特許第6866824号(P6866824)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6866824
(24)【登録日】2021年4月12日
(45)【発行日】2021年4月28日
(54)【発明の名称】コネクタ
(51)【国際特許分類】
   H01R 13/405 20060101AFI20210419BHJP
【FI】
   H01R13/405
【請求項の数】2
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2017-210020(P2017-210020)
(22)【出願日】2017年10月31日
(65)【公開番号】特開2019-83131(P2019-83131A)
(43)【公開日】2019年5月30日
【審査請求日】2020年1月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001036
【氏名又は名称】特許業務法人暁合同特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】安藤 基泰
【審査官】 鈴木 重幸
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−353354(JP,A)
【文献】 特開2017−152111(JP,A)
【文献】 特開2001−110499(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2014/0030932(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R13/405
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
端子と、前記端子が固定されるハウジングと、を備えるコネクタであって、
前記端子は、
板状の第1の接続部と、
前記第1の接続部の側縁から、前記第1の接続部と交差する一の方向に突出する保持部と、
前記第1の接続部の側縁から、前記一の方向に突出し、前記保持部と対向している第2の接続部と、を備え、
前記保持部、及び、前記第2の接続部は、前記ハウジング内に固定されており、
前記保持部は、
前記第1の接続部の側縁から前記一の方向に突出する第1の基端部と、
前記第1の基端部から前記一の方向に突出し、前記第1の基端部よりも幅方向の長さが長い保持片と、を備えるコネクタ。
【請求項2】
前記第2の接続部は、前記第1の接続部の側縁から前記一の方向に突出する第2の基端部と、前記第2の基端部から前記一の方向に突出する円筒状の円筒部と、を備える請求項1に記載のコネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書によって開示される技術は、コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のコネクタの一例として、特開2013−82256号公報(下記特許文献1)に記載のジョイントコネクタが知られている。このジョイントコネクタは、導電板と、板状をなす補強部材と、ハウジングとを備えて構成されている。
【0003】
導電板は、板状をなしており、一端側に設けられたアース端子と、他端側に設けられた端子接続部とを備えている。補強部材は、板状をなしており、一端側に設けられたボディ側補強部と、他端側に設けられたハウジング側補強部とを備えている。
【0004】
ハウジングは、前方に開口する形態をなすフード部を備えており、フード部には相手側コネクタが嵌合される。フード部の奥壁には、導電板の端子接続部の一部、及び、補強部材のハウジング側補強部の一部がインサート成形により埋め込まれている。導電板のアース端子、及び、ボディ側補強部には、ボルトが挿通され、車両側に固定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2013−82256号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、アース端子及びボルト固定部側に車両からの振動が加わると、導電部材及び補強部材と、フード部の奥壁との境界面に応力がかかり、ハウジングが破損するという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本明細書で開示されるコネクタは、端子と、前記端子が固定されるハウジングと、を備えるコネクタであって、前記端子は、板状の第1の接続部と、前記第1の接続部の側縁から、前記第1の接続部と交差する一の方向に突出する保持部と、前記第1の接続部の側縁から、前記一の方向に突出し、前記保持部と対向している第2の接続部と、を備え、前記保持部、及び、前記第2の接続部は、前記ハウジング内に固定されている。
