即ち、1種以上の上記TPEエラストマー)は、上記エラストマー組成物中に存在するエラストマー全体の1質量%と65質量%の間、好ましくは10質量%と60質量%の間、さらに好ましくは20〜50質量%、極めて好ましくは30〜45質量%の間の量を示す。
【0064】
従って、SBRブロックとPSブロックを有するTPEエラストマーの量は、1phrと65phrの間、好ましくは10〜60phr、さらに良好には20〜50phr、特に30〜45phrで変動する範囲内である。事実、1phr未満のSBRブロックとPSブロックを有するTPEエラストマーの量によれば、転がり抵抗性低下についての効果が認め難く、一方、65phrよりも多いSBRブロックとPSブロックを有するTPEエラストマーでは、上記組成物が温度による諸性質の極めて大きな変化の結果によって熱可塑特性を装う。
【0065】
好ましくは、上記熱可塑性エラストマー系は、20〜50phr、好ましくは25〜35phrの本質的に水素化されたポリスチレンとポリ(ブタジエン/スチレン)とのブロックコポリマーと1〜15phr、好ましくは3よな10phrの部分的に水素化されたポリスチレンとポリ(ブタジエン/スチレン)とのブロックコポリマーを含む。
【0066】
1. 2. ジエンエラストマー
本発明に従うトレッドの組成物は、少なくとも1種(即ち、1種以上)のジエンゴムを含む。ジエンエラストマーの総含有量は、35phrと99phrの間、好ましくは、40〜90phr、好ましくは50〜80phr、さらに好ましくは55〜70phrの範囲内の量である。
【0067】
“ジエン”エラストマーまたはゴムは、知られている通り、ジエンモノマー(2個の共役型または非共役型炭素‐炭素二重結合を担持するモノマー)から少なくとも部分的に由来する1種以上のエラストマー(即ち、ホモポリマーまたはコポリマー)を意味するものと理解すべきである。
【0068】
これらのジエンエラストマーは、2つのカテゴリー:“本質的に不飽和”または“本質的に飽和”に分類し得る。
“本質的に不飽和”は、一般に、15%(モル%)よりも多いジエン由来(共役ジエン)の単位の含有量を有する共役ジエンモノマーに少なくとも部分的に由来するジエンエラストマーを意味するものと理解されたい。“本質的に不飽和”のジエンエラストマーのカテゴリーにおいては、“高不飽和”ジエンエラストマーは、特に、50%よりも多いジエン由来(共役ジエン)の単位含有量を有するジエンエラストマーを意味するものと理解されたい。
【0069】
従って、ブチルゴムまたはEPDMタイプのジエンとα−オレフィンとのコポリマーのようなジエンエラストマーは、上記の定義に属さず、特に、“飽和”のジエンエラストマー(低いまたは極めて低いジエン由来単位含有量、常に15%よりも低い)として説明し得る。
【0070】
これらの定義を考慮すれば、上記のカテゴリーにかかわらず、本発明に従う組成物において使用することのできるジエンエラストマー“は、さらに詳細には、以下を意味するものと理解されたい:
(a) 4〜12個の炭素原子を有する共役ジエンモノマーを重合させることによって得られる任意のホモポリマー;
(b) 1種以上の共役ジエンの相互間の共重合または1種以上の共役ジエンと8〜20個の炭素原子を有する1種以上のビニル芳香族化合物との共重合によって得られる任意のコポリマー;
(c) エチレン、3〜6個の炭素原子を含有するα‐オレフィンを、6〜12個の炭素原子を含有する非共役ジエンモノマーと共重合させることによって得られる3成分コポリマー、例えば、上記タイプの非共役ジエンモノマー、例えば、特に、1,4‐ヘキサジエン、エチリデンノルボルネンまたはジシクロペンタジエンと一緒のエチレンおよびプロピレンから得られるエラストマー;
(d) イソブテンとイソプレンのコポリマー(ブチルゴム)、さらにまた、このタイプのコポリマーのハロゲン化形、特に、塩素化または臭素化形。
【0071】
任意のタイプのジエンエラストマーを、本発明においては使用することができる。上記組成物が加硫系を含有する場合、好ましくは、特に上記のタイプ(a)または(b)の本質的に不飽和のジエンエラストマーを本発明に従うタイヤトレッドの製造においては使用する。
【0072】
以下は、共役ジエン類として特に適している:1,3−ブタジエン;2−メチル−1,3−ブタジエン;例えば、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、2,3−ジエチル−1,3−ブタジエン、2−メチル−3−エチル−1,3−ブタジエンまたは2−メチル−3−イソプロピル−1,3−ブタジエンのような2,3−ジ(C1〜C5アルキル)−1,3−ブタジエン;アリール−1,3−ブタジエン;1,3−ペンタジエンまたは2,4−ヘキサジエン。以下は、例えば、ビニル芳香族化合物として適している:スチレン;オルト−、メタ−またはパラ−メチルスチレン;“ビニルトルエン”市販混合物;パラ−(tert−ブチル)スチレン;メトキシスチレン;クロロスチレン;ビニルメシチレン;ジビニルベンゼンまたはビニルナフタレン。
