(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0020】
(水性インク用水系染料分散体)
本発明に係る水性インク用水系染料分散体(以下、単に「染料分散体」と称する場合がある。)は、前記式(1)で示される染料誘導体(以下、単に「染料誘導体」と称する場合がある。)、水不溶性染料、分散剤及び水を含む。このような所定の構造を有する染料誘導体を用いることで、水不溶性染料を含む粒子の分散状態を安定して維持することができるとともに、当該染料分散体を含む水性インクにおいても、水不溶性染料を含む粒子の分散状態を安定して維持することができる。
【0021】
本発明の実施形態で用いる染料誘導体は、前記式(1)で示される構造を有する。
式(1)中、R
1は前記式(2)で示される基であり、R
2は前記式(3)で示される基である。m及びnは何れも0又は1で且つm+n=1である、即ち、R
1及びR
2のうちの何れか一方の基を有する。また、R
3はヒドロキシル基およびアミノ基から選択される少なくとも1種である。l=0〜2であり、l=2の場合は、R
3はそれぞれ異なっていても、同じでもよい。このような構造を有する染料誘導体を用いることで、水不溶性染料の化学構造や分散剤の種類によらず、概ね本発明の効果を奏する。
【0022】
本発明の実施形態では、式(1)中のR
3として、ヒドロキシル基又はアミノ基が1つ又は2つ含まれる場合、ヒドロキシル基及びアミノ基がそれぞれ1つずつ含まれる場合がある。この場合、それぞれの基の位置は、特に限定はない。このうち、染料分散体中の粒子の凝集を防止して分散状態を安定して維持する観点からは、式(1)中のR
3として、ヒドロキシル基及びアミノ基がそれぞれ1つずつ含まれるのが好ましい。また、この場合、ヒドロキシル基及びアミノ基の結合位置は、特に限定はないが、前記式(4)のように、下記式(1’)中の番号1及び4又は番号5及び8の位置が好ましい。尚、式(1’)は、前記式(1)に番号1〜8を付記したもので、構造上の相違はなく、式(1’)中の置換基は式(1)と同一であるため、それらの説明は省略する。
【0024】
式(1)中、R
3がアミノ基である場合、R
3は、−NH
2、−NHX
1又は−NX
1X
2である。ここでX
1及びX
2は、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、又は、カルボニル基を有する基であり、X
1とX
2は同一でもよいし、異なってもよく、さらに、X
1とX
2は環状に結合していてもよい。また、l=2で、アミノ基が2つ含まれる場合は、R
3は同じでもよいし、異なってもよい。
【0025】
本発明の実施形態では、R
1又はR
2の結合位置は、特に限定はないが、例えば、R
3が式(4)に示すように、式(1’)の番号1及び4又は番号5及び8の位置に結合している場合は、染料分散体中の粒子の凝集を防止して分散状態を安定して維持する観点からは、前記式(1’)における番号が2若しくは3又は6若しくは7の位置が好ましく、R
3として、式(1’)の番号1の位置にヒドロキシル基、番号4の位置にアミノ基が結合したものである場合は、番号3の位置が好ましい。
【0026】
また、染料分散体中の粒子の凝集を防止して分散状態を安定して維持する観点から、R
1及びR
2のうち、R
2が好ましい。
【0027】
前記式(3)中、R
4は、炭素数1〜5のアルキレン基又はフェニレン基である。炭素数1〜5のアルキレン基としては、例えば、−CH
2CH
2−、−CH
2CH
2CH
2−、−CH(CH
3)CH
2−、−CH
2CH
2CH
2CH
2−、−CH
2C(CH
3)
2CH
2−等が挙げられる。また、炭素数1〜5のアルキレン基は、置換基を有してもよい。このような置換基としては、アミノ基、ヒドロキシル基、ハロゲン原子、シアノ基、カルボニル基を含む基、アルコキシ基、ニトロ基、アゾ基等が挙げられる。
フェニレン基も、置換基を有してもよい。このような置換基としては、アルキル基、ハロゲン原子等が挙げられる。このようなアルキル基としては、炭素数1〜4が好ましい。また、置換基は1つでも良いし、2つ以上でもよい。このような置換基を有してもよいフェニレン基の具体例としては、−C
6H
4−、−C
6H
3(CH
3)−、−C
6H
2(CH
3)
2−、−C
6H
2Cl
2−等が挙げられる。これらのうち、染料分散体中の粒子の凝集を防止して分散状態を安定して維持する観点からは、R
4は、炭素数1〜4のアルキレン基がより好ましく、炭素数が3のアルキレン基即ちトリメチレン基が特に好ましい。
【0028】
前記式(3)中、R
5及びR
6は独立して選択される炭素数1〜4のアルキル基である。即ち、R
5とR
6は、炭素数1〜4のアルキル基であれば、同じであってもよいし、異なっていてもよい。炭素数1〜4のアルキル基の具体例としては、−CH
3、−CH
2CH
3、−CH
2CH
2CH
3、−CH
2CH
2CH
2CH
3、−CH(CH
3)
