特許第6866772号(P6866772)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6866772
(24)【登録日】2021年4月12日
(45)【発行日】2021年4月28日
(54)【発明の名称】排気マニホルドの製造方法
(51)【国際特許分類】
   F01N 13/10 20100101AFI20210419BHJP
   F01N 13/08 20100101ALI20210419BHJP
   F01N 13/16 20100101ALI20210419BHJP
【FI】
   F01N13/10
   F01N13/08 A
   F01N13/16
【請求項の数】1
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-108932(P2017-108932)
(22)【出願日】2017年6月1日
(65)【公開番号】特開2018-204484(P2018-204484A)
(43)【公開日】2018年12月27日
【審査請求日】2019年9月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】110001117
【氏名又は名称】特許業務法人ぱてな
(72)【発明者】
【氏名】柳澤 秀生
【審査官】 菅野 京一
(56)【参考文献】
【文献】 特開平08−121158(JP,A)
【文献】 特開昭60−081420(JP,A)
【文献】 特開平03−084308(JP,A)
【文献】 特開平01−280616(JP,A)
【文献】 特開平09−280043(JP,A)
【文献】 特開昭61−215415(JP,A)
【文献】 特開平07−042547(JP,A)
【文献】 特開平08−326531(JP,A)
【文献】 実開昭62−143020(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01N 1/00−99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属によって形成され、エンジンから排出された排気が流入する流入口と、前記流入口から流入した前記排気を外部に流出させる流出口とを有するマニホルド本体と、
前記排気の熱に対する耐熱性を有するとともに可撓性を有する布材によって形成され、前記マニホルド本体内に収容されて前記流入口から前記流出口までの間で筒状に延び、内部で前記排気を案内する筒体とを備えた排気マニホルドの製造方法であって、
前記マニホルド本体と、紐状をなす牽引部材とを準備するとともに、前記牽引部材を前記マニホルド本体内に挿通し、前記牽引部材の一端を前記流出口の外部に位置させる一方、前記牽引部材の他端を前記流入口の外部に位置させる工程と、
前記マニホルド本体の外部で前記筒体を撓ませることにより、前記筒体を初期状態よりも小さい収縮状態とする工程と、
前記流出口の外部において、前記牽引部材の前記一端を前記収縮状態にある前記筒体に接続する工程と、
前記流入口の外部から前記牽引部材の前記他端を牽引することにより、前記収縮状態にある前記筒体を前記流出口から前記マニホルド本体内に進入させつつ、前記マニホルド本体内に前記筒体を収容する工程と、
前記マニホルド本体内に収容された前記筒体を前記収縮状態から前記初期状態に復元する工程とを備えていることを特徴とする排気マニホルドの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は排気マニホルドの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に従来の排気マニホルドが開示されている。この排気マニホルドは、マニホルド本体と筒体とを備えている。マニホルド本体は、金属によって形成されており、複数の流入口と1つの流出口とを有している。筒体は、マニホルド内に収容されおり、各流入口から流出口まで筒状に延びている。筒体はセラミック製の剛体である。
【0003】
この排気マニホルドはエンジンに装着される。これにより、各流入口には、エンジンから排出された排気が流入する。そして、この排気は、筒体の内部を流通することにより、流出口まで案内される。こうして、排気は流出口から排気マニホルドの外部に流出する。
【0004】
