特許第6866845号(P6866845)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6866845
(24)【登録日】2021年4月12日
(45)【発行日】2021年4月28日
(54)【発明の名称】ウレタン系接着剤組成物
(51)【国際特許分類】
   C09J 175/04 20060101AFI20210419BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20210419BHJP
【FI】
   C09J175/04
   C09J11/06
【請求項の数】6
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2017-532573(P2017-532573)
(86)(22)【出願日】2016年7月29日
(86)【国際出願番号】JP2016072328
(87)【国際公開番号】WO2017022666
(87)【国際公開日】20170209
【審査請求日】2019年7月17日
(31)【優先権主張番号】特願2015-153046(P2015-153046)
(32)【優先日】2015年8月3日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006714
【氏名又は名称】横浜ゴム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100152984
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 秀明
(74)【代理人】
【識別番号】100148080
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 史生
(72)【発明者】
【氏名】阿部 愛美
(72)【発明者】
【氏名】松木 裕一
【審査官】 松原 宜史
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−131940(JP,A)
【文献】 特開2006−111811(JP,A)
【文献】 特開2014−122302(JP,A)
【文献】 特開2006−096912(JP,A)
【文献】 特開2010−121011(JP,A)
【文献】 国際公開第2015/166610(WO,A1)
【文献】 国際公開第2016/080508(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00−201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
イソシアネート基を有するウレタンプレポリマーと、イソシアヌレート環を有するイソシアヌレート化合物と、活性水素を有するテルペン化合物とを含有し、前記イソシアヌレート化合物が、脂肪族ジイソシアネートのイソシアヌレート化合物である、ウレタン系接着剤組成物。
【請求項2】
前記脂肪族ジイソシアネートのイソシアヌレート化合物が、ペンタメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体である、請求項に記載のウレタン系接着剤組成物。
【請求項3】
前記活性水素が、フェノール化合物由来である、請求項1又は2に記載のウレタン系接着剤組成物。
【請求項4】
前記テルペン化合物が、モノテルペンまたは水添モノテルペンのオリゴマーのフェノール変性体である、請求項1〜のいずれか1項に記載のウレタン系接着剤組成物。
【請求項5】
更に、シランカップリング剤を含有する、請求項1〜のいずれか1項に記載のウレタン系接着剤組成物。
【請求項6】
オレフィン樹脂を含む基材を接着するために使用される、請求項1〜のいずれか1項に記載のウレタン系接着剤組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウレタン系接着剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車の車体(ボディー)には、軽量化の観点から、鋼板に代えて、樹脂材料(例えば、オレフィン系樹脂や繊維強化プラスチック(FRP)のマトリックス樹脂など)が使用されるようになっている。
このような自動車のボディと窓ガラス(ウインドガラス)とを接着するために用いられるダイレクトグレージング剤(DG剤)として、ウレタン系接着剤組成物が使用されている。
【0003】
一方、特許文献1には、ポリブタジエンポリオール10〜60質量%を含むポリオール(a)と、ポリイソシアネート(b)とを反応させてなるウレタンプレポリマー(A)と、イソシアヌレート基含有ポリイソシアネート(B)とを含有する主剤と、ポリブタジエンポリオール10〜50質量%を含むポリオール(C)を含有する硬化剤とからなり、前記主剤に含まれるイソシアネート基と前記硬化剤に含まれるヒドロキシ基とのモル比(NCO/OH)が0.8〜1.05である、2液硬化型ポリウレタン樹脂組成物が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−96912号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者らは、特許文献1を参考にして、ウレタンプレポリマー及びイソシアヌレート環を有する化合物等を含有する組成物を調製しこれを評価したところ、このような組成物は、プライマーレス(基材にプライマーを使用しない)でのオレフィン樹脂等に対する接着性(初期接着性、耐熱試験後の接着性)や、硬度、破断時伸びのような硬化物の物性が劣る場合があることが明らかとなった。
【0006】
そこで、本発明は、プライマーレスでの接着性、硬化物の物性に優れるウレタン系接着剤組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討した結果、ウレタンプレポリマー及びイソシアヌレート環を有する化合物を含有する組成物に対して、活性水素を有するテルペン化合物を配合することによって、プライマーレスでの接着性、硬化物の物性が優れることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、以下の構成により上記課題を解決できることを見出した。