2等が挙げられる。炭素数1〜4のアルキル基は、置換基を有してもよい。このような置換基としては、アミノ基、ヒドロキシル基、ハロゲン原子、シアノ基、カルボニル基を含む基、アルコキシ基、ニトロ基、アゾ基等が挙げられる。これらのうち、R
5及びR
6は炭素数が2のアルキル基即ちエチル基が特に好ましい。
【0029】
式(1)で示される染料誘導体の好適例は、例えば、表1に記載のものが挙げられる。
【0031】
式(1)で示される染料誘導体は、例えば、下記式(5)で示される染料を用いて誘導体を得る場合は、以下のようにして製造することができるが、これらの製造方法に限定されるものではない。
下記式(5)で示される染料のスルホン化物、即ち、式(1)中のR
1が式(2)で示される基で、n=0、m=1であり、R
3がヒドロキシル基及び−NH
2で、l=2である化合物は、下記式(5)で示される染料を濃硫酸や発煙硫酸中で、あるいは有機溶媒中、三酸化硫黄・ピリジン錯体を反応させることで得ることができる。
下記式(5)で示される染料のスルホンアミド化物、即ち、式(1)中のR
2が式(3)で示される基で、n=1、m=0であり、R
3がヒドロキシル基及び−NH
2で、l=2である化合物は、下記式(5)で示される染料をクロロスルホン酸中で反応させるか、または前述のようにして得られた染料のスルホン化物を有機溶媒中で塩化チオニルや塩化オキサリル、三塩化リン等の塩素化剤で塩素化して得られるクロロスルホン化物に、希望するアミン化合物を反応させることで得ることができる。
【0033】
染料分散体中の染料誘導体の含有量は、分散安定性の観点から、水不溶性染料100重量部に対して0.1〜30重量部が好ましく、0.5〜20重量部がより好ましい。
【0034】
本発明の実施形態で用いる水不溶性染料は、水に不溶又は難溶の染料であれば特に限定はない。このような染料としては、分散染料、油溶性染料、酸性染料等が挙げられる。尚、本発明において「水不溶性」とは、25℃の水に対する溶解度が1g/m
3以下を意味する。
【0035】
分散染料の具体例としては、カラーインデックス(C.I.)番号で示すと、例えば以下のものが挙げられる。
C.I.ディスパースイエロー3、4、5、7、9、13、24、30、33、34、42、44、49、50、51、54、56、58、60、63、64、66、68、71、74、76、79、82、83、85、86、88、90、91、93、98、99、100、104、114、116、118、119、122、124、126、135、140、141、149、160、162、163、164、165、179、180、182、183、184、186、192、198、199、201、202、204、210、211、215、216、218、224、231、232、241など;
C.I.ディスパースオレンジ1、3、5、7、11、13、17、20、21、25、29、30、31、32、33、37、38、42、43、44、45、47、48、49、50、53、54、55、56、57、58、59、61、66、71、73、76、78、80、89、90、91、93、96、97、119、127、130、139、142など;
C.I.ディスパースレッド1、4、5、7、11、12、13、15、17、27、43、44、50、52、53、54、55、56、58、59、60、65、72、73、74、75、76、78、81、82、86、88、90、91、92、93、96、103、105、106、107、108、110、111、113、117、118、121、122、126、127、128、131、132、134、135、137、143、145、146、151、152、153、154、157、159、164、167、169、177、179、181、183、184、185、188、189、190、191、192、200、201、202、203、205、206、207、210、221、224、225、227、229、239、240、257、258、277、278、279、281、288、289、298、302、303、310、311、312、320、324、328、343、362、364など;
C.I.ディスパースバイオレット1、4、8、23、26、27、28、31、33、35、36、38、40、43、46、48、50、51、52、56、57、59、61、63、69、77など;
C.I.ディスパースグリーン6:1、9など;
C.I.ディスパースブラウン1、2、4、9、13、19、27など;
C.I.ディスパースブルー3、7、9、14、16、19、20、26、27、35、43、44、54、55、56、58、60、62、64、71、72、73、75、79、81、82、83、87、91、93、94、95、96、102、106、108、112、113、115、118、120、122、125、128、130、139、141、142、143、146、148、149、153、154、158、165、167、171、173、174、176、181、183、185、186、187、189、197、198、200、201、205、207、211、214、224、225、257、259、267、268、270、284、285、287、288、291、293、295、297、301、315、330、333、343、359、360など;
