(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記制御装置が、前記第1の組の昇降装置のいずれかを昇降させることによって前記第1のミラーの角度が変化し、前記第1のミラーの角度と同期して、前記第2の組の昇降装置のいずれかを昇降させることによって前記第2のミラーの角度が変化することを特徴とする請求項1に記載の舞台演出システム。
前記第1のミラーは、第1の照明素子を含み、前記第1の照明素子は、第3の光を照射し、前記第2のミラーは、第2の照明素子を含み、前記第2の照明素子は、第4の光を照射することを特徴とする請求項1に記載の舞台演出システム。
前記制御装置は、制御プログラムを実行し、予め定められた演出データに従って、前記第1の組の昇降装置、前記第2の組の昇降装置、および前記投光装置を制御することを特徴とする請求項1に記載の舞台演出システム。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0012】
[1.三次元演出システム]
(有線制御方式)
図1に、本発明の一実施形態にかかる三次元演出システムの全体構成を示す。三次元演出システムは、被昇降物を昇降させる昇降装置101a−101cと、昇降装置101a−101cの各々にリール線106a−106cにより連結された被昇降物102a−102cと、昇降装置101a−101cを吊るすサスバトン103と、昇降装置101a−101cおよび被昇降物102a−102cと通信可能に接続され、それぞれ独立に制御することができる制御装置104とを備えている。サスバトン103には器具接続用電源コンセントが組み込まれ、給電装置105から、昇降装置101a−101cおよび被昇降物102a−102cに電源が供給されている。
【0013】
なお、昇降装置101a−101cは、サスバトン103を介さずに、舞台上の天井に直接取り付けたり、舞台上の他の構造物に取り付けられる場合もある。被昇降物102は、主として様々な照明素子であるが、以下に説明するように、ミラーであったり、カットグラスの装飾品など、照明素子を含まない物も被昇降物に含まれる。
【0014】
図2は、本発明の一実施形態にかかる三次元演出システムのブロック図である。昇降装置101は、各部を制御する昇降制御部111と、昇降制御部111の入出力に接続され、動力を供給するモータ部112と、モータ部112に連結され、リール線106を巻き上げまたは巻き解くリール部113と、リール部113に連結され、リール部により巻き上げられるまたは巻き解かれるリール線106の長さを算出するための基準値を設定するためのリセットスイッチ114と、リール部113の出力に接続され、リール線の長さを監視するカウンタ部115と、給電装置105から電力を昇降装置101内部と被昇降物102に振り分ける電源部116とを備えている。
【0015】
ここでは、被昇降物102として照明素子120を例に説明する。照明素子120は、各部を制御する照明制御部121と、照明制御部121の入出力に接続され、1または複数のLEDチップを含むLED部122と、照明制御部121およびLED部122に電力を供給する電源部123とを備えている。
【0016】
リール線106は、昇降制御部111と照明制御部121とを接続する制御線と、昇降装置101の電源部116と照明素子120の電源部123とを接続する電源線とを内挿している。
【0017】
制御装置104は、昇降装置101および照明素子120の各々を制御する装置制御部141と、装置制御部141の入出力に接続され、ユーザインターフェースを提供する入出力部142と、昇降装置101および照明素子120の各々と通信可能な送受信部143とを備えている。装置制御部141は、データを格納するメモリ144を有しており、さらにメモリ144は、昇降装置毎のデータを含む昇降装置データ145と、被昇降物毎のデータとして、照明素子毎のデータを含む照明素子データ146とを格納している。
【0018】
図3に、本発明の一実施形態にかかる三次元演出システムの実装形態を示す。劇場、コンサートホールまたはテレビスタジオ等の天井部分にサスバトン103が取り付けられる。サスバトン103は、
図1に示した棒状のものや、
図3に示した井桁状のものなど、昇降装置と照明素子とを複数取り付けられる鋼製の機材である。昇降装置101は、鉛直方向に細長い直方体である。水平面上の面積を小さくすることにより。サスバトン103に懸架する際に、より多くの昇降装置101を実装することができる。被昇降物102は、照明素子として後述するLEDボールを示している。
【0019】
制御装置104の装置制御部141は、CPU(Central Processing Unit)またはFPGA(Field Programmable Gate Array)などを実装する装置制御部を有し、メモリ144に格納された制御プログラム、演出データによって舞台演出を実行する。制御装置104は、劇場等の制御室または観客席に設置され、照明担当の演出者により操作される。このような構成により、三次元演出を行うための、複数の照明素子(被昇降物)を独立に昇降させる三次元演出システムを提供する。
【0020】
(無線制御方式)
三次元演出システムの他の実施形態として、制御装置から無線接続により制御するシステムを
図4および
図5に示す。三次元演出システムは、被昇降物を昇降させる昇降装置201a−201cと、昇降装置201a−201cの各々にリール線206a−206cにより連結された被昇降物202a−202cと、昇降装置201a−201cを吊るすサスバトン103と、昇降装置201a−201cおよび被昇降物202a−202cの各々に無線により接続され、それぞれ独立に制御することができる制御装置204とを備えている。サスバトン103には器具接続用電源コンセントが組み込まれ、給電装置105から、昇降装置201a−201cに電源が供給されている。
【0021】
昇降装置201は、各部を制御する昇降制御部211と、昇降制御部211の入出力に接続され、動力を供給するモータ部212と、モータ部212に連結され、リール線206を巻き上げまたは巻き解くリール部213と、リール部213に連結され、リール部により巻き上げられるまたは巻き解かれるリール線206の長さを算出するための基準値を設定するためのリセットスイッチ214と、リール部213の出力に接続され、リール線の長さを監視するカウンタ部215と、昇降制御部211の入出力に接続され、制御装置と通信するアンテナ部217と、被昇降物を充電する充電部216と、充電部216に接続され、対向する被昇降物のコネクタ部と着脱可能なコネクタ部218とを備えている。
