(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
[本開示の実施形態の概要]
まず、本開示の実施形態の概要について説明する。本明細書中の結晶学的記載においては、個別方位を[]、集合方位を<>、個別面を()、集合面を{}でそれぞれ示している。また結晶学上の指数が負であることは、通常、”−”(バー)を数字の上に付すことによって表現されるが、本明細書中では数字の前に負の符号を付している。
【0010】
(1)本開示に係る炭化珪素半導体ウエハ100は、炭化珪素基板1と、第1電極17と、絶縁膜15と、第2電極30とを備えている。炭化珪素基板1は、第1主面10と、第1主面10と反対側にある第2主面20とを有する。第1電極17および絶縁膜15は、第1主面10に設けられている。第2電極30は、第2主面20に設けられている。第2主面20には、溝26が設けられている。第2主面20は、溝26によって分離された第1領域21および第2領域22を含む。溝26は、第1領域21に連なる第1側面23と、第2領域22に連なる第2側面25と、第1側面23および第2側面25の各々に連なる底面24とにより規定されている。第2電極30は、第1領域21に接する第1部分31と、第2領域22に接する第2部分32と、底面24に接する第3部分33とを含む。第3部分33は、第1部分31および第2部分32の各々から分離されている。
【0011】
上記(1)に係る炭化珪素半導体ウエハ100においては、第1部分31は、第2部分32から分離されている。そのため、第1部分31および第2部分32の各々と炭化珪素基板1との接触抵抗を測定することができる。つまり、第1部分31および第2部分32の各々の品質管理を行うことができる。また上記(1)に係る炭化珪素半導体ウエハ100においては、第2電極30は、第1領域21に接する第1部分31と、底面24に接する第3部分33とを含んでいる。これにより、第2電極30の一部がエッチングされることで第2電極30がパターニングされる場合と比較して、第2電極30と炭化珪素基板1との接触面積を広く確保することができる。そのため、第2電極30の接触抵抗の増加を抑制することができる。
【0012】
(2)上記(1)に係る炭化珪素半導体ウエハ100において、第1側面23と、第2側面25と、底面24とは、平面形状を有していてもよい。第1側面23と底面24とがなす第1角度θ1と、第2側面25と底面24とがなす第2角度θ2とは、90°以下であってもよい。
【0013】
(3)上記(2)に係る炭化珪素半導体ウエハ100において、第1角度θ1および第2角度θ2は、45°以上65°以下であってもよい。これにより、溝26の幅が第2主面20に向かって狭くなる。そのため、溝26の内部に接合材を設けた際、接合材が炭化珪素基板1から剥離することを抑制することができる。
【0014】
(4)上記(1)〜(3)のいずれかに係る炭化珪素半導体ウエハ100において、第1領域21に垂直な方向から見て、第2電極30の全体の面積は、第2主面20の全体の面積の90%以上であってもよい。
【0015】
(5)上記(1)〜(4)のいずれかに係る炭化珪素半導体ウエハ100において、第1領域21および第2領域22は、(0001)面または(0001)面に対して8°未満のオフ角で傾斜した面であってもよい。
【0016】
(6)上記(1)〜(5)のいずれかに係る炭化珪素半導体ウエハ100において、第1主面10は、(000−1)面または(000−1)面に対して8°未満のオフ角で傾斜した面であってもよい。
【0017】
(7)上記(1)〜(6)のいずれかに係る炭化珪素半導体ウエハ100において、第1領域21に垂直な方向から見て、溝26は、六角形状であってもよい。
【0018】
(8)上記(1)〜(6)のいずれかに係る炭化珪素半導体ウエハ100において、第1領域21に垂直な方向から見て、溝26は、格子状であってもよい。
【0019】
(9)本開示に係る炭化珪素半導体装置200は、炭化珪素基板1と、第1電極17と、絶縁膜15と、第2電極30と、接合材7を備えている。炭化珪素基板1は、第1主面10と、第1主面10と反対側にある第2主面20とを有する。第1電極17および絶縁膜15は、第1主面10に設けられている。第2電極30は、第2主面20に設けられている。第2主面20には、溝26が設けられている。第2主面20は、溝26によって分離された第1領域21および第2領域22を含む。溝26は、第1領域21に連なる第1側面23と、第2領域22に連なる第2側面25と、第1側面23および第2側面25の各々に連なる底面24とにより規定されている。第2電極30は、第1領域21に接する第1部分31と、第2領域22に接する第2部分32と、底面24に接する第3部分33とを含む。第3部分33は、第1部分31および第2部分32の各々から分離されている。接合材7は、第1部分31と第2部分32と第3部分33とを電気的に接続する。
【0020】
上記(9)に係る炭化珪素半導体装置200においては、第1部分31は、第2部分32から分離されている。そのため、第1部分31および第2部分32の各々と炭化珪素基板1との接触抵抗を測定することができる。つまり、第1部分31および第2部分32の各々の品質管理を行うことができる。また上記(7)に係る炭化珪素半導体装置200においては、第2電極30は、第1領域21に接する第1部分31と、底面24に接する第3部分33とを含んでいる。これにより、第2電極30の一部がエッチングされることで第2電極30がパターニングされる場合と比較して、第2電極30と炭化珪素基板1との接触面積を広く確保することができる。そのため、第2電極30の接触抵抗の増加を抑制することができる。
【0021】
(10)上記(9)に係る炭化珪素半導体装置200において、第1側面23と、第2側面25と、底面24とは、平面形状を有していてもよい。第1側面23と底面24とがなす第1角度θ1と、第2側面25と底面24とがなす第2角度θ2とは、90°以下であってもよい。
