特許第6866400号(P6866400)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6866400油圧作用を有する肩部を備える2パーツオイルワイパーリング
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6866400
(24)【登録日】2021年4月9日
(45)【発行日】2021年4月28日
(54)【発明の名称】油圧作用を有する肩部を備える2パーツオイルワイパーリング
(51)【国際特許分類】
   F16J 9/20 20060101AFI20210419BHJP
   F02F 5/00 20060101ALI20210419BHJP
【FI】
   F16J9/20
   F02F5/00 301A
   F02F5/00 R
   F02F5/00 B
【請求項の数】1
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2018-559714(P2018-559714)
(86)(22)【出願日】2017年4月26日
(65)【公表番号】特表2019-518178(P2019-518178A)
(43)【公表日】2019年6月27日
(86)【国際出願番号】EP2017059855
(87)【国際公開番号】WO2017207172
(87)【国際公開日】20171207
【審査請求日】2020年3月23日
(31)【優先権主張番号】102016110131.1
(32)【優先日】2016年6月1日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】509340078
【氏名又は名称】フェデラル−モーグル ブルシェイド ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】FEDERAL−MOGUL BURSCHEID GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100177426
【弁理士】
【氏名又は名称】粟野 晴夫
(72)【発明者】
【氏名】リチャード ミトラー
(72)【発明者】
【氏名】フェビアン ルーシュ
【審査官】 山田 康孝
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第02245980(US,A)
【文献】 独国特許出願公開第102009036240(DE,A1)
【文献】 独国特許出願公開第102006030881(DE,A1)
【文献】 特開2004−197818(JP,A)
【文献】 特開2011−075065(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16J 7/00−10/04
F02F 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リングキャリア(1)及び内側ばね(2)を備えるオイルワイパーリングであって、
前記リングキャリアの外側摺動面に、溝が間に位置する2つの肩部(3,4)が周方向に配置され、
前記溝から前記リングキャリア(1)の内側に向けて、半径方向に延在する開口(5)が配置され、
前記リングキャリアの外側摺動面のうち、前記肩部(3,4)の前記外側摺動面領域が、ピボット点(Y,Z)を有すると共に、凸球面状に構成され、
前記2つのピボット点(Y,Z)のうち、一方のピボット点(Y)とリング軸線との間の距離と、他方のピボット点(Z)とリング軸線との間の距離が実質的に等しく、
前記肩部(3,4)のうち、一方が燃焼室側の肩部(3)であり、他方がクランクケース側の肩部(4)であり、
前記肩部(3)の軸線方向高さ(K)が、前記肩部(4)の軸線方向高さ(S)に比べて少なくとも2倍大きく、
前記クランクケース側における前記肩部(4)の前記外側摺動面領域が、対称的かつ球面状に構成され、前記他方のピボット点(Z)が、前記クランクケース側における前記肩部(4)における前記軸線方向高さ(S)の中心に配置されているオイルワイパーリング。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ピストンリングに関し、特にオイルワイパーリングに関する。
【背景技術】
【0002】
4ストロークエンジンにおける主な問題の1つは、クランクケースからのオイルで、ピストンリング・ピストンシステムを制御及びシールすることである。ピストンリング・ピストンシステムの制御及びシールを可能とするため、燃焼室をクランクケース内のオイルに対して可能な限り効果的に密封するピストンリングが使用される。この場合に留意すべきは、摩擦と、燃焼室からのガスシールとに関してピストンリングシステムの機能性を保証するために、システムにおいて一定量の油が必要だということである。この規定量の油は、ピストンリングの摺動面上における流体力学的な潤滑膜の形成を抑制することなく、可及的に僅かとする必要がある。特にオイルワイパーリングにより、油の排出、機能性、並びに耐摩耗性との間で、最適なバランスを実現する必要がある。
