特許第6866319号(P6866319)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6866319
(24)【登録日】2021年4月9日
(45)【発行日】2021年4月28日
(54)【発明の名称】固定子、回転電機および車両
(51)【国際特許分類】
   H02K 1/18 20060101AFI20210419BHJP
   H02K 1/12 20060101ALI20210419BHJP
   H02K 16/00 20060101ALI20210419BHJP
   H02K 21/24 20060101ALI20210419BHJP
【FI】
   H02K1/18 A
   H02K1/12 Z
   H02K16/00
   H02K21/24 M
【請求項の数】8
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2018-10612(P2018-10612)
(22)【出願日】2018年1月25日
(65)【公開番号】特開2019-129638(P2019-129638A)
(43)【公開日】2019年8月1日
【審査請求日】2020年3月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】000173784
【氏名又は名称】公益財団法人鉄道総合技術研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】598076591
【氏名又は名称】東芝インフラシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】特許業務法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 泰之
(72)【発明者】
【氏名】近藤 稔
(72)【発明者】
【氏名】浮田 啓悟
(72)【発明者】
【氏名】柏木 隆行
(72)【発明者】
【氏名】熊谷 依穂
(72)【発明者】
【氏名】金 亨柱
(72)【発明者】
【氏名】尾崎 圭史
【審査官】 小林 紀和
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−087382(JP,A)
【文献】 特開2011−103716(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 1/18
H02K 1/12
H02K 16/00
H02K 21/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転電機の固定子であって、
第1面と、前記第1面の反対側の第2面と、前記第1面から前記第2面に貫通する複数の開口と、を有する第1支持板と、
前記第1面により支持された環状のコイルと、
前記コイルの径方向において前記コイルと並び、前記第1面により支持されるとともに前記開口から前記第2面側に露出した複数のコアと、
を備える固定子。
【請求項2】
前記コアは、コア本体と、前記コア本体から突出する鍔部と、を有し、
前記鍔部を保持する固定部材と、
前記第1面と対向する第3面と、前記第3面の反対側の第4面と、前記第3面から前記第4面に貫通する複数の開口と、を有する第2支持板と、をさらに備え、
前記固定部材および前記コイルは、前記第1面および前記第3面により挟持され、
前記コア本体は、前記第1支持板の前記開口から前記第2面側に露出するとともに、前記第2支持板の前記開口から前記第4面側に露出している、
請求項1に記載の固定子。
【請求項3】
前記第1支持板は、前記回転電機のフレームが有する開口の周縁を保持している、
請求項1または2に記載の固定子。
【請求項4】
前記コイル、前記複数のコアおよび前記第1面を覆う樹脂層をさらに備える、
請求項1に記載の固定子。
【請求項5】
回転電機の固定子であって、
第1面と、前記第1面の反対側の第2面と、前記第1面から前記第2面に貫通する複数の開口と、を有する支持板と、
前記第1面により支持された環状の第1コイルと、
前記第2面により支持され、前記第1コイルと前記支持板を介して対向する環状の第2コイルと、
前記第1コイルおよび前記第2コイルの径方向において前記第1コイルおよび前記第2コイルと並び、前記開口に通されて前記第1面および前記第2面から突出する複数のコアと、
を備える固定子。
【請求項6】
前記第1面、前記第1コイルおよび前記第1面から突出した前記複数のコアを覆い、前記第1コイルおよび前記複数のコアを前記支持板に固定する第1樹脂層と、
前記第2面、前記第2コイルおよび前記第2面から突出した前記複数のコアを覆い、前記第2コイルおよび前記複数のコアを前記支持板に固定する第2樹脂層と、を備える、
請求項5に記載の固定子。
【請求項7】
回転軸に沿って延びるシャフトと、
前記シャフトに取り付けられた回転子と、
前記回転軸と平行な軸方向において前記回転子と隙間を介して対向する請求項1ないし6のうちいずれか1項に記載の固定子と、
を備える回転電機。
【請求項8】
請求項7に記載の回転電機と、
前記回転電機のシャフトの両側に設けられる車輪と、
を備える車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、固定子、回転電機および車両に関する。
【背景技術】
【0002】
回転電機の一例として、シャフトに連結された回転子と、固定子とをシャフトの軸方向に隙間を介して対向配置したアキシャルギャップモータが知られている。例えば、この種のモータの固定子としては、シャフトの回転軸を中心とした周方向に複数のコアを配列し、各コアを個別に囲うコイルを配置した構成のものがある。
【0003】
