(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
発電所や工場などの大型の施設にとって、人の不法な侵入行為を検知することは極めて重要である。このため、施設の外周のフェンス等に設けられる、侵入行為を検知するセンサは重要な役割を担っている。
【0003】
特に、外周の長さが1kmを超えるような距離の侵入検知センサには、光ファイバの低損失性を活用した侵入検知センサが利用されている。
【0004】
光ファイバに外部から振動が加えられると、光ファイバから出力される光波の偏光状態が時間変化する。この原因は、振動に伴う光ファイバの複屈折性(複屈折の固有軸と複屈折によって発生する直交偏光軸間の位相差)の時間変化であり、この結果として出力光波の偏光状態(SOP:State of Polarization)の時間変化が観測される。フェンス等に光ファイバを張り付け、この光ファイバにプローブ光を入力し、出力されるプローブ光の偏光状態の時間変化を観察すれば、フェンス等の振動を検知できる(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
侵入検知センサとして用いられる振動検知光ファイバセンサで重要な機能は主に2つある。1つは、風などの侵入行為以外の原因で光ファイバに伝わる振動に起因する誤検知を低減することであり、もう1つは、侵入行為が発生した位置を特定することである。
【0006】
特許文献1に開示されている方法では、施設外周のフェンスに光ファイバをループ状に設置し、プローブ光を、ループ状に配置された光ファイバに、右回り及び左回りに伝播するように入力する。そして、右回りに伝播するプローブ光と、左回りに伝播するプローブ光の偏光状態の時間変化率を求める。ここで、偏光状態の時間変化率は、光波の偏光状態を表すストークスベクトルの回転率を意味する。
【0007】
光ファイバに入力された光波は、1m伝播するのにおよそ5nsの時間がかかるので、ループ状の光ファイバに加わる振動位置によって、右回りと左回りの伝搬光の偏光状態の時間変化の開始時刻に差異が生じる。このため、偏光状態の時間変化の開始時刻に基づき振動位置を特定できる。
【0008】
また、偏光時間領域反射率測定法(POTDR:Polarization Optical Time Domein Reflectometry)を利用した光ファイバセンサもある(例えば、非特許文献1参照)。これは、偏光状態を利用した時間領域反射率測定法(OTDR)である。光ファイバに光パルスを入力すると、光パルスの入力端に、光パルスの伝搬に要する時間遅延を伴った反射光が観測される。
【0009】
光ファイバに振動が加わると、光ファイバの複屈折性が変化する。反射光の偏光状態は、複屈折性に依存する。このため、偏光子を介して反射光の時間変化を観測することで、光パルスが光ファイバの振動の影響を受けた位置を特定できる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
上述した方法は、いずれも光ファイバから出力される光波の偏光状態の時間変化によって振動等による応力変動を検知する方法である。しかしながら、光ファイバから出力される光波の偏光状態の時間変化は、振動によって変化する光ファイバの複屈折の固有軸の方向と、振動点へ入射される伝搬光の偏光状態の双方に依存する。一般に、光ファイバを伝搬する光波の偏光状態はランダムであり、光ファイバの複屈折の時間変化もこの光ファイバの振動の加わり方に依存する。例えば、光波が、光ファイバの複屈折に関する固有軸にカップリングするように入力された場合は、出力される光波の偏光状態は変化しない。
【0013】
上述の依存性のため、偏光状態の時間変化を観測するのみでは、例え等しい振動に対しても等しい結果が得られない。したがって、出力される光波の偏光状態の時間変化を観測するだけでは、検知対象である異常な振動の見逃しや、誤検知につながる。また、振動位置の特定精度が損なわれる。
【0014】
この発明は、上述の問題点に鑑みてなされたものである。
【0015】
