特許第6866488号(P6866488)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6866488汚損剥離コーティング組成物、該コーティング組成物でコーティングされた基材、および該コーティング組成物の使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6866488
(24)【登録日】2021年4月9日
(45)【発行日】2021年4月28日
(54)【発明の名称】汚損剥離コーティング組成物、該コーティング組成物でコーティングされた基材、および該コーティング組成物の使用
(51)【国際特許分類】
   C09D 183/08 20060101AFI20210419BHJP
   C09D 5/16 20060101ALI20210419BHJP
   C09D 5/14 20060101ALI20210419BHJP
   C09D 7/63 20180101ALI20210419BHJP
   C09D 7/65 20180101ALI20210419BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20210419BHJP
【FI】
   C09D183/08
   C09D5/16
   C09D5/14
   C09D7/63
   C09D7/65
   B32B27/00 101
【請求項の数】15
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2019-537343(P2019-537343)
(86)(22)【出願日】2018年1月12日
(65)【公表番号】特表2020-514478(P2020-514478A)
(43)【公表日】2020年5月21日
(86)【国際出願番号】EP2018050711
(87)【国際公開番号】WO2018134124
(87)【国際公開日】20180726
【審査請求日】2019年8月22日
(31)【優先権主張番号】17151859.0
(32)【優先日】2017年1月17日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】500286643
【氏名又は名称】アクゾ ノーベル コーティングス インターナショナル ビー ヴィ
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100128484
【弁理士】
【氏名又は名称】井口 司
(74)【代理人】
【識別番号】100104282
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 康仁
(72)【発明者】
【氏名】ムーア,デイヴィッド
(72)【発明者】
【氏名】シェイム,ウー
(72)【発明者】
【氏名】レイノルズ,ケヴィン ジョン
(72)【発明者】
【氏名】パリー,アリソン ルイーズ
(72)【発明者】
【氏名】ダンフォード,グレーム
(72)【発明者】
【氏名】プライス,クレイトン
(72)【発明者】
【氏名】ヒース,ロビン アレクサンダー
【審査官】 上條 のぶよ
(56)【参考文献】
【文献】 特表2016−508083(JP,A)
【文献】 特表2015−505334(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/001829(WO,A1)
【文献】 特表2016−509110(JP,A)
【文献】 国際公開第2006/109600(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D
B32B
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
人工物への水生生物汚損を抑制するための非水性液体汚損剥離コーティング組成物であって、
i)式(I)の繰り返し単位および少なくとも1つの式(II)の末端またはペンダント基を含む湿気硬化性ポリシロキサン、ならびに、
【化1】
【化2】
[式中、RおよびRは独立に、1〜20個の炭素原子を有する有機基であり;RおよびRは独立に、1〜20個の炭素原子を有する有機基であり;Aは1〜50個の炭素基を有する有機基であり;Rは独立に、1〜20個の炭素原子を有する有機基および式O−Rの基から選択され、Rは1〜20個の炭素原子を有する有機基であり、ただし少なくとも1つのRは式O−Rの基である。]
ii)殺海洋生物剤、またはヒドロカルビル、ヘテロカルビル、ハロカルビル、エーテル、エステル、アミド、ケトン、シロキサン、ウレタン、もしくは尿素基から選択される単位を含む不揮発性成分の少なくとも1つ
含み
前記不揮発性成分は、シリコーンオイル、フッ素化ポリマー、フッ素化オリゴマー、ステロール、ステロール誘導体、および親水性修飾ポリシロキサンから選択される、非水性液体汚損剥離コーティング組成物。
【請求項2】
式(III)のアミノシランをさらに含む、請求項1に記載の汚損剥離コーティング組成物。
【化3】
[式中、R〜RおよびAは請求項1に記載の通りに定義され、少なくとも1つのRは式O−Rの基であり、Rは1〜20個の炭素原子を有する有機基である。]
【請求項3】
成分ii)が式(II)の基を含有しない、請求項1または2に記載の汚損剥離コーティング組成物。
【請求項4】
Aがメチレン基である、請求項1から3のいずれか一項に記載の汚損剥離コーティング組成物。
【請求項5】
およびRのそれぞれが独立にメチル基またはフェニル基である、請求項1から4のいずれか一項に記載の汚損剥離コーティング組成物。
【請求項6】
がC〜Cアルコキシ基、好ましくはエトキシ基から選択される、請求項1から5のいずれか一項に記載の汚損剥離コーティング組成物。
【請求項7】
殺海洋生物剤を本質的に含まない、または全く含まない、請求項1から6のいずれか一項に記載の汚損剥離コーティング組成物。
【請求項8】
揮発性有機溶剤を含む、請求項1から7のいずれか一項に記載の汚損剥離コーティング組成物。
【請求項9】
不揮発性含有率が70〜100重量%の範囲である、請求項1から8のいずれか一項に記載の汚損剥離コーティング組成物。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか一項に記載の汚損剥離コーティング組成物でコーティングされた基材。
【請求項11】
− 前記基材に塗布され、プライマーコーティング組成物から堆積する任意選択のプライマー層、
− 前記基材に、または前記任意選択のプライマー層に塗布され、硬化性アルコキシシラン官能基を有するバインダーポリマーを含むタイコート組成物から堆積するタイコート層、および
