(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
何れもが試験管形状を有している外筒プリフォームと内筒プリフォームとからなり、該内筒プリフォームが外筒プリフォームの内部に挿入された二重構造を有していると共に、上部の固定領域と、下部の延伸成形領域とに区画されるデラミボトル成形用プリフォームにおいて、
前記固定領域は、前記外筒プリフォームの内面と前記内筒プリフォームの外面とが密着している嵌合部と、該嵌合部の下側において、該外筒プリフォームの内面と該内筒プリフォームの外面との間に形成されている空隙部とを含んでおり、該空隙部は、該固定領域の全周にわたって且つ該固定領域の少なくとも下端にまで延びていると共に、
前記固定領域における外筒プリフォームの壁部には、前記空隙部に通じている空気導入口が設けられていること、
を特徴とするデラミボトル成形用プリフォーム。
前記固定領域内に位置する前記内筒プリフォームの上部外面には、キャップ固定用突起と、外筒プリフォームの上端の位置を規制するための周状突部とが形成されており、該周状突部は、該キャップ固定突起の下側に位置している請求項1に記載のデラミボトル成形用プリフォーム。
前記固定領域内に位置する前記内筒プリフォームの上部外面には、キャップを嵌合固定し且つ外筒プリフォームの上端の位置を規制するための大径突部が形成されている請求項1に記載のデラミボトル成形用プリフォーム。
前記外筒プリフォームの前記空気導入口よりも下側から、前記サポートリングとの間の位置で、逆止弁付キャップの下方部分が密着し、これにより、前記空気導入口への空気流路が規制される請求項4に記載のデラミボトル成形用プリフォーム。
【背景技術】
【0002】
従来、内袋と外筒とからなる二重構造を有している二重構造容器は、例えばデラミボトルとして、醤油等の調味液が収容される容器として実用されている。即ち、かかるデラミボトルは、逆止弁付のキャップと組み合わせで使用されるものであり、ボトルの胴部壁を外部から押圧して凹ませることにより、内袋に充填されている内容物がキャップに形成されている注出路から排出され、ボトルの胴部壁の押圧を停止することにより内容物の排出を終了させると、逆止弁の作用により、空気は内袋には導入されず、キャップの注出路とは異なる流路を通って、内袋と外筒との間の空間に導入されることとなる。これにより、内袋は、内容物が排出された分だけ収縮することとなり、内容物を排出する毎に、内袋が収縮していく。このような方法により内容物が排出されるデラミボトルでは、内容物を小出しできると共に、内容物が充填されている内袋への空気の侵入が有効に防止されるため、内容物の酸化劣化を有効に回避でき、内容物の鮮度を長期間にわたって保持できるという利点がある。
【0003】
このような
デラミボトル(エアレスボトルと呼ばれることもある)は、一般に、ダイレクトブロー成形により製造されている。即ち、溶融押出しにより、二重構造のパイプを形成し、このパイプの下端部をピンチオフし、次いでブロー流体を吹き込むことによりボトルの形態に賦形することにより製造される。
しかるに、ダイレクトブロー成形により
デラミボトルを製造する場合には、溶融押出からボトルの成形までの工程が一挙に行われることから、多数個取りが難しく、生産性が低いため、コストが高いという問題がある。また、ダイレクトブロー成形ではオレフィン系樹脂が使用されることが多く、透明性が低いため内容物の視認性に難がある。
【0004】
このため、延伸ブロー成形による
デラミボトルの製造方法が検討されている。即ち、延伸ブロー成形法は、射出成形等により、一旦、試験管形状の容器用プリフォームを成形しておき、このプリフォームを延伸成形温度(ガラス転移点以上融点未満)に加熱し、この状態でブロー流体を吹き込んで容器の形状に賦形するという方法であり、容器用プリフォームの量産が可能であり、生産性が高く、また、容器重量や内容積のバラつきも少なく、安定した品質の容器を製造できるという利点があり、特にコストの低減が可能となるからである。更に、延伸ブロー成形においては透明性の高いPET等の樹脂を使用できるため内容物の視認性を向上することも可能となる。
例えば、特許文献1〜3に開示されている延伸ブロー成形による二重構造容器の製造法は、デラミボトルを製造する方法である。
【0005】