【0022】
(11)上記(10)に係る炭化珪素半導体装置200において、第1角度θ1および第2角度θ2は、45°以上65°以下であってもよい。これにより、溝26の幅が第2主面20に向かって狭くなる。そのため、接合材7が炭化珪素基板1から剥離することを抑制することができる。
【0023】
(12)上記(9)〜(11)のいずれかに係る炭化珪素半導体装置200において、第1領域21に垂直な方向から見て、第2電極30の全体の面積は、第2主面20の全体の面積の90%以上であってもよい。
【0024】
(13)上記(9)〜(12)のいずれかに係る炭化珪素半導体装置200において、第1領域21および第2領域22は、(0001)面または(0001)面に対して8°未満のオフ角で傾斜した面であってもよい。
【0025】
(14)上記(9)〜(13)のいずれかに係る炭化珪素半導体装置200において、第1主面10は、(000−1)面または(000−1)面に対して8°未満のオフ角で傾斜した面であってもよい。
【0026】
(15)上記(9)〜(14)のいずれかに係る炭化珪素半導体装置200において、第1領域21に垂直な方向から見て、溝26は、六角形状であってもよい。
【0027】
(16)上記(9)〜(14)のいずれかに係る炭化珪素半導体装置200において、第1領域21に垂直な方向から見て、溝26は、格子状であってもよい。
【0028】
[本開示の実施形態の詳細]
以下、本開示の実施形態の詳細について図面に基づいて説明する。なお、以下の図面において、同一または相当する部分には同一の参照番号を付し、その説明は繰り返さない。
【0029】
(第1実施形態)
まず、本開示の第1実施形態に係る炭化珪素半導体ウエハ100の構成について説明する。
【0030】
図1、
図2および
図3に示されるように、第1実施形態に係る炭化珪素半導体ウエハ100は、炭化珪素基板1と、第1電極17と、第2電極30と、ゲート絶縁膜15と、ゲート電極47と、層間絶縁膜45とを主に有している。炭化珪素基板1は、炭化珪素単結晶基板11と、炭化珪素エピタキシャル層2とを含んでいる。炭化珪素エピタキシャル層2は、炭化珪素単結晶基板11上に設けられている。炭化珪素基板1は、第1主面10と、第2主面20とを有している。第2主面20は、第1主面10の反対側にある。炭化珪素エピタキシャル層2は第1主面10を構成する。炭化珪素単結晶基板11は第2主面20を構成する。
【0031】
第1主面10は、たとえば(000−1)面または(000−1)面に対して8°未満のオフ角で傾斜した面である。オフ角は、6°以下であってもよいし、4°以下であってもよい。オフ角は、2°以上であってもよい。炭化珪素単結晶基板11および炭化珪素エピタキシャル層2は、たとえばポリタイプ4Hの六方晶炭化珪素である。炭化珪素単結晶基板11は、たとえば窒素などのn型不純物を含みn型の導電型を有する。
【0032】
第2電極30は、第2主面20に設けられている。第2電極30は、たとえばドレイン電極である。第2電極30は、SiCの導電型に応じて、n型の場合たとえばニッケルシリサイド(NiSi)、p型の場合たとえばチタンアルミ(TiAl)を含む材料により構成されている。第2電極30は、n型、p型に関わらず、たとえばチタンアルミシリコン(TiAlSi)を含む材料により構成されていてもよい。SiCとの接触抵抗は、10
−1Ωcm
2台以下、望ましくは10
−3Ωcm
2台以下、より望ましくは10
−5Ωcm
2台以下である。接触抵抗は電流値に依存しないオーミック性接触が望ましい。SiC−電極間の接触に問題があると電流値に依存して抵抗が増減するショットキー性接触となり、デバイス動作に悪影響を及ぼす場合がある。
【0033】
図3に示されるように、第2主面20には、溝26が設けられている。第2主面20は、溝26によって分離された第1領域21および第2領域22を含む。溝26は、第1側面23と、第2側面25と、底面24とにより規定されている。第1側面23は、第1領域21に連なる。第2側面25は、第2領域22に連なる。底面24は、第1側面23および第2側面25の各々に連なる。底面24は、第1領域21および第2領域22の各々よりも第1主面10側に位置している。
【0034】
図3に示されるように、溝26の開口部の幅111は、たとえば2μm以上10μm以下である。溝の間隔は、たとえば50μm以上1000μm以下である。溝の間隔は、等間隔であっても良いし、等間隔でなくても良い。第2電極30は、第1部分31と、第2部分32と、第3部分33とを含む。第1部分31は、第1領域21に接する。第2部分32は、第2領域22に接する。第3部分33は、底面24に接する。第3部分33は、第1部分31および第2部分32の各々から分離されている。
【0035】
第3部分33は、底面24と第1側面23との第1境界28から離間してもよい。同様に、第3部分33は、底面24と第2側面25との第2境界27から離間してもよい。第3部分33は、底面24の一部を覆っていてもよい。底面24の一部は、第3部分33から露出していてもよい。第1部分31および第2部分32は、それぞれ第1領域21および第2領域22において、炭化珪素単結晶基板11と接している。同様に、第3部分33は、底面24において、炭化珪素単結晶基板11と接している。
【0036】
図1および
図2に示されるように、溝26は、第2主面20において、たとえば格子状に設けられている。第1領域21に垂直な方向から見て、溝26は、たとえば格子状である。別の観点から言えば、溝26は、たとえば第1直線201に平行な直線に沿って延在し、かつ第2直線202に平行な直線に沿って延在している。第1直線201は、たとえば<11−20>方向に沿って延在する。第2直線202は、たとえば<1−100>方向に沿って延在する。
【0037】
図1および
図2に示されるように、第3部分33は、たとえば格子状に設けられている。第3部分33は、たとえば第1直線に沿って延在し、かつ第2直線に沿って延在する。
