(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1の円弧部と、前記接点と、前記オリエンテーションフラット部とを研削する工程は、第1の力で前記第1の円弧部を砥石に押し当てながら前記第1の円弧部を研削する工程と、
第2の力で前記接点を前記砥石に押し当てながら前記接点を研削する工程と、
第3の力で前記オリエンテーションフラット部を前記砥石に押し当てながら前記オリエンテーションフラット部を研削する工程とを含み、
前記第2の力は、前記第1の力よりも大きく、かつ前記第3の力は、前記第2の力よりも大きい、請求項2に記載の炭化珪素単結晶基板の製造方法。
前記周縁部に当接する前記砥石の研削面における砥粒密度は、25体積%以上32.5体積%以下である、請求項3または請求項4に記載の炭化珪素単結晶基板の製造方法。
前記第1の円弧部と、前記接点と、前記オリエンテーションフラット部とを研削する工程において、前記炭化珪素単結晶基板を回転させながら、前記第1の円弧部と、前記接点と、前記オリエンテーションフラット部とが研削され、
前記接点を研削する工程における前記炭化珪素単結晶基板の回転速度は、前記第1の円弧部を研削する工程および前記オリエンテーションフラット部を研削する工程の各々における前記炭化珪素単結晶基板の回転速度よりも低い、請求項2〜請求項5のいずれか1項に記載の炭化珪素単結晶基板の製造方法。
前記第1の円弧部と、前記接点と、前記オリエンテーションフラット部とを研削する工程において、前記周縁部の全周が面取りされる、請求項2〜請求項6のいずれか1項に記載の炭化珪素単結晶基板の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[実施形態の説明]
発明者らは、炭化珪素単結晶基板上に炭化珪素エピタキシャル膜を形成する際に、炭化珪素エピタキシャル膜の表面に段差(スリップ)が発生する原因について鋭意研究の結果、以下の知見を得た。
【0012】
たとえば炭化珪素単結晶基板をエピタキシャル膜形成用のサセプタ上に配置する際に、オリエンテーションフラット部と円弧状の周縁部との接点付近がサセプタに接触することにより、当該接点付近が損傷を受ける場合がある。当該損傷が大きい場合、当該接点付近にチッピングが発生する。エピタキシャル膜の表面に発生する段差は、当該接点付近に発生する損傷に起因する。
【0013】
発明者らは鋭意研究の結果、当該接点付近を面取り加工して、円弧状の周縁部の第1の半径よりも小さい第2の半径を有する円弧部を形成することにより、当該接点付近の損傷を取り除き、炭化珪素単結晶基板上に形成されるエピタキシャル膜の表面に段差が発生することを効果的に抑制することができることを見出した。
【0014】
(1)本開示に係る炭化珪素単結晶基板1は、第1の主面1aと、第2の主面1bと、周縁部3とを備える。第2の主面1bは、第1の主面1aと反対側である。周縁部3は、第1の主面1aと第2の主面1bとを繋ぐ。第1の主面1aに対して垂直な方向に沿って見た場合に、周縁部3は、直線状のオリエンテーションフラット部OF1と、第1の半径R1を有する第1の円弧部A1と、オリエンテーションフラット部OF1と第1の円弧部A1とを繋ぎ、かつ第1の半径R1よりも小さい第2の半径R2を有する第2の円弧部A2を有する。これにより、炭化珪素単結晶基板1上に形成される炭化珪素エピタキシャル膜の表面に段差が発生することを効果的に抑制することができる。
【0015】
(2)上記(1)に係る炭化珪素単結晶基板1において好ましくは、第2の半径R2は、50μm以上500μm以下である。第2の半径R2を50μm以上とすることにより、効果的に接点付近の損傷を取り除くことができるので、エピタキシャル膜の表面に発生する段差をより効果的に抑制することができる。第2の半径R2を500μm以下とすることにより、直線状のオリエンテーションフラット部OF1が短くなりすぎることにより、アライメント異常が発生することを抑制することができる。
【0016】
(3)上記(1)または(2)に係る炭化珪素単結晶基板1において好ましくは、第1の主面1aの最大径W1は、100mm以上200mm以下である。第1の主面1aの最大径W1が大きくなると、第1の円弧部A1とオリエンテーションフラット部OF1とにより形成される角度が小さくなって接点付近が鋭利になるため、接点付近にチッピングが発生しやすくなる。そのため、第1の主面1aの最大径W1が100mm以上200mm以下である炭化珪素単結晶基板1において、特に効果的に炭化珪素エピタキシャル膜の表面に段差が発生することを抑制することができる。
【0017】
(4)上記(1)〜(3)のいずれかに係る炭化珪素単結晶基板1において好ましくは、炭化珪素単結晶基板1を構成する材料は、六方晶炭化珪素である。オリエンテーションフラット部OF1は、炭化珪素単結晶基板1の重心Gから見て[1−100]方向に位置している。この場合、第2の円弧部A2は、重心Gから見て[11−20]方向に位置している。六方晶炭化珪素の[11−20]方位の位置は、劈開しやすい性質を有する。そのため、当該位置に第2の円弧部A2を設けることにより、チッピングを効果的に抑制することができる。
