【文献】
HIROSE, Shigeo et al.,形状記憶合金アクチュエータの開発(材料特性の計測と能動内視鏡の開発),日本ロボット学会誌,1987年 4月15日,Vol.5, No.2,pp.3-17(特に、Fig.16),ISSN 0289-1824
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して本発明の各実施形態について説明する。なお、一部の図面では図示の明瞭化のために部材の一部の図示を省略する。
【0014】
[第1の実施形態]
以下に、
図1と
図2とを参照して本発明の第1の実施形態について説明する。
図1は、第1の実施形態の剛性可変システム10の剛性可変装置20が組み込まれた内視鏡100の斜視図である。
図2は、
図1に示す剛性可変システム10の概略図である。
【0015】
内視鏡100は、医療用でもよいし、工業用でもよい。内視鏡100は、可撓性部材101と、可撓性部材101
の基端部に連結される操作部103と、可撓性部材101に装着される剛性可変装置20とを有する。
【0016】
可撓性部材101は、細長いチューブである。可撓性部材101の先端には、カメラが設けられている。可撓性部材101は、被検体の内部に挿入される。カメラは被検体の内部を撮影できる。可撓性部材101は、可撓性部材101に付加される外力によって撓むことが可能である。外力とは、重力も外力の一部と考える。
【0017】
操作部103は、内視鏡100の各種の操作を実施するスイッチ103a,103bと、操作ダイヤル103cとを有する。
【0018】
本実施形態の内視鏡100は、可撓性部材101の内部に、可撓性部材101の剛性を変更するための剛性可変装置20を備えている。剛性可変装置20は、可撓性部材101の全長の一部分に配置されてもよいし、可撓性部材101の全長に渡って配置されてもよい。
【0019】
図2に示すように、剛性可変システム10は、可撓性部材101に異なる剛性を提供する剛性可変装置20と、剛性可変装置20の剛性を制御する制御装置30と、剛性可変装置20の形状記憶ユニット22を冷却する冷却機構40とを有する。
【0020】
剛性可変装置20は、少なくとも2つの中空形状の形状記憶部材21と、形状記憶部材21の外周を巻回するコイル状の加熱部材23とを有する。
【0021】
複数の形状記憶部材21は、形状記憶部材21の長手軸方向において連結されており、全体として細長いチューブ状の形状記憶ユニット22を形成する。詳細には、隣り合う形状記憶部材21それぞれの端部は、互いに対して接着または溶接などによって直接連結されてよい。例えば、接着または溶接は、形状記憶部材21の端部の外周面全周において実施される。それぞれが短いパイプとして機能する3つの形状記憶部材21は、連結によって、1本の長いチューブ状の形状記憶ユニット22として機能する。形状記憶ユニット22は、形状記憶部材21それぞれの中空部が連結された孔状の内部空間を有する。内部空間は、形状記憶部材21を冷却するための流体が流れるように構成される。
図2では、図示の簡略のため3つの形状記憶部材21が配置されている例を示しているが、形状記憶部材21の数は複数であればよい。
【0022】
形状記憶部材21は、例えば円筒状である。例えば、形状記憶部材21の外径は、可撓性部材101の内径よりも小さい。形状記憶ユニット22は、可撓性部材101に比べて短い。
【0023】
形状記憶部材21は、温度によって形状記憶部材21の相が変態し、変態による剛性変化が大きい部材であればよい。このような形状記憶部材21は、例えば形状記憶合金から構成されていてよい。形状記憶合金は、例えばNiTiまたはNiTiCuを含む合金であってよい。また、形状記憶部材21は、形状記憶ポリマー、形状記憶ゲル、形状記憶セラミックなど、他の材料から構成されていてもよい。
【0024】
形状記憶部材21を構成する形状記憶合金は、例えば、マルテンサイト相とオーステナイト相との間で相が移り変わるものであってよい。その形状記憶合金は、マルテンサイト相時には、外力に対して比較的容易に塑性変形する。つまり、その形状記憶合金は、マルテンサイト相時には低い弾性係数を示す。一方、形状記憶合金は、オーステナイト相時には、外力に抵抗して容易には変形しない。ここで、形状記憶合金がさらに大きな外力によって変形したとする。変形した形状記憶合金に対して大きな外力が打ち消された際、形状記憶合金は、超弾性を示して、記憶している形状に戻る。つまり、形状記憶合金は、オーステナイト相時には高い弾性係数を示す。
【0025】
形状記憶部材21が低い弾性係数を示す相を第1の相と称することとし、形状記憶部材21が高い弾性係数を示す相を第2の相と称することとする。形状記憶部材21の相は、加熱または冷却によって第1の相と第2の相との間で変わり得る。
【0026】
形状記憶部材21の相が第1の相にあるときは、形状記憶部材21は、外力に従って容易に変形し得る低剛性状態を取り、すなわち低い弾性係数を示す。したがって、形状記憶部材21の相が第1の相にあるときは、剛性可変装置20は形状記憶部材21によって可撓性部材101に比較的低い剛性を提供する。低い剛性とは、例えば、可撓性部材101が撓みやすいような剛性である。第1の相において、剛性可変装置20と可撓性部材101とは、例えば、外力によって容易に撓むことが可能となる。
【0027】
また、形状記憶部材21の相が第2の相にあるときは、形状記憶部材21は、低剛性状態よりも高い剛性を有する高剛性状態を取り、高い弾性係数を示す。高剛性状態では、形状記憶部材21は、外力に抗してあらかじめ記憶している記憶形状を取る傾向を示す。記憶形状は、例えば略直線状であってよい。したがって、形状記憶部材21の相が第2の相にあるときは、剛性可変装置20は形状記憶部材21によって可撓性部材101に比較的高い剛性を提供する。高い剛性とは、例えば、可撓性部材101が撓みにくいような剛性、または外力に対抗して可撓性部材101が略直線状態を維持する剛性である。第2の相において、剛性可変装置20と可撓性部材101とは、例えば、略直線状態を維持可能となる、または外力が印加されても第1の相における状態に比べて緩やかに撓むことが可能となる。
【0028】
形状記憶部材21の相を第1の相と第2の相との間で変更させるため、加熱部材23及び冷却機構40が備えられる。形状記憶部材21は加熱部材23の発熱によって第1の相から第2の相に形状記憶部材21の相が移り変わる性質を有する。また形状記憶部材21は、冷却機構40の冷却によって、第2の相から第1の相に形状記憶部材21の相が移り変わる性質を有している。言い換えると、加熱部材23と冷却機構40とは、第1の相と第2の相との間で形状記憶部材21の相の移り変わりを引き起こさせて形状記憶部材21の剛性状態を変更する。