【0008】
1. イソシアネート基を有するウレタンプレポリマーと、イソシアヌレート環を有するイソシアヌレート化合物と、活性水素を有するテルペン化合物とを含有する、ウレタン系接着剤組成物。
2. イソシアヌレート化合物が、脂肪族ジイソシアネートのイソシアヌレート化合物である、上記1に記載のウレタン系接着剤組成物。
3. 脂肪族ジイソシアネートのイソシアヌレート化合物が、ペンタメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体である、上記2に記載のウレタン系接着剤組成物。
4. 活性水素が、フェノール化合物由来である、上記1〜3のいずれかに記載のウレタン系接着剤組成物。
5. テルペン化合物が、モノテルペンまたは水添モノテルペンのオリゴマーのフェノール変性体である、上記1〜4のいずれかに記載のウレタン系接着剤組成物。
6. 更に、シランカップリング剤を含有する、上記1〜5のいずれかに記載のウレタン系接着剤組成物。
7. オレフィン樹脂を含む基材を接着するために使用される、上記1〜6のいずれかに記載のウレタン系接着剤組成物。
【発明の効果】
【0009】
以下に示すように、本発明によれば、プライマーレスでの接着性、硬化物の物性に優れる、ウレタン系接着剤組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明について以下詳細に説明する。
なお、本明細書において、本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
また、本明細書において、成分が2種以上の物質を含む場合、上記成分の含有量とは、2種以上の物質の合計の含有量を指す。
本明細書において、プライマーレスでの接着性及び硬化物の物性のうちの少なくとも1つがより優れる場合を、「本発明の効果がより優れる」という。
【0011】
本発明のウレタン系接着剤組成物(本発明の接着剤組成物)は、イソシアネート基を有するウレタンプレポリマーと、イソシアヌレート環を有するイソシアヌレート化合物と、活性水素を有するテルペン化合物とを含有する、ウレタン系接着剤組成物である。
【0012】
本発明の接着剤組成物は上記の構成をとるため、所望の効果が得られると考えられる。その理由は明らかではないが、およそ以下のように考えられる。
本発明の接着剤組成物に含有される所定のテルペン化合物は活性水素を有するのでウレタンプレポリマー及び/又はイソシアヌレート化合物と反応し、得られる硬化物に柔軟性を付与することができるため、これによって、本発明の接着剤組成物は接着性、硬化物の物性に優れると考えられる。
以下、本発明の接着剤組成物に含有される各成分について詳述する。
【0013】
[ウレタン系接着剤組成物]
<ウレタンプレポリマー>
本発明の接着剤組成物に含有されるウレタンプレポリマーはイソシアネート基を有する化合物である。ウレタンプレポリマーは、複数のイソシアネート基(好ましくは2個のイソシアネート基)を有することが好ましい態様の1つとして挙げられる。
ウレタンプレポリマーは、イソシアネート基を分子末端に有することが好ましい。
ウレタンプレポリマーとしては、従来公知のものを用いることができる。例えば、ポリイソシアネート化合物と1分子中に2個以上の活性水素含有基を有する化合物(以下、「活性水素化合物」と略す。)とを、活性水素含有基に対してイソシアネート基が過剰となるように反応させることにより得られる反応生成物等を用いることができる。
本発明において、活性水素含有基は活性水素を含有する基を意味する。活性水素含有基としては例えば、ヒドロキシ基、アミノ基、イミノ基が挙げられる。
【0014】
(ポリイソシアネート化合物)
ウレタンプレポリマーの製造の際に使用されるポリイソシアネート化合物は、分子内にイソシアネート基を2個以上有するものであれば特に限定されない。
ポリイソシアネート化合物としては、例えば、トリレンジイソシアネート(TDI。例えば、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI。例えば、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート)、1,4−フェニレンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネート、キシリレンジイソシアネート(XDI)、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)、トリジンジイソシアネート(TODI)、1,5−ナフタレンジイソシアネート(NDI)、トリフェニルメタントリイソシアネートのような芳香族ポリイソシアネート化合物;
ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート(TMHDI)、リジンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート(NBDI)、トランスシクロヘキサン−1,4−ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン(H6XDI)、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(H12MDI)のような、脂肪族及び/又は脂環式のポリイソシアネート;
これらのカルボジイミド変性ポリイソシアネートが挙げられる。
【0015】
ポリイソシアネート化合物は、それぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
これらのうち、硬化性に優れる理由から、芳香族ポリイソシアネートが好ましく、MDIがより好ましい。
【0016】
