(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6866454
(24)【登録日】2021年4月9日
(45)【発行日】2021年4月28日
(54)【発明の名称】信号の位相バランスを最小化するためのPCB構造の広帯域フィルタ
(51)【国際特許分類】
H01P 1/213 20060101AFI20210419BHJP
H01P 1/203 20060101ALI20210419BHJP
H01P 7/08 20060101ALI20210419BHJP
【FI】
H01P1/213 M
H01P1/203
H01P7/08
【請求項の数】3
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2019-195853(P2019-195853)
(22)【出願日】2019年10月29日
(65)【公開番号】特開2021-35036(P2021-35036A)
(43)【公開日】2021年3月1日
【審査請求日】2019年10月29日
(31)【優先権主張番号】10-2019-0106021
(32)【優先日】2019年8月28日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】518432137
【氏名又は名称】イナートロン インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Innertron, Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100121382
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 託嗣
(72)【発明者】
【氏名】ホ,クワァンミョン
(72)【発明者】
【氏名】キム,ヨンホ
(72)【発明者】
【氏名】イ,ドンハク
【審査官】
佐藤 当秀
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2011/0248793(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2011/0109402(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01P 1/20
H01P 5/12
H01P 7/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
PCB基板と、前記PCB基板を実装するための空間を形成するハウジングを含む広帯域フィルタにおいて、
前記PCB基板は、
第1入出力ポート、
第2入出力ポート、
アンテナ入出力ポート、
第1伝送零点を有する共振器を形成する四角パッチ状の第1スタブと、第2伝送零点を有する共振器を形成する四角パッチ状の第2スタブと、第3伝送零点を有する共振器を形成する四角パッチ状の第3スタブと、前記第1入出力ポートと前記第1スタブとを連結しインダクタを形成する第1ストリップラインと、前記第1スタブと前記第2スタブとを連結しインダクタを形成する第2ストリップラインと、前記第2スタブと前記第3スタブを連結しインダクタを形成する第3ストリップラインと、前記第3スタブと前記アンテナ入出力ポートとを連結しインダクタを形成する第4ストリップラインとから構成され、前記第1入出力ポートと前記アンテナ入出力ポートの間で低域通過フィルタ(LPF)の機能をする第1フィルタ部、および、
第4伝送零点を有する共振器を実現する四角パッチ状の第4スタブと、第5伝送零点を有する共振器を実現する四角パッチ状の第5スタブと、前記第2入出力ポートと前記第4スタブとを容量結合する第1オープンカップリング部と、前記第4スタブと前記第5スタブとを容量結合する第2オープンカップリング部と、前記第5スタブと前記アンテナ入出力ポートとを容量連結する第3オープンカップリング部から構成され、前記第2入出力ポートと前記アンテナ入出力ポートの間で高域通過フィルタ(HPF)の機能をする第2フィルタ部を含む、PCB構造の広帯域フィルタ。
【請求項2】
前記ハウジングは、
前記第1フィルタ部が実装される空間と前記第2フィルタ部が実装される空間との間に形成され、前記第1フィルタ部と前記第2フィルタ部とを隔離するための隔離部と、
前記ハウジングの内部空間を分離し、前記ハウジングによる信号の共振を抑制するための異常共振抑制棒を含む、 請求項1に記載のPCB構造の広帯域フィルタ。
【請求項3】
