(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を適用した一実施形態である無機繊維シート、該無機繊維シートを用いたハニカム成形体、及びこれらを備えたハニカムフィルタについて、詳細に説明する。
【0015】
<無機繊維シート>
先ず、本発明を適用した一実施形態である無機繊維シートの構成の一例について説明する。本実施形態の無機繊維シートは、主成分であるガラス繊維と、特定の有機繊維とを主体繊維として含んでいる。
【0016】
(ガラス繊維)
無機繊維シート中のガラス繊維の含有量は、当該無機繊維シート全体の質量に対して、50質量%超である。無機繊維シート中のガラス繊維の含有量は、当該無機繊維シート全体の質量に対して、70質量%以上であることが好ましく、75質量%以上であることがより好ましい。無機繊維の含有量が上記範囲の下限値超では、該無機シートを焼成したときに、焼成により焼失する有機分が多くなり過ぎず、焼成後に必要な強度を維持しやすい。ガラス繊維の含有量の上限は、特に制限はないが、95質量%以下であることが好ましく、90質量%以下であることがより好ましい。上記範囲の上限値以下であれば、必要な機械的強度やハンドリング性を確保することができる。
【0017】
ガラス繊維の種類としては特に制限はなく、生産量の多いEガラスの他、高強度のSガラス、耐酸性に優れるCガラス等を使用できる。コストの観点からは、安価なEガラスを使用することが好ましい。また、ガラス繊維は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0018】
ガラス繊維の繊維長は、特に制限はないが、ガラス繊維の長さ加重平均繊維長が、1〜15mmであることが好ましく、1〜10mmがより好ましい。長さ加重平均繊維長が上記範囲の下限値以上であると、得られる無機繊維シートの強度がより優れる傾向にある。長さ加重平均繊維長が上記範囲の上限値以下であると、得られる無機繊維シートの地合が優れる傾向にある。なお、長さ加重平均繊維長は、100本の繊維の繊維長を顕微鏡観察により測定し、算出する。
【0019】
ガラス繊維の繊維径は、ガラス繊維の加重平均繊維径が3μm以上のものが好ましく、4μm以上のものがより好ましい。上記範囲の下限値以上であれば、「WHO吸入繊維」に該当せず、人体に対して安全である。この「WHO吸入性繊維」とは、世界保健機関(WHO)により定義された、呼吸により体内に吸入され、肺まで到達する繊維状物質をいい、長さ5μm超、直径3μm未満、アスペクト比3超のものである。
【0020】
また、ガラス繊維の繊維径の上限は、ガラス繊維の加重平均繊維径10μm以下が好ましく、7μm以下がより好ましい。上記範囲の上限値以下であれば、無機繊維シートの強度と、該無機繊維シートを加工して得られるハニカム成形体の強度とが共に優れる。また、吸着材などの機能材料を充分に担持できる。なお、加重平均繊維径は、100本の繊維の繊維径を顕微鏡観察により測定し、算出する。
【0021】
(有機繊維)
本実施形態の無機繊維シートに適用可能な有機繊維としては、天然繊維と、合成繊維とが挙げられる。有機繊維としては、天然繊維と合成繊維とのうち、いずれか1種以上を使用できる。
【0022】
天然繊維としては、木材パルプ(針葉樹パルプ、広葉樹パルプ)などのセルロース繊維;綿、羊毛、絹、麻等の天然繊維が挙げられ、これらの中からいずれか1種以上を使用できる。木材パルプは、叩解パルプでもよいし、未叩解パルプでもよい。これらのなかでも、比較的安価な木材パルプが好ましい。
【0023】
合成繊維としては、無機繊維シートの製造工程中の加熱により溶融しない繊維であれば、特に制限はなく、無機繊維シートの製造工程で設定される乾燥温度の温度等に応じて適宜選択することができる。合成繊維としては、たとえば、ポリエチレン系繊維、ポリプロピレン繊維、ポリブテン繊維、ナイロン繊維、レーヨン繊維、キュプラ繊維、アセテート繊維、ポリ塩化ビニル繊維、アクリル繊維、ポリエステル繊維、ポリウレタン繊維、ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール繊維、ポリアミドイミド繊維、ポリイミド繊維、ポリアリレート繊維、ポリエーテルイミド繊維、ビニロン繊維、ポリカーボネート繊維、エチレン−ビニルアセテート繊維、エチレンビニルアルコール繊維、ポリフェニレンサルファイド繊維、ポリエチレンテレフタレート繊維、ポリブチレンテレフタレート繊維、ポリエチレンナフタレート繊維、アラミド繊維等の化学繊維等が挙げられる。また、合成繊維は、これらの中からいずれか1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用して用いてもよい。
