特許第6866842号(P6866842)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6866842-放送受信装置および放送受信方法 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6866842
(24)【登録日】2021年4月12日
(45)【発行日】2021年4月28日
(54)【発明の名称】放送受信装置および放送受信方法
(51)【国際特許分類】
   H04B 1/16 20060101AFI20210419BHJP
   H04N 21/438 20110101ALI20210419BHJP
   H04B 7/08 20060101ALI20210419BHJP
   H04H 20/22 20080101ALI20210419BHJP
   H04H 60/11 20080101ALI20210419BHJP
   H04H 60/43 20080101ALI20210419BHJP
【FI】
   H04B1/16 Z
   H04N21/438
   H04B7/08 372A
   H04B7/08 710
   H04H20/22
   H04H60/11
   H04H60/43
【請求項の数】8
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2017-245136(P2017-245136)
(22)【出願日】2017年12月21日
(65)【公開番号】特開2019-114853(P2019-114853A)
(43)【公開日】2019年7月11日
【審査請求日】2020年5月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】308036402
【氏名又は名称】株式会社JVCケンウッド
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(72)【発明者】
【氏名】瀬藤 基
(72)【発明者】
【氏名】田中 広大
【審査官】 前田 典之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−268055(JP,A)
【文献】 特開2014−116692(JP,A)
【文献】 特開2001−077712(JP,A)
【文献】 特開2015−050515(JP,A)
【文献】 特開2009−077023(JP,A)
【文献】 特開2017−085198(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 1/16
H04B 7/08
H04H 20/22
H04H 60/11
H04H 60/43
H04N 21/438
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
放送信号を受信する複数の受信部と、
前記複数の受信部に選局させるチャネルを制御する制御部と、
選局中のチャネルで受信した放送内容を再生する再生処理部と、を備え、
前記複数の受信部の動作として、
a)前記複数の受信部の少なくとも一つにユーザが指定する指定放送局のチャネルを選局させ、前記複数の受信部の別の少なくとも一つに指定放送局に対応する中継局のいずれか一つの候補チャネルを固定サーチさせ、前記複数の受信部のさらに別の少なくとも一つに指定放送局に対応する中継局の一以上の候補チャネルを巡回サーチさせる第1状態と、
b)前記複数の受信部のうちの二つ以上の受信部であって前記第1状態にて指定放送局のチャネルを選局させる受信部の数よりも多い数の受信部に指定放送局のチャネルを選局させ、残りの少なくとも一つの受信部に指定放送局に対応する中継局の一以上の候補チャネルを巡回サーチさせる第2状態と、があり、
前記制御部は、前記第1状態にて選局中のチャネルの受信感度および固定サーチ中のチャネルの受信感度の双方が基準値未満となる場合、前記第1状態から前記第2状態に移行させることを特徴とする放送受信装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記第1状態にて選局中のチャネルの受信感度が基準値未満に低下する第1タイミングと、前記第1状態にて固定サーチ中のチャネルの受信感度が基準値未満に低下する第2タイミングとの時間差が所定値以内である場合、前記第1状態から前記第2状態に移行させることを特徴とする請求項1に記載の放送受信装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記第1状態にて選局中のチャネルの受信感度が基準値未満に低下する第1タイミングと、前記第1状態にて固定サーチ中のチャネルの受信感度が基準値未満に低下する第2タイミングとの時間差が前記所定値を超える場合、前記第1状態を維持させることを特徴とする請求項2に記載の放送受信装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記第2状態にて選局中のチャネルの受信感度が基準値以上に回復した場合、前記第2状態から前記第1状態に移行させることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の放送受信装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記第2状態にて選局中の指定放送局のチャネルの受信感度が基準値未満である一方、巡回サーチ中のチャネルの少なくとも一つの受信感度が基準値以上に回復した場合、指定放送局と放送内容が共通する受信感度が基準値以上に回復した中継局のチャネルを選局させることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の放送受信装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記第2状態にて選局中の指定放送局のチャネルの受信感度が基準値未満である一方、巡回サーチ中のチャネルの少なくとも一つの受信感度が基準値以上に回復した場合、前記第2状態を維持したまま指定放送局と放送内容が共通する中継局のチャネルを選局させ、前記第2状態にて選局中のチャネルの受信感度が基準値以上に回復した場合、前記第2状態から前記第1状態に移行させることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の放送受信装置。
【請求項7】
複数の受信部の少なくとも一つにユーザが指定する指定放送局のチャネルを選局させ、前記複数の受信部の別の少なくとも一つに指定放送局に対応する中継局のいずれか一つの候補チャネルを固定サーチさせ、前記複数の受信部のさらに別の少なくとも一つに指定放送局に対応する中継局の一以上の候補チャネルを巡回サーチさせる第1状態を実行させるステップと、
前記第1状態にて選局中のチャネルの受信感度および固定サーチ中のチャネルの受信感度の双方が基準値未満となる場合、前記第1状態から、前記複数の受信部のうちの二つ以上の受信部であって前記第1状態にて指定放送局のチャネルを選局させる受信部の数よりも多い数の受信部に指定放送局のチャネルを選局させ、残りの少なくとも一つの受信部に指定放送局に対応する中継局の一以上の候補チャネルを巡回サーチさせる第2状態に移行させるステップと、を備えることを特徴とする放送受信方法。
【請求項8】
複数の受信部の少なくとも一つにユーザが指定する指定放送局のチャネルを選局させ、前記複数の受信部の別の少なくとも一つに指定放送局に対応する中継局のいずれか一つの候補チャネルを固定サーチさせ、前記複数の受信部のさらに別の少なくとも一つに指定放送局に対応する中継局の一以上の候補チャネルを巡回サーチさせる第1状態を実行させる機能と、
前記第1状態にて選局中のチャネルの受信感度および固定サーチ中のチャネルの受信感度の双方が基準値未満となる場合、前記第1状態から、前記複数の受信部のうちの二つ以上の受信部であって前記第1状態にて指定放送局のチャネルを選局させる受信部の数よりも多い数の受信部に指定放送局のチャネルを選局させ、残りの少なくとも一つの受信部に指定放送局に対応する中継局の一以上の候補チャネルを巡回サーチさせる第2状態に移行させる機能と、をコンピュータに実現させることを特徴とするプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放送受信装置および放送受信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
車載用のテレビでは、搭載される車両の移動とともにテレビ放送信号の受信状態や受信可能な放送局が変化しうる。異なる放送エリア内に入ることで一部チャネルの受信状態が悪化したり、トンネル内に入ることで全チャネルの受信状態が悪化したりする。このような場合にその後に適切なチャネルが自動選局されることが好ましい。例えば、サーチ処理を複数回実行し、複数回のサーチ結果を比較することで最適なチャネルを選択する技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014−116692号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
受信状態が悪化した場合に複数回のサーチ結果を取得してから最適なチャネルを選択する場合、複数回のサーチが終了するまでの処理時間が長くなる。より短い時間で最適なチャネルを選択できることが好ましい。