【0029】
加熱部材23は、例えば、密着巻きコイルといった螺旋状のコイル部材を有する。加熱部材23のコイル部材は、疎巻きコイルでもよい。コイル部材は、ワイヤ状の部材である。加熱部材23は、形状記憶ユニット22の全長に渡って配置される。
【0030】
加熱部材23は、導電性材料から構成されており、例えば電熱線、つまり電気抵抗の大きい導電性部材で構成されてよい。加熱部材23は、制御装置30から電流の供給を受けて熱を発する性能を有する。制御装置30は、加熱部材23を駆動する駆動部31を有する。駆動部31は、1つの電源と1つのスイッチとを有する。駆動部31は、配線部33を介して加熱部材23に電気的に接続される。配線部33は、例えば、金属のワイヤ状の部材である。配線部33は、加熱部材23に電気的に接続されていればよく、加熱部材23と一体であってもよいし別体であってもよい。駆動部31は、スイッチのON動作に応じて、配線部33を介して加熱部材23に電流を供給する。これにより加熱部材23は、発熱する。加熱部材23の発熱量は、電流の供給量に応じる。加熱部材23は、熱を、加熱部材23の周辺に配置される形状記憶ユニット22に伝える。そして、加熱部材23は、熱によって、第1の相から第2の相への形状記憶ユニット22の相の移り変わりを引き起こさせる。このような加熱部材23は、ヒータとして機能する。熱の温度は、例えば、70度〜80度である。駆動部31は、スイッチのOFF動作に応じて、加熱部材23に対する電流の供給を停止する。これにより加熱部材23は、発熱を停止する。
【0031】
加熱部材23は、形状記憶ユニット22の相の移り変わりを引き起こすことが可能な位置に配置されればよい。したがって、例えば、加熱部材23は、形状記憶ユニット22の外側周囲に配置される。加熱部材23は、形状記憶ユニット22の長手軸に沿って延在している。加熱部材23は、形状記憶ユニット22の長手軸に沿って、形状記憶ユニット22の周囲を螺旋状に延びている。このため、形状記憶ユニット22は、加熱部材23の巻きの内側に配置される。加熱部材23は、形状記憶ユニット22の外周面に密着しているが、形状記憶ユニット22の外周面から適度なすき間だけ離れて配置されてもよい。このような構成のおかげで、加熱部材23によって発せられる熱は形状記憶ユニット22に効率良く伝達され、剛性可変装置20は細くなる。
【0032】
また加熱部材23は形状記憶ユニット22の全体に対して1つのみ配置されており、1つの加熱部材23が3つの形状記憶部材21それぞれの相の移り変わりを略同時に引き起こさせる。このような配置によって、剛性可変装置20の構成はシンプルになる。なお加熱部材23は、分割配置されて、形状記憶部材21それぞれに配置されてもよい。
【0033】
例えば、形状記憶部材21の周囲には、図示しない第1絶縁膜が配置される。第1絶縁膜は、形状記憶部材21と加熱部材23の間の短絡を防止する。第1絶縁膜は、少なくとも加熱部材23に面する部分を覆う。したがって、第1絶縁膜は、形状記憶部材21の外周面を部分的に覆って配置されてもよいし、形状記憶部材21の外周面の全体に配置されていてもよい。
【0034】
例えば、加熱部材23の周囲には、図示しない第2絶縁膜が設けられている。第2絶縁膜は、形状記憶部材21と加熱部材23の間の短絡を防止する働きをする。
【0035】
冷却機構40は、形状記憶部材21それぞれの中空部が連結されて形成された形状記憶ユニット22の内部空間に冷却のための流体を供給することで形状記憶ユニット22を冷却する。ここで、冷却とは、少なくとも、対象物である形状記憶ユニット22の放熱を促進すること、言い換えれば、対象物の放熱作用を高めることを意味している。
【0036】
冷却機構40は、冷却のための流体を形状記憶ユニット22に供給する供給源41と、供給源41から流出した流体を形状記憶ユニット22に導く経路部材43とを有する。
【0037】
流体は、気体または液体である。流体は、例えば、第2の相となっている形状記憶ユニット22の温度よりも低い温度に流体の温度を調整される冷却媒体である。流体の温度は、例えば、38度である。流体の温度は、常温でもよいし、内視鏡100が用いられる手術室または検査室といった部屋の室温と略同一の温度でもよい。
【0038】
供給源41は、経路部材43によって形状記憶ユニット22に接続される。供給源41は、例えば、コンプレッサまたはポンプを有する。供給源41は、流体の温度と流体の供給量と流体の供給時間とを所望に制御する機能を有してもよい。
【0039】
経路部材43は、例えば、樹脂材または金属材のチューブである。経路部材43は、形状記憶ユニット22に接続される。例えば、経路部材43は、形状記憶ユニット22の端部に挿入されている。なお形状記憶ユニット22の端部が経路部材43に挿入されもよい。経路部材43は、中空形状の形状記憶ユニット22の内部空間に流体を導く。形状記憶ユニット22の内部空間には部材がなんら配置されていないため、形状記憶ユニット22の内部空間に導かれた流体は形状記憶ユニット22の内周面に直接接した状態で形状記憶ユニット22の内部空間を流れる。なお形状記憶ユニット22の内周面は、保護膜などで覆われてもよい。
【0040】
制御装置30及び冷却機構40は、内視鏡100に搭載されてもよいし、内視鏡100に接続される内視鏡100の制御装置(図示せず)に搭載されてもよい。したがって、剛性可変システム10は、内視鏡100に搭載される、または内視鏡100と内視鏡100の制御装置とを有する内視鏡システムに搭載される。例えば、内視鏡100のスイッチ103aは、制御装置30の駆動部31のスイッチとして機能する。また内視鏡100のスイッチ103bは、冷却機構40の供給源41のスイッチとして機能する。制御装置30は、スイッチ103bのONまたはOFFに応じて、供給源41の駆動を制御する。制御装置30は、例えば、ASICなどを含むハードウエア回路によって構成される。制御装置30は、CPUによって構成されても良い。制御装置30がプロセッサで構成される場合、プロセッサの内部メモリまたはプロセッサがアクセス可能に配置された図示しない外部メモリに、プロセッサが実行することで当該プロセッサを制御装置30として機能させるためのプログラムコードを記憶しておく。
【0041】
次に、相の切り替えに伴う、可撓性部材101の剛性の変更について説明する。
【0042】
剛性可変システム10の初期状態では、駆動部31のスイッチがOFFとなり、駆動部31は加熱部材23に電流を供給しておらず、加熱部材23は熱を発生していない。形状記憶ユニット22の相が第1の相であり、形状記憶ユニット22は低剛性状態である。このため、剛性可変装置20は、形状記憶ユニット22によって可撓性部材101に比較的低い剛性を提供する。これにより可撓性部材101は、例えば、可撓性部材101に加わる外力によって容易に撓むことが可能となる。
