【文献】
日本工業標準調査会,大気環境の腐食性を評価するための環境汚染因子の測定,JIS Z 2382:1998,日本,日本工業標準調査会,1998年 6月20日
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前述した円筒法では、円筒法の曝露期間経過後の最終的な硫酸鉛の蓄積量のみを評価できるに過ぎず、曝露期間中の硫酸鉛を連続的に評価できないので、曝露期間中の二酸化硫黄ガスの存在状況を連続的に観測することはできない。
【0007】
特許文献1には、前記A群の金属元素と同様の作用を有するものとして、Pbが例示されている。しかし、特許文献1では、硫化物等の皮膜を金属表面に形成させて、当該金属表面の暴露前後の接触抵抗の変化を測定することを基本としている。しかし、特許文献1では、暴露後の金属材の単位面積当たりの接触抵抗変化量を測定する際、曝露後の金属材を回収してから接触抵抗変化量を測定しているので、特許文献1は、経時変化する二酸化硫黄ガスの存在状況を連続的に測定することができない。
【0008】
特許文献2、3に開示された方法によって予測可能な板厚変化量は、年単位であって、日々の変化を観測することは極めて困難である。
【0009】
本発明は、このような問題を解決するためになされたものであり、経時変化する二酸化硫黄ガスの存在状況を連続的に測定できる方法及びその装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題の解決のため、本発明者らは、PbO
2を用いることによって、形状を特に限定すること無く、経時変化する二酸化硫黄ガスの存在状況を連続的に測定できることを見出した。本発明は、以下に要約される。なお、PbO
2を用いた二酸化硫黄(SO
2)ガスの存在状況を評価する試験体を、本明細書においてSO
2評価試験体とよぶ。
【0011】
(1)PbO
2を含有し、少なくともPbO
2の一部を環境中に曝露し、環境中におけるSO
2ガスを吸収するSO
2評価試験体を用いて環境中におけるSO
2ガスを計測するSO
2ガスの計測方法であって、
前記SO
2評価試験体に含まれるPbO
2量及びPbSO
4量の合計量に対する前記PbO
2量の割合と、前記SO
2評価試験体の電気抵抗との相関関係を決定する工程と、
前記SO
2評価試験体を測定対象の環境中に設置して、前記環境中における前記SO
2評価試験体の電気抵抗を測定する工程と、
前記相関関係に基づいて、前記SO
2評価試験体の電気抵抗の測定結果から、前記環境中における前記SO
2評価試験体のSO
2吸収量を求める工程と、を含むことを特徴とするSO
2ガスの計測方法。
(2)電気抵抗が既知である基準抵抗とSO
2評価試験体とを直列に接続して直列抵抗体を構成し、前記直列抵抗体に印加される電圧Eと前記基準抵抗に印加される電圧Erを測定し、前記基準抵抗の電気抵抗Rrと以下の式により前記SO
2評価試験体の電気抵抗Rsを求める工程を更に含むことを特徴とする(1)に記載のO
2ガスの計測方法。
【数1】
(3)更に、JIS Z 2382:1998に基づく円筒法を用いて、前記測定対象の環境の平均のSO
2付着度(単位:mg/dm
2/day)を測定する工程と、
前記円筒法の曝露期間と同一の期間における前記SO
2評価試験体のSO
2吸収量の経時変化及び1日当たりの平均のSO
2吸収量を測定する工程と、
前記平均のSO
2付着度と、前記1日当たりの平均のSO
2吸収量との関係を求める工程と、
前記平均のSO
2付着度と、前記1日当たりの平均のSO
2吸収量との関係に基づいて、前記SO
2評価試験体のSO
2吸収量の経時変化を前記円筒法によるSO
2付着度の経時変化としてモニタリングする工程を含むことを特徴とする、(1)又は(2)に記載のSO
2ガスの計測方法。
(4)PbO
2を含有し、少なくともPbO
2の一部を環境中に曝露し、環境中におけるSO
2ガスを吸収するSO
2評価試験体を用いて環境中におけるSO
2ガスを計測するSO
2ガスの計測装置であって、
前記SO
2評価試験体に含まれるPbO
2量及びPbSO
4量の合計量に対する前記PbO
2量の割合と、前記SO