【0005】
本発明は、上述の事情に鑑みてなされたものであり、受信状態の変化に応じてより適切なチャネル切替を実現する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のある態様の放送受信装置は、放送信号を受信する複数の受信部と、複数の受信部に選局させるチャネルを制御する制御部と、選局中のチャネルで受信した放送内容を再生する再生処理部と、を備える。複数の受信部の動作として、a)複数の受信部の少なくとも一つにユーザが指定する指定放送局のチャネルを選局させ、複数の受信部の別の少なくとも一つに指定放送局に対応する中継局のいずれか一つの候補チャネルを固定サーチさせ、複数の受信部のさらに別の少なくとも一つに指定放送局に対応する中継局の一以上の候補チャネルを巡回サーチさせる第1状態と、b)複数の受信部のうちの二つ以上の受信部であって第1状態にて指定放送局のチャネルを選局させる受信部の数よりも多い数の受信部に指定放送局のチャネルを選局させ、残りの少なくとも一つの受信部に指定放送局に対応する中継局の一以上の候補チャネルを巡回サーチさせる第2状態と、がある。制御部は、第1状態にて選局中のチャネルの受信感度および固定サーチ中のチャネルの受信感度の双方が基準値未満となる場合、第1状態から第2状態に移行させる。
【0007】
本発明の別の態様は、放送受信方法である。この方法は、複数の受信部の少なくとも一つにユーザが指定する指定放送局のチャネルを選局させ、複数の受信部の別の少なくとも一つに指定放送局に対応する中継局のいずれか一つの候補チャネルを固定サーチさせ、複数の受信部のさらに別の少なくとも一つに指定放送局に対応する中継局の一以上の候補チャネルを巡回サーチさせる第1状態を実行させるステップと、第1状態にて選局中のチャネルの受信感度および固定サーチ中のチャネルの受信感度の双方が基準値未満となる場合、第1状態から、複数の受信部のうちの二つ以上の受信部であって第1状態にて指定放送局のチャネルを選局させる受信部の数よりも多い数の受信部に指定放送局のチャネルを選局させ、残りの少なくとも一つの受信部に指定放送局に対応する中継局の一以上の候補チャネルを巡回サーチさせる第2状態に移行させるステップと、を備える。
【0008】
なお、以上の構成要素の任意の組合せや本発明の構成要素や表現を、方法、装置、システムなどの間で相互に置換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、受信状態の変化に応じてより適切にチャネルを切り替えできる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】放送受信装置の機能構成を模式的に示すブロック図である。
図2】放送受信方法の流れを模式的に示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。かかる実施の形態に示す具体的な数値等は、発明の理解を容易とするための例示にすぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0012】
図1は、放送受信装置10の機能構成を模式的に示すブロック図である。図示する各機能ブロックは、ハードウェア的には、コンピュータのCPUやメモリをはじめとする素子や機械装置で実現でき、ソフトウェア的にはコンピュータプログラム等によって実現されるが、ここでは、それらの連携によって実現される機能ブロックとして描いている。したがって、これらの機能ブロックはハードウェア、ソフトウェアの組み合わせによっていろいろなかたちで実現できることは、当業者には理解されるところである。
【0013】
放送受信装置10は、デジタルテレビ放送を受信するための装置であり、車両などの移動体に搭載して用いられる車載用のデジタルテレビ受信装置である。放送受信装置10が受信した放送内容は、表示装置40およびスピーカ42を通じて再生される。ユーザは、入力装置44を通じて視聴しようとする放送局またはチャネルを選択する。選択したチャネルの受信感度が良好であれば、指定したチャネルの放送内容が表示ないし出力される。
【0014】
放送受信装置10は、受信回路部12と、再生処理部14と、制御部20と、記憶部30とを備える。放送受信装置10は、表示装置40、スピーカ42および入力装置44と接続されている。表示装置40は、液晶ディスプレイ等であり、車両のセンターコンソールやダッシュボードの位置に取り付けられる。スピーカ42は、車載スピーカや表示装置40に隣接して設けられるスピーカなどである。入力装置44は、例えば、タッチパネル式のセンサであり、表示装置40の表示領域に設けられる。入力装置44はタッチ式ではなく、表示装置40の周辺に配置されるボタン等で構成されてもよい。