【0043】
駆動部31のスイッチがONとなったとき、駆動部31が加熱部材23に電流を供給し、加熱部材23は熱を発生する。すると、熱は加熱部材23から形状記憶ユニット22に伝わり、形状記憶ユニット22は熱によって熱せられて、形状記憶ユニット22の相は熱によって第1の相から第2の相に素早く切り替わる。これにより形状記憶ユニット22は、低剛性状態から高剛性状態に変化する。剛性可変装置20は、形状記憶ユニット22によって可撓性部材101に比較的高い剛性を提供する。そして可撓性部材101は、例えば、略直線状態を維持可能となる、または外力が印加されても第1の相における状態に比べて緩やかに撓むことが可能となる。
【0044】
形状記憶ユニット22の相を第2の相から第1の相に戻すときは、次のように動作する。まず、駆動部31のスイッチがOFFとなり、駆動部31は加熱部材23への電流の供給を停止し、加熱部材23は熱の発生を停止する。そして供給源41は、流体を形状記憶ユニット22に供給する。
【0045】
供給源41から流出した流体は、経路部材43を通り、形状記憶ユニット22の内部空間に流れ込み、
図2に矢印で示すように形状記憶ユニット22の内部空間を通り抜ける。流体は、形状記憶ユニット22の内周面に接した状態で内部空間を流れる。形状記憶ユニット22の熱は、流体に伝わり、流体と共に形状記憶ユニット22の内部空間を通り抜ける。形状記憶ユニット22の内部空間を通り抜けた流体は、貯留されてもよいし、廃棄されてもよいし、循環されて冷却のために再利用されてもよい。冷却機構40は、形状記憶ユニット22の内部空間に流体を供給することによって、形状記憶ユニット22を所望する温度に冷却する。所望する温度とは、例えば形状記憶ユニット22の相が第1の相となる温度である。
【0046】
形状記憶ユニット22の内部空間に流体が供給されている状態では、形状記憶ユニット22の温度は、形状記憶ユニット22の内部空間に流体が供給されていない状態よりも短時間のうちに低下する。つまり形状記憶ユニット22は、自然冷却よりも素早く冷却される。
【0047】
このように形状記憶ユニット22の相が第1の相と第2の相の間で素早く切り替えられることによって、剛性可変装置20が配置されている可撓性部材101のあるエリアの剛性が素早く切り替えられる。
【0048】
本実施形態では、形状記憶ユニット22は1つの中空形状の細長い形状記憶部材21で形成されるのではなく、複数の中空形状の細くて短い形状記憶部材21が互いに対して連結されて形成される。1つの細長い形状記憶部材21を中空形状に加工する場合に比べて、短い形状記憶部材21の加工の難易度は低い。また、形状記憶部材21を接着または溶接などによって互いに連結することは比較的容易である。したがって、本実施形態に係る形状記憶ユニット22の製造は比較的容易である。
【0049】
本実施形態では、熱を形状記憶ユニット22に伝達することで、可撓性部材101が低剛性状態から高剛性状態へ切り替える際に、切り替えに対する高い応答性を得ることができる。また本実施形態では、冷却機構40によって、形状記憶ユニット22を自然冷却よりも素早く冷却でき、可撓性部材101が高剛性状態から低剛性状態へ切り替わる際に、切り替えに対する高い応答性を得ることができる。
【0050】
中空形状の3つの形状記憶部材21が連結されることで、冷却用の流体が流れる形状記憶ユニット22の内部空間が形成されているため、形状記憶ユニット22の内部空間には流体を流すための他の部材がなんら配置されていない。このため、形状記憶ユニット22を細くできる。また流体が形状記憶ユニット22の内周面に直接接するため、非常に高い冷却効果を得ることができる。
【0051】
ここでは、可撓性部材101に剛性可変装置20が配置された例を説明したが、これに限らない。剛性可変装置20は、例えば、マニピュレータ、カテーテルなどの細長い部材に配置されてもよい。
【0052】
[第2の実施形態]
以下に、
図3を参照して、本発明の第2の実施形態について説明する。
図3は、第2の実施形態の剛性可変システムの概略図である。本実施形態では、第1の実施形態とは異なることを主に記載する。
【0053】
本実施形態では、連結のために、形状記憶ユニット22は、剛性可変装置20の長手軸方向において隣り合う形状記憶部材21それぞれを連結する筒状の連結部材25を有する。
【0054】
連結部材25は、例えば円筒状である。連結部材25は、形状記憶部材21よりも短いパイプである。連結部材25の外径は、加熱部材23の巻きの外径と略同一でもよい。
【0055】
連結部材25が外力によって曲がった後に、外力が解消された際に、連結部材25は、曲がりが解消されて元の状態である例えば略直線状態に戻る特性を有する。このような連結部材25は、例えば、NiTiといった金属材でよい。連結部材25は、外力によって撓み難い部材によって構成されてもよい。このような部材は、例えば、ステンレスといった金属材でよい。連結部材25は、所望の弾発性を有してもよい。この弾発性は、例えば、跳ね返り性、バネ性、腰の強さ等を含み、曲がった連結部材25を略直線に戻す性質を有する。
【0056】
連結部材25は、形状記憶部材21の連結部分である隣り合う形状記憶部材21それぞれの端部に配置される。剛性可変装置20の長手軸方向において隣り合う形状記憶部材21それぞれは、連結部材25の内部に配置され、互いに接するように配置される。詳細には、隣り合う形状記憶部材21それぞれの端部は、連結部材25の両端それぞれから連結部材25の内部に挿入されて、連結部材25によって直接連結される。連結部材25は、形状記憶部材21の外周に配置され、形状記憶部材21を外側から連結する外側連結部材として機能する。
【0057】
加熱部材23と駆動部31とは、3つの形状記憶部材21それぞれに配置されてもよい。加熱部材23それぞれは互いに対して電気的に絶縁されており、各々の駆動部31は加熱部材23を個別に駆動する。これにより、3つの形状記憶部材21それぞれの相が個別に第1の相から第2の相に移り変わることが可能となり、剛性可変装置20の剛性は部分的に可変する。
【0058】
3つの加熱部材23は、同一構造体であってよい。しかし、これに限定されることなく、3つの加熱部材23それぞれは、互いに異なる構造体を含んでいてもよい。異なる構造体は、例えば、異なる長さや異なる太さや異なるピッチを有していてもよく、また、異なる材料で作られていてもよい。つまり、複数の加熱部材23は、すべてまたはいくつかが、同じ特性を有していてもよいし、異なる特性を有していてもよい。また第1の実施形態と同様に、加熱部材23と駆動部31とは、剛性可変装置20の全体において1つでもよい。