【0022】
ここでは、被昇降物202として照明素子220を例に説明する。照明素子220は、各部を制御する照明制御部221と、照明制御部221の入出力に接続され、制御装置と通信するアンテナ部224と、1または複数のLEDチップを含むLED部222と、充放電可能なバッテリーを備え、照明制御部221およびLED部222に電力を供給する電源部223と、電源部223に接続され、対向する昇降装置のコネクタ部218と着脱可能なコネクタ部225とを備えている。
【0023】
リール線206は、被昇降物202を懸架することができるナイロンテグスなどの線材である。有線制御方式と比較すると、バッテリーを搭載する分、照明素子220の重量は重くなるが、リール線206に電源線、制御線を内蔵する必要がなく細くできるので、後述するリール線を巻き取るリールを小型化することができ、昇降装置の小型化を図ることができる。
【0024】
制御装置204は、昇降装置201および照明素子220の各々を制御する装置制御部241と、装置制御部241の入出力に接続され、ユーザインターフェースを提供する入出力部242と、昇降装置201および照明素子220の各々と通信可能な送受信部243と、送受信部243の入出力に接続され、昇降装置201および照明素子220の各々と通信するアンテナ部247とを備えている。装置制御部241は、データを格納するメモリ244を有しており、さらにメモリ244は、昇降装置毎のデータを含む昇降装置データ245と、照明素子毎のデータを含む照明素子データ246とを格納している。
【0025】
昇降装置201、照明素子220、制御装置204は、各々のアンテナによって、制御装置204と昇降装置201および照明素子220との間に、1対1の無線接続を独立に行うことができる。例えば、制御装置204を操作することによって、昇降装置201に対して、照明素子220を降ろす指示信号を単独に送信することができる。制御装置204を操作することによって、昇降装置201を介することなく、照明素子220に対して、LEDを点灯または消灯させる指示信号を単独に送信することができる。
【0026】
[2.昇降装置]
(第1の実施形態)
図6に、本発明の第1の実施形態にかかる昇降装置の全体構成を示す。昇降装置300は、筐体301に、電動モータ302に接続されたリール303を備え、上部筐体カバー301aで覆っている。筐体301は、鉛直方向に細長い直方体の形状を有し、下部筐体301bの内部に、昇降制御部、リセットスイッチ、カウンタ部、および電源部を内蔵している。筐体301の上面には、サスバトンに取り付けるための取付部304と、落下防止用の取付フック305とを備える。被昇降物として照明素子120に接続されたリール線306は、下部筐体301bの下面の開口から、図示しないリセットスイッチと下部筐体301bの内部とを通り、ガイドリング307を介して、リール303の表面(巻取り面)に巻き取られる。
【0027】
リール303は、円筒形状を有し、その長手方向が筐体301の長手方向(鉛直方向)と平行するように設置されている。リール303は、電動モータ302と連結され、電動モータ302の回転によって円筒形の中心軸の周りを回転する。ガイドネジ308とガイド棒309とは、その長手方向がリール303の長手方向と平行するように設置され、ガイドネジ308は、リール303の回転と連動して回転する。
【0028】
図7に、第1の実施形態の昇降装置のガイドリングの構成を示す。ガイドリング307は、その軸孔307aにガイドネジ308が挿通され、ガイドネジ308の回転に追随しないように、コの字部材307bにガイド棒309が挿通されている。これにより、ガイドリング307は、ガイドネジ308の回転によって鉛直方向に上下動する。ガイドリング307には、水平方向に回転軸を有するプーリー307cが内挿されており、下部筐体301bの内部を通って鉛直方向に延びたリール線306は、プーリー307cによって水平方向に向きを変え、リール303の巻取り面に巻き取られる。
【0029】
リール303が1回転するごとに、リール線306の直径に相当する距離だけ、ガイドリング307が移動するように、ガイドネジ308にネジが切られている。このようにして、リール303の下方から上方に向かってリール線306が巻き上げられ、リール303が1回転するごとにリール303の巻取り面に一重に巻き取られ、または上方から下方に向かってリール線306が順に巻き解かれる。
【0030】
リール線306は、先端にコネクタ310を有し、コネクタ310を介して照明素子120を取り付ける。リール線306の先端に取り付けられた照明素子120は、昇降装置300の下方に吊るされ、リール線306がリール303に巻き取られ、および巻き解かれることによって昇降する。リール線306は、昇降制御部と照明素子120の照明制御部とを接続する制御線、および昇降装置300の電源部と照明素子120の電源部とを接続する電源線を内挿したケーブルである。
【0031】
本実施形態では、3本の撚り線とシールド線とからなるケーブルを使用している。1対2線を制御線として使用し、残りの1線とシールド線とを電源線として使用する。3線をRGBに割り当て、シールド線を共用のリターン線として、電源供給と制御とを兼ねた3線制御方式を用いることもできる。さらに、複数のリール線で1つの被昇降物を昇降させる場合は、1本のリール線は制御線と電源線として使用し、他のリール線は2対の電源線として使用することにより、被昇降物に対する供給電力を大きくすることができる。
【0032】
その他、制御線と電源線と共用のリターン線との3線のケーブルを用いたり、2対の撚り対線を含む4線のケーブルを用いることもでき、リール線306の配線の構成はこれらに限られない。
【0033】
なお、支柱313a,313bと、ガイドネジ308からリール303を挟んで反対側に巻取ガイド(図では見えない)とが、その長手方向がリール303の長手方向と平行するように設置されている。巻取ガイドの構造、機能は、以下の第2の実施形態において説明する。
【0034】
昇降装置300の昇降制御部は、CPU(Central Processing Unit)またはFPGA(Field Programmable Gate Array)、メモリなどを有し、制御装置104からの指示信号に基づいて、昇降装置300内部の制御を行い、状態データを制御装置104に送信する。また、照明素子(被昇降物)に対する指示信号については、制御線を介して照明素子の照明制御部に転送する。このとき、上述した配線の構成に適した指示信号に変換したり、被昇降物の構成に応じて信号変換することもできる。