【0003】
オイルワイパーリング(以下においては単にオイルリングとも称される)は、2ピース又は3ピース形式で、LVDエンジン、LVPエンジン、並びにHDエンジンに使用される。2ピースリングの場合、内側ばねを有すると共に、外側の摺動面をシリンダ壁に対して押圧するリングキャリアを備えるよう構成される。ピストンリングの摺動面上には、シリンダ壁から余分な油を掻き落とす2つの肩部が配置され、これら肩部の間に、例えば孔又はスロットとして形成された開口が位置することにより、余分な油がピストンリングの外側から内側に向けて排出される。肩部は、その高さ及び深さに関して対称的に配置される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、リングの機能性を維持しながらも、ピストンリングシステムに存在するオイル量の制御を改善してオイル消費量を低減することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この問題は、本発明によれば、リングキャリア及び内側ばねを備えるオイルワイパーリングにより解決される。本発明に係るリングキャリアの外側摺動面には、溝が間に位置する2つの肩部が周方向に配置され、溝からリングキャリアの内側に向けて、半径方向に延在する開口が配置される。この場合、肩部の摺動面領域は、ピボット点を有すると共に、凸球面状に構成され、2つのピボット点とリング軸線との間の距離が等しく、燃焼室側における肩部の軸線方向高さは、クランクケース側における肩部の軸線方向高さに比べて少なくとも2倍大きい。
【0006】
本発明の一態様によれば、燃焼室側における肩部の摺動面領域は、非対称的かつ球面状に構成することができる。
【0007】
他の一態様によれば、燃焼室側における肩部のピボット点は、肩部の軸線方向高さにおいて、溝に近接して25%未満の距離、好適には15%未満の距離に配置することができる。
【0008】
他の一態様によれば、クランクケース側における肩部の摺動面領域は、対称的かつ球面状に構成可能であり、ピボット点は、肩部における軸線方向高さの中心に配置可能である。
【0009】
本明細書における用語は、標準的な意味で理解される。即ち、軸線方向とは、ピストンの対応方向、換言すればピストンの往復運動方向、又はピストン・シリンダの軸線に関連する。リング軸線とは、リング中心点の軸線方向における軸線のことを指し、ピストンリングの装着状態においてはピストンの中心軸線と一致する。半径方向とは、リング平面に対して平行であると共に、リング軸線まで延びるか又はリング軸線から延びる方向のことを指す。
【0010】
以下、図面に基づいて本発明の例示的な実施形態を詳述する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】オイルワイパーリングの軸線方向断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1は、本発明に係るオイルワイパーリングにおける例示的な実施形態の軸線方向断面図を示す。図示のオイルワイパーリングは2パーツで構成されており、リングキャリア1と、装着状態においてオイルワイパーリングをシリンダ壁に向けて外方に押圧する内側の環状ばね2、例えばチューブばねとを備える。オイルリングの摺動面領域上には、周方向に2つの肩部3,4が配置され、これら肩部3,4の間には、溝として形成された窪みがやはり周方向に位置すると共に、軸線方向断面図において面Fを有する。溝底部からは、例えば孔又はスロットとして形成された複数の開口5がリングキャリア1の内側に向けて周方向に延在しており、従って余分な油が摺動面領域からオイルリング内側に向けてリング溝内に流入し、そこからピストンにおける適切な出口を通過して更に搬送される。図示のオイルリングは、摺動面が非対称的に構成されていることを特徴としている。即ち、2つの肩部3,4は、その軸線方向高さK,Sのみならず、摺動面輪郭の両方において大きく異なっている。この場合に対称的及び非対称的という用語は、軸線方向に関して、即ち、リング面に対して平行な平面、換言すれば軸線方向に対して垂直な平面に関して、鏡面対称的の意味で理解される。このことは、図1の断面図であれば水平線に関連する。図示のリングは、合口以外は周方向に回転対称的である。
【0013】