− 前記タイコート層に塗布され、請求項1から9のいずれか一項に記載の液体汚損剥離コーティング組成物から堆積するトップコート層
を含む多層コーティング系でコーティングされた、請求項10に記載の基材。
【請求項12】
前記タイコート組成物が、硬化性アルコキシシラン官能基を有するポリアクリレートを含む、請求項10または11に記載の基材。
【請求項13】
人工物への水生生物汚損を抑制するための方法であって、
a)請求項1から9のいずれか一項に記載の汚損剥離コーティング組成物を、前記人工物の表面の少なくとも一部に塗布するステップ;
b)前記コーティング組成物を硬化させ、硬化コーティング層を形成するステップ;および
c)前記人工物を、少なくとも部分的に水中に浸漬させるステップ
を含む、方法。
【請求項14】
前記汚損剥離コーティング組成物を塗布する前に、前記人工物の前記表面の前記少なくとも一部に、請求項11または12に規定のタイコート組成物から堆積するタイコート層を塗布するステップをさらに含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
人工物への水生生物汚損を抑制するための、請求項1から9のいずれか一項に記載の汚損剥離コーティング組成物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人工物への水生生物汚損を抑制するための非水性液体汚損剥離コーティング組成物、該コーティング組成物でコーティングされた基材、および人工物への水生生物汚損を抑制するための該コーティング組成物の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
人工構造物、例えば船舶およびボートの船体、ブイ、掘削基地、乾ドック設備、オイル産出リグ、水産養殖設備およびネット、ならびに水中に浸漬し、または水がその中を通るパイプは、例えば緑藻および褐藻、フジツボ、イガイ等の水生生物による付着が起こりやすい。このような構造物は通例、金属製であるが、他の構造材料、例えばコンクリート、ガラス強化プラスチック、または木材を含む場合もある。この付着物は、水上を移動中の摩擦抵抗を増加させ、その結果速度が減少し、燃料消費が増加するため、ボートの船体にとって厄介である。第一に、波および流れに対する付着物の厚い層の抵抗は、構造物における予測不可能かつ潜在的に危険な応力を生じることがあり、第二に、付着物は、欠陥、例えば応力亀裂および腐食について、構造物を検査することを困難にするため、付着物は固定構造物、例えば掘削基地のレグならびに石油およびガスの産出、精製および貯蔵のリグにとって厄介である。付着物によって有効断面積が減少し、その結果、流速が減少するため、冷却水の吸入口および排水口などのパイプにおいて付着物は厄介である。
【0003】
例えば、英国特許第1307001号明細書および米国特許第3702778号明細書に記載されるように、シリコーンゴムコーティングが水生生物による付着に抵抗することは公知である。このようなコーティングは、生物が容易には接着できない表面を提供すると考えられ、そのため、これらは汚損防止コーティングよりむしろ、汚損剥離または汚損抵抗性と呼ばれることがある。シリコーンゴムおよびシリコーン化合物は一般に、非常に低い毒性を有する。ボートの船体に塗布した場合のこの汚損防止系の欠点は、海洋生物の蓄積は減少するが、すべての付着種を取り除くためには、比較的高い船速が必要となることである。したがって、いくつかの場合において、このようなポリマーで処理をした船体からの効果的な除去について、少なくとも14ノットの速度で航行することが必要であると示されている。
【0004】
国際公開第2014/131695号パンフレットは、オルガノシロキサン含有ポリマー、およびフッ素化オキシアルキレン含有ポリマーまたはオリゴマーを含む汚損防止組成物を記載している。該化合物は通常、スズ系硬化触媒を含む。
【0005】
商業的に入手可能な、ポリシロキサンをベースとする汚損剥離コーティング系は、硬化触媒を必要とし、通常はスズ系触媒である。スズ系触媒は、スズ化合物に関連する毒性の問題のため、高まる不評に直面している。他のより有害性が低い触媒を利用可能であるが、これらは通常、主要なコーティングの特質、例えば乾燥時間、可使時間、または汚損防止性能に悪影響を及ぼす。
【0006】
米国特許出願公開第2015/0329724号明細書において、加水分解性基および縮合性基を有するオルガノシロキサン含有ポリマー、架橋剤、ならびに硬化触媒として亜鉛錯体を含む、汚損防止コーティング組成物が記載されている。
【0007】
特に、低い船速または静止条件において、付着に対する保護の向上をもたらす汚損剥離コーティングが必要とされている。基材への優れた接着性を有する汚損剥離コーティング、特に低温での乾燥が求められる場合に、開封後の使用性(可使時間)と乾燥時間とのバランスが改善した組成物も必要とされている。
【発明の概要】
【0008】
本発明は、上述の問題を取り除く、または軽減する、汚損剥離コーティング組成物を提供する。
【0009】
したがって、本発明は第1の態様において、人工物への水生生物汚損を抑制するための非水性液体汚損剥離コーティング組成物であって、
i)式(I)の繰り返し単位、
【化1】
および少なくとも1つの式(II)の末端またはペンダント基
【化2】
を含む湿気硬化性ポリシロキサン
[式中、RおよびRは独立に、1〜20個の炭素原子を有する有機基であり;RおよびRは独立に、1〜20個の炭素原子を有する有機基であり;Aは1〜50個の炭素基を有する有機基であり;Rは独立に、1〜20個の炭素原子を有する有機基、および式O−Rの基から選択され、Rは1〜20個の炭素原子を有する有機基であり、ただしRの少なくとも1つは式O−Rの基である]、ならびに
ii)殺海洋生物剤、またはヒドロカルビル、ヘテロカルビル、ハロカルビル、エーテル、エステル、アミド、ケトン、シロキサン、ウレタン、もしくは尿素基から選択される単位を含む不揮発性成分の少なくとも1つ
を含む、非水性液体汚損剥離コーティング組成物を提供する。
【0010】
本発明の汚損剥離コーティング組成物は、公知の汚損防止コーティングと比較して、汚損防止性能が向上したコーティングを提供する。生物は、低船速または静止条件下であっても、このようなコーティングに容易に接着することはできない。コーティング組成物は、特に低温での乾燥が求められる場合に、使用性(可使時間)と乾燥時間とのバランスが改善しており、コーティングは改善された基材への接着性を示す。コーティング組成物は、硬化触媒なしで非常に良好に硬化する。したがって、スズ系硬化触媒または他の触媒は必要なく、好ましくは存在しない。
