(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
[本発明の実施形態の説明]
最初に、本発明の実施形態の内容を列記して説明する。一実施形態に係る半導体レーザ装置の動作条件決定方法は、第1駆動電流が供給され、入力信号に応じて変調された光信号を出力する半導体レーザと、半導体レーザと光学的に結合され、第2駆動電流の大きさに応じて光信号を増幅する半導体光増幅部と、半導体レーザ及び半導体光増幅部が搭載され、第3駆動電流の大きさに応じて半導体レーザ及び半導体光増幅部の温度を制御する温度制御部と、を備える半導体レーザ装置の動作条件を決定する方法であって、第1〜第3駆動電流の設定値を入力し、半導体レーザを駆動させ、変調された光信号を出力させる第1工程と、半導体光増幅部から出力され所定距離を伝送した後の光信号の波形に基づいて第2駆動電流の大きさを決定する第2工程と、第2工程の後、半導体光増幅部から出力される光信号の波長に基づく第3駆動電流の大きさの決定、及び光信号の光強度に基づく第1駆動電流の大きさの決定を行う第3工程とを含む。
【0012】
この方法では、まず、SOAから出力される光信号の所定距離伝送後の波形に基づいて、SOAへの第2駆動電流の大きさを決定する。一例では、SOAが飽和領域を超えた領域において動作するように第2駆動電流の大きさを決定する。その後に、SOAから出力される光信号の波長に基づく温度制御部への第3駆動電流の大きさの決定、及び光強度に基づく半導体レーザへの第1駆動電流の大きさの決定を行う。このように、最初にSOAへの第2駆動電流の調整を行うことにより、温度制御部への第3駆動電流及び半導体レーザへの第1駆動電流を再調整する必要性を低減できる。従って、この方法によれば、半導体レーザへの第1駆動電流、温度制御部への第3駆動電流、及びSOAへの第2駆動電流それぞれの大きさを容易に決定することができる。
【0013】
上記の動作条件決定方法の第3工程において、第3駆動電流の大きさを決定した後、第1駆動電流の大きさを決定してもよい。
【0014】
上記の動作条件決定方法において、半導体レーザは、駆動電圧の大きさに応じて変調される変調部と、第1駆動電流が供給されることで駆動されるレーザ部とを含み、第3工程は、光信号の波形に基づいて駆動電圧の大きさを決定する工程を含み、第3駆動電流の大きさ、第1駆動電流の大きさ、駆動電圧の大きさの決定を順に行ってもよい。
【0015】
上記の動作条件決定方法において、半導体レーザ及びSOAは共通の半導体基板上に集積されてもよい。そのような場合、半導体レーザ及びSOAは必然的に共通の温度制御部上に搭載されることとなるので、上記の方法が特に有効となる。
【0016】
上記の動作条件決定方法は、第3工程の後、所定距離を伝送した後の伝送ペナルティが許容範囲内か否かを判定する第4工程を更に含み、第4工程において伝送ペナルティが許容範囲外である場合に第2工程を再び行ってもよい。このような第4工程を更に含むことにより、光信号の波形の歪みを更に抑制することができる。
【0017】
[本発明の実施形態の詳細]
本発明の実施形態に係る半導体レーザ装置の動作条件決定方法の具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。以下の説明では、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0018】
図1は、光モジュール1Aの構成を示す平面図である。なお、
図1では、送信デバイス10が部分的に平面断面として示されており、送信デバイス10の内部構成が示されている。送信デバイス10は、本発明の一実施形態に係る動作条件決定方法の対象となる構成要素(半導体レーザ装置)である。
【0019】
光モジュール1Aは、いわゆるBOSA(Bi-directional Optical Sub-Assembly)である。光モジュール1Aは、送信デバイス10に加えて、本体部30、受信デバイス32、及びレセプタクル34を備える。本体部30は、略円筒状の筐体を有し、その内部に波長選択フィルタを内蔵している。円筒状の筐体の一端には送信デバイス10が固定されており、送信デバイス10から送信用の光信号が筐体内に入力される。この光信号は、波長選択フィルタを通過したのち、筐体の他端から光モジュール1Aの外部へ出力される。また、円筒状の筐体の側面には受信デバイス32が固定されており、光モジュール1Aの外部から本体部30に入力された受信用の光信号は、波長選択フィルタにおいて反射したのち受信デバイス32に入力される。受信デバイス32は、例えばCANパッケージといった筐体を有しており、光信号を電気信号に変換する受光素子(例えばフォトダイオード)を筐体内に内蔵している。受信用の光信号の伝送レートは、例えば10Gbpsである。なお、受信光に含まれるノイズ光を遮断するための別の波長選択フィルタ(例えば100GHzの波長チャネルに対応したバンドパスフィルタ)が筐体内に更に内蔵されてもよい。レセプタクル34は、円筒状の筐体の他端に固定されており、光ファイバの一端に取り付けられた光コネクタ等との接続を行う。
【0020】