(活性水素化合物)
ウレタンプレポリマーの製造の際に使用される1分子中に2個以上の活性水素含有基を有する化合物(活性水素化合物)は特に限定されない。活性水素含有基としては、例えば、水酸(OH)基、アミノ基、イミノ基が挙げられる。
【0017】
上記活性水素化合物としては、例えば、1分子中に2個以上の水酸(OH)基を有するポリオール化合物、1分子中に2個以上のアミノ基および/またはイミノ基を有するポリアミン化合物等が好適に挙げられ、中でも、ポリオール化合物であることが好ましい。
【0018】
上記ポリオール化合物は、OH基を2個以上有する化合物であれば、その分子量および骨格などは特に限定されず、その具体例としては、ポリエーテルポリオール;ポリエステルポリオール;アクリルポリオール、ポリブタジエンジオール、水素添加されたポリブタジエンポリオールなどの炭素−炭素結合を主鎖骨格に有するポリマーポリオール;低分子多価アルコール類;これらの混合ポリオールが挙げられる。なかでも、ポリエーテルポリオールが好ましい態様の1つとして挙げられる。
【0019】
ポリエーテルポリオールは、主鎖としてポリエーテルを有し、ヒドロキシ基を2個以上有する化合物であれば特に制限されない。ポリエーテルとは、エーテル結合を2以上有する基であり、その具体例としては、例えば、構造単位−Ra−O−Rb−を合計して2個以上有する基が挙げられる。ここで、上記構造単位中、RaおよびRbは、それぞれ独立して、炭化水素基を表す。炭化水素基は特に制限されない。例えば、炭素数1〜10の直鎖状のアルキレン基が挙げられる。
ポリエーテルポリオールとしては、例えば、ポリオキシエチレンジオール(ポリエチレングリコール)、ポリオキシプロピレンジオール(ポリプロピレングリコール:PPG)、ポリオキシプロピレントリオール、エチレンオキサイド/プロピレンオキサイド共重合体、ポリテトラメチレンエーテルグリコール(PTMEG)、ポリテトラエチレングリコール、ソルビトール系ポリオール等が挙げられる。
ポリエーテルポリオールは、ポリイソアネート化合物との相溶性に優れるという観点から、ポリプロピレングリコール、ポリオキシプロピレントリオールが好ましい。
ポリエーテルポリオールの重量平均分子量は、イソシアネート化合物との反応によって得られるウレタンプレポリマーの粘度が常温において適度な流動性を有するという観点から、500〜20,000であることが好ましい。本発明において上記重量平均分子量は、GPC法(溶媒:テトラヒドロフラン(THF))により得られたポリスチレン換算値である。
活性水素化合物はそれぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0020】
ウレタンプレポリマーは、接着性により優れ、硬化性に優れるという観点から、ポリエーテルポリオールと芳香族ポリイソシアネート化合物とを反応させてなるウレタンプレポリマーであることが好ましい。
ウレタンプレポリマーはそれぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
ウレタンプレポリマーの製造方法は特に制限されない。例えば、活性水素化合物が有する活性水素含有基(例えばヒドロキシ基)1モルに対し、1.5〜2.5モルのイソシアネート基が反応するようにポリイソシアネート化合物を使用し、これらを混合して反応させることによってウレタンプレポリマーを製造することができる。
ウレタンプレポリマーはそれぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0021】
<イソシアヌレート化合物>
本発明の接着剤組成物に含有されるイソシアヌレート化合物は、イソシアヌレート環を有する化合物である。
【0022】
イソシアヌレート化合物としては、オレフィン基材との接着性がより良好となるという理由から、脂肪族ジイソシアネートのイソシアヌレート化合物(C1)、脂肪族イソシアネートシランのイソシアヌレート化合物(C2)、イソシアヌレート環を有する(メタ)アクリレート化合物(C3)、イソシアヌレート環を有するチオール化合物(C4)、および、イソシアヌレート環を有するグリシジル化合物(C5)からなる群から選択される少なくとも1種の化合物が好適に挙げられる。
ここで、「(メタ)アクリレート化合物」とは、アクリロイルオキシ基またはメタクリロイルオキシ基を有する化合物のことをいい、後述する「(メタ)アクリロイルオキシ基」とは、アクリロイルオキシ基またはメタクリロイルオキシ基をいう。
【0023】
(イソシアヌレート化合物(C1))
イソシアヌレート化合物(C1)は、脂肪族ジイソシアネートのイソシアヌレート化合物である。
上記イソシアヌレート化合物(C1)としては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、ペンタメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート(TMHDI)、リジンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート(NBDI)等の脂肪族ジイソシアネートのイソシアヌレート化合物が挙げられる。
なかでも、HDIのイソシアヌレート体である下記式(C1−1)で表される化合物、ペンタメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体である下記式(C1−2)で表される化合物が好適に挙げられる。
また、なかでも、イソシアヌレート化合物(C1)は、本発明の効果により優れ、粘度が低いため組成物中に添加しやすく、また分子量が小さいため少ない添加量でより効果的に組成物中のイソシアヌレート化合物(C1)の含有量を増やすことができるという理由から、下記式(C1−2)で表される化合物であることが最も好適である。
【化1】
【0024】
(イソシアヌレート化合物(C2))
上記イソシアヌレート化合物(C2)は、脂肪族イソシアネートシランのイソシアヌレート化合物である。