この発明の目的は、光ファイバを伝搬する伝搬光の偏光状態に依存せずに、光ファイバの振動に伴う複屈折の変化を捉えることが可能な振動検知光ファイバセンサ及び振動検知方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上述の目的を達成するため、この発明の振動検知光ファイバセンサは、プローブ光供給部と、光ファイバと、反射光用偏光計と、演算器とを備えて構成される。
【0017】
プローブ光供給部は、プローブ光として、直交する偏光方向に、周期的に交互に切り換えられる光パルスを生成する。光ファイバには、プローブ光が入力される。反射光用偏光計は、プローブ光が光ファイバで反射された反射光の、偏光状態を測定する。演算器は、反射光用偏光計が測定した偏光状態を用いて、振動の位置の特定を行う。
【0018】
また、この発明の振動検知光ファイバセンサの好適実施例によれば、さらに、透過光用偏光計を備える。透過光用偏光計は、プローブ光が光ファイバを透過した透過光の、偏光状態を測定する。演算器は、透過光用偏光計が測定した偏光状態を用いて、振動の有無の検知を行う。
【0019】
また、この発明の振動検知方法は、以下の過程を備えて構成される。プローブ光として、直交する偏光方向に、周期的に交互に切り換えられる光パルスを生成する。プローブ光を光ファイバに入力する。プローブ光が光ファイバで反射した反射光の、偏光状態を測定する。測定した反射光の偏光状態を用いて、振動の位置の特定を行う。
【0020】
また、この発明の振動検知方法の好適実施例によれば、さらに、プローブ光が光ファイバを透過した透過光の、偏光状態を測定する過程を行う。そして、透過光の偏光状態を用いて、振動の有無の検知を行う。
【発明の効果】
【0021】
この発明の振動検知光ファイバセンサ及び振動検知方法は、プローブ光として、直交する偏光方向に、周期的に交互に切り換えられる光パルスを用いて、複屈折性の時間変化の固有値から求まるDifferential Angular Velocity(DAV)を利用している。このため、入射光の偏光状態に依存しない振動検知が可能になる。また、反射光のDAVから振動の位置を特定することができる。
【0022】
さらに、透過光のDAVを用いれば、振動の有無を感度良く検知することができる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図を参照して、この発明の実施の形態について説明するが、各構成要素の形状、大きさ及び配置関係については、この発明が理解できる程度に概略的に示したものに過ぎず、また、単なる好適例に過ぎない。従って、この発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、この発明の構成の範囲を逸脱せずにこの発明の効果を達成できる多くの変更又は変形を行うことができる。
【0025】
また、明細書における説明においてベクトル量を扱うが、ベクトル量を表す文字の上に付する右向き矢印は、混乱が生じない範囲で省略することがある。
【0026】
(振動検知光ファイバセンサ)
図1を参照して、振動検知光ファイバセンサの実施形態について説明する。
図1は、振動検知光ファイバセンサの概略的構成を示すブロック構成図である。この振動検知光ファイバセンサは、プローブ光供給部10、光ファイバ20、光サーキュレータ40、及び、偏光状態計測部30を備えて構成される。
【0027】
プローブ光供給部10は、プローブ光として、直交する偏光方向に、周期的に交互に切り換えられる光パルスを生成する。このプローブ光供給部10は、例えば、レーザ光源12、強度変調器14、偏波スイッチ16及び関数発生器18を備えて構成される。
【0028】
関数発生器18は、矩形状の電気パルスを生成する。この電気パルスは、強度変調器14及び偏波スイッチ16に送られる。関数発生器18が生成する、強度変調器14へ供給される電気パルスは、例えば、100nsec幅で、繰り返し周波数が10kHz(周期100μsec)である。
【0029】
また、関数発生器18が生成する、偏波スイッチ16へ供給される電気パルスは、繰り返し周波数が強度変調器14へ供給する電気パルスの半分の繰り返し周波数とする。例えば、強度変調器14へ供給する電気パルスの繰り返し周波数を10kHzとした場合、偏波スイッチ16へ供給する電気パルスの繰り返し周波数は5kHzとする。
【0030】
レーザ光源12は、連続(CW)光を生成する。このCW光は、強度変調器14に送られる。
【0031】
