(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を具体化した一実施形態を図面に従って説明する。
図1に示すように、車両10は、全方向移動車両である。車両10は、機台20と4つの車輪30,31,32,33を備えている。4つの車輪30,31,32,33は、機台20に設けられている。詳しくは、平面視において機台20の中心に対し90°毎に車輪30,31,32,33が配置されている。各車輪30,31,32,33は、それぞれ全方向車輪であって、具体的にはオムニホイールであり、各車輪30,31,32,33は、全方向に駆動可能に構成された車輪である。即ち、各車輪において、車輪の円周方向において自由回転するローラ(樽型を有する小輪)が複数設けられ、前後・左右に自由に動くことができる。このように構成された車輪を4つ用いて車軸を変動させないで機台を全方向に可動できるようになっている。
【0012】
機台20にはセンサ65が装着されている。センサ65は、距離センサであり、レーザレンジファインダ(LRF)を使用している。センサ65は機台20に固定されており、水平方向において所定角度となる視界を有する。
【0013】
図2に示すように、車両10は、モータ40,41,42,43と駆動回路50を備える。モータ40,41,42,43及び駆動回路50は機台20に搭載されている。モータ40の出力軸が車輪30と駆動連結されており、モータ40により車輪30を駆動することができる。同様に、モータ41の出力軸が車輪31と駆動連結されており、モータ41により車輪31を駆動することができる。モータ42の出力軸が車輪32と駆動連結されており、モータ42により車輪32を駆動することができる。モータ43の出力軸が車輪33と駆動連結されており、モータ43により車輪33を駆動することができる。
【0014】
駆動回路50は、コントローラ60と駆動回路61,62,63,64を有する。コントローラ60はセンサ65から車両周辺の物体の検出信号を入力する。
駆動回路61によりモータ40が駆動され、このモータ40の駆動により車輪30が駆動される。駆動回路62によりモータ41が駆動され、このモータ41の駆動により車輪31が駆動される。駆動回路63によりモータ42が駆動され、このモータ42の駆動により車輪32が駆動される。駆動回路64によりモータ43が駆動され、このモータ43の駆動により車輪33が駆動される。
【0015】
コントローラ60は駆動回路61,62,63,64を介してモータ40,41,42,43を制御して各車輪30,31,32,33を駆動させる。これにより、機台20を前後方向、左右方向及び回転方向に移動させることができる。
【0016】
このようにして、全方向移動車両である車両10は、全方向車輪30〜33と、センサ65と、制御部としてのコントローラ60を有し、センサ65の計測結果に基づいてコントローラ60により全方向車輪30〜33を駆動制御してセンサ65より検出した追尾対象を追尾する。追尾対象は、人(追尾対象者)でも車両等の物(追尾対象物)でもよい。センサ65は、追尾対象の位置を検出するとともに移動時の障害物の位置を検出する。
【0017】
次に、作用について説明する。
全方向移動車両である4輪オムニホイール車両における走行の際の動きとして、並進、旋回、斜行により自由な動作が可能であり、例えば、
図7(a),(b),(c),(d),(e)に示すように駆動することができる。
図7(a)に示すように、4つの車輪30,31,32,33のうちの車輪30を正転させ、車輪31を逆転させ、車輪32を逆転させ、車輪33を正転させることにより、機台20を前進させることができる。
図7(b)に示すように、4つの車輪30,31,32,33のうちの車輪30を停止させ、車輪31を逆転させ、車輪32を停止させ、車輪33を正転させることにより、機台20を斜行させることができる。
図7(c)に示すように、4つの車輪30,31,32,33のうちの車輪30を逆転させ、車輪31を逆転させ、車輪32を正転させ、車輪33を正転させることにより、機台20を横行させることができる。
図7(d)に示すように、4つの車輪30,31,32,33のうちの車輪30を正転させ、車輪31を正転させ、車輪32を正転させ、車輪33を正転させることにより、機台20を旋回させることができる。
【0018】
コントローラ60は、
図6に示す処理を示す実行する。