【0015】
受信回路部12は、第1受信部21、第2受信部22、第3受信部23、第4受信部24、第5受信部25、第6受信部26、第1復調部31、第2復調部32および第3復調部33を有する。複数の受信部21〜26のそれぞれには異なるアンテナが接続されており、各アンテナを通じて選局されたチャネルの放送信号を受信する。複数の受信部21〜26のそれぞれは、例えば、地上デジタル放送信号を受信するよう構成される。
【0016】
第1復調部31は、第1受信部21および第2受信部22と接続されており、第1受信部21および第2受信部22が受信した放送信号を復調する。第2復調部32は、第3受信部23および第4受信部24と接続されており、第3受信部23および第4受信部24が受信した放送信号を復調する。第3復調部33は、第5受信部25および第6受信部26と接続されており、第5受信部25および第6受信部26が受信した放送信号を復調する。複数の復調部31〜33のそれぞれは、例えば、受信した地上デジタル放送信号からトランスポートストリーム(TS)信号を生成するよう構成される。
【0017】
第1復調部31は、第1受信部21の受信信号と第2受信部22の受信信号を合成して復調するよう構成され、いわゆる2ダイバーシティ受信方式で復調信号を生成するよう構成される。同様に、第2復調部32は、第3受信部23の受信信号と第4受信部24の受信信号を合成して復調するよう構成され、第3復調部33は、第5受信部25の受信信号と第6受信部26の受信信号を合成して復調するよう構成される。ダイバーシティ受信方式を用いることで、搭載される車両の移動中の受信性能を向上させることができる。
【0018】
受信回路部12は、2ダイバーシティ受信方式で動作する場合、三つの受信系統A,B,Cを有する。例えば、A系統は第1受信部21、第2受信部22および第1復調部31で構成され、B系統は第3受信部23、第4受信部24および第2復調部32で構成され、C系統は第5受信部25、第6受信部26および第3復調部33で構成される。本明細書において、受信回路部12の動作を三つの受信系統A〜Cのそれぞれの動作として説明することがある。このとき、各受信系統A〜Cと、複数の受信部21〜26および複数の復調部31〜33との対応関係は、必ずしも固定的である必要はなく、動作状態に応じてその対応関係が動的に変化してもよい。
【0019】
受信回路部12は、3以上のダイバーシティ受信が実現できるよう構成されてもよいし、ダイバーシティ受信を用いないように構成されてもよい。ダイバーシティ受信を用いない場合、一つの受信部に対して一つの復調部が設けられるよう構成されてもよい。また、受信信号の感度に応じて、ダイバーシティ受信方式を切り替えるよう構成されてもよく、例えば、受信信号の感度が低い場合に、四つの受信部21〜24の受信信号を合成して復調するよう構成されてもよい。
【0020】
再生処理部14は、第1復調部31、第2復調部32および第3復調部33のいずれかが生成したTS信号から放送内容を再生する。再生処理部14は、映像処理部16と、音声処理部18とを有する。映像処理部16は、取得するTS信号から映像データを抽出し、抽出した映像データに基づく映像を表示装置40に表示させる。音声処理部18は、取得するTS信号から音声データを抽出し、抽出した音声データに基づく音声をスピーカ42に出力させる。
【0021】
再生処理部14は、TS信号に含まれる番組情報やデータ放送用情報などを抽出し、抽出した情報を表示装置40に表示するための表示画面を生成する。再生処理部14は、入力装置44を通じたユーザの入力操作を可能にするための操作画面を生成する。例えば、ユーザによるチャネルの選局操作、表示装置40の輝度調整、スピーカ42の音量調整を実現するための操作画面を生成する。また、再生処理部14は、選局中のチャネルが受信できない場合に受信不可などのエラーを通知するための表示画面を生成する。再生処理部14は、選局中のチャネルが受信不可となった場合、その直前に受信できていた画像を静止画として継続表示させてもよいし、黒色などの単一色の静止画を継続表示させてもよい。
【0022】
制御部20は、受信回路部12および再生処理部14の動作を制御する。制御部20は、ユーザが指定する放送局(指定放送局ともいう)のチャネルを受信回路部12に選局させ、指定放送局のチャネルで受信した放送内容が再生されるようにする。制御部20は、搭載される車両の移動により放送エリアが切り替わる場合であっても、スムーズな切替が可能となるように、指定放送局に対応する系列局や中継局をあらかじめサーチして特定する。放送エリアの切替時には、受信感度のより高い放送局に自動切替することで、視聴中のチャネルがシームレスに表示されるようにする。