延伸ブロー成形により二重構造容器を形成する場合には、外筒形成用プリフォームの内部に内袋形成用プリフォームが挿入されて固定された状態で、内袋形成プリフォームの内部にブロー流体が吹き込まれて成形が行われるため、成形された内袋の外面と外筒の内面との間に、如何にして空気を導入するための導入路を確保するかが問題となる。例えば、上述した公知の技術は、空気導入路を形成するために、プリフォームに溝や突条を形成したり或いはプリフォーム底部に空気導入口を形成するという手段を採用しているため、金型が複雑な構造となったり(特許文献1,2)、空気の導入が困難となってしまっており(特許文献3)、実用化に向けて、さらなる改善が必要となっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、本発明の目的は、極めてシンプルな形状を有しており、複雑な形状の金型を使用せずに成形されるプリフォームの組み合わせからなる
デラミボトル成形用の二重構造プリフォーム
及びデラミボトルを提供することに
ある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、何れもが試験管形状を有している外筒プリフォームと内筒プリフォームとからなり、該内筒プリフォームが外筒プリフォームの内部に挿入された二重構造を有していると共に、上部の固定領域と、下部の延伸成形領域とに区画される
デラミボトル成形用プリフォームにおいて、
前記固定領域は、前記外筒プリフォームの内面と前記内筒プリフォームの外面とが密着している嵌合部と、該嵌合部の下側において、該外筒プリフォームの内面と該内筒プリフォームの外面との間に形成されている空隙部とを含んでおり、該空隙部は、該固定領域の全周にわたって且つ該固定領域の少なくとも下端にまで延びていると共に、
前記固定領域における外筒プリフォームの壁部には、前記空隙部に通じている空気導入口が設けられていること、
を特徴とする
デラミボトル成形用プリフォームが提供される。
なお、以下の説明において、二重構造容器は、全てデラミボトルを意味する。
【0009】
本発明の二重構造容器成形用プリフォームにおいては、
(1)前記固定領域内に位置する前記内筒プリフォームの上部外面には、キャップ固定用突起と、外筒プリフォームの上端の位置を規制するための周状突部とが形成されており、該周状突部は、該キャップ固定突起の下側に位置していること、
(2)前記固定領域内に位置する前記内筒プリフォームの上部外面には、キャップを嵌合固定し且つ外筒プリフォームの上端の位置を規制するための大径突部が形成されていること、
(3)前記固定領域内に位置する前記外筒プリフォームの上部外面には、サポートリングが形成されていること、
(4)前記外筒プリフォームの前記空気導入口よりも下側から、前記サポートリングとの間の位置で、逆止弁付キャップの下方部分が密着し、これにより、前記空気導入口への空気流路が規制されること、
が好適である。
【0010】
本発明によれば、また、
外筒体と、内容物が充填される内袋とからなり、該内袋が該外筒体の内部に挿入された二重構造を有していると共に、延伸成形されていない上部領域と、延伸成形により形成された下部領域とに区画され、該上部領域はノズル部から成り、該下部領域は、肩部、胴部および底部から成っているデラミボトルにおいて、
前記上部領域は、前記外筒体の内面と前記内袋の外面とが密着している嵌合部と、該嵌合部の下側において、該外筒体の内面と該内袋の外面との間に形成されている空隙部とを含んでおり、該空隙部は、該上部領域の全周にわたって且つ上部領域の少なくとも下端にまで延びていると共に、
前記上部領域における外筒体の壁部には、前記空隙部に通じている空気導入口が設けられており、
前記内袋は、前記内容物が充填されていない状態にあること、
を特徴とするデラミボトルが提供される。
このデラミボトルは、内袋に内容物が充填されていないことから理解されるように、成形直後の空ボトルであり、これに内容物が充填されて使用に供される。
【発明の効果】
【0011】
本発明の二重構造容器成形用プリフォームでは、外筒プリフォームの内面と該内筒プリフォームの外面との間に形成されている空隙部が外筒プリフォームに形成されている空気導入口に連通している。この空隙部は、最終的に成形される二重構造容器において、その内袋と外筒との間に空気を挿入するための導入路として機能するのであるが、このような空隙部は、固定領域(延伸成形されない容器の首部に相当)の全周に延びている。このため、かかる空隙部は、外筒プリフォームの内径を内筒プリフォームの外径よりも大きく設定するという単純な手段で形成することができる。