送信デバイス10は、いわゆるTOSA(Transmitter Optical Sub-Assembly)であって、例えば10Gbpsの光信号を出力する。送信デバイス10は、略直方体状の中空の筐体11と、筐体11に内蔵された、温度制御部(Thermo Electric Cooler;TEC)12、キャリア13、伝送基板15、レンズ16、キャパシタ17及び18、半導体光集積素子20、ビームスプリッタ41、受光素子42、及びPDキャリア43とを備えている。
【0021】
図2は、半導体光集積素子20の構成を示す断面図であって、光の導波方向に沿った断面を示している。
図2に示されるように、本実施形態の半導体光集積素子20は、半導体レーザ20Aと、半導体レーザ20Aに光学的に結合された半導体光増幅部(SOA)23とを有する。半導体レーザ20A及びSOA23は、共通の半導体基板24上に集積されており、互いに隣接している。半導体基板24の裏面上には共通の電極25が設けられており、半導体光集積素子20は、電極25に接する導電性接着剤を介してキャリア13上に実装されている。
【0022】
半導体レーザ20Aは、駆動電流の供給を受け、入力信号に応じて変調された光信号を出力する。半導体レーザ20Aは、レーザ部21と、レーザ部21に光結合されたEA変調器22とを有する。レーザ部21及びEA変調器22は、共通の半導体基板24上に集積されており、互いに隣接している。レーザ部21は、半導体基板24上に設けられた活性層21aと、活性層21a上に設けられたクラッド層26と、クラッド層26上に設けられた電極21cとを有し、電極21cへの駆動電流(第1駆動電流)に応じてレーザ光(連続光)を出力する。また、レーザ部21はいわゆる分布帰還型(DFB)レーザであって、半導体基板24と活性層21aとの間に設けられた回折格子21bを有する。この回折格子21bの波長選択作用により、レーザ部21は、所定波長のレーザ光を出力する。レーザ部21のEA変調器22とは反対側の端面には光反射膜27が設けられている。
【0023】
EA変調器22は、レーザ部21とSOA23との間に設けられており、レーザ部21から出力されたレーザ光を入力信号に応じて変調することにより光信号を生成する。EA変調器22は、半導体基板24上に設けられた光吸収層22aと、光吸収層22a上に設けられたクラッド層26と、クラッド層26上に設けられた電極22bとを有し、電極22bへの変調信号に応じてレーザ光を吸収する。電極22bには、信号の内容に応じて変調された変調信号が入力される。変調信号は、例えば電圧信号である。
【0024】
SOA23は、EA変調器22から出力された光信号を増幅する。SOA23は、半導体基板24上に設けられた活性層23aと、活性層23a上に設けられたクラッド層26と、クラッド層26上に設けられた電極23bとを有し、電極23bに供給される駆動電流(第2駆動電流)に応じて光信号を増幅する。これにより、半導体光集積素子20は、高出力の光信号を出力することができる。一例では、SOA23は、光通信用途で使用される波長帯域(例えば1250nm〜1600nm)の光信号を増幅することができる。SOA23のEA変調器22とは反対側の端面(光出射端面)には、反射防止膜28が設けられている。
【0025】
一実施例では、半導体基板24はn型InP基板であり、活性層23aはInGaAsP井戸層/InGaAsP障壁層からなる多重量子井戸構造を有し、クラッド層26はp型InP層である。活性層23aは、InGaAsPからなるバルク半導体層であってもよい。
【0026】
なお、本実施形態では、半導体レーザ20A及びSOA23が共通の半導体基板上に集積化された例を示したが、半導体レーザ20A及びSOA23はそれぞれ別個の光部品として構成されてもよい。また、本実施形態では、半導体レーザ20Aがレーザ部21とEA変調器22とを有する例を示したが、EA変調器22が設けられず、第1駆動電流と変調電流とが合成されて成る駆動電流がレーザ部21に供給される構成(いわゆる直接変調型)であってもよい。
【0027】
再び
図1を参照する。TEC12は、筐体11の底面上に配置されており、供給される駆動電流(第3駆動電流)に応じて、TEC12上に搭載された物体から熱を吸収してその熱を筐体11へ放出する。TEC12上に搭載される物体には、上述した半導体光集積素子20(半導体レーザ20A及び半導体光増幅部23)が含まれており、TEC12は、駆動電流に応じて半導体レーザ20A及びSOA23の温度を制御する。これにより、半導体レーザ20Aから出力される光信号の波長が所望の波長に制御される。TEC12は、例えばペルチェ素子によって構成される。TEC12の一対の電極12a,12bは、それぞれ筐体11の側壁に設けられたフィードスルー上の端子14a,14bと、ボンディングワイヤを介して電気的に接続されている。TEC12は、送信デバイス10の外部から端子14a,14bを介して駆動電流を受ける。キャリア13は、TEC12上に搭載されている平板状の部材である。キャリア13は、キャリア13上に配置された物体の熱をTEC12へ伝える。
【0028】