2評価試験体の電気抵抗との相関関係に基づいて作成されたSO
2評価試験体と、
測定対象の環境中における前記SO
2評価試験体の電気抵抗を測定する電気抵抗測定装置と、
前記相関関係を記憶する相関関係保持装置と、
前記相関関係に基づいて、前記SO
2評価試験体の電気抵抗の測定結果から、前記環境中における前記SO
2評価試験体のSO
2吸収量を求める試験体含有率導出装置と、を含むことを特徴とするSO
2ガスの計測装置。
(5)更に、電気抵抗が既知であり、前記SO
2評価試験体と直列に接続される基準抵抗と、
前記基準抵抗の電気抵抗を測定する基準抵抗用抵抗測定機とを備え、
前記電気抵抗測定装置は、前記直接に接続されたSO
2評価試験体及び基準抵抗からなる直列抵抗体に印加される電圧Eと前記基準抵抗に印加される電圧Erを測定し、前記基準抵抗の電気抵抗Rrと以下の式により前記SO
2評価試験体の電気抵抗Rsを求める機能を更に有することを特徴とする(4)に記載のO
2ガスの計測装置。
【数2】
(6)JIS Z 2382:1998に基づく円筒法の曝露期間と同一の期間における前記SO
2評価試験体のSO
2吸収量の経時変化及び1日当たりの平均のSO
2吸収量を測定するSO
2吸収量の経時変化を測定する機能と、
前記円筒法により得られた前記測定対象の環境における平均のSO
2付着度(単位:mg/dm
2/day)と、前記1日当たりの平均のSO
2吸収量とを比較し、前記SO
2評価試験体のSO
2吸収量の経時変化を前記円筒法によるSO
2付着度の経時変化を求める機能とを有することを特徴とする、(4)又は(5)に記載のSO
2ガスの計測装置。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、経時変化する二酸化硫黄ガスの存在状況を連続的に測定することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明者らは、上記課題を解決する手法について、導電性を有するPbO
2がSO
2と反応して絶縁性のPbSO
4を形成することに着目して、PbO
2とPbSO
4が混在する試験体のPbO
2とPbSO
4の含有率の比率との関係を調査した。その結果、PbO
2とPbSO
4が混在する試験体の抵抗値は、PbO
2とPbSO
4が直列に接続されていると仮定した抵抗値と概ね一致し、前記試験体の抵抗値Rsは、下記の式(1)で表すことができることが分かった。
【数3】
【0015】
PbSO
4生成前の前記試験体が100%PbO
2である場合、PbSO
4生成前の前記試験体のPbO
2のモル分率は1.0である。従って、PbSO
4生成後の前記試験体におけるPbO
2の含有比率をモル分率rで表すと、式(1)は、下記のように表すことができる。
【数4】
【0016】
図5は、PbO
2(抵抗率:68Ωcm)とPbSO
4(抵抗率:5×10
4Ωcm)からなるSO
2評価試験体に関する電気抵抗(本明細書において、単に抵抗という場合がある。)と、PbO
2のモル分率との関係の実測値と計算値を示すグラフであり、当初、PbO
2のモル分率が1.0であった状態から減少するにつれて、すなわち、PbSO
4のモル分率が増加するに従って抵抗が増加していることが分かる。
【0017】
図5ではSO
2評価試験体として、65×36×3mmのサイズに成形されたものが用いられているが、その製造方法は特に制限されない。例えば、粉末トラガカントガム2.0gをアルコール10mlに溶解し、攪拌しながら純水190mlを加えたトラガカントガム溶液5mlに、二酸化鉛粉末8.0gを入れてガラス棒で攪拌して作成されたペースト状のPbO
2を用いて、型に入れ成形後乾燥して作成しても良い。
【0018】
以下、本発明の計測方法と、当該計測方法を利用した計測装置の実施形態について説明する。同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付している。また、以下に示す実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための方法或いは装置を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の形状、構造、配置等を下記のものに特定するものではない。本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