即ち、本発明の二重構造容器成形用プリフォームにおいては、外筒プリフォームに空気導入口が必要であることを除けば、これを形成する外筒プリフォーム及び内筒プリフォームが何れもシンプルな形態を有しており、通常の延伸ブロー容器のプリフォームの大きさ(内径や外径)が適宜変更されているに過ぎず、容易に成形される外筒プリフォームと内筒プリフォームとを使用し、内筒プリフォームを外筒プリフォームの内部に挿入して嵌合固定するという単純な作業によって容易に製造される。加えて、形態がシンプルであることから金型構造が単純でよくコストの低減にも寄与する。
【0012】
また、かかる二重構造容器成形用プリフォームでは、この固定領域を固定した状態で、内筒プリフォームに、適宜ストレッチロッドを挿入して一軸方向に延伸した後、ブロー流体を吹き込んで延伸ブロー成形を行うことにより、最終目的物である二重構造容器を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1を参照して、全体として20で示されている本発明の二重構造容器成形用のプリフォーム(以下、多重プリフォームと呼ぶことがある)は、何れも試験管形状を有している外筒プリフォーム1と内筒プリフォーム3とからなっており、内筒プリフォーム3を外筒プリフォーム1の内部に挿入して嵌合固定することにより組み立てられている(
図1(a)参照)。
この外筒プリフォーム1は、後述する二重構造容器の外筒体に相当するものであり、内筒プリフォーム3は、二重構造容器の内袋に相当し、この内袋の内部に容器内容物が充填される。
【0015】
このような多重プリフォーム20では、その上部が延伸成形されない固定領域Xとなっており、固定領域Xの下側がブロー延伸される延伸成形領域Yとなっている。即ち、この多重プリフォーム20をブロー延伸して得られる多重容器において、固定領域Xは、逆止弁付キャップとの係合部を備えたノズル部に相当し、延伸成形領域Yは、ノズル部の下端に連なる肩部、胴部及び底部に相当する。
また、上記の固定領域X内には、外筒プリフォーム1の内面と内筒プリフォーム3の外面とが密着している嵌合部Aが存在する。
【0016】
このような多重プリフォーム20において、外筒プリフォーム1は、内筒プリフォーム3よりも背が低く、外筒プリフォーム1の上端部分が嵌合部Aとなっており、この嵌合部Aの下方部分の外面には、サポートリング5が形成されており、このサポートリング5を把持部として外筒プリフォーム1の搬送などが行われる(
図1(b)参照)。
【0017】
かかる外筒プリフォーム1の嵌合部Aの下側でサポートリング5の上方部分には、
図2に示されているように、空気導入口7が設けられている。即ち、このサポートリング5は、後述する逆止弁付キャップと協同して、空気導入口7への空気流路を規制する部材としての機能も有している。
【0018】
一方、外筒プリフォーム1内に挿入される内筒プリフォーム3は、上記でも述べたように、外筒プリフォーム1よりも背が高く、前記固定領域X内に位置する内筒プリフォーム3の上方部分の外面には、キャップ固定用突起として機能する螺条9が設けられており、この螺条9の下側には、周状突部11が設けられている(
図1(c)参照)。
【0019】
この周状突部11は、この内筒プリフォーム3の搬送などの際の把持部材として使用されるが、多重プリフォーム20における外筒プリフォーム1の上端位置を規制する規制部材として機能する。即ち、
図1(a)から理解されるように、多重プリフォーム20において、外筒プリフォーム1の上端は、内筒プリフォーム3の周状突部11の下端に当接するものであり、これにより、外筒プリフォーム1に挿入された内筒プリフォーム3が一定位置に位置決めされることとなる。
また、この周状突部11は、空気導入口7への空気導入路を確保するため、外筒プリフォーム1のサポートリング5よりも小さく、サポートリング5が周状突部11よりも大径となっている。
【0020】
上記のような多重プリフォーム20では、
図2に示されているように、固定領域X中の嵌合部Aにおいて、外筒プリフォーム1の内面が内筒プリフォーム3の外面と密着し、これにより、外筒プリフォーム1と内筒プリフォーム3とがガタツキなく安定に保持されると共に、両者の間に確実なシールが形成され、以下に述べる空気導入路を確保することが可能となる。
【0021】
即ち、
