(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6867028
(24)【登録日】2021年4月12日
(45)【発行日】2021年4月28日
(54)【発明の名称】パターン露光方法及びパターン露光装置
(51)【国際特許分類】
G03F 7/20 20060101AFI20210419BHJP
【FI】
G03F7/20 501
【請求項の数】5
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2017-180415(P2017-180415)
(22)【出願日】2017年9月20日
(65)【公開番号】特開2019-56761(P2019-56761A)
(43)【公開日】2019年4月11日
【審査請求日】2020年6月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】500171707
【氏名又は名称】株式会社ブイ・テクノロジー
(74)【代理人】
【識別番号】110000626
【氏名又は名称】特許業務法人 英知国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】杉本 重人
【審査官】
冨士 健太
(56)【参考文献】
【文献】
特開平08−250402(JP,A)
【文献】
特開2014−096471(JP,A)
【文献】
特開2007−094227(JP,A)
【文献】
特開2010−156901(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/20−7/24、9/00−9/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
露光画像データに基づいて、光ビームをオン・オフ制御すると共に走査して、露光面上にパターンを描画するパターン露光方法であって、
前記露光面上に光ビームの最小露光単位を区画し、前記露光画像データにおける補正に必要な光ビームのオン領域を前記最小露光単位の集合で特定する工程と、
前記光ビームの強度分布を前記オン領域内の最小露光単位毎に積算し、前記オン領域における積算強度分布を求める工程と、
前記積算強度分布を設定された閾値と比較して、前記積算強度分布が前記閾値と一致する点を前記露光面上で連ねた輪郭を積算強度輪郭として求める工程と、
前記オン領域の外縁と前記積算強度輪郭とで囲まれた差分面積が小さくなるように、前記オン領域の外側に前記最小露光単位毎に光ビームをオンにするオン単位を設定して、前記露光画像データを補正することを特徴とするパターン露光方法。
【請求項2】
前記オン単位が、前記露光画像データにおける平面的な角部の近傍に設定されることを特徴とする請求項1記載のパターン露光方法。
【請求項3】
前記オン単位を仮設定し、仮設定した前記オン単位が影響する領域のみ新たに前記積算強度輪郭を求め、前記差分面積が小さくなる場合に、仮設定した前記オン単位の設定を確定することを特徴とする請求項1又は2記載のパターン露光方法。
【請求項4】
前記オン単位は、前記オン領域の外縁の外側に前記積算強度輪郭が出るはみ出し量を抑制するように設定されることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のパターン露光方法。
【請求項5】
露光画像データに基づいて、光ビームをオン・オフ制御すると共に走査して、露光面上にパターンを描画するパターン露光装置であって、
前記露光画像データを補正するデータ補正部を備え、
該データ補正部は、
前記露光面上に光ビームの最小露光単位を区画し、前記露光画像データにおける補正に必要な光ビームのオン領域を前記最小露光単位の集合で特定する演算処理部と、
前記光ビームの強度分布を前記オン領域内の最小露光単位毎に積算し、前記オン領域における積算強度分布を求める演算処理部と、
前記積算強度分布を設定された閾値と比較して、前記積算強度分布が前記閾値と一致する点を前記露光面上で連ねた輪郭を積算強度輪郭として求める演算処理部と、
前記オン領域の外縁と前記積算強度輪郭とで囲まれた差分面積が小さくなるように、前記オン領域の外側に前記最小露光単位毎に光ビームをオンにするオン単位を設定して、前記露光画像データを補正する演算処理部を備えることを特徴とするパターン露光装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パターン露光方法及びパターン露光装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