【0024】
有機繊維の繊維長は、後述するアスペクト比が上記範囲内にあれば特に制限はないが、有機繊維の長さ加重平均繊維長が、1〜15mmであることが好ましく、1〜10mmがより好ましい。長さ加重平均繊維長が上記範囲の下限値以上であると、抄紙時に歩留まりが向上する傾向にある。長さ加重平均繊維長が上記範囲の上限値以下であると、有機繊維が絡まってダマ等になりにくくなる傾向にある。なお、長さ加重平均繊維長は、100本の繊維の繊維長を顕微鏡観察により測定し、算出する。
【0025】
有機繊維の加重平均繊維径は、特に制限はないが、ガラス繊維の加重平均繊維径に対して3倍以下であることが好ましく、2倍以下であることがより好ましい。有機繊維の加重平均繊維径がガラス繊維の加重平均繊維径の3倍以下であると、有機繊維による無機繊維シートの剛性の低減効果や耐折強度の向上効果が向上する傾向にある。特に、ガラス繊維の加重平均繊維径は、3〜10μmが好ましいため、有機繊維の加重平均繊維径は30μm以下が好ましく、20μm以下がより好ましい。有機繊維の加重平均繊維径の下限は特に制限はされないが、1μm以上が好ましく、3μm以上がより好ましい。有機繊維の加重平均繊維径が上記下限値以上のものが比較的入手しやすいために好ましい。なお、繊維径の加重平均繊維径は、100本の繊維の繊維径を顕微鏡観察により測定し、算出する。また、有機繊維が扁平状の場合の繊維径は、短径と長径を測定して断面積を算出し、当該断面積に相当する円の直径を繊維径とする。
【0026】
本実施形態の無機繊維シートは、有機繊維のアスペクト比(上述した有機繊維の長さ加重平均繊維長を加重平均繊維径で除した比率)が300以上である。有機繊維のアスペクト比は、400以上のものがより好ましく、500以上のものがさらに好ましい。有機繊維のアスペクト比が上記範囲の下限値以上であれば、剛性の低減効果が得られ、耐折強度も大きくなるため、コルゲート山が裂けにくくなり、紙粉が発生しにくくなる傾向にある。また、有機繊維のアスペクト比の上限は特に制限されないが、5000以下のものが好ましく、2000以下のものがより好ましい。上記範囲上限値以下であると、繊維が結束しにくくなる傾向にある。
【0027】
無機繊維シート中の有機繊維の含有量は、当該無機繊維シート全体の質量に対して3〜20質量%であり、5〜15質量%がより好ましい。有機繊維の含有量が上記範囲の下限値以上であると、コルゲート加工したときの波状の型つきが良く、波の形が良好となり、コルゲート加工適性に優れる傾向にある。上記範囲の上限値以下であると、空気中において焼成した際の灰分が低くなる傾向にある。
【0028】
(その他の成分)
本実施形態の無機繊維シートは、本発明の効果を損なわない範囲で、上述した主体繊維となるガラス繊維と有機繊維との他に、当該ガラス繊維以外の1以上の無機繊維や、当該無機繊維シートを湿式抄紙によって製造する際に添加する1以上の成分を含んでいてもよい。
【0029】
ガラス繊維以外の無機繊維としては、特に限定されるものではないが、人体に対する安全性を考慮した場合、生体溶解性無機繊維であることが好ましい。
【0030】
本明細書において、生体溶解性無機繊維とは、上述したように「WHO吸入性繊維」に該当しない繊維であるか、または、EU指令97/69/ECのNotaQ「生体溶解性繊維判定基準」により、以下の4条件(1)〜(4)のうち、いずれか1つを満足する繊維である。生体溶解性無機繊維には、生体溶解性セラミック、生体溶解性ロックウールなどが含まれる。
【0031】
上記4条件とは、以下のとおりである。
(1)短期吸入暴露の動物実験で、長さ20μm超の繊維の半減期が10日未満のもの、
(2)短期気管内注入の動物実験で、長さ20μm超の繊維の半減期が40日未満のもの、