【0011】
第2の態様において、本発明は、本発明の第1の態様による汚損剥離コーティング組成物でコーティングされた基材を提供する。
【0012】
コーティング組成物を基材に塗布し、乾燥、硬化、または架橋させた後、コーティングされた基材を浸漬させ、付着に対する保護を与えることができる。
【0013】
したがって、第3の態様において、本発明は、人工物への水生生物汚損を抑制する方法であって、
a)本発明の第1の態様による汚損剥離コーティング組成物を、人工物の表面の少なくとも一部に塗布するステップ;
b)コーティング組成物を硬化させ、硬化コーティング層を形成するステップ;および
c)人工物を、少なくとも部分的に水中に浸漬させるステップ
を含む、方法を提供する。
【0014】
最後の態様において、本発明は、人工物への水生生物汚損を抑制するための、本発明の第1の態様による汚損剥離コーティング組成物の使用を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の汚損剥離コーティング組成物は、液体コーティング組成物である。これは、組成物が環境温度において液体であり、周知の技法、例えば刷毛塗り、ローラー法、ディッピング、バー塗布またはスプレー法によって、基材に塗布することができることを意味する。
【0016】
一実施形態において、必要な塗布粘度を達成するため、コーティング組成物は揮発性有機溶剤を含む。代替的には、例えばポリシロキサンが液体であり、かつ十分に低粘度である場合、または反応性希釈剤もしくは液体可塑剤が含まれる場合、コーティング組成物は本質的にまたは全く、揮発性有機溶剤を含まなくてもよい。コーティング組成物は、非水性コーティング組成物である。これは、水を本質的に含まない、または全く含まない形態で、組成物が供給されることを意味する。水を本質的に含まないことによって、組成物の総重量に対して計算した場合、組成物は0から5重量%の間、好ましくは0から2重量%の間の水を含むことが意味される。言及した水の量は、コーティング組成物中に含まれる成分によって、例えば不純物として少量の水を含有する顔料または有機溶剤によって、意図的ではなく導入されうる。
【0017】
コーティング組成物の必須成分は、式(I)の繰り返し単位、
【化3】
および少なくとも1つの式(II)の末端またはペンダント基
【化4】
を含む湿気硬化性ポリシロキサンであり、式中、R、R、R、R、R、R、およびAは、本明細書において上に指定した通りである。
【0018】
有機基は、少なくとも1個の炭素原子を含む基である。一般に、有機基R、R、R、R、R、R、およびAは、直鎖状、分岐鎖状、または環状の有機基、例えば脂肪族または芳香族の有機基である。有機基の定義には、オリゴまたはポリシロキサンも包含される。
【0019】
一実施形態において、R、R、R、R、R、R、およびAは、独立に、ヒドロカルビル、ヘテロカルビル、またはハロカルビル基である。
【0020】
およびRは、1〜20個の炭素原子を有する有機基である。一実施形態において、有機基RおよびRは、式(II)において、窒素原子を介して互いに間接的にのみ結合している。さらなる実施形態において、有機基RおよびRは、さらなる共有結合によって、互いに直接的にも結合しており、したがって環状アミン構造を示す。例として、RおよびRは式(II)の窒素原子とともに、ピロリジンまたはピペリジン環を示しうる。
【0021】
好ましくは、RおよびRは独立に、ヘテロ原子を含まず、1〜10個の炭素基、より好ましくは1〜8個の炭素原子を有する、直鎖状、環状、または分岐鎖状の脂肪族炭化水素基である。一実施形態において、RおよびRはそれぞれ、ブチル基である。
【0022】
本明細書において用いるとき、用語「ヒドロカルビル」は、炭化水素、例えば直鎖状、分岐鎖状、環状、脂肪族、アリール、アラルキル、またはアルキルアリール炭化水素から、水素原子を取り除くことによって形成される1価基を意味する。
【0023】
本明細書において用いるとき、用語「ヘテロカルビル」は、鎖または環内に組み込まれたヘテロ原子、例えば酸素、硫黄、窒素、またはケイ素を含むヒドロカルビル基を意味する。
【0024】
本明細書において用いるとき、用語「ハロカルビル」は、1個または複数個の水素原子がハロゲン原子、例えばフッ素、塩素、または臭素原子によって置換されているヒドロカルビル基を意味する。
【0025】
式(I)において、RおよびRは独立に、1〜20個の炭素原子を有する、直鎖状、環状、または分岐鎖状の有機基から選択される。一実施形態において、有機基はヘテロ原子を含まないヒドロカルビル基である。代替的には、有機基は、ヘテロ原子の原子、またはヘテロ原子を含む基、例えばエーテル、エステル、アミド、スルフィド、ハロアルキル、シロキサン、ウレタン、もしくは尿素基を含みうる。より好ましくは、RおよびRのそれぞれは独立に、メチル基またはフェニル基である。
【0026】
式(II)および(III)において、R基は好適には、1〜20個の炭素原子を有する、直鎖状、環状、または分岐鎖状の、芳香族または脂肪族有機基、および式O−Rの基から選択され、式中、Rは1〜20個の炭素原子を有する、直鎖状、環状、または分岐鎖状の脂肪族有機基であり、ただし少なくとも1つのR基は式O−Rの基である。直鎖状、環状、または分岐鎖状の、芳香族または脂肪族有機基は、好ましくは、1〜6個の炭素原子を有するアルキル基である。
【0027】
式O−Rの基の存在によって、ポリシロキサンに湿気硬化性がもたらされる。R基の少なくとも2つは、式O−Rの基であることが好ましい。さらに好ましい実施形態において、R基はC〜Cアルコキシ基、特にエトキシ基から選択される。
【0028】
好適な湿気硬化性ポリシロキサンは、上に規定される式(I)の繰り返し単位を有するヒドロキシル官能性ポリシロキサンと、式(III)のアミノシランとの反応によって調製することができる。
【化5】
[式中、R〜RおよびAは上に規定される通りであり、少なくとも1つのR基は式O−Rの基である]
このような反応は、参照によって本明細書中に組み込まれる、中国特許出願公開第101134887号明細書に記載される。この文書には、α,ω−ジヒドロキシポリジメチルシロキサンと、α−アミノメチルトリアルコキシシランとの反応が記載される。式(I)の繰り返し単位を有するヒドロキシル官能性ポリシロキサンのヒドロキシル基と、式(III)のアミノシランとの、十分な程度の変換を確保するため、反応中、モル過剰の式(III)のアミノシランを使用するのが有利でありうる。反応後、未反応の過剰なアミノシランをすべて取り除いてよい。しかし、湿気硬化性ポリシロキサン中の過剰な未反応アミノシランを、すべて保持することも可能である。コーティング組成物が基材に塗布されると、過剰なアミノシランはすべて、硬化剤として硬化反応に関与することができる。さらに、アミノシランはコーティング組成物の粘度を低下させ、希釈剤としての揮発性有機溶剤の必要性を減少させることができる。したがって、本発明のコーティング組成物はさらに、式(III)のアミノシランを含むことが好ましい。式(III)のアミノシランは、任意の好適な量、通常、湿気硬化性ポリシロキサンの重量を基準にして最大10重量%、好ましくは0.5〜7重量%、さらにより好ましくは1〜5重量%の範囲で用いてよい。