【0019】
[第1の実施形態]
図1Aは、本発明のSO
2ガスの計測方法の第1の実施形態のフローチャートである。また、
図1Bは、
図1Aに基づく計測方法を実施する計測装置1の概略図である。
【0020】
図1Bを参照して計測装置1について説明する。計測装置1は、SO
2評価試験体2と、電気抵抗測定装置3と、相関関係保持装置4、試験体含有率導出装置5と、出力装置6とを含む。前記SO
2評価試験体2は、その左右両側において電源端子7a、7bにより図示しない外部電源に接続されている。前記SO
2評価試験体2は、壁等の境界a1及びa2で囲まれた環境A内に設置され、その表面の少なくとも1部がSO
2ガスの存在状況の測定対象となる環境A内の雰囲気a2と直接接触されるように露出された状態(暴露された状態)で環境A内に設置されている。
【0021】
SO
2評価試験体2として、例えば、
図1D(a)、(b)に示すように、PbO
2プレート24と、前記PbO
2プレート24の長手方向の左右両端に設けられた電極21a及び21bと、前記電極21a及び21bを内面に備え、化学反応に対して安定な絶縁材料を用いて構成された保護ケース23とを含むように構成しても良い。ここで、「PbO
2プレート」とは、PbO
2の含有率が略100%であって、PbO
2が、直方体、六角柱等の断面が多角形の柱状体、又は平板状体等に成形されたものを例示できるが、その形状は特に限定されない。
【0022】
第1の実施形態では、SO
2評価試験体2は、PbO
2の含有率が100%の試験体を用いる。SO
2評価試験体2の作成方法に特に制限はないが、前述したように、例えば、粉末のトラガカントガムをアルコールに溶解し、撹拌しながら純水を加えたトラガカントガム溶液に、二酸化鉛粉末を入れてガラス棒で撹拌して作成したペースト状のPbO
2を成形することで作成できる。
【0023】
SO
2評価試験体2の形状およびサイズは、測定したい環境と期間に応じて適宜設定すればよい。暴露面の面積を大きくすることで、二酸化硫黄ガスとの反応量を多くすることができ、二酸化硫黄ガスの測定感度を高めることができる。また、暴露しない面の断面積を小さくすること等、同じ二酸化硫黄ガスとの反応量に対するSO
2評価試験体2の抵抗変化を大きくすることで、二酸化硫黄ガスの測定感度を高めることができる。SO
2評価試験体2の形状は、例えば、直方体や円柱を用いることができる。SO
2評価試験体2の形状を直方体にした場合におけるサイズは、例えば、厚さは0.1cm以上0.5cm以下、長さは2cm以上30cm以下、幅は2cm以上30cm以下である。なお、厚さは
図1Bにおける上下方向、すなわち、抵抗測定器の測定端子3a、3bが接続されている面の一辺の長さであり、長さは
図1Bにおける左右方向、すなわち、抵抗測定機の測定端子3aが接続されている面同士の距離であり、幅は
図1Bにおける手前と奥行き方向、すなわち、抵抗測定器の測定端子3a、3bが接続されている面の一辺の長さである。
【0024】
電気抵抗測定装置3は、SO
2評価試験体の抵抗を測定する装置である。SO
2評価試験体の抵抗を測定できれば装置構成に制約はない。第1の実施形態における電気抵抗測定装置3について、
図1Cを参照して説明する。電気抵抗測定装置3は、抵抗測定機31と、当該抵抗測定機31の測定端子3a、3bと、試験体含有率導出装置5に接続される端子3cとを含む。抵抗測定機31の測定端子3a、3bはSO
2評価試験体2に接続されており、抵抗測定機31はSO
2評価試験体2の左右両端間の電圧を測定することにより電気抵抗Rsを測定するとともに、その測定結果を試験体含有率導出装置5に送信する。
【0025】
相関関係保持装置4は、SO
2評価試験体2におけるPbO
2の含有率およびPbSO
4の含有率の比率と、SO
2評価試験体の電気抵抗の相関関係が保持される装置である。測定に用いるSO