【0023】
ここで、中継局とは、親放送局の電波を受信して増幅したものを放送する放送局のことをいう。中継局は、親放送局と同じ物理チャネル(周波数帯域)に対して同じ放送内容の電波を出力することもあれば、異なる物理チャネルに対して同じ放送内容の電波を出力することもある。一方、系列局とは主要放送局(キー局)のいずれかと同じネットワーク系列に属する各地方の放送局のことをいう。系列局は、主要放送局と同じ物理チャネルまたは異なる物理チャネルを使用し、放送時間帯に応じて主要放送局と共通する放送内容や系列局ごとに独自の放送内容の電波を出力する。
【0024】
日本の地上デジタル放送では、13ch〜52chの物理チャネルが使用される。使用される具体的な物理チャネルの組み合わせは放送地域によって異なるため、特定の放送局の放送内容を受信するためには、放送地域に応じて選局する物理チャネルを適切に選ぶ必要がある。親放送局から送信される放送信号には、自局に対応する中継局の物理チャネルの一覧を示す中継局リスト情報が含まれていることがあり、中継局リストを取得することでサーチすべき中継局の候補チャネルを絞り込むことができる。また、放送信号から復調されるTS信号には放送局を特定するための識別情報(例えばTSID)が含まれており、その識別情報を参照することで放送局を特定できる。親放送局とその中継局は共通のTSIDが付与されるため、TSIDが一致する物理チャネルをサーチすることで、指定放送局に対応する中継局のチャネルをあらかじめ特定できる。なお、系列局の場合には異なるTSIDが付与される。この場合、各放送局の系列関係を定めるTSIDのテーブル情報などをあらかじめ保持し、保持するテーブル情報を参照することで指定放送局に対応する系列局のチャネルを特定できる。このようにしてTSIDを比較することで、放送内容が共通する中継局または系列局のチャネルを特定できる。
【0025】
制御部20は、受信回路部12を第1状態または第2状態の動作状態で動作させる。第1状態では、複数の受信部21〜26の少なくとも一つにユーザが指定する指定放送局のチャネルを選局させ、複数の受信部21〜26の別の少なくとも一つに指定放送局に対応する中継局のいずれか一つの候補チャネルを固定サーチさせ、複数の受信部21〜26のさらに別の少なくとも一つに指定放送局に対応する中継局の一以上の候補チャネルを巡回サーチさせる。例えば、A系統に指定放送局を選局させ、B系統に中継局のいずれか一つの候補チャネルを継続的にサーチ(固定サーチ)させ、C系統に中継局の一以上の候補チャネルを巡回サーチさせる。
【0026】
一方、第2状態では、複数の受信部21〜26のうち、第1状態にて指定放送局のチャネルを選局させる受信部の数よりも多い数の受信部に指定放送局のチャネルを選局させ、残りの少なくとも一つの受信部に指定放送局に対応する中継局の一以上の候補チャネルを巡回サーチさせる。例えば、A系統とB系統の双方に指定放送局のチャネルを選局させ、C系統に指定放送局に対応する中継局の一以上の候補チャネルを巡回サーチさせる。
【0027】
制御部20は、復調されたTS信号から指定放送局に対応する中継局または系列局のチャネルを特定する。制御部20は、例えば、A系統にて復調されるTS信号から指定放送局の中継局リストを取得し、中継局リストに含まれる物理チャネルを中継局の候補チャネルとする。制御部20は、中継局リストに含まれる物理チャネルをC系統に順番にサーチさせ、受信可能な中継局のチャネルを特定する。制御部20は、各放送局の系列関係が定められたテーブル情報をあらかじめ保持し、保持するテーブル情報を参照して対応する中継局または系列局の候補チャネルを特定してもよい。
【0028】
制御部20は、受信回路部12から受信可能なチャネルの受信感度に関する情報を取得する。制御部20は、例えば、A系統にて受信する指定放送局のチャネルの受信感度と、B系統またはC系統にて受信する中継局または系列局の候補チャネルの受信感度を取得する。制御部20は、取得した受信感度が所定の基準値以上であれば、受信可能な状態であると判定し、取得した受信感度が所定の基準値未満であれば、受信不能な状態であると判定する。放送信号の受信感度は、例えば、放送信号の搬送波対雑音比(C/N比)の値に基づいて判定される。
【0029】
制御部20は、中継局や系列局の候補チャネルのサーチ結果を記憶部30に保持させる。制御部20は、中継局リストに含まれる物理チャネルを「候補チャネル」として記憶部30に登録する。制御部20は、候補チャネルのうちサーチにより受信感度が基準値以上と確認されたチャネルを「受信可能チャネル」として記憶部30に登録する。制御部20は、受信可能チャネルのうち放送内容が指定放送局と共通するチャネルを「代替可能チャネル」として記憶部30に登録する。代替可能チャネルに該当するか否かは、視聴中のチャネルのTSIDと、サーチしたチャネルのTSIDとが一致または対応するか否かにより判定される。記憶部30は、サーチ結果の一つとして各チャネルの受信感度の値(例えばC/N比値)を併せて保持してもよい。