【0073】
上記のコポリマーは、99質量%と20質量%の間の量のジエン単位および1質量%と80質量%の間の量のビニル芳香族単位を含み得る。上記エラストマーは、使用する重合条件、特に、変性剤および/またはランダム化剤の存在または不存在並びに使用する変性剤および/またはランダム化剤の量に依存する任意のミクロ構造を有し得る。上記エラストマーは、分散液中または溶液中で調製し得る;これらのエラストマーは、カップリング剤および/または星型枝分れ化剤或いは官能化剤によってカップリングしおよび/または星型枝分れ化し或いは官能化し得る。カーボンブラックとカップリングさせるには、例えば、C‐Sn結合を含む官能基、または、例えば、ベンゾフェノンのようなアミノ化官能基を挙げることができる;シリカのような補強用無機充填剤とカップリングさせるには、シラノール官能基またはシラノール末端を有するポリシロキサン官能基(例えば、FR 2 740 778号またはUS 6 013 718号に記載されているような)、アルコキシシラン基(例えば、FR 2 765 882号またはUS 5 977 238号に記載されているような)、カルボキシル基(例えば、WO 01/92402号またはUS 6 815 473号、WO 2004/096865号またはUS 2006/0089445号に記載されているような)、或いはポリエーテル基(例えば、EP 1 127 909号またはUS 6 503 973号に記載されているような)を挙げることができる。また、官能化エラストマーの他の例としては、エポキシ化タイプのエラストマー(SBR、BR、NRまたはIRのような)も挙げることができる。
【0074】
1. 3. PPE樹脂
上記エラストマーは、本発明に従うトレッドが有用であるためにはそれらエラストマー自体で十分である。好ましくは、本発明に従う組成物は、置換されていてもよいポリフェニレンエーテル単位をベースとする熱可塑性樹脂(“PPE樹脂”と略称する)も含み得る。このタイプの化合物は、例えば、VCH社によって出版された百科事典 "Ullmann’s Encyclopedia of Industrial Chemistry" A 21巻、605〜614頁、第5版、1992年に記載されている。
【0075】
本発明本発明に従って有用なPPE樹脂は、好ましくは、0〜280℃、好ましくは5〜250℃、さらに好ましくは5〜220℃の範囲内の規格ASTM D3418、1999年に従いDSCによって測定したガラス転移温度(Tg)を有する。0℃よりも低いと、上記PPE樹脂がこの樹脂を含む組成物中でTgの十分なシフトを可能にすることができず、280℃よりも高いと、特に均質な混合物を得ることに関しての製造問題に遭遇し得る。
【0076】
好ましくは、上記PPE樹脂は、下記の一般式(I)のポリフェニレンエーテル単位を主として含む化合物である:
【化2】
(I)

式中、
・R1、R2、R3およびR4は、互いに独立して、水素;ヒドロキシ、アルコキシ、ハロゲン、アミノ、アルキルアミノまたはジアルキルアミノの各基、少なくとも2個の炭素原子を含み、ヘテロ原子によって遮断されていてもよく、さらに、置換されていてもよい炭化水素系の基から選ばれる同一または異なる基を示し;一方のR1とR3および他方のR2とR4は、これらを結合している炭素原子と一緒に、式(I)の化合物のベンゼン環に融合した1個以上の環を形成し得;
・nは、3〜300の範囲内の整数である。
【0077】
好ましくは、R1、R2、R3およびR4は、互いに独立して、下記の基から選ばれる同一または異なる基を示す:
・水素;
・ヒドロキシル、アルコキシ、ハロゲン、アミノ、アルキルアミノまたはジアルキルアミノの各基;
・1〜25個(好ましくは2〜18個)の炭素原子を含み、窒素、酸素およびイオウから選ばれたヘテロ原子によって遮断されていてもよく、さらに、ヒドロキシル、アルコキシ、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノまたはハロゲンの各基によって置換されていてもよい線状、枝分れまたは環状のアルキル基;
・6〜18個(好ましくは6〜12個)の炭素原子を含み、ヒドロキシル、アルコキシ、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アルキルまたはハロゲンの各基によって置換されていてもよいアリール基。
【0078】
さらに好ましくは、R1、R2、R3およびR4は、互いに独立して、下記の基から選ばれる同一または異なる基を示す:
・水素;
・ヒドロキシル基、1〜6個の炭素原子を含むアルコキシ基、ハロゲン基、アミノ基、1〜6個の炭素原子を含むアルキルアミノ基、または2〜12個の炭素原子を含むジアルキルアミノ基;