2評価試験体の形状等に対応する前記相関関係を予め求めておき、相関関係保持装置4に前記相関関係が保持されていれば、電気抵抗測定装置3で測定されるSO
2評価試験体2の電気抵抗から、SO
2評価試験体2のPbO
2の含有率およびPbSO
4の含有率の比率を求めることができる。相関関係保持装置4に保持される相関関係は、PbO
2の含有率およびPbSO
4の含有率の比率をいくつかの水準で変化させたサンプルについて、電気抵抗と前記含有率の比率を測定して、各データを最小二乗法で近似して求めることができる。最小二乗法の近似式は、例えば、電気抵抗を変数にもつ2次関数(式2)で表すことができる。
【数5】
ただし、a、b、cはそれぞれ係数であり、xはSO
2評価試験体の電気抵抗を表す。
【0026】
なお、PbO
2の含有率およびPbSO
4の含有率の比率を変えたサンプルは、PbO
2の含有率が100%のサンプルを二酸化硫黄ガスと反応させたサンプルを用いてもよいし、予め目的とする比率となるようにPbO
2の含有率およびPbSO
4の含有率の比率を調整したサンプルを人工的に作成してもよい。SО
2ガスを計測しようとする範囲内における前記相関関係の電気抵抗の値がほぼ同じであれば、PbO
2の含有率が100%のときの電気抵抗やPbSO
4の含有率が100%のときの電気抵抗と前記相関関係の電気抵抗の値が一致していなくてもよい。
【0027】
試験体含有率導出装置5は、電気抵抗測定装置3で測定されるSO
2評価試験体2の電気抵抗から、相関関係保持装置4に保持されている前記相関関係を対応させることで、SO
2評価試験体2のPbO
2の含有率およびPbSO
4の含有率の比率を求めることができる。
【0028】
出力装置6は、試験体含有率導出装置5にて求められた前記相関関係を出力する装置である。例えば、前記相関関係をデータロガーで電子的に記録してもよいし、ディスプレーに前記相関関係の経時変化をグラフとして表示させてもよい。
【0029】
本発明のSO
2ガスの計測方法の第1の実施形態では、まず、前述した式(1)又は式(1)’に基づいて、測定環境に応じて、PbO
2及びPbSO
4の含有率の比率と、電気抵抗との相関関係が決定される(
図1Aの工程S1)。決定された相関関係は、相関関係保持装置4に保存される。
【0030】
次いで、前記相関関係に基づいて、測定環境に適したSO
2評価試験体2を作成し、当該SO
2評価試験体を用いてSO
2ガスを測定するために、前記SO
2評価試験体2を測定対象の環境A内に配置する(
図1Aの工程S2)。
【0031】
次いで、電気抵抗測定装置3を用いて、前記環境A内における前記SO
2評価試験体2の電気抵抗を測定する(
図1Aの工程S3)。相関関係保持装置4に保存された前記PbO
2量の割合と電気抵抗との前記相関関係に基づいて、試験体含有率導出装置5を用いて、前記環境中における前記SO
2評価試験体2の電気抵抗の測定結果を、前記環境A内における前記SO
2評価試験体2のPbO
2の含有率およびPbSO
4の含有率の比率に換算する(
図1Aの工程S4)。
【0032】
前記環境A内における前記SO
2評価試験体2のSO
2吸収量は、測定対象の環境AにおけるSO
2ガスの存在状況に換算される(
図1Aの工程S5)。SO
2ガスの存在状況は、モニター等の出力装置6にモニタリングしても良い。前記環境A内における前記SO
2評価試験体2の電気抵抗の経時変化は、本発明によって、
図4に示されるようにモニタリングすることができる。また、前記環境A内における前記SO
2評価試験体2の電気抵抗の経時変化は、本発明によって、
図4に示されるように前記環境A内における前記SO
2評価試験体2のSO
2付着度の経時変化としてモニタリングすることができる。
【0033】
尚、
図1Bの計測装置1では、電気抵抗測定装置3が環境Aの外部に設置されているが、電気抵抗測定装置3は環境A内の雰囲気a2によって損傷を受けない限り、環境A内に設けても良い。また、
図1Bの計測装置1では、電気抵抗測定装置3〜出力装置6間は有線で連結されているが、無線でデータの受信及び送信を行っても良い。
【0034】
[第2の実施形態]
