【実施例】
【0131】
本発明の多層構造体について、以下の実施例を用いて更に説明する。なお、本発明の多層構造体は、これらの実施例のみに限定されるものではない。
〔実施例1〕
【0132】
[偏光子]
熱可塑性樹脂基材として、イソフタル酸ユニットを7モル%有するアモルファスのポリエチレンテレフタレート(以下、「PET」ともいう。)(IPA共重合PET)フィルム(厚み:100μm)を用意し、表面にコロナ処理(58W/m2/min)を施した。一方、アセトアセチル変性PVA(日本合成化学工業(株)製、商品名:ゴーセファイマーZ200(平均重合度:1200、ケン化度:98.5モル%、アセトアセチル化度:5モル%)を1重量%添加したPVA(重合度4200、ケン化度99.2%)を用意して、PVA系樹脂が5.5重量%であるPVA水溶液の塗工液を準備し、乾燥後の膜厚が12μmになるように塗工し、60℃の雰囲気下において熱風乾燥により10分間乾燥して、基材上にPVA系樹脂の層を設けた積層体を作製した。
【0133】
次いで、この積層体をまず空気中130℃で1.8倍に自由端延伸して(空中補助延伸)、延伸積層体を生成した。次に、延伸積層体を液温30℃のホウ酸不溶化水溶液に30秒間浸漬することによって、延伸積層体に含まれるPVA分子が配向されたPVA層を不溶化する工程を行った。本工程のホウ酸不溶化水溶液は、ホウ酸含有量を水100重量部に対して3重量部とした。この延伸積層体を染色することによって着色積層体を生成した。着色積層体は、延伸積層体を液温30℃のヨウ素およびヨウ化カリウムを含む染色液に、最終的に生成される偏光子を構成するPVA層の単体透過率が40〜44%になるように任意の時間、浸漬することによって、延伸積層体に含まれるPVA層をヨウ素により染色させたものである。本工程において、染色液は、水を溶媒として、ヨウ素濃度を0.1〜0.4重量%の範囲内とし、ヨウ化カリウム濃度を0.7〜2.8重量%の範囲内とした。ヨウ素とヨウ化カリウムの濃度の比は1対7である。次に、着色積層体を30℃のホウ酸架橋水溶液に60秒間浸漬することによって、ヨウ素を吸着させたPVA層のPVA分子同士に架橋処理を施す工程を行った。本工程のホウ酸架橋水溶液は、ホウ酸含有量を水100重量部に対して3重量部とし、ヨウ化カリウム含有量を水100重量部に対して3重量部とした。
【0134】
さらに、得られた着色積層体をホウ酸水溶液中で延伸温度70℃として、先の空気中での延伸と同様の方向に3.05倍に延伸して(ホウ酸水中延伸)、最終的な延伸倍率は5.50倍である光学フィルム積層体を得た。光学フィルム積層体をホウ酸水溶液から取り出し、PVA層の表面に付着したホウ酸を、ヨウ化カリウム含有量が水100重量部に対して4重量部とした水溶液で洗浄した。洗浄された光学フィルム積層体を60℃の温風による乾燥工程によって乾燥した。得られた光学フィルム積層体に含まれる偏光子の厚みは5μmであった。
【0135】
[偏光子保護フィルム]
偏光子保護フィルムとしては、グルタルイミド環単位を有するメタクリル樹脂ペレットを、押し出して、フィルム状に成形した後、延伸したものを用いた。この偏光子保護フィルムの厚み40μmであり、透湿度160g/m
2のアクリル系フィルムであった。
【0136】
[偏光フィルム]
次いで、前記偏光子と、前記偏光子保護フィルムを下記に示す接着剤を用いて貼り合わせ、偏光フィルムとした。
【0137】
前記接着剤(活性エネルギー線硬化型接着剤)としては、表1に記載の配合表に従い各成分を混合して、50℃で1時間撹拌し、接着剤(活性エネルギー線硬化型接着剤A)を
調製した。表中の数値は、配合量(添加量)であり、固形分または固形分比(重量基準)を示したものであり、組成物全量を100重量%としたときの重量%を示す。使用した各成分は以下のとおりである。
HEAA:ヒドロキシエチルアクリルアミド
M-220:ARONIX M-220、トリプロピレングリコールジアクリレート)、東亞合成社製
ACMO:アクリロイルモルホリン
AAEM:2-アセトアセトキシエチルメタクリレート、日本合成化学社製
UP-1190:ARUFON UP-1190、東亞合成社製
IRG907:IRGACURE907、2-メチル-1-(4-メチルチオフェニル)-2-モルフォリノプロパン-1-オン、BASF社製
DETX-S:KAYACURE DETX-S、ジエチルチオキサントン、日本化薬社製
【0138】
【表1】
【0139】
なお、前記接着剤を用いた実施例および比較例においては、該接着剤を介して前記偏光子保護フィルムと前記偏光子とを積層した後、紫外線を照射して該接着剤を硬化し、接着剤層を形成した。紫外線の照射には、ガリウム封入メタルハライドランプ(Fusion UV Systems,Inc社製、商品名「Light HAMMER10」、バルブ:Vバルブ、ピーク照度:1600mW/cm
2、積算照射量1000/mJ/cm
2(波長380〜440nm))を使用した。
【0140】
[位相差フィルム]
本実施例の位相差フィルム(1/4波長位相差板)は、液晶材料が配向、固定化された1/4波長板用位相差層、1/2波長板用位相差層の2層から構成される位相差フィルムであった。具体的には以下のように製造された。
【0141】
(液晶材料)
1/2波長板用位相差層、1/4波長板用位相差層を形成する材料として、ネマチック液晶相を示す重合性液晶材料(BASF社製:商品名PaliocolorLC242)を用いた。当該重合性液晶材料に対する光重合開始剤(BASF社製:商品名イルガキュア907)をトルエンに溶解した。さらに塗工性向上を目的としてDIC製のメガファックシリーズを液晶厚みに応じて0.1から0.5%程度加え、液晶塗工液を調製した。配向基材上に、当該液晶塗工液をバーコーターにより塗工した後、90℃で2分間加熱乾燥後、窒素雰囲気
下で紫外線硬化により配向固定化させた。基材は、例えばPETのように液晶コーティング層を後から転写できるものを使用した。さらに塗工性向上を目的としてDIC製のメガファックシリーズであるフッ素系ポリマーを液晶層の厚みに応じて0.1%から0.5%程度加え、MIBK(メチルイソブチルケトン)、シクロヘキサノン、またはMIBKとシクロヘキサノンの混合溶剤を用いて固形分濃度25%に溶解して塗工液を作製した。この塗工液をワイヤーバーにより基材に塗工して65℃設定で3分間の乾燥工程を得て、窒素雰囲気下で紫外線硬化により配向固定して作製した。基材は、例えばPETのように液晶コーティング層を後から転写できるものを使用した。
【0142】
(製造工程)