前記広帯域フィルタは基地局アンテナに実装されることを特徴とする、請求項1又は2に記載のPCB構造の広帯域フィルタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は移動通信用広帯域フィルタに関し、さらに詳細には4Gと5Gの周波数帯をすべてカバーすることができ、信号の位相バランスを最小化するためのPCB構造の広帯域フィルタに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、フィルタはL(inductance)とC(capacitance)の組み合わせにより現れる周波数選択素子であって、帯域通過特性によりLPF(Low Pass Filter)、HPF(High Pass Filter)、BPF(Band Pass Filter)、BSF(Band Stop Filter)に区分される。
【0003】
フィルタの特性は、挿入損失(Insertion loss)とスカート(Skirt)、群遅延(Group delay)特性などで評価され得る。挿入損失とは、信号がフィルタを通過するときに発生する損失電力を意味し、スカートは通過帯域と阻止帯域を区分する傾きの角度(sharpness)であって、フィルタの構造で次数(Order)と関係している。通常、次数が増加するとスカート特性はよくなるものの、挿入損失と群遅延(Group delay)が増加することになる。ここで、群遅延(Group Delay;GD)とは、「GD=δθ/δω」、すなわち、角周波数(ω)による位相(θ)の変化量を意味し、周波数別に信号が遅れる相対的な時間を表す。
【0004】
また、フィルタは通過特性とスカート特性(これをフィルタ応答という)により、通過帯域が扁平なバターワース(Butterworth)とリップル(ripple)が一定なチェビシェフ(Chebyshev)、群遅延(Group delay)特性が良好なbessel/Gauhssian、スカート特性が良好なElliptic typeなどに区分することができる。
【0005】
そして、フィルタは具現する形態により、Lumped Element、Microstrip/Stripline、Ceramic/dielectric、Waveguide、Saw(Surface Acoustic Wave)方式に区分することができる。
【0006】
一方、5G移動通信では、チャネルの容量を最大化させ、信号の信頼性を確保するために、多数のアンテナを使うMassive MIMO(Multi Input Multi Output)システムを採択している。一つのアンテナに多数のフィルタが内蔵されるMassive MIMOシステムにおいてフィルタの位相遅延は非常に重要な指標である。Massive MIMOシステムで内蔵されたフィルタの位相遅延が互いに異なる場合、信号の歪み(distortion)を誘発するため位相遅延を最小化する必要がある。すなわち、アンテナと直接連結されて使われるフィルタの場合、フィルタの位相特性は重要な指標となる。これは、フィルタの位相特性によってアンテナで生成されるビームの形状と方向が変わり得るためであるが、複数のフィルタが同時にアンテナと連結されて使われる場合、フィルタ間の位相誤差を最小化することが重要である。
【0007】
図15は、従来の広帯域フィルタのキャビティ構造を説明するための概略図である。
【0008】
従来に移動通信基地局で使われるキャビティ(Cavity)構造のフィルタ(filter;50)は、
図15に図示された通り、ハウジング(Housing;51)、共振器(Resonator;52)、チューニングスクリュー(Tuning screw;53)および入出力段50aのワイヤーループ(Wire Loop;54)、入出力段50bのディスクループ(Disc Loop;55)等の部品で構成される。
【0009】
図15を参照すると、キャビティフィルタ50の場合、各キャビティの共振周波数を調整するチューニングスクリュー53とキャビティ間の結合量を調節するチューニングスクリュー53′が、フィルタの特性をチューニングする過程ですべてのフィルタに同様に適用され難いため、フィルタ間の位相誤差が発生する。
【0010】
また、フィルタの入力段や出力段50aまたは50bで使われる短絡型Wire Loop54または開放型Disc Loop55の場合も、手作業のため組立の結果が一律的にはならず、位相誤差の要因となり得る。
【0011】
したがって、キャビティフィルタの場合、製造公差による電気的特性を調整し、必要となる周波数の共振および通過帯域を形成するために、チューニングスクリュー53、53′でチューニングを進める必要がある。
【0012】
ところが、チューニングスクリューを調整するチューニング作業は熟練した作業者によって行われるとしても、同じ位相遅延特性を有させるためには多くの時間と努力が要求され、このようなチューニング工程により各フィルタ(Filter)の位相遅延特性の偏差が発生することになる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の目的は、従来のキャビティ(Cavity)構造のフィルタ(Filter)が有している位相遅延の偏差を解消して一律的な位相遅延特性を確保できる、PCB構造の広帯域フィルタを提供することである。