C.I.ディスパースブラック1、3、10、24など。
【0036】
油溶性染料の具体例としては、カラーインデックス(C.I.)番号で示すと、例えば以下のものが挙げられる。
C.I.ソルベントイエロー1、2、3、5、6、13、14、16、19、21、22、29、33、36、37、38、39、40、43、44、45、47、62、63、71、76、81、85、86、93、114、151、157、163など;
C.I.ソルベントオレンジ2、7、55、60、67など;
C.I.ソルベントレッド1、3、8、18、23、24、27、35、36、37、38、39、40、43、48、49、51、52、58、60、65、69、81、86、89、91、92、97、99、100、109、111、118、119、122、125、127、130、132、135、145、146、149、150、151、155、168、176、179、180、181、195、196、197、207、218、225、233など;
C.I.ソルベントバイオレット13、31、36、37、57、59など;
C.I.ソルベントブルー14、24、25、26、34、35、36、37、38、39、42、43、44、45、48、52、53、55、59、63、67、70、78、83、87、94、104、105、111、132、136など;
C.I.ソルベントグリーン3、5、7、20、28など;
C.I.ソルベントブラック3、5、7、8、14、17、19、20、22、24、26、27、28、43など。
【0037】
本発明の実施形態では、水不溶性染料は、1種でもよいし、2種以上組み合わせてもよい。
【0038】
水不溶性染料の平均粒径は、用途に応じて適宜決定することができるが、例えば最終的に得られる水性インクがインクジェット方式による印刷に使用される場合は、吐出性の観点から、50〜200nmが好ましい。尚、平均粒径は、動的光散乱法、レーザー回折法などの一般的な方法により測定することができる。
【0039】
水不溶性染料の含有量(固形分)は、インク作製時の組成の自由度確保と着色力の観点から、染料分散体総重量に対して1〜25重量%が好ましい。
【0040】
本発明の実施形態で用いる分散剤としては、特に限定はなく、例えば、樹脂型分散剤、界面活性剤型分散剤等が挙げられる。また、樹脂型分散剤には、樹脂の酸価とアミン価の違いから、アミン価が0で、酸価が0より大きい酸価型の分散剤、酸価が0で、アミン価が0より大きいアミン価型の分散剤、酸価及びアミン価が0より大きい分散剤がある。
【0041】
樹脂型分散剤としては、例えば、ポリウレタン;ポリエステル;不飽和ポリアミド;燐酸エステル;ポリカルボン酸及びそのアミン塩、アンモニウム塩、アルキルアミン塩;ポリカルボン酸エステル;水酸基含有ポリカルボン酸エステル;ポリシロキサン;変性ポリアクリレート;アルギン酸類、ポリビニルアルコール、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、ポリビニルピロリドン、アラビアゴム等の水溶性高分子化合物;スチレン−アクリル酸樹脂、スチレン−メタクリル酸樹脂、スチレン−アクリル酸−アクリル酸エステル樹脂、スチレン−マレイン酸樹脂、スチレン−マレイン酸エステル樹脂、メタクリル酸−メタクリル酸エステル樹脂、アクリル酸−アクリル酸エステル樹脂、イソブチレン−マレイン酸樹脂、ビニル−エステル樹脂、ロジン変性マレイン酸樹脂等のエチレン性二重結合含有樹脂;ポリアリルアミン、ポリビニルアミン、ポリエチレンイミン等のアミン系樹脂;等が挙げられる。
【0042】
樹脂型分散剤は種々のものが市販されており、その具体例は以下の通りであるが、これらに限定されるわけではない。
日本ルーブリゾール株式会社製:ソルスパース 3000、9000、13240、17000、20000、24000、26000、27000、28000、32000、32500、38500、39000、55000、41000、
ビックケミー・ジャパン株式会社製:Disperbyk 108、110、112、140、142、145、161、162、163、164、166、167、171、174、182、190、2000、2001、2015、2050、2070、2150、LPN6919、LPN21116、
BASF社製:EFKA 4401、4403、4406、4330、4340、4010、4015、4046、4047、4050、4055、4060、4080、5064、5207、5244、PX4701、
味の素ファインテクノ株式会社製:アジスパー−PB821(F)、PB822、PB880、
川研ファインケミカル株式会社製:ヒノアクトT−8000、
楠本化成株式会社製:ディスパロンPW−36、ディスバロンDA−325、375、
7301、等。
【0043】
樹脂型分散剤の分子量は、特に限定はないが、重量平均分子量が1000〜30000が好ましい。
【0044】
