特許第6866503号(P6866503)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6866503
(24)【登録日】2021年4月9日
(45)【発行日】2021年4月28日
(54)【発明の名称】電子制御装置及び排気ブレーキ制御装置
(51)【国際特許分類】
   F02D 9/06 20060101AFI20210419BHJP
【FI】
   F02D9/06 E
   F02D9/06 K
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2019-558951(P2019-558951)
(86)(22)【出願日】2018年10月24日
(86)【国際出願番号】JP2018039549
(87)【国際公開番号】WO2019116740
(87)【国際公開日】20190620
【審査請求日】2020年3月20日
(31)【優先権主張番号】特願2017-239768(P2017-239768)
(32)【優先日】2017年12月14日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003333
【氏名又は名称】ボッシュ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】池袋 雄樹
(72)【発明者】
【氏名】石川 成昭
【審査官】 戸田 耕太郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−318589(JP,A)
【文献】 特開平06−248992(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02D 9/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両(1)に備えられる電子制御装置(30)であって、
前記電子制御装置(30)は、
CPU(31)と、
排気フラップ(19)の開閉動作を制御する排気フラップ制御部(32)と、
前記排気フラップ(19)と、前記排気フラップ制御部(32)との間に配置されたリレー(50)の動作を制御するリレー制御部(40)とを備え、
前記排気フラップ制御部(32)は、前記CPU(31)から前記排気フラップ制御部(32)へ送信される指示信号(S1a)に基づき、前記排気フラップ(19)を閉位置に動作させる又は閉位置に維持させるための制御信号(S1)を生成し、前記リレー(50)を介して前記排気フラップ(19)に送信し、
前記リレー制御部(40)は、ABSまたはESPにより、前記車両(1)のスリップが検知された場合、前記CPU(31)から前記リレー制御部(40)へ送信される指示信号(S3a)に基づき、前記リレー(50)を制御する遮断信号(S3)を送信することにより前記リレー(50)を動作させて、前記排気フラップ制御部(32)から前記排気フラップ(19)に対して送信される制御信号(S1)を遮断する
ことを特徴とする電子制御装置(30)。
【請求項2】
前記リレー制御部(40)は、
前記排気フラップ制御部(32)と前記排気フラップ(19)との間を接続する信号線とは異なる独立した信号線を用いて前記リレー(50)を動作させて、前記排気フラップ制御部(32)からの制御信号(S1)を遮断する
ことを特徴とする請求項に記載の電子制御装置(30)。
【請求項3】
前記リレー制御部(40)は、
前記排気フラップ制御部(32)とは別々の回路である
ことを特徴とする請求項1または2に記載の電子制御装置(30)。
【請求項4】
排気フラップ(19)と、
前記排気フラップ(19)の開閉動作を制御する排気フラップ制御部(32)と、
前記排気フラップ(19)と、前記排気フラップ制御部(32)との間に配置されるリレー(50)と、
前記リレー(50)の動作を制御するリレー制御部(40)と
CPU(31)と、
前記CPUと、前記排気フラップ制御部(32)と、前記リレー制御部(40)とを備える電子制御装置(30)と、
を備える排気ブレーキ制御装置(100)であって、
前記排気フラップ制御部(32)は、前記CPU(31)から前記排気フラップ制御部(32)へ送信される指示信号(S1a)に基づき、前記排気フラップ(19)を閉位置に動作させる又は閉位置に維持させるための制御信号(S1)を生成し、前記リレー(50)を介して前記排気フラップ(19)に送信し、
前記リレー制御部(40)は、ABSまたはESPにより、前記排気ブレーキ制御装置(100)を備える車両(1)スリップが検知された場合、前記CPU(31)から前記リレー制御部(40)へ送信される指示信号(S3a)に基づき、前記リレー(50)を制御する遮断信号(S3)を送信することにより前記リレー(50)を動作させて、前記排気フラップ制御部(32)から前記排気フラップ(19)に対して送信される制御信号(S1)を遮断する