【0030】
制御部20は、指定放送局が受信可能であり、記憶部30に「代替可能チャネル」が登録されていれば、受信回路部12を第1状態で動作させる。具体的には、A系統に視聴中チャネルを選局させ、B系統に代替可能チャネルを固定サーチさせ、C系統に候補チャネルを巡回サーチさせる。これにより、第1状態において、視聴中チャネルと受信可能チャネルの双方の受信感度を同時に計測できるようにする。制御部20は、さらに、同時計測される複数のチャネルの受信感度に基づいて、搭載する車両がトンネルや地下施設などの放送電波が届かない場所に入って「受信不可状態」になったか否かを判断する。
【0031】
制御部20は、A系統およびB系統にて同時計測される二つのチャネルの受信感度が同じタイミングで基準値未満となる場合、上述の「受信不可状態」になったものと判断する。複数のチャネルの電波強度が同様に低下する場合には、車両が電波を受信できない場所に移動した可能性が高いと考えられるためである。制御部20は、A系統のチャネルの受信感度が基準値未満となる第1タイミングと、B系統のチャネルの受信感度が基準値未満となる第2タイミングとが所定の関係を満たす場合に「受信不可状態」になったと判断してもよい。例えば、第1タイミングと第2タイミングの時間差が所定値(例えば、0.1秒、0.5秒、1秒、5秒)以内である場合に「受信不可状態」になったと判断してもよい。一方、第1タイミングと第2タイミングの時間差が所定値を超える場合、「受信不可状態」ではないと判断し、直前の動作状態を維持する。
【0032】
制御部20は、第1状態にて「受信不可状態」になったと判断する場合、受信回路部12の動作を第1状態から第2状態に移行させる。具体的には、B系統による受信可能チャネルの固定サーチを中止させ、A系統およびB系統の双方に視聴中チャネルを選局させる。受信不可状態の場合、チャネルを自動切替したとしても切替後のチャネルも視聴不能であるため、チャネル切替のメリットがない。また、トンネルや地下施設から抜け出して視聴可能な状態に回復した場合、視聴不能になる直前の状況と同様、つまり、指定放送局の受信感度が良好である可能性が高いと考えられる。この場合に、視聴中チャネルから中継局または系列局のチャネルに自動切替してしまうと、受信可能になった後に指定放送局を再選局しなければならず、視聴チャネルが再生される状態に復帰するまでの時間が長くなってしまう。そこで、本実施の形態では、受信不可状態である場合、チャネルの自動切替をせずに元のチャネルを継続して選局しておく。これにより、受信可能になったタイミングから選局中のチャネルの放送内容を再生できる。さらに、A系統とB系統の双方に視聴中チャネルを選局させて受信感度を高めることで、受信状態が回復してから視聴可能な状態に復帰するまでの時間を短縮化できる。なお、第2状態においても、C系統は継続して中継局の候補チャネルを巡回サーチしている。
【0033】
制御部20は、第2状態において視聴中チャネルの受信状態が基準値以上となって受信可能となった場合、「受信不可状態」を解除し、第2状態から第1状態に移行させ、視聴中チャネルの再生を再開させる。一方、第2状態において視聴中チャネルが受信不可のまま、C系統にて巡回サーチしている代替可能チャネルの受信感度が基準値以上となった場合、「受信不可状態」を解除し、指定放送局を代替可能チャネルに変更し、A系統およびB系統の双方に代替可能チャネルを選局させる。これにより、トンネルなどを抜けて異なる放送地域に入ったと考えられる場合に放送内容が共通する代替可能チャネルに自動切替し、同じ放送内容の再生を再開できる。
【0034】
図2は、放送受信方法の流れを模式的に示すフローチャートである。放送受信装置10は、ユーザから指定された放送局をA系統およびB系統の双方で選局し(S10)、受信した放送内容を再生するとともに中継局リストを取得する(S12)。指定放送局の受信感度が基準値以上であって受信可能であり(S14のY)、代替可能チャネルが登録されていれば(S16のY)、A系統に指定放送局を選局させ、B系統にて代替可能チャネルを固定サーチさせる(S18)。代替可能チャネルが登録されていなければ(S16のN)、S18をスキップし、A系統およびB系統での指定放送局の選局を継続させる。つづいて、C系統にて中継局の候補チャネルを巡回サーチさせ(S20)、サーチ対象の受信感度が基準値以上であって受信可能であり(S22のY)、サーチ対象の放送内容が視聴中チャネルと共通していれば(S24のY)、そのチャネルを代替可能チャネルとして記憶部30に登録する(S26)。サーチ対象の受信感度が基準値未満であって受信不可であれば(S22のN)、S24〜S26の処理をスキップする。サーチ対象の放送内容が視聴中チャネルと共通していなければ(S24のN)、S26の処理をスキップする。視聴中チャネルが受信可能な状況が継続すれば(S14のY)、中継局リストに含まれる一以上の候補チャネルを対象としてS16〜S26の処理を繰り返し実行する。これにより、視聴中チャネルに対応する「代替可能チャネル」の情報が最新に保たれる。