伝送基板15は、筐体11の後壁に向けて延びる細長形状の部材であり、キャリア13上に固定されている。伝送基板15は、その表面に伝送線路15aを有し、その裏面に基準電位パターン(GNDパターン)を有する。伝送線路15a及び基準電位パターンはマイクロストリップ線路を構成する。伝送線路15aの一端は、ボンディングワイヤを介して半導体光集積素子20の電極22bと電気的に接続されている。伝送線路15aの他端は、ボンディングワイヤを介して、筐体11の後壁に設けられたフィードスルー11b上の端子14cと電気的に接続されている。伝送基板15は、送信デバイス10の外部から端子14cを介して変調信号を受け、この変調信号を電極22bに提供する。
【0029】
レンズ16は、半導体光集積素子20の光出力端面と光学的に結合された凸レンズであり、半導体光集積素子20から出力された光信号をコリメートする。コリメートされた光信号は、ビームスプリッタ41により、送信用の光信号とモニタ光に分岐され、送信用の光信号は、筐体11の前壁に形成された窓11aから本体部30へ出力され、モニタ光は、PDキャリア43上に搭載された受光素子42で受光される。レンズ16は、キャリア13上に固定されている。受光素子42としては、PINフォトダイオード及びアバランシェフォトダイオードのどちらを用いても良い。
【0030】
キャパシタ17は、キャリア13上に実装されている。キャパシタ17の一方の電極からは2本のボンディングワイヤが延びており、そのうち1本は半導体光集積素子20の電極23bに接続され、他の1本は筐体11の側壁に設けられたフィードスルー上の端子14dに接続されている。キャパシタ17の他方の電極は、キャリア13を介して基準電位(GND電位)に接続されている。送信デバイス10の外部から供給された駆動電流は、端子14d及びキャパシタ17の一方の電極を介して電極23bに供給される。キャパシタ17は、この駆動電流から高周波成分(例えばノイズ)を除去するバイパスコンデンサとして機能する。
【0031】
キャパシタ18は、キャリア13上に実装されている。キャパシタ18の一方の電極からは2本のボンディングワイヤが延びており、そのうち1本は半導体光集積素子20の電極21cに接続され、他の1本は筐体11の側壁に設けられたフィードスルー上の端子14eに接続されている。キャパシタ18の他方の電極は、キャリア13を介して基準電位(GND電位)に接続されている。送信デバイス10の外部からの駆動電流は、端子14e及びキャパシタ18の一方の電極を介して電極21cに供給される。キャパシタ18は、この駆動電流から高周波成分(例えばノイズ)を除去するバイパスコンデンサとして機能する。
【0032】
ここで、SOA23の出力特性について詳細に説明する。
図3は、SOA23の駆動電流と光出力強度との関係の一例を示す図である。縦軸は平均光出力強度Pf(単位:dBm)を表し、横軸はSOA23への駆動電流Isoa(単位:mA)を表す。この
図3には、グラフG11〜G15が示されている。グラフG11〜G15は、それぞれレーザ部21への駆動電流Iopが60(mA),80(mA),100(mA),120(mA),140(mA)である場合を示している。
図3に示されるように、SOA23から出力される増幅後の光信号の強度は、レーザ部21への駆動電流Iopに応じて変化し、駆動電流Iopが大きいほど大きくなる。また、グラフG12に代表して示すように、SOA23の出力特性には、駆動電流Isoaの増加に対して光出力強度Pfが大きくなる第1領域A1(線形領域)と、駆動電流Isoaの増加に対して光出力強度Pfが殆ど変化しなくなり飽和する第2領域A2(飽和領域)と、駆動電流Isoaの増加に対し、第2領域A2を超えて光出力強度Pfが小さくなる第3領域A3とが含まれる。
【0033】
なお、測定誤差等に起因して、第2領域A2における光出力強度Pfは必ずしも一定値を維持しない。そこで、例えば、光出力強度Pfの最大値と、当該最大値より0.1dB低い光出力強度Pfとの間は、駆動電流Isoaを増加させても光出力強度Pfがほとんど変化しないとみなすことができ、第2領域A2とすることができる。また、第2領域A2を超えて駆動電流Isoaを増加させると光出力強度Pfは低下する。このような光出力強度Pfの低下の原因は、過剰な電流注入によるSOA23の発熱により発光効率が低下したことであると考えられる。
【0034】
一般的にSOAにおいては、光を効率よく増幅できるような方法で駆動されることが望まれる。つまり、SOAを低い消費電力で駆動させつつ、より高い光出力強度を得ることが望まれる。そのために、通常は第1領域A1においてSOAを駆動させる。言い換えると、第2領域A2及び第3領域A3では、消費電力および増幅率の観点から、SOAを駆動させることはない。
【0035】
これに対し、本発明者は、SOA23に供給する駆動電流Isoaを、第3領域A3にまで敢えて上げて光波形の調査を行った。具体的には、SOA23に供給する駆動電流Isoaを190mA、200mA、230mAとしたときの、出力直後(0km時)の光信号及び光ファイバを40km経由した後の光信号の各光波形を測定した。また、これらの光信号のビットエラーレシオを測定し、伝送ペナルティを算出した。なお、このときのレーザ部21への駆動電流Iopは80mA、EA変調器22への変調電圧は1.0Vp−p、半導体光集積素子20の温度は44.3℃であった。