ことを特徴とする排気ブレーキ制御装置(100)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子制御装置及び排気ブレーキ制御装置に関し、特にディーゼルエンジンを搭載する車両に適用して好適なものである。
【背景技術】
【0002】
一般にディーゼルエンジンを搭載する大型車両は、排気管内に排気フラップを備える。排気フラップは、電子制御装置(ECU:Electronic Control Unit)の制御により、排気管を開放する開位置又は排気管を閉鎖する閉位置に動作する。
【0003】
排気フラップが排気管を閉鎖する閉位置に動作すると、排気管内の排気圧力が増加することでエンジンの回転抵抗が増加し、エンジンブレーキの作用が向上する。このように排気フラップを閉鎖させてエンジンブレーキの作用を向上させるブレーキを一般に、排気ブレーキと呼ぶ。
【0004】
特許文献1には、排気ブレーキに関する技術が開示されている。具体的にはバタフライバルブ(排気フラップ)に孔を形成することで、排気フラップが全閉位置の場合でも一定の排気流量を確保する排気ブレーキが開示されている。この特許文献1に記載の技術によれば、排気流量の管理に要するコストを削減することができるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011−69321号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで排気フラップは、車両の動作の安全性を確保すべき部品としてはあまり認識されていない。例えばECUの故障により排気フラップが意図せず全閉位置に動作した場合、エンジンブレーキの作用が効きすぎて、路面の状態によっては急な減速やスリップが発生する。そのため車両の安全性が低下するという課題が生じる。
【0007】
本発明は以上の点を考慮してなされたものであり、排気フラップの動作の安全性を確保し、車両の安全性を向上し得る電子制御装置及び排気ブレーキ制御装置を提案する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
かかる課題を解決するために、本発明においては、車両(1)に備えられる電子制御装置(30)であって、前記電子制御装置(30)は、CPU(31)と、排気フラップ(19)の開閉動作を制御する排気フラップ制御部(32)と、前記排気フラップ(19)と、前記排気フラップ制御部(32)との間に配置されたリレー(50)の動作を制御するリレー制御部(40)とを備え、前記排気フラップ制御部(32)は、前記CPU(31)から前記排気フラップ制御部(32)へ送信される指示信号(S1a)に基づき、前記排気フラップ(19)を閉位置に動作させる又は閉位置に維持させるための制御信号(S1)を生成し、前記リレー(50)を介して前記排気フラップ(19)に送信し、前記リレー制御部(40)は、ABSまたはESPにより、前記車両(1)のスリップが検知された場合、前記CPU(31)から前記リレー制御部(40)へ送信される指示信号(S3a)に基づき、前記リレー(50)を制御する遮断信号(S3)を送信することにより前記リレー(50)を動作させて、前記排気フラップ制御部(32)から前記排気フラップ(19)に対して送信される制御信号(S1)を遮断することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、排気フラップの動作の安全性を確保し、車両の安全性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】車両の吸気系及び排気系の全体構成図である。
図2A】排気ブレーキ制御装置の内部構成図である。
図2B】他の排気ブレーキ制御装置の内部構成図である。
図2C】他の排気ブレーキ制御装置の内部構成図である。
図3】排気フラップ制御処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下本発明について、図面を参照しながら本発明の一実施の形態を詳述する。なお以下の説明はあくまで本発明の一実施の形態にすぎず、本発明の技術的範囲がこれに限定されるものではない。
【0012】
図1は、車両1の吸気系及び排気系の全体構成を示す。
吸気系は、吸気管11、コンプレッサ12a、インタークーラ13及び吸気マニホルド14を備える。吸気iは、吸気管11を通って、コンプレッサ12aにより圧縮され、インタークーラ13により冷却され、吸気マニホルド14により各気筒に分配される。各気筒に分配された吸気iは、インジェクタ15から噴射される燃料と混合されて、各気筒の燃焼室内で燃焼する。