図2から理解されるように、外筒プリフォームと内筒プリフォーム3とが密着している嵌合部Aの下側には、外筒プリフォーム
1に空気導入口7が形成されていると共に、この嵌合部Aの下側において、外筒プリフォーム1の内面と内筒プリフォーム3の外面との間に空隙13が設けられている。
この空隙13は、周方向の全体にわたって形成されており、かかる空隙13は、空気導入口7に通じている。即ち、この空隙13は、大気中から空気導入口7を通して外筒プリフォーム1の内面と内筒プリフォーム3の外面と
の間、具体的には、この多重プリフォーム20をブロー成形して得られる二重構造容器における外筒体と内袋との間の空間に空気を導入するための空気導入路として機能する。
【0022】
尚、上記のような空気導入路として機能する空隙13は、少なくとも固定領域Xの下端(固定領域Xと延伸成形領域Yとの境界部)まで延びていればよいが、一般的には、延伸成形領域Yの下端もしくはその近傍にまで延びていることが望ましい。即ち、延伸成形領域Yに形成されている空隙13は、容器に賦形するためのブロー成形によって閉塞してしまうのであるが、空隙13が延伸成形領域Yにまで延びていないと、内筒プリフォーム3を外筒プリフォーム1内に挿入する際、ベントが有効に行われず、この結果、
図1(a)に示されているように、内筒プリフォーム3を外筒プリフォーム1内に深く挿入することができず、嵌合部A等の形成が困難となってしまうおそれがある。
従って、延伸成形領域Yに形成される空隙13は、ベントが有効に行われる程度の微小な間隙でよい。
【0023】
再び
図1に戻って、上記のように内筒プリフォーム3が外筒プリフォーム1内に挿入し、嵌合部Aで固定する作業がスムーズに行われるようにするために、外筒プリフォーム1の外面は、サポートリング5が形成されている部分を除き、実質上ストレートな形態を有しているが、その内面は、固定領域Xから延伸成形領域Yにかけて、上方から下方にいくにしたがって縮径しているテーパー面1aとなっており(
図1(b)参照)、一方、これのテーパー面1aに対応して、内筒プリフォーム3の外面は,固定領域Xから延伸成形領域Yにかけて、上方から下方にいくにしたがって縮径しているテーパー面3aとなっており、このテーパー面3aを除く部分が、実質上ストレートな形態を有している(
図1(c)参照)。
即ち、外筒プリフォーム1及び内筒プリフォーム3が上記のような形態を有しているため、内筒プリフォーム3を外筒プリフォーム3の内部にスムーズに挿入し、
図1(a)に示すように、外筒プリフォーム1と内筒プリフォーム3とが安定に保持された多重プリフォーム20を組み合立てることが可能となる。
【0024】
上述した本発明においては、上記のような多重プリフォーム20を組み立てるために使用される外筒プリフォーム1及び内筒プリフォーム3は、何れも、熱可塑性樹脂の射出成形によって形成されるが、これらのプリフォーム1,3を成形するためには、両者が重なる部分での内径或いは外径を、嵌合部Aや空隙13が形成されるように、適宜の大きさに設定するのみでよく、例えば空気導入路として機能するような溝を形成するものではないため、各プリフォーム1,3を形成するための金型が、二重構造を有していない通常のブロー容器の成形に用いるものと同様、シンプルな形態とすることができ、割型の数を多くしたり、金型表面に凸凹加工を施すなどした複雑な金型を用いたりする必要はない。
また、嵌合部Aの嵌合の程度は、外筒プリフォーム1及び内筒プリフォーム3の芯の位置が定まる程度からしまりばめ状に完全に固定された状態まで、目的や成形上の都合に応じて適宜設定すればよい。
従って、本発明は、生産性、量産性、コストダウンの点で、極めて有利である。
【0025】
尚、上述した本発明において、空気導入路として機能する空隙13に連なる空気導入口7は、外筒プリフォーム1の壁部を穿孔して形成された孔であってもよいし(
図1では孔として示されている)、外筒プリフォーム1の上端から密封部Aの下側(空隙13が形成されている部分)まで延びている切欠きであってもよい。要するに、外部から空隙13にまで空気が流れるように空気導入口7が形成されていればよい。
【0026】
上述した外筒プリフォーム1と内筒プリフォーム3とから形成されている多重プリフォーム20は、それ自体公知の延伸ブロー成形に供され、例えば、
図3に示す二重構造容器が得られる。
【0027】