一方、アキシャルギャップモータの構成としては、シャフトを囲う環状のコイルを設け、このコイルの周囲に複数のコアを配列する態様も考えられる。各コアは、シャフトの回転軸を中心とした径方向においてコイルと対向する。このような環状のコイルを用いる場合、径方向のいずれにおいてもコイルが存在することになる。したがって、コイルおよびコアをフレームに固定するための構造に工夫が必要となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2017−55556号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、コアおよびコイルを好適に固定することが可能な固定子、当該固定子を備える回転電機および当該回転電機を備える車両を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一実施形態に係る固定子は、第1支持板と、環状のコイルと、複数のコアと、を備えている。前記第1支持板は、第1面と、前記第1面の反対側の第2面と、前記第1面から前記第2面に貫通する複数の開口と、を有する。前記コイルは、前記第1面により支持されている。前記複数のコアは、前記コイルの径方向において前記コイルと並び、前記第1面により支持されるとともに前記開口から前記第2面側に露出している。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、第1実施形態に係るモータの外観構成を示す斜視図である。
図2図2は、モータの概略的な分解斜視図である。
図3図3は、モータの概略的な断面図である。
図4図4は、モータが備える固定子の概略的な分解斜視図である。
図5図5は、固定子が備えるコアの概略的な斜視図である。
図6図6は、固定子の製造工程を示す概略的な斜視図である。
図7図7は、固定子の製造工程を示す概略的な斜視図である。
図8図8は、固定子の製造工程を示す概略的な斜視図である。
図9図9は、組み立てられた固定子の概略的な平面図である。
図10図10は、図9の線F10に沿う固定子の概略的な断面図である。
図11図11は、図9の線F11に沿う固定子の概略的な断面図である。
図12図12は、図9の線F12に沿う固定子の概略的な断面図である。
図13図13は、モータの適用例を示す図である。
図14図14は、第2実施形態に係る固定子の一部の概略的な断面図である。
図15図15は、第3実施形態に係る固定子の一部の概略的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
いくつかの実施形態につき、図面を参照しながら説明する。
各実施形態においては、回転電機の一例としてアキシャルギャップモータを開示する。ただし、各実施形態に示す構造の一部は、他種の回転電機に適用することも可能である。
【0009】
[第1実施形態]
図1は、第1実施形態に係るアキシャルギャップモータM(以下、モータMと称す)の外観構成の一例を概略的に示す斜視図である。
モータMは、4つのハウジング10A,10B,10C,10Dと、3つの矩形状のフレーム20A,20B,20Cと、シャフトSとを備えている。
【0010】
フレーム20Aは、ハウジング10A,10Bの間に配置されている。フレーム20Bは、ハウジング10B,10Cの間に配置されている。フレーム20Cは、ハウジング10C,10Dの間に配置されている。ハウジング10Aは有底筒状であり、開口した一端がフレーム20Aに連結されている。ハウジング10Bは筒状であり、一端がフレーム20Aに連結され、他端がフレーム20Bに連結されている。ハウジング10Cは筒状であり、一端がフレーム20Bに連結され、他端がフレーム20Cに連結されている。ハウジング10Dは有底筒状であり、開口した一端がフレーム20Cに連結されている。
【0011】
シャフトSは、ハウジング10A〜10Dおよびフレーム20A〜20Cに通されている。例えば、シャフトSは、ベアリングを介してハウジング10A,10Dにより回転可能に支持されている。
【0012】
フレーム20A〜20Cの4つの角部には、貫通孔Hが設けられている。モータMは、これら貫通孔Hを利用して、設置場所に固定することができる。図1においては、フレーム20A,20Cの下方の貫通孔Hを設置場所の取付具Fに連結した状態を示しているが、モータMの設置方法はこれに限定されない。
【0013】
図2は、モータMの概略的な分解斜視図である。
ここでは、ハウジング10A〜10Dの図示を省略している。モータMは、ハウジング10Aに収容される回転子1Aと、ハウジング10Bに収容される回転子1Bと、ハウジング10Cに収容される回転子1Cと、ハウジング10Dに収容される回転子1Dとを備えている。さらに、モータMは、フレーム20Aに固定される固定子2Aと、フレーム20Bに固定される固定子2Bと、フレーム20Cに固定される固定子2Cとを備えている。
【0014】
シャフトSは、回転子1A〜1Dおよび固定子2A〜2Cの中央に通される。回転子1A〜1Dは、シャフトSに取り付けられる。これにより、シャフトSの回転軸AXに沿って、回転子1A、固定子2A、回転子1B、固定子2B、回転子1C、固定子2C、回転子1Dが隙間を介して順に並ぶ。
【0015】
回転子1A〜1Dは、円盤状の支持板11と、複数の永久磁石12と、複数のコア13とを備えている。コア13は、例えば鉄などの強磁性体の粉末を圧縮して固めた圧粉磁心である。永久磁石12およびコア13は、回転軸AXを中心として放射状に延びる長尺な形状を有しており、回転軸AXを中心とした周方向に交互に配列されている。回転子1Aにおいては、固定子2Aと対向する支持板11の一面にのみ、永久磁石12およびコア13が配置されている。回転子1B,1Cにおいては、支持板11の両面に永久磁石12およびコア13が配置されている。回転子1Dにおいては、固定子2Cと対向する支持板11の一面にのみ、永久磁石12およびコア13が配置されている。
【0016】
図3は、モータMの概略的な断面図である。
ここでは、回転子1A,1Bおよび固定子2Aの一部とシャフトSのみを示し、他の要素の図示を省略している。固定子2Aは、第1支持板3と、第2支持板4とを備えている。各支持板3,4は、非磁性かつ非導電性の材料で形成することが好ましい。例えば、各支持板3,4は、繊維強化プラスチック(FRP)で形成することができる。また、各支持板3,4は、セラミック材料で形成することもできる。セラミック材料は熱伝導率に優れるため、固定子2A〜2Cからの放熱が容易となり、モータMの小型軽量化や高出力化に寄与する。
【0017】
さらに、固定子2Aは、これら支持板3,4の間に配置された第1コア81と、第2コア82と、第3コア83と、第1コイル91と、第2コイル92とを備えている。第1コア81、第2コア82および第3コア83は、回転軸AXに向けて順に並んでいる。第1コイル91は第1コア81と第2コア82の間に配置され、第2コイル92は第2コア82と第3コア83の間に配置されている。各コア81〜83は、両側面が各支持板3,4からそれぞれ露出し、回転子1A,1Bと対向している。
【0018】
各コイル91,92に電流を流すと、破線および矢印で示したように、各コイル91,92の周囲に磁束が発生する。各コア81〜83を通る磁束は、回転軸AXと概ね平行である。これらの磁束が回転子1A,1Bの永久磁石12に作用し、回転子1A,1BおよびシャフトSが回転する。
【0019】
固定子2B,2Cにおいても同様の磁束が発生する。すなわち、本実施形態のモータMは、2つの回転子の間に固定子を配置した構造を3層備えている。固定子2A〜2Cの各コイル91,92には、それぞれ3相交流が供給される。
【0020】
続いて、固定子2Aの詳細につき、図4図12を用いて説明する。固定子2B,2Cについては、固定子2Aと同様の構造を有するため、説明を省略する。
図4は、固定子2Aの概略的な分解斜視図である。
固定子2Aは、上述した第1支持板3、第2支持板4、複数の第1コア81、複数の第2コア82、複数の第3コア83、第1コイル91および第2コイル92を備えている。さらに、固定子2Aは、第1押え部材5A,5Bと、第2押え部材6A,6Bと、第3押え部材7A,7Bとを備えている。これら押え部材は、非磁性かつ非導電性の材料で形成することが好ましく、例えば各種のプラスチックで形成することができる。
【0021】
本実施形態において、第1押え部材5A,5Bは、複数の第1コア81を固定する第1固定部材5を構成する。また、第2押え部材6A,6Bは、複数の第2コア82を固定する第2固定部材6を構成する。また、第3押え部材7A,7Bは、複数の第3コア83を固定する第3固定部材7を構成する。
【0022】
複数の第1コア81は、回転軸AXを中心とした第1円周C1に沿って配列されている。複数の第2コア82は、回転軸AXを中心とし、かつ第1円周C1よりも小さい半径の第2円周C2に沿って配列されている。複数の第3コア83は、回転軸AXを中心とし、かつ第2円周C2よりも小さい半径の第3円周C3に沿って配列されている。第1コア81の周方向における配置間隔は一定であってもよいし、少なくとも一部において異なってもよい。第2コア82および第3コア83についても同様である。
【0023】
第1コイル91および第2コイル92は環状であり、回転軸AXを中心として同心円状に配置されている。第2コイル92の半径は、第1コイル91の半径よりも小さい。第1コイル91および第2コイル92は、回転軸AXを中心とした周方向に素線を巻回して構成されている。第1コイル91および第2コイル92の各々において、例えば素線は軸方向に扁平であり、回転軸AXと平行な軸方向および回転軸AXを中心とした径方向に複数段重ねられている。
【0024】
第1支持板3は、回転軸AXを中心とした円形であり、第1面F1と、第1面F1の反対側の第2面F2と、シャフトSを通すための円形の中央開口30と、第1コア81に対応する複数の第1コア開口31と、第2コア82に対応する複数の第2コア開口32と、第3コア83に対応する複数の第3コア開口33とを有している。さらに、第1支持板3は、外周縁に沿って設けられた複数の孔34と、中央開口30に沿って設けられた複数の孔35と、少なくとも2つの位置決め孔36とを有している。各開口30〜33および各孔34〜36は、いずれも第1面F1から第2面F2に貫通している。
【0025】
第2支持板4は第1支持板3と概ね同様の形状であり、第1面F1と対向する第3面F3と、第3面F3の反対側の第4面F4と、中央開口40と、複数の第1コア開口41と、複数の第2コア開口42と、複数の第3コア開口43とを有している。さらに、第2支持板4は、外周縁に沿って設けられた複数の孔44と、中央開口40に沿って設けられた複数の孔45と、第2コイル92の素線を引き出すためのスリット46と、少なくとも2つの位置決め孔47とを有している。各開口40〜43および各孔44,45,47は、いずれも第1面F1から第2面F2に貫通している。
【0026】
第1押え部材5A,5Bは、例えば環状であり、複数の第1コア81と同じピッチで並ぶ複数の第1保持部50を内周側に有している。さらに、第1押え部材5A,5Bは、各第1保持部50にそれぞれ設けられた複数の孔51と、外周縁に沿って設けられた複数の孔52と、少なくとも2つの位置決め孔53とを有している。第1押え部材5Aの孔51には雌ねじが設けられている。
【0027】
複数の第2押え部材6A,6Bは、複数の第2コア82と同じピッチで環状に並んでいる。第2押え部材6A,6Bは、孔61を有している。第2押え部材6Aの孔61には雌ねじが設けられている。
【0028】
第3押え部材7A,7Bは、例えば環状であり、複数の第3コア83と同じピッチで並ぶ複数の第2保持部70を外周側に有している。さらに、第3押え部材7A,7Bは、各第2保持部70にそれぞれ設けられた複数の孔71と、内周縁に沿って設けられた複数の孔72とを有している。第3押え部材7Aの孔71には雌ねじが設けられている。
【0029】