・1〜12個(好ましくは2〜6個)の炭素原子を含み、ヘテロ原子によって遮断されていてもよく、さらに、ヒドロキシル基、1〜6個の炭素原子を含むアルコキシ基、アミノ基または1〜6個の炭素原子を含むアルキルアミノ基、2〜12個の炭素原子を含むジアルキルアミノ基またはハロゲンによって置換されていてもよい線状、枝分れまたは環状のアルキル基;
・6〜18個(好ましくは6〜12個)の炭素原子を含み、ヒドロキシル基、1〜6個の炭素原子を含むアルコキシ基、アミノ基、1〜6個の炭素原子を含むアルキルアミノ基、2〜12個の炭素原子を含むジアルキルアミノ基、1〜12個の炭素原子を含むアルキル基、またはハロゲン基によって置換されていてもよいアリール基。
【0079】
さらに一層好ましくは、R1およびR2はアルキル基、特にメチル基を示し、R3およびR4は水素原子を示す。この場合、上記PPE樹脂は、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)である。
【0080】
同様に好ましくは、nは、3〜50、好ましくは5〜30、さらに良好には6〜20の範囲内の整数である。
【0081】
好ましくは、上記PPE樹脂は、80質量%よりも多い、さらにより好ましくは95質量%よりも多い一般式(1)のポリフェニレン単位を含む。
【0082】
例としては、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)、特に、Sabic社からのNoryl SA120またはAsahi Kasei社からのXyron S202を挙げることができる。
【0083】
知られている通り、PPE樹脂は、特に、およそ1000〜45 000g/モル、一般に15 000〜45 000g/モルで変動し得る数平均分子量(Mn)を有する;Mnは、SEC (GPCとも称する、文献US 4 588 806号、第8欄におけるように)。本発明の目的においては、10 000〜45 000g/モル、好ましくは15 000〜40 000g/モル、さらに好ましくは25 000〜40 000g/モルの範囲の分子量Mnを有するPPE樹脂が、本発明の組成物において好ましい。
【0084】
好ましくは、上記PPE樹脂の上記TPEの多分散性指数PI (注:PI = Mw/Mn;Mwは質量平均分子量、Mnは数平均分子量である)の値は、好ましくは5よりも低く、より好ましくは3よりも低く、さらにより好ましくは2よりも低い。
【0085】
PPE樹脂が上記組成物中に存在する場合、上記組成物中のPPE樹脂の含有量は、好ましくは1〜50phr、より好ましくは2〜40phr、さらにより好ましくは2〜30phr、極めて好ましくは2〜20phrの範囲内である。
【0086】
1. 4. ナノメートルまたは補強用充填剤
上述のエラストマーは、本発明に従うトレッドが有用であるためにはこれら自体で十分である。好ましくは、本発明に従う組成物は、補強用充填剤も含み得る。
【0087】
補強用充填剤を使用する場合、タイヤの製造において一般的に使用する任意のタイプの充填剤、例えば、カーボンブラックのような有機充填剤、シリカのような無機補強用充填剤、またはこれら2つのタイプの充填剤のブレンド、特にカーボンブラックとシリカの混合物を使用し得る。好ましくは、本発明の目的においては、主要充填剤は、シリカ或いは互換的にカーボンブラックであり得る。
【0088】
タイヤにおいて通常使用する全てのカーボンブラック(“タイヤ”級ブラック類)がカーボンブラックとして適している。さらに詳細には、例えば、N115、N134、N234、N326、N330、N339、N347またはN375のブラック類のようなカーボンブラック(ASTM級)、或いは、目標とする用途次第では、より高級シリーズ(例えば、N660、N683またはN722)の、実際にはN990でさえのブラック類が挙げられる。
【0089】
“補強用無機充填剤”とは、本出願においては、定義すれば、カーボンブラックに対比して“白色充填剤”、“透明充填剤”または実際には“非黒色充填剤”としても知られており、それ自体で、中間カップリング剤以外の手段によることなく、タイヤの製造を意図するゴム組成物を補強し得る、換言すれば、その補強機能において、通常のタイヤ級カーボンブラックと置換わり得る任意の無機または鉱質充填剤(その色合およびその由来(天然または合成)の如何を問わない)を意味するものと理解すべきである;そのような充填剤は、一般に、知られている通り、その表面でのヒドロキシル基(−OH基)の存在に特徴を有する。
【0090】
上記補強用無機充填剤を使用する物理的状態は、この充填剤が粉末、微真珠状物、顆粒、ビーズまたは任意の他の適切な高密度化形のいずれであれ、重要ではない。勿論、用語“補強用無機充填剤”は、種々の補強用無機充填剤、特に、下記で説明するような高分散性シリカ質および/またはアルミナ質充填剤の混合物も意味する。