ところで、エンジンから排出された排気は高温となることから、排気マニホルドには、排気の熱に対する耐熱性が要求される。この点、特許文献1記載の排気マニホルドは、筒体がセラミック製であることから、筒体によって排気の熱に対する耐熱性を確保することができる。このため、この排気マニホルドは、排気の熱に対する耐熱性を発揮する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開平6−63822号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、排気マニホルドが設けられる車両等の軽量化を図るため、排気マニホルドには軽量化が要求される。この点、上記従来の排気マニホルドは、筒体がセラミック製の剛体であり、筒体自体が相応の重量を有することから、軽量化を実現することが難しい。
【0007】
また、この排気マニホルドでは、金属製のマニホルド本体と、セラミック製の筒体とで熱膨張係数が異なる。このため、マニホルド本体が熱変形することで、その際の応力が筒体に作用する。これにより、マニホルド本体内で筒体が損傷することも懸念される。
【0008】
本発明は、上記従来の実情に鑑みてなされたものであって、排気の熱に対する耐熱性を確保しつつ、軽量化を実現可能であるとともに、高い耐久性を発揮可能な排気マニホルドを提供することを解決すべき課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の排気マニホルドは、金属によって形成され、エンジンから排出された排気が流入する流入口と、前記流入口から流入した前記排気を外部に流出させる流出口とを有するマニホルド本体と、
前記マニホルド本体内に収容されて前記流入口から前記流出口までの間で筒状に延び、内部で前記排気を案内する筒体とを備え、
前記筒体は、前記排気の熱に対する耐熱性を有するとともに可撓性を有する布材によって形成されいることを特徴とする。
【0010】
本発明の排気マニホルドでは、筒体を形成する布材が排気の熱に対する耐熱性を有しているとともに可撓性を有している。このため、この布材によって形成された筒体は、排気の熱に対する耐熱性を確保できる。ここで、この排気マニホルドでは、筒体が布材で形成されるため、例えば、筒体をセラミックの剛体で形成する場合に比べて、筒体を軽量化することができる。
【0011】
また、この筒体は可撓性を有することから、たとえマニホルド本体が熱変形しても、筒体はマニホルド本体内で変形することができる。つまり、この排気マニホルドでは、マニホルド本体が熱変形し、その際の応力が筒体に作用すれば、筒体はマニホルド本体内で撓むことで自己に作用する応力を逃がすことができる。この結果、この排気マニホルドでは、マニホルド本体が熱変形した場合であっても、それによって筒体が損傷し難い。
【0012】
したがって、本発明の排気マニホルドは、排気の熱に対する耐熱性を確保しつつ、軽量化を実現可能であるとともに、高い耐久性を発揮可能である。
【0013】
特に、本発明の排気マニホルドは、筒体がマニホルド本体内に収容されることで、マニホルド本体が筒体の外側に位置する。これにより、たとえ筒体から排気が漏れたとしても、その排気は筒体とマニホルド本体との間に止まるため、排気マニホルドの外部に漏れることがない。
【0014】
マニホルド本体と筒体との間には、マニホルド本体と筒体とを離間させる空間が形成されていることが好ましい。この場合には、空間内に存在する空気の断熱効果により、筒体内を流通する排気の熱がマニホルド本体に伝わり難くなる。これにより、排気がマニホルド本体を通じて外部に放熱され難くなるため、筒体内を流通する排気が不必要に冷却されることを防止できる。さらに、空間によってマニホルド本体と筒体とが離間することで、排気が筒体内を流通する際の騒音がマニホルド本体の外部に漏れることを抑制できる。
【0015】
また、空間内には、排気の熱に対する耐熱性を有するウィスカが充填されていることが好ましい。この場合には、筒体内を流通する排気の熱をマニホルド本体により伝わり難くすることができる。また、空間内に充填されたウィスカによって、筒体内を排気が流通する際に生じる騒音をマニホルド本体の外部により漏れ難くすることができる。
【0016】