フォトリソグラフィーなどの微細パターン加工に用いられるパターン露光は、露光画像データに基づいて、オン・オフ制御される光ビーム(電子線ビームを含む)を基板表面に走査して、基板上にパターンを直接描画するマスクレス露光が知られている。マスクレス露光における光ビームのオン・オフ制御には、DMD(Digital Micro-mirror Device)やLD又はLEDアレイなどの光変調素子アレイや光源アレイ、或いはグレースケールの制御ができるGLV(Grating light Valve)などが用いられている(例えば、下記特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−94227号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前述した従来のパターン露光(マスクレス露光)では、光ビームの走査ピッチや光変調素子アレイなどのアレイ間隔毎に制御可能な露光の最小単位が決められることになるが、個々の光ビームに強度分布(例えば、ガウシアン分布)が存在することから、露光画像データのエッジ(オン領域とオフ領域の境界)では、積算される露光量がなだらかに低くならざるを得ず、露光画像データのエッジ線と実際に現像後に得られるパターンのエッジ線との間に前述した最小単位未満の寸法誤差が生じることが問題になっている。
【0005】
図1(a)は、露光の最小単位を格子線で示しており、太線が露光画像データのエッジを示している。図示の例では、太線で描かれた閉領域の内側を光ビームのオン領域にし、太線で描かれた閉領域の外側を光ビームのオフ領域にして、閉領域のパターンを形成しているが、このパターンは、レジストがネガ型であるかポジ型であるかによって、ドットパターンにも孔パターンにもなる。よって、閉領域の内側をオン領域にして外側をオフ領域にするかそれを反転させるかは、使用するレジストと得ようとする凹凸パターンによって適宜決められることであって本質的な問題では無い。
【0006】
このような露光画像データでパターン露光を行った場合、
図1(a)のA1−A2間の光ビームの積算強度分布は、
図1(b)のようになり、A1−A2の線上の光ビームのみの強度を積算するとP1〜P7のような分布になるが、その周辺全てに照射される光ビームを積算した場合には、Pfで示す強度分布になる。この際、強度Etをレジストの現像閾値とすると、現像によって得られるパターンのエッジは強度Etで仕切られるS1になり、露光現像データにおけるエッジS0との間に誤差meが生じる。このようなエッジの誤差meは、
図1(a)に示すように、露光画像データのパターンにおける平面的な角部において特に顕著になる。尚、ここでいう角部とは、凸状パターンの角部だけでなく凹状パターンの角部を含むことは言うまでも無い。
【0007】
本発明は、このような問題に対処するために提案されたものである。すなわち、マスクレス露光の露光画像データにおける平面的な角部におけるエッジ誤差を抑止することで、微細化されたパターンを精度良く形成すること、などが本発明の課題である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このような課題を解決するために、本発明は、以下の構成を具備するものである。
【0009】
露光画像データに基づいて、光ビームをオン・オフ制御すると共に走査して、露光面上にパターンを描画するパターン露光方法であって、前記露光面上に光ビームの最小露光単位を区画し、前記露光画像データにおける補正に必要な光ビームのオン領域を前記最小露光単位の集合で特定する工程と、前記光ビームの強度分布を前記オン領域内の最小露光単位毎に積算し、前記オン領域における積算強度分布を求める工程と、前記積算強度分布を設定された閾値と比較して、前記積算強度分布が前記閾値と一致する点を前記露光面上で連ねた輪郭を積算強度輪郭として求める工程と、前記オン領域の外縁と前記積算強度輪郭とで囲まれた差分面積が小さくなるように、前記オン領域の外側に前記最小露光単位毎に光ビームをオンにするオン単位を設定して、前記露光画像データを補正することを特徴とするパターン露光方法。
【0010】
露光画像データに基づいて、光ビームをオン・オフ制御すると共に走査して、露光面上にパターンを描画するパターン露光装置であって、前記露光画像データを補正するデータ補正部を備え、該データ補正部は、前記露光面上に光ビームの最小露光単位を区画し、前記露光画像データにおける補正に必要な光ビームのオン領域を前記最小露光単位の集合で特定する演算処理部と、前記光ビームの強度分布を前記オン領域内の最小露光単位毎に積算し、前記オン領域における積算強度分布を求める演算処理部と、前記積算強度分布を設定された閾値と比較して、前記積算強度分布が前記閾値と一致する点を前記露光面上で連ねた輪郭を積算強度輪郭として求める演算処理部と、前記オン領域の外縁と前記積算強度輪郭とで囲まれた差分面積が小さくなるように、前記オン領域の外側に前記最小露光単位毎に光ビームをオンにするオン単位を設定して、前記露光画像データを補正する演算処理部を備えることを特徴とするパターン露光装置。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の課題を説明する説明図である((a)が露光の最小単位と露光画像データのエッジを示しており、(b)が(a)のA1−A2間の光ビームの強度分布を示してる。)。