図3において、この二重構造容器は、全体として30で示されており、ノズル部31と、ノズル部31の下端から外方に広がった肩部33、肩部33から下方に降下している胴部35及び胴部の下端を閉じている底部37とからなっており、ノズル部31が、前述した多重プリフォーム20の固定領域Xに相当し(固定領域Xと全く同じである)、ノズル部31よりも下方に位置している肩部33、胴部35及び底部37が延伸成形領域Yをブロー成形して得られる部分となる。
【0028】
即ち、
図2に示す構造の多重プリフォーム20において、その固定領域Xをしっかりと固定し、その延伸成形領域Yを該プリフォーム20(外筒プリフォーム1及び内筒プリフォーム3)を形成している樹脂のガラス転移温度(Tg)以上、融点未満の温度に加熱し、次いで、該プリフォーム20の延伸成形領域Yをブロー型内に配置し、このプリフォーム20(内筒プリフォーム3)内にストレッチロッドを挿入して軸方向に延伸させ、同時に、ブロー流体(例えばエア)を吹き込んで周方向に膨張延伸させて、ブロー型による容器形状に賦形することにより、
図3に示す形態の二重構造容器30が得られる。
【0029】
従って、この二重構造容器30は、外筒プリフォーム1から得られる外筒体41と、内筒プリフォーム3から得られる内袋43とを有しており、多重プリフォーム20の固定領域Xと全く同じノズル部31では、その上部外面に内筒プリフォーム3(内袋43)に由来する螺条9と周状突部11とを有しており、周状突部11の下側には外筒プリフォーム1(外筒体41)に由来する空気導入口7と、周状突部11よりも大径のサポートリング5とを備えている。また、多重プリフォーム20の固定領域Xに形成されている空隙13は、そのままノズル3の内部に存在している。
【0030】
上記のような構造を有する二重構造容器30は、内袋43に内容物を収容した後、このノズル部31に逆止弁付キャップを装着して使用に供される。
【0031】
図4には、このような逆止弁付キャップが装着された上記容器30のノズル部31の状態が示されている。
即ち、全体として50で示されている逆止弁付キャップは、従来公知の構造を有しているものでよく、例えば、ノズル部31に被せられているキャップ本体51と、ノズル部31の上端の開口部に嵌め込まれている中栓53とを備えている。
尚、
図4では省略されているが、キャップ本体51には、通常、上蓋はヒンジ連結されており、この上蓋を開放した状態で内容物の排出が行われる。
【0032】
キャップ本体51は、頂板部55と、頂板部55の周縁から降下している筒状側壁57とから形成されている。
頂板部55には、中央部に内容物注出用の開口59が形成されており、この開口59の周縁から、注ぎ出される内容物の案内となる注出筒61が上方に延びている。また、この頂板部55には、注出筒61の外側となる位置に、空気導入用の開口63が形成されている。
さらに、筒状側壁57の内面には、二重結合容器30のノズル部31(内筒用プリフォーム3の固定領域X)の外面に設けられている螺条9と係合する螺子突起65が形成されており、螺条9と螺子突起65との螺子係合により、このキャップ本体51は、ノズル部31に被せられた状態で安定に保持される。
尚、螺条9および螺子突起65はそのどちらか、あるいは両側が断続的に切りかかれており、互いが係合している状態であっても、切り欠かれた部分を空気が流れるようになっている。また、筒状側壁55の下方部分は、その内面がノズル部31(外筒プリフォーム1の固定領域)のサポートリング5の上面から周縁部分にかけて密着しており、この部分から空気が漏洩しないようにされている。勿論、筒状側壁55の下方部分は、空気導入口7よりも下側の部分でノズル部31の外面(外筒プリフォーム1の固定領域)に密着していればよく、例えば外筒プリフォーム1の空気導入口7よりも下側かつサポートリングより上方に空気流路規制用の周状突起を設置し、ここで筒状側壁55の下方部分と密着していてもよい。
【0033】
一方、中栓53は、ノズル部31の開口部に嵌め込まれる筒状形状を有する第1の栓体71と、この第1の栓体71に嵌め込まれた第2の栓体73とから構成されている。
【0034】
第1の栓体71は、その下端部(底部)が第1の弁71aにより閉じられており、内容物の排出に際しては、容器内圧によって、この弁71aは上方に開き、開いた部分を内容物が通るようになっている。
また、第1の栓体71の上方部分には、外方に延びているフランジ71bが設けられており、このフランジ71bの下端がノズル部31の上端面にしっかりと密着することにより、第1の栓体71がノズル部31にしっかりと保持される。