燃焼室側の肩部3は、顕著に非対称的な凸球面を有する。即ち、摺動面は外側に向けて湾曲している。この場合、溝近傍の曲率は、肩部の燃焼室側近傍(図1の上側)における曲率よりも大きい。従って、摺動面は、軸線方向において、溝近傍では比較的急峻に湾曲しているのに対して、他方の側では比較的平坦に湾曲している。ピボット点Y又は「頂点」、即ち半径方向最外側に位置すると共に、リングがシリンダ壁に当接する点は、溝近傍に配置されている。軸線方向におけるピボット点Yから溝までの距離は、燃焼室側における肩部3の軸線方向高さKの25%未満であることが好適であり、より好適には15%である。従って、ピボット点Yは、明らかに下方のクランクケース方向に配置されている。図示の輪郭を選択すれば、過剰な油が流入した場合に、その油がピストンの上昇行程時に容易にオーバーフローすることを意味する。なぜなら、燃焼室側における肩部3の摺動面の非対称的な形状により、軸線方向において、油がシリンダ壁と肩部摺動面との間における比較的大きな領域に流入可能であり、これによりシリンダ壁に対する肩部3の押圧力に抗する比較的大きな力が生じるからである。逆に、ピボット点Yの構成により、ピストンの上昇行程時に、燃焼室側の肩部による良好なオイル掻き落とし作用が得られる。油は、上昇行程の間、関連する圧力降下により開口5を通過してリングキャリア1の内側に流入するまで、肩部3,4の間に保持される。
【0014】
クランクケース側の肩部4は、摺動面に比較的大きな凸球面を有するよう構成されている。即ち、摺動面は、軸線方向において比較的大きな曲率を有する。この場合に「比較的大きい」とは、燃焼室側における肩部3の摺動面の小さく湾曲した部分との比較において理解される。クランクケース側の肩部4におけるピボット点Zは、軸線方向において、クランクケース側の肩部4における高さSのほぼ半分の位置に配置されている。クランクケース側の肩部4におけるピボット点Zの配置は、半径方向において、燃焼室側の肩部3におけるピボット点Yの配置に対応している。即ち、ピボット点Y,Zは、軸線方向において互いに整列し、従ってリング軸線から同じ距離に位置し、リングの装着状態ではシリンダ壁に対して同時に当接する。摺動面をこのように構成すれば、クランクケース側の肩部3により、両方向に良好な掻き落とし作用が得られる。即ち、ピストンの下降行程においては油がクランクケースに向けて下方に掻き落とされ、ピストンの上昇行程においては肩部の間の領域に保持される。
【0015】
肩部3,4における摺動面の構成及びその作用は、2つの肩部間における軸線方向高さの違いにより実現される。燃焼室側の肩部3は、軸線方向高さS(掻き落とし高さ)を有するクランクケース側における肩部4の少なくとも2倍の軸線方向高さK(制御高さ)を有する。これは、K > 2・Sであることを意味する。
【0016】
機能を保証するため、オイルワイパーリング、特にばね2は、軸線方向高さにおいて、リングキャリアの面積重心、即ちばねから外方に向けて作用する力の中心が2つのピボット点Y,Zの間に位置するよう配置されている。従って、肩部3,4における両方の摺動面は、シリンダ壁に対して各ピボット点Y,Z上で同時に押圧される。この場合、2つの肩部を介して、それぞれ、力の約半分が伝達されるのが好適である。ただし、作動時に生じる動的な力に対抗し、シリンダ壁に対して適切な押圧力を作用させるために、力を不均一に分散させることも想定可能であり、これにより例えば肩部の一方がシリンダ壁からリフトオフが回避される。
【0017】
2つの肩部3,4間に位置する溝は、2つの肩部間の間隔に対応する軸線方向高さDと、深さXによって特徴付けられる。肩部3,4間に保持可能な油の体積は、凹面A = D・Xによって決定され、溝の平均円周を乗じて得られる。
【0018】
肩部3,4間の溝におけるこの体積は、一方では、ピストンリングの機能を保証するために十分な油がピストンリングシステム内に到達し、他方では、排出値を可及的に僅かに維持するためにシステム内に油が過度に流入しないことを実現するのに極めて重要である。この点を実現するために判明したところによれば、面Aは、面圧P0と、必要な貫流係数Dxに対するリング肩部における高さK + Sの和との積に比例する必要がある。ここにP0は、肩部がシリンダ壁に押し付けられる圧力、即ち肩部における摺動面の総面積に対する力を表す:
【0019】
貫流係数Dxの数値は、約2〜9 N/mm3である。Dxは、摺動面全体に関して、排出された体積流量及び媒体密度から得られる。即ち、Dx = ρ/2・V2・1/Lhである。ここに、ρは媒体密度を表し、Vは体積流量速度を表し、Lhは直線高さ、即ちシリンダ壁に沿うリングの摺動長さを表す。
【0020】
上述した実施形態により、リングの機能性が完全に維持されながら、オイル消費量が低減される。更に、オイル量がより僅かであることで、肩部間におけるせん断力が低減される。
図1