(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6867046
(24)【登録日】2021年4月12日
(45)【発行日】2021年4月28日
(54)【発明の名称】マイクロポーラス状のヒドロゲル
(51)【国際特許分類】
C08J 9/26 20060101AFI20210419BHJP
C08J 3/075 20060101ALI20210419BHJP
G02C 13/00 20060101ALI20210419BHJP
A61L 12/02 20060101ALI20210419BHJP
【FI】
C08J9/26 101
C08J3/075
G02C13/00
A61L12/02
【請求項の数】12
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2018-509989(P2018-509989)
(86)(22)【出願日】2016年5月6日
(65)【公表番号】特表2018-524460(P2018-524460A)
(43)【公表日】2018年8月30日
(86)【国際出願番号】EP2016060160
(87)【国際公開番号】WO2016177872
(87)【国際公開日】20161110
【審査請求日】2019年4月26日
(31)【優先権主張番号】15166793.8
(32)【優先日】2015年5月7日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】517387845
【氏名又は名称】クリスティアン−アルブレヒツ−ウニヴェルジテート・ツー・キール
【氏名又は名称原語表記】Christian−Albrechts−Universitat zu Kiel
(74)【代理人】
【識別番号】100100158
【弁理士】
【氏名又は名称】鮫島 睦
(74)【代理人】
【識別番号】100132263
【弁理士】
【氏名又は名称】江間 晴彦
(72)【発明者】
【氏名】クリスティーネ・ゼルフーバー−ウンケル
(72)【発明者】
【氏名】イリス・ヘルケン
(72)【発明者】
【氏名】ゼーレン・ビョルン・グーテクンスト
(72)【発明者】
【氏名】ライナー・アデルング
【審査官】
鶴 剛史
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2014/063128(WO,A1)
【文献】
国際公開第2004/074211(WO,A1)
【文献】
特開2007−023182(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 9/00 − 9/42
C08J 3/00 − 3/28
A61L 12/02
G02C 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
相互接続されたトンネル形状のマイクロポアを有するポーラス状のヒドロゲルのマトリックスであって、
該マイクロポアは中空テトラポッド・ネットワークに対応する三次元形態を有し、
該トンネル形状のマイクロポアが、約500nm〜約15μmの平均トンネル径および約20μm〜約200μmの平均トンネル長さを有する、マトリックス。
【請求項2】
前記マトリックスが、10よりも大きいトンネル長さ/トンネル径の比を有するトンネル形状のマイクロポアを有する、請求項1に記載のマトリックス。
【請求項3】
前記マトリックスが、約4体積%〜約53体積%のトンネル密度を有する、請求項1または2に記載のマトリックス。
【請求項4】
前記ヒドロゲルのマトリックスが、ポリアクリルアミド、ポリエチレングリコール、ポリ(N−イソプロピルアクリルアミド)、ポリ(2−ヒドロキシエチルメタクリレート)、ポリ(アクリル酸)およびそれらのコポリマーを含んで成る群から選択される材料を含んで成る、請求項1〜3のいずれかに記載のマトリックス。
【請求項5】
前記マトリックスが、cAMPを含んで成る群から選択される走化性誘導物質を含んで成る、請求項1〜4のいずれかに記載のマトリックス。
【請求項6】
前記マトリックスが、前記ヒドロゲル材料の前記相互接続されたポーラス構造のネガティブ形態に対応する三次元形態を有するテンプレート材料を有して成り、該テンプレート材料が相互接続された酸化亜鉛のテトラポッド・ネットワークを有して成る、請求項1〜5のいずれかに記載のマトリックス。
【請求項7】
運動性細胞を捕捉するための使用であって、該運動性細胞が前記マトリックスの前記マイクロポアに移動する、請求項1〜5のいずれかに記載のマトリックスの使用。
【請求項8】
溶液または溶液と接触している対象物からの運動性細胞を低減または排除する方法であって、請求項1〜5のいずれかに記載のマトリックスと該溶液を接触させることを含んで成る方法。
【請求項9】
前記運動性細胞が、アカントアメーバ・カステラーニである、請求項7に記載の使用または請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記溶液が、水、コンタクトレンズ洗浄溶液、コンタクトレンズ保存溶液、および細胞培養媒体を含んで成る群から選択される、請求項7もしくは9に記載の使用または請求項8もしくは9に記載の方法。
【請求項11】
コンタクトレンズを洗浄するための溶液および/またはコンタクトレンズを保存するための溶液ならびに請求項1〜5のいずれかに記載のマトリックスを含んで成る、コンタクトレンズを洗浄するためのキット。