【0035】
(第2の実施形態)
図8に、本発明の第2の実施形態にかかる昇降装置の全体構成を示す。昇降装置330は、筐体331に、電動モータ332に接続されたリール333を備え、下部筐体カバー331aで覆っている。筐体331は、鉛直方向に細長い直方体の形状を有し、上部筐体331bの内部に、昇降制御部、カウンタ部、および電源部を内蔵している。筐体331の上面には、サスバトンに取り付けるための取付部334と、落下防止用の取付フック335とを備える。被昇降物として照明素子120に接続されたリール線336は、下部筐体の下面の開口から、リセットスイッチ348を通り、プーリー341,342とガイドリング337とを介して、リール333に巻き取られる。
【0036】
リール333は、円筒形状を有し、その長手方向が筐体331の長手方向(鉛直方向)と平行するように設置されている。リール333は、電動モータ332と連結され、電動モータ332の回転によって円筒形の中心軸の周りを回転する。ガイドネジ338は、その長手方向がリール333の長手方向と平行するように設置され、ガイドネジ338は、リール333の回転と連動して回転する。
【0037】
また、支柱343a,343bと巻取ガイド344とが、その長手方向がリール333の長手方向と平行するように設置されている。巻取ガイド344は、円筒形状を有する回転体であり、円筒形の中心軸の周りを自由に回転する。巻取ガイド344の円周面は、スポンジ、樹脂、またはゴムなどの弾性を有する材質から構成され、リール333に巻き取られたリール線336と接触する。リール333の回転によって、リール333に巻き取られたリール線336と接触した巻取ガイド344は、リール線336をリール333の巻取り面に押さえつけながら、リール333と逆回転する。
【0038】
図9に、第2の実施形態の昇降装置のガイドリングの構成を示す。ガイドリング337は、ガイドブロック345の軸孔にガイドネジ338が挿通され、ガイドネジ338の回転に追随しないように、ガイドブロック345の側面が筐体331の内面を摺動する。これにより、ガイドリング337は、ガイドネジ338の回転によって鉛直方向に上下動する。ガイドリング337には、水平方向に回転軸を有するプーリー346が取り付けられており、プーリー342を通って鉛直方向に延びたリール線336は、プーリー346によって水平方向に向きを変え、リール333の巻取り面に巻き取られる。
【0039】
リール333が1回転するごとに、リール線336の直径に相当する距離だけ、ガイドリング337が移動するように、ガイドネジ338にネジが切られている。このようにして、リール333の下方から上方に向かってリール線336が巻き上げられ、リール303が1回転するごとにリール333に一重に巻き取られ、または上方から下方に向かってリール線336が順に巻き解かれる。ガイドリング337は、リール線固定部347を有し、リール333に巻き取られるリール線336が整列するように、リール線336を鉛直方向下方(
図9では下方向)に押さえる役割を果たす。
【0040】
第2の実施形態の昇降装置によれば、リール線336をリール333に一重に巻き取る際に、巻取ガイド344とリール線固定部347とにより、緻密に、より精密に巻き取ることができる。また、ガイドリングを小型化したことにより、第1の実施形態と比較して、筐体331の水平面の面積を小さくすることができる。これにより、サスバトンに懸架する際に、昇降装置の間隔を密にすることができ、より多彩な演出を行うことができる。
【0041】
リール線336は、先端にコネクタ340を有し、コネクタ340を介して照明素子120を取り付ける。リール線336の先端に取り付けられた照明素子120は、昇降装置330の下方に吊るされ、リール線336がリール333に巻き取られ、および巻き解かれることによって昇降する。リール線336は、第1の実施形態と同様に制御線と電源線とを内挿した2対4線のケーブルである。
【0042】
(第3の実施形態)
図10に、本発明の第3の実施形態にかかる昇降装置の全体構成を示す。昇降装置360は、筐体361に、電動モータおよびカウンタ部を内蔵したリール363を備え、下部筐体カバー361aで覆っている。筐体361は、鉛直方向に細長い直方体の形状を有し、上部筐体361bの内部に、昇降制御部および電源部を内蔵している。筐体361の上面には、サスバトンに取り付けるための取付部364と、落下防止用の取付フック365とを備える。被昇降物として照明素子120に接続されたリール線366は、下部筐体の下面の開口から、リセットスイッチ378を通り、プーリー371,372とガイドリング367とを介して、リール363の巻取り面に巻き取られる。
【0043】
リール363は、円筒形状を有し、その長手方向が筐体361の長手方向(鉛直方向)と平行するように設置されている。リール363は、内蔵する電動モータの回転によって円筒形の中心軸の周りを回転する。ガイドネジ368は、その長手方向がリール363の長手方向と平行するように設置され、ガイドネジ368は、リール363の回転と連動して回転する。
【0044】
また、支柱373a,373bと巻取ガイド374とが、その長手方向がリール363の長手方向と平行するように設置されている。巻取ガイド374の構造、機能は、第2の実施形態に同じである。ガイドリング367は、
図9に示した第2の実施形態のガイドリングに同じである。
【0045】
図11に、第3の実施形態のリールの内部構造を示す。リール363は、筐体361に設けられた上部支持板375と下部支持板376との間に設けられ、リール線巻取面363a、上部嵌合板363b、および下部嵌合板363cにより構成される。リール363の内部は、鉛直方向に実装したときに、上部からカウンタ部、モータ部、およびリール線接続部が内蔵されている。
【0046】
図12を参照して、第3の実施形態のリール内部の接続を説明する。
図12は、接続関係が分かり易いように、一部の構成要素を省略したり、簡素化した表現により示している。上部支持板375とリール363の上部嵌合板363bとの間には、支持基台375aに固定されたベアリング377が挿入されている。上部嵌合板363bとベアリング377とは、リール363の中心軸の周りに開口部が設けられており、この開口部を貫通して支柱381a,381bにより、カウンタ部支持板382が上部支持板375に固定されている。さらに、支柱383a,383bによりモータ部上部支持板384がカウンタ部支持板382に固定され、支柱385a(図示を省略),385bによりモータ部下部支持板386がモータ部上部支持板384に固定されている。