【0091】
シリカ質タイプ、特にシリカ(SiO2)またはアルミナ質タイプ、特にアルミナ(Al2O3)の鉱質充填剤は、補強用無機充填剤として特に適している。使用するシリカは、当業者にとって既知の任意の補強用シリカ、特に、共に450m2/g未満、好ましくは30〜400m2/g、特に60m2/gと300m2/gの間であるBET表面積とCTAB比表面積を有する任意の沈降またはヒュームドシリカであり得る。高分散性沈降シリカ(HDS)の例としては、Degussa社からのUltrasil 7000およびUltrasil 7005シリカ類;Rhodia社からのZeosil 1165MP、1135MPおよび1115MPシリカ類;PPG社からのHi‐Sil EZ150Gシリカ;Huber社からのZeopol 8715、8745または8755シリカ類;または、出願WO 03/01387号に記載されているような高表面積を有するシリカ類が挙げられる。
【0092】
補強用無機充填剤をジエンエラストマーにカップリングさせるためには、例えば、知られている通り、無機充填剤(その粒子表面)とジエンエラストマー間に化学的および/または物理的性質の十分な結合を確保することを意図する少なくとも二官能性のカップリング剤(または結合剤)、特に、少なくとも二官能性のオルガノシランまたはポリオルガノシロキサン類を使用することができる。
【0093】
上記組成物中の任意構成成分としての補強用充填剤の容量による含有量は0〜20%の範囲内であり、この含有量は、可塑剤を含まない組成物における0〜50phrに相当する。好ましくは、上記組成物は、補強用充填剤を、80phr未満(特に1phrと80phrの間の量)、好ましくは60phr未満(特に1phrと60phrの間の量)、より好ましくは3〜50phr、さらに良好には5〜40phrでの範囲内の含有量で含む。
【0094】
1. 5. 可塑剤
上述のエラストマーは、本発明に従うトレッドが有用であるためにはこれら自体で十分である。
【0095】
従って、本発明の好ましい実施態様によれば、上記のエラストマー組成物は、上記PPE樹脂以外のオイルまたは熱可塑性樹脂タイプの可塑剤を何ら含まないか、或いは、上記組成物が可塑剤を含む場合、上記組成物は、可塑化系を20phr未満(特に0.5phrと20phrの間の量)、好ましくは15phr未満(特に0.5phrと15phrの間の量)、さらに好ましくは10phr未満(特に0.5phrと10phrの間の量)、さらに良好には5phr未満(特に0.5phrと5phrの間の量)の可塑剤を含む。同様に好ましくは、上記組成物は、上記PPE樹脂以外の何らの可塑剤を含まない。当業者にとっては知られているように、可塑剤は、オイル(即ち、可塑化用または増量用オイル)または可塑化用樹脂を称するのに使用し、その役割は、モジュラスを低下させ且つ粘着付与力を増大させることによってトレッドの加工、特に、そのタイヤへの組込みを容易にすることである。
【0096】
好ましくは弱極性を有し、エラストマー、特に、熱可塑性エラストマーを増量または可塑化することのできる任意のオイルを使用し得る。周囲温度(23℃)において、これらのオイルは、比較的粘稠であり、本来固体である特に樹脂またはゴムと対比して液体(即ち、注釈すれば、最終的にその容器の形に適合する能力を有する物質)である。また、当業者にとって既知の任意のタイプの可塑化用樹脂も使用し得る。
【0097】
当業者であれば、上記の説明および下記の典型的な実施態様に照らして、可塑剤の量を、使用するSBRブロックとPSブロックを有する上記TPEおよび上記トレッドを備えたタイヤの特定の使用条件の関数として、特に、使用を意図する空気式物品の関数として如何にして調整するかは承知していることであろう。
【0098】
1. 6. 各種添加剤
上述のエラストマーは、本発明に従うトレッドが有用であるためにはこれら自体で十分である。
【0099】
しかしながら、本発明の好ましい実施態様によれば、上記のエラストマー組成物は、トレッド中に通常存在し当業者にとって既知の各種添加剤も含み得る。例えば、酸化防止剤またはオゾン劣化防止剤のような保護剤、UV安定剤、各種加工助剤または他の安定剤、或いは空気式物品の構造体の残余部への接着を促進し得る促進剤から選ばれる1種以上の添加剤を選択し得る。
【0100】
同様に、また、任意構成成分として、本発明のトレッドの組成物は、イオウまたはイオウ供与体と任意構成成分としての1種以上の加硫活性化剤および/または促進剤とを含む加硫系のような、当業者にとって既知の架橋系も含み得る。
【0101】
2. 製造