【0036】
図4(a)、
図5(a)及び
図6(a)は、出力直後(0km時)における光波形(アイパターン)を示す。
図4(b)、
図5(b)及び
図6(b)は、40km伝送後における光波形(アイパターン)を示す。
図4(a)及び
図4(b)は駆動電流Isoaを190mAとしたときの結果であり、
図5(a)及び
図5(b)は駆動電流Isoaを200mAとしたときの結果であり、
図6(a)及び
図6(b)は駆動電流Isoaを230mAとしたときの結果である。
【0037】
図4(a)、
図5(a)及び
図6(a)に示されるように、駆動電流の大きさにかかわらず、出力直後の光波形は良好であった。これに対し、
図4(b)、
図5(b)及び
図6(b)に示されるように、40km伝送後では、アイパターンが崩れて波形が劣化した。但し、これらのジッタはそれぞれ19.4ps、22.1ps、13.8psと小さく、伝送距離の長さにかかわらず波形の劣化が抑えられていることがわかる。特に、駆動電流Isoaが最も大きい230mAである場合のジッタは最小となっており、波形の劣化が効果的に抑えられている。また、ジッタ以外にもパルスマスクマージン(PMM)や波形の立上り時間tr、立下り時間tfなどの評価項目により波形を判定することができる。
【0038】
図7、
図8及び
図9は、ビットエラーレシオを測定した結果を示すグラフであり、縦軸はビットエラーレシオを表し、横軸は平均受光強度(単位:dBm)を表す。これらの図において、グラフG21は出力直後(0km時)におけるビットエラーレシオを示し、グラフG22は40km伝送後におけるビットエラーレシオを示す。また、
図7は駆動電流Isoaを190mAとしたときの結果であり、
図8は駆動電流Isoaを200mAとしたときの結果であり、
図9は駆動電流Isoaを230mAとしたときの結果である。なお、受信器としてはPINフォトダイオードを用い、受信感度は−23dBm程度であった。アバランシェフォトダイオードを用いた場合には−30dBm程度となり、ビットエラーレシオは更に向上すると考えられる。
【0039】
図7、
図8及び
図9を参照すると、駆動電流Isoaにかかわらず、40km伝送後のビットエラーレシオが小さく抑えられており、波形の劣化が抑制されていることがわかる。特に、駆動電流Isoaが最も大きい230mAである場合、40km伝送後のビットエラーレシオは0km時と殆ど同じであり、波形の劣化が効果的に抑えられている。なお、これらのビットエラーレシオから算出された伝送ペナルティは、それぞれ0.21dB、0.26dB、−0.13dBと小さい値であった。
【0040】
40km伝送後の光波形が良好となった駆動電流値190mA、200mA、230mAは、
図3に示されるように、光出力が飽和する第2領域A2よりも高い、第3領域A3に含まれる。このように、飽和領域よりも大きい駆動電流をSOA23に供給することにより、40km伝送後においても光波形が良好となったのは以下の理由によるものと考えられる。即ち、飽和領域において更に駆動電流を増加させることは、SOA23内部の負チャープ量の増大を生じさせることになると考えられる。したがって、飽和領域より大きい駆動電流域まで駆動電流を増加させると、SOA23内部の負チャープ量が更に大きくなると考えられ、その結果、出力光信号に有意の負チャープが重畳されると考えられる。これにより、光ファイバを伝送する際の波長分散の影響が抑えられ、光ファイバ伝送後においても光波形が良好になったものと考えられる。
【0041】
以上のことから、SOA23に供給される駆動電流の大きさは、第3領域A3に含まれるように決定されるとよい。ここで、
図10〜
図12を参照しながら、SOA23に供給される駆動電流の大きさを決定する方法について説明する。
図10〜
図12には、
図3と同様のグラフG11〜G15が示されている。また、
図10に示された範囲B1は、出力光強度に関する第1クラス(+5〜+9dBm)の範囲を表す。同様に、
図11に示された範囲B2は第2クラス(+7〜+11dBm)の範囲を表し、
図12に示された範囲B3は第3クラス(+9〜+11dBm)の範囲を表す。
【0042】
ここで、
図10〜
図12から明らかなように、駆動電流Iopが大きくなるほど、第2領域A2となる駆動電流Isoaの値、及び第3領域A3となる駆動電流Isoaの値が増加する。言い換えれば、駆動電流Iopの大きさによって、第3領域A3となる駆動電流Isoaの値が変動する。このことは、設定されるクラス及び駆動電流Iopの大きさに応じて、駆動電流Isoaの値が第3領域A3に含まれるように適切に調整する必要があることを意味する。
【0043】
例えば、出力光強度が第1クラスに設定される場合、
図10に示されるように、範囲B1に含まれる駆動電流Iop(例えば80mA)に対して第3領域A3に含まれるようにSOA駆動電流Isoaの大きさを決定することとなる(図中の範囲C1、例えばIsoa=200mA)。同様に、出力光強度が第2クラスに設定される場合、
図11に示されるように、範囲B2に含まれる駆動電流Iop(例えば120mA)に対して第3領域A3に含まれるようにSOA駆動電流Isoaの大きさを決定することとなる(図中の範囲C2、例えばIsoa=240mA)。また、出力光強度が第3クラスに設定される場合、