保持部、及び、第2の接続部の2点がハウジング内に固定されるため、従来のように1点でハウジングに固定される場合と比較して、ハウジングの端子との境界面にかかる負荷が2点に分散されるため、ハウジングの端子との境界面で破断が生じることを防止できる。
また、端子は、保持部及び第2の接続部の両側2点でハウジングに固定されているため、ハウジングが熱膨張又は収縮して寸法の変動が生じても、ハウジングよりも線膨張係数の低い端子が、ハウジングの寸法の変動を抑制することとなる。これにより、熱膨張又は収縮によるハウジングの寸法の変動を抑えることができる。
【0008】
また、前記保持部は、前記第1の接続部の側縁から前記一の方向に突出する第1の基端部と、前記第1の基端部から前記一の方向に突出し、前記第1の基端部よりも幅方向の長さが長い保持片と、を備える構成としても良い。
保持部の保持片は、第1の基端部より幅方向の長さが長いため、ハウジング内に固定された保持部がハウジングから抜けようとしても、保持片がハウジング内に引っかかる。これにより、保持部がハウジングから抜けることが防止される。
【0009】
また、前記第2の接続部は、前記第1の接続部の側縁から前記一の方向に突出する第2の基端部と、前記第2の基端部から前記一の方向に突出する円筒状の円筒部と、を備える構成としても良い。
第2の接続部に第2の基端部、及び、円筒部を設けることで、第2の基端部をハウジング内に固定させるとともに、円筒部の外面をハウジングから露出させ、円筒部を相手側端子との接触部とすることができる。
【発明の効果】
【0010】
本明細書に開示されるコネクタによれば、端子とハウジングとの境界面で生じる破断を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本実施形態のコネクタの正面図
図2】コネクタの平面図
図3】コネクタの背面図
図4図3におけるA−A断面図
図5】端子の平面図
図6】端子の断面図
【発明を実施するための形態】
【0012】
<実施形態>
図1から図6を参照して本実施形態を説明する。
本実施形態のコネクタ10は、車両のバッテリとPCU(Power Control Unit)との間を繋ぐコネクタであって、図4に示すように、ハウジング20と、ハウジング20にインサート成形により固定されている2つの端子50と、を備えている。以降の説明では、図1図4のZ方向を上方、X方向を右方、図2図3のY方向を前方とする。
【0013】
ハウジング20は、図1図2図4に示すように、平面視長円形の円柱状をなす基部22と、基部22から上方にフード状に開口するフード部40と、を備えている。図示しない相手側コネクタは、フード部40に対して上方から嵌合される。
【0014】
基部22の両側の側縁から下方に一対の第1の端子固定部24が突出し、さらに一対の第1の端子固定部24の下端から異なる第1の端子固定部24に近づく方向に向けて一対の第1の台座部25が突出して設けられている。一対の第1の台座部25の下端は、第1の端子固定部24の下端よりも下方に位置している。また、基部22の中央部から下方に第2の端子固定部26が突出し、一対の第1の端子固定部24に向かう方向に向けて、一対の第2の台座部27が突出して設けられている。一対の第2の台座部27の下端は、第2の端子固定部26の下端よりも下方に位置している。また、第2の端子固定部26の下端から下方に第1の仕切り壁28が突出して設けられている。一対の第1の端子固定部24と、第2の端子固定部26とは互いに対向しており、一対の第1の端子固定部24と第2の端子固定部26との対向面間は、図1図4に示すように、後述するケース72が収容可能な収容空間S1とされる。
【0015】
図4に示すように、基部22から上方に、内筒部30が突出して設けられている。内筒部30は、図2に示すように、平面視長円形の筒状をなしており、フード部40の内側に配されている。内筒部30の上端位置は、図4に示すように、フード部40の上端位置よりも下方に位置している。
【0016】