【0014】
本発明の他の目的は、信号の位相バランスを最小化するためのPCB構造の広帯域フィルタを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の実施例はPCB構造の広帯域フィルタを開示する。
【0016】
開示された広帯域フィルタは、PCB基板と、前記PCB基板を実装するためのハウジングを含む。前記PCB基板は4G入出力ポートと、5G入出力ポート、アンテナ入出力ポート、前記4G入出力ポートと前記アンテナ入出力ポートの間で低域通過フィルタ(LPF)の機能をする4Gフィルタ部、前記5G入出力ポートと前記アンテナ入出力ポートの間で高域通過フィルタ(HPF)の機能をする5Gフィルタ部を含む。
【0017】
前記ハウジングは、前記4Gフィルタ部と前記5Gフィルタ部間に配置されて、線路間結合される電気的な信号を遮断するための隔離部と、前記ハウジングによって信号が共振されて発生する不要な信号を除去する異常共振抑制棒を含むことができる。
【0018】
前記4Gフィルタ部は、第1伝送零点を有する共振器を具現する第1スタブと、第2伝送零点を有する共振器を具現する第2スタブと、第3伝送零点を有する共振器を具現する第3スタブと、前記4G入出力ポートと前記第1スタブの間を連結する第1ストリップラインと、前記第1スタブと前記第2スタブを連結する第2ストリップラインと、前記第2スタブと前記第3スタブ間を連結する第3ストリップラインと、前記第3スタブと前記アンテナ入出力ポートを連結する第4ストリップラインを含む。
【0019】
前記5Gフィルタ部は第4伝送零点を有する共振器を具現する第4スタブと、第5伝送零点を有する共振器を具現する第5スタブと、前記5G入出力ポートと前記第4スタブを連結する第1オープンカップリング部と、前記第4スタブと前記第5スタブの間を連結する第2オープンカップリング部と、前記第5スタブと前記アンテナ入出力ポートの間を連結する第3オープンカップリング部を含む。
【0020】
前記広帯域フィルタは基地局アンテナに実装され得る。
【発明の効果】
【0021】
本発明の実施例によると、LC共振器の形成とフィルタ(Filter)の帯域を形成するカップリング線路の形状を、PCB基板に固定形成して位相遅延特性に影響を与えるチューニング工程を除去することによって、生産性を向上させることができると共に原価を節減することができる。
【0022】
また、本発明の実施例に係るPCB構造のフィルタは、無チューニング方式で一律的な位相遅延特性を具現することができ、したがって次世代(5G)移動通信のMassive MIMOシステムに適用する場合に位相遅延特性を大きく改善させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明の実施例に係る信号の位相バランスを最小化するためのPCB構造の広帯域フィルタを図示した図面。
【
図2】
図1に図示されたPCB基板の上面のパターン図。
【
図3】
図1に図示されたPCB基板の下面のパターン図。
【
図5】
図1に図示されたオープンカップリング部の具現例。
【
図6】
図1に図示された広帯域フィルタのSパラメータ特性グラフ。
【
図7】
図1に図示された4Gフィルタ部のSパラメータ特性グラフ。
【
図8】
図1に図示された4Gフィルタ部の位相特性グラフ。
【
図9】
図1に図示された5Gフィルタ部のSパラメータ特性グラフ。
【
図10】
図1に図示された5Gフィルタ部の位相特性グラフ。
【
図11】本発明の実施例に係る4Gフィルタ部の等価回路図。
【
図12】本発明の実施例に係る4Gフィルタ部の特性グラフ。
【
図13】本発明の実施例に係る5Gフィルタ部の等価回路図。
【
図14】本発明の実施例に係る5Gフィルタ部の特性グラフ。
【
図15】従来広帯域フィルタのキャビティ構造を説明するための概略図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明と本発明の実施によって達成される技術的課題は、下記に説明する本発明の好ましい実施例によってより明確になるであろう。下記の実施例は単に本発明を説明するために例示されたものに過ぎず、本発明の範囲を制限するためのものではない。
【0025】
図1は、本発明の実施例に係る信号の位相バランスを最小化するためのPCB構造の広帯域フィルタ(以下、簡単に「広帯域フィルタ」という。)を図示した図面である。
【0026】
まず、PCB構造の広帯域フィルタ100は、数GHzの高周波帯域で伝送線路(Transmission line)を利用してフィルタを具現したものである。代表的にPCB基板10の両面にMicrostripやStriplineを利用して線路間のカップリング、線路上の共振、多重インピーダンス連結の原理を利用してフィルタを具現する。