【請求項12】
請求項1〜5のいずれかに記載のポーラス状のヒドロゲルのマトリックスを形成する方法であって、
a)ヒドロゲル形成材料の溶液を供すこと、
b)ヒドロゲル材料の所望の相互接続されたポーラス構造のネガティブ形態に対応する三次元形態を有するテンプレート材料であって、相互接続された酸化亜鉛のテトラポッド・ネットワークを有して成る前記テンプレート材料を供すること、
c)前記テンプレートに前記ヒドロゲル形成材料の溶液をキャストすること、
d)前記テンプレート材料の酸加水分解によって、前記ヒドロゲル材料から該テンプレート材料を除去すること
を含んで成る、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、相互接続されたポアを有する、ポーラス状のヒドロゲル、そのヒドロゲルを作る方法、および運動性細胞を捕捉するためのそのヒドロゲルの使用、ならびにコンタクトレンズを洗浄するための有益なキットに関する。
【背景技術】
【0002】
三次元(3D)のスカフォールド(または骨格、scaffold)は、多くの細胞種(または型、type)の自然環境を模倣するための選択材料であり、その細胞種は生体内で(in vivo)通常、十分に構造化および密集した構造に組み込まれる。したがって、細胞培養ならびに細胞接着(または付着、もしくは粘着、adhesion)および細胞移動に関する研究のための3D材料は、多くの用途において非常に高い関連をもっている。
【0003】
ポア(または細孔、pore)のモルフォロジー(ポアのサイズ、形状、ポアの表面特性、ポロシティ(または間隙率、もしくは多孔性、porosity)および相互接続性)に関する構造上の特徴は、3D環境のパフォーマンスのために明白に重要である。広範な技術が3Dマトリックスを設計するために提案されている(例えば、選択的レーザー焼結、多光子リソグラフィー/直接的なレーザー・ライティング、ステレオリソグラフィー、バイオプロッティング、または3Dプリント/溶融堆積モデリング)。一般的に、これらの技術は、非常に複雑かつ高価であり、また使用される材料および/または得られる構造の観点から、大きな柔軟性を供しない。
【0004】
3D環境を生成するためのさらなる一般的な技術は、バルク材料に予め埋め込まれる塩結晶または他の可溶な粒子を溶解させることによって、ポアがバルク材料に導入される、リバース・ファブリケーション(または逆製造、reverse fabrication)またはポア・リーチング(または細孔浸出、pore-leaching)から成る。そのような技術は、ポアが主に逆オパール形状であり、ポアの相互接続性が、ポアのサイズおよび密度に依存するという欠点を有する(すなわち、高度な相互接続性は大きなポアのサイズが必要であることを意味している)。しかしながら、多くの用途のために、細胞のサイズにほぼ同等のポアを用いることによって、細胞とスカフォールドとの間の接触を最大にすることが有利な効果となる。これによって、細胞とポア表面の大きな接触エリアは確保される。このような状況下では、剛性または機能化(functionalization)などの材料パラメータの影響は、大きなポアを有する材料よりもはるかに高い。
【0005】
米国特許第6,673,285は、所望のポア形態の予め設計される三次元のネガティブなレプリカ(または複製物、replica)を有するポーラス状の材料のリバース・ファブリケーションを教示している。そこに開示された方法は、一般的に細胞のサイズよりも大きく、高いポロシティおよび相互接続された大きなポアを有する材料を生成することが報告されている。しかしながら、この特許は、どのようにポアの相互接続性がポア密度とは独立して達成し得るか、ならびにマトリックスの形状およびサイズ、その剛性のみならずポロシティを互いに独立して、どのように規定するかを具体的に教示していない。
【0006】
3D材料を製造するための効率的で、容易かつ安価な方法のみならず、生体内で見出される複雑な3D構造を模倣する3D構造材料に対して、継続的な需要は存在する。特に、柔軟で容易にカスタマイズ可能なポロシティの特徴および細胞のサイズとほぼ同等であるポアを有するスカフォールドを生成する方法の需要である。
【0007】
細胞トラップ(または捕捉、trap)としてのポーラス状のスカフォールドの使用は、生体内で好ましくない細胞を除去する手段として提案されている。例えば、転移性癌細胞を導入して排除する方法であって、癌細胞をポーラス状のマトリックスに移動および蓄積させる方法は、国際公開第2014063128号に開示されている。他の例として、対象とする好ましくない細胞を引き付け、接着、捕捉および排除するポーラス状のスカフォールド構成を有して成るデバイスが、米国特許出願第12/665,761に開示されている。両方のケースにおいて、スカフォールド構成における生物活性剤(bioactive agents)が好ましくない細胞を引付けおよび/または破壊するために用いられる。
【0008】
