特許第6866596号(P6866596)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6866596
(24)【登録日】2021年4月12日
(45)【発行日】2021年4月28日
(54)【発明の名称】光触媒塗装体
(51)【国際特許分類】
   B01J 35/02 20060101AFI20210419BHJP
   B01J 37/025 20060101ALI20210419BHJP
   B01J 21/06 20060101ALI20210419BHJP
   C09D 5/00 20060101ALI20210419BHJP
   C09D 201/00 20060101ALI20210419BHJP
   C09D 7/40 20180101ALI20210419BHJP
【FI】
   B01J35/02 J
   B01J37/025
   B01J21/06 M
   C09D5/00 D
   C09D201/00
   C09D7/40
【請求項の数】6
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2016-188750(P2016-188750)
(22)【出願日】2016年9月27日
(65)【公開番号】特開2017-64707(P2017-64707A)
(43)【公開日】2017年4月6日
【審査請求日】2019年9月17日
(31)【優先権主張番号】特願2015-193158(P2015-193158)
(32)【優先日】2015年9月30日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000010087
【氏名又は名称】TOTO株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094640
【弁理士】
【氏名又は名称】紺野 昭男
(74)【代理人】
【識別番号】100103447
【弁理士】
【氏名又は名称】井波 実
(74)【代理人】
【識別番号】100111730
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 武泰
(74)【代理人】
【識別番号】100180873
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 慶政
(72)【発明者】
【氏名】北崎 聡
(72)【発明者】
【氏名】片岡 恭子
【審査官】 佐藤 慶明
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−014755(JP,A)
【文献】 特開平11−035851(JP,A)
【文献】 特開2010−172797(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/008718(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 21/00 − 38/74
C09D 1/00 − 10/00
C09D 101/00 − 201/10
JSTPlus/JST7580/JSTChina(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、該基材上に設けられる中間層と、該中間層上に設けられる光触媒層とを備えた光触媒塗装体であって、
前記中間層は、平均粒子径がナノサイズの無機酸化物粒子を含んでなり、
前記光触媒層は、平均粒子径がμm以上10μm未満の光触媒粒子と、平均粒子径がナノサイズの無機酸化物粒子とを含んでなり、
前記光触媒層の膜厚が、0.1μm以上1μm未満であり、
前記中間層と前記光触媒層の膜厚の和が、0.3μm以上1.5μm以下である、光触媒塗装体。
【請求項2】
光触媒層の光触媒粒子の質量と無機酸化物粒子の質量の総和に占める光触媒粒子の質量の比率が2%以上である請求項1に記載の光触媒塗装体。
【請求項3】
光触媒層の光触媒粒子の質量と無機酸化物粒子の質量の総和に占める光触媒粒子の質量の比率が6%未満である請求項2に記載の光触媒塗装体。
【請求項4】
外装材として用いられる、請求項1〜3のいずれか一項に記載の光触媒塗装体。
【請求項5】
外装材の表面は60度光沢値が20以上50以下の塗装面を備えてなる、請求項4に記載の光触媒塗装体。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の光触媒塗装体の製造に用いられるコーティング液であって、
前記コーティング液は、光触媒層コーティング液と中間層コーティング液とを備えてなり、
前記光触媒層コーティング液は、分散媒と、光触媒粒子と、無機酸化物粒子とを含み、前記分散媒に、前記光触媒粒子および前記無機酸化物粒子が分散されてなるものであり、
前記中間層コーティング液は、分散媒と無機酸化物粒子とを含み、前記分散媒に前記無機酸化物粒子が分散されてなるものである、コーティング液。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光触媒塗装体に関し、詳しくは降雨に伴うセルフクリーニング機能に優れた光触媒塗装体に関する。
【0002】
酸化チタンなどの光触媒が、建築物の外装材など多くの用途において近年利用されている。光触媒の光エネルギーにより励起された活性を利用して種々の有害物質を分解したり、あるいは光触媒が塗布された被膜の表面を親水化して表面に付着した汚れを容易に水で洗い流したりすることが可能となる。このような光触媒を塗布した光触媒塗装体を得る技術としては、以下のものが知られている。