本発明に従うタイヤ用のトレッド組成物は、適切なミキサー内で、当業者にとって周知である2つの連続する以下の製造段階:110℃と190℃の間、好ましくは130℃と180℃の間の最高温度までの高温において熱機械的に加工または混練する第1段階(“非生産”段階とも称する)、その後の、典型的には110℃よりも低い、例えば、60℃と100℃の間の低めの温度において機械的加工する第2段階を使用して製造し、この仕上げ段階において、架橋または加硫系を混入する;そのような段階は、例えば、出願EP‐A‐0 501 227号、EP‐A‐0 735 088号、EP‐A‐0 810 258号、WO00/05300号またはWO00/05301号に記載されている。SBRブロックとPSブロックを有する上記TPEエラストマーとPPE樹脂を、これらの市販形状で、例えば、ビーズまたは顆粒形で上記第1段階において導入する。
【0102】
本発明に従うタイヤ用のトレッドは、その後、通常の方法で押出加工してその形状要素を製造する。その後、トレッドパターンを、タイヤの硬化用モールド内で彫刻する。
【0103】
このトレッドは通常の方法でタイヤ上に取付けることができ、そのタイヤは、本発明に従うトレッド以外に、クラウン、2枚の側壁と2本のビード、2本のビードに固定させたカーカス補強材およびクラウン補強材を含む。
【0104】
本発明の典型的な実施態様
本発明に従うタイヤトレッド組成物を、上記で説明したようにして製造した。
【0105】
上記組成物について実験室において実施した試験
・動的特性
動的特性G*およびtanδmaxは、規格ASTM D 5992‐96に従って、粘度アナライザー(Metravib VA4000)において測定する。10Hzの周波数においての単純な交互剪断応力における正弦化荷重に、規格ASTM‐D‐1349‐99に従い、40℃の温度において供した加硫組成物のサンプル(4mmの厚さおよび400mm2の断面積を有する円筒状試験標本)の応答を記録する。頂点間歪み振幅掃引を、0.1%から50%まで(前向きサイクル)、次いで、50%から0.1%まで(戻りサイクル)において実施する。使用する結果は、複素動的剪断モジュラス(G*)および損失係数tan(δ)である。観察されたtan(δ)の最高値(tan(δ)max)および0.1%と50%の歪みの値間の複素モジュラス(DG*)の差(パイネ効果)は、戻りサイクルにおいて示される。
【0106】
40℃におけるtan(δ)maxの値が低いほど、上記組成物のヒステリシスは低く、ひいては、その転がり抵抗性も低い。より高い可読性のために、結果を基本点100での性能単位として示す。値100は、対照に対して割り当てる。100よりも低い結果は、転がり抵抗性能の低下(40℃におけるtan(δ)maxの値の上昇)を示し、逆に、100よりも高い結果は、転がり抵抗性能の向上(40℃におけるtan(δ)maxの値の低下)を示す。
【0107】
動摩擦係数
動摩擦係数の測定は、L.Busse、A.Le GalおよびM.Kuppelによって開示された方法(Modelling of Dry and Wet Friction of Silica Filled Elastomers on Self-Affine Road Surfaces, Elastomer Friction, 2010, 51, p.8)と同一の方法によって実施した。試験標本は、6mm厚の正方形試験標本(50mm×50mm)を成型し、次いで加硫することによって作成する。モールドを閉じた後、モールドを150℃の加熱プラテンを含むプレス内に50分間16バールの圧力下に置く。これらの測定を実施するのに使用する表面は、BBTMタイプのアスファルトコンクリート製の真の道路表面から抜出した中心部(規格 NF P 98−137)である。ろう接(dewettng)現象および地面と材料間の二次的グリップ力の出現を防止するためには、地面+試験標本系を界面活性剤(Sinnozon - CAS number: 25155‐30‐0)の5%水溶液中に浸漬する。この水溶液の温度は、恒温浴を使用して調整する。試験標本を地面に平行な並進での滑り運動に供する。滑り速度SVは、0.03m/秒にセットする。適用した垂直応力snは、100kPaである。これらの条件は、以降、“湿潤地面条件”で説明する。地面上の試験標本の運動に対する接線応力stを連続して測定する。接線応力st対垂直応力snの比は、動摩擦係数μを示す。下記の表に示す値は、接線応力st値の安定化後の連続走査条件下に得られた動摩擦係数値である。
【0108】
より高い可読性のために、結果を基本点100での性能単位として示す。値100は、対照に対して割り当てる。100よりも低い結果は、湿潤グリップ性能の低下を示し、逆に、100よりも高い結果は、湿潤性能の向上を示す。
【実施例】
【0109】
実施例
本発明に従うタイヤトレッド組成物(A2、A3およびA4)を上記で示すようにして調製し、2例の対照組成物、即ち、通常のタイヤトレッド組成物(A0)およびSBRブロックとPSブロックを含まない組成物(A1)と比較した。これらトレッドの組成を下記の表1に示す。