図6に示す処理は一定時間ごとに行われる。
図6において、追尾対象70を登録した後、コントローラ60はステップS100でセンサ65で追尾対象70が検知可能か否か判定して、検知可能であればステップS101に移行して追尾対象70に追従するように移動する。
【0019】
一方、コントローラ60はステップS100で追尾対象70が検知不可能であると、即ち、追尾対象をセンサ65により検知できなくなった場合には、ステップS102に移行して見失った位置を目的地(第一目的地)に設定し、ステップS103で目的地に向かって移動する。つまり、
図3に示すように、追尾対象を最後に検出した位置へと移動すべく、見失った位置を目的地にして原則、経路R10で示すごとく直線的に走行する(全方向車輪30〜33を駆動制御する)。
【0020】
そして、コントローラ60はステップS104でセンサ65により目的地の障害物の有無を判定して障害物が有るとステップS105で追尾対象70を最後に検出した位置の周辺に目的地を再設定する。即ち、前回設定の目的地とは異なる周辺位置を、新しい目的地(第二目的地)とする。コントローラ60はステップS105を処理した後ステップS103に戻って目的地に向かって移動する。つまり、
図3に示すように、見失った位置から目的地に向かう際に目的地に障害物が有ると見失った位置の周辺位置に目的地を再設定して走行する。
【0021】
一方、コントローラ60はステップS104で目的地に障害物が無いとステップS106に移行して追尾対象70の予測位置を算出する。つまり、
図4に示すように、見失った後において例えば所定時間ごとに追尾対象70の予測位置を算出する。
【0022】
そして、コントローラ60は、ステップS107で予測位置への車両姿勢の変更を実行して、移動中に機台20の向きを変えてセンサ65の向きを予測位置へと向けてセンサ65で追尾対象70を再検知できるようにする(全方向車輪30〜33を駆動制御する)。
図5においては、車両10の位置X1において追尾対象70の位置P1で見失い、車両10の位置X2において追尾対象70の予測位置P2を向き、車両10の位置X3において追尾対象70の予測位置P3を向き、車両10の位置X4において追尾対象70の予測位置P4を向き、車両10の位置X5において追尾対象70の予測位置P5を向く。
【0023】
なお、
図5では車両10の位置X4は障害物80が移動等によりそれまでの位置には存在しなくなった場合を想定している。
詳しく説明する。
【0024】
図5に示すように、全方向へ移動可能な車両(オムニホイール車両)を用いて、追尾対象70をセンサ65の視野方向である正面で捉えるように旋回を制御する。つまり、2輪駆動では、車両の進行方向とセンサの向きが一致してしまう。これに対し全方向移動車両では、
図7(e)に示すように、4つの車輪30,31,32,33のうちの車輪30を正転させ、車輪31を所定の速度で回転させ、車輪32を所定の速度で回転させ、車輪33を正転させる。こうすることにより、機台20を前進させながら旋回させるといった並進と旋回を組み合わせることで旋回しながら並進することも可能である。このように全方向移動車両では、車両を回転させながら移動することが可能であり、
図5に示すように、追尾対象70を常にセンサ65の検出方向である正面に捉えるように回転させながら移動することができる。このように、センサ65の視界も考慮して移動を行うこととし、全方向移動車両における特性を活かして、コントローラ60は、センサ65が追尾対象70の視野内に入るように姿勢を保持するように全方向車輪30,31,32,33を制御する。
【0025】
図6の説明に戻り、コントローラ60はステップS107の処理を実行した後、ステップS108において、登録された追尾対象70の再検知のための動作を行い、ステップS109でセンサ65により追尾対象70が検知可能か否か判定して、検知可能であればステップS101に戻って追尾対象70に追従するように移動する。また、コントローラ60はステップS109で追尾対象70が検知不可能であればステップS110に移行して目的地に到達したか否か判定して目的地に到達していないとステップS103に戻って目的地に向かって移動する。
【0026】