(3)腹腔内投与の動物実験で、有意な発がん性がないもの、
(4)長期吸入暴露の動物実験で、発がん性と結びつく病理所見や腫瘍形成がないもの(但し、組成としてアルカリおよびアルカリ土類酸化物(Na
2O、K
2O、CaO、MgO、BaO)を18質量%より超えて含有するもの)。
【0032】
生体溶解性無機繊維には、通常、その製法に起因して、非繊維状物の「ショット」が含有される。ガラス繊維以外の無機繊維としてショットの含有量が多い生体溶解性無機繊維を用いると、得られる無機繊維シートにおいて穴開き、粉落ち等が問題となる場合がある。そのため、生体溶解性無機繊維としては、ショットの含有率が20質量%以下のものを使用することが好ましく、15質量%以下のものを使用することがより好ましい。また、生体溶解性無機繊維は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0033】
なお、本実施形態の無機繊維シートは、人体に対する安全性の点から、EU指令97/69ECにおいて、カテゴリー2(発がんの疑いがある)に分類されるセラミック繊維を含有しないことが好ましい。また、無機繊維シート中のガラス繊維以外の無機繊維の割合は、当該無機繊維シート全体の質量に対して、45質量%以下が好ましく、40質量%以下がより好ましく、30質量%以下がさらに好ましい。
【0034】
無機繊維シートを湿式抄紙によって製造する際に添加する成分は特に制限されないが、たとえば、有機バインダー成分、無機バインダー成分、助剤、添加剤、充填剤等が挙げられる。
【0035】
有機バインダー成分は、繊維同士を接着させる成分である。有機バインダー成分としては、無機繊維シートを製造する際の加熱により少なくとも一部が溶融する熱可塑性樹脂等が挙げられる。有機バインダー成分として用いる熱可塑性樹脂は、無機繊維シートの製造する際の乾燥温度等に応じて適宜選択することができる。有機バインダー成分の形態には制限はなく、繊維状、粒子状、エマルション、液状等のいずれであってもよい。
【0036】
熱可塑性樹脂としては、たとえば、ポリエチレン樹脂、塩化ビニル樹脂、(メタ)アクリル酸エステル樹脂、スチレン−アクリル酸エステル共重合体、酢酸ビニル樹脂、酢酸ビニル−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリエステル系樹脂、ポリビニルアルコール(PVA)、エチレン−ビニルアルコール共重合体等が挙げられる。また、スチレン・ブタジエンゴム(SBR)、ニトリルゴム(NBR)等のゴム系エマルジョンを使用してもよい。熱可塑性樹脂としては、これらの中から1種以上を使用できる。
【0037】
また、有機バインダー成分としては、融点の異なる2種以上の材料が複合化し、より低融点の部分が溶融してバインダーとして作用する複合繊維を使用してもよい。複合繊維としては、芯鞘繊維、サイドバイサイド繊維等が挙げられる。芯鞘繊維としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン等からなる高融点の芯部の周りに、ポリエチレン等からなる低融点の鞘部が形成された繊維等が挙げられる。
【0038】
有機バインダー成分としては、無機繊維シートの製造工程中の加熱により硬化して繊維同士を接着させる熱硬化型樹脂も使用できる。
【0039】
熱硬化型樹脂としては、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、熱硬化性ポリイミド樹脂などが挙げられる。熱硬化型樹脂としては、これらの中から1種以上を使用できる。
【0040】
有機バインダー成分としては、特に制限されないが、接着力に優れる点から、ポリビニルアルコール(polyvinyl alcohol, PVA)を用いることが好ましい。また、耐水性の向上が望ましい場合には、有機バインダー成分としてアクリル樹脂を併用することが好ましく、アクリル樹脂エマルション等をスプレー塗布などによって外添塗布することがより好ましい。
【0041】
無機繊維シートに対する有機バインダー成分の含有量は、1〜25質量%であることが好ましく、3〜20質量%がより好ましく、5〜15質量%がさらに好ましい。有機バインダー成分の含有量が上記範囲の下限値以上であると、繊維同士を充分に結合することができる。上記範囲の上限値以下であると、無機繊維シートを焼成したときに、焼失する有機バインダー成分の量が少なく、優れたフィルタを製造できる。