【0003】
基材表面上に光触媒被膜を形成する組成物としては、例えば、国際公開第95/11751号パンフレット(特許文献1)に示されるように、光触媒粒子と、シリコーン樹脂被膜前駆体、シリカ微粒子、アルミナ微粒子およびそれらの混合物などのバインダーとを混合したものが知られている。
【0004】
また、有機基材上に光触媒親水性被膜を形成する場合には、国際公開第99/63011号パンフレット(特許文献2)に示されるように、透明で均一な光触媒被膜を得て、なおかつ、光酸化による塗装面の劣化を抑制するために、非イオン性界面活性剤、フッ素系界面活性剤またはこれらの混合物と、沸点180〜235℃の水溶性溶剤、炭素数1〜4のアルコール類、水、またはこれらの2種以上の混合物と、コロイダルシリカとを含む下地処理剤で、中間層を形成させる技術が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第95/11751号パンフレット
【特許文献2】国際公開第99/63011号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
外装用建材(特に60度光沢値が50以下の塗装面)に、特許文献1のように直接光触媒粒子と、バインダーとしての微粒子の混合物を塗布し、光触媒被膜を形成すると、膜厚に応じて外観が大きく変わる課題があった。すなわち膜厚が可視光の波長と同程度の0.3〜1μmの場合、干渉色が発生しぎらついて見える、あるいは光沢値が増大する場合がある。膜厚が可視光の波長より充分に大きい2μm以上の場合は、塗膜が白化して見える場合がある。膜厚が可視光の波長より充分に小さい0.3μm以下の場合は、光沢値が大きく変化(上昇)する、また充分な光触媒性能が得られないといった課題もある。また塗装面に直接光触媒被膜を形成するため、光触媒による基材の劣化の影響を受け、さらには充分な密着性が得られない可能性があるといった課題もある。
【0007】
したがって、本発明の目的は、基材、とりわけ外装用建材(特に60度光沢値が50以下の塗装面)の外観を、大きく損ねることなく、十分な光触媒活性と基材との密着性とを実現可能な光触媒塗装体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明は、基材と、該基材上に設けられた中間層と、該中間層上に設けられた光触媒層とを備えてなる光触媒塗装体であって、前記中間層は、平均粒子径がナノサイズの無機酸化物粒子を含み、前記光触媒層は、平均粒子径が0μmを超え10μm未満の光触媒粒子と、平均粒子径がナノサイズの無機酸化物粒子とを含んでなり、前記中間層と前記光触媒層の膜厚の和が、0.3μm以上1.5μm以下である光触媒塗装体を提供する。
【0009】
本発明による光触媒塗装体は、ナノサイズの無機酸化物粒子を含む中間層が基材と光触媒層との間に存在する。ナノサイズの無機酸化物粒子は基材との密着性、光触媒粒子との密着性のいずれにも優れる。また光触媒粒子が直接基材と接触しないため、耐候性にも優れる。
【0010】
本発明による光触媒塗装体において、光触媒粒子は、0μmを超え10μm未満の平均粒子径を有する。光触媒を塗装した基材において、干渉色などぎらつきが発生する一つの要因として、次のことが考えられる。すなわち、光触媒に屈折率が大きい酸化チタンを用いた場合、酸化チタン粒子の大きさが可視光の波長よりも充分に小さく、それら粒子が光触媒層に均一に分散しているため、光触媒層の屈折率が相対的に大きくなり、ぎらついて見えると考えられる。しかしながら本発明によれば、光触媒粒子として可視光の波長よりも充分に大きく、平均粒子径が0μmを超え、好ましくは1μm以上10μm未満の光触媒粒子を用いて、それらが光触媒層中に散在しているため、光触媒層の屈折率が相対的に大きくならず、干渉色が発生しにくい。また、平均粒子径が0μmを超え、好ましくは1μm以上10μm未満の光触媒粒子は、容易に光を散乱するため、光沢変化を抑制する効果も有する。さらに、平均粒子径が0μmを超え、好ましくは1μm以上の光触媒粒子は光触媒層の表面に露出した状態となり、十分な光触媒活性を実現できる。さらに、平均粒子径が0μmを超え、好ましくは1μm以上10μm未満の光触媒粒子は平均粒子径がナノサイズの無機酸化物粒子を含む中間層の上に固着されて基材から離れた状態を長期間保つことができる。そのため、本発明の光触媒塗装体は、基材の表面が塗装面である場合、この塗装面が光触媒による酸化作用を受け難くなり、優れた耐候性を得ることが可能である。
【0011】
さらに、本発明による光触媒塗装体において、中間層と光触媒層の膜厚の和が0.3μm以上1.5μm以下である。膜厚の和が0.3μm未満の場合、塗装外観は優れるものの、充分な光触媒性能が得られない可能性がある。膜厚の和が1.5μmを越える場合、充分な光触媒性能が得られるものの、塗膜が白化したり、光沢が著しく低下するなど外観が悪くなる可能性がある。従って、本発明による光触媒塗装体によれば、優れた外観と十分な光触媒活性を同時に実現することができる。
【0012】
本発明によれば、光触媒層の光触媒粒子の質量と無機酸化物粒子の質量の総和に占める光触媒粒子の質量の比率が2%以上であることが好ましく、2%以上6%未満であることが、より好ましい。光触媒粒子の質量比率が2%未満の場合、光沢抑制の効果および光触媒性能が劣り、所望の機能を得られない場合がある。光触媒粒子の質量比率が6%以上の場合、光沢値が下がりすぎ所望の外観が得られず、さらには基材との密着性を損ねる場合がある。従って、本発明による光触媒塗装体によれば、光沢の変化が抑制された、良好な外観を有するとともに、十分な光触媒活性も有し、さらに基材との密着性も維持される。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、干渉色の発生や光沢変化など基材、とりわけ外装用建材の外観を大きく損ねることなく、充分な光触媒活性と、基材との密着性とを実現可能な光触媒塗装体を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