図4に示すように、基部22から上方に一対の第1の突出部32が突出して設けられている。一対の第1の突出部32は、棒状をなしており、内筒部30内に所定の間隔を空けて配されている。第1の突出部32の上端部には、上方に突出し、先端が丸形状をなす先端部34が設けられている。先端部34の下端の外径は、第1の突出部32の外径よりも大きくなっており、第1の突出部32と先端部34とは、同軸上に配されている。
【0017】
図4に示すように、基部22の上端部から上方に第2の仕切り壁36が突出して設けられており、第2の仕切り壁36は、一対の第1の突出部32の間に配されている。第2の仕切り壁36は、後述する一対の端子50の間を絶縁する絶縁壁の役割を果たしている。第1の突出部32及び第2の仕切り壁36の前端部の位置は、内筒部30の上端開口縁よりも下方に位置している。
【0018】
フード部40の外周面の上側及び下側には、それぞれ溝が設けられており、上側の溝が第1の溝部42、下側の溝が第2の溝部44とされる。第1の溝部42には、第1のゴムリング88が嵌着されており、第2の溝部44には、第2のゴムリング90が嵌着されている。
【0019】
図1から図4に示すように、フード部40の外周面から左方に、板状をなす第2の突出部46が突出して設けられている。第2の突出部46は、図4に示すように、第1の溝部42と第2の溝部44との間に設けられている。第2の突出部46には、締結孔48が開口して設けられており、締結孔48には、円筒状をなす第1のカラー86が取り付けられている。図示しないものの、第1のカラー86には、ボルトが挿通され、ボルトは相手側部材に固定される。
【0020】
端子50は、図5に示すように、薄い板厚の銅板金をプレス加工、及び、曲げ加工することにより形成されており、第1の接続部52と、保持部56と、相手側端子と接続される第2の接続部62と、を備えている。
【0021】
第1の接続部52は方形板状をなしており、第1の接続部52には、ボルトが締結可能な締結孔54が開口して設けられている。第1の接続部52は、図4に示すように、一対の第1の台座部25の下面、及び、一対の第2の台座部27の下面と当接している。
【0022】
保持部56は、図4図5図6に示すように、第1の接続部52の側縁から上方に突出する板状の第1の基端部58と、第1の基端部58から上方に突出する板状の保持片60と、を備えている。端子50の保持部56は、図4に示すように、ハウジング20の第1の端子固定部24内に埋設されている。ここで、ハウジング20の保持部56との境界は境界面S2とされる。
【0023】
保持片60の幅方向の長さは、図5に示すように、第1の基端部58の幅方向の長さよりも長くなっており、これにより、端子50が第1の端子固定部24から抜けることを防止している。
【0024】
第2の接続部62は、図4図5に示すように、第1の接続部52の側縁から上方に突出しており、保持部56と対向する位置にある第2の基端部64と、第2の基端部64から上方に突出する円筒状の円筒部66と、を備えている。ここで、円筒部66の外径は約3ミリメートル程度となっている。また、端子50の板厚は、円筒部66の外径の基準を満足しつつ、且つ、円筒部66の内部に、インサート成形時に樹脂が充填可能な板厚に設定されている。
【0025】
円筒部66には、図4に示すように、円筒部66からハウジング20の第2の仕切り壁36の方向に向けて、切り起こした形状をなす位置決め部68が設けられている。位置決め部68は、端子50をインサート成形する際の金型の位置決めに用いられる。
【0026】
図4に示すように、第2の接続部62は、第2の基端部64から位置決め部68の上端部までの間は、ハウジング20に埋設されている。ここで、ハウジング20の第2の接続部62との境界は境界面S3とされ、境界面S3は、第2の台座部27の下端と上端との間に位置している。このように、端子50は、境界面S2及び境界面S3を介して、保持部56及び第2の接続部62の両側2点でハウジング20に固定されているため、ハウジング20が熱膨張又は収縮して寸法の変動が生じても、ハウジング20よりも線膨張係数の低い端子50が、ハウジング20の寸法の変動を抑制することとなる。これにより、熱膨張又は収縮によるハウジング20の寸法の変動を抑えることができる。
【0027】
図4に示すように、円筒部66のうち、位置決め部68の上端部から上側は、外部に露出しており、ハウジング20の第1の突出部32は、円筒部66の内部にある。円筒部66は、インサート成形時に、先端部34を形成する際の樹脂の通り道となっている。また、円筒部66の上端は、ハウジング20の先端部34の下端と当接している。円筒部66が相手側端子と接触することで、端子50は、相手側端子と電気的に接続される。円筒部66の上端部にハウジング20の先端部34が設けられているため、ユーザの指等がフード部40の内部に侵入した際、指等が円筒部66に接触することを防止している。