図4を参照して、本実施例の製造工程を説明する。この製造工程20は、基材14がロールにより提供され、この基材14を供給リール21から供給した。製造工程20は、ダイ22によりこの基材14に紫外線硬化性樹脂10の塗布液を塗布した。この製造工程20において、ロール版30は、1/4波長位相差板の1/4波長板用配向膜に係る凹凸形状が周側面に形成された円筒形状の賦型用金型であった。製造工程20は、紫外線硬化性樹脂が塗布された基材14を加圧ローラ24によりロール版30の周側面に押圧し、高圧水銀燈からなる紫外線照射装置25による紫外線の照射により紫外線硬化性樹脂を硬化させた。これにより製造工程20は、ロール版30の周側面に形成された凹凸形状をMD方向に対して75°になるように基材14に転写した。その後、剥離ローラ26により硬化した紫外線硬化性樹脂10と一体に基材14をロール版30から剥離し、ダイ29により液晶材料を塗布した。またその後、紫外線照射装置27による紫外線の照射により液晶材料を硬化させ、これらにより1/4波長板用位相差層に係る構成を作成した。
【0143】
続いてこの工程20は、搬送ローラ31により基材14をダイ32に搬送し、ダイ32によりこの基材14の1/4波長板用位相差層上に紫外線硬化性樹脂12の塗布液を塗布した。この製造工程20において、ロール版40は、1/4波長位相差板の1/2波長板用配向膜に係る凹凸形状が周側面に形成された円筒形状の賦型用金型であった。製造工程20は、紫外線硬化性樹脂が塗布された基材14を加圧ローラ34によりロール版40の周側面に押圧し、高圧水銀燈からなる紫外線照射装置35による紫外線の照射により紫外線硬化性樹脂を硬化させた。これにより製造工程20は、ロール版40の周側面に形成された凹凸形状をMD方向に対して15°になるように基材14に転写した。その後、剥離ローラ36により硬化した紫外線硬化性樹脂12と一体に基材14をロール版40から剥離し、ダイ39により液晶材料を塗布した。またその後、紫外線照射装置37による紫外線の照射により液晶材料を硬化させ、これらにより1/2波長板用位相差層に係る構成を作成し、1/4波長板用位相差層、1/2波長板用位相差層の2層から構成される厚み7μmの位相差フィルムを得た。
【0144】
[第二部材(円偏光機能フィルム積層体)]
上記のように得られた位相差フィルムと偏光フィルムとを上記接着剤を用いてロールツーロール方式を用いて連続的に貼り合わせ、遅相軸と吸収軸の軸角度が45°となるように、積層フィルム(円偏光機能フィルム積層体)を作製した。
【0145】
[第一粘着層]
本実施例の第一粘着層を構成する粘着層を、以下の方法により作製した。
<アクリルオリゴマーの調製>
<オリゴマーA>
モノマー成分としてメタクリル酸ジシクロペンタニル(DCPMA)60重量部およびメタクリル酸メチル(MMA)40重量部、連鎖移動剤としてα−チオグリセロール3.5重量部、および重合溶媒としてトルエン100重量部を混合し、窒素雰囲気下にて70℃で1時間撹拌した。次に、熱重合開始剤として2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.2重量部を投入し、70℃で2時間反応させた後、80℃に昇温して2時間反応させた。その後、反応液を130℃に加熱して、トルエン、連鎖移動剤および未反応モノマーを乾燥除去して、固形状のアクリルオリゴマー(オリゴマーA)を得た。オリゴマーAの重量平均分子量は5100、ガラス転移温度(Tg)は130℃であった。
【0146】
<オリゴマーB>
モノマー成分をメタクリル酸ジシクロヘキシル(CHMA)60重量部およびメタクリル酸ブチル(BMA)40重量部に変更したこと以外は、オリゴマーAの調製と同様にして固形状のアクリルオリゴマー(オリゴマーB)を得た。オリゴマーBの重量平均分子量は5000、ガラス転移温度(Tg)は44℃であった。
【0147】
(プレポリマーの重合)
プレポリマー形成用モノマー成分として、ラウリルアクリレート(LA)43重量部、2−エチルヘキシルアクリレート(2EHA)44重量部、4−ヒドロキシブチルアクリレート(4HBA)6重量部、およびN−ビニル−2−ピロリドン(NVP)7重量部、ならびに光重合開始剤としてBASF製「イルガキュア184」0.015重量部を配合し、紫外線を照射して重合を行い、プレポリマー組成物(重合率;約10%)を得た。
【0148】
(粘着剤組成物の調製)
上記のプレポリマー組成物100重量部に、後添加成分として、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート(HDDA)0.07重量部、上記のオリゴマーA:1重量部、およびシランカップリング剤(信越化学製「KBM403」):0.3重量部を添加した後、これらを均一に混合して、粘着剤組成物を調製した。以下、この粘着剤組成物を粘着剤組成物1ともいう。
【0149】
(粘着シートの作製)
表面にシリコーン系離型層が設けられた厚み75μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(三菱ケミカル製「ダイアホイルMRF75」)を基材(兼重剥離フィルム)として、基材上に上記の光硬化性粘着剤組成物を厚み50μmになるように塗布して塗布層を形成した。この塗布層上に、カバーシート(兼軽剥離フィルム)として片面がシリコーン剥離処理された厚み75μmのPETフィルム(三菱ケミカル製「ダイアホイルMRE75」)を貼り合わせた。この積層体に、カバーシート側から、ランプ直下の照射面における照射強度が5mW/cm
2になるように位置調節したブラックライトにより、紫外線を照射して光硬化を行い、厚み50μmの粘着シートを得た。以下、同様な方法により作製された粘着剤組成物1の任意の厚さの粘着層を粘着層1ともいう。
【0150】
[第二粘着層]
厚みが15μmである以外は、第一粘着層と同様の条件で、本実施例の第二粘着層を構成する粘着層を作製した。
【0151】
[第三粘着層]
本実施例の第三粘着層を構成する粘着層を、以下の方法により作製した。
<(メタ)アクリル系ポリマーA1の調製>
攪拌羽根、温度計、窒素ガス導入管、冷却器を備えた4つ口フラスコに、ブチルアクリレート(BA)99重量部、4-ヒドロキシブチルアクリレート(HBA)1重量部を含有するモノマー混合物を仕込んだ。
【0152】
さらに、前記モノマー混合物(固形分)100重量部に対して、重合開始剤として2,
2´-アゾビスイソブチロニトリルを0.1重量部を酢酸エチルと共に仕込み、緩やかに攪拌しながら窒素ガスを導入して窒素置換した後、フラスコ内の液温を55℃付近に保って7時間重合反応を行った。その後、得られた反応液に、酢酸エチルを加えて、固形分濃度30%に調整した、重量平均分子量160万の(メタ)アクリル系ポリマーA1の溶液を調製した。
【0153】
<アクリル系粘着剤組成物の調製>