アカントアメーバ・カステラーニ(Acanthamoeba castellanii)は水道水およびスイミング・プールでしばしば見られる自由生活の原生生物である。それらが眼に伝達すると、コンタクトレンズ使用者の間で重篤な疾患になっている、アカントアメーバ性角膜炎(acanthamoeba keratitis)を引き起こす可能性がある。アカントアメーバ性角膜炎の症例の推定85%は、コンタクトレンズの使用に関連している(パーテルら、Current Opinion in Ophthalmology 2008,19,302-306)。2003年までに、角膜の激痛を伴う部分的な破壊に関して、2000を超えるケースが報告されている(ワロチュニックら、Wien Klin Wochenschr.2003,115,10)。また、2004年から2007年にかけて、米国の複数の州でアカントアメーバ性角膜炎が大流行した(ジョンストンら、Journal of Clinical Microbiology 2009,47,2040-2045)。コンタクトレンズ使用者とアカントアメーバ・カステラーニとの接触感染は、主に誤ったコンタクトレンズのケアに起因するが、アカントアメーバ・カステラーニの嚢胞(cyst)のコンタクトレンズ洗浄溶液に対する抵抗力にも関連がある。
【0009】
特別な多目的溶液と過酸化物処理とを組み合わせて使用することにより、含水率の高いレンズ材料であってもアカントアメーバ・カステラーニの増殖のリスクは最小限に抑えられるが、市場に流通している過酸化水素溶液のすべてがアカントアメーバ・カステラーニを死滅させるわけではない。いくつかの研究はまた、銀ナノ粒子がアカントアメーバ・カステラーニを殺して感染を予防する有望な戦略であることを示唆しているが、最近の研究では、低い銀濃度の場合でも、哺乳動物細胞に対する細胞傷害性が存在することが示されている。したがって、銀コーティングされたコンタクトレンズの収納容器が、眼の上皮細胞が銀イオンに絶えず曝されることを意味するので、アカントアメーバ・カステラーニ感染を予防する正しい戦略であるかどうかは疑問である。
【0010】
含水率の高いコンタクトレンズは現在、コンタクトレンズ使用者の間で高く評価されているが、残念なことに、アカントアメーバ・カステラーニの接着性はレンズの含水量の増加と共に増加する。アカントアメーバ・カステラーニの感染を予防する方法は、コンタクトレンズ材料の機械特性を適合させることである場合がある。最近の研究では、基質(または生息環境、substrate)剛性が哺乳動物細胞種の接着および分化を強く制御することが示されている。しかし、アカントアメーバ・カステラーニの接着性に対する機械的剛性の閾値(または基準値、threshold)は、コンタクトレンズ材料に適した剛性値よりもはるかに低いため、この戦略はコンタクトレンズには適していないことが示された(グテクンストら、Beilstein Journal of Nanotechnology 2014,5,1393-1398)。
【0011】
したがって、コンタクトレンズ環境におけるアカントアメーバ・カステラーニの存在を最小限に抑えるための新しい方法を開発する継続的な需要があり、このことは、コンタクトレンズ使用者におけるアカントアメーバ・カステラーニの感染の予防を促進する。コンタクトレンズ溶液から細胞を封鎖する(または隔離する、Sequestering)ことは、特に非毒性の方法で(例えば、化学誘引物質(chemoattractants)などの生物活性剤を使用しないでも)、細胞増殖(または拡散、proliferation)を最小限に抑え、アカントアメーバ・カステラーニの感染を低減するための理想的な方法となるであろう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
上述した内容を鑑みて、本発明の課題は、実質的に(または十分に、substantially)相互接続されたトンネル形状のマイクロポアを有するポーラス状のヒドロゲルのマトリックスを供すことであり、相互接続性は大部分がポア密度とは独立しており、またマトリックスの形状およびサイズ、その剛性のみならずポロシティは互いから広く独立して定義されることができる。本発明のさらなる課題は、ポーラス状のマトリックスを形成するための、効率的で、容易かつ安価な方法を供すことであり、そのマトリックスは実質的に相互接続されたトンネル形状のマイクロポアを有し、そのマイクロポアは、柔軟で容易にカスタマイズ可能なポロシティ特徴を有し、細胞サイズとほぼ同等のポーラスを有する。マトリックスは一般的に運動性細胞を捕捉するために用いることができ、特にコンタクトレンズ環境からアカントアメーバ・カステラーニを隔離させ、除去する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上述した課題は、実質的に相互接続されたトンネル形状のマイクロポアを有するポーラス状(または多孔質、もしくは浸透質、porous)のヒドロゲル(hydrogel)のマトリックスを形成する方法によって解決され、その方法は、ヒドロゲル形成材料の溶液を供す工程、ヒドロゲル材料の所望の相互接続されたポーラス構造のネガティブ形態に対応する三次元形態をテンプレート(または鋳型、template)材料に供す工程であって、そのテンプレート材料が、好ましくは相互接続された酸化亜鉛の構成ネットワーク(または網状組織、network)、好ましくは相互接続された酸化亜鉛のテトラポッド(T−ZnO)・ネットワークから成るものを有して成り、テンプレートにヒドロゲル形成材料の溶液をキャストする工程、およびテンプレート材料の酸加水分解によって、ヒドロゲル材料からテンプレート材料を除去する工程を含んで成る。
【0014】