【0047】
電動モータ362は、モータ部上部支持板384とモータ部下部支持板386との間に固定され、一方の回転軸362aがカップリング387を介してリール線接続部に接続され、他方の回転軸362bがカウンタ部のコードホイール390に接続されている。カップリング387は、リール線接続部支持板388と支柱389,389bを介して下部嵌合板363cに接続されている。これにより、電動モータ362は、上部支持板375により筐体361に固定されて、下部嵌合板363cに固定されたリール363を回転させることになる。
【0048】
カウンタ部には、コードホイール390を挟持するように発光素子と受光素子が対になった検出回路391がカウンタ部支持板382に固定されている。検出回路391は、電動モータ362の回転によるリール363の回転角をカウントするので、リールの回転数と回転角とから、リールにより巻き上げられまたは巻き解かれるリール線の長さを算出することができる。なお、電動モータ362への電源線と制御線、および検出回路391からの信号線は、上述した上部嵌合板363bとベアリング377の開口部をとおり、上部支持板375を貫通して上部筐体361aの昇降制御部、電源部に接続されている。
【0049】
リール線接続部には、リール363のリール線巻取面363aに巻き取られるリール線366の末端が、コネクタを介して接続基板392に接続され、ベアリング393aの内側に内挿されている摺動電極に接続される。ベアリング393aは、支持基台376aに固定されたベアリング393bと対向し、それぞれ内挿された摺動電極が接続される。このような構成により、リール線366に内挿されている、照明素子120に電源を供給する電源線と、照明素子120を制御する制御線とを、上部筐体361bの内部の昇降制御部に接続している。
【0050】
第3の実施形態にかかる昇降装置によれば、電動モータおよびカウンタ部をリール363に内蔵したので、第1および第2の実施形態と比較すると、筐体361の鉛直方向の長さを短縮することができ、昇降装置の小型化を図ることができる。昇降装置の重量が軽くなるので、サスバトンに懸架する数を増やすことができ、より多彩な演出を行うことができる。
【0051】
(リセットスイッチ)
第1−3の実施形態の昇降装置に共通して実装されているリセットスイッチについて説明する。リセットスイッチは、昇降装置の下部筐体の下面の開口付近に取り付けられている。リセットスイッチは、リール線およびコネクタが挿通するだけの貫通孔を有している。リール線をリールに巻き取り、被昇降物を引き上げていくと、被昇降物がリセットスイッチの貫通孔に当って、それ以上は引き上げられなくなる。リセットスイッチは、被昇降物が貫通孔に当接した状態を検出する。
【0052】
三次元演出システムによる演出に際しては、最初に、昇降装置に被昇降物を懸架した状態で、制御装置から昇降装置を制御して、一旦、被昇降物をリセットスイッチが検出するまで引き上げる。制御装置は、リセットスイッチが検出した位置を基準点(例えば、リール線の長さL=0m)として、その後の昇降装置による被昇降物の上下動の基準とする。
【0053】
[3.被昇降物]
(LEDボール)
図13に、被昇降物である照明素子のLEDボールの外観を示す。LEDボール400は、五角形または六角形の実装基板401をつないで、サッカーボールのような球形に形作られている。各々の基板表面には、LEDチップ402が実装され、さらに基板の裏面、LEDチップ402の裏側には、照明制御部および電源部として機能するICチップが実装されている。照明制御部に接続される制御線および電源部に接続される電源線は、コネクタ403を介して、リール線に接続されている。
【0054】
図1に示した三次元演出システムにおいて、制御装置104は、昇降装置101の昇降制御部111を介して、照明素子120(LEDボール)の照明制御部121(ICチップ)と通信可能に接続され、個々のLEDチップの発光、消光、照度、色の制御を行うことができる。
【0055】
(ミラー)
図14に、被昇降物であるミラーを示す。反射部材であるミラー410は、アクリル製の平板からなる円形の両面鏡414である。両面鏡414の外周の3点には、コネクタ413a−413cに接続された懸架線415a−415cが取り付けられている。ミラー410には照明素子は搭載されていないため、コネクタ413に接続されるリール線は、ミラー410の上下動のための懸架線としてのみ用いられる。このミラーを、照明装置の一部として用いた演出方法について後述する。
【0056】
なお、懸架線415のコネクタ413に、リセット板416が取り付けられている。リセット板416は、上述したリセットスイッチの貫通孔を通らない任意の形状のプレートである。
【0057】
(LED搭載ミラー)
図15に、被昇降物である照明素子のLED搭載ミラーを示す。LED搭載ミラー420は、アクリル製の平板からなる円形の両面鏡424と、その外周に取り付けられたドーナツ形状の実装基板421とを備える。実装基板421の表面には、複数のLEDチップ422が実装され、さらに基板の裏面、LEDチップ422の裏側には、照明制御部および電源部として機能するICチップが実装されている。なお、実装基板421の裏面には、ICチップと並んで、さらにLEDチップを実装することもできる。
【0058】
図1に示した三次元演出システムにおいて、制御装置104は、昇降装置101の昇降制御部111を介して、照明素子120(LED搭載ミラー)の照明制御部121(ICチップ)と通信可能に接続され、個々のLEDチップの発光、消光、照度、色の制御を行うことができる。
【0059】
図16に、ミラーおよびLED搭載ミラーと昇降装置との関係を示す。ミラー410およびLED搭載ミラー420は、3台の昇降装置101a−101cをトラス構造の梁に取り付けた複合昇降装置107を使用して、1つのミラー410またはLED搭載ミラー420を昇降させる。従って、ミラー410およびLED搭載ミラー420を水平に保ったまま上下させたり、
図16のようにミラーの法線方向を任意の向きに変えながら上下動させることができる。
【0060】
(LEDバー)
図17に、被昇降物である照明素子のLEDバーを示す。
図17(a)はLEDバー430の外観図であり、