図12に示されるように、範囲B3に含まれる駆動電流Iop(例えば120mA)に対して第3領域A3に含まれるようにSOA駆動電流Isoaの大きさを決定することとなる(図中の範囲C3、例えばIsoa=250mA)。
【0044】
続いて、本実施形態による送信デバイス10の動作条件決定方法について説明する。
図13及び
図14は、以降の説明において用いる特性値の一覧を示す図表である。
図13には各特性値の初期設定値の例が示されており、
図14には各特性値の調整範囲の例が示されている。なお、図中において、Pfは半導体光集積素子20からの出力光強度であり、TLDは半導体光集積素子20の温度であり、Iopはレーザ部21への駆動電流であり、IsoaはSOA23への駆動電流であり、VoはEA変調器22への変調電圧のオフセット値であり、VppはEA変調器22への変調電圧の振幅である。
【0045】
図15は、送信デバイス10の動作条件を決定する際に用いられる検査装置50の構成を示すブロック図である。
図15に示されるように、この検査装置50は、TECコントローラ51と、LD電流電源52と、SOA電流電源53と、パルスパターンジェネレータ(PPG)54と、マルチメータ55とを備えている。
【0046】
TECコントローラ51は、TEC12へ駆動電流を供給するとともに、該駆動電流の大きさを制御する装置である。TECコントローラ51は、
図1に示された端子14a,14bと電気的に接続され、端子14a,14bに駆動電流を供給する。LD電流電源52は、レーザ部21に駆動電流Iopを提供するとともに、駆動電流Iopの大きさを制御する装置である。LD電流電源52は、
図1に示された端子14eと電気的に接続され、端子14eに駆動電流Iopを提供する。
【0047】
SOA電流電源53は、SOA23へ駆動電流Isoaを供給するとともに、駆動電流Isoaの大きさを制御する装置である。SOA電流電源53は、
図1に示された端子14dと電気的に接続され、端子14dに駆動電流Isoaを供給する。PPG54は、EA変調器22へ変調電圧を供給するとともに、変調電圧の大きさ(オフセット値及び振幅)を制御する装置である。PPG54は、
図1に示された端子14cと電気的に接続され、端子14cに変調電圧を提供する。
【0048】
また、この検査装置50は、光スイッチ57と、光カプラ58〜60と、可変減衰器61,63と、長さ40kmの光ファイバ62と、パワーメータ64,68と、波長測定器65と、光スペクトルアナライザ66と、デジタルコミュニケーションアナライザ(DCA)67と、光受信器69と、エラー検出器70とを備えている。
【0049】
光スイッチ57は、送信デバイス10の窓11a(
図1参照)と光学的に結合されており、送信デバイス10から出力光信号を受ける。光スイッチ57の一方の出力端は光カプラ58の入力端に光結合され、他方の出力端はパワーメータ56に光結合されている。光カプラ58は、入力端に入力された光を2つの出力端に分岐する。光カプラ58の一方の出力端は光カプラ59の入力端に光結合されており、他方の出力端は光カプラ60の入力端に光結合されている。光カプラ59は、入力端に入力された光を2つの出力端に分岐する。光カプラ59の一方の出力端は可変減衰器61に光結合されており、他方の出力端は光ファイバ62を介して可変減衰器63に光結合されている。光カプラ60は、入力端に入力された光を3つの出力端に分岐する。光カプラ60の第1の出力端はパワーメータ64に光結合されており、第2の出力端は波長測定器65に光結合されており、第3の出力端は光スペクトルアナライザ66に光結合されている。
【0050】
DCA67は、2つの入力端を有しており、該2つの入力端からそれぞれ入力される2つの光信号を比較して、ジッタ解析等を行う装置である。DCA67の一方の入力端は可変減衰器61に光結合され、他方の入力端は可変減衰器63に光結合されている。パワーメータ68は、入力光の平均光強度を測定する装置である。パワーメータ68は、必要に応じて、可変減衰器61若しくは63に光結合される。光受信器69は、入力された光信号に応じた電気信号を生成する装置である。光受信器69の入力端は、必要に応じて、可変減衰器61若しくは63に光結合される。また、光受信器69の出力端はエラー検出器70に電気的に接続されている。エラー検出器70は、光受信器69から受けた電気信号を解析して、ビットエラーレシオ、伝送ペナルティ等を算出する。
【0051】
図16及び
図17は、本実施形態の動作条件決定方法の詳細を示すフローチャートである。なお、
図16に示される工程S12〜S14は、本実施形態における第2工程の一例である。工程S15〜S20は、本実施形態における第3工程の一例である。工程S23は、本実施形態における第4工程の一例である。
【0052】
まず、駆動電流Iop(第1駆動電流)、駆動電流Isoa(第2駆動電流)、及びTEC12への駆動電流(第3駆動電流)の設定値を入力し、半導体レーザ20Aを駆動させ、変調された光信号を出力させる(第1工程)。次に、
図16に示されるように、送信デバイス10のレーザ部21、EA変調器22、及びSOA23をそれぞれ初期設定値(