【0110】
表1
(1) 4%の1,2−単位および93%のシス−1,4−単位を含むBR (Tg = −106℃);
(2) 溶液 SSBR (乾燥SBRとして示す含有量:41%のスチレン、24%の1,2−ポリブタジエン単位および50%のトランス−1,4−ポリブタジエン単位) (Tg = −25℃);
(3) 本質的水素化されたSOE熱可塑性エラストマー、Asahi Kasei社からのSOE L606;0.6%ポリブタジエン、49.7%の水素化ポリブタジエン(98.8%水素化)、49.7%のスチレンを含む;
(4) SOE熱可塑性エラストマー、Asahi Kasei社からのSOE L1611 (19.7%のポリブタジエン、18.6%の水素化ポリブタジエン(48.5%水素化)、61.7%スチレンを含む;
(5) PPE樹脂: ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)、Asahi Kasei社からのXyron S202 A、Mn = 37 000g/モル、Tg = 215℃;
(6) カーボンブラック N234;
(7) シリカ (Rhodia社からのZeosil 1165MP);
(8) TESTPカップリング剤 (Si69、Degussa社から);
(9) MESオイル、Shell社からのCatenex SNR;
(10) C5/C9樹脂、STS社からのCray Valley Wingtack;
(11) N−(1,3−ジメチルブチル)−N−フェニル−パラ−フェニレンジアミン (Flexsys社からのSantoflex 6‐PPD);
(12) DPG = ジフェニルグアニジン (Flexsys社からのPerkacit DPG);
(13) 酸化亜鉛、工業級、Umicore社;
(14) Stearin (Uniqema社からのPristerene);
(15) N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド、(Flexsys社からのSantocure CBS)。
【0111】
これらの組成物においては、補強用充填剤と可塑剤の含有量を、対照組成物と比較して、上記トレッド組成物におけるジエンエラストマーとのブレンドでのSBRブロックとPSブロックを有するTPEの使用によって低減することが可能であることに注目し得る。
【0112】
本発明の性能特性を実験室において評価した;結果を下記の表2に示す。

表2
【0113】
表2に示す結果は、本発明に従う組成物がジエンエラストマーの1部をSBRブロックとPSブロックを有するTPEによって置換えることを可能にし、そして、SBRブロックとPSブロックを有する2種類PTEからなりその1種が本質的に水素化されているブレンドによって、転がり抵抗性および湿潤制動に関して期待し得る性能特性の顕著な改善を可能にしていることを実証している。さらにまた、最新技術に照らして、ジエンエラストマーとのブレンドにおけるSBRブロックとPSブロックを有する上記TPEが上記トレッド組成物中の充填剤と可塑剤の量を有意に低減することを可能にし、それによって手法の経済性および加工の容易性を可能にしていることは、極めて驚くべきことである。
なお、本発明としては、以下の態様も好ましい。
〔1〕 トレッド、クラウン補強材を含むクラウン、2枚の側壁、2本のビード、これら2本ビードに固定され且つ一方の側壁から他方の側壁まで延びているカーカス補強材を含むタイヤであって、前記トレッドが、少なくとも下記の成分:
・35phr (エラストマー100質量部当りの質量部)と99phrの間の含有量のジエンエラストマー;
・1phrと65phrの間の総含有量の熱可塑性エラストマー系;
をベースとする組成物を含み、
前記熱可塑性エラストマー系は、ポリスチレンとポリ(ブタジエン/スチレン)とのブロックコポリマーと称するブロックコポリマーを少なくとも2種含み、前記少なくとも2種のブロックコポリマーの各々が、
・水素化されていてもよいブタジエン/スチレンランダムコポリマータイプの少なくとも1個のエラストマーブロック;および、
・スチレンタイプの少なくとも1個の熱可塑性ブロック;
を含み、
前記2種のポリスチレンとポリ(ブタジエン/スチレン)とのブロックコポリマーの1つが、ブタジエン成分中の二重結合の95〜00モル%の範囲の割合を水素化するように水素化されており、これを本質的に水素化されたポリスチレンとポリ(ブタジエン/スチレン)とのブロックコポリマーと称することを特徴とする前記タイヤ。
〔2〕 ジエンエラストマーの含有量が40〜90phrの範囲内であり、熱可塑性エラストマーの含有量が10〜60phrの範囲内である、〔1〕記載のタイヤ。