【0027】
このような広帯域フィルタは移動通信技術でマルチバンドを具現するために使われ得るが、本発明の実施例では下記の表1のように、4G移動通信網帯域と5G移動通信網帯域でマルチバンドを具現したものを例に挙げて説明する。
【0029】
本発明の実施例に係るPCB構造の広帯域フィルタ100は
図1に図示された通り、PCB基板10と、PCB基板10を実装するためのハウジング20で構成される。
【0030】
図1を参照すると、PCB基板10は、4G入出力ポート110、5G入出力ポート120、アンテナ入出力ポート130、4G入出力ポート110とアンテナ入出力ポート130の間で低域通過フィルタ(LPF)の機能をする4Gフィルタ部140と、5G入出力ポート120とアンテナ入出力ポート130の間で高域通過フィルタ(HPF)の機能をする5Gフィルタ部150で構成される。
【0031】
また、4Gフィルタ部140は第1〜第3共振器の役割をする3個のスタブST1〜ST3と、各スタブST1〜ST3の間と入出力ポート110、130を連結するための4個のインダクタ成分ストリップライン141〜144で構成される。
【0032】
各スタブST1〜ST3は望む周波数帯域に阻止帯域を形成させるために、伝送零点(Transmission zero;TZ1〜TZ3)を有する3個の四角パッチ形態のオープンスタブ構造で具現されている。伝送零点は伝送量が0になる複素周波数平面上の点であって、この時、減衰量が無限大となるため減衰極ともいう。
【0033】
信号の反射を減らすためのインピーダンスマッチングと信号のカップリング量の調節は、スタブとスタブを連結する線路(ストリップライン)の長さと幅を調整して得ることができる。
【0034】
第1ストリップライン141は4G入出力ポート110と第1スタブST1の間を連結し、第2ストリップライン142は第1スタブST1と第2スタブST2の間を連結する。第3ストリップライン143は屈曲したパターンの形態で第2スタブST2と第3スタブST3の間を連結し、第4ストリップライン144は第3スタブST3とアンテナ入出力ポート130を連結する。
【0035】
各ストリップライン141〜144の線路長は直列Lを決定する要素であって長さはλ/8より小さくなければならず、線路の幅はインピーダンスを決定する要素である。したがって、線路間のマッチングがなされるように線路の幅と長さを調整することができる。
【0036】
5Gフィルタ部150は、共振器の役割をする2個のスタブST4、ST5と、入出力ポート120、130と共振器の間を連結する容量性成分の3個のオープンカップリング部151〜153で構成される。
【0037】
各スタブST4、ST5は望む周波数帯域に阻止帯域を形成させるために、伝送零点(Transmission zero;TZ4、TZ5)を有する2個の四角パッチ形態のオープンスタブ構造で具現されている。
【0038】
オープンカップリング部151〜153はMIM(Metal−Insulate−Matal)構造であって、一種のキャパシタを形成して低周波信号は抑制し、高周波信号は通過させる役割をする。このために、線路の間隔と幅を調整して高周波領域でインピーダンスマッチングがなされるようにする。
【0039】
第1オープンカップリング部151は5G入出力ポート120と第4スタブST4の間を連結し、第2オープンカップリング部152は第4スタブST4と第5スタブST5の間を連結し、第3オープンカップリング部153は第5スタブST5とアンテナ入出力ポート130の間を連結する。
【0040】
ハウジング20は、互いに隣り合う4Gフィルタ部140と5Gフィルタ部150の間に配置されて、線路間結合される電気的な信号を遮断するための隔離部210と、ハウジングの内部の大きさによって信号が共振されて発生する不要な信号を除去する異常共振抑制棒220−1〜220−3で構成される。
【0041】
隔離部210は、4Gフィルタ部140と5Gフィルタ部150で線路間結合される電気的な信号を遮断する役割をして入出力ポート間の隔離特性を改善し、異常共振抑制棒220−1〜220−3はハウジングの内部空間を分離してハウジング20により信号が共振されることを抑制する役割をする。
【0042】
図2は
図1に図示されたPCB基板の上面のパターン図であり、
図3は
図1に図示されたPCB基板の下面のパターン図であり、
図4は
図1に図示されたスタブの回路特性図であり、
図5は
図1に図示された線路間の高周波伝送のためのオープンカップリング部の具現例である。
【0043】
本発明の実施例に係るPCB基板10は
図2および
図3に図示された通り、トップ面10aとボトム面10bの導電パターン(ストリップライン)が所定の形状で互いに対称となるように配置されており、両面の導電パターンは多数のビアホール12を通じて連結され得るようになっている。