【0018】
(5)本開示に係る炭化珪素単結晶基板1の製造方法は以下の工程を備えている。第1の主面1aと、第1の主面1aと反対側の第2の主面1bと、第1の主面1aと第2の主面1bとを繋ぐ周縁部3とを有する炭化珪素単結晶基板1が準備される。第1の主面1aに対して垂直な方向に沿って見た場合に、周縁部3は、直線状のオリエンテーションフラット部OF1と、第1の半径R1を有する第1の円弧部A1と、オリエンテーションフラット部OF1と第1の円弧部A1との接点B2とを有する。さらに、炭化珪素単結晶基板1を回転させながら、第1の円弧部A1と、接点B2と、オリエンテーションフラット部OF1とが研削される。第1の円弧部A1と、接点B2と、オリエンテーションフラット部OF1とが研削されることにより、オリエンテーションフラット部OF1と第1の円弧部A1とを繋ぎ、かつ第1の半径R1よりも小さい第2の半径R2を有する第2の円弧部A2が形成される。これにより、炭化珪素単結晶基板1上に形成される炭化珪素エピタキシャル膜の表面に段差が発生することを効果的に抑制することができる。
【0019】
(6)上記(5)に係る炭化珪素単結晶基板1の製造方法において好ましくは、第1の円弧部A1と、接点B2と、オリエンテーションフラット部OF1とを研削する工程は、第1の力で第1の円弧部A1を砥石2に押し当てながら第1の円弧部A1を研削する工程と、第2の力で接点B2を砥石2に押し当てながら接点B2を研削する工程と、第3の力でオリエンテーションフラット部OF1を砥石に押し当てながらオリエンテーションフラット部OF1を研削する工程とを含む。第2の力は、第1の力よりも大きく、かつ第3の力は、第2の力よりも大きい。これにより、炭化珪素単結晶基板1の割れおよび欠けを防止しつつ、第2の円弧部A2を効率的に形成することができる。
【0020】
(7)上記(6)に係る炭化珪素単結晶基板1の製造方法において好ましくは、砥石2の結合材6はレジンである。レジンを用いた結合材6は、強度が高く、かつ弾性が高い。そのため、金属を用いた結合材よりも、高い周速度条件下における研削に好適に使用されうる。
【0021】
(8)上記(6)または(7)に係る炭化珪素単結晶基板1の製造方法において好ましくは、周縁部3に当接する砥石2の研削面2aにおける砥粒密度は、25体積%以上32.5体積%以下である。これにより、切削能力を上げて周縁部3を砥石2の研削面2aに過剰に押し当てることにより、第2の円弧部A2を効率的に形成することができる。
【0022】
(9)上記(5)〜(8)のいずれかに係る炭化珪素単結晶基板1の製造方法において好ましくは、第1の円弧部A1と、接点B2と、オリエンテーションフラット部OF1とを研削する工程において、炭化珪素単結晶基板1を回転させながら、第1の円弧部A1と、接点B2と、オリエンテーションフラット部OF1とが研削される。接点B2を研削する工程における炭化珪素単結晶基板1の回転速度は、第1の円弧部A1を研削する工程およびオリエンテーションフラット部OF1を研削する工程の各々における炭化珪素単結晶基板1の回転速度よりも低い。これにより、炭化珪素単結晶基板1の割れおよび欠けを防止しつつ、第2の円弧部A2を効率的に形成することができる。
【0023】
(10)上記(5)〜(9)のいずれかに係る炭化珪素単結晶基板1の製造方法において好ましくは、第1の円弧部A1と、接点B2と、オリエンテーションフラット部OF1とを研削する工程において、周縁部3の全周が面取りされる。これにより、周縁部3の全周が面取りされた炭化珪素単結晶基板1を形成することができる。
【0024】
(11)上記(5)〜(10)のいずれかに係る炭化珪素単結晶基板1の製造方法において好ましくは、第1の主面1aの最大径は、100mm以上200mm以下である。第1の主面1aの最大径W1が大きくなると、第1の円弧部A1とオリエンテーションフラット部OF1とにより形成される角度が小さくなって接点付近が鋭利になるため、接点付近にチッピングが発生しやすくなる。そのため、第1の主面1aの最大径W1が100mm以上200mm以下である炭化珪素単結晶基板1において、特に効果的に炭化珪素エピタキシャル膜の表面に段差が発生することを抑制することができる。
[実施形態の詳細]
以下、図面に基づいて実施の形態を説明する。なお、以下の図面において同一または相当する部分には同一の参照番号を付し、その説明は繰返さない。また、本明細書中の結晶学的記載においては、個別方位を[]、集合方位を<>、個別面を()、集合面を{}でそれぞれ示している。また、負の指数については、結晶学上、”−”(バー)を数字の上に付けることになっているが、本明細書中では、数字の前に負の符号を付けている。
【0025】