図13を参照)にて動作させる(工程S11)。次に、光スイッチ57を介して送信デバイス10を光カプラ58と光結合させて、パワーメータ64による出力光強度Pfの測定、波長測定器65による出力光信号の波長の測定、DCA67による出力直後(0km時)及び40km伝送後の各光波形の比較及び波形の歪み(例えばジッタ)の測定を同時に行う(工程S12)。
【0053】
続いて、DCA67により得られた、出力直後(0km時)に対する40km伝送後の光波形の歪み(ジッタ)の大きさが許容範囲内であるか否かを判定する(工程S13)。工程S13において光波形の歪み(ジッタ)が許容範囲外である場合(工程S13;No)、駆動電流Isoaを変更して(工程S14)、再び工程S13の歪み判定を行う。これらの工程S13及びS14を繰り返すことにより、光波形の歪み(ジッタ)が許容範囲内に収まるような駆動電流Isoaの大きさを決定する。このとき、DCA67のオシロスコープモードを用いてジッタを観察することにより、駆動電流Isoaの大きさを短時間で決定できる。なお、工程S13及びS14において決定される駆動電流Isoaの大きさは、前述したSOA23の出力特性における第3領域A3(
図3参照)に含まれる。
【0054】
SOA23の動作特性における第3領域A3は、駆動電流Iopの大きさにかかわらず100mA以上の電流範囲にわたっているが、十分な個体数を調べた結果、駆動電流Isoaを最大で30mA程度調整すれば光波形の劣化を抑制でき、良好な伝送ペナルティが得られることがわかった。なお、工程S12におけるジッタの許容範囲は、例えば24ps以下である。但し、半導体光集積素子20の製造ばらつきによって生じるEA変調器22のチャープ及びSOA23のチャープのばらつきは全体のチャープに影響し、ばらつきの程度によっては許容範囲内にならない場合もあるので、そのような場合はジッタの許容範囲を例えば25ps以下などに修正してもよい。
【0055】
工程S12において光波形の歪み(ジッタ)が許容範囲内となった場合(工程S13;Yes)、工程S15、S17、及びS19をそれぞれ並行して行う。工程S15では、波長測定器65によって得られた光信号の波長が許容範囲内であるか否かを判定する。波長の許容範囲は例えば目標波長±0.05nm以内である。そして、波長が許容範囲外である場合(工程S15;No)、TEC12への駆動電流の大きさを変更して半導体光集積素子20の温度を変更し(工程S16)、再び工程S15の波長判定を行う。これらの工程S15及びS16を繰り返すことにより、光信号の波長が許容範囲内に収まるようなTEC12への駆動電流の大きさを決定する。なお、光信号の波長と半導体光集積素子20の温度とは線形の関係を有し、その係数は例えば0.12nm/℃である。その場合、初期設定値から例えば±3℃の範囲で調整すれば目標波長に合わせ込むことができる。
【0056】
また、工程S17では、パワーメータ64によって得られた光強度Pfが許容範囲内であるか否かを判定する。光強度Pfの許容範囲は、クラスによって異なる。例えば第1クラスであれば+5〜+9(dBm)であり、第2クラスであれば+7〜+11(dBm)であり、第3クラスであれば+9〜+11(dBm)である。そして、光強度Pfが許容範囲外である場合(工程S17;No)、レーザ部21への駆動電流Iopの大きさを変更し(工程S18)、再び工程S17の光強度判定を行う。これらの工程S17及びS18を繰り返すことにより、光信号の光強度が許容範囲内に収まるような駆動電流Iopの大きさを決定する。なお、送信デバイス10とパワーメータ64との間には光カプラ58,60が介在しているので、光カプラ58,60における損失(例えば−13dBm)を考慮して光強度Pfを判定するとよい。また、レーザ部21の発光強度と駆動電流Iopとは線形の関係を有し、その係数(スロープ効率)は例えば0.05dBm/mA程度である。その場合、初期設定値から例えば±15mAの範囲で駆動電流Iopを変更可能である。なお、工程S15,S16においてTEC12への駆動電流の大きさを決定した後に、工程S17,S18において駆動電流Iopの大きさを決定してもよい。
【0057】
また、レーザ部21の発光波長は駆動電流Iopの大きさに依存しており、その係数は例えば6.5pm/mA程度である。従って、駆動電流Iopを±15mAの範囲で変化させると、波長が約±0.1nmの範囲で変動する。このことから、工程S18による駆動電流Iopの大きさの変更に応じて、工程S15及びS16を再度行ってもよい。更に、工程S16によりレーザ部21の温度が変化すると、発光強度が変化する。その係数は例えば−0.37dBm/℃程度(駆動電流Iopの大きさに依存)である。このことから、工程S16による半導体光集積素子20の温度の変更に応じて、工程S17及びS18を再度行ってもよい。つまり、工程S15及びS16と、工程S17及びS18とを繰り返し行うこととなる。なお、工程S15においては波長を高い精度(例えば目標値±0.05nm)で調整することが好ましいが、工程S17においては光強度の許容範囲を比較的大きく(例えば目標値±0.5dBm)設定してもよい。
【0058】