樹脂型分散剤の酸価及びアミン価は、樹脂型分散剤を構成する樹脂に含まれる官能基とその含有量により決定される。酸価(固形分換算したときの酸価)は、例えば、DIN EN ISO 2114に準拠する方法により求めることができ、アミン価(固形分換算したときのアミン価)は、例えば、例えば、DIN 16945に準拠する方法により求めることができる。酸価型の分散剤の酸価は、特に限定はないが、10〜200が好ましく、アミン価型の分散剤のアミン価は特に限定はないが、20〜160が好ましい。酸価とアミン価が0より大きい分散剤の場合は、特に限定はないが、酸価が20〜160が好ましく、アミン価が30〜150が好ましい。
【0045】
界面活性剤型分散剤としては、イオン性に応じて、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物塩、芳香族スルホン酸ホルマリン縮合物、ポリオキシエチレンアルキル燐酸エステル等のアニオン活性剤(アニオン型)、ポリオキシエチレンアルキルエーテル等のノニオン活性剤(ノニオン型)、アルキルアミン塩、第四級アンモニウム塩等のカチオン活性剤(カチオン型)等が挙げられる。界面活性剤型分散剤も種々のものが市販されており、その具体例は以下の通りであるが、これらに限定されるわけではない。
花王株式会社製:デモール N、RN、MS、SN−B、エマルゲン 120、430、アセタミン 24、86、コータミン24P、
日光ケミカルズ株式会社製:NIKKOL BPS−20、BPS−30、DHC−30、BPSH−25、
第一工業製薬株式会社製:プライサーフ AL、A208F、
ライオン株式会社製:アーカード C−50、T−28、T−50、など。
【0046】
以上のような分散剤は、1種でもよいし、2種以上組み合わせたものでもよい。2種以上組み合わせる場合、例えば、樹脂型分散剤の場合は、樹脂の異なるもの同士、酸価型とアミン価型のものを組み合わせる、界面活性剤型分散剤の場合は、イオン性の異なるもの同士(例えば、アニオン型とノニオン型など)を組み合わせる、等が挙げられるが、これらに限定されるわけではない。
染料分散体中の分散剤の含有量(固形分又は有効成分)は、分散安定性の観点から、水不溶性染料100重量部に対して30〜200重量部が好ましく、50〜150重量部がより好ましい。ただし、分散剤の最適な添加量は、使用する水不溶性染料の種類との組み合わせなどにより、適宜、調整するとよい。
【0047】
本発明の実施形態で用いる水としては、特に限定はないが、イオン交換水、蒸留水、超純水などの
不純物が少ないものが好ましい。また、滅菌処理を施したものを用いてもよい。
【0048】
染料分散体中の水の含有量は、用途に応じて適宜選択すればよいが、概ね水不溶性染料100重量部に対して200〜8500重量部である。
【0049】
本発明に係る染料分散体の実施形態には、水不溶性染料の濡れ性を向上させたり、その溶解度を調整したり、流動性を確保したりするため、水溶性有機溶剤を含んでもよい。このような水溶性有機溶剤は、後述するものを用いることができる。その含有量は、概ね水不溶性染料100重量部に対して0.4〜500重量部が好ましい。
【0050】
本発明に係る染料分散体の実施形態では、前述した各成分以外に、本発明の効果を阻害しない範囲で、他の添加剤を含有してもよい。このような添加剤としては、pH調整剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、防腐剤、防カビ剤、消泡剤、等が挙げられる。これらの各添加剤の含有量は、その機能を発揮する範囲で用いればよいが、概ね水不溶性染料100重量部に対して0.4〜500重量部が好ましい。
【0051】
染料分散体は例えば次のようにして製造することができる。
前述した各成分を混合し、サンドミル(ビーズミル)、ロールミル、ボールミル、ペイントシェーカー、超音波分散機、高圧乳化機等を用いて分散処理することで染料分散体を得ることができる。
一例としてサンドミルを用いる場合について説明する。まず、各成分及び分散媒体としてのビーズをサンドミルに仕込む。ビーズとしては、0.01〜1mmの粒子径のガラスビーズ、ジルコニアビーズ等を用いることができる。ビーズの使用量は、染料分散体1重量に対して2〜6重量を添加するのが好ましい。その後、サンドミルを作動させ分散処理する。分散処理条件は、概ね1000〜2000rpmで1〜20時間が好ましい。そして、分散処理後にビーズを濾過等により除去することで、染料分散体が得られる。
【0052】
以上のように、前記染料分散体は、式(1)で示す構造を有する染料誘導体を用いることで、水不溶性染料を含む粒子の分散状態を安定して維持することができる。即ち、後述するように、染料分散体を保存中に染料分散体中の粒子が凝集して平均粒径が大きくなることを効果的に抑制することができる。また、粒子が沈降することも効果的に抑制することができる。
【0053】
(水性インク)
本発明に係る水性インクは、前述の本発明に係る水性インク用水系染料分散体、及び、界面活性剤を含む。このように本発明に係る染料分散体を用いることで、水性インクとしても、保存中に粒子が凝集して平均粒径が大きくなることを効果的に抑制することができる。