図1に示されるように、第1領域21に対して垂直な方向から見て(平面視において)、第3部分33は、第1部分31および第2部分32の各々を取り囲んでいてもよい。第1部分31および第2部分32の各々は、互いに物理的に分離している。平面視において、第1部分31および第2部分32の各々の形状は、特に限定されないが、たとえば正方形である。平面視において、第1部分31および第2部分32の各々の長さ110は、たとえばチップサイズ以下である。第1部分31および第2部分32の各々の長さ110は、たとえば200μm以上500μm以下である。第1部分31および第2部分32の各々の形状は、たとえば長方形であってもよい。
【0038】
図3に示されるように、第1側面23と、第2側面25と、底面24とは、たとえば平面形状を有している。第1側面23と底面24とがなす第1角度θ1と、第2側面25と底面24とがなす第2角度θ2とは、たとえば90°以下である。第1角度θ1および第2角度θ2は、45°以上65°以下であってもよい。第1角度θ1および第2角度θ2は、たとえば50°以上であってもよい。第1角度θ1および第2角度θ2は、たとえば60°以下であってもよい。第1領域21および第2領域22は、たとえば(0001)面または(0001)面に対して8°未満のオフ角で傾斜した面である。オフ角は、6°以下であってもよいし、4°以下であってもよい。オフ角は、2°以上であってもよい。第1側面23および第2側面25の各々と底面24とがなす角度は、たとえば90°未満である。断面視において、溝26の幅は、底面24から第1領域21および第2領域22に向かって小さくなっていてもよい。
【0039】
なお、第1直線201と第2直線202について、底面24と、第1側面23および第2側面25の各々とがなす角度が同じであっても良く、異なっていても良い(混在してもよい)。別の観点から言えば、第1直線201に沿った方向において、底面24と、第1側面23および第2側面25の各々とがなす角度は、第2直線202に沿った方向において、底面24と、第1側面23および第2側面25の各々とがなす角度と同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0040】
図3に示されるように、炭化珪素基板1は、ドリフト領域12と、ボディ領域13と、ソース領域14と、コンタクト領域18とを主に含んでいる。ドリフト領域12は、たとえば窒素などのn型不純物を含み、n型の導電型(第1導電型)を有する。ドリフト領域12のn型不純物の濃度は、たとえば7×10
15cm
-3程度である。炭化珪素単結晶基板11のn型不純物の濃度は、ドリフト領域12のn型不純物の濃度よりも高くてもよい。
【0041】
ボディ領域13は、ドリフト領域12上にある。ボディ領域13は、ドリフト領域12に接している。ボディ領域13は、たとえばアルミニウムなどのp型不純物を含み、p型の導電型(第2導電型)を有する。ゲート絶縁膜15と対向するボディ領域13の領域において、チャネルが形成可能である。
【0042】
ソース領域14は、ボディ領域13上にある。ソース領域14は、ボディ領域13と接する。ソース領域14は、ボディ領域13によってドリフト領域12から隔てられている。ソース領域14は、たとえば窒素またはリンなどのn型不純物を含んでおり、n型の導電型を有する。ソース領域14は、第1主面10の一部を構成している。ソース領域14のn型不純物の濃度は、ドリフト領域12のn型不純物の濃度よりも高くてもよい。
【0043】
コンタクト領域18は、たとえばボディ領域13と、ソース領域14とに接している。コンタクト領域18は、たとえばアルミニウムなどのp型不純物を含んでおり、p型の導電型を有する。コンタクト領域18が含むp型不純物の濃度は、ボディ領域13が含むp型不純物の濃度よりも高くてもよい。コンタクト領域18は、ボディ領域13と第1主面10とを繋いでいる。コンタクト領域18は、第1主面10の一部を構成していてもよい。なお、上記各不純物領域におけるn型不純物またはp型不純物の濃度は、たとえばSIMS(Secondary Ion Mass Spectrometry)により測定可能である。
【0044】
図3に示されるように、第1主面10には、ゲートトレンチ6が設けられていてもよい。第1主面10は、たとえば、平坦部5と、側面3と、底面4とを有している。ゲートトレンチ6は、側面3と、底面4とにより規定されている。側面3は、平坦部5に連なる。側面3は、ボディ領域13とソース領域14を貫通してドリフト領域12に至っている。底面4は、側面3と連なる。底面4は、ドリフト領域12に位置している。
【0045】
断面視において、ゲートトレンチ6の幅が底面4に向かってテーパ状に狭まるように側面3が傾斜していてもよい。側面3は、たとえば(000−1)面に対して52°以上72°以下傾斜している。側面3は、平坦部5に対してほぼ垂直であってもよい。底面4は、平坦部5とほぼ平行であってもよい。断面視において、ゲートトレンチ6は、U字状またはV字状の形状を有してもよい。ソース領域14とボディ領域13とドリフト領域12とは、ゲートトレンチ6の側面3を構成している。ドリフト領域12は、ゲートトレンチ6の底面4を構成している。
【0046】
ゲート絶縁膜15は、第1主面10上に設けられている。ゲート絶縁膜15は、たとえば熱酸化膜である。ゲート絶縁膜15は、たとえば二酸化珪素を含む材料により構成されている。ゲート絶縁膜15の厚みは、たとえば45nm程度である。ゲート絶縁膜15は、側面3において、ソース領域14と、ボディ領域13と、ドリフト領域12と接している。ゲート絶縁膜15は、底面4において、ドリフト領域12と接している。ゲート絶縁膜15は、第1主面10においてソース領域14と接していてもよい。
【0047】