マニホルド本体と筒体との間には、マニホルド本体と筒体とを離間させる離間部材が設けられていることが好ましい。この場合には、マニホルド本体と筒体との間に空間を好適に形成することが可能となる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の排気マニホルドは、排気の熱に対する耐熱性を確保しつつ、軽量化を実現可能であるとともに、高い耐久性を発揮可能である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1は、実施例1の排気マニホルドを示す断面図である。
図2図2は、実施例1の排気マニホルドに係り、マニホルド本体内に筒体を収容する状態を示す断面図である。
図3図3は、実施例1の排気マニホルドに係り、図1のA−A断面を示す断面図である。
図4図4は、実施例2の排気マニホルドに係り、図3と同方向の断面を示す断面図である。
図5図5は、実施例3の排気マニホルドに係り、図3と同方向の断面を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を具体化した実施例1〜3を図面を参照しつつ説明する。
【0020】
(実施例1)
図1に示すように、実施例1の排気マニホルドは、マニホルド本体1と、筒体3とを備えている。この排気マニホルドは、車両のエンジン100に装着されてエンジンルームER内に配置されている。なお、図1では説明を容易にするため、エンジン100を簡略化して図示しているとともに、仮想線で示している。
【0021】
図1では、エンジン100に装着された際の排気マニホルドの姿勢を基準にして、前後方向及び左右方向を規定している。そして、図2以降では、図1に対応して前後方向及び左右方向を規定している。なお、前後方向及び左右方向は一例であり、排気マニホルドの姿勢によって適宜変更される。
【0022】
図1及び図2に示すマニホルド本体1は鋳鉄の鋳造によって成形されており、外周面1aと内周面1bとが形成された略円筒状をなしている。また、マニホルド本体1は、第1〜4流入口11a〜11dと、流出口11eとを有している。第1〜4流入口11a〜11dは、それぞれ排気マニホルド1の右側、すなわち、エンジン100側に配置されており、前方から後方に向かって第1流入口11a、第2流入口11b、第3流入口11c及び第4流入口11dの順で整列している。第1〜4流入口11a〜11dは、いずれも同一の構成であり、内周面1bと連続しつつ、エンジン100側に向かって開口している。また、内周面1bにおいて、第1流入口11aの左側には第1凹部111が環状に形成されており、第2流入口11bの左側には第2凹部112が環状に形成されている。同様に、内周面1bにおいて、第3流入口11cの左側には第3凹部113が環状に形成されており、第4流入口11dの左側には第4凹部114が環状に形成されている。
【0023】
流出口11eは、マニホルド本体1の左側、すなわち、第1〜4流入口11a〜11dの反対側に位置しており、マニホルド本体1の前後方向の略中央に配置されている。流出口11eは、内周面1bと連続しつつ、第1〜4流入口11a〜11dの反対側に向かって開口している。流出口11eは、第1〜4流入口11a〜11dとそれぞれ連通している。また、内周面1bにおいて、流出口11eの右側には第5凹部115が環状に形成されている。なお、マニホルド本体1は、排気マニホルドがエンジン100に装着される位置や流出口11eに接続されるマフラー101の位置等に応じて、形状を適宜設計可能である。また、マニホルド本体1を他の金属で形成しても良い。
【0024】
図1に示すように、筒体3はマニホルド本体1内に収容されている。この筒体3は、排気の熱に対する耐熱性を有するとともに可撓性を有する布材によって形成されている。この排気マニホルドでは、布材として公用品のセラミック布が採用されている。このセラミック布は、マニホルド本体1よりも小型であって、マニホルド本体1と略相似形状に形成されている。これにより、筒体3は、マニホルド本体1よりも小型でマニホルド本体1と略相似形状をなしている。より具体的には、筒体3は、外周面3aと内周面3bとが形成され、マニホルド本体1の第1〜4流入口11a〜11dから流出口11eまで筒状に延びている。また、筒体3は、内周面3bとそれぞれ連続する第1〜4流入案内部31a〜31dと流出案内部31eとを有している。第1〜4流入案内部31a〜31dは筒体3の右端側に位置しており、それぞれ第1〜4流入口11a〜11d内に配置されている。第1〜4流入案内部31a〜31dは、いずれも同一の構成であり、第1〜4流入口11a〜11dと同様に、エンジン100側に向かって開口している。流出案内部31eは筒体3の左端側に位置しており、流出口11e内に配置されている。流出案内部31eは、流出口11eと同方向、つまり、第1〜4流入案内部31a〜31dの反対側に向かって開口している。流出案内部31eは、第1〜4流入案内部31a〜31dとそれぞれ連通している。なお、図1では、説明を容易にするため、マニホルド本体1及び筒体3の厚さを誇張して図示している。図2〜5についても同様である。