コントローラ60はステップS110において目的地に到達するとステップS111に移行して追尾対象70の再検知のための動作を行い、ステップS112で追尾対象70が検知可能か否か判定して、検知可能であればステップS101に戻って追尾対象70に追従するように移動する。また、コントローラ60はステップS112で追尾対象70が検知不可能であればステップS113に移行して追尾対象70の予測位置を算出し、ステップS114で予測位置を目的地に設定する。そして、コントローラ60はステップS115で目的地に向かって移動し、ステップS116で追尾対象70の再検知のための動作を行い、ステップS117で追尾対象70が検知可能か否か判定して、検知可能であればステップS101に戻って追尾対象70に追従するように移動する。また、コントローラ60はステップS117で追尾対象70が検知不可能であればステップS118に移行して目的地に到達したか否か判定して目的地に到達していないとステップS115に戻って目的地に向かって移動する。
【0027】
コントローラ60はステップS118で目的地に到達するとステップS119で見失ったことをユーザーに通知する。
図8及び
図9は比較例である。
【0028】
図8は、追尾対象の予測位置を目標位置とする手法の説明図である。
図8に示すように追尾対象100が経路R100で移動し、車両110が追尾する場合、障害物120により追尾対象100を見失う前の追尾対象100の速度から、現在の追尾対象100の位置を予測し、その予測位置を目的地として車両110を経路R100で走行する。
【0029】
図9は、障害物120の角で追尾対象を見失った場合の説明図である。
図9において経路R100で示すごとく障害物120の角まで前進し、障害物120の角に到達すると走行方向を変えて走行する。
【0030】
追尾対象と車両の現在位置が
図8のような場合、車両110は追尾対象100の位置に近づけない。つまり、
図8の状況では、車両110は、障害物120と追尾対象100の予測位置から、センサで認識できる既知障害物120の左側から経路R110で示すごとく回り込むように移動する。なぜなら、左側の経路R110のほうが移動経路が短くなるためである。しかしながら、左側の経路R110には、センサでは認識できない未知障害物130が存在し、追尾対象100の予測位置に近づくことができない。このように、追尾対象100の予測位置を目標位置にすると追尾対象100の予測位置に移動できない場合が存在する。
【0031】
一方、
図9のように追尾対象の位置予測を行わないと、障害物の角を曲がった地点までしか追尾対象に近づけない。つまり、
図9の点線の先の位置P100までしか近づけない。そのため、追尾対象100が障害物120の角を曲がった後で、大きく移動すると、追尾対象100と車両110の距離が離れるため追尾対象100の再検知が難しくなる。
【0032】
これに対し、本実施形態においては以下のようになる。
図3に示すように、障害物80を最後に検出した位置を走行経路の第一目的地として走行することにより、追尾対象70まで、確実に、すばやく近づくことができる。
【0033】
目的地までの移動方法は、障害物回避走行ロジック、例えば、ポテンシャル法等を利用する。
追尾対象70と同じ方向を走行することで、未知の障害物81によって追尾対象70に近づけないということがなくなる。これにより、確実に追尾対象70に近づくことができる。
【0034】
もしも、移動中に、第一目的地に障害物等が到来した場合には、(第一)目的地を変更する。具体的には、(第一)目的地の周りで到達可能な位置、例えば、(第一)目的地より前の時刻で、最後に追尾対象70を検知した位置へと変更する。
【0035】
本実施形態の他に、追尾対象70に確実に近づく方法としては、追尾対象70と同じ経路を走行する方法が考えられる。
しかしながら、この方法は、追尾対象70が障害物80に対して外側を大きく周ると(例えば
図9の経路R100を走行すると)、走行経路が長くなり、追尾の効率が悪くなる。それに対し、
図3の本実施形態では、障害物80を最後に検出した位置まで、障害物にぶつからない範囲で、例えば直線的に走行することにより最短距離で移動できるため、追尾対象70へすばやく近づくことができる。
【0036】
追尾対象70を見失ってからの経過時間が長くなると、追尾対象70の再検出が難しいため、追尾対象70へすばやく近づくことのできる
図3の本実施形態では、追尾対象70の再検知には有用である。
【0037】
また、本実施形態では