【0054】
本発明に係る水性インクの実施形態では、前述のような染料分散体を含む。その含有量は用途等に応じて適宜決定することができるが、着色力の観点から、インク総重量に対する水不溶性染料の含有量が0.1〜10重量%となるように、染料分散体が含まれることが好ましい。
【0055】
本発明の実施形態で使用可能な界面活性剤としては、特に限定はなく、水性インクに一般的に使用されている界面活性剤を使用することができる。界面活性剤は、基材への濡れ性を高めて水性インクの浸透性を向上させることができる。このような界面活性剤としては、イオン性の観点では、アニオン系、カチオン系、両性、ノニオン性の何れでも良い。また、インクジェット方式による印刷におけるインクの吐出応答性をも向上させるなどの観点では、シリコーン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤等が好ましい。
【0056】
アニオン系界面活性剤としては、アルキルスルホカルボン酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸塩、N−アシルアミノ酸及びその塩、N−アシルメチルタウリン塩、アルキル硫酸塩ポリオキシアルキルエーテル硫酸塩、アルキル硫酸塩ポリオキシエチレンアルキルエーテル燐酸塩、ロジン酸石鹸、ヒマシ油硫酸エステル塩、ラウリルアルコール硫酸エステル塩、アルキルフェノール型燐酸エステル、アルキル型燐酸エステル、アルキルアリールスルホン酸塩、ジエチルスルホ琥珀酸塩、ジエチルヘキルシルスルホ琥珀酸塩、ジオクチルスルホ琥珀酸塩等が挙げられる。
【0057】
カチオン界面活性剤としては2−ビニルピリジン誘導体、ポリ4−ビニルピリジン誘導体等が挙げられる。
【0058】
両性界面活性剤としてはラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、2−アルキル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ポリオクチルポリアミノエチルグリシン、その他イミダゾリン誘導体等が挙げられる。
【0059】
ノニオン界面活性剤としては、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンドデシルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル等のエーテル系;ポリオキシエチレンオレイン酸エステル、ポリオキシエチレンジステアリン酸エステル、ソルビタンラウレート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタンセスキオレエート、ポリオキシエチレンモノオレエート、ポリオキシエチレンステアレート等のエステル系;2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオール、3,6−ジメチル−4−オクチン−3,6−ジオール、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オール等のアセチレングリコール(アルコール)系;等が挙げられる。
【0060】
シリコーン系界面活性剤としては、未変性ポリオルガノシロキサン、エーテル変性ポリオルガノシロキサン、エステル変性ポリオルガノシロキサン、エポキシ変性ポリオルガノシロキサン、アミン変性ポリオルガノシロキサン、カルボキシル変性ポリオルガノシロキサン、フッ素変性ポリオルガノシロキサン、アルキルオキシ変性ポリオルガノシロキサン、メルカプト変性ポリオルガノシロキサン、(メタ)アクリル変性ポリオルガノシロキサン、フェノール変性ポリオルガノシロキサン、フェニル変性ポリオルガノシロキサン、カルビノール変性ポリオルガノシロキサン、又はアラルキル変性ポリオルガノシロキサンが挙げられる。
これらのシリコーン系界面活性剤は、合成してもよいし市販品を購入してもよい。市販品としては、例えば、DISPERBYK−306、307、333、337、341、345、346、347、348、349、378(以上、ビックケミー・ジャパン株式会社製)、KF−351A、352A、353、354L、355A、615A、945、640、642、643、6011、6012、6015、6017、6020、X−22−4515(以上、信越化学株式会社製)等が挙げられるが、これらに限定されるわけではない。
【0061】
フッ素化合物系界面活性剤としては、パーフルオロアルキル基を有するものが挙げられる。このような界面活性剤は、例えば、DIC社製のメガファック144D、旭硝子社製のサーフロンS−141、145、サーフロンS−131、132、211等が挙げられるが、これらに限定されるわけではない。
【0062】
以上のような界面活性剤は、1種でもよいし、2種以上含まれていてもよい。
【0063】
本発明の実施形態では、界面活性剤の含有量は、用途等に応じて適宜選択することができるが、水性インク中で、着色基材への濡れ性とインク混和性の観点から、水性インク総重量に対して、0.1〜5重量%であるのが好ましい。