光触媒塗装体
本発明による光触媒塗装体は、基材と、該基材上に設けられた中間層と、該中間層上に設けられた光触媒層とを備えてなる。
【0015】
基材
本発明に用いられる基材は、その上に中間層が形成可能な材料であれば無機材料、有機材料を問わず種々の材料であってよく、その形状も限定されない。材料の観点からみた基材の好ましい例としては、金属、セラミック、ガラス、プラスチック、ゴム、石、セメント、コンクリ−ト、繊維、布帛、木、紙、それらの組合せ、それらの積層体、それらの表面に少なくとも一層の被膜を有するものが挙げられる。用途の観点からみた基材の好ましい例としては、建材、建物外装、窓枠、窓ガラス、構造部材、乗物の外装及び塗装、機械装置や物品の外装、防塵カバー及び塗装、交通標識、各種表示装置、広告塔、道路用遮音壁、鉄道用遮音壁、橋梁、ガードレ−ルの外装及び塗装、トンネル内装及び塗装、碍子、太陽電池カバー、太陽熱温水器集熱カバー、ビニールハウス、車両用照明灯のカバー、屋外用照明器具、台及び上記物品表面に貼着させるためのフィルム、シート、シール等といった外装材全般が挙げられる。
【0016】
本発明に用いられる基材は、60度光沢値が20以上50以下のいわゆる半光沢表面を備えてなるものが好ましく、60度光沢値が20以上50以下の塗装面を備えてなるものがより好ましく、60度光沢値が30以上40以下の塗装面を備えてなるものが特に好ましい。
【0017】
中間層および中間層コーティング液
本発明において、中間層は平均粒子径がナノサイズの無機酸化物粒子を含んでなる。平均粒子径がナノサイズの無機酸化物粒子は、基材との接着性や光触媒粒子との接着性を有し、光触媒粒子による基材表面の劣化も抑制できる。本発明に用いられる無機酸化物粒子は、層を形成可能な無機酸化物の粒子であれば特に限定されず、その好ましい例としては、シリカ、アルミナ、ジルコニア、セリア、イットリア、ボロニア、マグネシア、カルシア、フェライト、無定型チタニア、ハフニア等の単一酸化物の粒子、およびチタン酸バリウム、ケイ酸カルシウム等の複合酸化物の粒子が挙げられ、より好ましくはシリカ粒子である。ナノサイズとは、平均粒子径が0nmを超え1000nm未満であることを意味する。本発明の好ましい態様によれば、中間層は実質的にナノサイズの無機酸化物粒子からなる。実質的にナノサイズの無機酸化物粒子からなるとは、中間層が無機酸化物粒子以外には例えば少量の不可避成分しか含まないという意味である。例えば、中間層全体に対して無機酸化物粒子の含有量が90質量%以上であることが好ましく、92質量%以上であることがより好ましく、略100質量%であることが特に好ましい。
【0018】
本発明において無機酸化物粒子は、平均粒子径が8nmを超え40nm未満であることが好ましく、より好ましくは10nm以上40nm未満であり、さらに好ましくは10nm以上30nm以下である。8nm超40nm未満とすることにより、無機酸化物粒子の分散性が安定となり、中間層は高い透明性および基材との密着性を得ることが可能となる。なお、この平均粒子径は、中間層の断面を走査型電子顕微鏡観察したときに、20万倍の視野に入る任意の100個の粒子の長さを測定した個数平均値として算出される。粒子の形状としては球が最も良いが、断面形状が非円形、例えば略円形や楕円形でも良く、その場合の粒子の長さは((長径+短径)/2)として略算出される。
【0019】
本発明の効果を損ねない範囲で中間層にはマトリクス成分をさらに含んでよい。マトリクス成分は、例えば金属アルコキシド、その加水分解縮合物、アルカリシリケート、有機金属化合物、シリコーン、合成樹脂からなる群から選択される少なくとも一種である。マトリクス成分は中間層の10質量%未満含まれることが好ましく、8質量%未満がより好ましい。
【0020】
本発明において、中間層コーティング液は、上述の本発明による光触媒塗装体の中間層形成のために使用されるものであり、少なくとも、平均粒子径がナノサイズの無機酸化物粒子を分散媒中に分散させることにより得ることができる。
【0021】
分散媒としては、上記構成成分を適切に分散可能なあらゆる分散媒が使用可能であり、水または有機溶媒であってよく、好ましい分散媒は水、または水および有機溶媒の混合物である。
【0022】
中間層コーティング液は任意成分として界面活性剤を含んでよい。界面活性剤は、0質量%以上10質量%未満中間層に含有されるように添加されてよく、好ましくは0質量%以上5質量%以下であり、より好ましくは0質量%以上1質量%以下である。界面活性剤の効果の1つとして基材へのレベリング性があり、コーティング液と基材との組合せによって界面活性剤の量を先述の範囲内で適宜決めれば良く、その際の下限値は0.1質量%とされてよい。この界面活性剤は中間層コーティング液の塗れ性を改善するために有効な成分であるが、塗布後に形成される中間層にあってはもはや本発明の光触媒塗装体の効果には寄与しない不可避不純物に相当する。したがって、中間層コーティング液に要求される塗れ性に応じて、上記含有量範囲内において使用されてよく、塗れ性を問題にしないのであれば界面活性剤は実質的にあるいは一切含まなくてよい。界面活性剤は、無機酸化物粒子の分散安定性、基材上に塗布した際のコーティング液の濡れ性を勘案し選択され、非イオン性界面活性剤が好適である。非イオン性界面活性剤としてはエーテル型非イオン性界面活性剤、エステル型非イオン性界面活性剤、ポリアルキレングリコール非イオン性界面活性剤、フッ素系非イオン性界面活性剤、シリコーン系非イオン性界面活性剤が使用できる。