得られた(メタ)アクリル系ポリマーA1溶液の固形分100重量部に対して、イソシアネート系架橋剤(商品名:タケネートD110N、トリメチロールプロパンキシリレンジイソシアネート、三井化学(株)製)0.1重量部、過酸化物系架橋剤のベンゾイルパーオキサイド(商品名:ナイパーBMT、日本油脂(株)製)0.3重量部と、シランカップリング剤(商品名:KBM403、信越化学工業(株)製)0.08重量部を配合して、アクリル系粘着剤組成物を調製した。以下、この粘着剤組成物を粘着剤組成物2ともいう。
【0154】
<粘着シートの作製>
前記アクリル系粘着剤組成物を、シリコーン系剥離剤で処理された厚さ38μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(PETフィルム、透明基材、セパレータ)の表面に、ファウンテンコータで均一に塗工し、155℃の空気循環式恒温オーブンで2分間乾燥し、基材の表面に厚さ20μmの粘着層(第三粘着層)を形成した。この塗布層上に、カバーシート(兼軽剥離フィルム)として片面がシリコーン剥離処理された厚み38μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(PETフィルム、透明基材、セパレータ)を貼り合わせた。以下、同様な方法により作製された粘着剤組成物2の任意の厚さの粘着層を粘着層2ともいう。
【0155】
[第四粘着層]
厚みが25μmである以外は、第一粘着層と同様の条件で、本実施例の第四粘着層を構成する粘着層を作製した。
【0156】
[第一部材(ウィンドウ部材)]
第一部材であるウィンドウ部材としては、ウィンドウフィルムとしての透明ポリイミドフィルム(KOLON社製、製品名「C_50」、厚み50μm(以下、このウィンドウフィルムを「ウィンドウフィルム1」ともいう))の片面にアクリル系のハードコート層(厚み10μm)を設けたものを用いた。
【0157】
ハードコート層は、ハードコート層用のコーティング剤を用いて形成した。より具体的には、まず、透明ポリイミドフィルムの片面にコーティング剤を塗布して塗布層を形成し、塗布層を透明ポリイミドフィルムとともに90℃で2分間加熱した。次いで、塗布層に高圧水銀ランプを用いて紫外線を積算光量300mJ/cm
2で照射することによりハードコート層を形成した。このようにしてウィンドウ部材を作製した。
【0158】
なお、ハードコート層用のコーティング剤は、ベース樹脂としての多官能アクリレート(アイカ工業社製、製品名「Z−850−16」)100質量部、レベリング剤(DIC社製、商品名:GRANDIC PC−4100)5質量部、および光重合開始剤(チバ・ジャパン社製、商品名:イルガキュア907)3質量部を混合し、固形分濃度が50質量%となるように、メチルイソブチルケトンで希釈することにより調製した。
【0159】
[第三部材(タッチセンサ部材)]
透明樹脂基材として、シクロオレフィン系樹脂基材(日本ゼオン社製「ZEONOR」厚み25μm、面内の複屈折率0.0001)を用意した。
【0160】
次いで、透明樹脂基材の上面に、バインダー樹脂からなるハードコート組成物の希釈液を塗布し、透明樹脂基材の下面に、バインダー樹脂と複数の粒子を含有するハードコート組成物の希釈液を塗布し、次いで、これらを乾燥した後、両面に紫外線を照射し、ハードコート組成物を硬化させた。これにより、透明樹脂基材の上面に、粒子を含有しない第1硬化樹脂層(厚み1μm)、透明樹脂基材の下面に、粒子を含有する第2硬化樹脂層(厚み1μm)を形成した。
【0161】
なお、粒子として、架橋アクリル・スチレン系樹脂粒子(積水樹脂社製「SSX105」、直径3μm)を用いた。バインダー樹脂として、ウレタン系多官能ポリアクリレート(DIC社製、「UNIDIC」)を用いた。
【0162】
次いで、第1硬化樹脂層の上面に、ジルコニア粒子と紫外線硬化性樹脂とを含有する光学調整組成物の希釈液(JSR社製「オプスターZ7412」、屈折率1.62)を塗布し、80℃で3分間乾燥した後、紫外線を照射した。これにより、第1硬化樹脂層の上面に、光学調整層(厚み0.1μm)を形成した。
【0163】
次いで、スパッタリングで、光学調整層の上面に、非晶質透明導電層であるITO層(厚み40nm)を形成した。
【0164】
これにより、第2硬化樹脂層、透明樹脂基材、第1硬化樹脂層、光学調整層および非晶質透明導電層を順に備える非晶質透明導電性フィルムを作製した。
【0165】
次いで、得られた非晶質透明導電性フィルムを、130℃で90分の加熱処理を実施し、ITO層を結晶化させた。
【0166】
[パネル部材]
パネル基部として、BPDA(ビフェニルテトラカルボン酸二無水物)を原料とした、ポリイミド系樹脂フィルム(宇部興産株式会社製「UPILEX」、厚み25μm)を用意した。
【0167】
次いで、スパッタリングで、ポリイミド系樹脂フィルムの上面に、非晶質透明導電層であるITO層(厚み40nm)を形成した。
【0168】
次いで、得られた非晶質透明導電性フィルムを、130℃で90分の加熱処理を実施し、ITO層を結晶化させた。
【0169】
そして、得られたITO層、ITO層付透明導電性フィルムを、それぞれ、薄膜封止層、パネル部材のダミーとして用いた。以下この薄膜封止層のダミーのITO層を「薄膜封止層代替ITO層」または「代替ITO層」ともいう。
【0170】
[保護部材]
本実施例の保護部材として、BPDA(ビフェニルテトラカルボン酸二無水物)を原料とした、ポリイミド系樹脂基材(宇部興産株式会社製「UPILEX」、厚み50μm)を用いた。
【0171】
得られた各部材、層、フィルムについて、以下のように各種評価を行った。得られた各粘着層、ハードコート層、偏光子保護フィルム、ITO層、代替ITO層の特性を表2−1〜2−3に示す。
【0172】
〔実施例2〕
第二粘着層を構成する粘着層の粘着剤組成物として、粘着剤組成物2を用いた以外は、実施例1と同様の条件で、各部材、層、フィルム、積層体を製造および作製し、以下のように各種評価を行った。得られた各粘着層、ハードコート層、偏光子保護フィルム、ITO層、代替ITO層の特性を表2−1〜2−3に示す。
【0173】
〔実施例3〕
第二粘着層を構成する粘着層として、下記の粘着層を用いた以外は、実施例1と同様の条件で、各部材、層、フィルム、積層体を製造および作製し、以下のように各種評価を行った。得られた各粘着層、ハードコート層、偏光子保護フィルム、ITO層、代替ITO層の特性を表2−1〜2−3に示す。
【0174】
本実施例の第二粘着層を構成する粘着層を、以下の方法により作製した。
<(メタ)アクリル系ポリマーA3の調製>
フラスコ内の液温を55℃付近に保って7時間重合反応を行った際に、酢酸エチルとトルエンの配合割合(重量比)が95/5になるようにして、重合反応を行ったこと以外は、(メタ)アクリル系ポリマーA1の調製と同様に行った。
<アクリル系粘着剤組成物の調製>