強度変調器14は、CW光を電気パルスで光パルス化して、光パルスを生成する。この光パルスは、偏波スイッチ16に送られる。強度変調器14が生成する光パルスは、関数発生器18が生成する電気パルスと同じく、100nsec幅で、繰り返し周波数が10kHz(周期100μsec)である。
【0032】
偏波スイッチ16は、電気パルスの周期で光パルスの偏光方向を、互いに直交する方向に、周期的に交互に切り換える。
【0033】
例えば、関数発生器18から偏波スイッチ16に供給される電気パルスのピーク間電圧Vppを、偏波スイッチ16から出力される光波の直交偏光軸間の位相差がπとなる印加電圧Vπの半分(Vpp=Vπ/2)とする。この条件を満たす電気パルスを供給して偏波スイッチ16を駆動すれば、偏波スイッチ16から出力される光パルスの偏光状態は、時間的に交互に直交した偏光状態にスイッチされる偏波スイッチ光となる。
【0034】
これにより、偏波スイッチ16からは、偏光状態が時間の経過とともに互いに直交する2つの偏光状態に交互にスイッチされた光パルスである偏波スイッチ光が出力される。この例では、偏波スイッチ光の繰り返し周波数が5kHz(周期200μsec)になる。
【0035】
一般に、光ファイバに伝わる機械的な振動の周波数は100Hz未満である。この例では、偏波スイッチ16で5kHzの偏波スイッチ光が生成される。この偏波スイッチ光の周波数は、光ファイバに伝わる機械的な振動の周波数と比較して十分大きいので、機械的な振動に対してほぼ等しい時刻に2つの異なる偏光状態の光パルスが、光ファイバに入力されるとみなすことができる。
【0036】
偏波スイッチ16は、例えば、ニオブ酸リチウムを利用した偏波変調器を利用するのが好適であるが、偏光状態を時間の経過とともに互いに直交する2偏光状態に交互にスイッチできるデバイスであれば利用できる。例えば、電気光学効果を利用する偏波ローテータ、磁気光学効果を利用する偏波ローテータ、あるいは機械駆動式の1/2波長板を利用することもできる。
【0037】
なお、ここでは、偏光状態を時間の経過とともに互いに直交する2偏光状態に交互にスイッチする場合を説明するが、2つの偏光状態は、互いに異なる偏光状態であれば良く、必ずしも直交していなくてもよい。
【0038】
偏波スイッチ16が生成した偏波スイッチ光はプローブ光として、光サーキュレータ40を経て光ファイバ20に送られる。
【0039】
光ファイバ20に送られたプローブ光は、光ファイバ20を伝播し、透過光として偏光状態計測部30に送られる。また、光ファイバ20に送られたプローブ光の一部は、光ファイバ20で反射され、反射光として偏光状態計測部30に送られる。
【0040】
偏光状態計測部30は、反射光用偏光計32、透過光用偏光計34、アナログ−デジタル(A/D)変換器36及び演算器38を備えて構成される。
【0041】
反射光用偏光計32は、偏光状態計測部30に送られた反射光のストークスパラメータを取得する。反射光のストークスパラメータは、A/D変換器36に送られる。
【0042】
透過光用偏光計34は、偏光状態計測部30に送られた透過光のストークスパラメータを取得する。透過光のストークスパラメータは、A/D変換器36に送られる。
【0043】
反射光用偏光計32及び透過光用偏光計34は、ストークスパラメータの時間依存性を観測できるものであればよく、その測定速度帯域は光ファイバ20のストークスベクトルの時間依存性の偏波変動速度に対してサンプリング定理(標本化定理)を満たしていればよい。
【0044】
A/D変換器36は、アナログ信号として取得されたストークスパラメータをデジタル信号に変換する。
【0045】
ここで、A/D変換器36の標本化周波数は、関数発生器18で発生する電気パルスに対して、標本化定理を満たす周波数であればよい。標本化定理とは、アナログ信号をデジタル信号へと変換する際に、どの程度の間隔で標本化(サンプリング)すればよいかを定量的に示す定理である。ここでは、関数発生器18で発生する電気パルスのパルス幅を100nsecとしたので、例えば、40MS/sec(Mega Sampling/second)程度の標本化周波数を利用すればよい。
【0046】
A/D変換器36で変換されたデジタル信号は、演算器38に送られる。
【0047】