【0023】
本発明において、中間層コーティング液の固形分濃度は特に限定されず、1〜15質量%とするのが塗布し易い点で好ましい。なお、中間層コーティング液中の構成成分の分析は、コーティング液を限外ろ過によって粒子成分と濾液に分離し、それぞれを赤外分光分析、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー、ICP質量分析、蛍光X線分光分析などで分析し、スペクトルを解析することによって評価することができる。
【0024】
中間層の製造方法
中間層は、中間層コーティング液を、基材上に塗布することにより製造することができる。中間層の塗装は、中間層コーティング液を、刷毛塗り、ローラー、スプレー、バーコーター、ロールコーター、フローコーター、ディップコート、流し塗り、スクリーン印刷、電着、蒸着等、一般に広く行われている方法を利用して行うことができる。中間層コーティング液の基材への塗布後は、常温乾燥させればよく、あるいは必要に応じて加熱乾燥してもよい。
【0025】
中間層の膜厚は好ましくは0.1μm以上1μm以下、より好ましくは0.2μm以上0.5μm以下である。0.1μmより薄い場合は、防御層としての機能が弱くなり光触媒による劣化が起こりやすくなる。1μmより厚い場合は、光触媒塗装体の外観が白くなる恐れがある。なお、この膜厚は、中間層の断面を4万倍で走査型電子顕微鏡観察したときの、任意の5ヶ所の膜厚の平均値として算出される。本発明において、中間層は、本発明の効果を損ねない範囲で、上述の粒子径の範囲を超える大粒子を含んで良い。その場合、中間層の膜厚は、当該大粒子により形成される凸部を除外した領域で測定した値とする。
【0026】
光触媒層および光触媒層コーティング液
本発明において、光触媒層は、平均粒子径が0μmを超え10μm未満の光触媒粒子と、平均粒子径がナノサイズの無機酸化物粒子とを含んでなる。本発明の好ましい態様によれば、光触媒粒子が1μm以上の平均粒子径を有するのが好ましく、より好ましくは1μm以上1.5μm以下である。この範囲内であると、光触媒性能、干渉色抑制、光沢調整等の各種被膜特性が効率良く発揮される。なお、本発明において、平均粒子径が10μm未満の光触媒粒子とは、10μmを超える範囲に粒度分布を有する光触媒粒子を含まない意味である。また、例えば、光触媒層全体にわたって存在するすべての光触媒粒子の粒子径が10μm未満である場合は本発明の範囲内であるが、1つでも10μm以上の粒子径の光触媒粒子が存在する場合は本発明の範囲外である。また、本発明において、平均粒子径が0μmを超える光触媒粒子とは、粒子径が1μm以上の光触媒粒子が(必ず)含有されることを意味し、好ましくは粒度分布における最頻値が0.1μmを超えることを意味する。
【0027】
なお、この平均粒子径は、光触媒層の表面を走査型電子顕微鏡観察したときに、5千倍の視野に入る任意の100個の粒子の長さを測定した個数平均値として算出される。粒子の形状としては球が最も好ましいが、断面形状が非円形、例えば略円形や楕円形等の異形状でも良く、その場合の粒子の長さは((長径+短径)/2)として略算出される。
【0028】
本発明に用いられる光触媒粒子は、光触媒活性を有する粒子であれば特に限定されず、その好ましい例としては、酸化チタン(TiO)、ZnO、SnO、SrTiO、WO、Bi、Feのような金属酸化物の粒子が挙げられ、より好ましくは酸化チタン粒子、最も好ましくはアナターゼ型酸化チタン粒子である。酸化チタンはバンドギャップエネルギーが高く、従って、光励起には紫外線を必要とし、光励起の過程で可視光を吸収しないので、補色成分による発色が起こらない点で有利である。
【0029】
酸化チタン粒子は粉末状、ゾル状、溶液状など様々な形態で入手可能であり、光触媒活性を示すものであれば、いずれの形態でも使用可能である。
【0030】
光触媒層に含まれる平均粒子径がナノサイズの無機酸化物粒子は、中間層との接着性や光触媒粒子との接着性を有する。この無機酸化物粒子は、層を形成可能な無機酸化物の粒子であれば特に限定されず、その好ましい例としては、シリカ、アルミナ、ジルコニア、セリア、イットリア、ボロニア、マグネシア、カルシア、フェライト、無定型チタニア、ハフニア等の単一酸化物の粒子、およびチタン酸バリウム、ケイ酸カルシウム等の複合酸化物の粒子が挙げられ、より好ましくはシリカ粒子であり、光触媒層の無機酸化物粒子は、中間層の無機酸化物粒子と同じ成分または材料であることが、さらに好ましい。
【0031】
本発明において、光触媒層に含まれる無機酸化物粒子は、平均粒子径が8nmを超え40nm未満であることが好ましく、より好ましくは10nm以上40nm未満であり、さらに好ましくは10nm以上30nm以下である。8nm超40nm未満とすることにより、無機酸化物粒子の分散性が安定となり、光触媒層は高い透明性および中間層との密着性を得ることが可能となる。なお、この平均粒子径は、光触媒層の断面を走査型電子顕微鏡観察したときに、20万倍の視野に入る任意の100個の粒子の長さを測定した個数平均値として算出される。粒子の形状としては球が最も好ましいが、断面形状が非円形、例えば略円形や楕円形でも好ましく、その場合の粒子の長さは((長径+短径)/2)として略算出される。
【0032】