【0013】
排気系は、排気マニホルド16、排気管17、排気再循環(EGR:Exhaust Gas Recirculation)装置18、タービン12b、排気フラップ19及び排気浄化装置20を備える。各気筒の燃焼室から排出された排気eは、排気マニホルド16により統合された後、排気管17を通って、EGR装置18方向に流れる排気と、タービン12b方向に流れる排気とに分岐される。
【0014】
EGR装置18方向に流れる排気eは、EGR管18aを通って、EGRクーラ18bにより冷却され、EGR弁18cにより流量が調整されて再度、吸気マニホルド14により各気筒に分配される。各気筒に分配された排気eは、燃焼のために再利用される。
【0015】
一方で燃焼のために再利用されない排気eは、タービン12b方向に流れる。排気eは、タービン12bを介して、このタービン12bに接続されているコンプレッサ12aを回転駆動する。なおコンプレッサ12aの回転駆動により吸気iが圧縮される結果、燃焼室内での燃焼が促進される。コンプレッサ12a及びタービン12bは、一般にターボチャージャ12と呼ばれる。
【0016】
タービン12bを通過した排気eは、排気フラップ19により流量が調整される。この排気フラップ19の動作の詳細については後述するが、通常時には開位置に動作し、排気ブレーキ動作時には閉位置に動作する。排気フラップ19により流量が調整された排気eは、排気浄化装置20を通過した後、外部に排出される。
【0017】
排気浄化装置20は、DPF(Diesel Particulate Filter)装置20a及び尿素SCR(Selective Catalytic Reduction)装置20bを備える。DPF装置20aは、排気eに含まれる粒子状物質を捕集し除去する。尿素SCR装置20bは、尿素水溶液を用いて排気eに含まれる窒素酸化物を人体に無害な窒素又は水蒸気に還元する。
【0018】
また車両1は、排気ブレーキ制御装置100を備える。
排気ブレーキ制御装置100は、電子制御装置(ECU:Electronic Control Unit)30、リレー制御部40、リレー50及び排気フラップ19を備える。
【0019】
なおここでは、ECU30の内部にリレー制御部40を備えるものとして図示しているが(図1図2A)、必ずしもこれに限らず、ECU30とは別の装置の内部にリレー制御部40を備えるとしてもよい(図2B図2C)。例えばECU30とは別の装置であるABS(Antilock Brake System)装置やESP(Electronic Stability Control)装置の内部にリレー制御部40を備えるとしてもよい。
【0020】
ECU30は、車両1の各部に設置された各種センサ(図示省略)からの信号を受信し、また車両1の各部に設置された各種機器(図示省略)に対して制御信号を送信することにより、車両1の動作を統括的に制御する。
【0021】
特にここでは、ECU30は排気フラップ19を動作させるアクチュエータ(図示省略)に対して、リレー50を介して制御信号S1を送信する。これによりECU30は、通常、開位置にある排気フラップ19を排気ブレーキ動作時には閉位置に動作させることができる。なお閉位置には、排気管17を部分的に閉鎖する中間位置と、排気管17の全部を閉鎖する全閉位置とがある。
【0022】
排気フラップ19は、リターンスプリング等のバネ部材を備え(図示省略)、制御信号S1が送信されない通常時には、リターンスプリングのバネ力の作用により開位置の状態を維持する。これに対し排気フラップ19は、制御信号S1が送信される排気ブレーキ動作時には、リターンスプリングのバネ力に反して閉位置に動作する。
【0023】
また排気フラップ19は、位置センサを備え(図示省略)、開位置又は閉位置を示す位置信号S2をECU30に送信する。ECU30は、この位置信号S2に基づいて排気フラップ19の動作を適宜制御する。
【0024】
リレー制御部40は、制御信号S1を生成又は送信する回路とは異なる回路、或いは、ECU30とは物理的に異なる装置(ABS、ESP等)に格納されて構成される。またリレー制御部40は、制御信号S1が送信される信号線とは異なる独立した信号線を用いて、リレー50の動作を制御する。
【0025】
具体的にリレー制御部40は、急な減速又はスリップが検知された場合にはリレー50に対して遮断信号S3を送信し、ECU30からの制御信号S1を遮断する。これにより排気フラップ19は、リターンスプリングのバネ力の作用により開位置に動作する。
【0026】
これに対しリレー制御部40は、急な減速又はスリップが検知されていない通常時には、遮断信号S3を送信せずにECU30と排気フラップ19との間を接続する信号線を導通させる。すなわち排気フラップ19は、ECU30からの制御信号S1を受信する場合には閉位置の状態を維持し、受信しない場合には開位置の状態を維持する。