【0025】
また、図1に示すように、第1〜4流入案内部31a〜31d内には、それぞれ第1〜4サークリップ5a〜5dが設けられている。さらに、流出案内部31e内には、第5サークリップ5eが設けられている。第1〜5サークリップ5a〜5eは、それぞれ第1〜5凹部111〜115内に嵌め込まれている。これらの第1〜5サークリップ5a〜5eについての詳細は後述する。
【0026】
筒体3の外周面3aには、複数のスペーサ7が設けられている。各スペーサ7は本発明における「離間部材」の一例である。各スペーサ7は、セラミック製の糸を球状に纏めることで形成されている。各スペーサ7は、外周面3aに縫い止められることで、外周面3aに取り付けられている。なお、各スペーサ7の形状、個数及び材質は適宜設計することができる。
【0027】
また、図1及び図3に示すように、この排気マニホルドでは、マニホルド本体1内に筒体3が収容された状態で、マニホルド本体1の内周面1bと筒体3の外周面3aとの間に、空間9が形成されている。空間9内には空気が存在している。これにより、マニホルド本体1内において空間9が形成された箇所では、マニホルド本体1から筒体3が離間しており、マニホルド本体1の内周面1bと筒体3の外周面3aとが非接触となっている。つまり、空間9が形成された箇所では、マニホルド本体1と筒体3との間に空気の層が存在している。
【0028】
この排気マニホルドは、以下のようにして製造される。まず初めに、図2に示すように、上記のマニホルド本体1を準備するとともに、第1〜4牽引部材13a〜13dを準備する。第1牽引部材13aは、紐状をなす第1本体部131aと、第1本体部131aの一端側に固定された第1保持部材131bとからなる。第2〜4牽引部材13b〜13dも第1牽引部材13aと同様の構成であり、それぞれ第2〜4本体部132a〜134aと、第2〜4本体部132a〜134aの各一端側に固定された第2〜4保持部材132b〜134bとからなる。
【0029】
次に、マニホルド本体1の第1流入口11aから流出口11eへ第1牽引部材13aを通して、流出口11eの外側に第1保持部材131bを位置させる。同様に、第2流入口11bから流出口11eへ第2牽引部材13bを通して、流出口11eの外側に第2保持部材132bを位置させる。また、第3流入口11cから流出口11eへ第3牽引部材13cを通して、流出口11eの外側に第3保持部材133bを位置させる。さらに、第4流入口11dから流出口11eへ第4牽引部材13dを通して、流出口11eの外側に第4保持部材134bを位置させる。
【0030】
そして、筒体3の第1〜4流入案内部31a〜31dに第1〜4保持部材131b〜134bをそれぞれ保持させることにより、マニホルド本体1の外側で筒体3と第1〜4牽引部材13a〜13dとを連結させる。
【0031】
次に、筒体3を構成する布材、すなわち、セラミック布が有する可撓性の性質を利用し、筒体3が流出口11e内を通過可能となるように、筒体3を図1に示す初期状態よりも小さく纏めることにより、図2に示す収縮状態とする。この状態で、同図の白色矢印で示すように、第1〜4流入口11a〜11dの外側から第1〜4本体部131a〜134aをそれぞれマニホルド本体1の右側に牽引する。これにより、筒体3が流出口11e側からマニホルド本体1内に進入する。そして、第1〜4本体部131a〜134aをそれぞれマニホルド本体1の右側にさらに牽引することにより、第1流入案内部31aは、第1牽引部材13aによって第1流入口11aまで導かれる。同様に、第2流入案内部31bは、第2牽引部材13bによって第2流入口11bまで導かれ、第3流入案内部31cは、第3牽引部材13cによって第3流入口11cまで導かれる。また、第4流入案内部31dは、第4牽引部材13dによって第4流入口11dまで導かれる。