【0042】
有機バインダー成分としてPVAを使用する場合には、有機バインダー成分の全量に対するPVAの含有量は、20質量%以上が好ましく、40質量%以上がより好ましく、100質量%であってもよい。有機バインダー成分としてアクリル樹脂エマルションを使用する場合には、有機バインダー成分の全量に対するアクリル樹脂(固形分)の含有量は、5〜70質量%が好ましい。
【0043】
無機バインダー成分は、特に制限されないが、例えば、コロイダルシリカ、水ガラス、珪酸カルシウム、シリカゾル、アルミナゾル、セピオライト、アルコキシラン等が挙げられる。無機バインダー成分としては、これらのうちの1種以上を使用できる。ただし、これらの無機バインダーは、擦れ、曲げ等の外力が加わると粉落ちし、ハンドリング性に劣る場合がある。そのため、無機バインダー成分の含有量は、無機繊維シートに対する含有量として、40質量%以下が好ましく、30質量%以下がより好ましい。
【0044】
助剤としては、エポキシ系、イソシアネート系、カルボジイミド系、オキサゾリン系等の架橋剤や、アミノ基、エポキシ基、メタクリロキシ基、アクリロキシ基、メルカプトロ基等の官能基を有するシランカップリング剤が挙げられ、これらのうちの1種以上を使用できる。シランカップリング剤の含有量は、有機バインダー成分の100質量部に対して、10質量部以下の範囲で使用することが好ましい。
【0045】
添加剤としては、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、増粘剤、造核剤、中和剤、滑剤、ブロッキング防止剤、分散剤、流動性改良剤、離型剤、難燃剤、発泡剤、着色剤、濡れ剤、粘剤、歩留向上剤、紙力向上剤、濾水剤、pH調整剤、消泡剤、防腐剤、ピッチコントロール剤等が挙げられ、これらのうちの1種以上を使用できる。添加剤の含有量は、無機繊維シートに対して5質量%以下が好ましい。
【0046】
充填剤としては、珪酸カルシウム、炭酸カルシウム、カオリン、タルク、プラスチックピグメント、ガラスビーズ、中空ガラスビーズ、シラスバルーン等が挙げられ、これらのうちの1種以上を使用できる。
【0047】
なお、有機バインダー成分、無機バインダー成分、充填剤等を含む場合には、無機繊維シート中の無機繊維及び有機繊維の各含有量が、すでに上述した範囲内となるように、その使用量を調整することが好ましい。
【0048】
本実施形態の無機繊維シートの坪量には特に限定はなく、たとえば10〜100g/m
2とすることができ、15〜60g/m
2とすることが好ましい。坪量が上記範囲の下限値以上であれば、無機繊維シートおよび該無機繊維シートから得られるハニカム成形体の強度が充分に得られ、上記範囲の上限値以下であれば、厚みが抑えられ圧力損失も抑制できる。
【0049】
本実施形態の無機繊維シートは、空気中において500℃で2時間焼成した後の灰分量が60質量%以上であることが好ましく、75質量%以上であることがより好ましい。灰分量が上記範囲の下限値以上であれば、焼成による有機分の焼失が大きすぎず、強度の優れるハニカム成形体を製造できる。灰分量の上限には特に制限はないが、たとえば95質量%以下であることが好ましく、90質量%以下であることがより好ましい。灰分量が上記上限値以下であれば、有機繊維や有機バインダーの最低必要量を含有させることができ、シートに必要な機械強度や、加工性を付与することができる。なお、灰分量は、後述の実施例に記載の方法で測定される値である。
【0050】
本実施形態の無機繊維シートは、1.0kg荷重での抄紙方向の耐折回数が5回以上であることが好ましく、7回以上であることがより好ましい。耐折回数が上記範囲の下限値以上であれば、コルゲート山頂部に裂けが生じることがなく、セル形状が安定し、性能の優れるフィルタを製造できる。耐折回数は、後述の実施例に記載の方法で測定される値である。
【0051】
(無機繊維シートの製造方法)
次に、本実施形態の無機繊維シートの製造方法の一例について説明する。本実施形態の無機繊維シートは、上述した無機繊維及び有機繊維を含有する原料スラリーを湿式抄紙して無機繊維シートを製造するものである。