ゲート電極47は、ゲートトレンチ6の内部においてゲート絶縁膜15上に設けられている。ゲート電極47は、たとえば不純物を含むポリシリコンにより構成されている。ゲート電極47は、ソース領域14と、ボディ領域13と、ドリフト領域12とに対面するように設けられている。ゲート絶縁膜15は、ボディ領域13とゲート電極47との間に設けられている。層間絶縁膜45は、ゲート電極47およびゲート絶縁膜15に接して設けられている。層間絶縁膜45は、たとえば二酸化珪素を含む材料から構成されている。層間絶縁膜45は、ゲートトレンチ6の内部において、ゲート電極47上に設けられていてもよい。層間絶縁膜45は、ゲート電極47とソース電極16とを電気的に絶縁している。
【0048】
第1電極17は、第1主面10に設けられている。第1電極17は、たとえば、ソース電極16と、ソース配線19とを有している。ソース電極16は、第1主面10に接している。具体的には、ソース電極16は、第1主面10においてソース領域14に接している。ソース電極16は、コンタクト領域18と接していてもよい。ソース電極16は、たとえばチタン(Ti)と、アルミニウム(Al)と、珪素(Si)とを含む材料から構成されている。ソース電極16は、たとえばソース領域14とオーミック接合している。ソース配線19は、ソース電極16に接している。ソース配線19は、たとえばアルミニウムを含む材料から構成されている。
【0049】
次に、第1実施形態に係る炭化珪素半導体ウエハ100の第1変形例について説明する。
【0050】
図4に示されるように、第1領域21と第1側面23とがなす角度θ1と、第2領域22と第2側面25とがなす角度θ2とは、ほぼ90°であってもよい。同様に、第1側面23および第2側面25の各々は、底面24に対してほぼ垂直に延在している。第3部分33は、底面24の全面に接していてもよい。第3部分33は、底面24と第1側面23との第1境界28と、底面24と第2側面25との第2境界27とに接していてもよい。第3部分33は、第1側面23および第2側面25の各々の一部に接していてもよい。言い換えれば、第3部分33は、底面24の全面と、第1側面23および第2側面25の各々の一部とを覆っていてもよい。
【0051】
次に、第1実施形態に係る炭化珪素半導体ウエハ100の第2変形例について説明する。
【0052】
図5に示されるように、第1領域21と第1側面23とがなす角度θ1と、第2領域22と第2側面25とがなす角度θ2とは、90°よりも大きく180°よりも小さくてもよい。溝26の幅は、底面24から第1領域21および第2領域22の各々に向かうにつれて大きくなっていてもよい。第3部分33は、底面24の全面に接していてもよい。第3部分33は、底面24と第1側面23との第1境界28と、底面24と第2側面25との第2境界27とに接していてもよい。第3部分33は、第1側面23および第2側面25の各々の一部に接していてもよい。言い換えれば、第3部分33は、底面24の全面と、第1側面23および第2側面25の各々の一部とを覆っていてもよい。断面視において、第3部分33の上面(第3部分33と底面24との境界面)の幅は、第3部分33の下面の幅よりも小さくてもよい。
【0053】
図6に示されるように、第1領域21に垂直な方向から見て、炭化珪素単結晶基板の一部が第2電極30から露出していてもよい。具体的には、第1側面23および第2側面25の各々の一部が第2電極30から露出していてもよい。第1領域21に垂直な方向から見て、第2電極30の全体の面積は、たとえば第2主面20の全体の面積の90%以上である。別の観点から言えば、第1領域21に垂直な方向から見て、炭化珪素単結晶基板が第2電極30から露出している部分は、第2主面20の全体の面積の10%未満である。
【0054】
第1領域21に垂直な方向から見て、第2電極30の全体の面積は、第2主面20の全体の面積の95%以上であってもよいし、98%以上であってもよい。第2電極30の全体の面積とは、第1部分31、第2部分32および第3部分33の全体の面積である。第1領域21に垂直な方向から見た第2主面20の全体の面積は、溝26が形成されていない第2主面20の全体の面積と同じである。第1領域21に垂直な方向から見て、第2電極30が第2主面20の全体を覆っている場合には、第2電極30の全体の面積は、第2主面20の全体の面積と等しい。
【0055】
次に、第1実施形態に係る炭化珪素半導体ウエハ100の第3変形例について説明する。
【0056】
図15に示されるように、溝26は、第2主面20において、たとえば六角形の各辺に沿って延在するハニカム構造を有していてもよい。第1領域21に垂直な方向から見て、溝26は、たとえば六角形状であってもよい。別の観点から言えば、溝26は、たとえば第1直線201に平行な直線に沿って延在し、第3直線203に平行な直線に沿って延在し、かつ第4直線204に平行な直線に沿って延在する。第1直線201は、たとえば<11−20>方向に沿って延在する。第3直線203および第4直線204の各々は、 <11−20>と等価な方向に沿って延在する。第4直線204は、たとえば<−2110>方向に沿って延在する。第3直線203は、たとえば<1−210>方向に沿って延在する。第1直線201、第3直線203および第4直線204の中で任意の2つの直線がなす角度は、120°である。この場合、溝方向が結晶学的に等価であるため、底面24と、第1側面23および第2側面25の各々とがなす角度が溝方向に依存しないという利点がある。
【0057】
次に、第1実施形態に係る炭化珪素半導体ウエハ100の製造方法について説明する。
まず、炭化珪素基板1を準備する工程が実施される。たとえば昇華法を用いて炭化珪素単結晶基板11が準備される。炭化珪素単結晶基板11の最大径は、たとえば100mm以上であり、好ましくは150mm以上である。次に、炭化珪素単結晶基板上にエピタキシャル層が形成される。たとえば原料ガスとしてシラン(SiH
4)とプロパン(C
3H
8)との混合ガスを用い、キャリアガスとしてたとえば水素ガス(H
2)を用い、ドーパントガスとしてアンモニア(NH