【0035】
A系統での指定放送局の受信感度が基準値未満に低下して受信不可となり(S14のN)、B系統での代替可能チャネルの受信感度が基準値未満に低下して受信不可となる場合(S30のN)、A系統にて受信感度が基準値未満となった第1タイミングと、B系統にて受信感度が基準値未満となった第2タイミングとを比較する(S32)。第1タイミングと第2タイミングの時間差が所定値以内であれば(S32のY)、受信不可状態になったと判断し、A系統およびB系統の双方に指定放送局を選局させて第2状態に移行させ(S34)、C系統にて中継局の候補チャネルを巡回サーチさせる(S36)。A系統およびB系統にて指定放送局が受信可能となれば(S38のY)、受信不可状態を解除してS14〜S26の処理を実行する。A系統およびB系統にて指定放送局が受信不可であり(S38のN)、C系統にて代替可能チャネルが受信不可であれば(S40のN)、S36〜S40の処理を繰り返す。一方、C系統にて代替可能チャネルが受信可能であれば(S40のY)、指定放送局を代替可能チャネルに変更し(S42)、フローの最初に戻ってA系統およびB系統にて代替可能チャネルを指定放送局として選局する(S10)。S30において、B系統にて代替可能チャネルが受信可能である場合(S30のY)、指定放送局を代替可能チャネルに変更し(S42)、フローの最初に戻ってA系統およびB系統にて代替可能チャネルを指定放送局として選局する(S10)。S32において、第1タイミングと第2タイミングの時間差が所定値を超える場合(S32のN)、S14に戻る。
【0036】
本実施の形態によれば、A系統およびB系統のそれぞれにて受信する異なるチャネルの受信感度が同時に低下する場合に受信不可状態と判断することにより、トンネルや地下施設などに入って全ての放送電波が受信できない状態となったことをより精度良く判定できる。また、受信不可状態となった場合、A系統とB系統の双方に同じチャネルを選局させる第2状態に移行することで、トンネルや地下施設から抜け出ようとするときの電波の受信感度を高め、視聴中チャネルの放送内容を再生をより早期に再開できる。これにより、受信状態の変化によって放送内容が途切れてしまう時間を極力短くすることができ、ユーザの利便性を高めることができる。
【0037】
以上、本発明を上述の実施の形態を参照して説明したが、本発明は上述の実施の形態に限定されるものではなく、各表示例に示す構成を適宜組み合わせたものや置換したものについても本発明に含まれるものである。
【0038】
上述の実施の形態では、第1状態のB系統に代替可能チャネルを継続して選局させる場合を示した。変形例においては、第1状態のB系統に代替可能チャネル以外の受信可能チャネルを継続して選局させてもよい。この場合であっても、受信可能な複数のチャネルの受信感度が同時に低下したことを検知して受信不可状態となったか否かを判断することができる。
【0039】
上述の実施の形態では、6個の受信部を用いて三つの受信系統A〜Cを実現させる場合について示した。変形例においては、5個以下または7個以上の受信部を用いて三つの受信系統A〜Cを実現させてもよい。例えば、4個の受信部を用いるとともに、A系統に二つの受信部を割り当て、B系統およびC系統のそれぞれに一つの受信部を割り当ててもよい。その他、A系統およびB系統に一つの受信部を割り当て、C系統に二つの受信部を割り当ててもよい。
【0040】
上述の実施の形態では、地上デジタル放送を受信するための放送受信装置10について説明した。変形例においては、地上デジタル放送以外の放送を受信するための放送受信装置に上述の内容を適用してもよい。例えば、ラジオ放送を受信するための放送受信装置において、上述の中継局または系列局への自動切替や、段階的なサーチ処理方法を適用してもよい。
【符号の説明】
【0041】
10…放送受信装置、12…受信回路部、14…再生処理部、16…映像処理部、18…音声処理部、20…制御部、21…第1受信部、22…第2受信部、23…第3受信部、24…第4受信部、25…第5受信部、26…第6受信部、30…記憶部、31…第1復調部、32…第2復調部、33…第3復調部、40…表示装置、42…スピーカ、44…入力装置。
図1
図2