【
図2】本発明の実施形態に係るパターン露光方法を説明する説明図である。
【
図3】本発明の実施形態に係るパターン露光方法を説明する説明図である。
【
図4】本発明の実施形態に係るパターン露光方法を説明する説明図である。
【
図5】本発明の実施形態に係るパターン露光方法の処理アリゴリズムを示したフロー図である。
【
図6】本発明の実施形態に係るパターン露光装置を示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。
図2は、露光画像データに基づいて、光ビームをオン・オフ制御すると共に走査して、露光面上にパターンを描画するパターン露光方法を示している。
【0013】
図示の格子線は、制御可能な光ビームの最小露光単位eを区画している。ここでの最小露光単位eは、走査ピッチ或いは光変調アレイや光源アレイのアレイ間隔によって適宜設定される。露光画像データは、光ビームのオン領域を最小露光単位の集合で特定することができ、図示の例では、太線の内側が露光画像データによって特定された光ビームのオン領域になっており、図示の太線の外側が光ビームのオフ領域になっている。
【0014】
図2に示すように、露光画像データおいて補正に必要な光ビームのオン領域を最小露光単位の集合として特定した場合、光ビームの強度分布をオン領域内の最小露光単位e毎に積算し、オン領域における積算強度分布を求めると、
図1(b)に示すような積算強度分布を得ることができる。
【0015】
そして、その積算強度分布に対して、
図1(b)に示すように、特定の閾値Etを設定し、積算強度分布を設定された閾値Etと比較して、積算強度分布が閾値Etと一致する点を露光面上で連ねた輪郭を積算強度輪郭(Accumulated Intensity Profile)として求める。以下、この輪郭をAIPと呼ぶ。AIPは、閾値Etをレジストの現像閾値とすると、現像パターンの輪郭を模擬したことになる。
【0016】
本発明の実施形態に係るパターン露光方法は、前述したAIPの概念を導入して、AIPが露光画像データの輪郭に近づくように、露光画像データを補正する。具体的には、露光画像データにおけるオン領域の外縁(
図2の太線)とAIP(
図2の一点破線)とで囲まれた差分面積Dが小さくなるように、オン領域の外側に最小露光単位e毎に光ビームをオンにするオン単位を設定する。
【0017】
図2に示すように、露光画像データにおける平面的な角部の近傍にオン単位G1を設定した場合には、オン単位G1を加えたオン領域で積算強度分布を求め、その積算強度分布からAIPを求めると、AIPは、補正前の露光画像データの輪郭に近づくことになり、差分面積Dは減少することになる。
【0018】
以下、露光画像データにおけるオン領域の外側のどの位置にオン単位を設定するかの具体的手順を説明する。
【0019】
先ず、露光面上にX−Y座標を特定し、露光画像データの輪郭上の座標(X0,Y0)とAIP上の座標(X1,Y1)を求める。そして、露光画像データの輪郭上の1点からAIP上の任意の点までの距離の中での最短距離Lを求める。そして、露光画像データの輪郭上の点を補正が必要となる範囲で任意に移動させて、各点でAIPまでの最短距離Lを求め、その最短距離Lが最大値L
maxとなる露光画像データの輪郭上の点tを特定する。
図2に示すように、露光画像データが平面的な角部を有する場合には、前述したように特定した露光画像データの輪郭上の点tは、平面的な角部の頂点になる。
【0020】
このように求めた露光画像データの輪郭上の点tの外側近傍に前述したオン単位を設定する。この際、オン単位を仮設定し、仮設定したオン単位が影響する領域のみ新たにAIPを求め、オン単位を仮設定する前のAIPにおける差分面積Dに対して仮設定後の差分面積Dが小さくなる場合に、仮設定したオン単位の設定を確定する。
図3に示すように、オン単位をG1,G2,G3と順次設定するに際して、オン単位の位置の仮設定で差分面積Dが小さくなることを確認し、差分面積Dが小さくならない場合は、設定を行わず別の位置に仮設定を行う。
【0021】
また、