図17(c)はLEDバー430の断面図である。LEDバー430は、透明なアクリル製のパイプ435の内部に実装基板431を備え、パイプ435の両端部にコネクタ433a,433bが取り付けられている。LEDバー430の長さは、30cmから2m程度である。実装基板431の表面には、LEDチップ432が実装され、さらに基板の裏面、LEDチップ432の裏側には、照明制御部および電源部として機能するICチップ434が実装されている。なお、実装基板431の裏面には、ICチップ434と並んで、さらにLEDチップを実装することもできる。
【0061】
図17(d)はLEDバー430の他の実施形態の断面図である。LEDバー430の両端を昇降装置に懸架したとき、長尺のバーにおいては、鉛直方向にたわみが発生する。そこで、H型鋼のような断面形状のパイプ436を使用し、たわみを防止するために、水平方向の部材に対して、鉛直方向の部材の厚さを厚くしている。
【0062】
LEDバー430は、2本のリール線により昇降させるので、1本のリール線は制御線と電源線として使用し、他のリール線は2対の電源線として使用することにより、LEDチップへの電力供給量を増やしている。
【0063】
図17(b)はLEDバー440の外観図であり、コネクタ443を1箇所にのみ設けた場合の構成である。LEDバー440は、1台の昇降装置のみから給電を受けるので、LEDバー440と比較してLEDチップの数は半分になる。すなわち、バーの長さが同じであれば、LEDバー430の方が、高密度にLEDチップを搭載することができる。
【0064】
なお、LEDチップの高密度実装による熱対策のために、パイプ435,436の数箇所に孔をあけておくこともできる。放熱孔は、バーのたわみが増大しないように、バーの上下動によってパイプ435,436内部に空気が流れる程度の数だけあけておく。
【0065】
図18に、LEDバーと昇降装置との関係を示す。LEDバー430は、2台1組の昇降装置101a−101bを使用して上下動させる。LEDバー430は、舞台の奥行き方向に平行に懸架される。従って、LEDバー430を水平に保ったまま上下させたり、傾斜角度を変えながら上下させることにより、実装基板431の表面および裏面に実装されたLEDチップ432からの光を、舞台前面から見ることができる。
図1に示した三次元演出システムにおいて、制御装置104は、昇降装置101の昇降制御部111を介して、照明素子120(LEDバー430,440)の照明制御部121(ICチップ434)と通信可能に接続され、個々のLEDチップの発光、消光、照度、色の制御を行うことができる。
【0066】
(表示パネル)
図19に、被昇降物である照明素子の表示パネルを示す。表示パネル450は、例えば、アルミ鋼材で構成されるフレーム枠454によって四辺が構成されている。本実施形態では、フレーム枠454は、1m×2m程度の大きさである。フレーム枠454の上辺から下辺に向けて、複数のLEDバー455が間隔を設けて取り付けられている。LEDバー455は、
図17に示したLEDバーの本体に同じである。
【0067】
フレーム枠454の四隅にはコネクタ(図では裏面に取り付けられている)が取り付けられ、4台1組の昇降装置を使用して上下動させる。従って、表示パネル450の傾斜角度を変えながら上下させることができる。
図1に示した三次元演出システムにおいて、制御装置104は、昇降装置101の昇降制御部111を介して、照明素子120(表示パネル450)の照明制御部121(ICチップ)と通信可能に接続され、個々のLEDチップの発光、消光、照度、色の制御を行うことができる。すなわち、液晶ディスプレイ、電光掲示板のように、表示パネル450に任意の画像を表示することができる。
【0068】
(LEDクリスタル)
図20に、被昇降物である照明素子のLEDクリスタルを示す。LEDクリスタル460は、クリスタルまたはアクリル製の複数のカットグラス464a−464eと、
図13に示した複数のLEDボール465a−465dとを、一連のケーブルに取り付けたラインパーツである。
【0069】
図1に示した三次元演出システムにおいて、制御装置104は、昇降装置101の昇降制御部111を介して、照明素子120(LEDボール465a−465d)の照明制御部121(ICチップ)と通信可能に接続され、個々のLEDチップの発光、消光、照度、色の制御を行うことができる。
【0070】
(LEDアース)
図21に、被昇降物である照明素子のLEDアースを示す。LEDアース470は、複数の半円弧上の実装基板471をフレーム枠474に取り付け、その外観が球形に形作られている。各々の基板表面には、LEDチップ472が実装され、さらに基板の裏面、LEDチップ472の裏側には、照明制御部および電源部として機能するICチップが実装されている。LEDチップ472は、基板に実装したとき、側面から発光する横置きLEDである。
【0071】
なお、実装基板421の裏面には、ICチップと並んで、さらにLEDチップを実装することもできる。照明制御部に接続される制御線および電源部に接続される電源線は、コネクタ473を介して、リール線に接続されている。
【0072】
図1に示した三次元演出システムにおいて、制御装置104は、昇降装置101の昇降制御部111を介して、照明素子120(LEDアース)の照明制御部121(ICチップ)と通信可能に接続され、個々のLEDチップの発光、消光、照度、色の制御を行うことができる。
【0073】
図22に、他の実施形態にかかるLEDアースを示す。LEDアース480は、直径が異なる複数のドーナツ形状の実装基板481をフレーム枠484に取り付け、その外観が球形に形作られている。
図21のLEDアースでは、LEDチップが経度線に沿って配列されているが、
図22のLEDアースでは、LEDチップ482が緯度線に沿って配列されることになる。LEDチップ482も、横置きLEDである。
【0074】
図13に示したLEDボールが、客席から舞台を見ると、点光源に見えるのに対して、LEDアースは、非常に照度の大きな光る球体に見える。
【0075】
(LEDバルーン)
図23に、被昇降物である照明素子のLEDバルーンを示す。LEDバルーン485は、バルーンケース487の内部に、コネクタ488に接続されたLEDボール486(
図13に示したLEDボール)を取り付けた照明素子である。バルーンケース487は、透明、半透明、彩色した透光部材からなり、軽量化のため、例えばシリコン材料が用いられる。バルーンケース487の形状は、図では球形だが、箱型、卵型など様々な形状にすることができる。
【0076】
図13に示したLEDボールが、客席から舞台を見ると、点光源に見えるのに対して、LEDバルーンは、電球に似た比較的大きな光る球体に見える。ただし、バルーンケース487によって、LEDアースやLEDボールと比較すると、照度は低くなってしまうので、使用する演出方法が限られる。