ここで、イソシアヌレート化合物(C2)を構成することができる脂肪族イソシアネートシランは、脂肪族化合物に由来するイソシアネート基と加水分解性ケイ素含有基とを有する化合物であり、例えば、イソシアネート基含有脂肪族化合物と、イソシアネート基と反応し得る官能基と加水分解性ケイ素含有基とを有する化合物とを反応させて得ることができる。
上記イソシアヌレート化合物(C2)としては、具体的には、例えば、イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、イソシアネートプロピルトリメトキシシラン等の脂肪族イソシアネートシランをイソシアヌレート化した化合物等が好適に挙げられる。
【0025】
((メタ)アクリレート化合物(C3))
上記(メタ)アクリレート化合物(C3)は、イソシアヌレート環と(メタ)アクリロイルオキシ基とを有する化合物であれば特に限定されない。
上記(メタ)アクリレート化合物(C3)としては、具体的には、例えば、エトキシキ化イソシアヌル酸トリアクリレート、ε−カプロラクトン変性トリス(2−アクリロキシエチル)イソシアヌレート;ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、ペンタメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート(TMHDI)、リジンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート(NBDI)等の脂肪族ジイソシアネートと、ヒドロキシエチルアクリルアミド等の水酸基含有アクリルアミドモノマーや4ヒドロキシブチルアクリレート等の水酸基含有アクリレートと、を反応させて得られる化合物;等が挙げられる。
【0026】
(チオール化合物(C4))
上記チオール化合物(C4)は、イソシアヌレート環とメルカプト基とを有する化合物であれば特に限定されない。
上記チオール化合物(C4)としては、具体的には、例えば、トリス(エチル−3−メルカプトプロピオネート)イソシアヌレート、1,3,5−トリス(3−メルカプトブチリルオキシエチル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオン等が挙げられる。
【0027】
(グリシジル化合物(C5))
上記グリシジル化合物(C5)は、イソシアヌレート環とエポキシ基とを有する化合物であれば特に限定されない。
上記グリシジル化合物(C5)としては、具体的には、例えば、1,3,5−トリス(2,3−エポキシプロピル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオン等が挙げられる。
【0028】
イソシアヌレート化合物は、本発明の効果により優れるという点から、脂肪族ジイソシアネートのイソシアヌレート化合物(C1)であることが好ましい。
【0029】
イソシアヌレート化合物はその製造について特に制限されない。例えば従来公知のものが挙げられる。またイソシアヌレート化合物として市販品を使用することができる。
イソシアヌレート化合物はそれぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0030】
イソシアヌレート化合物の含有量は、ウレタンプレポリマー100質量部に対して、0.5〜10質量部であることが好ましく、1〜5質量部であることがより好ましい。
【0031】
<活性水素を有するテルペン化合物>
本発明の接着剤組成物に含有される、活性水素を有するテルペン化合物(テルペン化合物)は、活性水素を有し、テルペンに由来する化合物である。
活性水素を有するテルペン化合物は、活性水素として、例えば、ヒドロキシ基を有することができる。活性水素は、本発明の効果がより優れる点で、フェノール化合物由来であることが好ましい。
活性水素を有するテルペン化合物としては、例えば、活性水素を有するモノテルペン又は活性水素を有する水添モノテルペンのような、変性モノテルペン;
モノテルペン若しくは水添モノテルペンのオリゴマーの変性体、又は、変性モノテルペンのオリゴマーのような、変性オリゴマーが挙げられる。
【0032】
ここで、テルペンとは、イソプレン則に基づく一連の化合物、すなわち、分子式(C58nで表される化合物の総称である。上記nは例えば2〜8とすることができる。
モノテルペンとは、分子式(C582で表される化合物をいう。
オリゴマーは、モノテルペンまたは水添モノテルペンに由来する繰り返し単位を2〜6個有することができる。オリゴマーは、単独重合体(ホモオリゴマー)であってもよく、共重合体(コオリゴマー)であってもよい。
【0033】
・モノテルペン
所定のテルペン化合物を構成しうるモノテルペンとしては、例えば、下記式(1)で表される化合物(α−ピネン)、下記式(2)で表される化合物(β−ピネン)、下記式(3)で表される化合物(リモネン)、ミルセン、カルボン、カンファー等が挙げられ、これらを1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【化2】
【0034】
・水添モノテルペン
所定のテルペン化合物を構成しうる水添モノテルペンは、上記モノテルペンを水素化したテルペン化合物である。水添は部分水添であってもよい。
上記水添モノテルペンとしては、例えば、下記式(4)で表される化合物(p−メンタン)等が挙げられる。
【化3】
【0035】
(変性モノテルペン)
上記変性モノテルペンは、上記モノテルペンまたは上記水添モノテルペンを水酸基変性したモノテルペンである。
変性モノテルペンは、モノテルペンを水酸基変性したモノテルペンであることが好ましい態様の1つとして挙げられる。
上記変性モノテルペンとしては、例えば、下記式(5)で表される化合物(α−ターピネオール)、下記式(6)で表される化合物(β−ターピネオール)、下記式(7)で表される化合物(γ−ターピネオール)等が挙げられ、これらを1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【化4】
【0036】
(変性オリゴマー)