まず、実施の形態に係る炭化珪素単結晶基板1の構造について説明する。
図1〜
図3を参照して、炭化珪素単結晶基板1は、第1の主面1aと、第1の主面1aとは反対側の第2の主面1bと、周縁部3とを主に有している。周縁部3は、第1の主面1aと第2の主面1bとを繋ぐ面取り部分である。
図3を参照して、第1の主面1aに平行な方向に沿って見た場合(断面視)において、第1の主面1aは、第2の主面1bとほぼ平行である。断面視において、周縁部3は、凸状の曲線である。炭化珪素単結晶基板1を構成する材料は、好ましくは、六方晶炭化珪素であり、より好ましくは、ポリタイプ4Hを有する六方晶炭化珪素である。炭化珪素単結晶基板1は、たとえば窒素(N)などのn型不純物を含んでおり、n型の導電型を有していてもよい。炭化珪素単結晶基板1の第1の主面1aは、たとえば{0001}面または{0001}面から8°以下程度オフした面である。炭化珪素単結晶基板1の第1の主面1aは、たとえば(0001)面または(0001)面から8°以下程度オフした面であり、かつ第2の主面1bは(000−1)面または(000−1)面から8°以下程度オフした面である。炭化珪素単結晶基板1の第1の主面1aは、たとえば(000−1)面または(000−1)面から8°以下程度オフした面であり、かつ第2の主面1bは(0001)面または(0001)面から8°以下程度オフした面であってもよい。
【0026】
図1を参照して、第1の主面1aの最大径W1は、たとえば100mm以上200mm以下であり、好ましくは150mm以上200mm以下である。第1の主面1aに対して垂直な方向に沿って見た場合(平面視)において、周縁部3は、直線状のオリエンテーションフラット部OF1と、第1の円弧部A1と、第2の円弧部A2と、第3の円弧部A3とを有している。たとえば、第1の主面1aの最大径W1が100mm(4インチ)および150mm(6インチ)の場合、第1の主面1aと平行な方向におけるオリエンテーションフラット部OF1の長さは、たとえば32.5mmおよび47.5mm程度である。第1の円弧部A1は、第1の半径R1を有する。言い換えれば、第1の円弧部A1は、中心O1を有し、かつ第1の半径R1を有する円の円周の一部である。第1の半径R1は、たとえば50mm以上100mm以下である。
【0027】
図2を参照して、第2の円弧部A2は、オリエンテーションフラット部OF1と第1の円弧部A1とを繋ぐように形成されている。第2の円弧部A2は、第1の半径R1よりも小さい第2の半径R2を有する。言い換えれば、第2の円弧部A2に沿って形成される円C2は、第1の半径R1よりも小さい第2の半径R2を有する。中心O2と、第2の円弧部A2とオリエンテーションフラット部OF1との接点とを繋ぐ線分S1と、中心O2と、第2の円弧部A2と第1の円弧部A1との接点とを繋ぐ線分S2と、第2の円弧部A2により囲まれた領域は、扇形となる。第2の円弧部A2は、中心O2を有し、かつ第2の半径R2を有する円C2の円周の一部である。好ましくは、第2の半径R2は、50μm以上500μm以下であり、より好ましくは、100μm以上250μm以下である。
【0028】
図1を参照して、直線状のオリエンテーションフラット部OF1の一方端部に第2の円弧部A2が連接し、他方端部には第3の円弧部A3が連接する。第3の円弧部A3は、第2の円弧部A2と同様に、オリエンテーションフラット部OF1と第1の円弧部A1とを繋ぐように形成されている。第3の円弧部A3は、第1の半径R1よりも小さい第3の半径R3を有する。第3の円弧部A3は、中心O3を有し、かつ第3の半径R3を有する円C3の円周の一部である。第3の半径R3は、第2の半径R2とほぼ同じである。なお、第1の半径R1、第2の半径R2および第3の半径R3の各々は、第1の主面1a側から第1の主面1aの画像を撮影することにより測定することができる。
【0029】
オリエンテーションフラット部OF1は、炭化珪素単結晶基板1の重心Gから見て、たとえば[1−100]方向に位置している。平面視において、[1−100]方向は、たとえば直線状のオリエンテーションフラット部が延在する方向に対して垂直な方向である。この場合、第2の円弧部A2は、重心Gから見て[11−20]方向に位置している。六方晶炭化珪素の[11−20]方位の位置は、劈開しやすい性質を有するため、当該位置に対して平面視において曲率を有し、かつ断面視において曲率を有するように面取り加工を施すことが好ましい。なお、炭化珪素単結晶基板1の第1の主面1aおよび第2の主面1bの一方上に、炭化珪素エピタキシャル膜(図示せず)が設けられていてもよい。
【0030】
図13を参照して、本実施の形態に係る炭化珪素単結晶基板1の変形例の構成について説明する。
【0031】