【0077】
(LEDトライアングル)
図24に、被昇降物である照明素子のLEDトライアングルを示す。LEDトライアングル490は、外形が正三角形の実装基板491の表面に、複数のLEDチップ492が実装されている。実装基板491の大きさは、一辺が60cm程度である。複数のLEDチップ492は、実装基板491上に等間隔に配置され、その間隙には複数の開口部494が設けられている。LEDトライアングルのような平板を、昇降装置により高速に水平に上下動させると、空気抵抗により安定して上下に移動しない。また、LEDトライアングルを傾斜させたまま上下動させると、揚力が発生し、安定して上下に移動しない。そこで、実装基板491に等間隔に複数の開口部494を設け、空気抵抗を軽減するようにしている。
【0078】
さらに基板の裏面、LEDチップ492の裏側には、照明制御部および電源部として機能するICチップが実装されている。なお、実装基板421の裏面には、ICチップと並んで、さらにLEDチップを実装することもできる。照明制御部に接続される制御線および電源部に接続される電源線は、コネクタ493a−493cを介して、リール線に接続されている。
【0079】
LEDトライアングルと昇降装置との接続は、
図16に示したミラー410を、LEDトライアングル490に代えればよい。LEDトライアングル490は、3台1組の昇降装置101a−101cを使用して、1つのLEDトライアングル490を昇降させる。従って、LEDトライアングル490を実装基板の法線方向を任意の向きに変えながら上下動させることができる。
【0080】
LEDトライアングル490は、3本のリール線により昇降させるので、1本のリール線は制御線と電源線として使用し、他の2本のリール線は、それぞれ2対の電源線として使用することにより、LEDチップへの電力供給量を増やしている。
【0081】
図1に示した三次元演出システムにおいて、制御装置104は、昇降装置101の昇降制御部111を介して、照明素子120(LEDトライアングル)の照明制御部121(ICチップ)と通信可能に接続され、個々のLEDチップの発光、消光、照度、色の制御を行うことができる。
【0082】
[4.三次元演出方法]
(昇降装置、被昇降物の基本制御)
図25は、昇降装置と被昇降物の基本制御を説明するためのフロー図である。
図1,2を参照しながら、制御装置104から昇降装置101と照明素子120とを制御する基本的な流れを、有線制御方式に基づいて説明する。予め決められた演出方法の手順に従って作成された制御プログラムからの実行命令、またはオペレータからの外部入力に基づく入出力部142からの実行命令を入力すると(ステップS501)、装置制御部141は、制御対象となる装置を識別して(ステップS502)指示信号を生成する。指示信号は、メモリ144に格納された演出データ、昇降装置データ145および照明装置データ146を参照して生成され、被昇降物の位置を決める位置信号、被昇降物の機能を制御する機能制御信号(ここでは、照明素子の発光状態を決める調光信号)などが含まれる。
【0083】
例えば、特定の照明素子120の位置を、昇降装置からリール線106の長さL=3mだけ降ろした位置に移動させる実行命令を受信すると、制御対象となる昇降装置101の昇降制御部111に指示信号を送信する(ステップS503)。昇降装置101の昇降制御部111は、モータ部112を制御してカウンタ部115で算出されたリール線の長さをモニタしながら、照明素子120を降ろしていく。カウンタ部115で算出されたリール線の長さが3mに達すると、昇降制御部111は、リール部113の回転を止めて、装置制御部141に、照明素子120を所定の位置への降下が完了したことを示す状態データを送信する(ステップS504)。
【0084】
装置制御部141は、状態データ(照明素子120の位置)をメモリ144の昇降装置データ145に格納する、または予め登録されている昇降装置データ145を更新する(ステップS505)。
【0085】
例えば、特定の照明素子120を所定の明るさの色で点灯させる実行命令を受信すると、制御対象となる昇降装置101の昇降制御部111を介して、照明素子120の照明制御部121に指示信号を送信する(ステップS506)。照明素子120の照明制御部121は、LED部122を制御して所定のLEDを点灯させる。照明制御部121は、装置制御部141に点灯動作が完了したことを示す状態データを送信する(ステップS507)。
【0086】
装置制御部141は、昇降装置101を介して受信した状態データをメモリ144の照明装置データ146に格納する、または予め登録されている照明装置データ146を更新する(ステップS508)。制御プログラムからの実行命令の入力が終了するまで(ステップS509)、実行命令を順次実行していく。
【0087】
制御装置104は、昇降装置101と照明素子120とを逐次制御して、予め決められた演出方法の手順に従って、時系列に個々の照明素子の位置、発光状態を設定していく。このようにして、複数の照明素子などの被昇降物を同期制御して、舞台上に照明による三次元演出を実行する。以下、具体的な演出方法について説明する。
【0088】
(オブジェクト生成)
図26を参照して、本発明の一実施形態にかかるLEDボールを用いた三次元演出方法を説明する。本実施形態の三次元演出システムのサスバトン103は、井桁状の形状を有し、照明素子120として
図13に示したLEDボールを懸架する複数の昇降装置101が等間隔に取り付けられている。舞台の大きさに合わせて、5×20=100台程度から20×40=800台程度の昇降装置およびLEDボールを懸架する。
【0089】
制御装置104の装置制御部141には、制御プログラムと
図27に示す演出データとが、メモリ144に格納されている。特定の照明素子(LEDボール)LED1は、時刻1において、リール線106の長さL=3m、全点灯状態であり、時刻2において、リール線106の長さL=2m、照度を落とした状態である。同様して、全てのLEDボールの昇降状態および点灯状態が時系列に規定されている。装置制御部141は、制御プログラムを実行すると、演出データから昇降装置データ145と照明素子データ146とを生成し、演出データの時刻に従って、指示信号を生成し、昇降装置101および照明素子120に送信する。
【0090】
図28に示すように、各々の照明素子120を上下動させることにより、三次元の空間に点在するLEDボールの光点によって、客席から舞台を見ると、任意の形状のオブジェクト(例えば、シャンデリアのように)が形作られる。静止したオブジェクトを表現することのみならず、LEDボールを時系列で上下動させ、動くオブジェクト(例えば、波打つ光の絨毯のように)を生成することもできる。