フレーム20Aは、各支持板3,4の外径よりも小さい径の円形の開口21を有している。また、フレーム20Aは、開口21の周縁に環状の段差部22を有している。段差部22は、第1支持板3の側および第2支持板4の側の双方に設けられている。さらに、フレーム20Aは、段差部22に設けられた複数の孔23と、少なくとも2つの位置決め孔24とを有している。
【0030】
上述の各円周C1〜C3、各支持板3,4の外周、各中央開口30,40、フレーム20の開口21および各コイル91,92等は、回転軸AXを中心とした同心円状である。
【0031】
図5は、第1コア81の概略的な斜視図である。
第2コア82および第3コア83は、第1コア81と同様の形状を有する。図5においては、第1コア81の各部の符号に、対応する第2コア82および第3コア83の各部の符号を括弧書きで併記している。図中のXは回転軸AXと平行な軸方向であり、Rは回転軸AXを中心とした径方向であり、Cは回転軸AXを中心とした周方向である。
【0032】
第1コア81は、コア本体81aと、一対の鍔部81bとを有している。コア本体81aは、例えば直方体である。一対の鍔部81bは、コア本体81aの周方向Cにおける両側面F11,F12から突出している。図5の例では、一対の鍔部81bの各々は、側面F11,F12の径方向Rにおける両端間の全体に亘って設けられている。すなわち、鍔部81bの径方向Rにおける幅とコア本体81aの径方向Rにおける幅とが一致する。鍔部81bの周方向Cにおける幅は、コア本体81aの周方向Cにおける幅よりも小さい。
【0033】
第1コア81は、回転軸AXと垂直に交わる方向(径方向R)に積層された複数の電磁鋼板810により構成することができる。電磁鋼板810は、コア本体81aに対応する第1部分810aと、各鍔部81bに対応する一対の第2部分810bとを有している。電磁鋼板810は、圧延方向(磁化容易方向)Dにおいて優れた電磁特性を有する方向性電磁鋼板である。圧延方向Dは、例えば軸方向Xと平行である。この場合、圧延方向Dが図3に示した第1コア81を通る磁束の方向と一致する。
【0034】
積層された電磁鋼板810は、各鍔部81b(各第2部分810b)において互いに固定することができる。例えば、各鍔部81bと重畳する一対の固定位置81cにおいて、かしめや鋲打ちにより各電磁鋼板810を固定してもよい。各鍔部81bで電磁鋼板810を固定すればコア本体81aは変形しないので、コア本体81aの電磁特性を良好に保つことができる。
【0035】
積層された電磁鋼板810は、接着材により固定されてもよいし、樹脂に含浸した後に当該樹脂を硬化させることで固定されてもよい。これらの場合には、電磁鋼板810が変形しないので、第1コア81の電磁特性が全体的に良好となる。また、積層された電磁鋼板810を溶接により固定することもできる。この場合には、第1コア81の製造が容易である。
【0036】
第2コア82は、第1コア81と同じく、例えば直方体のコア本体82aと、コア本体82aの周方向Cにおける両側面F21,F22から突出した一対の鍔部82bとを有している。一対の鍔部82bの各々は、側面F21,F22の径方向Rにおける両端間の全体に亘って設けられている。すなわち、鍔部82bの径方向Rにおける幅とコア本体82aの径方向Rにおける幅とが一致する。鍔部82bの周方向Cにおける幅は、コア本体82aの周方向Cにおける幅よりも小さい。
【0037】
第2コア82は、第1コア81と同じく、径方向Rに積層された複数の電磁鋼板820により構成することができる。電磁鋼板820は、コア本体82aに対応する第1部分820aと、各鍔部82bに対応する一対の第2部分820bとを有している。電磁鋼板820は方向性電磁鋼板であり、その圧延方向Dは軸方向Xと平行である。積層された電磁鋼板820は、例えば各鍔部82bと重畳する一対の固定位置82cにおいて、かしめや鋲打ちにより固定することができる。その他、電磁鋼板820の固定には、電磁鋼板810について上述した種々の方法を適用できる。
【0038】
第3コア83は、第1コア81と同じく、例えば直方体のコア本体83aと、コア本体83aの周方向Cにおける両側面F31,F32から突出した一対の鍔部83bとを有している。一対の鍔部83bの各々は、側面F31,F32の径方向Rにおける両端間の全体に亘って設けられている。すなわち、鍔部83bの径方向Rにおける幅とコア本体83aの径方向Rにおける幅とが一致する。鍔部83bの周方向Cにおける幅は、コア本体83aの周方向Cにおける幅よりも小さい。
【0039】
第3コア83は、第1コア81と同じく、径方向Rに積層された複数の電磁鋼板830により構成することができる。電磁鋼板830は、コア本体83aに対応する第1部分830aと、各鍔部83bに対応する一対の第2部分830bとを有している。電磁鋼板830は方向性電磁鋼板であり、その圧延方向Dは軸方向Xと平行である。積層された電磁鋼板830は、例えば各鍔部83bと重畳する一対の固定位置83cにおいて、かしめや鋲打ちにより固定することができる。その他、電磁鋼板830の固定には、電磁鋼板810について上述した種々の方法を適用できる。
【0040】
なお、電磁鋼板810,820,830の圧延方向Dは、軸方向Xと厳密に一致する必要はなく、軸方向Xと一定の鋭角で交わってもよい。図5においては、軸方向Xと平行な圧延方向Dを示している。例えば、圧延方向Dは、第1部分810aの対角線L1と軸方向Xが成す角度θ1と、対角線L2と軸方向Xが成す角度θ2とを超えない範囲内で定めることができる。
【0041】
また、電磁鋼板810,820,830は、無方向性電磁鋼板であってもよい。また、各コア81〜83は、鉄などの強磁性体の粉末を圧縮して固めた圧粉磁心であってもよい。各コア81〜83として圧粉磁心を用いると、例えば高周波域の交流でモータMを駆動する場合の鉄損を低下させることができる。
【0042】
固定子2Aの組み立て手順(製造方法)の一例につき、図4および図6図8の斜視図を参照して説明する。
図6は、組み立て途中の固定子2Aを示す概略的な斜視図である。