【0064】
本発明に係る水性インクの実施形態では、水不溶性染料の濃度を調整するために、さらに水を添加してもよい。水の添加量は、水性インクの用途等に応じて適宜決定することができるが、染料分散体中の水を含めて、水性インク総重量中40〜85重量%になるように添加するのが好ましい。即ち、本発明に係る水性インクの実施形態では、水の含有量が、水性インク総重量中40〜85重量%であるのが好ましい。尚、水は、前述のように染料分散体で用いることが可能なものを用いることができる。
【0065】
本発明に係る水性インクの実施形態には、染料分散体及び界面活性剤、並びに必要に応じて追加する水以外に、他の添加剤が含まれていてもよい。このような添加剤としては、水溶性有機溶剤、pH調整剤、キレート試薬、防錆剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、防腐剤、防カビ剤、消泡剤、等が挙げられる。これらの各添加剤の含有量は、その機能を発揮する範囲で用いればよい。
【0066】
水溶性有機溶剤としては、特に限定はなく、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等の1価アルコール類、多価アルコール類、アセトン、ジアセトンアルコールなどのケトン類又はケトアルコール類;テトラヒドロフラン、ジオキサン等の環状エーテル類が含まれる。このうち、インクジェット方式の印刷装置内におけるインクの揮発抑制や固化防止の観点からは、多価アルコール類が好ましい。このような多価アルコール類としては、例えば、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のオキシエチレン又はオキシプロピレン付加重合体;エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、ブチレングリコール、ヘキシレングリコール等のアルキレン基が2〜6個の炭素原子を含むアルキレングリコール類;1,2,6−ヘキサントリオール等のトリオール類;チオジグリコール;グリセリン等が挙げられる。
水溶性有機溶剤の含有量は、水性インク総重量に対して、1〜40重量%であることが好ましい。
【0067】
pH調整剤としては、特に限定はなく、水性インクのpHを6〜11の範囲に調整できる化合物であれば、特に制限は無い。例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム等のアルカリ金属の水酸化物;トリエタノールアミン、ジエタノールアミン、ジメチルエタノールアミン、ジエチルエタノールアミン等の3級アミン類;アンモニア水;等が挙げられる。
pH調整剤の含有量は、水性インク総重量に対して、0.1〜5重量%であることが好ましい。
【0068】
水性インクは、定法に従って、染料分散体及び界面活性剤、並びに、必要に応じて添加する水及び前述の添加剤を撹拌装置に投入し、撹拌することで得ることができる。
【0069】
以上のように、前記水性インクは、前述の染料誘導体を用いて得られた染料分散体を含むことで、水性インクに含まれる他の成分の存在下でも、水性インク内の粒子の凝集が効果的に抑制されるため、安定性した保存が可能である。
【0070】
このように前記水性インクは、安定した保存が可能であることから、各種の用途に適用可能である。例えば、家庭用及びオフィス用の印刷機、複写機及びファクシミリの記録用インクや、カタログ、雑誌、パッケージラベル等の紙類、缶等の金属製品、タイル等のセラミック製品、フィルム等の樹脂製品、生地等の繊維製品等の着色基材に対する印刷用インク(又は記録用インク)として好適に用いることができる。特に、水性インク中の粒子の凝集を抑制可能なことから、インク充填後でも、粒子の凝集が抑制されて安定した保存が可能なため、吐出の安定性が高く、インクジェット方式による記録用インクとして好適である。また、生地等の繊維製品に対するインクジェット方式による印刷に関し、前記水性インクは、着色基材である生地に直接印刷するインクとして用いてもよいし、生地に対する昇華型熱転写に用いる紙や樹脂製の着色基材である中間記録媒体へ印刷するインクとして用いてもよい。
【実施例】
【0071】
以下、実施例に基づき本発明の実施形態をより具体的に説明する。
【0072】
(製造例1)染料誘導体aの製造
濃硫酸504重量部と28%発煙硫酸400重量部を混合し、ここへ、C.I.ディスパースレッド60(紀和化学工業株式会社製、KP PLAST Red B、以下「PLAST Red B」と称する。)66.26重量部を30℃を超えないように混合し、30℃で3時間撹拌しながら反応させた。得られた反応液を多量の氷水に排出して結晶を析出させた。得られた結晶を濾別した後、純水で洗浄し、80℃で乾燥させ、染料誘導体a51.7重量部を得た。得られた染料誘導体aの化学構造の同定は、株式会社島津製作所製、AXIMA−CFR plus型マトリックス支援レーザー脱離イオン化−飛行時間型質量分析計(MALDI−TOF−MS)にて、α−シアノ−4−ヒドロキシけい皮酸(CHCA)をマトリックスとして、正イオンモードで測定することにより行った。その結果、m/z=411に分子イオンピークが観測された。この値は、式(1)において、mが1、nが0で、R