【0052】
無機繊維シートの製造に用いる原料スラリーは、無機繊維(主にガラス繊維)および有機繊維を主体繊維として含有するとともに、任意成分として有機バインダー成分、無機バインダー成分、充填剤等を含む。また、媒体として、通常、水を含む。
【0053】
湿式抄紙は、上述した各成分と水(媒体)とを含有する原料スラリーを調製した後、該原料スラリーを公知の抄紙機で抄紙する方法により行うことができる。抄紙機としては、円網抄紙機、傾斜型抄紙機、長網抄紙機、短網抄紙機が挙げられる。これら抄紙機のうち、同種または異種の抄紙機を組み合わせて多層抄紙を行ってもよい。
【0054】
抄紙後の脱水および乾燥の方法には、特に制限はなく、たとえばヤンキードライヤー、シリンダードライヤー、エアドライヤー、赤外線ドライヤー等の公知のドライヤーを用いることができる。乾燥温度は特に制限されないが、通常100℃〜200℃程度である。
【0055】
なお、有機バインダー成分、あるいは無機バインダー成分を用いる場合は、無機繊維シートを製造するための原料スラリーに添加する以外に、得られた無機繊維シートに対して、有機バインダー成分、あるいは無機バインダー成分を含む液をスプレー塗布、カーテン塗布、含浸塗布、バー塗布、ロール塗布、ブレード塗布等の方法で付着(外添塗布)させてもよい。外添塗布の対象である不織布は、乾燥後の乾燥不織布であってもよいし、乾燥前の湿潤ウェブであってもよい。
【0056】
<ハニカム成形体>
次に、本発明を適用した一実施形態であるハニカム成形体の構成の一例について、説明する。
本実施形態のハニカム成形体は、上述した無機繊維シートをコルゲート加工して、ハニカム状に加工された構造体である。
【0057】
ハニカム成形体は、先ず、上述した無機繊維シートに対してコルゲート加工を施すことにより、波型(凹凸)を付与する。次いで、コルゲート加工した無機繊維シート(中芯紙)と、コルゲート加工をしていない無機繊維シート(ライナー)とを接着して片波成形体を製造する。そして、複数の片波成形体を積層したり、円筒状にしたりすることで、ハニカム成形体が得られる。
その際に使用する接着剤としては、コロイダルシリカ、水ガラス、セピオライト、アルミナゾル等の無機糊が挙げられ、これらのうちの1種以上を使用できる。また、接着剤としては、エチレン−ビニルアルコール等の有機糊を併用してもよい。
本実施形態のハニカム成形体は、そのまま用いてもよく、焼成して用いてもよい。
【0058】
<ハニカムフィルタ>
次に、本発明を適用した一実施形態であるハニカムフィルタの構成の一例について、説明する。
本実施形態のハニカムフィルタは、上述したハニカム成形体に少なくとも1種の機能材料を担持することによって得られる。
【0059】
機能材料としては、例えば、吸着材、除湿剤が挙げられる。
吸着材としては、吸着性等の点から、シリカゲル、ゼオライト、セピオライト、活性炭、イオン交換樹脂からなる群から選ばれる1種以上が好ましい。その他にも、各種の吸着材を機能材料として使用できる。
【0060】
除湿剤として使用される吸着材としては、たとえばシリカ、ゼオライト、疎水性合成ゼオライト、天然ゼオライト、セピオライト、ハイドロタルサイト、アルミナ、石灰、石膏、苦土石灰、水酸化マグネシウム、パーライト、珪藻土、塩化リチウム、塩化カルシウム、ポルトランドセメント、アルミナセメント、パリゴルスカイト、珪酸アルミニウム、活性白土、活性アルミナ、ベントナイト、タルク、カオリン、マイカ、活性炭、吸水性ポリマー等が挙げられる。
【0061】
その他の機能材料の例としては、アルカリ性化合物を吸着能のある担体(炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、水酸化カルシウム、炭酸カルシウム等。)や、たとえば活性炭、シリカ、アルミナ、アロフェン、セピオライト、コージライト、その他の粘土鉱物等に担持させた固形吸着材;水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸カリウム、水酸化カルシウム、イオン交換樹脂、消臭剤等が挙げられる。また、チタン等の触媒を細孔に担持させた多孔質の吸着材も、機能材料として使用できる。
【0062】