3)を用いたCVD(Chemical Vapor Deposition)法により、炭化珪素単結晶基板11上にドリフト領域がエピタキシャル成長により形成される。ドリフト領域の厚みは、たとえば9μmである。ドリフト領域が含む窒素原子の濃度は、たとえば7×10
15cm
-3程度である。
【0058】
次に、イオン注入工程が実施される。ドリフト領域12の表面に対して、たとえばアルミニウムなどのp型不純物がイオン注入される。これにより、ドリフト領域12と接するボディ領域13が形成される。ボディ領域13の厚みは、たとえば0.9μmである。次に、ボディ領域13に対して、たとえばリンなどのn型不純物がイオン注入される。これにより、n型の導電型を有するソース領域14が形成される。ソース領域14の厚みは、たとえば0.4μmである。ソース領域14は、第1主面10を構成する。ソース領域14が含むn型不純物の濃度は、ボディ領域13が含むp型不純物の濃度よりも高い。次に、ソース領域14に対して、たとえばアルミニウムなどのp型不純物がイオン注入されることにより、コンタクト領域18が形成される(
図7参照)。
【0059】
次に、炭化珪素基板1にイオン注入された不純物を活性化するため活性化アニールが実施される。活性化アニールの温度は、好ましくは1500℃以上1900℃以下であり、たとえば1700℃程度である。活性化アニールの時間は、たとえば30分程度である。活性化アニールの雰囲気は、好ましくは不活性ガス雰囲気であり、たとえばAr雰囲気である。
【0060】
次に、ゲートトレンチを形成する工程が実施される。たとえば、ソース領域14およびコンタクト領域18から構成される第1主面10上に、ゲートトレンチ6(
図3)が形成される位置上に開口を有するマスク40が形成される。マスク40を用いて、ソース領域14の一部と、ボディ領域13の一部と、ドリフト領域の一部とがエッチングにより除去される。エッチングの方法としては、たとえば反応性イオンエッチング、特に誘導結合プラズマ反応性イオンエッチングを用いることができる。具体的には、たとえば反応ガスとして六フッ化硫黄(SF
6)またはSF
6と酸素(O
2)との混合ガスを用いた誘導結合プラズマ反応性イオンエッチングを用いることができる。エッチングにより、ゲートトレンチ6が形成されるべき領域に、第1主面10に対してほぼ垂直な側部と、側部と連続的に設けられ、かつ第1主面10とほぼ平行な底部とを有する凹部が形成される。
【0061】
次に、凹部において熱エッチングが行われる。熱エッチングは、第1主面10上にマスク41が形成された状態で、たとえば、少なくとも1種類以上のハロゲン原子を有する反応性ガスを含む雰囲気中での加熱によって行い得る。少なくとも1種類以上のハロゲン原子は、塩素(Cl)原子およびフッ素(F)原子の少なくともいずれかを含む。当該雰囲気は、たとえば、塩素(Cl
2)、三塩化ホウ素(BCl
3)、SF
6または四フッ化炭素(CF
4)を含む。たとえば、塩素ガスと酸素ガスとの混合ガスを反応ガスとして用い、熱処理温度を、たとえば800℃以上900℃以下として、熱エッチングが行われる。なお、反応ガスは、上述した塩素ガスと酸素ガスとに加えて、キャリアガスを含んでいてもよい。キャリアガスとしては、たとえば窒素ガス、アルゴンガスまたはヘリウムガスなどを用いることができる。
【0062】
上記熱エッチングにより、炭化珪素基板1の第1主面10にゲートトレンチ6が形成される(
図8参照)。ゲートトレンチ6は、側面3と、底面4とにより規定される。側面3は、ソース領域14と、ボディ領域13と、ドリフト領域12とにより構成される。底面4は、ドリフト領域12により構成される。側面3と、底面4に沿った面との間の角度は、たとえば54.7°である。次に、マスク40が第1主面10から除去される。
【0063】
次に、ゲート絶縁膜15を形成する工程が実施される。たとえば、炭化珪素基板1が、酸素を含む雰囲気中において、たとえば1300℃以上1400℃以下の温度で加熱される。これにより、底面4においてドリフト領域と接し、かつ側面3においてドリフト領域と、ボディ領域13と、ソース領域14とに接し、かつ第1主面10においてソース領域14と接するゲート絶縁膜15が形成される。
【0064】
炭化珪素基板1を熱酸化することによりゲート絶縁膜15を形成した後に、一酸化窒素(NO)ガス雰囲気中において炭化珪素基板1に対して熱処理(NOアニール)が行われてもよい。NOアニールにおいて、炭化珪素基板1が、たとえば1100℃以上1300℃以下の条件下で1時間程度保持される。これにより、ゲート絶縁膜15とボディ領域13との界面領域に窒素原子が導入される。その結果、界面領域における界面準位の形成が抑制されることで、チャネル移動度を向上させることができる。なお、窒素原子の導入が可能であれば、NOガス以外のガス(たとえばN
2O)が雰囲気ガスとして用いられてもよい。NOアニールの後にさらに、雰囲気ガスとしてアルゴン(Ar)を用いるArアニールが行われてもよい。Arアニールの加熱温度は、たとえば上記NOアニールの加熱温度以上である。Arアニールの時間は、たとえば1時間程度である。これにより、ゲート絶縁膜15とボディ領域13との界面領域における界面準位の形成がさらに抑制される。
【0065】
次に、ゲート電極47を形成する工程が実施される。たとえば、ゲートトレンチ6の内部においてゲート絶縁膜15に接するゲート電極47が形成される。ゲート電極47は、ゲートトレンチ6の内部に配置され、ゲート絶縁膜15上においてゲートトレンチ6の側面3および底面4の各々と対面するように形成される。ゲート電極47は、たとえばLPCVD(Low Pressure Chemical Vapor Deposition)法により形成される。
【0066】