【0044】
各入出力ポート110、120、130はそれぞれ50Ωのインピーダンス線路で構成されており、インピーダンスマッチングのために線路の幅や長さを調整することができる。
【0045】
また、4Gフィルタ部140と5Gフィルタ部150のトップ面10aとボトム面10bには、それぞれ5個のスタブST1〜ST5が配置されている。本発明の実施例で各スタブST1〜ST5は
図4に図示された通り、インダクタ(L)の役割をする短絡回路スタブST−Lと、キャパシタ(C)の機能をする開放スタブST−Cで構成されて直列LC回路を具現する。ここで、直列LC回路のL値とC値は、四角パッチ型スタブの長さと広さを変更して調整することができ、これにより、伝送零点が決定される。
【0046】
また、5Gフィルタ部150のオープンカップリング部151〜153は
図5に図示された通り、伝送線路の切断領域で基板のトップ面パターン10aとボトム面パターン10bが誘電体である基板本体10cを挟んで互いに重なるように構成されてキャパシタを具現している。オープンカップリング部151〜153の結合量は、線路が重なる領域が大きいほど大きくなり、小さいほど小さくなり、間隔が小さいほど大きくなり、大きいほど小さくなる。
【0047】
図6は、
図1に図示された広帯域フィルタのSパラメータ特性グラフである。本発明の実施例において、Sパラメータグラフのポート番号1はアンテナ入出力ポート130を表し、ポート番号2は4G入出力ポート110を表し、ポート番号3は5G入出力ポート120を表す。
【0048】
本発明の実施例に係る広帯域フィルタ100は
図6に図示されたグラフのように、アンテナ入出力ポート130であるポート1(Port 1)に信号を印加した時、ポート1に戻ってくる電力の比であって反射係数であるS(1、1)、ポート1からポート2に伝達される電力の比であって透過係数であるS(2、1)、ポート1からポート3に伝達される透過係数であるS(3、1)の特性を示す。
【0049】
図6を参照すると、図示されたグラフの横軸は周波数(freq、単位GHz)を示し、縦軸は信号の大きさ(dB)の値を示す。
【0050】
図6のS(2、1)グラフは、比較的低周波である728〜2150MHz帯域を通過させる低域通過フィルタ(LPF)の特性を示し、S(3、1)グラフは比較的高周波である3440〜3520MHz(4G)、3600〜4200MHz(5G)、4400〜4900MHz(5G)帯域の高い周波数は通過させ、低い周波数は遮断させる高域通過フィルタ(HPF)の特性を示す。S(1、1)グラフは低域周波数帯と高域周波数帯を互いに隔離させる特性を示す。
【0051】
図7は
図1に図示された4Gフィルタ部のS(2、1)、S(2、2)パラメータ特性グラフであり、
図8は
図1に図示された4Gフィルタ部のS(2、1)位相特性グラフである。
【0052】
図7を参照すると、S(2、1)グラフによると4G入出力ポートからアンテナ入出力ポートへの信号の伝送は略2.4GHz以下の低周波を通過させる低域通過フィルタの特性を示し、S(2、2)グラフによると4G入出力ポートでの反射波は高域周波数を遮断する特性を示すことが分かる。
【0053】
また、
図8を参照すると、S(2、1)の位相グラフはポート1に印加された信号がポート2に到達した時に見られる信号の位相角を周波数に応じて示したものであり、PCBタイプの場合、線路が一定であるため、すなわち、信号が進行した距離が一定であるため同じ位相結果を有するようになる。
【0054】
通常的に位相特性グラフは周波数が高くなるほど波長が短くなるため、一字状の構造の線路を同じ距離だけ進行した時、位相グラフは周波数が上がるにつれて小さくなる線形的なグラフを示し、180°〜−180°範囲でグラフのすべてを表現するために−180°〜180°に反転させて表示するため、線路で信号の歪曲が発生しないとのこぎり波状のグラフ特性を示す。
【0055】
図示されたグラフによると、S(2、1)位相特性はm1(728MHz)で169.550であり、m2(2.15GHz)で124.769であることが分かり、m1とm2間の帯域の位相グラフが線形的に表されたのは該当帯域の信号が信号の歪曲なしに一定に進行したものであることを示す。
【0056】
図9は
図1に図示された5Gフィルタ部のS(3、1)、S(3、3)パラメータ特性グラフであり、
図10は
図1に図示された5Gフィルタ部のS(3、1)位相特性グラフである。
【0057】
図9を参照すると、S(3、1)グラフによると5G入出力ポートからアンテナ入出力ポートへの信号の伝送は略3.2GHz以上の高周波を通過させる高域通過フィルタの特性を示し、S(3、3)グラフによると5G入出力ポートでの反射波は低域周波数を遮断する特性を示すことが分かる。
【0058】
また、