【0032】
このように、第1〜4流入案内部31a〜31dがそれぞれ第1〜4流入口11a〜11dに導かれることにより、流出案内部31eは流出口11e内に位置する。こうして、筒体3がマニホルド本体1内に収容される。
【0033】
次に、第1〜4流入案内部31a〜31d内に、それぞれ第1〜4サークリップ5a〜5dを製品状態である基本形状から弾性変形させつつ挿入する。これにより、これらの第1〜4サークリップ5a〜5dは、第1〜4凹部111〜114が存在する位置で基本形状に復元する。この際、図1に示すように、第1サークリップ5aは、第1流入案内部31aの一部を第1凹部111内に挟み込んだ状態で、第1凹部111内に嵌め込まれる。第2〜4サークリップ5b〜5dも同様に、第2〜4流入案内部31b〜31dの一部をそれぞれ第2〜4凹部112〜114内に挟み込んだ状態で、第2〜4凹部112〜114内に嵌め込まれる。また、流出案内部31e内に第5サークリップ5eを基本形状から弾性変形させつつ挿入する。そして、第5サークリップ5eも同様に、第5凹部115が存在する位置で基本形状に復元することで、流出案内部31eの一部を第5凹部115内に挟み込んだ状態で、第5凹部115内に嵌め込まれる。これらにより、第1〜5サークリップ5a〜5eが固定部材として機能し、第1〜4流入案内部31a〜31dが第1〜4流入口11a〜11d内にそれぞれ固定されるとともに、流出案内部31eが流出口11e内に固定される。こうして、筒体3がマニホルド本体1から抜け止めされる。この状態で第1〜4保持部材131a〜134aをそれぞれ第1〜4流入案内部31a〜31dから取り外し、筒体3と第1〜4牽引部材13a〜13dとの連結を解除する。なお、筒体3と第1〜4牽引部材13a〜13dとの連結を解除した後に、第1〜5サークリップ5a〜5eによって、筒体3のマニホルド本体1からの抜け止めを行っても良い。また、第1〜5サークリップ5a〜5e以外の部材によって、第1〜4流入案内部31a〜31dを第1〜4流入口11a〜11d内にそれぞれ固定するとともに、流出案内部31eを流出口11e内に固定しても良い。
【0034】
次に、マニホルド本体1が図示しない給気装置に取り付けられることにより、第1〜4流入口11a〜11dに給気装置から圧縮空気が供給される。この圧縮空気は、筒体3内を流通することで第1〜4流入口11a〜11dから流出口11eに案内され、流出口11eからマニホルド本体1の外部に流出する。このように、圧縮空気が筒体3内を流通することで筒体3が膨らむため、筒体3は収縮状態から初期状態に復元する。これにより、図1及び図3に示すように、各スペーサ7がマニホルド本体1の内周面1bに当接する。このため、内周面1bと筒体3の外周面3aとの間に空間9が形成される。この後、マニホルド本体1を給気装置から取り外すことで、排気マニホルドが完成する。
【0035】
このように製造された排気マニホルドは、エンジン100に装着されることにより、車両のエンジンルームER内に配置される。また、第1〜4流入口11a〜11dは、エンジン100の排気ポート(図示略)に連通する。さらに、排気マニホルドでは、流出口11eがマフラー101に接続される。これらのエンジン100及びマフラー101は公用品であり、構成に関する詳細な説明を省略する。また、図1では、説明を容易にするため、マフラー101についても仮想線で図示している。なお、流出口11eを過給器に接続しても良い。
【0036】
そして、排気マニホルドでは、エンジン100が作動することにより、図1の破線矢印で示すように、エンジン100から排出された排気が第1〜4流入口11a〜11d内にそれぞれ流入する。第1〜4流入口11a〜11d内に流入した排気は、第1〜4流入案内部31a〜31d内から流出案内部31e内まで流通することにより、筒体3によって流出口11eに案内される。そして、流出口11eに至った排気は、流出口11eから排気マニホルドの外部であるマフラー101へ流通し、マフラー101を経て車両の外部に排出される。
【0037】