次に、層間絶縁膜45を形成する工程が形成される。たとえば、ゲート電極47を覆い、かつゲート絶縁膜15と接するように層間絶縁膜45が形成される。好ましくは、層間絶縁膜45は、たとえば化学気相成長法により形成される。層間絶縁膜45は、たとえば二酸化珪素を含む材料からなる。次に、ソース領域14およびコンタクト領域18上に開口部が形成されるように、層間絶縁膜45およびゲート絶縁膜15の一部がエッチングされる。これにより、コンタクト領域18およびソース領域14がゲート絶縁膜15から露出する。
【0067】
次に、第1電極17を形成する工程が実施される。具体的には、第1主面10においてソース領域14およびコンタクト領域18に接するソース電極16が形成される。ソース電極16は、たとえばスパッタリング法により形成される。ソース電極16は、たとえばTi、AlおよびSiを含む材料から構成される。次に、合金化アニールが実施される。具体的には、ソース領域14およびコンタクト領域18と接するソース電極16が、たとえば900℃以上1100℃以下の温度で5分程度保持される。これにより、ソース電極16の少なくとも一部が、炭化珪素基板1が含む珪素と反応してシリサイド化する。これにより、ソース領域14とオーミック接合するソース電極16が形成される。次に、ソース電極16と電気的に接続されるソース配線19が形成される。ソース配線19は、ソース電極16および層間絶縁膜45上に形成される。以上により、ソース電極16と、ソース配線19とを含む第1電極17が形成される(
図9参照)。
【0068】
次に、裏面研磨工程が実施される。具体的には、第2主面20において、炭化珪素基板1が研磨される。具体的には、炭化珪素単結晶基板11の一部が研磨によって除去される。これにより、炭化珪素単結晶基板11が薄くされる(
図10参照)。なお、炭化珪素単結晶基板11が十分に薄い場合には、この工程は省略される。
【0069】
次に、溝26を形成する工程が実施される。たとえば、第2主面20上に溝26(
図3参照)が形成される位置上に開口を有するマスク41が形成される。マスク41を用いて、炭化珪素単結晶基板の一部がエッチングにより除去される。エッチングの方法としては、たとえば反応性イオンエッチング、特に誘導結合プラズマ反応性イオンエッチングを用いることができる。具体的には、たとえば反応ガスとしてSF
6またはSF
6とO
2との混合ガスを用いた誘導結合プラズマ反応性イオンエッチングを用いることができる。エッチングにより、溝26が形成されるべき領域に、第2主面20に対してほぼ垂直な側部と、側部と連続的に設けられかつ第2主面20とほぼ平行な底部とを有する凹部が形成される。
【0070】
次に、凹部において熱エッチングが行われる。熱エッチングは、第2主面20上にマスク41が形成された状態で、たとえば、少なくとも1種類以上のハロゲン原子を有する反応性ガスを含む雰囲気中での加熱によって行い得る。少なくとも1種類以上のハロゲン原子は、塩素原子およびフッ素原子の少なくともいずれかを含む。当該雰囲気は、たとえば、Cl
2、BCl
3、SF
6またはCF
4を含む。たとえば、塩素ガスと酸素ガスとの混合ガスを反応ガスとして用い、熱処理温度を、たとえば800℃以上900℃以下として、熱エッチングが行われる。なお、反応ガスは、上述した塩素ガスと酸素ガスとに加えて、キャリアガスを含んでいてもよい。キャリアガスとしては、たとえば窒素ガス、アルゴンガスまたはヘリウムガスなどを用いることができる。
【0071】
上記熱エッチングにより、炭化珪素基板1の第2主面20に溝26が形成される(
図11参照)。溝26は、第2主面20において、たとえば格子状に設けられている。断面視において、第1領域21と第1側面23とがなす第1角度θ1と、第2領域22と第2側面25とがなす第2角度θ2とは、たとえば90°以下である。第1角度θ1および第2角度θ2は、たとえば45°以上65°以下であってもよい。第2主面20は、たとえば、第1領域21と、第2領域22と、第1側面23と、底面24と、第2側面25とにより構成されている。溝26は、底面24と第1側面23と第2側面25とにより規定されている。次に、マスク41が第2主面20から除去される。
【0072】
上記熱エッチングによる溝形成は、第1電極17を形成する工程後に実施してもよく、ゲートトレンチ6を形成する工程と同時またはゲートトレンチ6を形成する工程の前後で実施してもよい。裏面研磨工程を実施しない場合には、溝26形成の工程の自由度が大きくなる。
【0073】
次に、第2電極30を形成する工程が実施される。具体的には、第2主面20において、第2電極30が形成される。第2電極30は、たとえばドレイン電極を含む。ドレイン電極は、たとえばNiSiを含む材料により構成されている。ドレイン電極を構成する材料は、たとえばスパッタリングにより形成される。次に、スパッタリングにより形成された材料に対してレーザーアニールが行われる。これにより、ドレイン電極を構成する材料が合金化する。なお、レーザーアニールによる合金化のかわりに、加熱処理、例えばRTA(Rapid Thermal Annealing)による処理による合金化が行われてもよい。
【0074】
レーザーアニールのスポット径は、第1部分31および第2部分32の各々の一辺の長さよりも小さい。溝26を形成することなくドレイン電極を分割する場合、ドレイン電極の一部をエッチングして炭化珪素単結晶基板の一部が露出される。ドレイン電極のエッジの部分をレーザーアニールによって合金化する場合、レーザーのスポットにドレイン電極を構成する材料と炭化珪素とが含まれる。ドレイン電極を構成する材料と炭化珪素とは、レーザーの波長に対する反射率が異なる。そのため、ドレイン電極のエッジ部分において、合金化が均一になされない。本実施形態においては、平面視において、ドレイン電極が第2主面20の全面を覆っており、炭化珪素単結晶基板がドレイン電極から露出していない。そのため、平面視において、反射率が均一となるため、ドレイン電極は均一に合金化される。
【0075】