図4に示すように、オン単位をG1,G2,G3と順次設定するに際して、前述した差分面積Dは小さくなるが、当初のオン領域の外縁の外側にAIPが出てしまうことがある。このはみ出しを積極的に避けたい場合には、AIPが当初のオン領域の外縁の外側に出るはみ出し量hを計算で求めて、このはみ出し量hを抑制するように、オン単位の位置を仮設定することもできる。
【0022】
図5は、前述した手順に従って露光画像データの補正を行う処理アリゴリズムの一例を示している。スタート後のステップS1では、入力された露光画像データを取得する。次のステップS2では、前述したように、露光画像データのオン領域の積算強度分布を求める。次のステップS3では、前述したように、閾値Etを特定して、補正対象領域のAIPを求める。次のステップS4では、前述したように、露光画像データの輪郭上の点を補正が必要となる範囲で任意に移動させて、各点でAIPまでの最短距離Lを求め、その最短距離Lが最大値L
maxとなる露光画像データの輪郭上の点tを特定する。
【0023】
次のステップS5では、露光画像データの輪郭上の点tの外側近傍に前述したオン単位を仮設定する。そして次のステップS6では、仮設定したオン単位を露光画像データのオン領域に追加して、新たに補正対象領域のAIPを求める。
【0024】
そして、その後のステップS7では、オン単位を仮設定する前のAIPから求められる差分面積Dと、オン単位を仮設定した後に新たに求めたAIPから求められる差分面積Dとを比較して、新たに求めたAIPから求めた差分面積Dが小さくなっているか否かの判断を行う。小さくなっていない場合(「NO」の場合)には、仮設定を取り消してステップS10に進み、別のオン単位を仮設定するか否かの判断を行う。
【0025】
ステップS7にて、新たに求めたAIPから求めた差分面積Dが直前の差分面積Dより小さくなっている場合(「YES」の場合)には、次に、新たに求めたAIPによる前述したはみ出し量hが許容範囲か否かの判断を行う(ここでの許容範囲はゼロの場合を設定できる。)。そして、はみ出し量hが許容範囲を超えている場合(「NO」の場合)には、仮設定を取り消してステップS10に進み、別のオン単位を仮設定するか否かの判断を行う。
【0026】
そして、ステップS8にて、新たに求めたAIPによるはみ出し量hが許容範囲の場合(「YES」の場合)には、ステップS9にて、直前で仮設定しているオン単位の設定を確定して、ステップS10に進み、別のオン単位を仮設定するか否かの判断を行う。
【0027】
ステップ10にて、別のオン単位を仮設定する場合(「YES」の場合)には、ステップS5に戻り、新たなオン単位を点tの近傍に仮設定して、ステップS6以降の処理を前述したように順次実行する。ステップ10にて、別のオン単位を仮設定しない場合(「NO」の場合)には、これまでで確定している全てのオン単位を露光画像データのオン領域に追加する露光画像データの補正を行って、処理を終了する。
【0028】
ステップ10において、別のオン単位を仮設定するか否かの判断は、直前で求めた差分面積Dが十分に小さくなった(例えば、ある設定値以下になった)場合や、ステップS7における「NO」が複数回連続するなどして、直前に求めた差分面積Dを小さくするオン単位が見つけられなくなった場合などに「NO」の判断を行う。
【0029】
なお、
図5の例では、点tを特定するのに、L
maxを求める例を示しているが、これに限らず、露光画像データの輪郭上の任意の点を最初に特定して、ステップS5からS10を実行し、その後(ステップS10が「NO」の場合)に、順次点を移動させて同様の処理を行うようにしても良い。
【0030】
図6は、前述したパターン露光方法を実行するパターン露光装置の構成例を示している。パターン露光装置1は、ワークWの露光面上に光ビームLbを照射する光照射部2と、ワークWを支持するステージ4を特定方向に走査する走査部3と、光照射部2及び走査部3を制御する制御部5を備えている。そして、制御部5に露光画像データを入力するに際して、データ補正部6を設けており、このデータ補正部6を介することで補正された露光画像データが制御部5に入力されている。
【0031】
制御部5は、補正された露光画像データに基づいて光ビームLbをオン・オフ制御すると共に走査して、ワークWの露光面上にパターンを描画する制御を行う。ここでは、ワークWを走査する走査部3を図示しているが、ステージ4を固定して、光照射部2を走査する走査部を設けるようにしてもよい。
【0032】
データ補正部6は、前述したパター露光方法における露光画像データの補正を行うための演算処理部を備えている。このような露光画像データの補正を露光処理に先立って行うことで、マスクレス露光において、微細化されたパターンを精度良く形成することが可能になる。
【符号の説明】
【0033】
1:パターン露光装置,2:光照射部,3:走査部,4:ステージ,
5:制御部,6:データ補正部,W:ワーク