この排気マニホルドでは、筒体3を形成するセラミック布が排気の熱に対する耐熱性を有しているとともに可撓性を有している。このため、筒体3では、排気の熱に対する耐熱性が確保されている。特に、この排気マニホルドでは、セラミック布を採用しているため、筒体3では、セラミックの剛体である場合と同等の耐熱性を確保することが可能となっている。また、この排気マニホルドでは、マニホルド本体1内に筒体3を収容した状態で、マニホルド本体1の内周面1bと筒体3の外周面3aとの間には空間9が形成されており、この空間9が存在する箇所では、マニホルド本体1と筒体3とが離間している。これにより、空間9内に存在する空気の断熱効果により、筒体3内を流通する排気の熱がマニホルド本体1に伝わり難くなっている。
【0038】
さらに、この排気マニホルドでは、筒体3がセラミック布で形成されるため、例えば、筒体3をセラミックの剛体で形成する場合に比べて、筒体3を軽量化することが可能となっている。
【0039】
また、この筒体3は可撓性を有することから、たとえマニホルド本体1が熱変形しても、筒体3はマニホルド本体1内で変形することができる。つまり、この排気マニホルドでは、マニホルド本体1が熱変形し、その際の応力が筒体3に作用すれば、筒体3はマニホルド本体1内で撓むことで自己に作用する応力を逃がすことができる。この結果、この排気マニホルドでは、マニホルド本体1が熱変形した場合であっても、それによって筒体3が損傷し難くなっている。
【0040】
したがって、実施例1の排気マニホルドは、排気の熱に対する耐熱性を確保しつつ、軽量化を実現可能であるとともに、高い耐久性を発揮可能である。
【0041】
特に、この排気マニホルドは、筒体3がマニホルド本体1内に収容されることで、マニホルド本体1が筒体3の外側に位置する。これにより、たとえ筒体3から排気が漏れたとしても、その排気は筒体3とマニホルド本体1との間、すなわち、空間9内に止まるため、排気マニホルドの外部であるエンジンルームER内に漏れることがない。
【0042】
また、この排気マニホルドは、空間9内に空気が存在することから、この空気による断熱効果によって、筒体3内を流通する排気がマニホルド本体1を通じてエンジンルームER内に放熱され難くなっている。このため、この排気マニホルドでは、筒体3内を流通する排気が不必要に冷却されることを防止することが可能となっている。これにより、上記のように、流出口11eがマフラー101に接続している場合には、マフラー101内に設けられた触媒(図示略)を排気の熱によって必要な温度まで早期に昇温させることが可能となっている。また、流出口11eが過給器に接続している場合には、過給器を好適に作動させることができるため、エンジン100の出力をより好適に向上させることができる。
【0043】
さらに、この排気マニホルドは、空間9を形成することにより、筒体3内を排気が流通する際の騒音がマニホルド本体1からエンジンルームER内に漏れることを抑制することが可能となっている。このため、この排気マニホルドでは、静粛性も優れている。
【0044】
また、この排気マニホルドでは、マニホルド本体1の内周面1bと筒体3の外周面3aとの間に複数のスペーサ7が設けられているため、これらの各スペーサ7によって、マニホルド本体1の内周面1bと筒体3の外周面3aとの間に空間9を好適に形成することが可能となっている。さらに、各スペーサ7がセラミック製の糸によって形成されているため、各スペーサ7自体も軽量となっている。また、この排気マニホルドでは、筒体3内を流通する排気の熱が各スペーサ7を通じてマニホルド本体1に伝わり難くなっている。
【0045】
(実施例2)
実施例2の排気マニホルドは、実施例1の排気マニホルドにおける筒体3に換えて、図4に示す筒体4を備えている。筒体4は、第1筒体41と、第1筒体41内に設けられた第2筒体43とで構成されており、第1筒体41と第2筒体43との二重構造となっている。さらに、この排気マニホルドでは、マニホルド本体1と筒体4との間にウィスカ15が設けられている。ウィスカ15は、排気の熱に対する耐熱性を有している。
【0046】
上記の筒体3と同様、筒体4を構成する第1筒体41及び第2筒体43もセラミック布で形成されている。これにより、第1筒体41及び第2筒体43も耐熱性及び可撓性を有している。第1筒体41は、外周面41aと内周面41bとが形成された略円筒状をなしている。この第1筒体41の形状を含む各構成は、筒体3と同一である。また、筒体3と同様、第1筒体41の外周面41aには複数のスペーサ7が取り付けられている。
【0047】