【0059】
本実施形態では、連結部材25によって、形状記憶部材21の連結部分の強度を向上でき、剛性可変装置20の組立性も向上できる。連結部材25と加熱部材23とのそれぞれの外径は互いに対して略同一でもよいため、剛性可変装置20を第1の実施形態のように細いままで、連結部分の連結強度を向上できる。本実施形態では、連結部材25によって、加熱部材23を位置決めできる。
【0060】
[第1の変形例]
以下に、
図4を参照して、第2の実施形態の第1の変形例について説明する。
図4は、第2の実施形態の第1の変形例の剛性可変システムの概略図である。本変形例では、
図3に示す第2の実施形態とは異なることを主に記載する。
【0061】
隣り合う形状記憶部材21それぞれの端部は、連結部材25の内部において、互いに対して離れて配置される。したがって、剛性可変装置20の長手軸方向において形状記憶部材21それぞれの端部の間には、スペースが配置される。スペースの長さは、適宜調整される。このように隣り合う形状記憶部材21それぞれは、連結部材25によって間接的に連結されることとなる。
【0062】
経路部材43は、連結部材25の端部に挿入される。なお連結部材25の端部が経路部材43に挿入されもよい。経路部材43は、連結部材25の内部空間を通じて形状記憶部材21の内部に流体を導く。
【0063】
本変形例では、形状記憶ユニット22の全長に対して形状記憶部材21の数を減らしたり、形状記憶部材21の長さを短くでき、形状記憶部材21を容易に加工できる。
【0064】
[第2の変形例]
以下に、
図5を参照して、第2の実施形態の第2の変形例について説明する。
図5は、第2の実施形態の第2の変形例の剛性可変システムの概略図である。本変形例では、
図3に示す第2の実施形態とは異なることを主に記載する。
【0065】
連結部材25は、例えば、樹脂材でよい。連結部材25は、形状記憶ユニット22の全長と同じ長さを有する1本のチューブとして機能する。剛性可変装置20の長手軸方向において隣り合う形状記憶部材21それぞれは、全長に渡って連結部材25の内部に配置される。隣り合う形状記憶部材21それぞれの端部は、連結部材25の内部において、互いに接するように配置される。
【0066】
1つの加熱部材23は、連結部材25の全長に渡って配置される。加熱部材23の数にあわせて、1つの駆動部31が配置される。加熱部材23は、連結部材25の外側周囲に配置される。加熱部材23は、連結部材25の長手軸に沿って、連結部材25の外周囲を螺旋状に延びている。加熱部材23は、連結部材25の外周面に密着しているが、連結部材25の外周面から適度なすき間だけ離れて配置されてもよい。加熱部材23から発生した熱は、連結部材25を介して形状記憶部材21に伝わる。また第2の実施形態と同様に、加熱部材23と駆動部31とは、3つの形状記憶部材21それぞれに配置されてもよい。
【0067】
本変形例では、形状記憶部材21の内部を流れる冷却用の流体の形状記憶部材21の連結部分からの漏れを連結部材25によって防止できる。
【0068】
[第3の実施形態]
以下に、
図6を参照して、本発明の第3の実施形態について説明する。
図6は、第3の実施形態の剛性可変システムの概略図である。本実施形態では、
図3に示す第2の実施形態とは異なることを主に記載する。
【0069】
形状記憶ユニット22は、経路部材43に接続される筒状部材27を有する。筒状部材27は、形状記憶ユニット22の内部空間に配置される。筒状部材27は、剛性可変装置20の長手軸方向において形状記憶ユニット22の全長に渡って配置される。筒状部材27は、形状記憶ユニット22の全長よりも長くてもよい。したがって、供給源41とは逆側の筒状部材27の端部は、
図6の一番左に配置される形状記憶部材21よりも
図6の左側に突出してもよい。筒状部材27の外周面は、形状記憶部材21の内周面に接触してもよい。筒状部材27は、例えば、樹脂材のチューブである。
【0070】
流体は、供給源41から経路部材43を経由して筒状部材27の内部を流れる。本実施形態では、連結部分からの流体の漏れを筒状部材27によって防止できる。
【0071】
なお筒状部材27の外周面は形状記憶部材21の内周面に接合されてもよく、筒状部材27は形状記憶ユニット22の内部空間に配置されて形状記憶部材21の内側から形状記憶部材21を連結する内側連結部材として機能してもよい。これにより形状記憶部材21の連結部分の連結強度を筒状部材27によって向上できる。筒状部材27は、経路部材43と一体となっていてもよい。
【0072】
[変形例]
以下に、
図7を参照して、第3の実施形態の変形例について説明する。
図7は、第3の実施形態の変形例の剛性可変システムの概略図である。本変形例は、
図4に示す第2の実施形態の第1の変形例に示す構成に、
図6に示す第3の実施形態の筒状部材27が組み合わされたものである。
【0073】
つまり、隣り合う形状記憶部材21それぞれの端部が連結部材25の内部において互いに対して離れた状態で、筒状部材27は、形状記憶部材21の内部と連結部材25の内部とに配置される。
【0074】
本変形例では、流体が連結部材25の内周面と形状記憶部材21の端部との段差によって阻害されることなく、流体を筒状部材27によって形状記憶部材21の内部にスムーズに供給できる。
【0075】
[第4の実施形態]
以下に、
図8を参照して、本発明の第4の実施形態について説明する。
図8は、第4の実施形態の剛性可変システムの概略図である。本実施形態では、
図6に示す第3の実施形態とは異なることを主に記載する。
【0076】
本実施形態では、連結部材25が
図6に示す第3の実施形態の構成から省略され、筒状部材27の外周面は形状記憶部材21の内周面に接合されている。筒状部材27は、形状記憶ユニット22の内部空間に配置されて形状記憶部材21の内側から形状記憶部材21を連結する内側連結部材として機能する。
【0077】
1つの加熱部材23は、形状記憶ユニット22の全長に渡って配置される。加熱部材23の数にあわせて、1つの駆動部31が配置される。
【0078】
本実施形態では、連結部材25を省略でき、剛性可変装置20の部品点数を削減できる。
【0079】
[第5の実施形態]
以下に、
図9を参照して、本発明の第5の実施形態について説明する。
図9は、第5の実施形態の剛性可変システムの概略図である。本実施形態では、
図8に示す第4の実施形態とは異なることを主に記載する。
【0080】
図9では、図示の簡略のため2つの形状記憶ユニット22a,22bが配置されている例を示しているが、形状記憶ユニットの数は複数であればよい。
【0081】