【0029】
一実施形態において、式(II)および(III)におけるA基は、1〜10個の炭素原子を有する、直鎖状、環状、または分岐鎖状の脂肪族有機基であり、好ましくはヘテロ原子を含まず、1〜10個の炭素原子を有する、より好ましくは1〜8個の炭素原子を有する、さらにより好ましくは1〜6個の炭素原子を有する、ヒドロカルビル基である。Aがメチレン基(−CH−)である実施形態において、非常に良好な結果を得ている。したがって、好ましい実施形態において、Aはメチレン基である。
【0030】
湿気硬化性ポリシロキサンは、直鎖状または分岐鎖状でありうる。一実施形態において、湿気硬化性ポリシロキサンは、本質的に直鎖状であり、2つの式(II)の末端基を有する。
【0031】
一実施形態において、湿気硬化性ポリシロキサンは本質的に、式(I)の繰り返し単位、および式(II)の末端またはペンダント基からなる。代替実施形態において、湿気硬化性ポリシロキサンは、ポリマー主鎖の一部を形成しうる、またはポリマー主鎖から懸垂しうる、他の基を含む。他の基の例としては、エーテル部分、ポリエーテル部分、およびフッ素化アルキル基が挙げられる。
【0032】
本発明の汚損剥離コーティング組成物の利点の1つは、組成物を基材に塗布した後、湿気硬化性ポリシロキサンの硬化反応が進行するために、硬化触媒を必要としないことである。したがって、一般に、硬化組成物中に硬化触媒を含まないことが好ましい。
【0033】
特に好ましい実施形態において、コーティング組成物は式(III)のアミノシランを含み、式(II)および(III)におけるA基はメチレン基であり、コーティング組成物は硬化触媒を含まない。この実施形態において、コーティング組成物が硬化触媒なしでも許容可能な時間内に硬化する範囲で、式(III)のアミノシランは架橋剤(硬化剤)として作用することが見出されている。
【0034】
それでもなお、特定の状況においては、コーティング組成物に硬化触媒を添加することによって、硬化速度をさらに上昇させることが望ましい場合がある。
【0035】
好適な触媒の例としては、様々な金属、例えばスズ、亜鉛、鉄、鉛、バリウム、およびジルコニウムのカルボン酸塩が挙げられる。このような塩は好ましくは、長鎖カルボン酸の塩、例えばジブチルスズジラウレート、ジブチルスズジオクトエート、ステアリン酸鉄、オクタン酸スズ(II)、およびオクタン酸鉛である。好適な触媒のさらなる例としては、有機ビスマスおよび有機チタン化合物、ならびに有機リン酸塩、例えばリン酸水素ビス(2−エチル−ヘキシル)が挙げられる。他の可能な触媒としてはキレート、例えばジブチルスズアセトアセトネートが挙げられる。さらに、触媒は、酸基に対してα位にある炭素原子上に少なくとも1つのハロゲン置換基、および/もしくは、酸基に対してβ位にある炭素原子上に少なくとも1つのハロゲン置換基を有するハロゲン化有機酸、または縮合反応の条件下でこのような酸を形成する加水分解性の誘導体を含んでよい。代替的には、触媒は国際公開第2007/122325号パンフレット、国際公開第2008/055985号パンフレット、国際公開第2009/106717号パンフレット、国際公開第2009/106718号パンフレットの任意のものに記載される通りであってよい。上の材料の組み合わせを用いることも可能である。
【0036】
湿気硬化性ポリシロキサンに加えて、コーティング組成物は、付着に対する保護の強化をもたらすための第2の成分を含む。第2の成分は、殺海洋生物剤、またはヒドロカルビル、ヘテロカルビル、ハロカルビル、エーテル、エステル、アミド、ケトン、シロキサン、ウレタン、もしくは尿素基から選択される単位を含む不揮発性成分である。
【0037】
殺生物剤は、海洋または淡水生物のための、無機、有機金属、金属−有機、または有機殺生物剤の1つまたは複数でありうる。無機殺生物剤の例としては、銅の塩、例えば酸化銅、チオシアン酸銅、銅粉、炭酸銅、塩化銅、銅ニッケル合金、および銀の塩、例えば塩化銀または硝酸銀が挙げられ;有機金属および金属−有機殺生物剤の例としては、ピリチオン亜鉛(2−ピリジンチオール−1−オキシドの亜鉛塩)、ピリチオン銅、ビス(N−シクロヘキシル−ジアゼニウムジオキシ)銅、エチレン−ビス(ジチオカルバミン酸)亜鉛(すなわち、ジネブ)、ジメチルジチオカルバミン酸亜鉛(ジラム)、および亜鉛塩と複合体化したエチレン−ビス(ジチオカルバミン酸)マンガン(すなわち、マンコゼブ)が挙げられ;有機殺生物剤の例としては、ホルムアルデヒド、ドデシルグアニジンモノヒドロクロリド、チアベンダゾール、N−トリハロメチルチオフタルイミド、トリハロメチルチオスルファミド、N−アリールマレイミド、例えばN−(2,4,6−トリクロロフェニル)マレイミド、3−(3,4−ジクロロフェニル)−1,1−ジメチル尿素(ジウロン)、2,3,5,6−テトラクロロ−4−(メチルスルホニル)ピリジン、2−メチルチオ−4−ブチルアミノ−6−シクロプロピルアミノ−s−トリアジン、3−ベンゾ[b]チエン−イル−5,6−ジヒドロ−1,4,2−オキサチアジン 4−オキシド、4,5−ジクロロ−2−(n−オクチル)−3(2H)−イソチアゾロン、2,4,5,6−テトラクロロイソフタロニトリル、トリルフルアニド、ジクロフルアニド、ジヨードメチル−p−トシルスルホン、カプサイシンまたは置換カプサイシン、N−シクロプロピル−N’−(1,1−ジメチルエチル)−6−(メチルチオ)−1,3,5−トリアジン−2,4−ジアミン、3−ヨード−2−プロピニルブチルカルバメート、メデトミジン、1,4−ジチアアントラキノン−2,3−ジカルボニトリル(ジチアノン)、ボラン、例えばピリジントリフェニルボラン、5位および任意選択で1位が置換された2−トリハロゲノメチル−3−ハロゲノ−4−シアノピロール誘導体、例えば2−(p−クロロフェニル)−3−シアノ−4−ブロモ−5−トリフルオロメチルピロール(トラロピリル)、ならびにフラノン、例えば3−ブチル−5−(ジブロモメチリデン)−2(5H)−フラノン、ならびにそれらの混合物、マクロ環状ラクトン、例えばアベルメクチン、例えばアベルメクチンB1、イベルメクチン、ドラメクチン、アバメクチン、アマメクチン、およびセラメクチン、ならびに四級アンモニウム塩、例えばジデシルジメチルアンモニウムクロリド、およびアルキルジメチルベンジルアンモニウムクロリドが挙げられる。