本発明の方法は、相互接続された中空(hollow)テトラポッド・ネットワークの三次元形態を有する、実質的に相互接続されたトンネル形状のマイクロポアを有するポーラス状のヒドロゲルのマトリックスの形成を可能とする。そのようなマトリックスは、マトリックスのマイクロポアに(またはマイクロポアの中に、into the micropores)移動する運動性細胞(motile cells)を捕捉するために用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は、ZnOテトラポッドの相互接続されたネットワークを示す。 (A)t−ZnOタブレット(3mm×11mm)の顕微鏡画像 (B〜D)t−ZnOネットワークのSEM画像
【
図2】
図2は、ポリアクリルアミドのヒドロゲルにおける、酸化亜鉛のテトラポッドのタブレットのヒドロゲルの包埋および異なるステージを示す。 (A)t−ZnOの焼結タブレット(3mm×11mm) (B)アクリルアミドの重合 (C)犠牲的な(Sacrificial)t−ZnOタブレットの加水分解のための塩酸塩溶液処理(1M、2mL、t=3min) (D)溶解したタブレット(t=11min) (E)70分後における加水分解の進行
【
図3】
図3は、15分以内(完全な溶解は2時間で生じる)で、塩酸(1.21M、2mL)を伴うポリアクリルアミドに埋め込まれたt−ZnOタブレットの溶解されるZnOテトラポッド(黒色)の経時的な並びを示す。矢印は、t−ZnOの分岐を示す。
【
図4】
図4は、本発明のマイクロポアのポリアクリルアミドのマトリックスの位相コントラスト像である。
【
図5】
図5は、表1(実施例5のA、BおよびC)に従う、異なる混合物に対するポリアクリルアミドのヤング率を表すグラフであり、それぞれ、合成直後、水中で2日間膨張(または膨潤、swelling)させた後、1.28MのHCl中で24時間後の膨張した試料のヤング率を示す。測定は3つの独立した繰り返しで行い、それぞれ少なくとも3回反復した。エラーバーは標準偏差を示す。
【
図6】
図6は、マイクロポーラス状のポリアクリルアミドのマトリックスの内部で動くアカントアメーバ・カステラーニの位相コントラスト像を示す。円は矢印によってマークされたトンネル形状のポアの内部を動くアカントアメーバを示す。
【
図7】
図7は、走化性誘導物質(chemotaxis inducing substance、cAMP)を含むマイクロポーラス状のポリアクリルアミドのマトリックスの内部で動くアカントアメーバ・カステラーニの位相コントラスト像を示す。円は矢印によってマークされたトンネル形状のポアの内部を動くアカントアメーバを示す。
【
図8】
図8は、細胞が表面にのっているポリアクリルアミドのバルク材料(暗い部分)と比較される、ポーラス状のポリアクリルアミド(白いトンネルを有する暗い部分)のマトリックスに入っているアカントアメーバの細胞の模式図である。
【0016】
これらの図面は、単に例示であり、限定されるものではない。
【0017】
実質的に相互接続されたトンネル形状のマイクロポアを有するポーラス状のヒドロゲルのマトリックスを生成するために、本発明の方法は、
a)ヒドロゲル形成材料の溶液を供す工程、
b)好ましくは相互接続された酸化亜鉛構成ネットワーク、好ましくは相互接続された酸化亜鉛のテトラポッド・ネットワークから成るものを有して成るテンプレート材料に対して、ヒドロゲル材料の所望の相互接続されたポーラス構造のネガティブ形態に対応する三次元形態を供す工程、
c)テンプレートにヒドロゲル形成材料の溶液をキャストする工程、
d)テンプレート材料の酸加水分解によって、ヒドロゲル材料からテンプレート材料を除去する工程を含んで成る。
もちろん、工程a)およびb)は、いずれの順で実施することができる。
【0018】
本明細書に記載のポーラス状の構造を生成するために、相互接続された酸化亜鉛のテトラポット(t−ZnO)・ネットワークが犠牲的なテンプレート材料として好ましくは使用される。本発明の文脈におけるテトラポッドまたはテトラポッド・ユニットは、4つのアームが四面体形状(tetrahedron shape)の中央の接点(または接合部、junction)から四角形形状のコーナーまで伸びる、本質的に規則的な四面体ベースの幾何学的形状を意味すると解されるべきである。このような規則的なテトラポッドのアーム間の角度(いわゆる四面体角(tetrahedron angle))は約109.5°である。
【0019】
t−ZnOは、アデルンら(DE102010012385)、ミシュラら(Part Part Syst Char 2013,30,775-783;Kona 2014,30,92〜110)およびメクレンバーグら(Adv.Mater 2012、24、3486-3490)、または当業者に知られている他の手段による、フレーム・トランスポート合成(flame transport synthesis)によって合成し得る。本発明に用いられるZnOネットワークは、一般的に、単一のZnO微粒子から焼結される。t−ZnOの製造およびさらなる再加熱(1100℃〜1200℃、4時間〜6時間、好ましくは約5時間)手順は、自己組織化された相互接続性を有する構造の生成を保証する。この合成方法は、ZnOネットワークがその単一構成の異なるモルフォロジーおよびサイズで形成することができるというさらなる利点を有する。好ましい態様では、ネットワークの単一構成はテトラポッド形状のユニットである(