工程S19では、出力直後(0km時)の光信号の消光比(Er)、クロスポイント(CP)、及びパルスマスクマージン(PMM)の判定を行う。消光比及びPMMが許容範囲外である場合(工程S19;No)、変調電圧の振幅Vppを変更して(工程S20)、再び工程S19の判定を行う。なお、振幅Vppの調整幅は例えば±0.2V以内である。これらの工程S19及びS20を繰り返すことにより、消光比及びPMMが許容範囲内に収まるような変調電圧の振幅Vppを決定する。なお、TEC12への駆動電流の大きさを決定する工程S15,S16、駆動電流Iopの大きさを決定する工程S17,S18、及び駆動電流Isoaの大きさを決定する工程S19,S20をこの順に行ってもよい。また、CPが許容範囲から外れることは殆どないが、許容範囲から外れていれば半導体光集積素子20自体の性能が低いことが原因であると考えられ、当該半導体光集積素子20を不良と判定する。
【0059】
工程S20により振幅Vppが変化すると、半導体光集積素子20からの出力光強度Pfが変化する。その係数は例えば0.1dBm/0.1Vp−p程度である。このことから、工程S20による振幅Vppの変更に応じて、工程S17及びS18を再度行ってもよい。なお、振幅Vppが変化しても波長は殆ど変化しない(波長と振幅Vppとの比例係数は1pm/0.1V以下である)ため、工程S15及びS16を再度行う必要は特にない。工程S19において消光比、CP、及びPMMが許容範囲内となった場合(工程S19;Yes)、これらの消光比、CP、及びPMMを取得する(工程S21)。
【0060】
以上の工程S15,S17及びS19において全ての判定結果が良好であれば(工程S15;Yes、工程S17;Yes)、工程S22へ進む。工程S22では、光受信器69において出力直後(0km時)の光信号と40km伝送後の光信号とを交互に検出し、その結果をエラー検出器70に入力してビットエラーレシオを測定する。また、次の工程S23では、ビットエラーレシオから伝送ペナルティ(DP40)を算出し、伝送ペナルティが許容範囲内か否かを判定する。伝送ペナルティの許容範囲は例えば±2dB以内であり、より好適には±0.75dB以内である。
【0061】
工程S23において伝送ペナルティが許容範囲外である場合(工程S23;No)、40km伝送後の波形劣化の影響と考えられるので、工程S13及びS14(波形歪みの判定及び駆動電流Isoaの調整)を再び行う。なお、駆動電流Isoaと波長との相関係数は1.8pm/mA程度であり、駆動電流Isoaが例えば20mA変化しても波長の変動量は32pmと小さい。従って、工程S13及びS14ののち、工程S15及びS16を必ずしも再び行う必要はないが、工程S15及びS16を再び行ってもよい。また、駆動電流Isoaと出力光強度Pfとの相関係数は
図3に示すとおりであり、工程S13及びS14ののち、工程S17及びS18を再び行ってもよい。また、駆動電流Isoaが例えば20mA変化しても消光比及びCPは殆ど変化しないが、工程S13及びS14ののち、工程S19及びS20を再び行ってもよい。工程S23において伝送ペナルティが許容範囲内であれば(工程S23;Yes)、次の工程S24へ進む。
【0062】
工程S24では、決定された波長λ、副モード抑圧比(Sub-Mode Suppression Ratio;SMSR)、モニタ電流Im、決定された動作温度TLD、決定された駆動電流Iop、駆動電圧Vf、決定された駆動電流Isoa、駆動電圧Vsoaの各大きさを取得する。続く工程S25では、光スイッチ57を切り替えて、光カプラを介さない本来の出力光強度Pfをパワーメータ56により取得する。そして、工程S26において出力光強度Pfが許容範囲内か否かを判定する。工程S17において出力光強度Pfの大きさを判定しているので、工程S26において出力光強度Pfが許容範囲外である場面は殆どないが、許容範囲外である場合には工程S18(駆動電流Iopの調整)に戻る。工程S26において出力光強度Pfが許容範囲内であれば(工程S26;Yes)、動作条件の決定を終了する。
【0063】
以上に説明した本実施形態の動作条件決定方法によって得られる効果について説明する。上述したように、本実施形態の方法では、まず、SOA23から出力される光信号の所定距離(40km)伝送後の波形に基づいて、第3領域A3におけるSOA23への駆動電流Isoaの大きさを決定している(工程S13,S14)。その後、SOA23から出力される光信号の波長に基づくTEC12への駆動電流の大きさの決定、及び出力光強度Pfに基づくレーザ部21への駆動電流Iopの大きさの決定を行う。このように、最初にSOA23への駆動電流Isoaの調整を行うことにより、TEC12への駆動電流及びレーザ部21への駆動電流Iopを再調整する必要性を低減できる。従って、本実施形態の方法によれば、レーザ部21への駆動電流Iop、TEC12への駆動電流、及びSOA23への駆動電流Isoaそれぞれの大きさを容易に決定することができるので、これらの調整に要する時間を短くすることができる。
【0064】