第2筒体43は、外周面43aと内周面43bとが形成された略円筒状をなしている。第2筒体43は、第1筒体41よりも小型であって、第1筒体41と相似形状に形成されている。これにより、第2筒体43の各構成は、第1筒体41と同様となっている。さらに、第2筒体43の外周面43aには、複数のスペーサ17が取り付けられている。各スペーサ17もセラミック製の糸を球状に纏めることで形成されており、外周面43aに縫い止められている。また、各スペーサ17は、各スペーサ7よりも小型に形成されている。なお、各スペーサ17の形状、個数及び材質は適宜設計することができる。また、各スペーサ7と各スペーサ17とを異なる材質で形成しても良い。
【0048】
詳細な図示を省略するものの、この排気マニホルドを形成するに当たって、筒体4は、第2筒体43が第1筒体41内に設けられた状態で、筒体3と同様に初期状態から収縮状態とされる。そして、筒体4は、実施例1の排気マニホルドと同様の方法でマニホルド本体1内に収容されている。この際、マニホルド本体1と筒体4との間に上記のウィスカ15が充填される。そして、筒体4では、第2筒体43内に圧縮空気を流通させることで第2筒体43が初期状態に復元し、各スペーサ17が第1筒体41の内周面41bに当接する。これにより、第1筒体41の内周面41bと第2筒体43の外周面43aとの間に筒内空間19が形成される。また、筒体4では、この筒内空間19内にも圧縮空気を流通させる。これにより、第1筒体41も初期状態に復元し、各スペーサ7がマニホルド本体1の内周面1bに当接する。こうして、上記の筒体3と同様、マニホルド本体1と筒体4との間、より詳細には、マニホルド本体1の内周面1bと第1筒体41の外周面41aとの間に空間9が形成される。
【0049】
ここで、この排気マニホルドでは、マニホルド本体1と筒体4との間にウィスカ15が設けられているため、空間9内には、空気だけでなくウィスカ15が充填された状態となる。そして、筒体4も筒体3と同様、第1〜5サークリップ5a〜5eによって、マニホルド本体1からの抜け止めが行われる。こうして、排気マニホルドが完成する。この排気マニホルドにおける他の構成は、実施例1の排気マニホルドと同様であり、同一の構成ついては同一の符号を付して構成に関する詳細な説明を省略する。
【0050】
この排気マニホルドでは、第1〜4流入口11a〜11d内に流入した排気は、筒体4によって流出口11eに案内される。この際、排気は第2筒体43内を流通する。ここで、第2筒体43と第1筒体41との間には、筒内空間19が存在するため、第1筒体41と第2筒体43とが離間し、第2筒体43内を流通する排気の熱が第1筒体41に伝わり難くなっている。このように、この排気マニホルドでは、筒体4が第1筒体41と第2筒体43との二重構造となることで、排気の熱に対して、より高い耐熱性を発揮することが可能となっている。また、筒体4が第1筒体41と第2筒体43との二重構造となることで、排気が筒体4からより漏れ出し難くなっている。ここで、第1筒体41及び第2筒体43がともにセラミック布で形成されているため、このような二重構造であっても、筒体4を軽量化することができる。
【0051】
さらに、この排気マニホルドでは、空間9内に充填されたウィスカ15が断熱効果を発揮する。このため、実施例1の排気マニホルドに比べて、この排気マニホルドでは、筒体4内を流通する排気の熱がマニホルド本体1により伝わり難くなっている。このため、この排気マニホルドでは、筒体4内を流通する排気がマニホルド本体1を通じてエンジンルームER内により放熱され難く、また、筒体4内を流通する排気がより冷却され難くなっている。さらに、ウィスカ15が排気の熱に対する耐熱性を有しているため、ウィスカ15は、筒体4内を流通する排気の熱によって劣化し難くなっている。
【0052】
また、空間9内にウィスカ15が充填されることにより、筒体4内を排気が流通する際に生じる騒音がエンジンルームER内により漏れ難くなっている。このため、この排気マニホルドでは、実施例1の排気マニホルドに比べて、より高い静粛性を発揮することが可能となっている。この排気マニホルドにおける他の作用は、実施例1の排気マニホルドと同様である。
【0053】
(実施例3)
図5に示すように、実施例3の排気マニホルドでは、実施例1の排気マニホルドと異なり、マニホルド本体1の内周面1bに複数の凸部1cが一体で形成されている。各凸部1cは、内周面1bから筒体3側に向かって略半球状に突出している。各凸部1cも本発明における「離間部材」の一例である。なお、各凸部1cの形状及び個数は適宜設計することができる。