得られた(メタ)アクリル系ポリマーA1溶液の固形分100重量部に対して、トリメチロールプロパン/トリレンジイソシアネート(日本ポリウレタン工業社製、商品名:コロネートL)0.15重量部と、シランカップリング剤(商品名:KBM403、信越化学工業(株)製)0.08重量部を配合して、アクリル系粘着剤組成物を調製した。以下、この粘着剤組成物を粘着剤組成物3ともいう。
【0175】
<粘着シートの作製>
前記アクリル系粘着剤組成物を、シリコーン系剥離剤で処理された厚さ38μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(PETフィルム、透明基材、セパレータ)の表面に、ファウンテンコータで均一に塗工し、155℃の空気循環式恒温オーブンで2分間乾燥し、基材の表面に厚さ15μmの粘着層(第二粘着層)を形成した。この塗布層上に、カバーシート(兼軽剥離フィルム)として片面がシリコーン剥離処理された厚み38μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(PETフィルム、透明基材、セパレータ)を貼り合わせた。以下、同様な方法により作製された粘着剤組成物3の任意の厚さの粘着層を粘着層3ともいう。
【0176】
〔実施例4〕
第二粘着層を構成する粘着層として、下記の粘着層を用いたこと、および、下記のように多層構造体を作製したこと以外は、実施例1と同様の条件で、各部材、層、フィルム、積層体を製造および作製し、以下のように各種評価を行った。得られた各粘着層、ハードコート層、偏光子保護フィルム、ITO層、代替ITO層の特性を表2−1〜2−3に示す。
【0177】
本実施例の第二粘着層を構成する粘着層を、以下の方法により作製した。
【0178】
モノマー成分としてのアクリル酸2−エチルヘキシル(2EHA):63重量部、N−ビニル−2−ピロリドン(NVP):15重量部、メタクリル酸メチル(MMA):9重量部、アクリル酸2−ヒドロキシエチル(HEA):13重量部、重合開始剤としての2,2'−アゾビスイソブチロニトリル:0.2重量部、および、重合溶媒としての酢酸エチル133重量部を、セパラブルフラスコに投入し、窒素ガスを導入しながら1時間撹拌した。このようにして重合系内の酸素を除去した後、65℃に昇温し、10時間反応させ、その後、酢酸エチルを加えて固形分濃度30重量%のアクリル系ポリマー溶液を得た。なお、上記アクリル系ポリマー溶液中のアクリル系ポリマーの重量平均分子量は80万であった。
【0179】
次に、上記アクリル系ポリマー溶液に、イソシアネート系架橋剤(商品名「タケネートD110N」、三井化学株式会社製)をアクリル系ポリマー(固形分)100重量部に対して固形分換算で1.1重量部となるように添加し、これを混合することによって粘着剤組成物を調製した。以下、この粘着剤組成物を粘着剤組成物4ともいう。
<粘着シートの作製>
シリコーン系剥離剤で処理された厚さ38μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(PETフィルム、透明基材、セパレータ)の表面に、ファウンテンコータで均一に塗工し、次に、PET基材上に塗布層を形成したものをオーブンに投入し、塗布層を130℃で3分間乾燥させ、PET基材の一方の面に、厚み15μmの粘着層を有する粘着シートを形成した。この塗布層上に、カバーシート(兼軽剥離フィルム)として片面がシリコーン剥離処理された厚み38μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(PETフィルム、透明基材、セパレータ)を貼り合わせた。以下、同様な方法により作製された粘着剤組成物4の任意の厚さの粘着層を粘着層4ともいう。
【0180】
本実施例の多層構造体を、以下の方法により作製した。
【0181】
各粘着層を挟持させる部材の一方に、粘着層を剥離フィルムから転写し、粘着層を挟むように各部材を積層してハンドローラで圧着させた。得られた積層体から幅30mm、長さ100mmの矩形のサンプルを切り取り、粘着層を介して各部材が積層された評価用サンプルを作製した。
【0182】
〔実施例5〜7、9、10、12、13、19、22、27、28、比較例3〕
第一粘着層、第二粘着層、第三粘着層、第四粘着層を構成する粘着層の種類(粘着層1〜4)の組み合わせを表2−1〜2−3に示すように変えたこと以外は、実施例1と同様の条件で、各部材、層、フィルム、積層体を製造および作製し、以下のように各種評価を行った。得られた各粘着層、ハードコート層、偏光子保護フィルム、ITO層、代替ITO層の特性を表2に示す。
【0183】
〔実施例21、23〕
第一粘着層、第二粘着層、第三粘着層、第四粘着層を構成する粘着層の種類(粘着層1〜4)の組み合わせを表2に示すように変えたこと、および、第一粘着層の厚みを25μmとしたこと以外は、実施例1と同様の条件で、各部材、層、フィルム、積層体を製造および作製し、以下のように各種評価を行った。得られた各粘着層、ハードコート層、偏光子保護フィルム、ITO層、代替ITO層の特性を表2に示す。
【0184】
〔実施例8、11、15〜18、20、24〜26、比較例1、2、4、5〕
第一粘着層、第二粘着層、第三粘着層、第四粘着層を構成する粘着層の種類(粘着層1〜4)の組み合わせを表2に示すように変えたこと以外は、実施例4と同様の条件で、各部材、層、フィルム、積層体、多層構造体を製造および作製し、以下のように各種評価を行った。得られた各粘着層、ハードコート層、偏光子保護フィルム、ITO層、代替ITO層の特性を表2に示す。
【0185】
〔実施例29〜31、比較例5〕
第一粘着層、第二粘着層、第三粘着層、第四粘着層を構成する粘着層の種類(粘着層1〜4)の組み合わせを表2に示すように変えたこと、およびウィンドウ部材のウィンドウフィルムとしての透明ポリイミドフィルムとして、東レ・デュポン社製、製品名「カプトン(登録商標)Hタイプ」(以下、このウィンドウフィルムを「ウィンドウフィルム2」ともいう)を用いたこと以外は、実施例1と同様の条件で、各部材、層、フィルム、積層体を製造および作製し、以下のように各種評価を行った。得られた各粘着層、ハードコート層、偏光子保護フィルム、ITO層、代替ITO層の特性を表2−1〜2−3に示す。
【0186】
〔実施例A1〕
比較例1で作製された多層構造体について、後述の(曲げ半径方向に直交する方向のひずみの差のシミュレーション)および(割れの発生評価)の項で説明されるように、第一部材(ウィンドウ部材)を外側にして曲げ変形をすることで第三部材(タッチセンサ部材)の破断し易い層であるITO層が破断したか、または破断するかどうかを判定したところ、表2−1〜2−3に示されるように、破断することがシミュレーションにより予測され、また実際に破断した。
【0187】
そこで、第二粘着層を構成する粘着層を、粘着層1から、せん断弾性率G’のより大きい粘着層4に変更して実施例11の多層構造体を製造した。