図2Aは、第1の実施形態の計測装置1の電気抵抗測定装置3が、外部からの無電源環境下において前記SO
2評価試験体2の電気抵抗を測定できるように構成した変形例の電気回路図である。この変形例は、計測装置1を電源供給が困難な箇所にも設置できるように構成されたものであって、前記環境A内における前記SO
2評価試験体2の電気抵抗を測定する際に、前記SO
2評価試験体2に通電する電源として市販の1.5V乾電池70を利用できることを特徴としている。
【0035】
図2Aに示すように、第2の実施形態では、電気抵抗測定装置3は、基準抵抗測定用の測定機31r、基準抵抗30、抵抗測定機31を備える。抵抗測定機31はSO
2評価試験体2の電気抵抗Rs(T)を測定し、この測定と同時に、基準抵抗測定用の測定機31rは基準抵抗30を測定する。
【0036】
前記SO
2評価試験体2の電気抵抗は、一般に抵抗計で測定することが好ましい。しかし、抵抗(Rr)が既知の抵抗体(基準抵抗)を前記SO
2評価試験体2に直列に接続し、全体抵抗に印加される電圧(E)と基準抵抗に印加される電圧(Er)の2カ所の電圧を測定することで、以下の式3により、電池のように電圧が変化する電源を用いても、前記SO
2評価試験体2の電気抵抗(Rs)を精度良く求めることが可能となる。
【数6】
【0037】
このように、
図2Aに示す電気回路を用いて前記SO
2評価試験体2の電気抵抗を測定することによって、電源確保が難しい測定環境中でも電池を用いて長時間測定することが可能となる。
【0038】
[第3の実施形態]
本発明の計測方法及び計測装置によれば、公知の方法によって測定されたSO
2濃度とSO
2評価試験体2のPbO
2の含有率とPbSO
4の含有率の比率の相関関係を予め求めておくことで、経時的なSO
2濃度を測定することができる。また、前記相関関係を予め求めておくことで、当該相関関係を利用して、異なる環境のSO
2濃度を測定できる。
【0039】
以下、JIS Z 2382:1998(以下、単に、「JIS Z 2383」という。)に基づく円筒法を用いる場合について説明する。本発明の第3の実施形態においては、前記第1の実施形態或いは前記第2の実施形態の工程に対して、JIS Z 2382に基づく円筒法を用いて、前記測定対象の環境の平均のSO
2付着度(単位:mg/dm
2/day)を測定する工程を含むことを特徴としている。尚、
図6に、本発明の第3の実施形態の計測方法を実施するための概略構成図を示す。
【0040】
JIS Z 2382に基づく円筒法を用いて、前記測定対象の環境内に円筒100を設置し、当該円筒100の平均のSO
2付着度(単位:mg/dm
2/day)を測定する工程によって、1日当たりの平均のSO
2吸収量を算出する。JIS Z 2382に基づく円筒法によって得られた1日当たりの平均のSO
2吸収量は、相関関係保持装置4に保存しても良い。
【0041】
第3の実施形態は、前記円筒法の曝露期間と同一の期間における前記SO
2評価試験体2のSO
2吸収量の経時変化及び1日当たりの平均のSO
2吸収量を測定する工程を含む。この工程は、第1の実施形態の工程S3において行っても良い。前記SO
2評価試験体2のこのようなSO
2吸収量の経時変化を測定する装置として、
図1Bの電気抵抗測定装置3を用いても良い。また、前記SO
2評価試験体2の1日当たりの平均のSO
2吸収量を測定する装置として、
図1Bの電気抵抗測定装置3或いは試験体含有率導出装置5を用いても良い。
【0042】
また、第3の実施形態は、JIS Z 2382に基づく円筒法を用いて得られた前記測定対象の環境の平均のSO
2付着度と、前記SO
2評価試験体2のSO
2吸収量の経時変化から得られた1日当たりの平均のSO
2吸収量とを比較し、前記SO
2評価試験体のSO
2吸収量の経時変化を前記円筒法によるSO
2付着度の経時変化に換算する工程を含む。この工程は、
図1Bの試験体含有率導出装置5等を用いて、第1の実施形態の工程S4及び/又は工程S5において行っても良い。
【0043】
このように、本発明の第3の実施形態によれば、経過時間毎のPbO
2からPbSO