1の位置は式(1’)における番号3、R
3のヒドロキシル基及び−NH
2の位置はそれぞれ式(1’)における番号1及び4の位置に相当するモノアイソトピック質量と一致する。
【0073】
(製造例2)染料誘導体bの製造
クロロスルホン酸500重量部を氷浴で10℃以下に冷却し、ここへ、PLAST Red B66.26重量部を30℃を超えないように混合し、30℃で2時間撹拌しながら反応させた。得られた反応液を多量の氷水に排出して結晶を析出させた。得られた結晶を濾別した後、純水で洗浄し、赤褐色水ペーストを得た。これを、冷水2000重量部に分散させ、10℃以下でジエチルアミノプロピルアミン78.14重量部と混合し、10〜20℃で3時間撹拌しながら反応させた。得られた反応液を濾別し、さらに冷純水で洗浄し、80℃で乾燥させ、染料誘導体b98.5重量部を得た。
また、製造例1の場合と同様にして得られた顔料誘導体bの化学構造の同定を行ったところ、m/z=524に分子イオンピークが観測された。この値は、式(1)において、mが0、nが1で、R
2の位置は式(1’)における番号3、R
3のヒドロキシル基及び−NH
2の位置はそれぞれ式(1’)における番号1及び4の位置、式(3)中のR
4が炭素数3のアルキレン基(トリメチレン基)、R
5とR
6が炭素数2のアルキル基(エチレン基)に相当するモノアイソトピック質量と一致する。
【0074】
(実施例1)
水不溶性染料としてPLAST Red B15重量部、製造例1で得られた染料誘導体a1重量部、樹脂型分散剤(BYK−Chemie社製、DISPERBYK−190、固形分40重量%、酸価10mg−KOH/gの酸価分散剤)22.5重量部、イオン交換水61.5重量部、0.3mm径ジルコニアビーズ460重量部をサンドミルに仕込み、1500rpmで15時間分散処理を行った。その後、ジルコニアビーズを除去して染料分散体を得た。得られた染料分散体の組成は表2に示すとおりであり、分散染料の含有量が15重量%となるようにした。
【0075】
(実施例2)
樹脂型分散剤として、DISPERBYK−190を22.5重量部用いるのに替えて、EFKA PX4701(BASF社製、樹脂成分100重量%、アミン価40mg−KOH/gのアミン価分散剤)を9重量部用い、イオン交換水を61.5重量部用いるのに替えて、75重量部用いた以外は、実施例1と同様にして水系染料分散体を得た。得られた染料分散体の組成は表2に示すとおりである。
【0076】
(実施例3)
樹脂型分散剤であるDISPERBYK−190を22.5重量部用いるのに替えて、界面活性剤系分散剤であるにデモールSN−B(花王株式会社製、有効成分95重量%、アニオン型)を9重量部及びNIKKOL BPS−30(日光ケミカルズ株式会社製、固形分100重量%、ノニオン型)を2重量部用い、イオン交換水を61.5重量部用いるのに替えて、73重量部用いた以外は、実施例1と同様にして染料分散体を得た。得られた染料分散体の組成は表2に示すとおりである。
【0077】
(実施例4)
製造例1の染料誘導体aに替えて、製造例2の染料誘導体bを用いた以外は、実施例1と同様にして染料分散体を得た。得られた染料分散体の組成は表2に示すとおりである。
【0078】
(実施例5)
樹脂型分散剤として、DISPERBYK−190を22.5重量部用いるのに替えて、EFKA PX4701(BASF社製、樹脂成分100重量%)を9重量部用い、イオン交換水を61.5重量部用いるのに替えて、75重量部用いた以外は、実施例4と同様にして染料分散体を得た。得られた染料分散体の組成は表2に示すとおりである。
【0079】
(実施例6)
樹脂型分散剤であるDISPERBYK−190を22.5重量部用いるのに替えて、界面活性剤系分散剤であるにデモールSN−B(花王株式会社製、有効成分95重量%)を9重量部及びNIKKOL BPS−30(日光ケミカルズ株式会社製、固形分100重量%)を2重量部用い、イオン交換水を61.5重量部用いるのに替えて、73重量部用いた以外は、実施例4と同様にして染料分散体を得た。得られた染料分散体の組成は表2に示すとおりである。
【0080】
(比較例1)
染料誘導体aを1重量部及びイオン交換水を61.5重量部用いるのに替えて、染料誘導体を用いず、イオン交換水を62.5重量部用いた以外は、実施例1と同様にして染料分散体を調製した。この染料分散体の組成は表2に示すとおりである。
【0081】
(実施例7)
分散染料として、C.I.ディスパースレッド60を用いるのに替えて、C.I.ディスパースイエロー54を用いた以外は、実施例1と同様にして染料分散体を調製した。この染料分散体の組成は表3に示すとおりである。
【0082】
(実施例8)
樹脂型分散剤であるDISPERBYK−190を22.5重量部用いるのに替えて、界面活性剤系分散剤であるにデモールSN−Bを9重量部及びNIKKOL BPS−30を2重量部用い、イオン交換水を61.5重量部用いるのに替えて、73重量部用いた以外は、実施例7と同様にして染料分散体を得た。得られた染料分散体の組成は表3に示すとおりである。