〔3〕 ジエンエラストマーの含有量が50〜80phrの範囲内であり、熱可塑性エラストマーの含有量が20〜50phrの範囲内である、〔2〕記載のタイヤ。
〔4〕 ジエンエラストマーの含有量が55〜70phrの範囲内であり、熱可塑性エラストマーの総含有量が30〜45phrの範囲内である、〔3〕記載のタイヤ。
〔5〕 前記ポリスチレンとポリ(ブタジエン/スチレン)とのブロックコポリマーの数平均分子量が、30 000g/モルと500 000g/モルの間である、〔1〕〜〔4〕のいずれか1項記載のタイヤ。
〔6〕 前記ポリスチレンとポリ(ブタジエン/スチレン)とのブロックコポリマーのポリ(ブタジエン/スチレン)ブロックが、25℃よりも低いガラス転移温度を有するポリ(ブタジエン/スチレン)から選ばれる、〔1〕〜〔5〕のいずれか1項記載のタイヤ。
〔7〕 前記ポリ(ブタジエン/スチレン)ブロックが、10〜60%の範囲内のスチレン含有量を有する、〔1〕〜〔6〕のいずれか1項記載のタイヤ。
〔8〕 前記ポリ(ブタジエン/スチレン)ブロックが、4モル%〜75モル%の範囲内のブタジエン成分における1,2−結合含有量および20モル%〜96モル%の範囲内の1,4−結合含有量を有する、〔1〕〜〔7〕のいずれか1項記載のタイヤ。
〔9〕 前記本質的に水素化されたブロックコポリマーが、前記ブタジエン成分中の二重結合の96〜100モル%、好ましくは98〜100モル%の割合を水素化するように水素化されている、〔1〕〜〔8〕のいずれか1項記載のタイヤ。
〔10〕 前記熱可塑性エラストマー系が、前記本質的に水素化されたポリスチレンとポリ(ブタジエン/スチレン)とのブロックコポリマー以外に、部分的に水素化されていると称し、前記ブタジエン成分中の二重結合の25〜95モル%の範囲の割合を水素化するように水素化されているポリスチレンとポリ(ブタジエン/スチレン)とのブロックコポリマーを含む、〔1〕〜〔9〕のいずれか1項記載のタイヤ。
〔11〕 前記部分的に水素化されたポリスチレンとポリ(ブタジエン/スチレン)とのブロックコポリマーが前記ブタジエン成分中の二重結合の25モル%〜80モル%、好ましくは40モル%〜70モル%の範囲の割合を水素化するように水素化されている、〔10〕記載のタイヤ。
〔12〕 前記熱可塑性エラストマー系が、20〜50phr、好ましくは25〜35phrの本質的に水素化されたポリスチレンとポリ(ブタジエン/スチレン)とのブロックコポリマーと1〜15phr、好ましくは3〜10phrの部分的に水素化されたポリスチレンとポリ(ブタジエン/スチレン)とのブロックコポリマーを含む、〔10〕および〔11〕のいずれか1項記載のタイヤ。
〔13〕 前記ポリスチレンとポリ(ブタジエン/スチレン)とのブロックコポリマーの熱可塑性スチレンブロックが、80℃よりも高いガラス転移温度を、半結晶性熱可塑性ブロックの場合は80℃よりも高い融点を有するポリマーから選ばれる、〔1〕〜〔12〕のいずれか1項記載のタイヤ。
〔14〕 前記ポリスチレンとポリ(ブタジエン/スチレン)とのブロックコポリマー中の熱可塑性スチレンブロックの画分が、5〜70%の範囲内である、〔1〕〜〔13〕のいずれか1項記載のタイヤ。
〔15〕 前記ポリスチレンとポリ(ブタジエン/スチレン)とのブロックコポリマーの熱可塑性ブロックが、ポリスチレンから選ばれる、〔1〕〜〔14〕のいずれか1項記載のタイヤ。
〔16〕 前記ポリスチレンとポリ(ブタジエン/スチレン)とのブロックコポリマーの熱可塑性ブロックが、非置換スチレン、置換スチレンおよびこれらの混合物からなる群から選ばれるスチレンモノマーから得られたポリスチレンから選ばれる、〔15〕記載のタイヤ。
〔17〕 前記ポリスチレンとポリ(ブタジエン/スチレン)とのブロックコポリマーの熱可塑性ブロックが、非置換スチレン、メチルスチレン、パラ−tert−ブチルスチレン、クロロスチレン、ブロモスチレン、フルオロスチレン、パラ−ヒドロキシスチレンおよびこれらの混合物からなる群から選ばれるスチレンモノマーから得られたポリスチレンから選ばれる、〔16〕の記載のタイヤ。
〔18〕 前記ポリスチレンとポリ(ブタジエン/スチレン)とのブロックコポリマーの熱可塑性ブロックが、非置換スチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、アルファ−メチルスチレン、アルファ,2−ジメチルスチレン、アルファ,4−ジメチルスチレン、ジフェニルエチレン、パラ−tert−ブチルスチレン、o−クロロスチレン、m−クロロスチレン、p−クロロスチレン、2,4−ジクロロスチレン、2,6−ジクロロスチレン、2,4,6−トリクロロスチレン、o−ブロモスチレン、m−ブロモスチレン、p−ブロモスチレン、2,4−ジブロモスチレン、2,6−ジブロモスチレン、2,4,6−トリブロモスチレン、o−フルオロスチレン、m−フルオロスチレン、p−フルオロスチレン、2,4−ジフルオロスチレン、2,6−ジフルオロスチレン、2,4,6−トリフルオロスチレン、パラ−ヒドロキシスチレンおよびこれらの混合物からなる群から選ばれるスチレンモノマーから得られたポリスチレンから選ばれる、〔17〕記載のタイヤ。