4への変化率を観測することによって、定量的な二酸化硫黄ガスの測定値を推測することができ、また、同時間における抵抗と公知の手法によるSO
2濃度の関係を求めておくことで、ある時間における抵抗からSO
2濃度に換算することができる。
【0044】
上述の実施形態では、SO
2評価試験体2は、PbO
2の含有率が100%の試験体を用いる場合について説明したが、他の導電性を有する物質を含有させることを妨げない。他の導電性を有する物質を含有させる場合は、二酸化硫黄ガスの吸収量に対する抵抗変化率を大きくして、二酸化硫黄ガスに対する感度を高くするため、SO
2評価試験体2は、PbO
2およびPbSO
4の含有量に対するPbO
2の含有率がモル分率で80%以上95%以下にすることが好ましい。
【0045】
また、通常は環境の温度変化が計測結果に与える影響が大きくないので問題とならないが、非定常的に稼働する熱源を発する設備の近く等、温度変化が大きい環境下で計測する場合や、より正確な計測をしたい場合は、温度補償を適用することが好ましい。温度補償を適用するには、例えば、
図2Bのように、SO
2評価試験体2の抵抗を計測する回路と環境に暴露されないように保護された温度補償用抵抗20の抵抗を計測する回路を略同じ環境下に設置し、温度補償用抵抗20を用いて補償することができる。
図2Bでは、温度補償用抵抗20は端子8a、8bを介して図示しない外部電源に接続されており、電気抵抗測定装置13は、SO
2評価試験体2及び温度補償用抵抗20のそれぞれの抵抗値を測定し、温度補償用抵抗20の抵抗値を用いてSO
2評価試験体2の抵抗値の温度補償を行うように構成されている。
【0046】
このように、本発明はここでは記載していない様々な実施の形態等を含むことはもちろんである。従って、本発明の技術的範囲は上記の説明から妥当な特許請求の範囲に係る発明特定事項によってのみ定められるものである。
【0047】
また、本発明によれば、連続測定した鋼材の腐食挙動と関連させることによって、鋼材の腐食の解明に有効であり、使用環境における土木建材の鋼材成分の適用可否判断に活用することができる。
【実施例】
【0048】
[実施例1]
第1の実施形態の装置を用いて、兵庫県尼崎市において、8月の8日間の期間、百葉箱内における二酸化硫黄ガスの存在状況の経時変化を連続的に測定した。尚、SO
2評価試験体2として、PbO
2の含有率が100%の試験体を用いた。
【0049】
PbO
2のモル分子量は239.198g(密度9.38g/cm
3)、PbSO
4のモル分子量は303.262g(密度6.29g/cm
3)である。前記SO
2評価試験体2に含有される初期のPbO
2が全てPbSO
4に変化する場合、例えば、前記SO
2評価試験体2のPbO
2含有量が8gであった場合、PbO
2存在比、すなわちPbO
2/(PbO
2+PbSO
4)の存在比変化量が1であった場合、前記SO
2評価試験体2は、(8×1)÷239.198=0.0334モルのSO
2を吸収したことになる。
【0050】
SO
2のモル分子量は64.06gなので、前記SO
2評価試験体2は、0.0334×64.06×1000=2142mgのSO
2を吸収したことになる。
【0051】
当初のSO
2評価試験体2の重量とPbO
2/PbSO
4の比率が分かっていれば、PbSO
4が増加したモル分率を用いて、SO
2の吸収量を定量化できる。
【0052】
例えば、
図3の144時間経過後では、PbO
2存在比が0.96である。反応式は「PbO
2+SO
2→PbSO
4」であり、PbO
2の減ったモル数分だけ、SO
2と反応しているといえる。従って、PbSO
4に反応した比率が0.04×(1−0.96)である。PbO
2の初期重量が8gであるため、PbO
2からPbSO
4に反応したモル数は、8(g)×0.04×1/239.198(mol/g)=0.001338(mol)である。一方、SO
2の質量は、8(g)×0.04×1/239.198(mol/g)=0.0857(g)である。
【0053】
よって、上の計算結果から、
図3の144時間経過後のSO
2の反応したモル数は0.001338mol、SO
2の質量は0.0857gと導出できる。