形状記憶ユニット22a,22bそれぞれにおいて、複数の形状記憶部材21は形状記憶部材21の内部に配置される筒状部材27によって連結されている。また剛性可変装置20の長手軸方向において隣り合う形状記憶ユニット22a,22bの端部は、互いに対して離れて配置されている。したがって、剛性可変装置20の長手軸方向において形状記憶ユニット22a,22bそれぞれの間には、スペース29が配置される。スペース29の長さは、適宜調整される。
【0082】
1本の筒状部材27は、形状記憶ユニット22bの内部空間から形状記憶ユニット22aの内部空間に延びて配置されており、形状記憶ユニット22aと形状記憶ユニット22bとを間接的に連結する。
【0083】
本実施形態では、可撓性部材101の互いに対して離れた2つの部分に形状記憶ユニット22a,22bを配置することで、互いに対して離れた2つの部分の剛性を素早く切り替えることができる。また可撓性部材101においてスペース29が配置される部分の剛性を、筒状部材27の剛性に常に維持できる。
【0084】
[第6の実施形態]
以下に、
図10Aを参照して、本発明の第6の実施形態について説明する。
図10Aは、第6の実施形態の剛性可変システムの概略図である。
図10Aにおいて、
図1に図示されている部材と同一の参照符号で指示されている部材は同様の部材であり、その詳しい説明は省略する。以下、上記した各実施形態とは異なることを主に記載する。
【0085】
剛性可変装置20は、第1の長手部材50と、第1の長手部材50に沿って移動可能な第2の長手部材70と、第1の長手部材50に対して第2の長手部材70を移動させる移動機構80とをさらに有する。第1の長手部材50は外筒であり、第2の長手部材70は第1の長手部材50の内部に配置される芯部である。例えば、外筒の長手軸に垂直な外筒の断面形状は環形状であり、芯部の長手軸に垂直な芯部の断面の外周は環形状である。この場合、剛性可変装置20は、どの方向の曲がりに対しても安定した剛性を提供する。外筒及び芯部それぞれの断面形状は、必ずしも環形状である必要はなく、他の形状、例えばC字形状であってもよい。
【0086】
本実施形態では、例えば、第1の長手部材50は、可撓性部材101に対して相対的に位置決め固定される。
【0087】
第1の長手部材50は、少なくとも1つの筒状の硬質部材51と、少なくとも1つの加熱部材23と、少なくとも1つのリング状の断熱部材57と、中空形状の外側支持部材55とを有する。
図10Aでは、図示の簡略のため3つの硬質部材51と2つの加熱部材23と4つの断熱部材57とが配置されている例を示しているが、これらの数はいくつでもよい。
【0088】
外側支持部材55は、硬質部材51と加熱部材23と断熱部材57との内部に配置される。外側支持部材55は、硬質部材51と加熱部材23と断熱部材57とに対する芯部材として機能する。外側支持部材55は、硬質部材51と加熱部材23と断熱部材57とを支持する円筒状の外側支持部材である。
【0089】
外側支持部材55は、第2の長手部材70の全長に渡って、第2の長手部材70を覆う。例えば、外側支持部材55の長さは、第2の長手部材70の長さと略同一である。外側支持部材55の長さは、第2の長手部材70の長さよりも長くてもよい。外側支持部材55は、第1の長手部材50に対して第1の長手部材50の長手軸方向に沿って移動する第2の長手部材70を、第1の長手部材50の長手軸方向に沿ってガイドする。外側支持部材55は、湾曲可能となっている。
【0090】
外側支持部材55は、例えば、密着巻きコイルといったコイル部材を有する。外側支持部材55のコイル部材は、疎巻きコイルでもよい。外側支持部材55は、柔らかいチューブや、複数の金属素線が互いに対して撚り合わされた筒部材でもよい。外側支持部材55は、例えば、金属製のワイヤ状且つ螺旋状の部材を有してもよい。
【0091】
硬質部材51は、例えば円筒状である。硬質部材51は、例えば、金属材のパイプを有する。硬質部材51は、加熱部材23と外側支持部材55とは別体である。硬質部材51の長さは、外側支持部材55の長さよりも短く、加熱部材23の長さよりも長い。なお硬質部材51の長さは、加熱部材23の長さと略同一でも短くてもよい。
【0092】
硬質部材51の内周面は、外側支持部材55の外周面に、例えば接着または溶接などによって固定される。そして硬質部材51は、外側支持部材55に位置決めされる。複数の硬質部材51のそれぞれは、第1の長手部材50の長手軸方向において、互いに対して直接接触しておらず、互いに対して所望する間隔離れて配置されている。言い換えると、硬質部材51は、外側支持部材55の全長において、外側支持部材55を部分的に囲う。したがって、第1の長手部材50の長手軸方向において、硬質部材51それぞれの間には、第1のスペースが配置される。この第1のスペースには加熱部材23が配置されており、硬質部材51と加熱部材23とは第1の長手部材50の長手軸方向において外側支持部材55の外周面において交互に配置される。
【0093】
本実施形態では、1つの加熱部材23が外側支持部材55を外側支持部材55の全長に渡って巻回するのではなく、1つの加熱部材23が外側支持部材55の全長における外側支持部材55の一部位を巻回する。このように加熱部材23は、外側支持部材55を部分的に巻回する。
【0094】
加熱部材23は、第1の長手部材50の長手軸方向において、硬質部材51によって外側支持部材55に位置決めされる。加熱部材23の巻きの外径は、硬質部材51の外径と略同一である。加熱部材23の巻きは、第1の長手部材50の長手軸に直交する方向において、硬質部材51に対して突出していないことが好ましい。加熱部材23の内周面は、外側支持部材55の外周面に接触しており、外側支持部材55の外周面に固定されてもよい。なお加熱部材23の内周面は、外側支持部材55の外周面から離れてもよい。
【0095】
以上のような硬質部材51と加熱部材23と外側支持部材55とによって、第1の長手部材50は、相対的に曲げ剛性が高い複数の高曲げ剛性部61と、相対的に曲げ剛性が低い複数の低曲げ剛性部63とを有する。すなわち、高曲げ剛性部61は、筒状の硬質部材51と、硬質部材51の内部に配置される外側支持部材55の一部位とによって形成される。また低曲げ剛性部63は、加熱部材23と、加熱部材23の内部に配置される外側支持部材55の一部位とによって形成される。外側支持部材55は、高曲げ剛性部61と低曲げ剛性部63とに共有されている。
【0096】
硬質部材51は加熱部材23よりも硬くなっており、硬質部材51は高い曲げ剛性を有する筒状の硬質部であり、外側支持部材55と加熱部材23とは低い曲げ剛性を有する筒状の軟質部である。
【0097】