【0188】
〔実施例A2〕
比較例2で作製された多層構造体について、後述の(曲げ半径方向に直交する方向のひずみの差のシミュレーション)および(割れの発生評価)の項で説明されるように、第一部材(ウィンドウ部材)を外側にして曲げ変形をすることで第三部材(タッチセンサ部材)の破断し易い層であるITO層が破断したか、または破断するかどうかを判定したところ、表2−1〜2−3に示されるように、破断することがシミュレーションにより予測され、また実際に破断した。
【0189】
そこで、第二粘着層を構成する粘着層を、粘着層1から、せん断弾性率G’のより大きい粘着層4に変更して実施例14の多層構造体を製造した。
【0190】
〔実施例B1〕
比較例1で作製された多層構造体について、後述の(曲げ半径方向に直交する方向のひずみの差のシミュレーション)および(割れの発生評価)の項で説明されるように、第一部材(ウィンドウ部材)を外側にして曲げ変形をすることで第三部材(タッチセンサ部材)の破断し易い層であるITO層が破断したか、または破断するかどうかを判定したところ、表2−1〜2−3に示されるように、破断することがシミュレーションにより予測され、また実際に破断した。
【0191】
そこで、第三粘着層を構成する粘着層を、粘着層4から、せん断弾性率G’のより小さい粘着層1に変更して実施例25の多層構造体を製造した。
【0192】
〔実施例C1〕
比較例2で作製された多層構造体について、後述の(曲げ半径方向に直交する方向のひずみの差のシミュレーション)および(割れの発生評価)の項で説明されるように、第一部材(ウィンドウ部材)を外側にして曲げ変形をすることで第三部材(タッチセンサ部材)の破断し易い層であるITO層が破断したか、または破断するかどうかを判定したところ、表2−1〜2−3に示されるように、破断することがシミュレーションにより予測され、また実際に破断した。
【0193】
そこで、第四粘着層を構成する粘着層を、粘着層2から、せん断弾性率G’のより小さい粘着層1に変更して実施例5の多層構造体についてシミュレーションを行った。
[評価]
【0194】
(厚みの測定)
偏光子、偏光子保護フィルム、位相差フィルム、各粘着層、透明フィルム、ウィンドウフィルムおよび保護部材等の厚みは、ダイヤルゲージ(ミツトヨ製)を用いて測定した。また、ITO層、代替ITO層の厚みは、透過電子顕微鏡(TEM)で撮影した画像に基づいて測定した。
(粘着層のせん断弾性率G’の測定)
各実施例および比較例の粘着シートからセパレータを剥離し、複数の粘着シートを積層して、厚さ約1.5mmの試験サンプルを作製した。この試験サンプルを直径7.9mmの円盤状に打ち抜き、パラレルプレートに挟み込み、Rheometric Scientific社製「Advanced Rheometric Expansion System(ARES)」を用いて、以下の条件により、動的粘弾性測定を行い、測定結果からせん断弾性率G’を読み取った。
【0195】
(測定条件)
変形モード:ねじり
測定温度:−40℃〜150℃
昇温速度:5℃/分
測定周波数:1Hz
(ひずみと応力の測定)
タッチセンサ部材の基材フィルム、パネル部材の基部代替フィルム、および保護部材のフィルム、ならびに、得られたウィンドウフィルム、偏光子、偏光子保護フィルム、粘着層1、粘着層2、粘着層3、および粘着層4から、幅10mm、長さ100mmのサンプルを切り出した。得られた各サンプルを引張試験機(島津製作所製 製品名「オートグラフAG−IS」)に設置し、200mm/minで引っ張った時の、ひずみと応力を測定し、ひずみ−応力曲線を得た。応力は厚み、幅からPa単位に換算したものであった。また、各粘着層は、複数の粘着層を積層して厚み100μmの粘着層を作製したものであった。
また、厚み100μmの粘着層を作製することが困難な場合は、ひずみ−応力曲線は次の方法でも得ることができる。
1.予め、あるサンプルに対して、上述の方法でひずみ−応力曲線を求め、その曲線を、ひずみが0.05%から0.25%の範囲の曲線の傾きから算出される引張弾性率で除することで、規格化されたひずみ−応力曲線を作成する。
2.測定したいサンプルのせん断弾性率G’を上述の方法で測定して取得する。
3.測定したいサンプルの成分を測定し、ポワソン比νを求める。
4.引張弾性率E’とせん断弾性率G’には
E’=2G’(1+ν)
の関係式が成り立つので、上記2.及び3.で測定したG’、νからE’を算出する。
5.上記1.で作成した規格化されたひずみ−応力曲線に、上記4.で求めた引張弾性率E’を乗ずることで、測定したいサンプルのひずみ−応力曲線を得ることができる。
【0196】
(曲げ半径方向に直交する方向のひずみの差のシミュレーション)
得られた各部材、フィルムのひずみ−応力曲線に基づいて、各実施例および各比較例の曲げ変形させた際の各部材、層、フィルムの曲げ半径方向に直交する方向のひずみをシミュレーションにより求め、A/A’、B/B’、1.7A/A’−0.15を算出した。結果を表2−1〜2−3に示す。
【0197】
<コンピュータシミュレーションソフトウエア>
シミュレーションソフトウエアとしては、非線形有限要素解析ソフトウエアであるMSC Software製Marcを使用した。
【0198】
<モデル>
1.層構成
モデルの層構成は、
図12の実施例の多層構造体の断面構成と同様である。
2.モデルサイズ
長さを100mm、厚みを
図12に示される断面構成の各部材の総厚とし、厚み、長さの2次元でメッシュを作成した。
3.曲げ方法
図5に示すように、両端に長さ48mmのカーブを設定し、メッシュの端部10mmをカーブ(剛体モデル)に固定し、左側のカーブを180°回転させ、メッシュの最表面が外側になるように折り曲げた。曲げ直径は、左側のカーブを180°回転させた状態においてメッシュの平行に対向する最表面同士の間隔とし、4mmとした。
4.各層の物性値の入力
ウィンドウフィルム、偏光子保護フィルム、偏光子、タッチセンサ部材の透明樹脂基材、パネル部材の代替透明樹脂基材、保護部材)については、各部材の引張試験のひずみ-応力曲線データのひずみ、応力をそれぞれ真ひずみ(ln(ひずみ+1)、真応力(応力(ひずみ+1))に変換し、テーブルにタイプをsigned_eq_mechanical_Strainとして入力した。メッシュの該当部分の材料特性設定は、タイプを亜弾性として、テーブルから該当する材料の応力-ひずみ曲線を選択した。
【0199】
粘着層については、まず、引張試験のひずみ-応力曲線データを下記のMooney-Rivlinの式でフィッテングし、係数C10、C01、C11を算出した。そして、メッシュの該当部分の材料特性のタイプをムーニーとし、算出した係数C10、C01、C11を入力した。
ここで、γ=ε+1であり、fは公称応力、εは公称ひずみである。