先ず、少なくとも2つの位置決めピンPを、第1支持板3の位置決め孔36(図4参照)および第1押え部材5Aの位置決め孔53に通す。このとき、第1支持板3の各第1コア開口31が、第1押え部材5Aの各第1保持部50の間に位置する。
【0043】
次に、第1支持板3の第3コア開口33が第3押え部材7Aの各第2保持部70の間に位置するように、第3押え部材7Aを第1支持板3の上に配置する。さらに、第1支持板3の第2コア開口32の間に複数の第2押え部材6Aをそれぞれ配置する。
【0044】
次に、第1押え部材5Aの各第1保持部50の間および第1支持板3の第1コア開口31に第1コア81のコア本体81aを挿入する。また、隣り合う第2押え部材6Aの間および第1支持板3の第2コア開口32に第2コア82のコア本体82aを挿入する。また、第3押え部材7Aの各第2保持部70の間および第1支持板3の第3コア開口33に第3コア83のコア本体83aを挿入する。
【0045】
さらに、第2押え部材6Bを隣り合う第2コア82の間にそれぞれ配置する。第2コア82の各鍔部82bは、第2押え部材6A,6Bの間に介在する。また、第3押え部材7Bの各第2保持部70の間にそれぞれコア本体83aが挿入されるように第3押え部材7Bを配置する。第3コア83の各鍔部83bは、第3押え部材7A,7Bの双方の第2保持部70の間に介在する。
【0046】
図7は、固定子2Aの図6に続く組み立て手順を示す概略的な斜視図である。
位置決め孔24に位置決めピンPを通してフレーム20Aを配置する。第1押え部材5Aは、図示したフレーム20Aの裏面側の段差部22に接触する。各押え部材6A,6B,7A,7Bおよび各コア81〜83は、フレーム20Aの開口21内に収まる。
【0047】
フレーム20Aを配置した後、第1コイル91を複数の第1コア81と複数の第2コア82の間に配置する。さらに、位置決め孔53に位置決めピンPを通して第1押え部材5Bを配置する。このとき、第1押え部材5Bの各第1保持部50の間にコア本体81aが挿入される。第1押え部材5Bは、フレーム20Aの段差部22に接触する。
【0048】
第1押え部材5Bを配置した後、第2コイル92を複数の第2コア82と複数の第3コア83の間に配置する。第1コイル91の素線の2つのリード部91aおよび第2コイル92の素線の2つのリード部92aは、例えばフレーム20Aに設けられた孔を通じてフレーム20Aの外部に引き出される。
【0049】
各コイル91,92を配置した後、第1押え部材5Bの各孔51にねじS1を挿入し、その先端を第1押え部材5Aの各孔51の雌ねじにねじ込むことで、第1押え部材5A,5Bを連結する(後述の図11参照)。また、第2押え部材6Bの孔61にねじS2を挿入し、その先端を第2押え部材6Aの孔61の雌ねじにねじ込むことで、第2押え部材6A,6Bを連結する(同じく図11参照)。また、第3押え部材7Bの各孔71にねじS3を挿入し、その先端を第3押え部材7Aの各孔71の雌ねじにねじ込むことで、第3押え部材7A,7Bを連結する(同じく図11参照)。図7においては、ねじS1〜S3をそれぞれ1つのみ示している。
【0050】
図8は、固定子2Aの図7に続く組み立て手順を示す概略的な斜視図である。
位置決め孔47に位置決めピンPを通して第2支持板4を配置する。このとき、第1コア開口41に第1コア81のコア本体81aが挿入され、第2コア開口42に第2コア82のコア本体82aが挿入され、第3コア開口43に第3コア83のコア本体83aが挿入される。第2コイル92のリード部92aは、スリット46に収められる。
【0051】
第1支持板3および第2支持板4は、例えば複数組のボルトB1およびナットN1と、複数組のボルトB2およびナットN2とによって互いに固定される。図8においては、ボルトB1およびナットN1と、ボルトB2およびナットN2とを、それぞれ一組のみ示している。ボルトB1は、第1支持板3の孔34、第1押え部材5Aの孔52、フレーム20Aの孔23、第1押え部材5Bの孔52、第2支持板4の孔44に順に通され、第2支持板4の側でナットN1にねじ込まれる(後述の図10参照)。ボルトB2は、第1支持板3の孔35、第3押え部材7Aの孔72、第3押え部材7Bの孔72、第2支持板4の孔45に順に通され、第2支持板4の側でナットN2にねじ込まれる(同じく図10参照)。
【0052】
このように組み立てられた固定子2Aには、例えば真空雰囲気において熱硬化性かつ絶縁性の樹脂を用いた含浸処理を施してもよい。この樹脂は、例えば中央開口30,40の近傍などから第1支持板3と第2支持板4の間に入り、固定子2Aの内部において近接する要素同士の隙間を満たす。樹脂を完全に硬化させる前に、固定子2Aを重力方向に立てた状態で回転させることが好ましい。これにより、固定子2Aの外面および内部の樹脂が流れて均一化され、かつ余分な樹脂を落とすことができる。
【0053】
図9は、組み立てられた固定子2Aを第2支持板4の側から見た概略的な平面図である。ここでは固定子2Aの半分のみを示し、かつ第2支持板4の一部を破断している。
第1コア81、第2コア82および第3コア83の位置は、回転軸AXを中心とした周方向において、例えば電気角で120°に相当する角度ずつ互いにずれている。
【0054】
第1コア81は、第1押え部材5A,5Bと第1コイル91の間に位置する。第1押え部材5A,5Bの第1保持部50は、第1コア81よりも第1コイル91側には延びていない。第2コア82は、各コイル91,92の間に位置する。第2押え部材6A,6Bの径方向Rにおける幅は、第2コア82の径方向Rにおける幅以下である。したがって、第2押え部材6A,6Bは、第2コア82よりも第1コイル91側および第2コイル92側に延びていない。第3コア83は、第3押え部材7A,7Bと第2コイル92の間に位置する。第3押え部材7A,7Bの第2保持部70は、第3コア83よりも第2コイル92側には延びていない。
【0055】