変性オリゴマーは、モノテルペンまたは水添モノテルペンのオリゴマーの変性体であることが好ましく、モノテルペンまたは水添モノテルペンのオリゴマーのフェノール変性体であることがより好ましい。
上記変性オリゴマーは、上記モノテルペンまたは上記変性モノテルペンに由来する繰り返し単位を2〜6個有する化合物であることが好ましい態様の1つとして挙げられる。
上記変性オリゴマーとしては、テルペンフェノール樹脂が挙げられる。具体的には例えば、下記式(8)で表される化合物(テルペンフェノール樹脂)等が挙げられる。
【化5】
【0037】
ここで、上記式(8)中、mは2〜6の数を表し、nは1〜3の数を表し、m×nは2〜6の数を表す。
また、mおよびm×nは、2〜5の数であることが好ましく、2〜3の数であることがより好ましい。
【0038】
上述した各テルペン化合物のうち、臭気が少なく、作業性が良好となる理由から、上記変性オリゴマーであることが好ましく、上記式(8)で表される化合物であることがより好ましい。
【0039】
テルペン化合物はそれぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。テルペン化合物はその製造方法について特に制限されない。例えば従来公知のものが挙げられる。
【0040】
テルペン化合物の含有量は、ウレタンプレポリマー100質量部に対して、0.1〜10質量部であることが好ましく、0.1〜3質量部であることがより好ましい。
【0041】
(シランカップリング剤)
本発明の接着剤組成物は、本発明の効果がより優れる点で、更に、シランカップリング剤を含有することが好ましい。
シランカップリング剤としては、例えば、イソシアネートシラン;アミノアルコキシシラン;メルカプトアルコキシシラン;モノスルフィド結合と加水分解性シリル基とを有するモノスルフィド化合物等が挙げられる。
なかでも、本発明の効果がより優れる点で、イソシアネートシラン、モノスルフィド化合物が好ましい。
【0042】
・イソシアネートシラン
イソシアネートシランとしては、例えば、イソシアネート基を有するシランカップリング剤であれば特に制限されない。例えば、イソシアネートプロピルトリメトキシシラン、イソシアネートプロピルトリエトキシシラン;ポリイソシアネート化合物(イソシアヌレート環を有するものを除く。)と、N,N−ビス[(3−トリメトキシシリル)プロピル]アミン、N,N−ビス[(3−トリエトキシシリル)プロピル]アミン、N,N−ビス[(3−トリプロポキシシリル)プロピル]アミン、3−(n−ブチルアミノ)プロピルトリメトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシランおよび3−(n−プロピルアミノ)プロピルトリメトキシシランからなる群から選択される1種以上のアミン系シラン化合物とを付加させて得られる化合物が挙げられる。
【0043】
・モノスルフィド化合物
モノスルフィド化合物は、モノスルフィド結合と加水分解性シリル基とを有し、上記モノスルフィド結合と上記加水分解性シリル基が有するケイ素原子とが結合する化合物であることが好ましい態様の1つとして挙げられる。
【0044】
加水分解性シリル基が有する加水分解性基(加水分解性基はケイ素原子に結合する。)は特に制限されない。加水分解性基としては例えば、R−O−で表される基(Rはヘテロ原子を有してもよい炭化水素基である。)が挙げられる。Rで表される炭化水素基としては、例えば、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基(例えば炭素数6〜10のアリール基)、これらの組合せが挙げられる。炭化水素基は例えば、酸素原子、窒素原子、硫黄原子のようなヘテロ原子を有してもよい。
Rはアルキル基が好ましく、炭素数1〜10のアルキル基がより好ましい。
1個の加水分解性シリル基が有する加水分解性基の数は1〜3個とすることができる。接着性により優れるという観点から、1個の加水分解性シリル基が有する加水分解性基の数は3個であることが好ましい。
加水分解性シリル基はアルコキシシリル基が好ましい。
【0045】
1個の加水分解性シリル基が有する加水分解性基の数が1〜2個である場合、当該加水分解性シリル基のケイ素原子に結合することができる基は特に制限されない。例えば、ヘテロ原子を有してもよい炭化水素基が挙げられる。炭化水素基としては、例えば、アルキル基(例えば炭素数1〜20のアルキル基)、シクロアルキル基、アリール基(例えば炭素数6〜10のアリール基)、アラルキル基(例えば炭素数7〜10のアラルキル基)、アルケニル基(炭素数2〜10のアルケニル基)、これらの組合せが挙げられる。
【0046】
炭化水素基がヘテロ原子を有する場合、例えば、炭素数2以上の場合炭化水素基の中の炭素原子の少なくとも1つがヘテロ原子若しくはヘテロ原子を有する官能基(例えば、2価以上の官能基)に置換されてもよく、及び/又は、炭化水素基(この場合炭素数は制限されない)の中の水素原子の少なくとも1つがヘテロ原子を含む官能基(例えば、1価の官能基)に置換されてもよい。
【0047】
モノスルフィド結合において、上記の加水分解性シリル基以外に当該モノスルフィド結合に結合する基は特に制限されない。
【0048】
モノスルフィド化合物は、接着性により優れるという観点から、モノスルフィド結合に結合する加水分解性シリル基とは別に、更に、第2の加水分解性シリル基を有することが、好ましい態様の1つとして挙げられる。この場合、モノスルフィド結合にケイ素原子で結合する上記加水分解性シリル基は第1の加水分解性シリル基となる。
第2の加水分解性シリル基は、モノスルフィド結合に結合する加水分解性シリル基と同様である。
第2の加水分解性シリル基は、モノスルフィド結合と、炭化水素基を介して結合することができる。炭化水素基は特に制限されない。炭化水素基としては、例えば、アルキル基(例えば炭素数1〜10のアルキル基)、シクロアルキル基、アリール基、これらの組合せが挙げられる。