図1、B〜D)。しかしながら、ZnO単一構成の他の形状、またはネットワークは、異なる形状の混合物を含み得る(例えば、マルチ・ポッド(multipod)、ウニまたは血小板のような形状もまた可能)。好ましくは、ZnOネットワークは、少なくとも50%、好ましくは少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%または少なくとも99%または100%の相互接続された酸化亜鉛のテトラポッド(%m t−ZnO/m テンプレート)を含んで成る。テンプレートはまた、酸加水分解工程または本発明のマトリックスおよびその使用に適合する付加的な工程によっても除去されることができるのであれば、ZnO以外の成分を含んで成り得る。好ましくは、テンプレートはZnOからなるか、少なくとも90%、好ましくは99%のZnO(m/m)を少なくとも含んで成る。
【0020】
一般的に、本発明に用いられるt−ZnOテンプレートにおけるテトラポッド形状のユニットのサイズは、合成条件(例えば、開始剤粒子(initiator particles)のサイズおよび温度)に依存して選択することができる。ネットワークの単一のテトラポッド・ユニットの直径は、40μm〜400μmで変わり得る。加えて、テトラポッドのアーム長さは、20μm〜200μmで変わり得る。テトラポッドのアーム径は、500nm〜15μmでの適用が可能である。一般的に、本発明に用いられるt−ZnOテンプレートにおけるテトラポッド形状のユニットは、アスペクト比を有している(すなわち、アーム長さ/アーム径の比は10よりも大きい)。
【0021】
一般的に、本発明に用いられるZnOネットワークの密度はまた、合成条件に依存して選択することができる。t−ZnOテンプレートの充填率は、4体積%〜53体積%(または体積百分率、vol.-%)で変わり得る。通常、用いられる充填率は、4体積%〜27体積%の範囲である。最も重要なこととして、相互接続性はt−ZnOの製造手段の固有の結果であるので、ネットワークにおけるテトラポッド・ユニットは、充填率が4%まで減少したとしても相互接続される。
【0022】
本発明に用いられるZnOテンプレート、好ましくはt−ZnOテンプレートは、いかなる形状でも肉眼で見える形状で存在し得る(例えばタブレット(
図1A)、ディスク、マグ(または筒型容器、mugs)など)。
【0023】
本発明に関するZnOの重要な特徴は、その親水性が変化し得ることである。t−ZnOのポロシティおよび親水性は、ヒドロゲル形成材料を有するテンプレートのウエットティング(または濡れ、wetting)を可能にすることが重要であり、まずは第一にテンプレート・ガイド(template-guided)・ヒドロゲルの重合を可能にする。t−ZnOの親水性は、pHの変化またはUV照射または当業者に既知の他の方法によって調整し得る。
【0024】
本発明によれば、t−ZnOテンプレートにキャスト(または流し込む、cast)されるヒドロゲル形成材料は、テンプレートのウエッティングと適合する(または相溶する、is compatible with)。さらに、重合において、ヒドロゲル形成材料は、テンプレートを除去するために用いられる処理に抵抗力を有さなければならない。そのようなヒドロゲル形成材料は、生体適合性のある材料であってよく、例えば、好ましくはポリアクリルアミドであるが、それだけでなく、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリ(N−イソプロピルアクリルアミド)(PNIPAAm)、ポリ(2−ヒドロキシエチルメタクリレート)(PHEMA)、ポリ(アクリル酸)(PAA)および/または可能なコポリマーである。ヒドロゲル形成材料のさらなる例は、当業者には既知である。ヒドロゲルの物理的パラメータを制御する方法(例えば、架橋密度を変化させることによって剛性を制御する方法)は、当業者には既知である。
【0025】
ヒドロゲル形成材料は、ZnOテンプレート、好ましくはt−ZnOテンプレートに供され、またキャストされる。ヒドロゲルの架橋後、ZnOは酸性処理によって溶解することによって、除去される。そのような処理は、例えば塩酸(HCl)または他の酸性溶液で、また1.5〜4の範囲のpH値で実施し得る。加水分解は、テンプレートが溶解されるまで(約1時間〜120時間、例えば12時間〜24時間)実施される。例として、本発明のポリアクリルアミドのマトリックスからのt−ZnOの除去処理は、
図2においては巨視的規模で、また
図3においては微視的規模で例示される。
【0026】
ZnOの加水分解後、ヒドロゲルのマトリックスは、酸の除去のために(例えば、水、水溶性バッファー、細胞培養媒介または走化性誘導物質を含んで成る溶液で)洗浄し得る。マトリックスは、所望の細胞適用のための生理的条件に平衡化し得る。加水分解、洗浄および平衡化または水溶液中での保存の間、マトリックスは膨張する。
【0027】
殺菌のために、ポリマーのマトリックスを1分〜5分、70%のエタノールに繰り返し浸す(または漬ける、dipped)ことができ、また引き続いて殺菌した細胞媒介で繰り返し洗浄し得る。120℃よりも高いガラス転移温度(Tg)を有するポリマーはまた、溶液中でオートクレーブすることによって、殺菌し得る。本発明によれば、軽度の酸性処理において、ZnOの加水分解によって破壊されように、ポリアクリルアミドは好ましくはマトリックス材料である。加えて、選択されるヒドロゲルとしてのポリアクリルアミドは、マトリックス内の細胞のための、栄養分の運搬およびガス交換を可能とする。さらに、その膨張特性は、機能的な媒介(例えば、ヒドロゲル内の走化性物質または走化性薬)を組み込むための可能性を供する。
【0028】