【0027】
リレー制御部40は、減速又はスリップを検知するABS又はESP等の外部装置からの検知信号を受信した場合に遮断信号S3を送信するとしてもよいし、リレー制御部40自体が急な減速又はスリップを検知した場合に遮断信号S3を送信するとしてもよい。
【0028】
リレー50は、ECU30と排気フラップ19との間に配置され、ECU30と排気フラップ19との間を通信可能に接続する。またリレー50は、これらECU30と排気フラップ19との間の信号線とは別の信号線によりリレー制御部40に接続される。リレー50は、リレー制御部40の制御により、通常時には信号線を導通し、急な減速又はスリップ時には信号線を遮断するように動作する。
【0029】
図2Aは、排気ブレーキ制御装置100の内部構成を示す。
排気ブレーキ制御装置100は、上述の通り、ECU30、リレー50及び排気フラップ19を備える。ECU30は、CPU(Central Processing Unit)31、Hブリッジ回路32及びリレー制御部40を備える。
【0030】
CPU31は、ECU30の動作を統括的に制御する。ここでは排気フラップ19の動作を制御するため、CPU31は排気フラップ19からの位置信号S2を受信し、位置信号S2に基づいて、排気フラップ19の開閉位置を制御すべき場合はHブリッジ回路32及びリレー制御部40に指示信号S1A及びS3Aを送信する。
【0031】
Hブリッジ回路32は、排気フラップ制御部として機能し、CPU31からの指示信号S1Aに基づいて、排気フラップ19の開閉位置を制御する制御信号S1を送信する。制御信号S1は、リレー50を介してアクチュエータ(図示省略)に送信される。アクチュエータは、制御信号S1に基づいて、排気フラップ19が開位置にある場合には閉位置に動作させる。
【0032】
リレー制御部40は、CPU31からの指示信号S3Aに基づいて、リレー50の動作を制御する遮断信号S3を送信する。リレー50は、遮断信号S3を受信すると、制御信号S1が送信されているか否かにかかわらず、ECU30と排気フラップ19とを接続する信号線を遮断することにより、Hブリッジ回路32からの制御信号S1を遮断する。
【0033】
なお実際にはリレー制御部40は、例えばローサイドスイッチである。ローサイドスイッチは、CPU31からの指示信号S3Aを受信するとONに切り換わる。この場合、リレー50のコイルの一端はHブリッジ回路32を介してCPU31に接続されており、コイルの他端はローサイドスイッチに接続されているため、ローサイドスイッチがONに切り換わると、リレー50のコイルに電流が流れる。
【0034】
これにより電流経路が形成され(CPU31、Hブリッジ回路32、リレー50、ローサイドスイッチ、CPU31)、リレー50のコイルに電流が流れると、リレー50が動作して制御信号S1を遮断することができる。
【0035】
図2Bは、他の排気ブレーキ制御装置100Bの内部構成を示す。
他の排気ブレーキ制御装置100Bは、ECU30とは別筐体の外部ECU60を備え、この外部ECU60の内部にリレー制御部40を備える点で、図2Aの排気ブレーキ制御装置100と異なる。
【0036】
以下異なる点についてのみ説明し、図2Aの排気ブレーキ制御装置100と同様の構成については同一の符号を付して説明を省略する。
【0037】
外部ECU60は、車両1の急な減速又はスリップを検知するECUであり、例えばABSやESPである。外部ECU60のCPU61は、車両1の急な減速又はスリップを検知すると、リレー制御部40に指示信号S3Aを送信する。
【0038】
リレー制御部40は指示信号S3Aを受信すると、上述した通り、リレー50の動作を制御する遮断信号S3を送信し、ECU30(Hブリッジ回路32)からの制御信号S1を遮断する。
【0039】
実際にはリレー50のコイルの一端には図示しないバッテリが接続される。一方でコイルの他端はリレー制御部40に接続されており、リレー制御部40はCPU61からの指示信号S3Aを受信すると、導通するように動作する。
【0040】
これにより電流経路が形成され(バッテリ、リレー50、リレー制御部40、CPU61)、リレー50のコイルに電流が流れる。この場合、リレー50が動作して制御信号S1を遮断することができる。
【0041】
図2Cは、他の排気ブレーキ制御装置100Cの内部構成を示す。
他の排気ブレーキ制御装置100Cは、ECU30とは別筐体の外部ECU60を備え、この外部ECU60の内部にリレー制御部40を備える点で、図2Aの排気ブレーキ制御装置100と異なる。
【0042】
またECU30がHブリッジ回路32に代えて、ハイサイドスイッチ33及びローサイドスイッチ34を備える点で、図2Bの他の排気ブレーキ制御装置100Bと異なる。