【0038】
任意選択で、殺生物剤は完全にまたは部分的に、カプセル化、吸着、封入、担持、または結合されている。ある殺生物剤は、取り扱いが困難または有害であり、カプセル化、封入、吸収、担持、または結合された形態において有利に用いられる。よりいっそう漸次的な放出および長く持続する効果を達成するため、殺生物剤のカプセル化、封入、吸収、担持、または結合は、コーティング系からの殺生物剤の浸出を制御するための2次機構をもたらすことができる。
【0039】
殺生物剤のカプセル化、封入、吸着、担持、または結合の方法は、本発明について特に限定されない。本発明において用いるためのカプセル化殺生物剤が調製されうる方法の例としては、欧州特許第1791424号明細書に記載される、一重および二重壁のアミノ−ホルムアルデヒドまたは加水分解ポリ酢酸ビニル−フェノール樹脂のカプセルまたはマイクロカプセルが挙げられる。
【0040】
好適なカプセル化殺生物剤の例は、Dow Microbial ControlによってSea−Nine CR2 Marine Antifoulant Agentとして販売されている、カプセル化4,5−ジクロロ−2−(n−オクチル)−3(2H)−イソチアゾロンである。
【0041】
吸収、または担持、または結合された殺生物剤が調製されうる方法の例としては、ホストゲスト複合体、例えば欧州特許第0709358号明細書に記載されるクラスレート、欧州特許第0880892号明細書に記載されるフェノール樹脂、炭素系吸着剤、例えば欧州特許第1142477号明細書に記載されるもの、または無機微孔質担体、例えば欧州特許第1115282号明細書に記載される非晶質シリカ、非晶質アルミナ、擬ベーマイト、もしくはゼオライトの使用が挙げられる。
【0042】
水生生物汚損を防止するためのコーティング中に殺生物剤を用いることに関連する、環境および健康への懸念を考慮すると、第2の成分は、好ましくは殺海洋生物剤ではない。その場合、コーティング組成物は、本質的にまたは全く、殺海洋生物剤を含まなくてよい。好ましい実施形態において、付着に対して強化された保護は非殺生物剤成分によってもたらされ、該非殺生物剤成分は、ヒドロカルビル、ヘテロカルビル、ハロカルビル、エーテル、エステル、アミド、ケトン、シロキサン、ウレタン、または尿素基から選択される単位を含む不揮発性成分である。
【0043】
大気圧において、250℃未満の温度では沸騰しない場合、成分は不揮発性とみなされる。好ましくは、この成分は非相溶性の流体またはグリスである。例としては、シリコーン、有機または無機の分子またはポリマー、通常は液体であるが場合により有機可溶性でもある、硬化した湿気硬化性ポリシロキサンと非混和性(完全に、または部分的にのどちらか)のグリスまたはワックスが挙げられる。不揮発性の第2の成分は、硬化したコーティング層の表面で濃縮され、汚損剥離特性を強化するであろうと考えられる。
【0044】
コーティング組成物の不揮発性の第2の成分の好適な例としては、フッ素化ポリマーまたはオリゴマー、例えば直鎖状および分岐鎖状トリフルオロメチルフッ素末端封鎖ペルフルオロポリエーテル(例えばFomblin Y(登録商標)、Krytox K(登録商標)流体、またはDemnum S(登録商標)オイル);直鎖状ジオルガノ(OH)末端封鎖ペルフルオロポリエーテル(例えばFomblin Z DOL(登録商標)、Fluorolink E(登録商標));低分子量ポリクロロトリフルオロエチレン(例えばDaifloil CTFE(登録商標)流体)が挙げられる。他のモノ−およびジオルガノ−官能性末端封鎖フッ素化アルキル−またはアルコキシ−含有ポリマーまたはオリゴマー、例えばカルボキシ−またはエステル−官能性のフッ素化アルキル−またはアルコキシ−含有ポリマーまたはオリゴマーも用いることができる。
【0045】
コーティング組成物の第2の成分のさらなる例としては、例えば式:
Si−O−(SiQ−O−)nSiQ
[式中、各Q基は1〜10個の炭素原子を有する炭化水素基を表し、nは、シリコーンオイルが20〜5000mPasの粘度を有するような整数である]のシリコーンオイルが挙げられる。Q基の少なくとも10%は一般にメチル基であり、Q基の少なくとも2%はフェニル基である。最も好ましくは、−S1Q−O−単位の少なくとも10%はメチル−フェニルシロキサン単位である。最も好ましくは、シリコーンオイルはメチル末端ポリ(メチルフェニルシロキサン)である。オイルは好ましくは、20〜1000mPasの粘度を有する。好適なシリコーンオイルの例は、Bluestar SiliconesによってRhodorsil Huile 510V100およびRhodorsil Huile 550の商標で販売される。
【0046】
コーティング組成物の第2の成分のまたさらなる例としては、ステロールおよび/またはステロール誘導体が挙げられる。ステロールおよびステロールエステルはトリテルペノイドであり、トリテルペン分子から誘導される有機分子の分類である。ステロールおよびステロール誘導体は、天然資源、例えば動物および植物から誘導されうる。ステロールの例としては、コレステロール、ラノステロール、アグノステロール、7−デヒドロコレステロール、コレカルシフェロール、デスモステロール、ラソステロール、コレスタノール、コプロスタノール、カンペステロール、スチグマステロール、シトステロール、アベナステロール、スチグマステノール、ブラシカステロール、4−デスメチルステロール(すなわち、炭素−4上に置換基がない)、4α−モノメチルステロールおよび4,4−ジメチルステロール、フィトスタノール(完全に飽和)、エルゴステロール、アミリン、ならびにシクロアルテノールが挙げられる。ステロールおよびステロール誘導体を含む好適な混合物は、ラノリン、アシル化ラノリン、アルコキシ化ラノリン、およびラノリンオイルである。
【0047】
コーティングの第2の成分のまたさらなる例としては、ポリ(オキシアルキレン)修飾ポリシロキサンなどの親水性修飾ポリシロキサン、例えばポリ(オキシアルキレン)鎖をグラフトされたポリシロキサン、主鎖にポリ(オキシアルキレン)鎖を組み込まれたポリシロキサン、または主鎖にポリオキシアルキレン鎖を組み込まれ、かつポリオキシアルキレン鎖をグラフトされたポリシロキサンが挙げられる。商業的に入手可能なこの種類の親水性修飾ポリシロキサンオイルとしては、DC5103、DC Q2−5097、DC193、DC Q4−3669、DC Q4−3667、DC57、およびDC2−8692(すべてDow Corning)ならびにBYK333が挙げられる。