図13に示すように、周縁部3は、さらに第2のオリエンテーションフラット部OF2と、第4の円弧部A4と、第5の円弧部A5とを有していてもよい。第2のオリエンテーションフラット部OF2は、炭化珪素単結晶基板1の重心Gから見て、たとえば[−1−120]方向に位置している。平面視において、[−1−120]方向は、たとえば直線状のオリエンテーションフラット部が延在する方向に対して垂直な方向である。平面視において、第2のオリエンテーションフラット部OF2の直線部分の長さは、オリエンテーションフラット部OF1の直線部分の長さよりも短い。
【0032】
第4の円弧部A4は、第2のオリエンテーションフラット部OF2の一方端部に連接しており、かつ第5の円弧部A5は、第2のオリエンテーションフラット部OF2の他方端部に連接している。第4の円弧部A4は、中心O4および第4の半径R4を有する円C4の一部である。第5の円弧部A5は、中心O5および第5の半径R5を有する円C5の一部である。好ましくは、第4の半径R4および第5の半径R5の各々は、第2の半径R2よりも小さい。平面視において、第3の円弧部A3と第4の円弧部A4との間に、第6の円弧部A6を有していてもよい。第6の円弧部A6の半径は、第1の円弧部A1の第1の半径R1とほぼ同じであってもよい。
【0033】
次に、円弧部の半径の測定方法について説明する。
円弧部の半径は、たとえば株式会社コベルコ科研製のエッジプロファイルモニタ(型番:LEP−2000)により測定することができる。具体的には、エッジプロファイルモニタにより、炭化珪素単結晶基板1の第1の主面1aの画像が取得される。取得された画像から、円弧部(たとえば第2の円弧部A2:
図2参照)が識別される。円弧部との重なりが最大になるように、円弧部に円(たとえば円C2:
図2参照)がフィッティングされる。フィッティングされた円から、円の半径(たとえば第2の半径R2:
図2参照)が算出される。フィッティングされた円の半径が、円弧部の半径である。なお、エッジプロファイルモニタの代わりに、株式会社ニコン製の白色干渉顕微鏡(型番:Nikon BW−503D)が利用されてもよい。たとえば、白色干渉顕微鏡により取得された第1の主面1aの画像を用いて、円弧部に円が手動でフィッティングされ、当該フィッティングされた円から、円弧部の半径が算出されてもよい。
【0034】
次に、実施の形態に係る炭化珪素単結晶基板の製造方法について説明する。
たとえば昇華法によって、ポリタイプ4Hを有する六方晶炭化珪素からなる略円柱状のインゴット(図示せず)が形成される。次に、略円柱状のインゴットの軸線に対してほぼ平行な方向に沿ってインゴットの一部を切断することにより、オリエンテーションフラット部を形成する。次に、オリエンテーションフラット部が形成されたインゴットを、軸線に対してほぼ垂直な方向に沿ってスライスすることにより、複数の炭化珪素単結晶基板1が切り出される。
【0035】
図4および
図5を参照して、炭化珪素単結晶基板1は、第1の主面1aと、第1の主面1aと反対側の第2の主面1bと、第1の主面1aと第2の主面1bとを繋ぐ周縁部3とを有する。炭化珪素単結晶基板1を構成する材料は、好ましくは、六方晶炭化珪素であり、より好ましくは、ポリタイプ4Hを有する六方晶炭化珪素である。炭化珪素単結晶基板1は、たとえば窒素(N)などのn型不純物を含んでおり、n型の導電型を有していてもよい。炭化珪素単結晶基板1の第1の主面1aは、たとえば{0001}面または{0001}面から8°以下程度オフした面である。炭化珪素単結晶基板1の第1の主面1aは、たとえば(0001)面または(0001)面から8°以下程度オフした面であり、かつ第2の主面1bは(000−1)面または(000−1)面から8°以下程度オフした面である。炭化珪素単結晶基板1の第1の主面1aは、たとえば(000−1)面または(000−1)面から8°以下程度オフした面であり、かつ第2の主面1bは(0001)面または(0001)面から8°以下程度オフした面であってもよい。
図5に示すように、断面視において、第1の主面1aは、第2の主面1bとほぼ平行である。断面視において、周縁部3は、第1の主面1aおよび第2の主面1bの各々に対してほぼ垂直である。
【0036】
図4を参照して、第1の主面1aの最大径W1は、たとえば100mm以上200mm以下であり、好ましくは150mm以上200mm以下である。第1の主面1aに対して垂直な方向に沿って見た場合に、周縁部3は、直線状のオリエンテーションフラット部OF1と、第1の円弧部A1と、オリエンテーションフラット部OF1の一方端部と第1の円弧部A1との接点B2と、オリエンテーションフラット部OF1の他方端部と第1の円弧部A1との接点B3とを有する。第1の円弧部A1は、第1の半径R1を有する円の一部である。第1の半径R1は、たとえば50mm以上100mm以下である。
【0037】
次に、炭化珪素単結晶基板1の周縁部3の面取りが実施される。具体的には、第1の主面1aに対して垂直な回転軸1cの周りに炭化珪素単結晶基板1を回転させながら、第1の円弧部A1と、接点B2と、オリエンテーションフラット部OF1とが研削される。