【0054】
また、この排気マニホルドでは、筒体3の外周面3aにスペーサ7が取り付けられていない。そして、この排気マニホルドでは、各凸部1cが筒体3の外周面3aに当接することにより、マニホルド本体1と筒体3とが離間する。こうして、この排気マニホルドでも、マニホルド本体1の内周面1bと筒体3の外周面3aとの間に空間9が形成されている。なお、実施例1の排気マニホルド同様に、筒体3の外周面3aにスペーサ7を取り付けることにより、各凸部1c及び各スペーサ7でマニホルド本体1と筒体3とを離間させて空間9を形成しても良い。この排気マニホルドにおける他の構成は、実施例1の排気マニホルドと同様である。
【0055】
この排気マニホルドでは、マニホルド本体1を鋳造する際に、各凸部1cを同時に形成することができる。このため、筒体3の外周面3aに各スペーサ7を取り付ける場合に比べて、この排気マニホルドでは、製造をより容易化することが可能となっている。この排気マニホルドにおける他の作用は、実施例1の排気マニホルドと同様である。
【0056】
以上において、本発明を実施例1〜3に即して説明したが、本発明は上記実施例1〜3に制限されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更して適用できることはいうまでもない。
【0057】
例えば、実施例1〜3の排気マニホルドの各構成を適宜組み合わせることによって、排気マニホルドを形成しても良い。
【0058】
また、実施例1の排気マニホルドでは筒体3がセラミック布で形成されているが、これに限らず、排気の熱に対する耐熱性及び可撓性を有する布材であれば、セラミック布以外の布材で筒体3を形成しても良い。実施例2、3の排気マニホルドについても同様である。
【0059】
さらに、実施例1の排気マニホルドでは、マニホルド本体1が第1〜4流入口11a〜11dを有している。しかし、これに限らず、エンジン100の構成に応じて、マニホルド本体1は第1流入口11aのみを有していても良く、また、第1〜4流入口11a〜11dに加えて流入口を有していても良い。この際、筒体3では、マニホルド本体1が有する流入口の数に応じて、流入案内部が設けられることとなる。実施例2、3の排気マニホルドについても同様である。
【0061】
さらに、実施例1の排気マニホルドでは、筒体3内に圧縮空気を流通させることで、収縮状態にある筒体3を初期状態に復元させている。しかし、これに限らず、エンジン100から排出された排気を筒体3内に流通させることで、収縮状態にある筒体3を初期状態に復元させても良い。実施例2、3の排気マニホルドについても同様である。
【0062】
また、実施例1の排気マニホルドでは、筒体3がマニホルド本体1の第1〜4流入口11a〜11dから流出口11eまで筒状に延びている。しかしこれに限らず、筒体3は、マニホルド本体1の第1〜4流入口11a〜11dから流出口11eまでの間で筒状に延びていれば良い。このため、実施例1の排気マニホルドについて、第1〜4流入口11a〜11dから流出口11eまでの間で、排気の熱に対する耐熱性が特に要求される箇所にのみ、筒体3が設けられる構成としても良い。実施例2、3の排気マニホルドについても同様である。
【0063】
また、実施例2の排気マニホルドにおいて、筒体4は二重構造に限らず、三重構造や四重構造としても良い。また、第1〜4流入口11a〜11dから流出口11eまでの間において、排気の熱に対する耐熱性が特に要求される箇所にのみ、筒体4を二重構造としたり、三重構造や四重構造としたりしても良い。さらに、筒内空間19を形成せずに筒体4を構成しても良い。
【0064】
また、実施例2の排気マニホルドにおいて、ウィスカ15は、必ずしも空間9の全体に充填される必要はなく、第1〜4流入口11a〜11dから流出口11eまでの間において、排気の熱に対する耐熱性が特に要求される箇所にのみ、ウィスカ15を空間9内に充填する構成としても良い。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明は、高温の流体を流通させる配管等に利用可能である。
【符号の説明】
【0066】
1…マニホルド本体
1c…凸部(離間部材)
3…筒体
7…スペーサ(離間部材)
9…空間
11a〜11d…第1〜4流入口(流入口)
11e…流出口
15…ウィスカ
100…エンジン
図1
図2
図3
図4
図5