【0091】
また、
図13に示したLEDボールに代えて、
図21,22に示したLEDアース、
図23に示したLEDバルーンを懸架して演出してもよい。客席から舞台を見ると、LEDボールは1つの光点に見えるが、LEDアースやLEDバルーンは、比較的大きな光る球体に見えるので、オブジェクト生成とは異なる演出が可能となる。さらに、LEDアースの個々のLEDチップを制御すれば、異なる色の2つの半球を結合した光る球体を表したり、ミラーボールのような効果を演出することもできる。
【0092】
(ミラー演出)
図29−33を参照して、本発明の一実施形態にかかるミラーを用いた三次元演出方法を説明する。
【0093】
図29に、ミラーを用いた三次元演出方法の実施例1を示す。複合昇降装置107a−107eには、それぞれ
図14に示したミラー410a−410eが懸架されている(1つのミラーを3本のリール線で懸架するが、図では1本に省略して示す、以下、
図33まで同じ)。複合昇降装置の直下、すなわちミラーの直下の舞台上または舞台に埋め込まれる形で投光装置108a−108eが設置されている。
【0094】
投光装置は、LED、白熱球などの光源の光をレンズにより平行光に集光したスポットライト、またはレーザー投光器などを用いることができる。ミラーと投光装置との同期制御は、制御装置104から照明装置の制御卓に制御信号を送信することにより行う。または、制御装置104と照明装置の制御卓とを兼ねる共通制御卓から同期制御を行ってもよい。
【0095】
例えば、制御装置(図示を省略、以下、
図33まで同じ)から、複合昇降装置107aの各々昇降装置を制御して、ミラー410aを任意の高さに、任意の角度に設定する。投光装置108aからミラー410aに光ビームを照射すると、図に示したように、設定された角度に応じて光ビームが反射される。客席から舞台を見ると、舞台上の中空の一点(ミラー)からスポットライトが照射されているように見える。つまり、実際の光は舞台の下から照射されているが、舞台を見ている観客には、ミラーから光が照射されているように見える。
図29では静止した状態のみを示しているが、制御装置からの指示に従って各ミラーの上下位置と角度を時系列的に変えることにより、様々な位置から様々な角度に向けて光ビームが照射される。
【0096】
図30に、ミラーを用いた三次元演出方法の実施例2を示す。実施例1では、ミラー410aに対して、直下に設置された投光装置108aから光ビームを照射した。すなわち、投光装置108aとミラー410aとが1対1に対応する。実施例2では、ミラー410aに対して、隣りの投光装置108bから光ビームを照射するなど、ミラーと投光装置との対応をランダムに設定する。ミラーは、3台の昇降装置により懸架されており、設定できるミラーの角度には制限がある。従って、直下の投光装置からの光ビームのみでは、光ビームの反射角度にも制限がある。そこで、直下の投光装置以外の投光装置から、角度をつけてミラーに照射することにより、光ビームの反射角度をより広く設定することができる。
【0097】
実施例2においては、ミラー410の動きに合わせて、投光装置108の照射方向を制御する必要があり、両者の同期制御を行うために、制御装置104と照明装置の制御卓とを兼ねた共通制御卓からの制御が望ましい。
【0098】
図31に、ミラーを用いた三次元演出方法の実施例3を示す。実施例3では、複合昇降装置107の3台の昇降装置の間、すなわち梁の中心にも投光装置を取り付けておく。制御装置から、複合昇降装置107aの各々昇降装置を制御して、ミラー410aを任意の高さに、水平に設定する。投光装置108aからミラー410aに光ビームを照射し、複合昇降装置107aの投光装置からも光ビームを照射する。
【0099】
投光装置108aの光ビームの色と、複合昇降装置107aの投光装置からの光ビームの色とを変えておくと、客席から舞台を見ると、舞台上の中空の一点(ミラー)を境に上下に色が異なる光の柱が立っているように見える。加えて、ミラーの角度を変えると、異なる色の光ビームが180度反転した方向にそれぞれ反射され、客席から舞台を見ると、舞台上の中空の一点(ミラー)から2色のスポットライトが同時に反対方向に照射されているように見える。
【0100】
図32に、ミラーを用いた三次元演出方法の実施例4を示す。実施例1−3に示したように、投光装置108a−108eを、ミラーの直下の舞台上または舞台に埋め込まれる形で設置することができない場合がある。実施例4では、ミラーの直下ではなく、舞台前面の袖下に投光装置108a−108eを設置して、それぞれミラーに光ビームを照射する。さらに、投光装置を、客席の中に設置したり、客席横の壁面、舞台上のサスバトン103とは離れた天井部分などに設置して、ミラーに光ビームを照射することができる。
【0101】
実施例4においても、ミラー410と投光装置108の同期制御が必要であり、制御装置104と照明装置の制御卓とを兼ねた共通制御卓からの制御が望ましい。
【0102】
図33に、ミラーを用いた三次元演出方法の実施例5を示す。例えば、制御装置から、複合昇降装置107aの各々昇降装置を制御して、ミラー410aを任意の高さに、任意の角度に設定する。さらに、複合昇降装置107fの各々昇降装置を制御して、ミラー410fを任意の高さに、任意の角度に設定する。投光装置108aからミラー410aに光ビームを照射すると、図に示したように、ミラー410aで反射された後、さらにミラー410fで反射される。客席から舞台を見ると、舞台上の中空の一点(ミラー410a)から照射されたスポットライトが、他の一点(ミラー410f)で角度を変えて照射されているように見える。このようにして、屈折した様々な形の光ビームを生成することができる。
【0103】
実施例1−5では、
図14に示したミラー410を用いた例を示したが、これに代えて
図15に示したLED搭載ミラー420を使用することもできる。LED搭載ミラー420の環状の実装基板421に実装されたLEDチップ422による光の輪と、投光装置からの光ビームのいずれか一方、または両方を用いて、演出のバリエーションを広げることができる。
【0104】
(バー演出)
図34−36を参照して、本発明の一実施形態にかかるバーを用いた三次元演出方法を説明する。
図34に、バーを用いた三次元演出方法の実施例1を示す。
図18に示したように、サスバトン103に固定された2台1組の昇降装置101a−101bを使用して、