本発明の効果を損ねない範囲で光触媒層にはマトリクス成分をさらに含んでよい。マトリクス成分は、例えば金属アルコキシド、その加水分解縮合物、アルカリシリケート、有機金属化合物、シリコーン、合成樹脂からなる群から選択される少なくとも一種である。マトリクス成分は光触媒層の10質量%未満含まれることが好ましく、8質量%未満がより好ましい。
【0033】
本発明において、光触媒層コーティング液は、上述の本発明による光触媒塗装体の光触媒層を形成するために使用されるものであり、少なくとも、平均粒子径が0μmを超え10μm未満の光触媒粒子と、平均粒子径がナノサイズの無機酸化物粒子とを分散媒中に分散させることにより得ることができる。
【0034】
本発明の一つの態様によれば、光触媒層コーティング液は、分散媒に少なくとも、平均粒子径が0μmを超え10μm未満の酸化チタン粒子と、平均粒子径がナノサイズのシリカ粒子を分散させることにより得ることができる。
【0035】
分散媒としては、上記構成成分を適切に分散可能なあらゆる分散媒が使用可能であり、水または有機溶媒であってよく、好ましい分散媒は水、または水および有機溶媒の混合物である。
【0036】
光触媒層コーティング液は任意成分として界面活性剤を含んでよい。界面活性剤は、0質量%以上10質量%未満光触媒層に含有されるように添加されてよく、好ましくは0質量%以上5質量%以下であり、より好ましくは0質量%以上1質量%以下である。界面活性剤の効果の1つとして中間層へのレベリング性があり、コーティング液と中間層との組合せによって界面活性剤の量を先述の範囲内で適宜決めれば良く、その際の下限値は0.1質量%とされてよい。この界面活性剤は光触媒層コーティング液の塗れ性を改善するために有効な成分であるが、塗布後に形成される光触媒層にあってはもはや本発明の光触媒塗装体の効果には寄与しない不可避不純物に相当する。したがって、光触媒層コーティング液に要求される塗れ性に応じて、上記含有量範囲内において使用されてよく、塗れ性を問題にしないのであれば界面活性剤は実質的にあるいは一切含まなくてよい。界面活性剤は、光触媒粒子や無機酸化物粒子の分散安定性、中間層上に塗布した際の濡れ性を勘案し選択されるが、非イオン性界面活性剤が好適である。非イオン性界面活性剤としてはエーテル型非イオン性界面活性剤、エステル型非イオン性界面活性剤、ポリアルキレングリコール非イオン性界面活性剤、フッ素系非イオン性界面活性剤、シリコーン系非イオン性界面活性剤が使用できる。
【0037】
本発明において、光触媒層コーティング液の固形分濃度は特に限定されず、1〜15質量%とするのが塗布し易い点で好ましい。なお、光触媒層コーティング液組成物中の構成成分の分析は、コーティング液を限外ろ過によって粒子成分と濾液に分離し、それぞれを赤外分光分析、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー、ICP質量分析、蛍光X線分光分析などで分析し、スペクトルを解析することによって評価することができる。
【0038】
光触媒層の製造方法
本発明の光触媒塗装体は、光触媒層コーティング液を、基材上に設けられた中間層の上に塗布することにより製造することができる。光触媒層の塗装は、光触媒層コーティング液を、刷毛塗り、ローラー、スプレー、バーコーター、ロールコーター、フローコーター、ディップコート、流し塗り、スクリーン印刷、電着、蒸着等、一般に広く行われている方法を利用して行うことができる。光触媒層コーティング液の中間層への塗布後は、常温乾燥させればよく、あるいは必要に応じて加熱乾燥してもよい。
【0039】
光触媒層の膜厚は特に限定されず、好ましくは0.1μm以上1μm以下、より好ましくは0.2μm以上1μm以下である。0.1μmより薄い場合は、光触媒性能、特に有害ガス分解性能が小さくなる。なお、この膜厚は、光触媒層の断面を4万倍で走査型電子顕微鏡観察したときの、任意の5ヶ所の膜厚の平均値として算出される。本発明において、光触媒層はナノサイズの粒子成分とミクロンサイズの粒子成分とを含んでなるが、光触媒層の膜厚は、ミクロンサイズの粒子成分により形成される凸部を除外した領域で測定した値とする。
【実施例】
【0040】
本発明を以下の例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。以下の例において中間層コーティング液は、分散媒に、シリカ微粒子の水分散体と、非イオン系界面活性剤と、場合により、酸化チタン粉末、PMMA粉末、シリカ粒子の水分散体もしくはシリコーン樹脂またはこれらの組合せと、を適宜混合して作製した。使用した原料は以下の通りである。なお、以下に表記する平均粒子径は、後述する方法で中間層を形成した後に、シリカ微粒子の場合は、塗膜の断面を走査型電子顕微鏡観察したときに、20万倍の視野に入る任意の100個の粒子の長さを測定した個数平均値として算出された値、その他の粒子あるいは粉末の場合は、中間層の表面を走査型電子顕微鏡観察したときに、5千倍の視野に入る任意の100個の粒子の長さを測定した個数平均値として算出された値である。また、結晶子径はX線回折法(XRD)により求めた。
・シリカ微粒子の水分散体(平均粒子径:15nm、固形分含有率:30%、塩基性)
・シリカ粒子の水分散体(平均粒子径:700nm、固形分含有率:25%、中性)
・酸化チタン粉末1(結晶子径7nm、比表面積300m/g、平均粒子径1.2μm)
・PMMA粉末(平均粒子径:3μm)
・界面活性剤:ポリオキシエチレン変性非イオン系界面活性剤
・分散媒:イオン交換水
・シリコーン変性アクリル樹脂:シリコーン変性アクリル樹脂エマルジョンの水分散体
【0041】