第1コア81の各鍔部81bは、第1コイル91の側の一部が第1押え部材5B(および第1押え部材5A)から露出している。第2コア82の各鍔部82bは、全体が第2押え部材6B(および第2押え部材6A)に接触している。第3コア83の各鍔部83bは、第2コイル92の側の一部が第3押え部材7B(および第3押え部材7A)から露出している。なお、各鍔部81bは、全体が第1押え部材5A,5Bと接触してもよい。同様に、各鍔部83bは、全体が第3押え部材7A,7Bと接触してもよい。また、各鍔部82bは、一部が第2押え部材6A,6Bから露出してもよい。
【0056】
図10は、図9における線F10に沿う固定子2Aの概略的な断面図である。
上述のボルトB1およびナットN1により、各支持板3,4および第1押え部材5A,5Bがフレーム20Aに固定される。また、上述のボルトB2およびナットN2により、各支持板3,4および第3押え部材7A,7Bが固定される。
【0057】
上述の含浸処理を施す場合、固定子2Aの内部には、絶縁性の樹脂層95が形成される。樹脂層95は、各支持板3,4、押え部材5A,5B,6A,6B,7A,7B、各コイル81〜83および各コイル91,92の間の隙間を満たす。これにより、固定子2Aの各要素を強固に固定することができる。図10においては、固定子2Aの内部にのみ樹脂層95を示しているが、第1支持板3の第2面F2、第2支持板4の第3面F3およびフレーム20Aの表面などに樹脂層95が形成されてもよい。
【0058】
第1コア81は、コア本体81aが第1支持板3の第1コア開口31と第2支持板4の第1コア開口41に嵌っているので、これら支持板3,4により径方向Rおよび周方向Cに固定される。同様に、第2コア82および第3コア83も各支持板3,4により径方向Rおよび周方向Cに固定される。コア本体81a〜83aは、それぞれ第1コア開口31〜33から第1支持板3の第2面F2側に露出している。さらに、コア本体81a〜83aは、それぞれ第1コア開口41〜43から第2支持板4の第4面F4側に露出している。
【0059】
各コイル91,92は、第1支持板3の第1面F1および第2支持板4の第3面F3により支持されている。具体的には、各コイル91,92は、第1面F1および第3面F3に挟持され、これにより軸方向Xに固定される。
【0060】
各支持板3,4の間において、第1コア81、第1コイル91、第2コア82、第2コイル92および第3コア83は、この順で各コイル91,92の径方向に並んでいる。なお、本実施形態においては各コイル91,92が回転軸AXを中心とした同心円状であるため、各コイル91,92の径方向は回転軸AXを中心とした径方向Rと一致する。
【0061】
図11は、図9における線F11に沿う固定子2Aの概略的な断面図である。
上述の通り、ねじS1により第1押え部材5A,5Bが連結され、ねじS2により第2押え部材6A,6Bが連結され、ねじS3により第3押え部材7A,7Bが連結されている。図示した例においては、第1押え部材5Bの孔51、第2押え部材6Bの孔61、第3押え部材7Bの孔71にそれぞれザグリが設けられ、このザグリ内にねじS1〜S3の頭部が収容されている。
【0062】
図12は、図9における線F12に沿う固定子2Aの概略的な断面図である。
この断面図は、第1コア81および第1押え部材5A,5Bを含む。第2コア82および第2押え部材6A,6Bを含む断面と、第3コア83および第3押え部材7A,7Bを含む断面とは、図示した断面と同様である。図12においては、第1コア81および押え部材5A,5Bの各部の符号に、対応する第2コア82および第2押え部材6A,6Bの各部の符号と、第3コア83および第3押え部材7A,7Bの各部の符号とを括弧書きで併記している。
【0063】
第1コア81の各鍔部81bは、第1押え部材5A,5Bの各々の第1保持部50によって挟持されている。これにより、第1コア81は、軸方向Xに固定される。また、第1押え部材5A,5Bは、各支持板3,4によって挟持されている。すなわち、第1コア81は、第1押え部材5A,5Bを介して第1面F1および第3面F3により支持されている。
【0064】
第2コア82の各鍔部82bは、第2押え部材6A,6Bによって挟持されている。これにより、第2コア82は、軸方向Xに固定される。また、第2押え部材6A,6Bは、各支持板3,4によって挟持されている。すなわち、第2コア82は、第2押え部材6A,6Bを介して第1面F1および第3面F3により支持されている。
【0065】
第3コア83の各鍔部83bは、第3押え部材7A,7Bの各々の第2保持部70によって挟持されている。これにより、第2コア82は、軸方向Xに固定される。また、第3押え部材7A,7Bは、各支持板3,4によって挟持されている。すなわち、第3コア83は、第3押え部材7A,7Bを介して第1面F1および第3面F3により支持されている。
【0066】
図13は、本実施形態に係るモータMの適用例を示す図である。
モータMは、鉄道車両100の主電動機に適用することができる。この鉄道車両100は、車体110と、車体110の下方に配置された台車120と、駆動装置130と、車体110の上方に配置されたパンタグラフ140とを備えている。図示した例では、車体110に対して台車120およびパンタグラフ140が2つずつ設けられ、各台車120に駆動装置130が2つずつ設けられているが、この例に限られない。
【0067】
台車120は、台車フレーム121と、台車フレーム121に取り付けられた複数の車輪122と、台車フレーム121と車体110の間に配置された空気ばね123とを備えている。駆動装置130は、主電動機としてモータMを備えている。さらに、駆動装置130は、モータMを制御する制御装置を備えている。モータMのシャフトSの両側には、それぞれ車輪122が直結されている。パンタグラフ140は、架線150と接触している。パンタグラフ140を介して架線150から取り込まれる電力は駆動装置130に供給され、この電力によりモータMが回転する。