【0200】
位相差フィルムについては、メッシュの該当部分の材料特性のタイプを等方性弾塑性とし、引張試験で得られた光学フィルム部材である、位相差フィルム、偏光子、および偏光子保護フィルムの積層体のひずみ−試験力曲線データと引張試験で得られた偏光子および偏光子保護フィルムの積層体のひずみ−試験力曲線データとの差をとることにより得られた、位相差フィルムのひずみ−試験力曲線に相当する曲線の値を、位相差フィルムの断面積(幅×厚み)で除した位相差フィルムのひずみ−応力曲線に相当する曲線における、ひずみが0.05%〜0.25%の範囲における曲線の傾きを算出し、これを位相差フィルムの弾性率として入力した。
【0201】
ITO層、代替ITO層、ハードコート層についても、同様に、メッシュの該当部分の材料特性のタイプを等方性弾塑性とし、引張試験で得られたタッチセンサ部材であるITO層付き透明樹脂基材のひずみ−試験力曲線とタッチセンサ部材の透明樹脂基材のひずみ−試験力曲線データとの差分、引張試験で得られたパネル部材である代替ITO層付き代替透明樹脂基材のひずみ−試験力曲線とパネル部材の代替透明樹脂基材のひずみ−試験力曲線との差分、引張試験で得られたハードコート層付きウィンドウフィルムのひずみ−試験力曲線とウィンドウフィルムのひずみ−試験力曲線との差分に基づいてそれぞれ算出した弾性率を入力した。
【0202】
<シミュレーション結果>
各実施例および各比較例の各部材について、屈曲部分の曲げ半径方向に直交する方向のひずみ(Elastic Strain in Preferred Sys)(
図6参照)を計算した。比較例1および実施例9〜11、実施例28、4、8および11、実施例8および14〜16、実施例17〜20について算出された屈曲部分の曲げ半径方向に直交する方向のひずみを積層方向の分布を
図8〜
図11に示す。
【0203】
また、各実施例および各比較例のハードコート層、偏光子保護フィルム、ITO層、薄膜封止層代替ITO層について、算出された屈曲部分の曲げ半径方向に直交する方向のひずみのうちの最外層の値と、各層およびフィルムの伸びが破断伸びを下回ったか否かを表2−1〜2−3に示す。
【0204】
また、各実施例および各比較例について、算出された屈曲部分の曲げ半径方向に直交する方向のひずみから求めたA/A’、1.7A/A’−0.15−B/B’、B/B’の各値を表2−1〜2−3に示す。また、A/A’とB/Bの関係を示す図を
図11に示す。
【0205】
(割れの発生評価)
実施例4、8、11、14〜18、20、24〜26、比較例1、2、4で得られたダミーの多層構造体のサンプルについて、折り曲げ時に、ハードコート層、偏光子保護フィルム、ITO層、薄膜封止層代替ITO層に割れが発生したか否かを確認した。
【0206】
具体的には、
図12に示すように、多層構造体を180度折り曲げ、折り曲げられた多層構造体の外側をガラス板で押さえ、さらに、ガラス板間に4mmの板を挿入して、多層構造体の平行に対向する最表面同士の間隔が4mmに保たれるように屈曲状態を保持した。各層、フィルムの割れを評価した。曲げ直径は、シミュレーションのモデルと同様に、多層構造体が180°の角度で折り曲げられた状態において多層構造体の平行に対向する最表面同士の間隔とし、4mmとした。
【0207】
ITO層と薄膜封止層代替ITO層については、屈曲後にITO層の抵抗値が上昇するか否かで割れの発生を評価した。抵抗値はITO層の表面に導電テープ(短冊状端子)を貼り、多層構造体の外側から抵抗を測定できるように配置し、テスターで抵抗値を測定した。ITO層は、シート抵抗が50Ω/□のものを用い、屈曲前の短冊状端子間の抵抗値は165Ω程度であったが、屈曲した状態での抵抗値が、屈曲前の抵抗値の1.1倍以上となったものについて割れが発生したと評価した。
【0208】
ハードコート層と偏光子保護フィルムについては、屈曲後の顕微鏡観察もしくは、断面SEM観察で割れの発生を評価した。
【0209】
各実施例および各比較例の割れ評価結果を表2−1〜2−3に示す。
【0210】
(破断伸びの算出)
偏光子保護フィルムの破断伸びについては、以下のようにして破断伸びを算出した。ます、上述の割れの発生評価で用いた屈曲試験と同様の屈曲試験を、曲げ直径を変えて行い、割れが発生する曲げ直径を確認した。そして、その割れが発生する曲げ直径を曲げ直径、偏光子保護フィルム単層をモデルとして、上述のシミュレーションと同様のシミュレーションを行い、屈曲部分の曲げ半径に直交する方向のひずみを算出し、これを破断伸びとした。
【0211】
また、ハードコート層、ITO層、代替ITO層の破断伸びについては、ハードコート層が積層されているウィンドウフィルム、透明樹脂基材、代替透明樹脂基材の破断伸びを、偏光子保護フィルムの破断伸びの算出手法と同様の算出手法によって算出し、これをそれぞれの破断伸びとした。
【0212】
算出された各実施例および各比較例のハードコート層、偏光子保護フィルム、ITO層、代替ITO層の破断伸びを表2−1〜2−3に示す。
【0213】
【表2-1】
【0214】
【表2-2】
【0215】
【表2-3】
【0216】
【表3】
【0217】
【表4】
【0218】
【表5】
【0219】
【表6】
【0220】
(評価)
表2−1〜2−3、
図7〜
図10から以下のことが分かった。すなわち、すべての実施例および比較例において、第一部材であるウィンドウ部材の外側の層であるハードコート層、第二部材である円偏光機能フィルム積層体の外側の構成部材である偏光子保護フィルム、第三部材であるタッチセンサ部材の外側の層であるITO層の外側の面の伸びの値は正の値であり、第一、第二、第三部材の外側の面に引張応力が作用していることが分かった。
【0221】
表2−1〜2−3、
図11から以下のことが分かった。すなわち、0.3<A/A‘<1.2・・・(1)、B/B’<1.7A/A‘−0.15・・・(2)、0<B/B’<1.25・・・(3)を満たさない比較例1〜5の多層構造体においては、シミュレーションにより算出された曲げ変形させた際のITO層の伸びが、ITO層の破断伸びである1.50%を上回った。つまり、ITO層が破断することが示された。実際に作製した比較例1、2、4の多層構造体でもITO層に割れが発生した。これに対して、上記式(1)〜(3)を満たす実施例1〜31の多層構造体においては、シミュレーションにより算出された曲げ変形させた際のITO層の伸びが、ITO層の破断伸びである1.50%を下回った。つまり、ITO層が破断しないことが示された。実際に作製した実施例4、8、11、14〜18、20、24〜26の多層構造体でもITO層に割れの発生は認められなかった。このように、実施例及び比較例のシミュレーション結果と実際に作成した実施例及び比較例における割れの発生の有無は、よく一致した。したがって、第一粘着層および第二粘着層の硬さを、実施例1〜31の多層構造体のように定めることにより、例えば、第一粘着層および第二粘着層のせん断弾性率G’や厚みを、実施例1〜31の多層構造体のように定めることにより、また、例えば、A/A’およびB/B’の値が、上記式(1)〜(3)を満たすように構成することにより、曲げ変形させた際のITO層の伸びを、ITO層の破断伸びよりも小さくすること、すなわち偏光子保護フィルムの破断を抑制することができることが分かった。