このように高曲げ剛性部61の曲げ剛性は高く、低曲げ剛性部63の曲げ剛性は高曲げ剛性部61の曲げ剛性よりも低くなっている。そして、第1の長手部材50は、高曲げ剛性部61では比較的曲がりにくく、低曲げ剛性部63では比較的曲がりやすくなる。
【0098】
図10Aでは、図示の簡略のため、3つの高曲げ剛性部61と2つの低曲げ剛性部63とが配置されている例を示している。
【0099】
硬質部材51と加熱部材23とは、交互に配置される。この配置によって、複数の高曲げ剛性部61と複数の低曲げ剛性部63とは、外側支持部材55の長手軸方向において交互に配置される。硬質部材51の長さと加熱部材23の長さとによって、高曲げ剛性部61の長さは、低曲げ剛性部63の長さよりも長い。なお、高曲げ剛性部61の長さは、低曲げ剛性部63の長さと略同一、または短くてもよい。
【0100】
第1の長手部材50が製造される際、外側支持部材55によって、硬質部材51が位置決めされ、硬質部材51それぞれの間隔(第1のスペースの長さ)が規定され、加熱部材23が位置決めされる。つまり外側支持部材55は、高曲げ剛性部61と低曲げ剛性部63との位置決めと、高曲げ剛性部61及び低曲げ剛性部63それぞれの長さの規定とを容易に実施する効果を有する。また、外側支持部材55は、第1の長手部材50の機械的な強度を向上させる効果を有する。
【0101】
図10Aでは、第1の長手部材50の両端部それぞれには、高曲げ剛性部61が配置されるが、配置はこれに限定される必要はない。両端部それぞれに低曲げ剛性部63が配置されてもよいし、一端部に高曲げ剛性部61が配置され、他端部に低曲げ剛性部63が配置されてもよい。
【0102】
第1の長手部材50は可撓性部材101に対して相対的に位置決め固定されるため、低曲げ剛性部63は可撓性部材101の所望するエリアに対して相対的に位置決め固定されることとなる。
【0103】
断熱部材57は、例えば、樹脂材である。断熱部材57は、第1の長手部材50の長手軸方向において、硬質部材51と加熱部材23との間に配置される。断熱部材57は、例えば接着または溶接などによって、硬質部材51の端部に固定される。断熱部材57は、加熱部材23に接触していることが好ましい。断熱部材57は、加熱部材23から発生した熱が硬質部材51に伝達されることを防止する。
【0104】
第2の長手部材70は、外側支持部材55の内部に配置されており、第1の長手部材50に隣接している。
【0105】
第2の長手部材70は、中空形状の内側支持部材75と、少なくとも1つの形状記憶ユニット22と、形状記憶ユニット22の形状記憶部材21よりも軟質な少なくとも1つの軟質部材73と、筒状部材27とを有する。
図10Aでは、図示の簡略のために、2つの形状記憶ユニット22と3つの軟質部材73とが配置されている例を示しているが、これらの数はいくつでもよい。形状記憶ユニット22と軟質部材73とは、内側支持部材75の内部に配置される。
【0106】
内側支持部材75は、形状記憶ユニット22の外周面と軟質部材73の外周面とを外側支持部材55の内周面に対して保護する保護部材として機能する。内側支持部材75は、外側支持部材55と形状記憶ユニット22及び軟質部材73との間に介在し、形状記憶ユニット22及び軟質部材73が外側支持部材55と直接接触することを防止する介在部材である。内側支持部材75は、形状記憶ユニット22及び軟質部材73を支持する。内側支持部材75は、湾曲可能である。
【0107】
内側支持部材75の外周面は外側支持部材55の内周面に接触しており、内側支持部材75は移動機構80によって外側支持部材55を摺動する。内側支持部材75が外側支持部材55に対して移動できれば、内側支持部材75の外周面は外側支持部材55の内周面とは接触しておらず、図示しないスペースが内側支持部材75の外周面と外側支持部材55の内周面との間に形成されてもよい。
【0108】
内側支持部材75は、例えば円筒状である。内側支持部材75は、例えば、密着巻きコイルといったコイル部材を有する。内側支持部材75のコイル部材は、疎巻きコイルでもよい。内側支持部材75は、柔らかいチューブや、複数の金属素線が互いに対して撚り合わされた筒部材でもよい。内側支持部材75は、例えば、金属製のワイヤ状且つ螺旋状の部材を有してもよい。内側支持部材75の長さは、低曲げ剛性部63の長さと略同一である。
【0109】
形状記憶ユニット22の長さは、内側支持部材75よりも短い。形状記憶ユニット22の長さは、高曲げ剛性部61の長さと略同一であり、低曲げ剛性部63の長さよりも長いことが好ましい。
【0110】
形状記憶ユニット22それぞれは、第2の長手部材70の長手軸方向において、互いに対して直接接触しておらず、互いに対して所望する間隔離れて配置される。したがって、第2の長手部材70の長手軸方向において、形状記憶ユニット22それぞれの間には、第2のスペースが配置される。この第2のスペースには、軟質部材73が配置される。また軟質部材73は、第2の長手部材70の長手軸方向における第2の長手部材70の両端部にも配置されている。したがって、複数の形状記憶ユニット22と複数の軟質部材73とは、第2の長手部材70の長手軸方向において、交互に配置されて、第2の長手部材70の長手軸方向に沿って配置される。形状記憶ユニット22と軟質部材73とは、内側支持部材75の全長において、内側支持部材75の内部に部分的に配置される。
【0111】
軟質部材73の端部は、この端部に隣り合う形状記憶ユニット22の端部に、接触する。軟質部材73の端部は、この端部に隣り合う形状記憶ユニット22の端部に、例えば接着または溶接などによって固定されてもよい。軟質部材73は、形状記憶ユニット22の位置決めのために配置される。
図10Aでは、例えば、第2の長手部材70の両端部には、軟質部材73が配置されている。この両端部に配置される軟質部材73の外周面は、内側支持部材75の内周面に、例えば接着または溶接などによって固定される。これにより、両端部に配置される以外の軟質部材73と形状記憶ユニット22とは、内側支持部材75に固定されずに、内側支持部材75に位置決めされることとなる。もちろん、形状記憶ユニット22及び軟質部材73それぞれの外周面が内側支持部材75の内周面に例えば接着または溶接などによって固定され、形状記憶ユニット22及び軟質部材73それぞれが位置決めされてもよい。なお形状記憶ユニット22が例えば接着または溶接などによって内側支持部材75に固定されるのであれば、軟質部材73は省略されてもよい。
【0112】
第2の長手部材70の両端部それぞれには、軟質部材73が配置されるが、配置はこれに限定される必要はない。両端部それぞれに形状記憶ユニット22が配置されてもよいし、一端部に軟質部材73が配置され、他端部に形状記憶ユニット22が配置されてもよい。また、両端部それぞれに配置される部材が例えば接着または溶接などによって内側支持部材75に固定されるのであれば、両端部の間に配置される部材は内側支持部材75に固定されていなくてもよい。