第2電極30は、第1領域21に接する第1部分31と、第2領域22に接する第2部分32と、底面24に接する第3部分33とを含む。第3部分33は、第1部分31および第2部分32の各々から分離されている。以上により、第1実施形態に係る炭化珪素半導体ウエハ100(
図1〜
図3参照)が製造される。なお上記においては、溝26とゲートトレンチ6とが別の工程で形成される場合について説明したが、溝26とゲートトレンチ6とが同時に形成されてもよい。
【0076】
次に、ドレイン電極の電気抵抗(接触抵抗)の測定方法について説明する。
図12に示されるように、第1部分31は、第2部分32から物理的に分離している。第1部分31に第1端子51が接続される。第2部分32に第2端子52が接続される。第1部分31および第2部分32の間の電気抵抗が、たとえば二端子法を用いて測定される。たとえば第1部分31から第2部分32に電流を流しながら、第1部分31および第2部分32の間の電圧が測定される。第3部分33は、第1部分31および第2部分32の各々から分離されている。そのため、電流は、第1部分31から炭化珪素単結晶基板を通過して第2部分32に流れるが、第3部分33には流れない。なお、第1部分31および第2部分32の電気抵抗の測定は、TLM(Transfer Length Method)法を用いて行われてもよい。
【0077】
次に、第1実施形態に係る炭化珪素半導体ウエハ100の作用効果について説明する。
第1実施形態に係る炭化珪素半導体ウエハ100においては、第1部分31は、第2部分32から分離されている。そのため、第1部分31および第2部分32の各々と炭化珪素基板1との接触抵抗を測定することができる。つまり、第1部分31および第2部分32の各々の品質管理を行うことができる。
【0078】
また第1実施形態に係る炭化珪素半導体ウエハ100においては、第2電極30は、第1領域21に接する第1部分31と、底面24に接する第3部分33とを含んでいる。これにより、第2電極30の一部がエッチングされることで第2電極30がパターニングされる場合と比較して、第2電極30と炭化珪素基板1との接触面積を広く確保することができる。そのため、第2電極30の接触抵抗の増加を抑制することができる。
【0079】
さらに第1実施形態に係る炭化珪素半導体ウエハ100においては、第1角度θ1および第2角度θ2は、45°以上65°以下であってもよい。これにより、溝26の幅が第2主面20に向かって狭くなる。そのため、溝26の内部に接合材7を設けた際、接合材7が炭化珪素基板1から剥離することを抑制することができる。
【0080】
(第2実施形態)
次に、本開示の第2実施形態に係る炭化珪素半導体装置200の構成について説明する。第2実施形態に係る炭化珪素半導体装置200は、半導体チップに分割されており、かつ接合材7を有している構成において、第1実施形態に係る炭化珪素半導体ウエハ100と主に異なっており、その他の構成については、第1実施形態に係る炭化珪素半導体ウエハ100とほぼ同じである。以下、第1実施形態に係る炭化珪素半導体ウエハ100と異なる構成を中心に説明する。
【0081】
図13に示されるように、第2実施形態に係る炭化珪素半導体装置200は、たとえば縦型MOSFETであり、炭化珪素基板1と、第1電極17と、第2電極30と、接合材7と、ゲート絶縁膜15と、ゲート電極47と、層間絶縁膜45とを主に有している。第2電極30は、たとえば、第1部分31と、第2部分32と、第3部分33と、第4部分34と、第5部分35と、第6部分36とを有している。第1部分31、第2部分32および第3部分33の各々は、オーミック電極である。第4部分34、第5部分35および第6部分36の各々は、カバー層である。接合材7は、溝26を埋めている。接合材7は、第1部分31の側面と、第2部分32の側面と、第3部分33の側面とに接していてもよい。接合材7は、第1部分31と、第2部分32と、第3部分33を繋いでいる。接合材7は、第1側面23および第2側面25に接していてもよい。接合材7は、溝26の底面24において、第3部分33から露出している部分に接していてもよい。接合材7は、底面24の一部と、第1境界28と、第2境界27とに接していてよい。接合材7は、第4部分34と、第5部分35と、第6部分36とを覆うように設けられていてもよい。接合材7は、ドリフト領域12に対向して設けられていてもよい。
【0082】
接合材7は、第1部分31と、第2部分32と、第3部分33とを電気的に接続する。接合材7は、導電性を有する材料である。接合材7の材料は、特に限定されないが、たとえばPbSn、SnAgCu、SnSb、SnCuNiなどの半田材料または銀(Ag)、銅(Cu)を含む焼結材料である。第5部分35上にある接合材7の厚み104は、第3部分33の厚み101よりも大きくてもよい。第5部分35上にある接合材7の厚み104は、第3部分33および第5部分35の合計の厚み102よりも大きくてもよい。第5部分35上にある接合材7の厚み104は、たとえば溝26の深さ103以上であってもよい。溝26の深さ103は、たとえば0.1μm以上10μm以下であり、より望ましくは、0.2μm以上5μm以下である。溝26の深さ103は、第3部分33の厚みよりも大きいことが望ましい。第5部分35上にある接合材7の厚み104は、たとえば100μm以上1mm以下である。
【0083】
第4部分34、第5部分35および第6部分36の各々は、たとえば3層構造を有する。第4部分34、第5部分35および第6部分36の各々は、たとえばチタン(Ti)を含む層と、ニッケル(Ni)を含む層と、金(Au)を含む層とを有している。Auを含む層の代わりにAgを含む層が用いられてもよい。第4部分34、第5部分35および第6部分36の各々の材料は、接合材との密着性、半田材の濡れ性、半田材との反応性、温度サイクル、パワーサイクル試験等の信頼性評価時の半田材の劣化を表すクリープ特性により選ばれる。Tiを含む層の厚みは、たとえば250nmである。Niを含む層の厚みは、たとえば200nmである。Auを含む層の厚みは、たとえば50nmである。Tiを含む層が第1部分31、第2部分32および第3部分33の各々に接していてもよい。Auを含む層が、接合材7に接していてもよい。