【0035】
第2の栓体73は、この第1の栓体71の上部開口に嵌め込まれるため、第1の栓体1と同様、筒状形状を有しているが、その上端には、外方に延びている環状形状の第2の弁73aが設けられている。この第2の弁73aは、常態では、キャップ本体51の頂板部55に形成されている開口63を閉じるように位置しているが、内容物の排出終了後には、垂れ下がって開口63を開放し、この開口63を通って空気が流れるようになっている。
【0036】
即ち、
図4を参照して、内袋43に内容物が充填されている二重構造容器30から内容物を排出するには、逆止弁付キャップ50に設けられている上蓋を開けた後、この容器30の胴部35(外筒体41)の外面を押圧し、これを凹ませる。これにより、内袋43も凹まされ、その押圧力により、内袋43内の内容物は、第1の弁71aを上方に開け、矢線Pに示されているように、中栓53(第1の栓体71及び第2の栓体73)の内部を通り、さらに開口59及び注出筒61を通って外部に排出されることとなる。このように、内袋43内に充填された内容物は、内袋43が凹まされた分だけ排出されることとなる。
【0037】
一方、容器30の胴部35(外筒体41)の外面の押圧を停止すると、外筒体41は、元の形態に弾性復帰するが、内袋43は元の状態に弾性復帰しないため、内袋43と外筒体41との間に、大気圧よりも低い減圧状態の空隙が生じる。このため、第2の栓体73の第1の弁73aが下方に垂れ下がり、開口63が開放され、この結果、矢印Qに示されているように、空気が開口63を通ってノズル部31の外面とキャップ本体51(筒状側壁57)の内面との間を通り、ノズル部31(外筒体41、外筒プリフォーム1)に形成されている空気導入口7を通り、さらに空隙13(空気流路)から内袋43と外筒体41との間に形成される空隙に空気が導入されることとなる。
【0038】
このように、内袋43と外筒体41との間に形成される空隙に空気が導入された後、再び容器30の胴部(外筒体41)外面を押圧すると、空隙に導入された空気は、第2の弁73により開口63が閉じられるために外部に放出されることがなく、従って、内袋43は空気層を介して押圧されて凹み、この結果、再び、内袋43内の内容物は、上記と同様、凹まされた分だけ外部に排出されることとなる。
【0039】
このようにして、内袋43に充填された内容物は、押圧された凹んだ分ずつ排出されていくわけであるが、内容物が排出された場合にも内袋43内に空気が導入されることはなく、従って、内容物の酸化劣化が有効に防止され、この内容物の鮮度が有効に保持されることとなる。
【0040】
上述した説明から理解されるように、本発明の多重プリフォーム20から形成される二重構造容器30をデラミボトルとして利用する際には、外筒体41は、とくに、その胴部が外部から押圧されたときに凹むが、押圧が解除されたときには、弾性により元の形態に復帰するような厚みに形成される。一方、内袋43は、薄肉であり、外部からの圧力により容易に凹み、さらに外部からの圧力が解除されたときにも原形に復帰することはない。従って、外筒体41を形成するための外筒プリフォーム1の延伸成形領域Yでは、ブロー成形により、そのような厚みとなるように厚く形成され、内袋43を形成するための内筒プリフォーム3の延伸成形領域Yでは、その厚みは薄く設定される。
また、内袋43をある程度の弾性を有するような厚みに設定し、外筒体と41と内袋43の間に一定の空気層を設けることで二重構造容器30を断熱ボトルとして利用することも可能である。
【0041】
なお、上述した
図1から
図4の例では、内筒プリフォーム3の上部外面に螺条9(キャップ固定用突起)が形成されており、螺子係合によりキャップが装着されるような構造となっているが、本発明では、もちろんキャップを嵌合固定する構造を採用することもできる。
このような形態の二重構造容器形成用プリフォームでは、
図5に示されているように、内筒プリフォーム3の上端部に大径突部80が形成されており、キャップを嵌め込んだ時、この大径突部80の外面にキャップのスカート内面が密着する構造となっている。この場合、外筒プリフォーム1の上端は、上記の大径突部80の下面に当接することにより、その上端位置が規制される。即ち、大径突部80は、キャップを嵌合固定する機能と外筒プリフォーム1の上端を規制する機能とを兼用している。
【0042】