図5のように全方向駆動車両(10)を使って、追尾対象70の再検知をすばやく行うことができる。詳しく説明する。
二輪駆動車両では、第一目的地に到達し、追尾対象70の予測位置の方向に旋回した後(再検知するための機器(カメラやLRF等)を追尾対象70の方向に向けて)から、追尾対象70の再検知を行う。もしくは、車両の向きを変えるために、大回りで、第一目的地へ移動する。
【0038】
それに対し、本実施形態のように全方向駆動車両(10)では、
図5のように、第一目的地に到達する前に移動と旋回を同時に行うことで、追尾対象70の予測位置に再検知するための機器(カメラやLRF等)を向けることができるため、第一目的地に到達する前から、追尾対象70の再検知が可能となる。よって、二輪駆動車両に比べて、早めに、追尾対象70の再検知が可能となり、追尾対象70を見つけ出す可能性を上げることができる。
【0039】
さらに本実施形態では
図4に示すように追尾対象70の予測位置を最終目的地とし、追尾対象70にさらに近づくことができる。詳しくは、第一目的地に到達した後に、追尾対象70の予測位置を最終目的地として車両10を走行させる。これにより、追尾対象70にさらに近づくことができる。目的地までの移動方法は、ポテンシャル法等を利用する。
【0040】
追尾対象70の予測位置Xeは、追尾対象70を最後に検出したときの追尾対象70の速度V、位置X、追尾対象70を最後に検出してからの経過時間ΔTを使って、
Xe=V・ΔT+X
で表すことができる。
【0041】
図3のごとく障害物80を最後に検出した位置を走行経路の第一目的地とし、追尾対象70の予測位置を最終目的地とすることにより、追尾対象70を最後に検出した位置(第一目的地)を経由する。こうすることにより、確実に追尾対象70に近づくことが可能となるとともに、追尾対象70の走行経路に沿って移動せず、第一目的地と追尾対象70の予測位置のみを目的地とすることで、すばやく追尾対象70の位置まで移動可能となる。
【0042】
上記実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)移動車両10の構成として、全方向車輪30,31,32,33と、センサ65と、制御部としてのコントローラ60を有し、センサ65の計測結果に基づいてコントローラ60により全方向車輪30,31,32,33を駆動制御してセンサ65により検出した追尾対象70を追尾する。コントローラ60は、追尾対象70をセンサ65により検知できなくなった場合に、追尾対象70を最後に検出した位置へと移動するとともに当該移動中に機台20の向きを変えてセンサ65で追尾対象70を再検知すべく全方向車輪30,31,32,33を駆動制御する。よって、追尾対象70をセンサ65により検知できなくなった場合に、追尾対象70を最後に検出した位置へと移動するときにセンサ65で追尾対象70を再検知することが可能となり、追尾対象70をセンサ65により検知できなくなった場合に追尾対象70を速やかに再検知することができる。
【0043】
(2)コントローラ60は、追尾対象70をセンサ65により検知できなくなった場合に、追尾対象70の予測位置を算出し、追尾対象70を最後に検出した位置へと移動するとともに当該移動中に機台20の向きを変えてセンサ65の向きを予測位置へ向けてセンサ65で追尾対象70を再検知すべく全方向車輪30,31,32,33を駆動制御する。よって、検出精度が上がるとともに無駄な機台20の旋回動作がなくなる。
【0044】
(3)コントローラ60は、追尾対象70を最後に検出した位置に障害物があると、追尾対象70を最後に検出した位置の周辺に目的地を再設定する。よって、追尾対象70を最後に検出した位置に障害物がある場合にも最後に検出した位置の周辺に向かって走行して追尾可能となる。
【0045】
実施形態は前記に限定されるものではなく、例えば、次のように具体化してもよい。
○
図5では移動中に機台20の向きを変えてセンサ65の向きを予測位置へ向けたが、これに限らない。予測位置を算出することなく、移動中に機台20を回転させてセンサ65で追尾対象70を再検知するようにしてもよい。
【0046】
○ センサ65はレーザ方式以外のものでもよく、例えば超音波方式のセンサを用いてもよい。さらに、センサ65はカメラでもよい。
○ 全方向移動車両はオムニホイール方式以外のものを用いてもよく、例えば、メカナムホイール方式やオムニボール方式の全方向移動車両を用いてもよい。