以下の例において光触媒層コーティング液は、分散媒に、シリカ微粒子の水分散体と、非イオン系界面活性剤と、酸化チタン粉末または酸化チタン微粒子の水分散体と、場合によりシリカ粒子の水分散体、アミン系分散剤またはPMMA粉末と、を適宜混合して作製した。使用した原料は以下の通りである。なお、以下に表記する平均粒子径は、後述する方法で光触媒層を形成した後に、シリカ微粒子の場合は、塗膜の断面を走査型電子顕微鏡観察したときに、20万倍の視野に入る任意の100個の粒子の長さを測定した個数平均値として算出された値、その他の粒子あるいは粉末の場合は、光触媒層の表面を走査型電子顕微鏡観察したときに、5千倍の視野に入る任意の100個の粒子の長さを測定した個数平均値として算出された値である。また、結晶子径はX線回折法(XRD)により求めた。
・シリカ微粒子の水分散体(平均粒子径:15nm、固形分含有率:30%、塩基性)
・酸化チタン粉末1(結晶子径7nm、比表面積300m/g、平均粒子径1.2μm)
・酸化チタン粉末2(結晶子径15nm、比表面積225m/g、平均粒子径1.8μm)
・酸化チタン粉末3(結晶子径6nm、比表面積280m/g、平均粒子径1.0μm)
・酸化チタン微粒子の水分散体(平均粒子径40nm、固形分含有量17.5%、塩基性)
・シリカ粒子の水分散体(平均粒子径:700nm、固形分含有率:25%、中性)
・PMMA粉末(平均粒子径:3μm)
・界面活性剤:ポリオキシエチレン変性非イオン系界面活性剤
・アミン系分散剤(塩基性)
【0042】
光触媒塗装体の作製
中間層および光触媒層を備えた光触媒塗装体を以下の通り製造した。まず、基材としてアルミ板を用意した。アルミ板の表面は、ポリエステル塗料が塗装されており、中間層コーティング液および光触媒層コーティング液を塗装する前の60度光沢値は35であった。このアルミ板に中間層コーティング液B1〜B4、B6、B7〜B9のいずれかを約5g/mの塗布量でバーコーターにて塗装し、150℃で30秒乾燥し中間層を得た。コーティング液B5は、約10g/mの塗布量でエアスプレーにて塗装し、80℃で2分乾燥し中間層を得た。
【0043】
次に光触媒層コーティング液T1〜T12を、中間層上に5g/mの塗布量でバーコーターにて塗装し、150℃で30秒乾燥し光触媒層を得た。こうして、中間層と光触媒層を形成して、光触媒塗装体を得た。各光触媒塗装体について、中間層(中間層コーティング液)の組成、および光触媒層(光触媒層コーティング液)の組成を表1に示す。
【0044】
【表1】
【0045】
(中間層コーティング液B1)
中間層コーティング液B1は、分散媒にシリカ微粒子の水分散体および界面活性剤を添加し、自転公転攪拌機にて攪拌することによって調製した。なおコーティング液中のシリカ微粒子の濃度は6質量%、界面活性剤の濃度は0.8質量%であった。
【0046】
(中間層コーティング液B2)
中間層コーティング液B2は、分散媒に界面活性剤を添加後、酸化チタン粉末1を添加し、自転公転攪拌機にて攪拌した。その後シリカ微粒子の水分散体を添加し、さらに自転公転攪拌機にて攪拌することによって調製した。なおコーティング液中のシリカ微粒子の濃度は5.7質量%、酸化チタンの濃度は0.3質量%、界面活性剤の濃度は0.8質量%であった。
【0047】
(中間層コーティング液B3)
中間層コーティング液B3は、分散媒にシリカ微粒子の水分散体、シリカ粒子の水分散体および界面活性剤を混合し、自転公転攪拌機にて攪拌することによって調製した。なおコーティング液中のシリカ微粒子の濃度は5.7質量%、シリカ粒子の濃度は0.3質量%、界面活性剤の濃度は0.8質量%であった。
【0048】
(中間層コーティング液B4)
中間層コーティング液B4は、分散媒に界面活性剤を添加後、PMMA粒子を添加し自転公転攪拌機にて攪拌した。その後シリカ微粒子の水分散体を混合し、さらに自転公転攪拌機にて攪拌することによって調製した。なおコーティング液中のシリカ微粒子の濃度は5.6質量%、PMMA粒子の濃度は0.4質量%、界面活性剤の濃度は0.8質量%であった。
【0049】
(中間層コーティング液B5)
中間層コーティング液B5は,市販のシリコーン変性アクリル樹脂を水で希釈して調製した。なおコーティング液中のシリコーン変性アクリル樹脂は20質量%であった。
【0050】
(中間層コーティング液B6)
中間層コーティング液B6は,シリカ微粒子の水分散体の濃度を3質量%にした以外、B1と同様に調製した。
【0051】
(中間層コーティング液B7)
中間層コーティング液B7は,シリカ微粒子の水分散体の濃度を15質量%にした以外、B1と同様に調製した。
【0052】
(中間層コーティング液B8)
中間層コーティング液B8は、シリカ微粒子の水分散体の濃度を1.5質量%にした以外、B1と同様に調製した。
【0053】
(中間層コーティング液B9)
中間層コーティング液B9は、シリカ微粒子の水分散体の濃度を12質量%にした以外、B1と同様に調製した。
【0054】
(光触媒層コーティング液T1)
光触媒層コーティング液T1は、分散媒にアミン系分散剤を添加後、酸化チタン粉末1を添加し、自転公転攪拌機にて攪拌した。その後シリカ微粒子の水分散体、界面活性剤を添加後、さらに自転公転攪拌機にて攪拌して調製した。なおコーティング液中の酸化チタンの濃度は0.2質量%、シリカ微粒子の濃度は5.8質量%、界面活性剤の濃度は0.6質量%であった。
【0055】
(光触媒層コーティング液T2)
光触媒層コーティング液T2は、分散媒に酸化チタン微粒子の水分散体、シリカ微粒子の水分散体および界面活性剤を添加した後、自転公転攪拌機にて攪拌して調製した。なおコーティング液中の酸化チタンの濃度は0.2質量%、シリカ微粒子の濃度は5.8質量%、界面活性剤の濃度は0.6質量%であった。