また、本実施形態のように、工程S13,S14において決定される駆動電流Isoaの大きさが、SOA23の出力特性の第3領域A3に含まれてもよい。前述したように、本発明者の知見によれば、飽和領域(第2領域A2)を超えた領域(第3領域A3)においてSOA23を動作させることにより、長距離の光伝送において生じる波長チャープを低減することができる。すなわち、この方法によれば、光信号の所定距離伝送後の波形の歪みを効果的に低減し、伝送ペナルティの劣化を抑制することができる。
【0065】
ここで
図18は、駆動電流Isoaが初期設定値(200mA)のときの、出力直後(0km時)のアイパターン((a)部)及び40km伝送後のアイパターン((b)部)を示す図である。また、
図19は、駆動電流Isoaが初期設定値(200mA)のときの、出力直後(0km時)のビットエラーレシオ(グラフG31)及び40km伝送後のビットエラーレシオ(グラフG32)を示すグラフである。駆動電流Isoaが初期設定値である場合、40km伝送後の光波形は劣化し、ジッタが27.5psと大きくなっている。また、ビットエラーレシオは出力直後と比較して大きく劣化しており、ビットエラーレシオ10
-3での伝送ペナルティは0.97dBと大きい。
【0066】
これに対し、
図20は、本実施形態の方法による駆動電流Isoaの調整後(215mA)における、出力直後(0km時)のアイパターン((a)部)及び40km伝送後のアイパターン((b)部)を示す図である。また、
図21は、駆動電流Isoaの調整後(215mA)における、出力直後(0km時)のビットエラーレシオ(グラフG33)及び40km伝送後のビットエラーレシオ(グラフG34)を示すグラフである。本実施形態の方法により駆動電流Isoaを調整した結果、40km伝送後の光波形の劣化度合いが低減され、ジッタは18.0psまで低減した。また、ビットエラーレシオは出力直後と比較して殆ど変化しておらず、ビットエラーレシオ10
-3での伝送ペナルティは−0.23dBと小さくなった。なお、伝送ペナルティが負となったのは、SOA23によって付与される負のチャープが、光ファイバによる正のチャープよりも大きくなったためと考えられる。このとき、
図22に示されるように、出力光強度Pfは目標値+7.50dBmに対して+7.59dBmとなり、波長は目標値1598.040nmに対して±0.01nm以内に収まった。このように、本実施形態の方法によれば、出力光強度Pf及び波長も併せて精度良く設定できる。
【0067】
また、本実施形態のように、レーザ部21及びSOA23は共通の半導体基板24上に集積されてもよい。これにより、送信デバイス10を小型化することができる。そして、このような場合、レーザ部21及びSOA23は必然的に共通のTEC12上に搭載されることとなるので、本実施形態の方法が特に有効となる。
【0068】
また、本実施形態のように、工程S15〜S20の後、所定距離を伝送した後の伝送ペナルティが許容範囲内か否かを判定する工程S23を行い、工程S23において伝送ペナルティが許容範囲外である場合に工程S14,S15を再び行ってもよい。このような工程S23を行うことにより、光信号の波形の歪みを更に抑制することができる。
【0069】
また、本実施形態のように、工程S19,S20において、EA変調器22に印加する電圧の振幅Vppの決定を併せて行ってもよい。駆動電流Iop、TEC12への駆動電流、及び駆動電流Isoaの決定に、EA変調器22への印加電圧の振幅Vppの決定が加わると、作業が更に複雑化する。そのような場合であっても、上記の方法によれば、これらの大きさを容易に決定することができる。
【0070】
なお、
図13に示された初期設定値及び
図14に示された調整範囲は、適宜変更されてもよい。例えば、半導体光集積素子20を製造する際、ウエハ間で半導体光集積素子20の特性がばらつくことがある。特に、EA変調器22のチャープ及びSOA23のチャープのばらつきは半導体光集積素子20全体のチャープに大きく影響する。従って、各ウエハから得られる複数の半導体光集積素子20のうち一つの半導体光集積素子20において決定された動作条件を考慮して、当該ウエハに含まれる他の半導体光集積素子20の動作条件決定の際の初期設定値及び調整範囲を変更してもよい。
【0071】
また、本実施形態では40km伝送後の光波形の歪みに基づいて駆動電流Iop、TEC12への駆動電流、及び駆動電流Isoaそれぞれの大きさを決定しているが、例えばTWDM−PONの規格には、40km伝送の他に20km伝送の場合も存在する。20km伝送の送信デバイス10に本実施形態の方法を適用する際には、光ファイバ62(
図15参照)の長さを20kmに変更して、
図16及び
図17に記載された各工程を行うとよい。
【0072】
また、本実施形態の光モジュール1Aは、局側(OLT)の送受信デバイスとして利用でき、また利用者側(ONU)の送受信デバイスとしても利用可能である。すなわち、レーザ部21の発光波長、及び本体部30に内蔵された波長選択フィルタを変更することにより、OLT用、ONU用いずれの送受信デバイスとしても利用できる。
【0073】
本発明による半導体レーザ装置の動作条件決定方法は、上述した実施形態に限られるものではなく、他に様々な変形が可能である。例えば、上述した各実施形態を、必要な目的及び効果に応じて互いに組み合わせてもよい。