〔19〕 前記ポリスチレンとポリ(ブタジエン/スチレン)とのブロックコポリマーの熱可塑性ブロックが、非置換ポリスチレンから得られる、〔18〕記載のタイヤ。
〔20〕 前記ジエンエラストマーが、本質的に不飽和のジエンエラストマー類およびこれらのエラストマーの混合物からなる群から選ばれる、〔1〕〜〔19〕のいずれか1項記載のタイヤ。
〔21〕 前記ジエンエラストマーが、4〜12個の炭素原子を有する共役ジエンモノマーの重合によって得られるホモポリマー、1種以上の共役ジエンの相互間の共重合または1種以上の共役ジエンと8〜12個の炭素原子を有する1種のビニル芳香族化合物との共重合によって得られるコポリマー、およびこれらの混合物からなる群から選ばれる、〔20〕記載のタイヤ。
〔22〕 前記ジエンエラストマーが、ポリブタジエン、合成ポリイソプレン、天然ゴム、ブタジエンコポリマー、イソプレンコポリマーおよびこれらのエラストマーの混合物からなる群から選ばれる、〔21〕記載のタイヤ。
〔23〕 前記トレッドの組成物が、さらに、補強用充填剤を80phr未満、好ましくは60phr未満の含有量で含む、〔1〕〜〔22〕のいずれか1項記載のタイヤ。
〔24〕 補強用充填剤の含有量が、3〜50phr、好ましくは5〜40phrである、〔23〕記載のタイヤ。
〔25〕 前記補強用充填剤が、カーボンブラックおよび/またはシリカである、〔23〕および〔24〕のいずれか1項記載のタイヤ。
〔26〕 主要補強用充填剤が、シリカである、〔23〕〜〔25〕のいずれか1項記載のタイヤ。
〔27〕 主要補強用充填剤が、カーボンブラックである、〔23〕〜〔25〕のいずれか1項記載のタイヤ。
〔28〕 前記トレッドの組成物が、置換されていてもよいポリフェニレンエーテル単位をベースとする熱可塑性樹脂を1〜50phr、好ましくは2〜40phrの範囲内の含有量で更に含む、〔1〕〜〔27〕のいずれか1項記載のタイヤ。
〔29〕 置換されていてもよいポリフェニレンエーテル単位をベースとする前記熱可塑性樹脂の含有量が、2〜30phr、好ましくは2〜20phrの範囲内である、〔28〕記載のタイヤ。
〔30〕 置換されていてもよいポリフェニレンエーテル単位をベースとする前記熱可塑性樹脂が、0〜280℃、好ましくは5〜250℃の範囲内の規格ASTM D3418、1999年に従ってDSCによって測定したガラス転移温度(Tg)を有する、〔28〕および〔29〕のいずれか1項記載のタイヤ。
〔31〕 置換されていてもよいポリフェニレンエーテル単位をベースとする前記熱可塑性樹脂が、下記の一般式(I)のポリフェニレン単位を主として含む化合物である、〔28〕〜〔30〕のいずれか1項記載のタイヤ:
(I)
(式中、
・R1、R2、R3およびR4は、互いに独立して、水素、ヒドロキシ、アルコキシ、ハロゲン、アミノ、アルキルアミノまたはジアルキルアミノの各基、或いは少なくとも2個の炭素原子を含み、ヘテロ原子によって遮断されていてもよく、さらに、置換されていてもよい炭化水素系の基から選ばれる同一または異なる基を示し;一方のR1とR3および他方のR2とR4は、これらを結合している炭素原子と一緒に、式(I)の化合物のベンゼン環に融合した1個以上の環を形成し得;
・nは、3〜300の範囲内の整数である)。
〔32〕 R1およびR2がアルキル基、特にメチル基を示し、R3およびR4が水素原子を示す、〔31〕記載のタイヤ。
〔33〕 置換されていてもよいポリフェニレンエーテル単位をベースとする前記熱可塑性樹脂が、nが3〜50、好ましくは5〜30、さらに良好には6〜20の範囲内の整数である一般式(1)のポリフェニレン単位を主として含む化合物である、〔31〕および〔32〕のいずれか1項記載のタイヤ。
〔34〕 置換されていてもよいポリフェニレンエーテル単位をベースとする前記熱可塑性樹脂が、80質量%よりも多い、好ましくは95質量%よりも多い一般式(1)のポリフェニレン単位を含む化合物である、〔31〕〜〔33〕のいずれか1項記載のタイヤ。
〔35〕 前記トレッドの組成物が、ポリフェニレンエーテル単位をベースとする前記任意構成成分としての熱可塑性樹脂以外の可塑化系を含まないか、或いは可塑化系を20phr未満、好ましくは15phr未満の総可塑剤含有量でもって含む、〔1〕〜〔34〕のいずれか1項記載のタイヤ。
〔36〕 前記トレッドの組成物が、可塑化系を含まないか、或いは可塑化系を10phr未満、好ましくは5phr未満の総可塑剤含有量でもって含む、〔35〕記載のタイヤ。
〔37〕 前記トレッドの組成物が、架橋系をさらに含む、〔36〕記載のタイヤ。