本発明の方法により、相互接続されたトンネル形状のマイクロポアを有するポーラス状のヒドロゲル・マトリックスが形成され、そのトンネル形状のマイクロポアは、犠牲的なテンプレート材料のネガティブ形態に対応する(具体的には中空テトラポッド・ネットワークに対応する)三次元形態を有する。したがって、本発明は、相互接続されたトンネル形状のマイクロポアを有するポーラス状のヒドロゲル・マトリックスを供し、大部分(すなわち、50%よりも大きい、好ましくは60%〜90%または70%〜80%)のマイクロポアが、マイクロポアの接点で四面体角(約109.5°)を形成する。この評価のために、各々のテトラポッドのアームはマイクロポアとみなされる。
【0029】
図4は、本発明のマイクロポーラス状のヒドロゲルのマトリックスの一例を示す。自己組織化は、本発明におけるあらかじめ設計されたマトリックスの相互接続性ではなく、大部分はポア密度から独立している。さらに、マイクロポアのモルフォロジー、マトリックスの形状およびサイズ、その剛性のみならずポロシティは、ヒドロゲル形成材料の特徴およびテンプレートの犠牲的なt−ZnOの特徴を変えることによって、互いから大部分で独立するように定義することができる。
【0030】
膨張前の本発明のポーラス状のヒドロゲルのマトリックスにおけるトンネル・アーキテクチャ・パラメータ(Tunnel architecture parameters)は、用いるテンプレートの犠牲的なt−ZnOの特徴とは独立して変わるであろう。したがって、ネットワークの単一の中空テトラポッド・ユニットの直径は、40μm〜400μmの間で変わり得る。加えて、トンネル形状のマイクロポアの長さは、20μm〜200μmの間で変わり得る。トンネル形状のマイクロポアの直径は、500nm〜15μmの間で適用が可能である。
【0031】
その上、トンネル形状のポアは、好ましくは、10よりも大きいトンネル長さ/トンネル径の比を示す。
【0032】
さらに、本発明のポーラス状の膨張していないヒドロゲルのマトリックスのポア密度は、4体積%〜53体積%で変わり得、また好ましくは4体積%〜27体積%で変わり得る。一般的に、従来技術であるマイクロポーラス状の材料におけるポアの相互接続性は、ポアの体積占有率(volumetric share)に依存し、高度な相互接続性は、高いポア密度を有する材料によってのみ達成される。本発明のポーラス状のヒドロゲルのマトリックスの特別な差別化特徴は、トンネル形状のポアが本質的に完全に相互接続されており、またこの相互接続がポア密度から大部分で独立していることである(すなわち、相互接続性は、非常に低いポア密度でさえ存在する)。このような方法で、ヒドロゲル材料によって完全に囲まれる、マトリックス内に使用できない中空空間は実質的に存在せず、また従って、残りのポアから孤立される(好ましくは20%未満、10%未満、5%未満または1%未満(v/v)のマイクロポアは、残りのポアから孤立される)。
【0033】
基礎となるテトラポッド形状に起因して、トンネル形状のポアは、さらに特徴付けることができ、そのポアは細長く、トンネル形状であり、またしばしば従来技術でみられるような逆オパール形状ではない。相互接続されたトンネル形状のマイクロポアを有する、本発明のポーラス状のヒドロゲルのマトリックスにおいて、大部分のケースでは、トンネルの交点で4つのトンネルが接合し、平均的に、その内の2つが終端(dead ends)を形成する。この終端は、安定した細胞増殖のための、および/または運動性細胞の動作を遅らせるためのエリアを供し得、これにより、細胞封鎖効果に寄与する。4つ以上の交点、または2つよりも多い終端もしくは2つよりも少ない終端、例えば、4つの終端、3つの終端、1つの終端または終端が無いことも可能であるが、あまり一般的ではない。
【0034】
本発明のポーラス状のヒドロゲルのマトリックスは、細胞とヒドロゲルのポアの内面との接触を最大化することを可能とし、ポアは、おおよそ細胞サイズに対応する寸法を有し得る。従って、例えば剛性および機能化のような材料パラメータの影響は、非常に大きなポアを有する材料よりもより高くなるであろう。ヒドロゲルの剛性は、ポリマーの特徴、その架橋密度および膨張パラメータを変えることによって制御し得る。
【0035】
本発明の方法は、手動および/または自動の両方で、連続的にまたはバッチで実施することができるため、本発明のポーラス状のヒドロゲルのマトリックスは、容易かつ安価に製造し得る。本発明のマトリックスは、本明細書に記載の本発明の方法によって得ることができる。
【0036】
t−ZnOテンプレートの、小さいテトラポッドの塊およびマルチポーデス(または複数の足、multipodes)の存在は、ヒドロゲル中により大きな空洞を生じさせることができる。この空洞は、運動性細胞(例えば、アメーバ、アカントアメーバ・カステラーニのようなアカントアメーバ)を抑制する空間(または室、room)として機能し得る。
図6および7に示すような、テトラポッドのアームに対応するトンネル形状のポアを通って移動した後に、環境条件が一定であれば、アカントアメーバ・カステラーニは数時間の間、集団で、その大きな空洞にとどまり、休息する傾向がある。このような方法で、材料は細胞トラップとして用いられ得る。1よりも多いアメーバを囲むために十分に広い空洞のような構造は、本質的に細胞の捕捉に適している。加えて、トンネルのメイズ(または迷路、maze)のような構造は、アメーバが構造の中に入れば、もう一度基質から離れることを妨げる。本発明のマトリックスは従って、1よりも多いアメーバを囲むことができるヒドロゲルにおいて、より大きい空洞をさらに有して成り得る。