演算器38は、デジタル信号に変換されたストークスパラメータを用いて、DAVを算出する。演算器38は、透過光のストークスパラメータから算出されたDAVを用いて、異常な振動の有無を検知する。また、異常な振動が検知された場合に、演算器38は、反射光のストークスパラメータから算出されたDAVを用いて、振動の位置を特定する。演算器38としては、例えば、DAVの算出及び振動の位置の特定を行うソフトウエアがインストールされた市販のパーソナルコンピュータ(PC)を利用できる。
【0048】
(DAVの算出方法)
DAVの算出方法について説明する。
【0049】
光ファイバから出力される光波の偏光状態の時間発展は、以下の式(1)で与えられる(例えば、非特許文献2参照)。
【0051】
ここで、s
out(t)は、光ファイバへ入力される任意の光波に対して、時刻tにおいてこの光ファイバから出力される光波の偏光状態を表す3行1列のストークスベクトルである。ここで、tは光ファイバの出力端において定義される時刻である。
【0052】
角速度ベクトルω
bは、複屈折の時間変化を反映する光ファイバ固有の特性であり、微小な時間幅dt内でストークスベクトルs
out(t)に、角速度ベクトルω
bの向きを中心とする回転を与える、3行1列の実ベクトルである。一方、光ファイバから出力される光波の偏光状態s
out(t)は、光ファイバに入力される光波の偏光状態に依存する。この偏光状態を表すストークスベクトルの先端は、光ファイバへの入射偏光状態に依存してポアンカレ球面上のあらゆる点を通り得る。
【0053】
ここで、重要な点は、角速度ベクトルω
bは光ファイバの固有の複屈折の時間変化を示すものであり、入力される光波の偏光状態に依存しないことである。すなわち、光ファイバから出力される光波の偏光状態s
out(t)は、光ファイバに入力される光波の偏光状態に依存するのに対し、角速度ベクトルω
bは入力される光波の偏光状態に依存しない。このため、角速度ベクトルω
bを測定すれば、入力される光波の偏光状態に依存せずに光ファイバの固有の複屈折の時間変化、すなわち、振動に関する光ファイバの特性が分かる。
【0054】
角速度ベクトルω
bの長さは、光ファイバのJones行列の時間部分により定義される時間発展演算子の2つの固有値の差であるDAVになる。
【0055】
角速度ベクトルω
bは、光ファイバの複屈折性を表す3行3列の回転行列R(t)を測定することによって求められる。ここでは、光ファイバへ入力される光波の偏光状態は変動しないとする。
【0056】
光ファイバへ入力される光波のストークスベクトルをs
in(t)とすると、ストークスベクトルs
in(t)及びs
out(t)、並びに、回転行列R(t)の関係は、以下の式(2)で与えられる。
【0058】
上式(2)の1次の時間微分は、以下の式(3)で与えられる。
【0060】
上式(2)及び(3)から、以下の式(4)が得られる。
【0062】
ここで、†は随伴作用素を意味する。上式(4)を上式(3)の右辺に代入すると以下の式(5)が得られる。
【0064】
上式(1)と上式(5)を比較すると、角速度ベクトル外積演算子表現「ω
b×」が以下の式(6)で与えられる。
【0066】
更に、角速度ベクトル外積演算子表現「ω
b×」を行列表現すると、以下の式(7)が得られる。
【0068】
ここで、角速度ベクトルω
bは、3行1列の縦ベクトルであり、以下の式(8)で表される。
【0070】
以上説明したように、回転行列R(t)の時間変化を測定すれば、上式(6)及び上式(7)から角速度ベクトルω
bが求められる。また、角速度ベクトルω
bの大きさを与える絶対値|ω
b|は、出力される光波のストークスベクトルs
out(t)の先端が、時間の経過とともにポアンカレ球面上に描く円の角速度(rad/sec)と一致する。
【0071】
光ファイバへ入力される光波の偏光状態によって出力される光波のストークスベクトルs
out(t)の先端の位置が異なるので、s
out(t)のポアンカレ球面上で描く円の半径も入力される光波の偏光状態に依存する。しかしながら、s
out(t)の先端が描く円の角速度は、円の半径によらず入力される光波の偏光状態に依存しない。このように、光ファイバそのものに備わった複屈折の固有状態を与える角速度ベクトルω
bを測定すれば、入力される光波の偏光状態に依存せずに、光ファイバの複屈折の時間変化を定量化できる。