第2の加水分解性シリル基とモノスルフィド結合とを介する炭化水素基を2価の炭化水素基とすることが好ましい態様の1つとして挙げられる。2価の炭化水素基としては、例えば、アルキレン基(例えば炭素数1〜10のアルキレン基)、シクロアルキレン基、アリーレン基、これらの組合せが挙げられる。
炭化水素基は、直鎖状、分岐状のいずれであってもよい。
【0049】
モノスルフィド化合物は、接着性により優れるという観点から、下記式(I)で表される化合物であることが好ましい。
【化6】
(式中、R1、R2は各々独立にヘテロ原子を有してもよい炭化水素基であり、nは各々独立に1〜3の整数であり、R3は炭化水素基である。)
【0050】
1としてのヘテロ原子を有してもよい炭化水素基は、上記のR−O−で表される基(例えば、アルコキシ基)が有するRで表されるヘテロ原子を有してもよい炭化水素基と同様である。
2としてのヘテロ原子を有してもよい炭化水素基は、上記の、1個の加水分解性シリル基が有するアルコキシ基の数が1〜2個である場合、加水分解性シリル基のケイ素原子に結合することができる基としてのヘテロ原子を有してもよい炭化水素基と同様である。
nは各々独立に3であることが好ましい。
3としての炭化水素基は、上記の、第2の加水分解性シリル基とモノスルフィド結合とを介する炭化水素基と同様である。当該炭化水素基としては例えば、−Cm2m−が挙げられる。mは1〜5の整数であることが好ましい。
【0051】
モノスルフィド化合物は、接着性により優れるという観点から、下記式(II)で表される化合物であることが好ましい。
【化7】
【0052】
シランカップリング剤はその製造方法について特に制限されない。例えば、従来公知のものが挙げられる。モノスルフィド化合物はその製造方法としては、例えば、メルカプトシランとテトラアルコキシシランをアミン系や金属系の触媒存在下で加温し、生じるアルコールを連続的または非連続的に留去するなどの従来公知のものが挙げられる。
またシランカップリング剤として市販品を使用することができる。
【0053】
シランカップリング剤はそれぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
シランカップリング剤の組合せとしては例えば、イソシアネートシランとモノスルフィド化合物との組合せが挙げられる。
シランカップリング剤としてイソシアネートシランとモノスルフィド化合物とを併用する場合、モノスルフィド化合物に対するイソシアネートシランの質量比(イソシアネートシラン/モノスルフィド化合物)は、本発明の効果がより優れる点で、50/1〜5/1が好ましく、30/1〜10/1がより好ましい。
【0054】
シランカップリング剤の含有量は、本発明の効果がより優れる点で、ウレタンプレポリマー100質量部に対して、0.01〜10質量部が好ましく、0.1〜5質量部がより好ましい。
【0055】
(他の任意成分)
本発明の接着剤組成物は、必要に応じて本発明の目的を損なわない範囲で、充填剤(例えば、カーボンブラック、炭酸カルシウム)、硬化触媒、可塑剤、老化防止剤、酸化防止剤、顔料(染料)、揺変性付与剤、紫外線吸収剤、難燃剤、界面活性剤(レベリング剤を含む)、分散剤、脱水剤、接着付与剤、帯電防止剤などの各種添加剤等を更に含有することができる。
【0056】
・カーボンブラック
本発明の接着剤組成物は、更にカーボンブラックを含有することが好ましい。
カーボンブラックは特に制限されない。例えば、SAF(Super Abrasion Furnace)、ISAF(Intermediate Super Abrasion Furnace)、HAF(High Abrasion Furnace)、FEF(Fast Extruding Furnace)、GPF(General Purpose Furnace)、SRF(Semi−Reinforcing Furnace)、FT(Fine Thermal)、MT(Medium Thermal)等が挙げられる。
具体的には、上記SAFとしてはシースト9(東海カーボン社製)、ISAFとしてはショウワブラックN220(昭和キャボット社製)、HAFとしてはシースト3(東海カーボン社製)、FEFとしてはHTC#100(中部カーボン社製)等が例示される。また、GPFとしては旭#55(旭カーボン社製)、シースト5(東海カーボン社製)、SRFとしては旭#50(旭カーボン社製)、三菱#5(三菱化学社製)、FTとしては旭サーマル(旭カーボン社製)、HTC#20(中部カーボン社製)、MTとしては旭#15(旭カーボン社製)等が例示される。
【0057】
カーボンブラックの含有量は、ウレタンプレポリマー100質量部に対して、30〜70質量部が好ましく、40〜60質量部がより好ましい。
【0058】
・炭酸カルシウム
本発明の接着剤組成物は、更に炭酸カルシウムを含有することが好ましい。
炭酸カルシウムは特に制限されない。例えば、重質炭酸カルシウム、沈降性炭酸カルシウム(軽質炭酸カルシウム)、コロイダル炭酸カルシウム等が挙げられる。
【0059】
炭酸カルシウムの含有量は、ウレタンプレポリマー100質量部に対して、20〜70質量部が好ましく、30〜50質量部がより好ましい。
【0060】
カーボンブラック、炭酸カルシウム以外の充填剤としては、各種形状の有機または無機の充填剤が挙げられる。具体的には、例えば、ヒュームドシリカ、焼成シリカ、沈降シリカ、粉砕シリカ、溶融シリカのようなシリカ;ケイソウ土;酸化鉄、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化バリウム、酸化マグネシウム;炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛;ろう石クレー、カオリンクレー、焼成クレー;これらの脂肪酸処理物、樹脂酸処理物、ウレタン化合物処理物、脂肪酸エステル処理物;等が挙げられる。
充填剤は、例えば、脂肪酸、樹脂酸、ウレタン化合物及び脂肪酸エステルからなる群から選ばれる少なくとも1種の処理剤で表面処理されていてもよい。
【0061】
・硬化触媒