図10を参照すると、S(3、1)位相特性はポート1に印加された信号がポート3に到達した時に見られる信号の位相角を周波数に応じて示したものであって、PCBタイプの場合、線路が一定であるため、すなわち、信号が進行した距離が一定であるため同じ位相結果を有するようになる。
【0059】
図示されたグラフによると、m1(3.44GHz)で119.545であり、m2(4.9GHz)で165.057であることが分かり、728〜2150MHzで線形的な位相特性を示すことが分かる。
【0060】
図11は本発明の実施例に係る4Gフィルタ部の等価回路図であり、
図12は本発明の実施例に係る4Gフィルタ部のSパラメータ特性グラフである。
【0061】
一般的にフィルタは挿入損失法によって設計される。挿入損失法では、通過帯域および阻止帯域の振幅と位相特性の全般にわたって高度な調整段階が許容されるが、望むスペックに合わせてButterworth、Chebyshev、Equal ripple、Ellipticなどのフィルタ応答を選択して設計する。フィルタの構造は低域通過構造を基本形としておき、設計を開始する際にフィルタの種類(LPF、HPF、BPF、BRF)によって構造を変換してフィルタを具現する。内部に構成されるそれぞれの素子値はフィルタ応答により決定され、本発明の実施例に係るPCB構造の広帯域フィルタはEllipticフィルタ応答を使う。
【0062】
Ellipticフィルタ応答は下記の数学式1のように求められ、リップルファクター(Ripple factor)は通過帯域のリップルを決定し、リップルファクターと選択度(Selective factor)の組み合わせは阻止帯域のリップルを決定する。
【0064】
数学式1において、R
nはN次Elliptic rational functionを示し、ω
0はCutoff Frequency、εはRipple factor、ξはSelective factorを示す。
【0065】
LP領域は比較的に少ない次数を使用して望む帯域で減衰値を得るために帯域阻止フィルタで具現する。帯域阻止応答は基本形から下記の数学式2のように周波数を置換して得ることができる。
【0067】
低域通過基本形回路で並列キャパシタは、帯域阻止のために下記の数学式3の素子値を有する直列LC回路に変換される。
【0069】
本発明の実施例ではリチャード(Richard)変換を利用して、インダクタ(L′
k)を短絡回路スタブに、キャパシタ(C′
k)を開放回路スタブに変換して
図11に図示されたような等価回路を具現する。
【0070】
図11を参照すると、4Gフィルタ部140は第1〜第4ストリップライン141〜144が直列に連結される4個のインダクタL
k′で表示され、第1〜第3スタブST1〜ST3は3個の直列LC共振器で表示される。直列LC共振器のLは1/ω
0△C
k値を有し、Cは△C
k/ω
0値を有する。そして3個のLC共振器は
図12で3個の伝送零点TZ1〜TZ3で示される。
【0071】
図13は本発明の実施例に係る5Gフィルタ部の等価回路図であり、
図14は本発明の実施例に係る5Gフィルタ部の特性グラフである。
【0072】
図13を参照すると、5Gフィルタ部150は第1〜第3オープンカップリング部151〜153が直列に連結される3個のキャパシタC
k′で表示され、第4および第5スタブST4、ST5は2個の直列LC共振器で表示される。直列LC共振器のLは1/ω
0△C
k値を有し、Cは△C
k/ω
0値を有する。そして2個のLC共振器は
図14で2個の伝送零点TZ4、TZ5で示される。
【0073】
本発明の実施例の通り、フィルタを複合的に利用した広帯域フィルタはデュプレクサー(Duplexer)とダイプレクサー(Diplexer)等に使われ得る。デュプレクサー(Duplexer)は一つのアンテナを送受信段で共有するようにするものであって、送信段の周波数のみを通過させるBPFと受信段の周波数のみを通過させるBPFで具現した後、その中間をアンテナと適切にマッチングさせるものである。ダイプレクサー(Diplexer)はデュプレクサー(Duplexer)とは異なり、BPFの代わりにLPFとHPFを使用したものであって、移動通信でMassive MIMOの具現などに使われ得る。
【0074】
以上、本発明は図面に図示された一実施例を参照して説明されたが、本技術分野の通常の知識を有する者であればこれから多様な変形および均等な他の実施例が可能であることが理解できるであろう。
【符号の説明】
【0075】
10:PCB基板
20:ハウジング
100:広帯域フィルタ
110:4G入出力ポート
120:5G入出力ポート
130:アンテナ入出力ポート
140:4Gフィルタ部
141〜144:ストリップライン
150:5Gフィルタ部
151〜153:オープンカップリング部
ST1〜ST5:スタブ
TZ1〜TZ5:伝送零点