シャフトSの両側に車輪122が直結される構成においては、ギア等を有する伝達装置を介してシャフトSに車輪122を連結する構成に比べ、動力の伝達ロスが抑制され、エネルギ効率が向上する。また、鉄道車両100の小型化も可能となる。
なお、本実施形態に係るモータMは、鉄道車両だけでなく、種々の車両に適用可能である。車両以外にも、モータMは、回転動力を要する種々の装置に適用することができる。
【0068】
以上説明した本実施形態の固定子2(2A〜2C)においては、フレーム20(20A〜20C)に固定された第1支持板3および第2支持板4の一方の面で各コア81〜83および各コイル91,92が支持されている。このような構造であれば、円環状の各コイル91,92および各コア81〜83を、各コイル91,92の径方向に並べた状態でフレーム20に対して好適に固定することができる。各コイル91,92および各コア81〜83が各コイル91,92の径方向に並ぶことにより、図3に示したように各コア81〜83を回転軸AXと平行に通る磁束を発生させることができる。
【0069】
より具体的には、各コア81〜83および各コイル91,92は、第1支持板3および第2支持板4により回転軸AXに沿って挟持されている。これにより、固定子2が2つの回転子1の間に配置された構造において、各コア81〜83および各コイル91,92が双方の回転子1からの力を受けた場合でも、各コア81〜83および各コイル91,92を好適に固定することができる。
【0070】
また、各コア81〜83は、第1支持板3の各コア開口31〜33および第2支持板4の各コア開口41〜43から露出している。これにより、各コイル91,92の周囲の磁束が各支持板3,4の影響を受けにくくなるので、磁気特性を高めることができる。
【0071】
また、各支持板3,4は、フレーム20の開口21の周囲の段差部22を軸方向Xに挟持している。これにより、各支持板3,4とフレーム20とを特に軸方向Xにおいて強固に固定することができる。
【0072】
また、第1コア81が周方向Cに突出する一対の鍔部81bを有し、これら鍔部81bが一対の第1押え部材5A,5Bによって挟持されてフレーム20に対し固定されている。このような構造であれば、第1コア81を軸方向Xにおいて好適に固定することができる。第2コア82および第3コア83についても同様に、それぞれ第2押え部材6A,6Bおよび第3押え部材7A,7Bにより軸方向Xにおいて好適に固定することができる。
【0073】
また、各コア81〜83は小片化されたブロック状のシンプルな形状であるため、それぞれ積層された電磁鋼板810,820,830によって構成することができる。これにより、例えば各コア81〜83を圧粉磁心とする場合に比べて、各コア81〜83の飽和磁束密度、耐熱性および強度が高まる。飽和磁束密度が高まることで、モータMの高出力化を実現できる。さらに、上述したように圧延方向(磁化容易方向)Dを回転軸AXに合せることで、各コア81〜83を通る磁束成分が概ね軸方向Xと平行となり、磁気特性を一層高めることができる。
以上のほかにも、本実施形態からは種々の好適な効果を得ることができる。
【0074】
なお、第1実施形態においては、第1支持板3および第2支持板4により、各コア81〜83および各コイル91,92が支持される構造を開示した。しかしながら、以下に示す第2実施形態および第3実施形態のように、各コア81〜83等を1つの支持板により支持することも可能である。第2実施形態および第3実施形態において、特に言及しない構造は第1実施形態と同様である。
【0075】
[第2実施形態]
図14は、第2実施形態に係る固定子2Aの一部の概略的な断面図である。固定子2B,2Cの構造は、例えば固定子2Aと同様である。
固定子2Aは、支持板200を備えている。支持板200は、第1実施形態における第1支持板3と同様の構成であり、第1コア開口31、第2コア開口32および第3コア開口33を有している。支持板200は、例えば第1実施形態と同じく、ボルトおよびナットによりフレーム20Aに固定することができる。固定子2Aは、第1実施形態と同じく第1押え部材5A,5B、第2押え部材6A,6Bおよび第3押え部材7A,7Bを備えるが、図14においては図示を省略している。
【0076】
支持板200は、第1面F201と、第1面F201の反対側の第2面F202とを有している。各コア81〜83および各コイル91,92は、第1面F201の側に配置されている。
【0077】
固定子2Aは、各コア81〜83、各コイル91,92および第1面F201を覆う絶縁性の樹脂層201を備えている。樹脂層201は、例えば上述の含浸処理により形成することができる。樹脂層201の各コア81〜83および各コイル91,92を覆う部分の厚さは、例えば支持板200の厚さよりも小さい。
【0078】
支持板200は、第1面F201により各コア81〜83および各コイル91,92を支持している。具体的には、第1コア81は、図示せぬ第1押え部材5A,5Bおよび樹脂層201により第1面F201に対して固定されている。第2コア82は、図示せぬ第2押え部材6A,6Bおよび樹脂層201により第1面F201に対して固定されている。第3コア83は、図示せぬ第3押え部材7A,7Bおよび樹脂層201により第1面F201に対して固定されている。各コイル91,92は、樹脂層201により第1面F201に対して固定されている。固定子2Aは、各コイル91,92を支持板200に固定する部材をさらに備えてもよい。
【0079】
本実施形態の構造であれば、支持板を1つ省略できるので、固定子2ないしモータMの製造コストを低減できるとともに、固定子2を薄型化できる。また、絶縁性の樹脂層201により、各コア81〜83および各コイル91,92を強固に固定するとともに、固定子2の絶縁性を高めることができる。
【0080】
なお、各押え部材5A,5B,6A,6B,7A,7Bを用いずに、樹脂層201で各コア81〜83および各コイル91,92を支持板200に固定してもよい。この場合には、これら押え部材に相当する部品点数を削減できる。