上記硬化触媒は、特に限定されないが、具体的には、例えば、2−エチルヘキサン酸、オレイン酸などカルボン酸類;ポリリン酸、エチルアシッドホスフェート、ブチルアシッドホスフェートなどのリン酸類;オクチル酸ビスマスなどのビスマス触媒;ジブチルスズジラウレート、ジオクチルスズジラウレートなどのスズ触媒;1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール(例えば、DMP−30)、ジモルフォリノジエチルエーテル構造を含む化合物などの第三級アミン触媒等が挙げられる。
【0062】
硬化触媒は、本発明の効果により優れるという点で、ジモルフォリノジエチルエーテル構造を含むことが好ましい。
ジモルフォリノジエチルエーテル構造は、ジモルフォリノジエチルエーテルを基本骨格とする構造である。
ジモルフォリノジエチルエーテル構造において、モルフォリン環が有する水素原子が置換基で置換されていてもよい。置換基は特に制限されない。例えば、アルキル基が挙げられる。アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基が挙げられる。
【0063】
ジモルフォリノジエチルエーテル構造を含むアミン系触媒としては、例えば、下記式(9)で表される化合物が挙げられる。
【化8】
上記式(9)中、R1、R2はそれぞれ独立にアルキル基であり、m、nはそれぞれ独立に0、1又は2である。
ジモルフォリノジエチルエーテル構造を含むアミン系触媒としては、具体的には例えば、ジモルフォリノジエチルエーテル(DMDEE)、ジ(メチルモルフォリノ)ジエチルエーテル、ジ(ジメチルモルフォリノ)ジエチルエーテルが挙げられる。
硬化触媒はそれぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0064】
硬化触媒の含有量は、ウレタンプレポリマー100質量部に対して、0.05〜2.0質量部が好ましく、0.1〜0.5質量部がより好ましい。
【0065】
・可塑剤
上記可塑剤としては、具体的には、例えば、ジイソノニルフタレート(DINP);アジピン酸ジオクチル、コハク酸イソデシル;ジエチレングリコールジベンゾエート、ペンタエリスリトールエステル;オレイン酸ブチル、アセチルリシノール酸メチル;リン酸トリクレジル、リン酸トリオクチル;アジピン酸プロピレングリコールポリエステル、アジピン酸ブチレングリコールポリエステル等が挙げられ、これらを1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。
可塑剤の含有量は、ウレタンプレポリマー100質量部に対して、1〜50質量部が好ましく、5〜30質量部がより好ましい。
【0066】
(製造方法)
本発明の接着剤組成物の製造方法は、特に限定されず、例えば、ウレタンプレポリマーと、イソシアヌレート化合物と、活性水素を有するテルペン化合物と、必要に応じて使用することができる、シランカップリング剤と、他の任意成分とを混合する方法によって製造することができる。
【0067】
本発明の接着剤組成物は1液型であることが好ましい態様の1つとして挙げられる。
【0068】
(使用)
本発明の接着剤組成物を適用することができる基材としては、例えば、プラスチック、ガラス、ゴム、金属等が挙げられる。基材は、オレフィン樹脂を含む基材が好適に挙げられる。オレフィン樹脂を含む基材は、オレフィン樹脂とガラス(例えばガラスフィラー)との混合物から得られる基材であってもよい。
プラスチックとしては、例えば、プロピレン、エチレンやシクロオレフィン系モノマーの重合体が挙げられる。上記の重合体は単独重合体、共重合体、水素添加物であってもよい。
具体的なプラスチックとしては例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、COP(シクロオレフィンポリマー)、COC(シクロオレフィンコポリマー)のようなオレフィン樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)やポリブチレンテレフタレート(PBT)などのポリエステル樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂(PMMA樹脂)、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリロニトリル・スチレン共重合樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、アセテート樹脂、ABS樹脂(アクリロニトリルブタジエンスチレン樹脂)、ポリアミド樹脂のような難接着性樹脂が挙げられる。
ここで、COCは、例えば、テトラシクロドデセンとエチレン等のオレフィンとの共重合体のようなシクロオレフィンコポリマーを意味する。
また、COPは、例えば、ノルボルネン類を開環重合し、水素添加して得られる重合体のようなシクロオレフィンポリマーを意味する。
基材は表面処理がなされていてもよい。表面処理としては例えば、フレーム処理やコロナ処理やイトロ処理が挙げられる。これらの処理は特に制限されない。例えば、従来公知のものが挙げられる。
本発明の接着剤組成物を基材に適用する方法は特に制限されない。例えば、従来公知のものが挙げられる。
本発明の接着剤組成物を用いる場合、基材にプライマーを用いずとも優れた接着性を発現させることができる。
【0069】
本発明の接着剤組成物は、湿気によって硬化することができる。例えば、5〜90℃、相対湿度5〜95(%RH)の条件下で本発明の接着剤組成物を硬化させることができる。
【0070】
(用途)
本発明の接着剤組成物の用途としては、例えば、ダイレクトグレージング剤、自動車用シーラント、建築部材用シーラントが挙げられる。
【実施例】
【0071】
以下に、実施例を挙げて本発明を具体的に説明する。ただし、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0072】
<ウレタンプレポリマー1の合成>