図5を参照して、研削面2aを有する砥石2が準備される。砥石2は、回転軸2bの周りに回転可能に構成されている。
図5に示すように、炭化珪素単結晶基板1の周縁部3が砥石2の研削面2aに対面するように、炭化珪素単結晶基板1が配置される。
【0038】
図6を参照して、砥石2の研削面2a付近を拡大すると、砥石2は、台金5と、台金5上に設けられた結合材6と、結合材6により台金5に固定された複数の砥粒7とを有している。砥粒7は、たとえばダイヤモンドである。
図6に示すように、砥粒7の一部が結合材6に埋め込まれており、残りの部分が結合材6から露出している。砥粒7は、炭化珪素単結晶基板1の周縁部3に当接する。好ましくは、砥石2の結合材6はレジン(樹脂)である。レジンを用いた結合材6は、たとえばフェノール樹脂などの熱硬化性樹脂を主な材料として構成されている。結合材6は、たとえば150℃以上200℃以下程度の温度で焼結される。レジンを用いた結合材6は、強度が高く、かつ弾性が高い。そのため、金属を用いた結合材よりも、高い周速度条件下における研削に好適に使用されうる。
【0040】
好ましくは、砥石2の研削面2aにおける砥粒密度は、25体積%以上32.5体積%以下である。砥粒密度は、砥粒層中に含まれる砥粒の割合である。表1は、集中度と、砥粒密度と、ダイヤモンド含有量との対応関係を示している。たとえば、ダイヤモンド含有量が4.4ct.(カラット)/cm
3が、集中度が100および砥粒密度が25体積%に対応する。表1において、集中度が25から200までの場合における、砥粒密度およびダイヤモンド含有量が記載されている。
【0041】
図7および
図10を参照して、回転軸2bの周りに砥石2を回転させ、かつ回転軸1cの周りに炭化珪素単結晶基板1を回転させながら、炭化珪素単結晶基板1の周縁部3が砥石2の研削面2aに押し当てられる。砥石2の回転軸2bは、炭化珪素単結晶基板1の回転軸1cとほぼ平行である。炭化珪素単結晶基板1の回転軸1cは、第1の円弧部A1の中心O1を通っていてもよい。
図7に示すように、第1の主面1a側の周縁部3のオリエンテーションフラット部OF1が、第3の力F3で、砥石2の研削面2aに押し当てられながら、オリエンテーションフラット部OF1が研削される。砥石2の回転速度は、好ましくは4000rpm以上6000rpm以下であり、たとえば5000rpmである。炭化珪素単結晶基板1の回転速度は、砥石2の回転速度よりも遅い。炭化珪素単結晶基板1の回転速度は、たとえば1rpmである。好ましくは、砥石2の回転方向D2は、炭化珪素単結晶基板1の回転方向D1と同じである。オリエンテーションフラット部OF1は、一方の端部から他方の端部まで研削される。
【0042】
次に、第1の主面1a側のオリエンテーションフラット部OF1および第1の円弧部A1の接点B2が研削される。
図8および
図10を参照して、回転軸2bの周りに砥石2を回転させ、かつ回転軸1cの周りに炭化珪素単結晶基板1を回転させながら、第2の力F2で、接点B2が砥石2の研削面2aに押し当てられることにより、接点B2が研削される。好ましくは、第3の力F3は、第2の力F2よりも大きい。好ましくは、接点B2を研削する工程における炭化珪素単結晶基板1の回転速度は、オリエンテーションフラット部OF1を研削する工程における炭化珪素単結晶基板1の回転速度よりも低い。つまり、オリエンテーションフラット部OF1の研削が終了した後、炭化珪素単結晶基板1の回転速度を低下させて接点B2の研削が開始される。
【0043】
次に、第1の主面1a側の第1の円弧部A1が研削される。
図9および
図10を参照して、回転軸2bの周りに砥石2を回転させ、かつ回転軸1cの周りに炭化珪素単結晶基板1を回転させながら、第1の力F1で、第1の円弧部A1が砥石2の研削面2aに押し当てられることにより、第1の円弧部A1が研削される。好ましくは、第2の力F2は、第1の力F1よりも大きい。好ましくは、接点B2を研削する工程における炭化珪素単結晶基板1の回転速度は、第1の円弧部A1を研削する工程を研削する工程における炭化珪素単結晶基板1の回転速度よりも低い。つまり、接点B2の研削が終了した後、炭化珪素単結晶基板1の回転速度を上げて第1の円弧部A1が研削される。炭化珪素単結晶基板1が回転することにより、第1の円弧部A1の一方の端部から他方の端部まで研削される。
【0044】
次に、第1の主面1a側のオリエンテーションフラット部OF1および第1の円弧部A1の接点B3が研削される。回転軸2bの周りに砥石2を回転させ、かつ回転軸1cの周りに炭化珪素単結晶基板1を回転させながら、第2の力F2で、接点B3が砥石2の研削面2aに押し当てられることにより、接点B3が研削される。好ましくは、接点B3を研削する工程における炭化珪素単結晶基板1の回転速度は、オリエンテーションフラット部OF1および第1の円弧部A1を研削する工程における炭化珪素単結晶基板1の回転速度よりも低い。つまり、第1の円弧部A1の研削が終了した後、炭化珪素単結晶基板1の回転速度を低下させて接点B3の研削が開始される。