【0083】
(実施例9)
製造例1の染料誘導体aに替えて、製造例2の染料誘導体bを用いた以外は、実施例7と同様にして染料分散体を得た。得られた染料分散体の組成は表3に示すとおりである。
【0084】
(実施例10)
樹脂型分散剤であるDISPERBYK−190を22.5重量部用いるのに替えて、界面活性剤系分散剤であるにデモールSN−Bを9重量部及びNIKKOL BPS−30を2重量部用い、イオン交換水を61.5重量部用いるのに替えて、73重量部用いた以外は、実施例9と同様にして染料分散体を得た。得られた染料分散体の組成は表3に示すとおりである。
【0085】
(実施例11)
分散染料として、C.I.ディスパースレッド60を用いるのに替えて、C.I.ディスパースブルー359を用いた以外は、実施例1と同様にして染料分散体を調製した。この染料分散体の組成は表3に示すとおりである。
【0086】
(実施例12)
樹脂型分散剤であるDISPERBYK−190を22.5重量部用いるのに替えて、界面活性剤系分散剤であるにデモールSN−Bを9重量部及びNIKKOL BPS−30を2重量部用い、イオン交換水を61.5重量部用いるのに替えて、73重量部用いた以外は、実施例11と同様にして染料分散体を得た。得られた染料分散体の組成は表3に示すとおりである。
【0087】
(実施例13)
製造例1の染料誘導体aに替えて、製造例2の染料誘導体bを用いた以外は、実施例11と同様にして染料分散体を得た。得られた染料分散体の組成は表3に示すとおりである。
【0088】
(実施例14)
樹脂型分散剤であるDISPERBYK−190を15重量部用いるのに替えて、界面活性剤系分散剤であるにデモールSN−Bを9重量部及びNIKKOL BPS−30を2重量部用い、イオン交換水を61.5重量部用いるのに替えて、73重量部用いた以外は、実施例13と同様にして染料分散体を得た。得られた染料分散体の組成は表3に示すとおりである。
【0089】
(評価1)
実施例及び比較例の染料分散体について以下の評価を行った。評価結果は表2、3に示すとおりである。
【0090】
<分散体安定性試験>
分散体安定性は、保存時における染料分散体中の粒子の凝集のし易さを、粒径の増加率を指標として加速的に評価するものである。
各染料分散体10gを密閉容器に採取して、60℃で1週間静置した。室温に冷却した後、ダイナミック光散乱光度計(大塚電子株式会社製、ELS−8000)により、染料分散体中の粒子の平均粒径(A)を測定した。尚、60℃で静置する前に、同様にして測定した平均粒径(B)に対する増加率により、安定性を評価した。増加率(%)は、次式により算出した。
増加率(%)=(A−B)/B×100
評価基準は、以下のとおりである。
○:平均粒径の増加率が10%未満
△:平均粒径の増加率が10%以上20%未満
×:平均粒径の増加率が20%以上
【0091】
<沈降性試験>
沈降性試験は、保存時における染料分散体中の粒子の沈殿に至るほどの凝集のし易さを加速的に評価するものである。
各染料分散体100gを遠沈管に採取して、遠心分離装置(株式会社コクサン、H−201FR)を用いて、5000rpmで30分間遠心分離処理を行った。遠心分離処理前に、あらかじめ各染料分散体の試料1gをアルミニウムカップに採取し、130℃で2時間加熱した後の残渣物の重量を測定して、試料1g当たりの遠心分離前の固形分の割合(C%)を算出した。さらに、遠心分離処理後の遠沈管から上澄み液1gをアルミニウムカップに採取し、同様の操作を行い、上澄み1g当たりの固形分の割合(D%)を算出した。算出したCとDの差を固形分の沈降率として、沈降性を評価した。沈降率(%)は次式により算出した。
沈降率(%)=C−D
評価基準は、以下のとおりである。
○:固形分の沈降率が1%未満
△:固形分の沈降率が1%以上2%未満
×:固形分の沈降率が2%以上
【0092】
(評価2)
実施例及び比較例の染料分散体を用いて水性インクを調製し、その水性インクについて、以下の評価を行った。評価結果は表2、3に示すとおりである。
【0093】
<インク安定性試験>
各染料分散体1g、界面活性剤(BYK−Chemie社製、DISPERBYK−348)0.1g、グリセリン1g、プロピレングリコール1g、イオン交換水9gを混合し水性インクを調製した。得られた各水性インクについて、「分散体安定性試験」と同様にして、平均粒径の増加率を算出し、水性インクの安定性を評価した。
評価基準は、以下のとおりである。
○:平均粒径の増加率が10%未満
△:平均粒径の増加率が10%以上100%未満
×:平均粒径の増加率が100%以上
【0094】
【表2】
【0095】
【表3】
【0096】
表2、3から分かるように、式(1)で示される染料誘導体を用いることで、使用する水不溶性染料の種類や分散剤の種類に関わらず、染料分散体及び水性インクの安定性が向上していることがわかる。したがって、前記染料分散体を含む水性インクは各種の用途に好適に使用でき、特にインクジェット方式の記録用の各種印刷に好適であることが分かる。