【0072】
光ファイバから光波が出力される時刻tにおける回転行列R(t)の測定は互いに直交する2偏光状態に対して、それぞれ測定される光波の偏光状態から求めることができる。ただし、時間変化する回転行列R(t)に対し、瞬間に定義できる偏光状態は1つである。しかしながら、回転行列R(t)が定常とみなせる程度の短い時間間隔内で、入力される光波の偏光状態を2つの偏光状態にスイッチし、出力される光波の偏光状態を偏波スイッチに供給される電気パルスの半分の周期で2つに分離すれば、互いに直交する2偏光状態に対してほとんど同時に光波の偏光状態が測定されたとみなすことができる。
【0073】
一般に、光ファイバに伝わる機械的な振動の周波数は100Hz未満、すなわち、周期10msec以上であり、この例では、偏波スイッチ光の周期が200μsecである。従って、互いに直交する2偏光状態に対してほとんど同時刻tで、光ファイバから出力された光波の偏光状態が測定され、回転行列R(t)が求められたとみなすことができる。
ここで、200μsecごとに取り出したストークスベクトルのそれぞれt
1、t
aを、ベクトル成分表記すると、以下の式(9)で表される。
【0075】
また、以下の式(10)に示す2つのストークスベクトルt
2、t
3を新たに定義する。
【0077】
なお、ストークスベクトルt
1、t
a、t
2及びt
3は、いずれもその絶対値が1になるように規格化されている。
【0078】
回転行列R(t)は、ストークスベクトルt
1、t
2及びt
3を用いて、以下の式(11)及び(12)と表される(例えば、非特許文献3参照)。
【0081】
この回転行列R(t)の時間変化を、ストークスベクトルt
1及びt
aの時間変化から求めれば、上式(6)及び(7)より時間経過に対する角速度ベクトルω
bの時間変化を求めることができる。また、角速度ベクトルω
bが求まれば、DAVは角速度ベクトルω
bの長さとして容易に求まる。
【0082】
(振動検知)
図2は、透過光を利用した振動に関するDAVを測定した例を示す図である。
図2では、横軸に時間をとって示し、縦軸にDAV又はSOPの回転率を取って示している。
図2中、曲線Iは、DAVを示している。また、曲線IIは、従来の光ファイバセンサで用いられる偏光状態(SOP)、すなわちストークスベクトルの回転率を示している。
【0083】
ストークスベクトルの回転率は、入射光の偏光状態に依存する。これに対し、この発明で用いるDAVは、入射光の偏光状態に依存しない、ストークスベクトルの回転率の最大値に対応する。
【0084】
従って、この発明によれば、入射光の偏光状態に依存しない振動検知が可能になる。
【0085】
また、一般に、光ファイバの反射光の光強度は非常に微弱である。このため、反射光のみでは風などの外乱との区別が困難であり、誤検知の原因となる。従って、透過光のDAVを測定することにより、振動を感度良く検知できる。
【0086】
なお、反射光のDAVで十分に振動を検知できる場合は、透過光のDAVの測定を行わなくても良い。
【0087】
図3を参照して、反射光を利用した振動位置の特定方法について説明する。
図3は、反射光を利用した振動位置の特定方法について説明するための模式図である。
【0088】
図3(A)は、横軸に時間を取って示し、縦軸に反射光のDAVを取って示している。また、
図3(B)は、横軸に距離を取って示し、縦軸に反射光のDAVを取って示している。
【0089】
反射光のDAVは、透過光のDAVと同様の方法で求めることができる。
【0090】
光パルスは、光ファイバ中を、5nsec/mの遅延をもって伝搬する。光パルスの伝搬に伴い反射光が発生する。反射光も同様に5nsec/mの遅延をもって、入力される光パルスと逆方向に伝搬する。例えば、入力端から500mの地点で振動が加わる場合を考える。本発明では、偏波スイッチした光パルスに対して反射光のストークスパラメータを観測する。このため、反射光が到達した各時刻においてDAVを求めれば、光パルスが振動地点へ到達し、反射光として入力端に戻るまでの伝搬遅延時間の5μsecの時間位置でDAVの変動がみられる(
図3(A))。
【0091】
この伝搬遅延時間を距離に換算すれば、振動地点の入力端からの距離が特定できる(
図3(B))。