【0048】
一実施形態において、コーティング組成物の第2の成分ii)は、コーティングが硬化するとき、湿気硬化性ポリシロキサンi)と共有結合してよい。
【0049】
しかし、コーティング組成物の第2の成分は、ポリシロキサンの湿気誘導硬化反応に関与しないことが好ましい。したがって、好ましい実施形態において、この成分は式(II)の基を含有しない。
【0050】
代替実施形態において、非殺生物性、不揮発性の第2の成分は、殺海洋生物剤と組み合わせる。
【0051】
汚損剥離コーティング組成物は、さらなる成分、例えば充填剤、顔料、湿潤剤、分散剤、流動添加剤、レオロジー制御剤、接着促進剤、抗酸化剤、UV安定剤、有機溶剤、有機ポリマー、反応性希釈剤、可塑剤、および触媒も含んでよい。
【0052】
好適な充填剤の例は、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、炭酸カルシウム、熱分解法シリカ、ベントナイト、および他の粘土を含む、シリカまたはケイ酸塩(例えば滑石、長石、およびカオリン)、ならびに固体シリコーン樹脂であり、固体シリコーン樹脂は一般に、縮合分岐鎖状ポリシロキサン、例えば式SiO4/2のQ単位および式RSiO1/2のM単位を含むシリコーン樹脂であり、式中、R置換基は1〜6個の炭素原子を有するアルキル基から選択され、M単位のQ単位に対する比率は0.4:1〜1:1の範囲である。いくつかの充填剤、例えばヒュームドシリカは、コーティング組成物においてチキソトロピー効果を有しうる。充填剤の割合は、コーティング組成物の総重量を基準にして、0〜25重量%の範囲であってよい。コーティング組成物の総重量を基準にして、好ましくは粘土が0〜1重量%の量で存在し、好ましくはチキソトロープ剤が0〜5重量%の量で存在する。
【0053】
顔料の例としては、黒酸化鉄、赤酸化鉄、黄酸化鉄、二酸化チタン、酸化亜鉛、カーボンブラック、グラファイト、赤モリブデン酸、黄モリブデン酸、硫化亜鉛、酸化アンチモン、スルホケイ酸アルミニウムナトリウム、キナクリドン、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、インダンスロンブルー、酸化アルミニウムコバルト、カルバゾールジオキサジン、酸化クロム、イソインドリンオレンジ、ビス−アセトアセト−トリジオール、ベンゾイミダゾロン、キナフタロンイエロー、イソインドリンイエロー、テトラクロロイソインドリノン、およびキノフタロンイエロー、金属フレーク材料(例えばアルミニウムフレーク)、または他のいわゆるバリア顔料もしくは防食顔料、例えば亜鉛末もしくは亜鉛合金;または他のいわゆる潤滑顔料、例えばグラファイト、二硫化モリブデン、二硫化タングステン、もしくは窒化ホウ素が挙げられる。顔料の体積濃度は、好ましくは0.5〜25%の範囲である。顔料の割合は、コーティング組成物の総重量を基準にして、0〜25重量%の範囲であってよい。
【0054】
コーティング組成物に用いるための好適な溶剤としては、芳香族炭化水素、アルコール、ケトン、エステル、および上記同士、または脂肪族炭化水素との混合物が挙げられる。好ましい溶剤としては、ケトン、例えばメチルイソペンチルケトン、および/または炭化水素溶剤、例えばキシレン、トリメチルベンゼン、または脂肪族環状もしくは非環状炭化水素、ならびにこれらの混合物が挙げられる。
【0055】
コーティング組成物は好ましくは、コーティング組成物中の不揮発性材料の重量百分率として規定すると、少なくとも35重量%、より好ましくは少なくとも50重量%、さらにより好ましくは少なくとも70重量%の不揮発性含有率を有する。不揮発性含有率は最大80重量%、90重量%、95重量%、および好ましくは最大100重量%の範囲とすることができる。不揮発性含有率は、ASTM法D2697に準拠して決定してよい。
【0056】
第2の態様において、本発明は、本発明の第1の態様による汚損剥離コーティング組成物でコーティングされた基材に関する。コーティング組成物は、当技術分野において公知の技法、例えば刷毛、ローラー、ディッピング、バー塗布またはスプレー(エアレスおよび従来型)によって、基材に塗布することができる。
【0057】
本発明の第1の態様によるコーティング組成物は、非常に良好な付着抵抗および汚損剥離特性を有するコーティングを提供する。このことにより、これらのコーティング組成物は、水生環境、例えば海洋および水産養殖用途において浸漬するコーティング対象にとって、非常に好適となる。コーティングは、動的ならびに固定構造物の両方、例えば船舶およびボートの船体、ブイ、掘削基地、オイル産出リグ、浮体式生産貯蔵積出設備(FPSO)、浮体式貯蔵再ガス化設備(FSRU)、発電所における冷却水吸入口、魚網または魚篭、ならびに水中に浸漬するパイプについて用いることができる。
【0058】
基材は、好適には、これらの構造物の任意のものの表面、例えば金属、コンクリート、木材、有機ポリマー、例えばポリ塩化ビニル、または繊維強化樹脂の基材である。金属基材、特に鋼、アルミニウム、または青銅基材は、特に好適な基材である。代替実施形態において、基材は軟質ポリマーキャリア箔の表面である。コーティング組成物は次いで、軟質ポリマーキャリア箔、例えば塩化ポリビニルの1つの表面に塗布され、硬化し、その後、キャリア箔のコーティングしていない表面が、例えば接着剤の使用によって、付着抵抗および/または汚損剥離特性を備えるべき構造物の表面に積層される。
【0059】
基材への良好な接着を達成するため、汚損剥離コーティング組成物は、プライマー層および/またはタイコート層を備える基材に塗布することが好ましい。プライマー層は、当技術分野において公知である任意のプライマー組成物、例えばエポキシ樹脂系、またはポリウレタン系のプライマー組成物から堆積しうる。より好ましくは、基材は、本発明による汚損剥離コーティング組成物から堆積する汚損剥離コーティング層を塗布する前に、タイコート組成物から堆積するタイコート層を備える。タイコート組成物は、剥き出しの基材表面、コーティング組成物の古い層を依然含有している基材表面、またはプライマー処理した基材表面に塗布してよい。
【0060】
タイコート組成物は、当技術分野において公知である。好ましい実施形態において、タイコート層は、湿気硬化性ポリシロキサン(i)のペンダントアルコキシ基、特にアルコキシ基O−Rと反応することができるアルコキシシラン官能基を有するバインダーポリマーを含む、タイコート組成物から堆積する。このようなタイコート組成物は当技術分野において公知であり、例えば国際公開第99/33927号パンフレットに記載される。タイコート組成物中の、硬化性アルコキシシラン官能基を有するバインダーポリマーは、任意の好適なバインダーポリマー、例えばポリウレタン、ポリ尿素、ポリエステル、ポリエーテル、ポリエポキシ、またはエチレン性不飽和モノマー、例えばポリアクリレートから誘導されるバインダーポリマーであってよい。