図17(a)に示したLEDバー430を懸架する。LEDバー430は、舞台の奥行き方向に平行に懸架される。例えば、制御装置104から、昇降装置101a−101bの各々を制御して、LEDバー430を任意の高さに、任意の角度に設定する。
【0105】
LEDバー430の実装基板431の表面および裏面に実装されたLEDチップ432の点灯を制御して、複数のLEDバー430を上下動させたり、角度を変えることにより、客席から舞台を見ると、複数の光の棒が空中を飛来するように見える。LEDバー430の個々のLEDの点灯を制御することにより、LEDボールと同様に任意の形状のオブジェクトを形作くることもできる。
【0106】
また、複数のLEDバー430を平行に懸架することにより、
図19に示した表示パネルに近似した構成として、表示パネルとしての演出も可能になる。
【0107】
図35に、バーを用いた三次元演出方法の実施例2を示す。実施例1では、複数のLEDバー430を、舞台の奥行き方向に平行に、舞台の前面に向けて配置した。実施例2では、井桁状の形状を有するサスバトン103に、舞台の前面向きだけではなく、舞台の両袖と、舞台の背面の合わせて4方向に、
図34に示した複数のLEDバー430のセットを4組設置する。
【0108】
複数のLEDバー430が4方向にカタカナのロの字形に配置される。各LEDバーを上下動させることにより、客席から舞台を見ると、任意の形状のオブジェクト(例えば、シャンデリアのように)が形作られる。また、ロの字形の中央に、舞台上の実演者を配置することにより、上演者を取り囲む光のカーテンを演出することもできる。
【0109】
図36に、バーを用いた三次元演出方法の実施例3を示す。実施例2では、
図17(b)に示したLEDバー440を複数懸架する。制御装置104から、昇降装置101の各々を制御して、すだれ上の光のカーテンを演出することができる。また、複数のLEDバー440を平行に設定しておけば、表示パネルとしての演出も可能になる。
【0110】
実施例2では、
図17(b)に示したLEDバー440を用いた例を示したが、これに代えて
図20に示したLEDクリスタル460を使用することもできる。複数のLEDボール465により、LEDバー440と同様の演出ができるとともに、複数のカットグラス464による反射を利用して、演出のバリエーションを広げることができる。
【0111】
(表示パネル演出)
図37−38を参照して、本発明の一実施形態にかかる表示パネルを用いた三次元演出方法を説明する。
図37に、表示パネルを用いた三次元演出方法の実施例1を示す。サスバトン103に固定された4台の昇降装置101a−101dを使用して、
図19に示した表示パネル450を懸架する。例えば、制御装置104から、表示パネル450の個々のLEDチップの発光、消光、照度、色の制御を行うことにより、液晶ディスプレイ、電光掲示板のように画像を表示することができる。
【0112】
また、表示パネル450の角度を任意に設定できるので、舞台から見て特定の客席の方向に表示パネル450の法線を向けることにより、この方向の客席からは、表示パネル450の画像を正面に見ることができる。さらに、昇降装置101a−101dの各々を制御して、表示パネル450の位置、角度を変えることにより、表示パネル450に表示した二次元のオブジェクトを、表示パネル450平面で動かすだけでなく、三次元の空間で動かすこともできる。
【0113】
表示パネル450は、
図19に示したように、複数のLEDバー455が間隔を設けて取り付けられている。LEDバーは、透明なアクリル製のパイプを用いているので、表示パネルとしても、透過性を持っている。表示パネル450の各LEDを全点灯の状態で、光量が十分であれば、客席から舞台を見ると、表示パネルの背後にあるもの、例えば、アーティストが見えない。ここで、表示パネル450の各LEDを消灯すると、背後のアーティストが見えるようになるので、光によるカーテンを演出することができる。
【0114】
図38に、表示パネルを用いた三次元演出方法の実施例2を示す。ここでは、4枚の表示パネル450a−450dを用いることにより、表示パネルとしての表示領域を拡大することができる。また、実施例2では、個々の表示パネルの角度を変えることにより、奥行き感のある映像効果を得ることができる。さらに、舞台背景として、複数の表示パネルを用いれば、舞台のシーンごとに映像を即座に切り替えることができるので、大掛かりな大道具の代替とすることができる。
【0115】
図39を参照して、本発明の一実施形態にかかるLEDトライアングルを用いた三次元演出方法を説明する。複合昇降装置107には、それぞれ
図24に示したLEDトライアングル490が懸架されている。サスバトン103に固定された複数の複合昇降装置107を使用して、LEDトライアングル490が平面トラスを構成するように配置する。例えば、制御装置104から、各々のLEDトライアングル490の個々のLEDチップの発光、消光、照度、色の制御を行う。
【0116】
図13に示したLEDボール400が、光の点を表示し、
図19に示した表示パネル450は、1m×2m程度の二次元平面上に多数の光点を表示する。これらに対して、LEDトライアングル490は、一辺が60cmの正三角形状の実装基板491を備えているので、光点の数は数十程度である。従って、LEDボールを用いた演出のようにオブジェクトを生成したり、表示パネルを用いた演出のように液晶ディスプレイのように画像を表示することもできる。
【0117】
加えて、
図13に示したLEDボール400や
図19に示した表示パネルと比較すると、一定の空間内に配置できるLEDチップの数を大幅に増やすことができる。従って、より明るい演出、より緻密なオブジェクト生成や表示を実現することができる。
【0118】
舞台上での実演中(例えば、幕間など)に、被昇降物を交換することは、実際には困難である。従って、LEDトライアングル490を用いることにより、LEDボール400と表示パネル450とを兼ねた演出を行うことができ、被昇降物の交換を行う必要がなくなる。
【0119】
[5.その他の応用]
本実施形態では、劇場、コンサートホールまたはテレビスタジオ等において、照明素子から照射される光による三次元演出を例に説明した。本実施形態の昇降装置は、複数の照明素子だけでなく、例えば、スピーカなどの音響機材、小道具、大道具などを懸架して、独立に昇降させることもできる。従って、本実施形態でミラーの例を説明したように、照明素子と様々な被昇降物とを組み合わせて、光による三次元演出を組み合わせた様々な演出を実行することができる。