【0056】
(光触媒層コーティング液T3)
光触媒層コーティング液T3は、分散媒に酸化チタン微粒子の水分散体、シリカ粒子の水分散体、シリカ微粒子の水分散体および界面活性剤を添加した後、自転公転攪拌機にて攪拌して調製した。なおコーティング液中の酸化チタンの濃度は0.2質量%、シリカ微粒子の濃度は5.5質量%、シリカ粒子の濃度は0.3質量%、界面活性剤の濃度は0.6質量%であった。
【0057】
(光触媒層コーティング液T4)
光触媒層コーティング液T4は、分散媒に界面活性剤およびPMMA粒子を添加し、自転公転攪拌機にて攪拌した。その後酸化チタン微粒子の水分散体およびシリカ微粒子の水分散体を添加し、さらに自転公転攪拌機にて攪拌して調製した。なおコーティング液中の酸化チタンの濃度は0.2質量%、シリカ微粒子の濃度は5.4質量%、PMMAの濃度は0.4質量%、界面活性剤の濃度は0.6質量%であった。
【0058】
(光触媒層コーティング液T5)
光触媒層コーティング液T5は、酸化チタン粉末の濃度を0.1質量%、シリカ微粒子の濃度を5.9質量%にした以外、T1と同様に調製した。
【0059】
(光触媒層コーティング液T6)
光触媒層コーティング液T6は、酸化チタン粉末の濃度を0.3質量%、シリカ微粒子の濃度を5.7質量%にした以外、T1と同様に調製した。
【0060】
(光触媒層コーティング液T7)
光触媒層コーティング液T7は、酸化チタン粉末の濃度を0.1質量%、シリカ微粒子の濃度を2.9質量%にした以外、T1と同様に調製した。
【0061】
(光触媒層コーティング液T8)
光触媒層コーティング液T8は、酸化チタン粉末の濃度を0.5質量%、シリカ微粒子の濃度を14.5質量%にした以外、T1と同様に調製した。
【0062】
(光触媒層コーティング液T9)
光触媒層コーティング液T9は、分散媒にアミン系分散剤を添加後、酸化チタン粉末2を添加し、自転公転攪拌機にて攪拌した。その後シリカ微粒子の水分散体、界面活性剤を添加後、さらに自転公転攪拌機にて攪拌して調製した。なおコーティング液中のシリカ微粒子の濃度は5.8質量%、酸化チタン粉末の濃度は0.2質量%、界面活性剤の濃度は0.6質量%であった。
【0063】
(光触媒層コーティング液T10)
光触媒層コーティング液T10は、酸化チタン粉末の濃度を0.05質量%、シリカ微粒子の濃度を1.5質量%にした以外、T1と同様に調製した。
【0064】
(光触媒層コーティング液T11)
光触媒層コーティング液T11は、酸化チタン粉末の濃度を0.4質量%、シリカ微粒子の濃度を11.6質量%にした以外、T1と同様に調製した。
【0065】
(光触媒層コーティング液T12)
光触媒層コーティング液T12は、分散媒にアミン系分散剤を添加後、酸化チタン粉末3を添加し、自転公転攪拌機にて攪拌した。その後シリカ微粒子の水分散体、界面活性剤を添加後、さらに自転公転攪拌機にて攪拌して調製した。なおコーティング液中のシリカ微粒子の濃度は5.8質量%、酸化チタン粉末の濃度は0.2質量%、界面活性剤の濃度は0.6質量%であった。
【0066】
(例1:実施例)
B1の中間層コーティング液およびT1の光触媒層コーティング液を用いて、光触媒塗装体を製造し、各種評価を実施した。走査型電子顕微鏡観察により中間層の膜厚および光触媒層の膜厚を測定したところ、それぞれ約0.4μmであった。
【0067】
(例2)
B2の中間層コーティング液およびT2の光触媒層コーティング液を用いて、光触媒塗装体を製造し、各種評価を実施した。走査型電子顕微鏡観察により中間層の膜厚および光触媒層の膜厚を測定したところ、それぞれ約0.4μmであった。
【0068】
(例3)
B1の中間層コーティング液およびT3の光触媒層コーティング液を用いて、光触媒塗装体を製造し、各種評価を実施した。走査型電子顕微鏡観察により中間層の膜厚および光触媒層の膜厚を測定したところ、それぞれ約0.4μmであった。
【0069】
(例4)
B3の中間層コーティング液およびT2の光触媒層コーティング液を用いて、光触媒塗装体を製造し、各種評価を実施した。走査型電子顕微鏡観察により中間層の膜厚および光触媒層の膜厚を測定したところ、それぞれ約0.4μmであった。
【0070】
(例5)
B1の中間層コーティング液およびT4の光触媒層コーティング液を用いて、光触媒塗装体を製造し、各種評価を実施した。走査型電子顕微鏡観察により中間層の膜厚および光触媒層の膜厚を測定したところ、それぞれ約0.4μmであった。
【0071】
(例6)
B4の中間層コーティング液およびT2の光触媒層コーティング液を用いて、光触媒塗装体を製造し、各種評価を実施した。走査型電子顕微鏡観察により中間層の膜厚および光触媒層の膜厚を測定したところ、それぞれ約0.4μmであった。
【0072】
(例7)
B1の中間層コーティング液およびT2の光触媒層コーティング液を用いて、光触媒塗装体を製造し、各種評価を実施した。走査型電子顕微鏡観察により中間層の膜厚および光触媒層の膜厚を測定したところ、それぞれ約0.4μmであった。
【0073】
(例8)
B5の中間層コーティング液およびT1の光触媒層コーティング液を用いて、光触媒塗装体を製造し、各種評価を実施した。走査型電子顕微鏡観察により中間層の膜厚および光触媒層の膜厚を測定したところ、中間層は約1.5μm、光触媒層は約0.4μmであった。
【0074】
(例9:実施例)
B1の中間層コーティング液およびT5の光触媒層コーティング液を用いて、光触媒塗装体を製造し、各種評価を実施した。走査型電子顕微鏡観察により中間層の膜厚および光触媒層の膜厚を測定したところ、それぞれ約0.4μmであった。