ポリオキシプロピレンジオール(重量平均分子量2000)700g、ポリオキシプロピレントリオール(重量平均分子量3000)300g、および4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート(分子量250)499gを混合し(このときNCO/OH=2.0)、更にフタル酸ジイソノニル500gを加えて、窒素気流中、80℃で12時間撹拌を行い、反応させて、イソシアネート基を2.10質量%含有するウレタンプレポリマー1を合成した。
【0073】
<接着剤組成物の製造>
下記第1表の各成分を同表に示す組成(質量部)で用い、これらを撹拌機で混合して各接着剤組成物を製造した。
【0074】
<評価>
上記のとおり製造された各接着剤組成物について、下記の方法によって以下の評価を行った。結果を第1表に示す。
【0075】
[接着性]
(オレフィン基材サンプルの作製)
オレフィン樹脂からなる基板(幅:25mm、長さ:120mm、厚さ:3mm、商品名ノーブレン、住友化学社製、ポリプロピレン樹脂製)の片面にフレーム処理を施した被着体を1枚用意した。
フレーム処理後、ぬれ張力試験用混合液(和光純薬工業社製)を用いて樹脂表面の濡れ性が45.0mN/m以上であることを確認した。
次いで、被着体の表面(フレーム処理を施した面)に、調製(混合)直後の各接着剤組成物を厚み3mmとなるように塗布し、これを23℃、相対湿度50%の環境下に3日間置いて養生させ、オレフィン基材サンプルを作製した。
【0076】
(PP−GF基材サンプルの作製)
オレフィン樹脂からなる基板をPP−GF基材(ガラスフィラーを20質量%含有するポリプロピレンからなる基材、商品名R−200G、プライムポリマー社製)に代えた他はオレフィン基材サンプルの作製と同様にしてPP−GF基材サンプルを作製した。
【0077】
(耐熱試験)
上記のとおり作製された、オレフィン基材サンプル又はPP−GF基材サンプルを、更に、100℃のオーブン内に10日間置く耐熱試験を行った。
【0078】
(手剥離試験)
上記のとおり作製された、初期のオレフィン基材サンプル若しくはPP−GF基材サンプル、又は、耐熱試験後のオレフィン基材サンプル若しくはPP−GF基材サンプルを用いて、23℃の条件下で、接着剤を各サンプルから手で剥離させる手剥離試験を行い、手剥離試験後の破壊状態を目視で確認した。
接着剤が凝集破壊した場合をCFと表示した。
接着剤が界面剥離した場合をAFと表示した。
なお、下記第1表中、「CF数値」は、接着剤で接着されていた基材全面積に対する凝集破壊の割合を示し、「AF数値」は接着破壊(界面剥離)の割合を示す。例えば、「CF80AF20」は、凝集破壊が80%で接着破壊が20%であることを示す。
【0079】
[硬化物の物性]
(硬化物の物性評価用サンプル:ダンベル状3号形試験片)
上記のとおり製造された各接着剤組成物を23℃、50%RHの条件下で5日間硬化させ、得られた硬化物から厚さ3mmのダンベル状3号形試験片を切り出した。
【0080】
(硬度)
上記のとおり作製されたダンベル状3号形試験片を重ねて12.0mm以上の厚みをとり、JIS K6253に準じて硬度計にてJIS A硬度を測定した。
【0081】
(破断時伸び)
上記のとおり作製されたダンベル状3号形試験片を用いて、23℃、500mm/minの引張速度の条件下でJIS K6251:2010に準じた引張試験を行い、破断時伸び(%)を測定した。
【0082】
【表1】
【0083】
上記第1表に示されている各成分の詳細は以下のとおりである。
・ウレタンプレポリマー1:上記で合成したウレタンプレポリマー。なお、ウレタンプレポリマー1の使用量(100質量部)はウレタンプレポリマーの正味の量である。
【0084】
・イソシアヌレート化合物1:下記式(C1−2)で表されるペンタメチレンジイソシネートのイソシアヌレート体
【化9】
・イソシアヌレート化合物2:ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体(デュラネート TPA100、旭化成ケミカルズ社製)
【0085】
・活性水素を有するテルペン化合物1:上記式(8)で表される化合物、YSレジンCP(ヤスハラケミカル社製)
・(比較)テルペン化合物:活性水素を有さないテルペン化合物、セスキテルペン、商品名ロンギフォーレン、ヤスハラケミカル社製)
【0086】
・シランカップリング剤1:イソシアネートプロピルトリメトキシシラン、商品名Y−5187、モメンティブ社製)
・シランカップリング剤2:下記式(II)で表される化合物。
【化10】
【0087】
・カーボンブラック:#200MP(新日化カーボン社製)
・炭酸カルシウム:スーパーS(丸尾カルシウム社製)
・可塑剤:DINP、フタル酸ジイソノニル(ジェイプラス社製)。なお、第1表の可塑剤はウレタンプレポリマー1を製造する際に使用されたフタル酸ジイソノニルを含む。
・硬化触媒:DMDEE(サンアプロ社製)
【0088】
上記第1表に示す結果から明らかなように、所定のテルペン化合物を含有しない比較例1は、接着性が低く、得られた硬化物の硬度が高すぎ破断時伸びが低く硬化物の物性が悪かった。
所定のテルペン化合物を含有せず代わりに活性水素を有さないテルペン化合物を含有する比較例2は、接着性が低く、得られた硬化物の硬度が高すぎ破断時伸びが低く硬化物の物性が悪かった。
【0089】
これに対して、本発明の接着剤組成物は所望の効果に優れた。
また、シランカップリング剤の有無について、実施例1と実施例2〜3、5を比較すると、更にシランカップリング剤を含有する場合、シランカップリング剤を含有しない場合よりも、接着性により優れ、硬化物の硬度が適度に高くなる傾向があることが分かった。
イソシアヌレート化合物の種類について実施例4、5を比較すると、ペンタメチレンジイソシネートのイソシアヌレート体を含有する実施例5はヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体を含有する実施例4よりも、接着性により優れ、破断時伸びがより高くなった。
また、本発明の接着剤組成物は、プライマーレスでの耐熱接着性に優れる。