【0043】
以下異なる点についてのみ説明し、図2A及び図2Bの排気ブレーキ制御装置100及び100Bと同様の構成については同一の符号を付して説明を省略する。
【0044】
ECU30のCPU31は、排気フラップ19の動作を制御するため、排気フラップ19の開閉位置を制御すべき場合はハイサイドスイッチ33及びローサイドスイッチ34に指示信号S1Aを送信する。
【0045】
ハイサイドスイッチ33及びローサイドスイッチ34は、指示信号S1Aを受信するとONに切り換わる。これによりハイサイドスイッチ33及びローサイドスイッチ34は、排気フラップ19に制御信号S1を送信する。
【0046】
リレー制御部40は指示信号S3Aを受信すると、上述の通り、リレー50の動作を制御する遮断信号S3を送信し、ECU30(ローサイドスイッチ34)からの制御信号S1を遮断する。
【0047】
なおここではローサイドスイッチ34と排気フラップ19との間にリレー50を配置しているが、必ずしもこれに限らず、ハイサイドスイッチ33と排気フラップ19との間にリレー50を配置してもよい。
【0048】
図3は、排気フラップ制御処理のフローチャートを示す。排気フラップ制御処理は、排気ブレーキ制御装置100のECU30(CPU31)により実行される。また排気ブレーキを動作させる場合に適宜実行される。
【0049】
まずECU30は、排気ブレーキを動作させる場合に制御信号S1を排気フラップ19のアクチュエータに送信し、排気フラップ19を閉位置に動作させる(SP1)。
【0050】
次いでECU30は、車両1の急な減速又はスリップを検知したか否かを判断する(SP2)。ECU30が減速又はスリップを検知する手法として、例えば減速又はスリップを検知するABSからの検知信号を受信して検知する手法がある。
【0051】
ECU30は、ステップSP2の判断で否定結果を得ると(SP2:N)、ステップSP4に移行する。これに対しECU30は、ステップSP2の判断で肯定結果を得ると(SP2:Y)、検知された減速又はスリップの量は所定値以上であるか否かを判断する(SP3)。
【0052】
ECU30は、ステップSP3の判断で否定結果を得ると(SP3:N)、ステップSP1に移行して上述の処理を繰り返す。これに対しECU30は、ステップSP3の判断で肯定結果を得ると(SP3:Y)、リレー制御部40によりリレー50を動作させて、ECU30から排気フラップ19に送信される制御信号S1を遮断する(SP4)。
【0053】
次いでECU30は、排気フラップ19からの位置信号S2に基づいて、排気フラップ19の位置は開位置であるか否かを判断する(SP5)。
【0054】
ECU30は、ステップSP5の判断で否定結果を得ると(SP5:N)、制御信号S1を遮断してもなお排気フラップ19が閉位置にある異常な状態であるものと判断し、ECU30又は排気フラップ19の不具合を通知して(SP6)、本処理を終了する。
【0055】
これに対しECU30は、ステップSP5の判断で肯定結果を得ると(SP5:Y)、排気フラップ19の動作の安全性を確保したものとして本処理を終了する。
【0056】
なお上述してきた排気フラップ制御処理は、他の排気ブレーキ制御装置100B、100Cにおいても同様に実行される。この場合、各ステップにおける処理内容又は処理主体が一部異なる。例えばステップSP1においてECU30が制御信号S1を排気フラップ19に送信している場合において、ステップSP2で外部ECU60が減速又はスリップを検知した場合、ステップSP4に移行して外部ECU60がリレー50を動作させて、制御信号S1を強制的に遮断するとしてもよい。
【0057】
以上のように本実施の形態によれば、排気フラップ19の開閉動作を制御する排気フラップ制御部としてHブリッジ回路32、ハイサイドスイッチ33又はローサイドスイッチ34を備え、これらHブリッジ回路32、ハイサイドスイッチ33又はローサイドスイッチ34とは異なる別の回路としてリレー制御部40を備えるようにした。
【0058】
そしてこのリレー制御部40がECU30と排気フラップ19との間に配置されたリレー50の動作を独立して制御することにより、Hブリッジ回路32、ハイサイドスイッチ33又はローサイドスイッチ34から排気フラップ19に対して送信される制御信号S1を遮断することができるようにした。
【0059】
これにより車両1の急な減速又はスリップが検知された場合には、ECU30から送信される制御信号S1を強制的に遮断することができる。この場合、ECU30の故障によって排気フラップ19が意図せず閉位置で維持されることを防止し、排気フラップ19の動作の安全性を確保することができる。よって車両の安全性を向上することができる。
図1
図2A
図2B
図2C
図3