【0222】
また、実施例1〜31の多層構造体では、偏光子保護フィルムの伸びも破断伸び(4.00%)を下回り、実際に作製した実施例4、8、11、14〜18、20、24〜26の多層構造体でも偏光子保護フィルムに割れの発生は認められなかった。したがって、第一粘着層および第二粘着層の硬さを、実施例1〜31の多層構造体のように定めることにより、例えば、第一粘着層および第二粘着層のせん断弾性率G’や厚みを、実施例1〜31の多層構造体のように定めることにより、また、例えば、A/A’およびB/B’の値が、上記式(1)〜(3)を満たすように構成することにより、曲げ変形させた際の偏光子保護フィルムの伸びを、偏光子保護フィルムの破断伸びよりも小さくすること、すなわちITO層の破断を抑制することができた。
【0223】
また、実施例1〜14、19〜24、27、29〜31の多層構造体では、シミュレーションにより算出されたITO層の伸びが破断伸びを下回ったのに加えて、シミュレーションにより算出された代替ITO層の伸びも破断伸び(0.65%)を下回り、実際に作製した実施例4、8、11、14、20、24の多層構造体でも代替ITO層に割れの発生は認められなかった。このように、実施例及び比較例のシミュレーション結果と実際に作成した実施例及び比較例における割れの発生の有無は、よく一致した。したがって、第一粘着層および第二粘着層の硬さを、実施例1〜14、19〜24、27、29〜31の多層構造体のように定めることにより、例えば、第一粘着層および第二粘着層のせん断弾性率G’や厚みを、実施例1〜14、19〜24、27、29〜31の多層構造体のように定めることにより、曲げ変形させた際の代替ITO層の伸びも、代替ITO層の伸びよりも小さくすること、すなわち代替ITO層の破断を抑制することができることが分かった。
【0224】
また、実施例1〜17、21、23、25、26、28〜31の多層構造体では、シミュレーションにより算出されたITO層の伸びが破断伸びを下回ったのに加えて、シミュレーションにより算出されたハードコート層の伸びも破断伸び(4.00%)を下回り、実際に作製した実施例4、8、11、14〜17、25、26の多層構造体でもハードコート層に割れの発生は認められなかった。このように、実施例及び比較例のシミュレーション結果と実際に作成した実施例及び比較例における割れの発生の有無は、よく一致した。したがって、第一粘着層および第二粘着層の硬さを、実施例1〜17、21、23、25、26、28〜31の多層構造体造体のように定めることにより、例えば、第一粘着層および第二粘着層のせん断弾性率G’や厚みを、実施例1〜17、21、23、25、26、28〜31の多層構造体のように定めることにより、また、例えば、A/A’およびB/B’の値が、0.8<A/A’<1.2かつ0<B/B’<0.9を満たすように構成することにより、曲げ変形させた際のハードコート層の伸びも、ハードコート層の伸びよりも小さくすること、すなわちハードコート層の破断を抑制することができることが分かった。
【0225】
また、実施例1〜14、21、23、29〜31の多層構造体では、シミュレーションにより算出されたITO層、偏光子保護フィルム、薄膜封止層代替ITO層、ハードコート層のすべてについて、曲げ変形させた際の伸びが破断伸びを下回り、実際に作製した実施形態4、8、11、14の多層構造体でもITO層、偏光子保護フィルム、薄膜封止層代替ITO層、ハードコート層のすべてについて、割れの発生は認められなかった。このように、実施例及び比較例のシミュレーション結果と実際に作成した実施例及び比較例における割れの発生の有無は、よく一致した。したがって、第一粘着層および第二粘着層の硬さを、実施例1〜14、21、23、29〜31の多層構造体のように定めることにより、例えば、第一粘着層および第二粘着層のせん断弾性率G’や厚みを、実施例1〜14、21、23、29〜31の多層構造体のように定めることにより、また、例えば、A/A’およびB/B’の値が、0.8<A/A’<0.975かつ0.3<B/B’<0.9を満たすように構成することにより、曲げ変形させた際のITO層、偏光子保護フィルム、薄膜封止層代替ITO層、ハードコート層のすべての伸びについて、各層、フィルムよりも小さくすること、すなわち各層、フィルムの破断を抑制することができることが分かった。
【0226】
表3は、比較を容易とするために、表2−1〜2−3の比較例1および実施例9〜11、比較例2および実施例12〜14、比較例5および実施例29〜31を並べ替えたものである。表2−1〜2−3、表3、
図7から以下のことが分かった。
【0227】
実施例1〜4の多層構造体は、第二粘着層以外は同一の構成の多層構造体であり、第二粘着層のせん断弾性率G’は、順に大きいものであったところ、ITO層の伸びおよび薄膜封止層代替ITO層の伸びは順に小さいものとなった。
【0228】
また、実施例5〜8の多層構造体は、第二粘着層以外は同一の構成で、第三粘着層が実施例1〜4の粘着層1ではなく粘着層2であった多層構造体であり、第二粘着層のせん断弾性率G’は、順に大きいものであったところ、ITO層の伸びおよび薄膜封止層代替ITO層の伸びは順に小さいものとなった。
【0229】
また、比較例1、実施例9〜11の多層構造体は、第二粘着層以外は同一の構成で、第三粘着層が、実施例1〜4の粘着層2や実施例5〜8の粘着層3ではなく粘着層3であった多層構造体であり、第二粘着層のせん断弾性率G’は、順に大きいものであったところ、ITO層の伸びおよび薄膜封止層代替ITO層の伸びは順に小さいものとなった。
【0230】
また、比較例2、実施例12〜14の多層構造体は、第二粘着層以外は同一の構成で、第三粘着層が、実施例1〜4の粘着層1、実施例5〜8の粘着層2、比較例1、実施例9〜11の粘着層1ではなく粘着層2であった多層構造体であり、第二粘着層のせん断弾性率G’は、順に大きいものであったところ、ITO層の伸びおよび薄膜封止層代替ITO層の伸びは順に小さいものとなった。
【0231】
また、比較例5、実施例29〜31の多層構造体は、第二粘着層以外は同一の構成で、、第一粘着層、第三粘着層、及び第四粘着層が比較例2及び実施例12と同一の構成で有り、ウィンドウ部材のウィンドウフィルムが実施例1〜14、比較例1〜2のウィンドウフィルム1ではなく、ウィンドウフィルム2であった多層構造体であり、第二粘着層のせん断弾性率G’は、順に大きいものであったところ、ITO層の伸びおよび薄膜封止層代替ITO層の伸びは順に小さいものとなった。