機能材料の担持方法としては、機能材料を含有するスラリーを上述した無機繊維シートまたはハニカム成形体に含浸させ、乾燥させる公知の方法が挙げられる。
【0063】
上記スラリーは、機能材料の担持性およびハニカム成形体の強度向上の目的で、コロイダルシリカ、水ガラス、セピオライト、アルミナゾル等の無機接着剤を1種以上含んでいてもよい。
【0064】
以上説明したように、本実施形態の無機繊維シートは、ガラス繊維を主成分とし、アスペクト比300〜2000の有機繊維を3〜20質量%含有する構成であるため、該シートの強度を維持しつつ、柔軟性が付与されている。したがって、本実施形態の無機繊維シートによれば、コルゲート加工適性に優れ、かつ充分な強度と機能材料の担持量を有するフィルタ基材を製造することができる。
【0065】
本実施形態の無機繊維シートは、ガラス繊維の加重平均繊維径が3μm以上の場合には、人体に対する安全性を備える。
【0066】
本実施形態のハニカム成形体は、上記無機繊維シートがコルゲート加工されたものであるため、充分な強度と吸着材の担持量を有する。
本実施形態のハニカムフィルタは、高性能のフィルタである。
【実施例】
【0067】
以下、実施例および比較例によって、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例により限定されない。
【0068】
<測定方法および評価方法>
(坪量)
得られた無機繊維シートについて、JIS P8124に準じて測定した。
(厚み)
得られた無機繊維シートについて、JIS P8118に準じて測定した。
【0069】
(引張強度)
得られた無機繊維シートについて、JIS P 8113に準じた方法で、テンシロン型引張試験器(ORIENTEC社製)による測定を行った。
(曲げ抗力)
得られた無機繊維シートについて、ISO2493に準じた方法で、BENDING RESISTANCE TESTER(L&W社製)による測定を行った。
(耐折回数)
得られた無機繊維シートについて、JIS P 8115 耐折強さ試験法に準じ、MIT試験機を用い、荷重1.0kgにて、試験片を10個測定した平均回数を算出した。
【0070】
(灰分量)
得られた無機繊維シートについて、525℃のかわりに500℃で2時間燃焼した以外はJIS P8251に準じて測定した。
(保液量)
得られた無機繊維シートについて、JIS L1913 保水率の測定に準じて、無機繊維シート(100mm×100mm)の乾燥質量A(g/m
2)を測定した。その後、該無機繊維シートを純水に15分間浸漬し、次いで取り出して、自重で水滴の落下が止むまで吊るした後の質量B(g/m
2)を測定した。質量Bから質量Aを引いた値を保液量とした。なお、保液量は1m
2当たりに換算し、表に記載した。
【0071】
(コルゲート加工適性)
得られた無機繊維シートにコルゲート加工を施し、以下の指標に基づいてコルゲート加工適正を評価した。
S:波状の型つきが非常に良く、波の形が非常に優れている。
A:波状の型つきが良く、波の形が良好である。
B:波状の型つきがやや悪く、波の形がやや潰れ気味である。セル形状がやや不均一。
C:波状の型つきが悪く、波の頂点に割れや裂けがある。セル形状が不均一。
【0072】
(粉落ち)
得られた無機繊維シートにコルゲート加工を施し、巻取繰り出し部の床面、及びコルゲートギア間の紙粉状況を目視にて観察し、以下の指標に基づいて粉落ちを評価した。
A:床面、ギア間共に、紙粉は殆ど発生しない。
B:床面、またはギア間に紙粉がやや見られるが許容範囲である。
C:床面に紙粉が多く見られる、またはギア間に紙粉が明らかに溜る。
【0073】
<実施例1>
ガラス繊維(径:6μm、長さ:6mm)84質量%、有機繊維としてポリエチレンテレフタレート繊維(径:3.5μm、長さ:5mm、アスペクト比:1429)8質量%、バインダーとしてポリビニルアルコール(クラレ製、ポバールK−17U6)8質量%を混合して原料スラリーとし、0.2%濃度にて水に分散した。湿式抄紙法にて、ランダムな配列のウェブを形成し、アクリルエマルションを0.3g/m
2となるようにスプレー塗布し乾燥した。得られた無機繊維シートの秤量、厚み、引張強度、曲げ抗力、耐折回数、および保液量を測定した。結果を表1に示す。