その他、本実施形態からは第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0081】
[第3実施形態]
図15は、第3実施形態に係る固定子2Aの一部の概略的な断面図である。固定子2B,2Cの構造は、例えば固定子2Aと同様である。
固定子2Aは、支持板300を備えている。支持板300は、第1実施形態における第1支持板3と同様の構成であり、第1コア開口31、第2コア開口32および第3コア開口33を有している。支持板300は、例えば第1実施形態と同じくボルトおよびナットによりフレーム20Aに固定することができる。
【0082】
支持板300は、第1面F301と、第1面F301の反対側の第2面F302とを有している。第1コア81は、第1コア開口31に挿入され、各面F301,F302の双方から突出している。第2コア82は、第2コア開口32に挿入され、各面F301,F302の双方から突出している。第3コア83は、第3コア開口33に挿入され、各面F301,F302の双方から突出している。
【0083】
一例として、第1コア81が第1面F301から軸方向Xに突出する長さと、第2面F302から軸方向Xに突出する長さとが等しい。ただし、第1コア81が各面F301,F302から突出する長さが異なってもよい。同様に、第2コア82が各面F301,F302から軸方向Xに突出する長さは例えば等しいが、これら長さが異なってもよい。また、第3コア83が各面F301,F302から軸方向Xに突出する長さは例えば等しいが、これら長さが異なってもよい。
【0084】
固定子2Aは、第1面F301に支持された第1コイル311と、第2面F302に支持された第2コイル312と、第1面F301に支持された第3コイル313と、第2面F302に支持された第4コイル314とを備えている。これらコイル311〜314は、いずれも回転軸AXを囲う環状であり、周方向Cに素線を巻回して構成されている。第1コイル311と第2コイル312は、電気的に接続されている。第3コイル313と第4コイル314は、電気的に接続されている。第1コイル311と第2コイル312は半径が同じであり、軸方向Xに並んでいる。第3コイル313と第4コイル314は半径が同じであり、軸方向Xに並んでいる。第3コイル313と第4コイル314の半径は、第1コイル311と第2コイル312の半径よりも小さい。
【0085】
第1コア81は、第1コイル311および第2コイル312の外周側において周方向Cに配列されている。第2コア82は、第1コイル311および第2コイル312と、第3コイル313および第4コイル314との間で周方向Cに配列されている。第3コア83は、第3コイル313および第4コイル314の内周側において周方向Cに配列されている。
【0086】
固定子2Aは、絶縁性の第1樹脂層301および第2樹脂層302を備えている。第1樹脂層301は、第1面F301、第1コイル311、第3コイル313および第1面F301から突出する各コア81〜83を覆っている。第2樹脂層302は、第2面F302、第2コイル312、第4コイル314および第2面F302から突出する各コア81〜83を覆っている。第1樹脂層301の各コア81〜83および各コイル311,313を覆う部分の厚さは、例えば支持板300の厚さよりも小さい。同様に、第2樹脂層302の各コア81〜83および各コイル312,314を覆う部分の厚さは、例えば支持板300の厚さよりも小さい。
【0087】
各コア81〜83は、各樹脂層301,302により支持板300に固定されている。第1コイル311および第3コイル313は、第1樹脂層301により第1面F301に固定されている。第2コイル312および第4コイル314は、第2樹脂層302により第2面F302に固定されている。
【0088】
本実施形態の構造であれば、第2実施形態と同じく支持板を1つ省略できるので、固定子2ないしモータMの製造コストを低減できるとともに、固定子2を薄型化できる。また、支持板300の軸方向Xにおける両側に、各コア81〜83およびコイルをバランス良く配置することができる。また、絶縁性の樹脂層301,302により、各コア81〜83および各コイル311〜314を強固に固定するとともに、固定子2の絶縁性を高めることができる。
【0089】
以上の第1〜第3実施形態においては、4つの回転子1A〜1Dと3つの固定子2A〜2Cを備えるモータMを開示した。しかしながら、モータMは、より多い数の固定子と回転子を備えてもよいし、より少ない数の固定子と回転子を備えてもよい。
【0090】
第1コア81の鍔部81bは、コア本体81aから周方向Cに突出するものに限られず、軸方向Xと交わる他の方向に突出してもよい。例えば、鍔部81bは、コア本体81aから径方向Rに突出してもよい。第2コア82の鍔部82bおよび第3コア83の鍔部83bについても同様である。
【0091】
各支持板3,4,200,300を非磁性かつ非導電性の材料で形成する場合、各コイルの周囲の磁束が阻害されないのであれば、コア開口は必ずしも設ける必要はない。
【0092】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0093】
M…モータ、S…シャフト、AX…回転軸、1A〜1D…回転子、2A〜2C…固定子、3…第1支持板、4…第2支持板、5A,5B…第1押え部材、6A,6B…第2押え部材、7A,7B…第3押え部材、10A〜10D…ハウジング、20A〜20C…フレーム、31〜33,41〜43…コア開口、50,70…保持部、81…第1コア、82…第2コア、83…第3コア、91…第1コイル、92…第2コイル、810〜830…電磁鋼板、X…軸方向、R…径方向、C…周方向、D…圧延方向。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15