【0028】
ケース72は、図1図4に示すように、下壁が開口した箱状をなしており、上壁に固定孔74が開口して設けられている。固定孔74には、第2のカラー76が収容されている。また、第2のカラー76と端子50との間にナット78が収容されている。端子50の第1の接続部52の締結孔54には、図示しないボルトが挿通され、ナット78に螺合される。第2のカラー76は、ボルトの逃がし孔となっている。図4に示すように、ケース72の両側壁の下面は、一対の第1の台座部25の上面、及び、一対の第2の台座部27の上面に当接可能となっており、ハウジング20の収容空間S1に収容されたケース72は、下方への変位が規制されている。
【0029】
次に、本実施形態の作用について説明する。
コネクタ10を相手側コネクタに嵌合し、端子50の第1の接続部52に図示しない相手側の丸端子をボルトで固定する。その後、コネクタ10に車両からの振動が加わると、相手側の丸端子に固定された端子50の振動と、相手側コネクタに嵌合されたハウジング20の振動との間に位相差が生じ、境界面S2及び境界面S3に負荷がかかる。しかしながら、端子50は、境界面S2及び境界面S3を介して、2点でハウジング20に固定されていることから、従来のように端子がハウジングに1点で固定される場合と比較して、ハウジング20にかかる負荷が2点に分散されるため、端子50とハウジング20との境界面S2及び境界面S3でハウジング20に破断が生じることを防止できる。また、端子50がハウジング20に2点で固定されることにより、端子50はハウジング20と一体となり、1点で固定される場合と比較して、端子50は、振動により破断し難くなる。従って、端子50の板厚を、本実施形態のように、円筒部66の直径が3mm程度で、且つ、円筒部66の内部に樹脂が通過できる程度の薄い板厚としても、端子50が破断することを防止できる。
【0030】
以上のように本実施形態によれば、保持部56、及び、第2の接続部62の2点がハウジング20内に固定されるため、従来のように1点でハウジングに固定される場合と比較して、ハウジング20の端子50との境界面S2、S3にかかる負荷が2点に分散されるため、ハウジング20の端子50との境界面S2、S3で破断が生じることを防止できる。
また、端子50は、保持部56及び第2の接続部62の両側2点でハウジング20に固定されているため、ハウジング20が熱膨張又は収縮して寸法の変動が生じても、ハウジング20よりも線膨張係数の低い端子50が、ハウジング20の寸法の変動を抑制することとなる。これにより、熱膨張又は収縮によるハウジング20の寸法の変動を抑えることができる。
【0031】
また、保持部56の保持片60は、第1の基端部58より幅方向の長さが長いため、ハウジング20内に固定された保持部56がハウジング20から抜けようとしても、保持片60がハウジング内に引っかかる。これにより、保持部56がハウジング20から抜けることが防止される。
【0032】
第2の接続部62に第2の基端部64、及び、円筒部66を設けることで、第2の基端部64をハウジング20内に固定させるとともに、円筒部66の外面をハウジング20から露出させ、円筒部66を相手側端子との接触部とすることができる。
<他の実施形態>
本明細書によって開示される技術は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような種々の態様も含まれる。
(1)本実施形態では、第1の接続部52は方形板状をなす構成としたが、第1の接続部52の形状は問わず、例えば、円形板状をなす構成としても良い。
(2)本実施形態では、保持部56及び第2の接続部62をハウジング20に埋設し、2点でハウジング20に固定する構成としたが、端子にさらに保持部を追加し、3点以上でハウジング20に固定する構成としても良い。
(3)本実施形態では、端子50は2つとしたが、端子の数は1つでも良いし、3つ以上としても良い。
【符号の説明】
【0033】
10…コネクタ
20…ハウジング
50…端子
52…第1の接続部
56…保持部
58…第1の基端部
60…保持片
62…第2の接続部
64…第2の基端部
66…円筒部
図1
図2
図3
図4
図5
図6