【0045】
以上のように、第1の主面1a側の周縁部3が砥石2の研削面2aに押し当てられた状態で炭化珪素単結晶基板1が回転軸1cの周りを360°回転することにより、第1の主面1a側の周縁部3の全周が面取りされる。
図10に示すように、炭化珪素単結晶基板1の第1の主面1a側の周縁部3が面取りされているため、第1の主面1a側の周縁部3はラウンド形状になっている。一方、第2の主面1b側の周縁部3は未だ面取りされていない。そのため、断面視において、周縁部3と第2の主面1bとが形成する角度はほぼ90°である。
【0046】
次に、第2の主面1b側の周縁部3の面取りが実施される。
図11を参照して、炭化珪素単結晶基板1の第2の主面1b側の周縁部3が、砥石2の研削面2aに当接するように、炭化珪素単結晶基板1の位置が下げられる。
図7および
図11を参照して、回転軸2bの周りに砥石2を回転させ、かつ回転軸1cの周りに炭化珪素単結晶基板1を回転させながら、炭化珪素単結晶基板1のオリエンテーションフラット部OF1が砥石2の研削面2aに押し当てられる。第2の主面1b側のオリエンテーションフラット部OF1が、第3の力F3で、砥石2の研削面2aに押し当てられながら、オリエンテーションフラット部OF1が研削される。砥石2の回転速度は、好ましくは4000rpm以上6000rpm以下であり、たとえば5000rpmである。炭化珪素単結晶基板1の回転速度は、砥石2の回転速度よりも遅い。炭化珪素単結晶基板1の回転速度は、たとえば1rpmである。好ましくは、砥石2の回転方向D2は、炭化珪素単結晶基板1の回転方向D1と同じである。オリエンテーションフラット部OF1は、一方の端部から他方の端部まで研削される。
【0047】
次に、第2の主面1b側のオリエンテーションフラット部OF1および第1の円弧部A1の接点B2が研削される。
図8および
図11を参照して、回転軸2bの周りに砥石2を回転させ、かつ回転軸1cの周りに炭化珪素単結晶基板1を回転させながら、第2の力F2で、接点B2が砥石2の研削面2aに押し当てられることにより、接点B2が研削される。好ましくは、第3の力F3は、第2の力F2よりも大きい。好ましくは、接点B2を研削する工程における炭化珪素単結晶基板1の回転速度は、オリエンテーションフラット部OF1を研削する工程における炭化珪素単結晶基板1の回転速度よりも低い。つまり、オリエンテーションフラット部OF1の研削が終了した後、炭化珪素単結晶基板1の回転速度を低下させて接点B2の研削が開始される。
【0048】
次に、第2の主面1b側の第1の円弧部A1が研削される。
図9および
図11を参照して、回転軸2bの周りに砥石2を回転させ、かつ回転軸1cの周りに炭化珪素単結晶基板1を回転させながら、第1の力F1で、第1の円弧部A1が砥石2の研削面2aに押し当てられることにより、第1の円弧部A1が研削される。好ましくは、第2の力F2は、第1の力F1よりも大きい。好ましくは、接点B2を研削する工程における炭化珪素単結晶基板1の回転速度は、第1の円弧部A1を研削する工程を研削する工程における炭化珪素単結晶基板1の回転速度よりも低い。つまり、接点B2の研削が終了した後、炭化珪素単結晶基板1の回転速度を上げて第1の円弧部A1が研削される。炭化珪素単結晶基板1が回転することにより、第1の円弧部A1の一方の端部から他方の端部まで研削される。
【0049】
次に、第2の主面1b側のオリエンテーションフラット部OF1および第1の円弧部A1の接点B3が研削される。回転軸2bの周りに砥石2を回転させ、かつ回転軸1cの周りに炭化珪素単結晶基板1を回転させながら、第2の力F2で、接点B3が砥石2の研削面2aに押し当てられることにより、接点B3が研削される。好ましくは、接点B3を研削する工程における炭化珪素単結晶基板1の回転速度は、オリエンテーションフラット部OF1および第1の円弧部A1を研削する工程における炭化珪素単結晶基板1の回転速度よりも低い。つまり、第1の円弧部A1の研削が終了した後、炭化珪素単結晶基板1の回転速度を低下させて接点B3の研削が開始される。以上のように、第2の主面1b側の周縁部3が砥石2の研削面2aに押し当てられた状態で炭化珪素単結晶基板1が回転軸1cの周りを360°回転することにより、第2の主面1b側の周縁部3の全周が面取りされる。最終的には、第1の主面1a側の周縁部3および第2の主面1b側の周縁部3の双方の全周が面取りされる。
図12を参照して、周縁部3の全周の面取りが終了した後、炭化珪素単結晶基板1の周縁部3が、砥石2の研削面2aから離される。
【0050】
以上のように、第1の円弧部A1と、接点B2と、オリエンテーションフラット部OF1とが研削されることにより、オリエンテーションフラット部OF1と第1の円弧部A1とを繋ぎ、かつ第1の半径R1よりも小さい第2の半径R2を有する第2の円弧部A2が形成される(
図1参照)。
【0051】