【0075】
(例10:実施例)
B1の中間層コーティング液およびT6の光触媒層コーティング液を用いて、光触媒塗装体を製造し、各種評価を実施した。走査型電子顕微鏡観察により中間層の膜厚および光触媒層の膜厚を測定したところ、それぞれ約0.4μmであった。
【0076】
(例11:実施例)
B6の中間層コーティング液およびT7の光触媒層コーティング液を用いて、光触媒塗装体を製造し、各種評価を実施した。走査型電子顕微鏡観察により中間層の膜厚および光触媒層の膜厚を測定したところ、それぞれ約0.2μmであった。
【0077】
(例12:実施例)
B1の中間層コーティング液およびT8の光触媒層コーティング液を用いて、光触媒塗装体を製造し、各種評価を実施した。走査型電子顕微鏡観察により間層の膜厚および光触媒層の膜厚を測定したところ、中間層の膜厚は約0.4μm、光触媒層の膜厚は約1.0μmであった。
【0078】
(例13)
B7の中間層コーティング液およびT8の光触媒層コーティング液を用いて、光触媒塗装体を製造し、各種評価を実施した。走査型電子顕微鏡観察により中間層の膜厚および光触媒層の膜厚を測定したところ、それぞれ約1.0μmであった。
【0079】
(例14)
B1の中間層コーティング液およびT9の光触媒層コーティング液を用いて、光触媒塗装体を製造し、各種評価を実施した。走査型電子顕微鏡観察により中間層の膜厚および光触媒層の膜厚を測定したところ、それぞれ約0.4μmであった。
【0080】
(例15)
B8の中間層コーティング液およびT10の光触媒層コーティング液を用いて、光触媒塗装体を製造し、各種評価を実施した。走査型電子顕微鏡観察により中間層の膜厚および光触媒層の膜厚を測定したところ、それぞれ約0.1μmであった。
【0081】
(例16:実施例)
B8の中間層コーティング液およびT7の光触媒層コーティング液を用いて、光触媒塗装体を製造し、各種評価を実施した。走査型電子顕微鏡観察により間層の膜厚および光触媒層の膜厚を測定したところ、中間層の膜厚は約0.1μm、光触媒層の膜厚は約0.2μmであった。
【0082】
(例17)
B9の中間層コーティング液およびT11の光触媒層コーティング液を用いて、光触媒塗装体を製造し、各種評価を実施した。走査型電子顕微鏡観察により中間層の膜厚および光触媒層の膜厚を測定したところ、それぞれ約0.8μmであった。
【0083】
(例18:実施例)
B1の中間層コーティング液およびT12の光触媒層コーティング液を用いて、光触媒塗装体を製造し、各種評価を実施した。走査型電子顕微鏡観察により中間層の膜厚および光触媒層の膜厚を測定したところ、それぞれ約0.4μmであった。
【0084】
膜厚測定方法
中間層
中間層の膜厚は、走査型電子顕微鏡にて測定した。破断面を4万倍で観察した。主としてシリカ微粒子からなる部分の任意の5ヶ所の膜厚の平均値をもって中間層の膜厚とした。なお、シリカ粒子、酸化チタン粉末、またはPMMA粒子によって生じる凸部は膜厚測定領域には含めなかった。
【0085】
光触媒層
光触媒層の膜厚は、走査型電子顕微鏡にて測定した。破断面を4万倍で観察した。主としてシリカ微粒子からなる部分、またはシリカ微粒子と酸化チタン微粒子からなる部分の任意の5ヶ所の膜厚の平均値をもって光触媒層の膜厚とした。シリカ粒子、酸化チタン粉末またはPMMA粒子によって生じる凸部は膜厚測定領域に含めなかった。
【0086】
こうして得られた光触媒塗装体について、室温で1日放置後、光沢値、干渉色の有無、ΔE、塗膜の密着性、光触媒活性、耐候性の各項目を評価した。
【0087】
光沢値は光沢計(日本電色製 VG−2000型)にて測定し、塗装前と比較した。光沢増大を抑制する効果は、μmサイズの粒子が実質存在しない例7の値と比較することによって判断した。
【0088】
干渉色の有無は未塗布の基材と比較することにより、目視で評価した。評価指標は以下の通りとした。
○:Excellent:干渉色がほとんどない
△:Good:わずかに干渉色が認められる
×:Poor:干渉色が認められる
【0089】
ΔE*は、日本電色(株)製の測色色差計 ZE−2000を使用して測定した。塗装した基材のL、a、b値(L、a、bとする)と、未塗装の基材のL、a、b値(L、a、bとする)を測定し、式1によって計算した。
(式1)
ΔE=((L−L+(a−a+(b−b1/2
【0090】
塗膜の密着性は、市販のワイパー(日本製紙クレシア製 ケイドライ)で、500g/cm2の荷重で、10回擦り、塗膜の状況を目視で評価した。評価指標は以下の通りとした。
○:Excellent:塗膜の脱離が認められない
×:Poor:塗膜の脱離が認められる
【0091】
光触媒活性は、ISO 10678に準拠した方法でメチレンブルーの分解活性を評価した。
○:Excellent:充分なメチレンブルー分解活性が認められる
×:Poor:充分なメチレンブルー分解活性が認めらない
【0092】
耐候性は、規格番号:ASTM G90に基づき、装置ACUVEX(登録商標)を用い、スプレーサイクル:Cycle 3の条件下で、米国アリゾナ州にて促進耐候性試験を行い、以下の評価指標により評価した。
○:Slight:促進耐候性試験前後で色調および光沢の変化が目視でわずかに認められた、または認められなかった
×:Severe:促進耐候性試験前後で色調および光沢の大きな変化が目視で認められた
△:Moderate:促進耐候性試験前後での色調および光沢の目視変化が許容範囲内
【0093】
以上の評価結果を表2にまとめた。なお、表2中空白部分は、光触媒塗装体の外観が不良であったため、評価を行わなかったことを示す。
【0094】
【表2】