【0037】
加えて、本発明の課題は、本明細書に記載されているマトリックスの使用を供し、マトリックスのマイクロポア内に移動し得る運動性細胞を捕捉することである。本発明はまた、溶液または溶液と接触している対象物(例えば、コンタクトレンズ洗浄溶液またはコンタクトレンズ保存溶液と接触しているコンタクトレンズ)から、運動性細胞(例えば、アカントアメーバ・カステラーニ)を減らし、除去する方法を供し、その溶液と本発明のマトリックスとを接触させることを含んで成る。その溶液は、水(例えば、飲料水、水道水またはスイミング・プールの水)、コンタクトレンズ洗浄溶液および/またはコンタクトレンズ保存溶液、または細胞培養媒介であってよく、好ましくは、コンタクトレンズ保存溶液である。接触は、約2分〜約1週間(好ましくは約5分〜一晩、または約15分〜2時間、約30分〜1時間)であり得る。温度は、細胞が運動性である条件によってのみ制限される。好ましくは、接触は室温(例えば、約20℃〜25℃)で実施されるが、より高温でも実施し得る(例えば、約37℃)。
【0038】
別の態様では、本発明のマトリックスはまた、そのマトリックスと接触させる運動性細胞を培養させるために用いられ得る。運動性細胞は、マトリックスのマイクロポアに移動し、適切な条件下で増殖させ得る。
【0039】
本発明のトラップ・システムの特別な差別化特徴は、ポーラス状の構造にアメーバを引きつけるための追加の媒介を必ずしも必要としないことである。細胞は、基質の外面に道を見つけると、自然にトンネル形状のポアに移動する(
図8に模式的に示す)。
【0040】
それでもなお、捕捉効果をさらに高めるために、cAMPのような化学走化性媒介または当業者によく知られた他のものは、さらにヒドロゲルに組み込まれ得る。ヒドロゲル・マトリックスの中央にそのような化学走化性媒介を入れることは、運動性細胞(例えば、アカントアメーバ)のヒドロゲルの中央への移動を誘導することになる。
【0041】
本発明のマトリックスを用いるトラップ・システムは、溶液(例えば、液体媒介、および本質的にコンタクトレンズ環境)からアカントアメーバ・カステラーニを封鎖および除去するために特に有益であり、したがって、コンタクトレンズ使用者におけるアカントアメーバ・カステラーニの感染を防止および/または低減する。
【0042】
本発明はまた、コンタクトレンズの洗浄および/または保存するための溶液ならびに本発明のマトリックスを含んで成る、コンタクトレンズを洗浄するためのキットを供する。例えば、タブレット形態で、好ましくは、マトリックスは、コンタクトレンズの洗浄または保存(好ましくは保存)のための溶液と組み合わせて、一つまたは二つのコンタクトレンズから、アカントアメーバ・カステラーニのような運動性細胞を低減または除去するために適する量であらかじめパッケージされている。キットはまた、上述の洗浄プロセスに関する書面による指示を含んでいてもよい。
【0043】
コンタクトレンズの洗浄溶液は、過酸化水素を含んで成り得るが、異なる基盤のハードまたはソフトのコンタクトレンズのワンステップ洗浄溶液もまた利用できる。代替的または付加的な成分は、例えばポリマー・ビーズ(polymer beads)、サーファクタント(または界面活性剤、surfactant)/テンサイド(または界面活性剤、もしくは表面活性剤、tenside)および/またはアルコールであってもよい。しばしば、過酸化水素を含む洗浄液は、(例えば、さらなる溶液またはタブレットを添加することによって)中和する必要がある。本発明のマトリックスは、そのような中和溶液またはタブレットに組み込まれてもよく、または別個の形態であってもよい。
【0044】
本発明のマトリックスは、好ましくは、コンタクトレンズの保存溶液に組み込まれている。代替的または付加的な、コンタクトレンズを保存するための容器(container)はまた、本発明のマトリックスを含んで成り得る。
【実施例】
【0045】
以下の例は、本発明を例示することを意図しており、本発明の範囲を限定するものではない。本出願に引用される全ての参考文献は、本明細書に完全に組み込まれる。
【0046】
(実施例1:アカントアメーバの培養)
アカントアメーバを、グテクンストら(Beilstein J Nanotechnol.2014,5,1393-1398)に従って培養した。端的に、アカントアメーバ・カステラーニ(A.castellanii、ATTC 30234)の栄養体(trophozoites)を、ペプトン・イースト・グルコース(Peptone Yeast Glucose (PYG))712培地(20.0gのプロテオース・ペプトン(proteose peptone)(BD、Sparks、USA)、1.00gのイースト・エキス(yeast extract)(BD、Sparks、USA)、950mLの蒸留されたH
2O、10.0mLの0.40M MgSO
4・7H
2O(AppliChem、Darmstadt、Germany)、8.00mLの0.05M CaCl
2(AppliChem、Darmstadt、Germany)、34.0mLの0.10Mクエン酸ナトリウム・2H
2O(Merck,Darmstadt,Germany)、10.0mLの5.00mM Fe(NH
4)
2(SO
4)
2・6H