なお、上記実施の形態においては、炭化珪素単結晶基板1が第1の主面1a側から見て時計周りに回転する場合について説明したが、炭化珪素単結晶基板1が第1の主面1a側から見て反時計回りに回転してもよい。また上記実施の形態においては、第1の主面1a側の周縁部3が研削された後に、第2の主面1b側の周縁部3が研削される場合について説明したが、第2の主面1b側の周縁部3が研削された後に、第1の主面1a側の周縁部3が研削されてもよい。さらに、第1の主面1a側の周縁部3および第2の主面1b側の周縁部3の双方が同時に研削されてもよい。
【0052】
次に、本実施の形態に係る炭化珪素単結晶基板およびその製造方法の作用効果について説明する。
【0053】
本実施の形態に係る炭化珪素単結晶基板1によれば、周縁部3は、直線状のオリエンテーションフラット部OF1と、第1の半径R1を有する第1の円弧部A1と、オリエンテーションフラット部OF1と第1の円弧部A1とを繋ぎ、かつ第1の半径R1よりも小さい第2の半径R2を有する第2の円弧部A2を有する。これにより、炭化珪素単結晶基板1上に形成される炭化珪素エピタキシャル膜の表面に段差が発生することを効果的に抑制することができる。
【0054】
また本実施の形態に係る炭化珪素単結晶基板1によれば、第2の半径R2は、50μm以上500μm以下である。第2の半径R2を50μm以上とすることにより、効果的に接点付近の損傷を取り除くことができるので、エピタキシャル膜の表面に発生する段差をより効果的に抑制することができる。第2の半径R2を500μm以下とすることにより、直線状のオリエンテーションフラット部OF1が短くなりすぎることにより、アライメント異常が発生することを抑制することができる。
【0055】
さらに本実施の形態に係る炭化珪素単結晶基板1によれば、第1の主面1aの最大径W1は、100mm以上200mm以下である。第1の主面1aの最大径W1が大きくなると、第1の円弧部A1とオリエンテーションフラット部OF1とにより形成される角度が小さくなって接点付近が鋭利になるため、接点付近にチッピングが発生しやすくなる。そのため、第1の主面1aの最大径W1が100mm以上200mm以下である炭化珪素単結晶基板1において、特に効果的に炭化珪素エピタキシャル膜の表面に段差が発生することを抑制することができる。
【0056】
さらに本実施の形態に係る炭化珪素単結晶基板1によれば、炭化珪素単結晶基板1を構成する材料は、六方晶炭化珪素である。オリエンテーションフラット部OF1は、炭化珪素単結晶基板1の重心Gから見て[1−100]方向に位置している。この場合、第2の円弧部A2は、重心Gから見て[11−20]方向に位置している。六方晶炭化珪素の[11−20]方位の位置は、劈開しやすい性質を有する。そのため、当該位置に第2の円弧部A2を設けることにより、チッピングを効果的に抑制することができる。
【0057】
本実施の形態に係る炭化珪素単結晶基板1の製造方法によれば、炭化珪素単結晶基板1を回転させながら、第1の円弧部A1と、接点B2と、オリエンテーションフラット部OF1とが研削される。第1の円弧部A1と、接点B2と、オリエンテーションフラット部OF1とが研削されることにより、オリエンテーションフラット部OF1と第1の円弧部A1とを繋ぎ、かつ第1の半径R1よりも小さい第2の半径R2を有する第2の円弧部A2が形成される。これにより、炭化珪素単結晶基板1上に形成される炭化珪素エピタキシャル膜の表面に段差が発生することを効果的に抑制することができる。
【0058】
また本実施の形態に係る炭化珪素単結晶基板1の製造方法によれば、第1の円弧部A1と、接点B2と、オリエンテーションフラット部OF1とを研削する工程は、第1の力で第1の円弧部A1を砥石2に押し当てながら第1の円弧部A1を研削する工程と、第2の力で接点B2を砥石2に押し当てながら接点B2を研削する工程と、第3の力でオリエンテーションフラット部OF1を砥石に押し当てながらオリエンテーションフラット部OF1を研削する工程とを含む。第2の力は、第1の力よりも大きく、かつ第3の力は、第2の力よりも大きい。これにより、炭化珪素単結晶基板1の割れや欠けを防止しつつ、第2の円弧部A2を効率的に形成することができる。
【0059】
さらに本実施の形態に係る炭化珪素単結晶基板1の製造方法によれば、砥石2の結合材6はレジンである。レジンを用いた結合材6は、強度が高く、かつ弾性が高い。そのため、金属を用いた結合材よりも、高い周速度条件下における研削に好適に使用されうる。
【0060】
さらに本実施の形態に係る炭化珪素単結晶基板1の製造方法によれば、周縁部3に当接する砥石2の研削面2aにおける砥粒密度は、25体積%以上32.5体積%以下である。これにより、切削能力を上げて周縁部3を砥石2の研削面2aに過剰に押し当てることにより、第2の円弧部A2を効率的に形成することができる。
【0061】