【0113】
軟質部材73は、例えば、ばね部材を有する。ばね部材は、例えば、疎巻きばねを有する。ばね部材は、例えば、密着巻きばねを有してもよい。軟質部材73は、例えば、細いワイヤといった線状部材、またはゴムといった弾性部材を有してもよい。軟質部材73の巻きの外径は、形状記憶ユニット22の外径と略同一である。軟質部材73は、例えば、湾曲可能となっている。例えば、軟質部材73は、形状記憶ユニット22よりも柔らかく撓みやすい。軟質部材73の長さは、形状記憶ユニット22の長さよりも短い。軟質部材73の長さは、低曲げ剛性部63と略同一であることが好ましい。
【0114】
形状記憶ユニット22は高い曲げ剛性を有する硬質部であり、軟質部材73と内側支持部材75とは低い曲げ剛性を有する軟質部である。そして、第2の長手部材70は、形状記憶ユニット22では比較的曲がりにくく、軟質部材73では比較的曲がりやすくなる。
【0115】
第2の長手部材70が製造される際、内側支持部材75によって、例えば、形状記憶ユニット22及び軟質部材73が位置決めされ、形状記憶ユニット22それぞれの間隔が規定される。また内側支持部材75は、第2の長手部材70の機械的な強度を向上させる効果を有する。
【0116】
例えば、形状記憶ユニット22の曲げ剛性は、形状記憶ユニット22の相が第1の相のとき、高曲げ剛性部61の曲げ剛性よりも低く、低曲げ剛性部63の曲げ剛性と略同一または低い。形状記憶ユニット22の曲げ剛性は、形状記憶ユニット22の相が第2の相のとき、高曲げ剛性部61の曲げ剛性と略同一または低く、低曲げ剛性部63の曲げ剛性よりも高い。形状記憶ユニット22の相が第2の相のとき、形状記憶ユニット22の曲げ剛性は、高曲げ剛性部61の曲げ剛性よりも高くてもよい。形状記憶ユニット22の曲げ剛性は、形状記憶ユニット22の相が第1の相であっても第2の相であっても、軟質部材73及び内側支持部材75それぞれの曲げ剛性よりも高くてもよいし低くてもよい。軟質部材73は、低曲げ剛性部63よりも柔らかい。
【0117】
本実施形態では、筒状部材27は、形状記憶ユニット22の内部空間と軟質部材73の巻きの内側とに配置されている。筒状部材27の外周面は、形状記憶ユニット22の内周面と軟質部材73の内周面とに接している。このような構成のおかげで、剛性可変装置20は細くなる。なお形状記憶ユニット22の内周面と軟質部材73の内周面とは、筒状部材27の外周面から適度なすき間だけ離れて配置されてもよいし、筒状部材27の外周面に密着してもよい。
【0118】
第2の長手部材70は、外側支持部材55の長手軸方向に沿って外側支持部材55の内部を移動することで第1の長手部材50に対する第2の長手部材70の位置を変える。そして第1の長手部材50と第2の長手部材70との相対位置と、形状記憶ユニット22の相とが変化することで、剛性可変装置20の長手軸方向における剛性可変装置20の一部位の剛性が変化する。これにより、剛性可変装置20は、可撓性部材101に異なる剛性を提供する。
【0119】
相対位置の変化のために、第2の長手部材70が移動する際、内側支持部材75の外周面は外側支持部材55の内周面を摺動する。移動機構80は、第2の長手部材70の牽引または押圧によって、第2の長手部材70を移動させる。例えば、内側支持部材75が牽引または押圧される。移動機構80は制御装置30に電気的に接続されており、制御装置30によって移動機構80の駆動、つまり移動機構80による第2の長手部材70の移動が制御される。
【0120】
移動機構80は、例えば、図示しないモータと、第2の長手部材70の一端部に接続され、モータの回転力によって第2の長手部材70を移動させる図示しない移動部材とを有する。モータは、操作部103におけるスイッチ103a(
図1参照)のONまたはOFFといった操作によって、駆動してもよい。移動部材は、例えば、内側支持部材75の一端部に直接接続され、モータの回転力によって第2の長手部材70を牽引または押圧する。このとき、内側支持部材75は、内側支持部材75に固定されている形状記憶ユニット22と軟質部材73と共に移動する。また移動時において、筒状部材27は移動せず可撓性部材101の内部にて固定されているため、移動する形状記憶ユニット22と軟質部材73とは筒状部材27を摺動する。移動部材は、モータの配置位置から内側支持部材75の一端部にまで配置される。例えば、移動部材は、操作部103と可撓性部材101との内部に配置される。移動部材は、例えば、ワイヤ状の部材である。このように移動機構80は、電動式となる。
【0121】
制御装置30は、移動機構80のモータによる第2の長手部材70の移動を制御する。制御装置30は、スイッチ103aの操作に連動して、移動機構80の牽引と押圧と停止とを制御する。
【0122】
なお、移動機構80として、モータが省略され、第2の長手部材70は手動操作によって移動してもよい。例えば、移動機構80は、モータの代わりに、操作ダイヤル103c(
図1参照)を有してもよい。操作ダイヤル103cは、移動部材に接続される。例えば、操作ダイヤル103cは、操作部103を把持する手の指によって操作され、操作によって操作ダイヤル103cの中心軸周りに回転する。操作ダイヤル103cは、回転によって、ONの位置またはOFFの位置に切り替わる。この切り替わりに応じて、移動部材は牽引または押圧される。これにより、第2の長手部材70が移動する。操作ダイヤル103cの代わりに、図示しないレバーが用いられてもよい。このように移動機構80は、手動式となる。この場合、制御装置30は省略される。
【0123】
また移動機構80と制御装置30とは省略されて、第2の長手部材70は剛性可変装置20を操作する操作者の手動操作によって移動してもよい。例えば、第2の長手部材70の端部が操作者の手によって保持され、第2の長手部材70は操作者の押し引きによって移動する。保持のために、第2の長手部材70は第1の長手部材50よりも長く、第2の長手部材70の長手軸方向において第2の長手部材70の端部が第1の長手部材50よりも外部に突出していることが好ましい。後述するように第1の長手部材50と第2の長手部材70とが筒状の可撓性部材101の内部に配置される場合、例えば、第2の長手部材70の端部は、操作部103まで延び、保持のために操作部103の内部から操作部103の筐体部を貫通して操作部103の外部に突出しているとよい。第2の長手部材70の端部は、可撓性部材101の基端部において外部に突出してもよい。また第2の長手部材70の端部に限らず、保持される部分が外部に突出してもよい。
【0124】