【0061】
一実施形態において、基材は、
− 基材に塗布され、プライマーコーティング組成物から堆積する任意選択のプライマー層、
− 基材に、または任意選択のプライマー層に塗布され、硬化性アルコキシシラン官能基を有するバインダーポリマーを含むタイコート組成物から堆積するタイコート層、および
− タイコート層に塗布され、本発明の第1の態様による液体汚損剥離コーティング組成物から堆積するトップコート層
を含む多層コーティング系でコーティングされる。
【0062】
プライマー層が、またはプライマー層が塗布されない場合はタイコート層が、塗布される基材は、剥き出しの基材表面、またはコーティング組成物の古い層を依然含有している基材表面であってよい。
【0063】
好ましくは、タイコート組成物中のバインダーポリマーは、硬化性アルコキシシラン官能基を有するポリアクリレートである。硬化性アルコキシシラン官能基は、好ましくは、次の一般式:
−(C2m)−Si(R(3−n)(OR
を有する[式中、nは1、2、または3、好ましくは2または3であり;R、Rは独立に、1〜6個の炭素原子、好ましくは1〜4個の炭素原子を有するアルキル基、より好ましくはエチルまたはメチルであり;mは1〜20の範囲内、好ましくは1〜6の範囲内の値の整数である。より好ましくは、mは1または3であり、さらにより好ましくはmは1である]。mが1であれば、タイコート層と、本発明による汚損剥離コーティング組成物から堆積する汚損剥離コーティングとの間の接着は、mが1より大きい値を有する場合より速く得られることが見出されている。
【0064】
好ましくは、タイコート組成物中のバインダーポリマーは、アルコキシシラン官能基以外の架橋性官能基を有しない。
【0065】
一実施形態において、タイコート組成物中のバインダーポリマーは、少なくとも1つがアルコキシシラン官能性を有する、アクリレートおよび/または(メタ)アクリレートモノマーの混合物、例えば、3−(トリメトキシシリルプロピル)メタクリレートまたはトリメトキシシリルメチルメタクリレート、好ましくはトリメトキシシリルメチルメタクリレートのラジカル重合によって調製される。このようなモノマー混合物の例は、メチルメタクリレート、ラウリルメタクリレート、およびトリメトキシシリルメチルメタクリレートの混合物である。
【0066】
したがって、第3の態様において、本発明は、人工物への水生生物汚損を抑制する方法であって、
a)本発明の第1の態様による汚損剥離コーティング組成物を、人工物の表面の少なくとも一部に塗布するステップ;
b)コーティング組成物を硬化させ、硬化コーティング層を形成するステップ;および
c)人工物を、少なくとも部分的に水中に浸漬させるステップ
を含む、方法を提供する。
【0067】
好ましくは、本方法は、汚損剥離コーティング組成物を塗布する前に、人工物の表面の少なくとも一部に、本明細書において上に指定されるタイコート組成物から堆積するタイコート層を塗布するステップをさらに含む。本明細書において先に記載したように、タイコートを塗布する前に、プライマーコーティング組成物から堆積するプライマー層を備える表面。
【0068】
タイコート組成物は好ましくは、本発明の第2の態様について、上に記載されるタイコート組成物である。
【0069】
最後の態様において、本発明は、人工物への水生生物汚損を抑制するための、本発明の第1の態様による汚損剥離コーティング組成物の使用を提供する。
【実施例】
【0070】
樹脂Aの調製
樹脂Aは、α,ω−ジヒドロキシポリジメチルシロキサンと、過剰な(N,N−ジブチルアミノメチル)トリエトキシシランとの反応生成物である。このような樹脂の調製は、中国特許出願公開第101134887号明細書に記載される。
【0071】
コーティング組成物の調製
コーティング組成物は、後述する成分の高速分散によって調製したが、ここでpbwは重量部を意味する。
【0072】
【表A】
【0073】
組成物は、大気中の湿気の出入りなしで保管する場合、混合後、少なくとも6か月用いることができた。
【0074】
【表B】
【0075】
組成物は、大気中の湿気の出入りなしで保管する場合、混合後、少なくとも6か月用いることができた。
【0076】
【表C】
【0077】
組成物は、大気中の湿気の出入りなしで保管する場合、混合後、少なくとも6か月用いることができた。
【0078】
【表D】
【0079】
組成物は、混合後、最大1時間用いることができた。この時間の後、組成物の粘度は、塗料の塗布ならびに流動およびレベリング特性に悪影響を及ぼすレベルまで上昇した。
【0080】
タイコート組成物の調製
タイコート組成物1の調製
溶剤としてメチルn−アミルケトン(MAK)中、100℃において、連鎖移動剤としてメルカプトプロピルトリメトキシシラン、および開始剤として2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)(AMBN)の存在下、メチルメタクリレート、ラウリルメタクリレート、およびトリメトキシシリルプロピルメタクリレートの混合物を共重合させることによって、シロキサン官能性ポリアクリレートを調製した。メチルメタクリレート/ラウリルメタクリレート/トリメトキシシリルプロピルメタクリレート/メルカプトプロピルトリメトキシシランのモル濃度比は、70/12/15/3であった。MAK中、70重量%のポリマーの溶液を得た。
【0081】
タイコート組成物2の調製
アクリルタイコート組成物1について上に記載されるように、ただしトリメトキシシリルプロピルメタクリレートの代わりに、トリメトキシシリルメチルメタクリレートで、シロキサン官能性ポリアクリレートを調製した。
【0082】
生物汚損試験
海洋仕様合板試験パネルをIntershield 300(International Paint Ltd)でプライマー処理し、約100μmの平均乾燥膜厚を与えた。次いで、Intersleek 731シリコーンエラストマータイコート(International Paint Ltd)を塗布し、約100μmの平均乾燥膜厚を与え、タイコートを乾燥させた。次いで、実施例1、実施例2、および比較例Aのコーティング組成物を、前処理したパネルに、約150μmの平均乾燥膜厚で塗布した。
【0083】
次いで、パネルを、SingaporeのChangi Marinaにおいて、重度の海洋付着増殖が生じることで知られる水生環境に浸漬した。74週間の浸漬の後、発生した動物付着の重大性を定量し、ボードの評価を行った。結果を表1に示す。
【0084】