本発明において、外筒体41を形成するための外筒プリフォーム1や内袋43を形成するための内筒プリフォーム3は、上記のようにブロー成形が可能であるかぎり、種々の熱可塑性樹脂で形成することができる。
このような熱可塑性樹脂としては、例えば、以下のものを例示することができる。
オレフィン系樹脂、例えば、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ1−ブテン、ポリ4−メチル−1−ペンテンあるいはエチレン、プロピレン、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン等のα−オレフィン同士のランダムあるいはブロック共重合体、環状オレフィン共重合体など;
エチレン・ビニル系共重合体、例えば、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・ビニルアルコール共重合体、エチレン・塩化ビニル共重合体等;
スチレン系樹脂、例えば、ポリスチレン、アクリロニトリル・スチレン共重合体、ABS、α−メチルスチレン・スチレン共重合体等;
ビニル系樹脂、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、塩化ビニル・塩化ビニリデン共重合体、ポリアクリル酸メチル、ポリメタクリル酸メチル等;
ポリアミド樹脂、例えば、ナイロン6、ナイロン6−6、ナイロン6−10、ナイロン11、ナイロン12等;
ポリエステル樹脂、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、及びこれらの共重合ポリエステル等;
ポリカーボネート樹脂;
ポリフエニレンオキサイド樹脂;
生分解性樹脂、例えば、ポリ乳酸など;
勿論、成形性が損なわれない限り、これらの熱可塑性樹脂のブレンド物を、下地樹脂として使用することもできる。
本発明において、特に好適に使用される熱可塑性樹脂は、ポリエステル系樹脂及びオレフィン系樹脂であり、さらに、用途上外筒体41と内袋43の間には空気が流入するため、外筒体41を形成する外筒プリフォーム1には水分及びガスバリア性は必ずしも必要ではなく、水分及びガスバリア性の低いポリ乳酸も好適に使用することができる。
【0043】
また、成形される外筒体41や内袋43にガスバリア性を付与するために、これらを形成するための外筒プリフォーム1や内筒プリフォーム3を多層構造とすることもできる。
例えば、前述したポリエステル系樹脂やオレフィン系樹脂(或いはポリ乳酸)等から形成された内外層の間に中間層として、エチレンビニルアルコール共重合体(エチレン酢酸ビニル共重合体ケン化物)や芳香族ポリアミドなどのガスバリア性樹脂を用いて形成されるガスバリア層を設けることが好ましく、特にエチレンビニルアルコール共重合体によるガスバリア層を設けることが最も好適である。即ち、中間層としてガスバリア層を設けることにより酸素バリア性を付与することができ、特にエチレンビニルアルコール共重合体は、特に優れた酸素バリア性を示すため、酸素透過による内容物の酸化劣化をも有効に抑制することができ、優れた内容物保存性を確保することができる。
【0044】
また、上記のようなガスバリア層を設ける場合には、内外層との接着性を高め、デラミネーションを防止するために、接着剤樹脂層を設けることもでき、これにより、中間層のガスバリア層をしっかりと内外層に接着固定することができる。このような接着樹脂層の形成に用いる接着剤樹脂はそれ自体公知であり、例えば、カルボニル基(>C=O)を主鎖若しくは側鎖に1乃至100meq/100g樹脂、特に10乃至100meq/100g樹脂の量で含有する樹脂、具体的には、マレイン酸、イタコン酸、フマル酸などのカルボン酸もしくはその無水物、アミド、エステルなどでグラフト変性されたオレフィン樹脂;エチレン−アクリル酸共重合体;イオン架橋オレフィン系共重合体;エチレン−酢酸ビニル共重合体;などが接着性樹脂として使用される。
【0045】
本発明においては、特に内袋43に高い酸素バリア性も付与することが好ましく、従って、内筒プリフォーム3に、上述した多層構造を採用し、外筒体41を形成する外筒プリフォーム1にはポリ乳酸のようなバイオプラスチックを用いることで性能、環境面ともに好適である。
【0046】
上述した本発明の多重プリフォーム20から得られる二重構造容器は、長期間にわたって高い鮮度を保持することができ、しかも、内容物を小出しできることから、醤油等の調味液用の容器として極めて有用である。