【0232】
以上から、第二粘着層のせん断弾性率G’を大きくすることによって、曲げ変形させた際のITO層の伸びおよび薄膜封止層代替ITO層の伸びを小さくすること、すなわちITO層および薄膜封止層代替ITO層の破断を抑制することができることが分かった。
【0233】
また、実施例A1、A2の多層構造体の製造方法において、比較例1と実施例11、比較例2と実施例14の多層構造体は、それぞれ、第二粘着層以外は同一の構成であったところ、比較例1、2のITO層が、曲げ変形により破断することが予測され、また実際に破断したが、第二粘着層を構成する粘着層のせん断弾性率G’をより大きい実施例11、14のものに変更することで、ITO層に生じる伸びが、ITO層の破断伸びより小さい値に抑制された多層構造体を製造することができた。
【0234】
表4は、比較を容易とするために、表2−1〜2−3の実施例28、4、8、11を並べ替えたものである。表2−1〜2−3、表4、
図8から以下のことが分かった。
【0235】
実施例28、4、8、11の多層構造体は、第三粘着層以外は同一の構成の多層構造体であり、第三粘着層のせん断弾性率G’は、順に大きいものであったところ、ITO層の伸びの伸びは順に大きいものとなった。
【0236】
したがって、第三粘着層のせん断弾性率G’を小さくすることによって、曲げ変形させた際のITO層の伸びを小さくすること、すなわちITO層の破断を抑制することができることが分かった。
【0237】
また、実施例B1の多層構造体の製造方法において、比較例1と実施例25の多層構造体は、第三粘着層以外は同一の構成であったところ、比較例1のITO層が、曲げ変形により破断することが予測され、また実際に破断したが、第三粘着層を構成する粘着層のせん断弾性率G’をより小さい実施例25のものに変更することで、ITO層に生じる伸びが、ITO層の破断伸びより小さい値に抑制された多層構造体を製造することができた。
【0238】
表5は、比較を容易とするために、表2−1〜2−3の実施例8および実施例14〜16を並べ替えたものである。表2−1〜2−3、表5、
図9から以下のことが分かった。
【0239】
実施例8、14〜16の多層構造体は、第四粘着層以外は同一の構成の多層構造体であり、第四粘着層のせん断弾性率G’は、順に大きいものであったところ、ITO層の伸びおよび薄膜封止層代替ITO層の伸びは順に大きいものとなった。
【0240】
したがって、第四粘着層のせん断弾性率G’を小さくすることによって、曲げ変形させた際のITO層の伸びおよび薄膜封止層代替ITO層の伸びを小さくすること、すなわちITO層および薄膜封止層代替ITO層の破断を抑制することができることが分かった。
【0241】
また、実施例C1の多層構造体の製造方法において、比較例2と実施例5の多層構造体は、第四粘着層以外は同一の構成であったところ、比較例2のITO層が、曲げ変形により破断することが予測され、また実際に破断したが、第四粘着層を構成する粘着層のせん断弾性率G’をより小さい実施例5のものに変更することで、ITO層に生じる伸びが、ITO層の破断伸びより小さい値に抑制されることがシミュレーションにより予測され、そのような多層構造体を製造することができた蓋然性が非常に高かった。
【0242】
表6は、理解を容易とするために、表1の実施例8および実施例21〜22、実施例11および実施例23〜24を並べ替えたものである。表2−1〜2−3、表6、
図10から以下のことが分かった。
【0243】
実施例17〜20の多層構造体は、第一粘着層以外は同一の構成の多層構造体であり、第一粘着層のせん断弾性率G’は、順に大きいものであったところ、ハードコート層の伸びは順に大きいものとなった。
【0244】
また、実施例8、21、22の多層構造体は、第一粘着層以外は同一の構成で、第三粘着層が実施例17〜20の粘着層3ではなく粘着層4であり、第四粘着層が実施例17〜20の粘着層4ではなく粘着層1であった多層構造体である。実施例8、21の第一粘着層のせん断弾性率G’は同じであるが、実施例21の第一粘着層の厚みは実施例8の第一粘着層の厚みよりも小さい。よって、第一粘着層の硬さは、実施例8に比べて実施例21の方が大きい。また、上述のように、粘着層の硬さを決定するファクタとしては、粘着層のせん断弾性率G’が支配的なファクタであるところ、実施例22のせん断弾性率G’が実施例21のせん断弾性率G’に比べて2倍以上大きいので、第一粘着層の硬さは、実施例21に比べて実施例22の方が大きい。したがって、第一粘着層の硬さは、順に大きいものであったところ、ハードコート層の伸びは順に大きいものとなった。
【0245】
また、実施例11、23、24の多層構造体は、第一粘着層以外は同一の構成で、第四粘着層が実施例17〜20の粘着層3ではなく粘着層4であった多層構造体であり、第一粘着層の硬さは、順に大きいものであったところ、ハードコート層の伸びは順に大きいものとなった。
【0246】
以上から、第一粘着層の硬さを小さくすることによって、曲げ変形させた際のハードコート層の伸びを小さくすること、すなわちハードコート層の破断を抑制することができることが分かった。
【0247】
図7〜
図10のひずみ分布図における矢印は、対応する粘着層の硬さを大きくしたときに対応する層、フィルムについて、ひずみが引張方向にシフトするか、圧縮方向にシフトするかを示したものである。また、破線は、対応する各層、フィルムの破断伸びを示すものである。
【0248】
図7〜
図10から、複数の層および部材が複数の粘着層を介して積層された各実施例および各比較例の多層構造体において、ある粘着層を硬くすると、多層構造体の折り曲げ時の、その粘着層の外側に積層された層や部材のひずみは引張方向にシフトし、その粘着層の内側に積層された層や部材のひずみは圧縮方向にシフトすることが分かった。
【0249】
例えば、比較例1および実施例9〜11について、
図7を参照すると、順に第二粘着層のせん断弾性率G’が大きくなっている、すなわち第二粘着層の硬さが大きくなっているところ、第二粘着層の硬さが大きくなるにつれて、第二粘着層の外側の層や部材のひずみは引張方向にシフトし、第二粘着層の内側の層や部材のひずみは圧縮方向にシフトしていた。
図8〜
図10の実施例および/または比較例の組についても同様であった。
【0250】
以上、本発明を特定の実施形態について図面を参照して説明したが、本発明は、図示し説明した構成以外にも、幾多の変更が可能である。したがって、本発明は、図示し説明した構成に限定されるものではなく、その範囲は、添付の特許請求の範囲およびその均等範囲によってのみ定められるべきである。