【0074】
得られた無機繊維シートを空気中において500℃で2時間焼成した後のシートについて、灰分量を測定した。結果を表1に示す。
【0075】
ついで、得られた無機繊維シートを高さ1.4mm、ピッチ2.6mmの波状に加工して中芯紙とし、該中芯紙を得られた無機繊維シートからなる平面のシート状ライナーにシリカゾルを主成分とする無機接着剤で接着してコルゲート加工し、これを成巻し、円筒状のハニカム成形体を作製した。
得られたハニカム成形体について、コルゲート加工適性、粉落ちを評価した。結果を表1に示す。
【0076】
<実施例2>
有機繊維をポリエチレンテレフタレート繊維(径:5μm、長さ:5mm、アスペクト比:1000)に変更した以外は実施例1と同様にして、表1に示す坪量、厚みの無機繊維シートを得た。
以後、実施例1と同様にして、測定、評価を行った。結果を表1に示す。
【0077】
<実施例3>
有機繊維をポリエチレンテレフタレート繊維(径:8μm、長さ:5mm、アスペクト比:625)に変更した以外は実施例1と同様にして、表1に示す坪量、厚みの無機繊維シートを得た。
以後、実施例1と同様にして、測定、評価を行った。結果を表1に示す。
【0078】
<実施例4>
有機繊維をポリエチレンテレフタレート繊維(径:12μm、長さ:5mm、アスペクト比:417)に変更した以外は実施例1と同様にして、表1に示す坪量、厚みの無機繊維シートを得た。
以後、実施例1と同様にして、測定、評価を行った。結果を表1に示す。
【0079】
<実施例5>
有機繊維を扁平状ポリエチレンテレフタレート繊維(短径:8μm、長径:32μm(16μm円相当径)、長さ:5mm、アスペクト比:313)に変更した以外は実施例1と同様にして、表1に示す坪量、厚みの無機繊維シートを得た。
以後、実施例1と同様にして、測定、評価を行った。結果を表1に示す。
【0080】
<実施例6>
有機繊維をポリエチレンテレフタレート繊維(径:17μm、長さ:10mm、アスペクト比:588)に変更した以外は実施例1と同様にして、表1に示す坪量、厚みの無機繊維シートを得た。
以後、実施例1と同様にして、測定、評価を行った。結果を表1に示す。
【0081】
<比較例1>
有機繊維をポリエチレンテレフタレート繊維(径:17μm、長さ:5mm、アスペクト比:294)に変更した以外は実施例1と同様にして、表1に示す坪量、厚みの無機繊維シートを得た。
以後、実施例1と同様にして、測定、評価を行った。結果を表1に示す。
【0082】
<比較例2>
有機繊維をポリエチレンテレフタレート繊維(径:24μm、長さ:5mm、アスペクト比:208)に変更した以外は実施例1と同様にして、表1に示す坪量、厚みの無機繊維シートを得た。
以後、実施例1と同様にして、測定、評価を行った。結果を表1に示す。
【0083】
<比較例3>
有機繊維をNパルプ(径:23μm、長さ:0.7mm、アスペクト比:30)に変更した以外は実施例1と同様にして、表1に示す坪量、厚みの無機繊維シートを得た。
以後、実施例1と同様にして、測定、評価を行った。結果を表1に示す。
【0084】
<比較例4>
有機繊維をポリエチレンテレフタレート繊維の配合を2質量%に変更した以外は実施例3と同様にして、表1に示す坪量、厚みの無機繊維シートを得た。
以後、実施例1と同様にして、測定、評価を行った。結果を表1に示す。
【0085】
<比較例5、6>
ガラス繊維をセラミック繊維(径:2.2μm、長さ:6mm)84質量%に変更した以外は実施例3と同様にして、表1に示す坪量、厚みの無機繊維シートを得た。
以後、実施例1と同様にして、測定、評価を行った。結果を表1に示す。
【0086】
【表1】
【0087】
表1に示すように、比較例1は、セルの形状が不均一で、紙粉も発生した。
比較例2は、セル山に割れが生じ、紙粉も発生した。
比較例3は、セルの形状が不均一であった。
比較例4は、波状の型がつき難く、波状にならない部分が発生した。
比較例5、6は、紙粉が発生したものの加工性は問題なかったが、実施例1〜6に比べ、比較例5は保液量が少なめで、比較例6は厚みが大きめであった。
実施例1〜6は、コルゲート加工適性に優れていた。また、充分な強度を有しており、粉落ちがなく、保液量も充分であった。