さらに本実施の形態に係る炭化珪素単結晶基板1の製造方法によれば、第1の円弧部A1と、接点B2と、オリエンテーションフラット部OF1とを研削する工程において、炭化珪素単結晶基板1を回転させながら、第1の円弧部A1と、接点B2と、オリエンテーションフラット部OF1とが研削される。接点B2を研削する工程における炭化珪素単結晶基板1の回転速度は、第1の円弧部A1を研削する工程およびオリエンテーションフラット部OF1を研削する工程の各々における炭化珪素単結晶基板1の回転速度よりも低い。これにより、炭化珪素単結晶基板1の割れや欠けを防止しつつ、第2の円弧部A2を効率的に形成することができる。
【0062】
さらに本実施の形態に係る炭化珪素単結晶基板1の製造方法によれば、第1の円弧部A1と、接点B2と、オリエンテーションフラット部OF1とを研削する工程において、周縁部3の全周が面取りされる。これにより、周縁部3の全周が面取りされた炭化珪素単結晶基板1を形成することができる。
【0063】
さらに本実施の形態に係る炭化珪素単結晶基板1の製造方法によれば、第1の主面1aの最大径は、100mm以上200mm以下である。第1の主面1aの最大径W1が大きくなると、第1の円弧部A1とオリエンテーションフラット部OF1とにより形成される角度が小さくなって接点付近が鋭利になるため、接点付近にチッピングが発生しやすくなる。そのため、第1の主面1aの最大径W1が100mm以上200mm以下である炭化珪素単結晶基板1において、特に効果的に炭化珪素エピタキシャル膜の表面に段差が発生することを抑制することができる。
【実施例】
【0064】
まず、第2の円弧部A2の第2の半径R2が異なる6種類の炭化珪素単結晶基板1(
図1参照)を準備した。第2の半径R2を、0μm、50μm、100μm、200μm、500μmおよび1000μmとした。第2の半径R2が0μmの炭化珪素単結晶基板1(比較例)は、オリエンテーションフラット部OF1と第1の円弧部A1との接点B2、B3を研削することなく作製した。第2の半径R2が50μm以上1000μm以下の炭化珪素単結晶基板1は、上記実施の形態で説明した方法により、オリエンテーションフラット部OF1と第1の円弧部A1との接点B2、B3を研削して作製した。炭化珪素単結晶基板1の周縁部3の研削後、上記6種類の炭化珪素単結晶基板1の第1の主面1a上に炭化珪素エピタキシャル膜を形成した。炭化珪素エピタキシャル膜の厚みを15μmとした。
【0065】
上記6種類の炭化珪素単結晶基板1を作製した後、第1の主面1aにオリエンテーションフラット部OF1と第1の円弧部A1との接点付近におけるチッピングの有無を、光学顕微鏡を用いて調査した。第1の主面1aと平行な方向における長さが50μm以上のチッピングが存在する場合、チッピングが有ると判断し、50μm以上のチッピングが存在しない場合、チッピングが無いと判断した。同様に、炭化珪素単結晶基板1上に形成された炭化珪素エピタキシャル膜の表面における凹凸(スリップ)の有無を調査した。第1の主面1aに対して垂直な方向における段差が1μm以上の段差が存在する場合、凹凸が有ると判断し、1μm以上の段差が存在しない場合、凹凸が無いと判断した。
【0066】
表2を参照して、上記6種類の炭化珪素単結晶基板1におけるチッピングの有無およびエピタキシャル膜の表面の凹凸の有無について説明する。
【0067】
【表2】
【0068】
表2に示すように、第2の半径R2が0μmである炭化珪素単結晶基板1の場合(つまり、オリエンテーションフラット部OF1と第1の円弧部A1との接点B2、B3が研削されていない場合)、オリエンテーションフラット部OF1と第1の円弧部A1との接点付近に50μm以上のチッピングが観察された。また炭化珪素単結晶基板1上に形成されたエピタキシャル膜の表面に1μm以上の段差が観察された。一方、第2の半径R2が50μm以上1000μm以下の炭化珪素単結晶基板1の場合、オリエンテーションフラット部OF1と第1の円弧部A1との接点付近に50μm以上のチッピングが観察されなかった。また炭化珪素単結晶基板1上に形成されたエピタキシャル膜の表面に1μm以上の段差が観察されなかった。
【0069】
以上の結果により、第2の半径R2を50μm以上1000μm以下とすることにより、チッピングおよびエピタキシャル膜の表面の段差が発生することを効果的に抑制可能であることが確認された。また第2の半径R2が500μmよりも大きくなると、直線状のオリエンテーションフラット部OF1の長さが相対的に短くなる。そのため、オリエンテーションフラット部OF1を基準として炭化珪素単結晶基板10と製造装置との位置合わせを行う場合、位置合わせの不具合が発生する場合がある。よって、第2の半径R2は、50μm以上500μm以下であることが好ましい。
【0070】
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味、および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。