【0084】
次に、第2実施形態に係る炭化珪素半導体装置200の変形例の構成について説明する。
【0085】
図14に示されるように、第2電極30は、第1部分31と、第2部分32と、第3部分33と、第7部分37とにより構成されていてもよい。第1部分31、第2部分32および第3部分33の各々は、オーミック電極である。第7部分37は、カバー層である。第7部分37は、一体として構成されていてもよい。第7部分37は、第1部分31と、第2部分32と、第3部分33とに接している。第7部分37は、第1側面23と、第2側面25と、底面24の一部とに接していてもよい。
【0086】
オーミック電極の電気抵抗の測定は、オーミック電極を形成した後であって、カバー層を形成する前に行われる。そのため、オーミック電極が離間しておればよく、カバー層は一体として形成されていてもよい。カバー層が離間している場合と比較して、カバー層が一体として形成されている場合には、カバー層と接合材との接触面積は大きくなる。そのため、接合材をカバー層に良好に接触させることができる。
【0087】
次に、第2実施形態に係る炭化珪素半導体装置200の製造方法について説明する。
まず、たとえば第1実施形態に係る炭化珪素半導体ウエハ100の製造方法を用いて、炭化珪素半導体ウエハ100(
図1〜
図3参照)が準備される。
【0088】
次に、カバー層を形成する工程が実施される。具体的には、たとえばスパッタリングにより、Ti層がドレイン電極上に形成される。Ti層の厚みは、たとえば250nmである。次に、たとえばスパッタリングにより、Ni層がTi層上に形成される。Ni層の厚みは、たとえば200nmである。次に、たとえばスパッタリングにより、Au層が形成される。Au層の厚みは、たとえば50nmである。以上により、第1部分31上に第4部分34が形成される。第2部分32上に第6部分36が形成される。第3部分33上に第5部分35が形成される。
【0089】
図13の形状は、スパッタ原子の平行性が高い条件下(プラズマ中での平均自由行程が長くなる条件)、例えば低ガス圧条件下で形成が可能である。また、イオンビームスパッタ法も、
図13の形状の形成に適用できる。
図14の形状は、スパッタ原子の表面での拡散が促進される条件下(高プラズマエネルギー、平均自由行程が短い条件)、例えば高ガス圧、高スバッタパワーおよび高温の条件下で形成が可能である。金属膜のCVDによっても、溝26の底面24への良好なカバレッジが形成可能である。
【0090】
次に、接合材7を形成する工程が実施される。接合材7は、溝26を埋めるように形成される。
図13に示されるように、接合材7は、第4部分34、第5部分35および第6部分36の各々に接し、かつ第1側面23と、第2側面25とに接して形成されてもよいし、
図14に示されるように、第7部分37を覆うように形成されてもよい。接合材7の材料は、たとえば半田である。次に、ダイシング工程が実施される。具体的には、炭化珪素半導体ウエハ100が、複数の半導体チップに分割される。これにより、第2実施形態に係る炭化珪素半導体装置200が製造される。
【0091】
次に、第2実施形態に係る炭化珪素半導体装置200の作用効果について説明する。
第2実施形態に係る炭化珪素半導体装置200においては、第1部分31は、第2部分32から分離されている。そのため、第1部分31および第2部分32の各々と炭化珪素基板1との接触抵抗を測定することができる。つまり、第1部分31および第2部分32の各々の品質管理を行うことができる。
【0092】
また第2実施形態に係る炭化珪素半導体装置200においては、第2電極30は、第1領域21に接する第1部分31と、底面24に接する第3部分33とを含んでいる。これにより、第2電極30の一部がエッチングされることで第2電極30がパターニングされる場合と比較して、第2電極30と炭化珪素基板1との接触面積を広く確保することができる。そのため、第2電極30の接触抵抗の増加を抑制することができる。
【0093】
さらに第2実施形態に係る炭化珪素半導体装置200においては、第1角度θ1および第2角度θ2は、45°以上65°以下であってもよい。これにより、溝26の幅が第2主面20に向かって狭くなる。そのため、接合材7が炭化珪素基板1から剥離することを抑制することができる。
【0094】
さらに第2実施形態に係る炭化珪素半導体装置200においては、第2主面20に溝26が設けられている。そのため、第2主面20に溝26が設けられることなく第2電極30がパターニングされている場合と比較して、接合材7と第2電極30との接触面積が大きくなる。そのため、チップを実装する際に、接合材7と第2電極30との密着性が向上する。結果として、接合材7が第2電極30から剥離することを抑制することができる。また炭化珪素半導体装置200の放熱性を向上することができる。
【0095】
なお上記各実施形態においては、炭化珪素半導体ウエハ100および炭化珪素半導体装置200がゲートトレンチ6を有するMOSFETを有する場合について説明したが、炭化珪素半導体ウエハ100および炭化珪素半導体装置200は、ゲートトレンチを有するMOSFETを有する場合に限定されない。炭化珪素半導体ウエハ100および炭化珪素半導体装置200は、たとえば平面型のMOSFETを有していてもよい。炭化珪素半導体ウエハ100および炭化珪素半導体装置200は、たとえばSBD(Schottky barrier diode)を有していてもよいし、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)を有していてもよいし、SJ(Superjunction)構造を有する電力半導体装置を有していてもよい。
【0096】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。