20(AppliChem、Darmstadt、Germany)、10.0mLの0.25M Na
2HPO
4・7H
2O(Roth、Karlsruhe、Germany)、10.0mLの0.25M KH
2PO
4(Roth、Karlsruhe、Germany)、50.0mLの2.00Mグルコース(Sigma-Aldrich Chemie GmbH,Steinheim,Germany))において室温で培養した。この純粋培養では、アカントアメーバ・カステラーニの栄養体の嚢胞形成(encystment)を避けるために、PYG 712培地を細胞培養フラスコ内で定期的に交換した。
【0047】
(実施例2:酸化亜鉛テトラポッドの合成)
酸化亜鉛のテトラポッド(t−ZnO)は、アデルンら(DE102010012385)、ミシュラら(Part Part Syst Char 2013,30,775-783; Kona 2014,30,92〜110)およびメクレンバーグら(Adv.Mater 2012,24,3486-3490)によって示されているように、フレーム・トランスポート合成で合成された。40μm〜400μmの範囲の直径寸法(一般的なアーム直径は500nm〜15μmの範囲の寸法)を有するこれらテトラポッド・ユニットを4体積%〜53体積%(一般に的には4体積%〜27体積%)の密度となるように、タブレットに圧縮した。再加熱(例えば、1100℃〜1200℃、5時間)後、t−ZnOを相互接続し、またタブレットをポリアクリルアミドの重合のテンプレートとして使用した。
【0048】
(実施例3:ポリアクリルアミドのテンプレート媒介重合(Template mediated polymerization))
相互接続されたt−ZnOタブレットをポリアクリルアミド重合のテンプレートとして使用した。アクリルアミド溶液(Bio-Rad、40%、1.00mL)、ビス溶液(Bio-Rad、2%、10.0μL〜250μL)および過硫酸アンモニウム溶液(Sigma-Aldrich、10%水溶液、30.0μL)の混合物を、小さなビーカーで5.00mLの容量まで充填し、またデシケーター(desiccator)中で20分間脱気した。この溶液をN、N、N’、N’−テトラメチルエチレンジアミン(TEMED、Bio-Rad、10.0μL)と混合し、また各々のt−ZnOタブレットの完全被覆のために計算された体積をタブレットに注いだ。重合の1時間後、基質を二重蒸留水(bidest.H
20)で洗浄した。
【0049】
(実施例4:ヒドロゲル内のZnOテンプレートの加水分解)
ZnOテンプレートをHCl(0.5M〜1.0M、Sigma-Aldrich)で24時間〜120時間加水分解させた。加水分解後、pHが6よりも大きい値に達するまで、また完全に膨潤するまで、ヒドロゲルを二重蒸留水で洗浄した。70%エタノールでの消毒、およびPYG 712を伴う24時間滅菌条件下での洗浄は、アカントアメーバ・カステラーニとのインキュベーション(または低温放置、incubation)前に行った。調製した基質を48時間以内に使用した。ポリアクリルアミドに包埋されたt−ZnOタブレット(典型的な寸法:1mm〜3mm×11mm)の加水分解は、典型的にはpH4で2日〜4日かかる。マトリックスの生成および加水分解は、巨視的では
図2に、および顕微鏡スケールでは
図3に示される。
【0050】
(実施例5:膨張およびHCl処理のポリアクリルアミドのマトリックスの機械特性への影響)
基質の剛性は、細胞の接着および分化を制御することができるため、多くの用途に関連する。膨張ならびにポリアクリルアミドの剛性および統合性(または完全性、integrity)へのHCl溶液の影響を試験するために、異なるヤング率となるように、表1に列挙するような、異なるモノマー対架橋剤比の試料を使用した。
(表1)アクリルアミド重合溶液
グテクンストら(Beilstein Journal of Nanotechnology 2014,5,1393-1398)に従うマイクロインデンテーション(microindentation)実験では、
図3に示すように、1のように可能な限り低いpH値で24時間処理しても、ポリアクリルアミドの機械特性に有意な影響を及ぼさないことが判明した。
【0051】
(実施例6:走化性物質を有するポーラス状のヒドロゲルのインキュベーション)
1時間〜5時間加水分解された、ポリアクリルアミドのマトリックスを、アデノシン3’、5’環状一リン酸塩溶液(cAMP、Sigma-Aldrich、0.01mM〜10.0mM)で洗浄し、次いでcAMP溶液中で3日〜4日間インキュベートした。この期間中、溶液を毎日交換した。
【0052】
(実施例7:アカントアメーバ・カステラーニ細胞の実験)
滅菌したポーラス状のヒドロゲル試料を、6ウェルプレート(6-well plate)において、アカントアメーバ・カステラーニ(ATTC 30234、30.000細胞/mL)とともにインキュベートした。0.5時間〜2時間後、位相差顕微鏡画像(Olympus、IX-81/BX-43)を撮影した。アカントアメーバは、30μm〜50μmの深さまで15分以内に化学的試薬を含有するマイクロポーラス状のヒドロゲル中へと移動した。
図7に示すように、細胞は急速にトンネル形状のポアを通過して移動した。同様の効果がcAMPの非存在下で観察された(
図6)。一般的に、細胞は終端に移動し、次いで回り回って、トンネル形状のポアを通ってアメーバ様式(manner)で大きな空洞に達するまで移動し続け、そこで細胞は何時間も留まった。