図10Aは、剛性可変装置20が最低剛性状態(超軟質状態)であることを示す図でもある。最低剛性状態では、剛性可変システム10は初期状態であり、駆動部31は加熱部材23に電流を供給しておらず、加熱部材23は熱を発生しておらず、形状記憶ユニット22の相が第1の相であり、形状記憶ユニット22は低剛性状態である。また最低剛性状態では、供給源41は、流体を供給していない。
【0125】
最低剛性状態において、低剛性状態である形状記憶ユニット22は硬質部である高曲げ剛性部61の内部に配置され、軟質部材73は軟質部である低曲げ剛性部63の内部に配置される。低曲げ剛性部63は最も曲がりやすい状態となり、剛性可変装置20は可撓性部材101が撓みやすいような最も低い剛性を可撓性部材101に提供する。そして第1の長手部材50と第2の長手部材70と可撓性部材101とは、例えば、外力によって最も容易に撓むことが可能となる。
【0126】
図10Bに示すように剛性可変装置20が最低剛性状態から低剛性状態(軟質状態)に切り替わるとき、第2の長手部材70が
図10Aに示す最低剛性状態に対して移動機構80によって移動するのみである。したがって、低剛性状態では、駆動部31は加熱部材23に電流を供給しておらず、加熱部材23は熱を発生しておらず、形状記憶ユニット22の相が第1の相であり、供給源41は流体を供給していない。
【0127】
低剛性状態において、軟質部材73よりも硬い低剛性状態である形状記憶ユニット22は低曲げ剛性部63の内部に配置され、低曲げ剛性部63は最低剛性状態に比べて曲がり難くなる。したがって、剛性可変装置20は、可撓性部材101が撓みやすいような比較的低い剛性を可撓性部材101に提供する。第1の長手部材50と第2の長手部材70と可撓性部材101とは、例えば、最低剛性状態に比べて曲がり難くなる。
【0128】
図10Cに示すように剛性可変装置20が低剛性状態から高剛性状態(硬質状態)に切り替わるとき、第2の長手部材70は
図10Bに示す低剛性状態に対して移動していない。高剛性状態では、駆動部31は加熱部材23に電流を供給し、加熱部材23は熱を発生する。供給源41は、流体を供給していない。
【0129】
高剛性状態において、形状記憶ユニット22は加熱部材23から発生した熱によって熱せられて、形状記憶ユニット22の相は熱によって第1の相から第2の相に切り替わる。これにより形状記憶ユニット22は低剛性状態から高剛性状態に変化する。高剛性状態の形状記憶ユニット22を、
図10Cでは黒塗りで示す。
【0130】
高剛性状態である形状記憶ユニット22は軟質部である低曲げ剛性部63の内部に配置され、低曲げ剛性部63は低剛性状態に比べて曲がり難い状態となる。したがって、剛性可変装置20は、可撓性部材101が撓みにくいような比較的高い剛性を可撓性部材101に提供する。撓みにくい形状は、例えば直線状であってよい。第1の長手部材50と第2の長手部材70と可撓性部材101とは、例えば、略直線状態を維持可能となる、または外力によって低剛性状態に比べて曲がり難くなることが可能となる。
【0131】
図10Cでは、2つの形状記憶ユニット22が高剛性状態となっているが、これに限定される必要はない。2つの形状記憶ユニット22のうちの選択された形状記憶ユニット22が高剛性状態となってもよい。軟質部材73の熱伝導率は、形状記憶ユニット22の熱伝導率よりも低い。したがって、熱せられた形状記憶ユニット22から軟質部材73を通じて他の熱せられていない形状記憶ユニット22への、熱の伝達は抑制される。
【0132】
剛性可変装置20が
図10Cに示す高剛性状態から
図10Aに示す最低剛性状態に戻るときは、
図10Dと
図10Eとに示すように動作する。
図10Dと
図10Eとは、剛性可変装置20が高剛性状態から最低剛性状態に戻る過程を示す戻り状態であることを示す。戻り状態は、
図10Dに示す第1戻り状態と、
図10Eに示す第2戻り状態とを有する。第2戻り状態は、第1戻り状態の後の状態である。
【0133】
第1戻り状態では、第2の長手部材70は、例えば
図10Cに示す高剛性状態に対して移動機構80によって移動する。駆動部31は加熱部材23への電流の供給を停止し、加熱部材23は熱の発生を停止する。供給源41は、流体を供給してもよい。
【0134】
第1戻り状態において、高剛性状態である形状記憶ユニット22は高曲げ剛性部61の内部に配置され、軟質部材73は軟質部である低曲げ剛性部63の内部に配置される。したがって、低曲げ剛性部63は最も曲がりやすい状態となり、剛性可変装置20は可撓性部材101に最も低い剛性を提供する。このとき、高剛性状態である形状記憶ユニット22は、移動機構80によって低曲げ剛性部63から高曲げ剛性部61に移動している。したがって第1状態では、高剛性状態である形状記憶ユニット22の温度が下がるのを待たずに、剛性可変装置20を高剛性状態から最低剛性状態に短時間に切り替えることができる。
【0135】
第2戻り状態では、第2の長手部材70は、例えば
図10Dに示す第1戻り状態に対して移動機構80によって移動しない。駆動部31は加熱部材23に電流を供給しておらず、加熱部材23は熱を発生していない。供給源41は、流体を供給する。
【0136】
供給源41から流出した流体は、
図10Eに矢印で示すように経路部材43の内部空間と筒状部材27の内部空間を通り抜ける。形状記憶ユニット22の熱は、筒状部材27を通じて流体に伝わり、流体と共に筒状部材27の内部空間を通り抜ける。このように冷却機構40は、筒状部材27の内部空間に流体を供給することによって、形状記憶ユニット22を所望する温度に冷却する。所望する温度とは、例えば形状記憶ユニット22の相が第1の相となる温度である。
【0137】
したがって、第2戻り状態において、高剛性状態である形状記憶ユニット22は、流体によって冷却され、低剛性状態に変化する。そして、第2戻り状態は、
図10Aに示す最低剛性状態に切り替わる。この第2戻り状態では、形状記憶ユニット22は、自然冷却されるよりも早く冷却されて素早く低剛性状態に戻ることができる。第2状態では、初期状態である最低剛性状態から低剛性状態への変化、つまり剛性可変装置20の再駆動を早めることができる。
【0138】
このように、本実施形態では、可撓性部材101における所望するエリアの剛性の切り替えに対する応答性を向上でき、剛性の可変を精密に制御できる。
【0139】
なお、本願発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で種々に変形することが可能である。また、各実施形態は可能な限り適宜組み合わせて実施してもよく、その場合組み合わせた効果が得られる。更に、上記実施形態には種々の段階の発明が含まれており、開示される複数の構成要件における適当な組み合わせにより種々の発明が抽出され得る。