【表1】
【0085】
接着試験1
12×6インチ鋼パネルを溶剤で脱脂し、次いで、SA2.5にグリットブラストした。次いで、パネルの両面をエアレススプレーによって、プライマーコーティングとしてIntersleek 717 Link Coat(International Paint Ltd)でコーティングし、屋内周囲条件下で7時間乾燥させ、次いで、両面をエアレススプレーによって、Intersleek 737シリコーンエラストマータイコート(International Paint Ltd)でコーティングした。屋内周囲条件下で1日乾燥させた後、1セットのパネルは両面をエアレススプレーによって実施例1のコーティング組成物でコーティングし、第2セットのパネルは両面をエアレススプレーによって比較例Aの組成物でコーティングした。試験パネルは次いで、速やかに外部領域に取り出し、冬季の北東イングランドにおける屋外周囲条件に48時間暴露した。
【0086】
ペンナイフ刃を用いて、コーティングを通過して鋼基材に第1の5cmの切削、続いて第1の切削と交差して「X」の形をなすように第2の5cmの切削を行うことによって、先のコーティングへの最終コーティングの接着性を定性的に評価した。切削の交点を指でこすり、先に塗布したコーティングから最終コートを剥がすことの相対的な難度を記録した。これによって、異なる最終コーティング層の接着性を順位付けすることができる。
【0087】
比較組成物Aから調製したコーティング層は、本発明によるコーティング組成物1から調製したコーティングより容易に、先に塗布したコーティング層から剥がれた。このことは、実施例1のコーティング組成物は、比較組成物Aより良好な接着をもたらすことを実証した。
【0088】
接着試験2
6×4インチのアルミニウムQパネルの表面を、サンドペーパーを用いて粗面化し、次いで溶剤で脱脂した。次いで、パネルの両面に、タイコート組成物1またはタイコート組成物2を刷毛塗りし、コーティングした。屋内周囲条件で1日乾燥させた後、1セットのパネルの両面は、実施例3のコーティング組成物を刷毛塗りしてコーティングし、第2セットのパネルの両面は、例Bの比較コーティング組成物を刷毛塗りしてコーティングした。試験パネルは次いで、速やかに外部領域に取り出し、冬季の北東イングランドにおける屋外周囲条件に96時間暴露した。
【0089】
5、24、および96時間の暴露の後、ペンナイフ刃を用いてコーティングを基材まで切削し、小片を取り出すことによって、最終コーティングのタイコーティングへの接着性を定性的に評価した。暴露した片を指でこすり、タイコートとトップコートとの間の接着に、0(不良な接着)〜5(非常に良好な接着)の間の格付けを与えた。
【0090】
【表2】
【0091】
本発明による汚損剥離コーティング組成物は、比較コーティング組成物と比べて、混合後、より長い時間用いることができ(より長い可使時間)、改良された汚損防止特性およびより良好な接着性を有するコーティングを提供するとまとめることができる。
本願発明には以下の態様が含まれる。
項1.
人工物への水生生物汚損を抑制するための非水性液体汚損剥離コーティング組成物であって、
i)式(I)の繰り返し単位および少なくとも1つの式(II)の末端またはペンダント基を含む湿気硬化性ポリシロキサン、ならびに、
【化1】
【化2】
[式中、RおよびRは独立に、1〜20個の炭素原子を有する有機基であり;RおよびRは独立に、1〜20個の炭素原子を有する有機基であり;Aは1〜50個の炭素基を有する有機基であり;Rは独立に、1〜20個の炭素原子を有する有機基および式O−Rの基から選択され、Rは1〜20個の炭素原子を有する有機基であり、ただし少なくとも1つのRは式O−Rの基である。]
ii)殺海洋生物剤、またはヒドロカルビル、ヘテロカルビル、ハロカルビル、エーテル、エステル、アミド、ケトン、シロキサン、ウレタン、もしくは尿素基から選択される単位を含む不揮発性成分の少なくとも1つ
を含む、非水性液体汚損剥離コーティング組成物。
項2.
式(III)のアミノシランをさらに含む、項1に記載の汚損剥離コーティング組成物。
【化3】
[式中、R〜RおよびAは項1に記載の通りに定義され、少なくとも1つのRは式O−Rの基であり、Rは1〜20個の炭素原子を有する有機基である。]
項3.
成分ii)が式(II)の基を含有しない、項1または2に記載の汚損剥離コーティング組成物。
項4.
Aがメチレン基である、項1から3のいずれか一項に記載の汚損剥離コーティング組成物。
項5.
およびRのそれぞれが独立にメチル基またはフェニル基である、項1から4のいずれか一項に記載の汚損剥離コーティング組成物。
項6.
がC〜Cアルコキシ基、好ましくはエトキシ基から選択される、項1から5のいずれか一項に記載の汚損剥離コーティング組成物。
項7.
殺海洋生物剤を本質的に含まない、または全く含まない、項1から6のいずれか一項に記載の汚損剥離コーティング組成物。
項8.
揮発性有機溶剤を含む、項1から7のいずれか一項に記載の汚損剥離コーティング組成物。
項9.
不揮発性含有率が70〜100重量%の範囲である、項1から8のいずれか一項に記載の汚損剥離コーティング組成物。
項10.
項1から9のいずれか一項に記載の汚損剥離コーティング組成物でコーティングされた基材。
項11.
− 前記基材に塗布され、プライマーコーティング組成物から堆積する任意選択のプライマー層、
− 前記基材に、または前記任意選択のプライマー層に塗布され、硬化性アルコキシシラン官能基を有するバインダーポリマーを含むタイコート組成物から堆積するタイコート層、および
− 前記タイコート層に塗布され、項1から9のいずれか一項に記載の液体汚損剥離コーティング組成物から堆積するトップコート層
を含む多層コーティング系でコーティングされた、項10に記載の基材。
項12.
前記タイコート組成物が、硬化性アルコキシシラン官能基を有するポリアクリレートを含む、項10または11に記載の基材。
項13.
人工物への水生生物汚損を抑制するための方法であって、
a)項1から9のいずれか一項に記載の汚損剥離コーティング組成物を、前記人工物の表面の少なくとも一部に塗布するステップ;
b)前記コーティング組成物を硬化させ、硬化コーティング層を形成するステップ;および
c)前記人工物を、少なくとも部分的に水中に浸漬させるステップ
を含む、方法。
項14.
前記汚損剥離コーティング組成物を塗布する前に、前記人工物の前記表面の前記少なくとも一部に、項11または12に規定のタイコート組成物から堆積するタイコート層を塗布するステップをさらに含む、項13に記載の方法。
項15.
人工物への水生生物汚損を抑制するための、項1から9のいずれか一項に記載の汚損剥離コーティング組成物の使用。