(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態に係る光学フィルタの構造について詳細に説明する。
【0012】
図1には本発明の実施形態に係る光学フィルタの構成図を一例として示す。
本発明の光学フィルタは、所望の光波長において透明な透明基板上の少なくとも一方面上に設けられた光学調整層を、金属A、金属Aの酸化物AO及び金属Aの窒化物ANからなる群から選択される第1及び第2光吸収層と、これら第1及び第2光吸収層の間に形成された金属Aとは異なる金属元素である金属Bの酸化物BO又は窒化物BNの化合物で形成された多層構造の中間層とで構成することで得られる。
【0013】
そして、本発明では、多層構造からなる中間層の内、第1光吸収層側の層は、第2光吸収層側の層と比較して、可視光波長領域における消衰係数が大きく、且つ、膜厚が薄くなっている。更に、好ましくは、光学フィルタの最表層に反射防止層を形成する。
【0014】
ここで、本発明における光学調整層は、上述したように、第1及び第2光吸収層とこれらの間に設けられる多層構造の中間層とで1つの光学調整層を構成しているが、例えば、基板上に複数の光学調整層を設ける場合には、光吸収層と中間層とを交互積層し、1つの光吸収層及び中間層で1つの光学調整層としてもよい。また、複数の光学調整層を設ける場合には、中間層は1層構造のものと多層構造(2層またはそれ以上の層構造)のものとを組み合わせてもよい。
【0015】
なお、本発明では、基板の少なくとも一方面上に1つ又は複数の光学調整層を設けて光学フィルタを構成してもよいが、基板の両面に1つ又は複数の光学調整層をそれぞれ設けて光学フィルタを構成してもよい。1つ又は複数の光学調整層、そして反射防止層を合わせて光量調整膜とする。
【0016】
以下に本発明の光学フィルタを構成する要素についてそれぞれ説明する。
(透明基板)
本発明に使用する透明基板としては、所望の光波長領域において透明な基板であれば、任意の基板を使用することが可能である。例えばガラスや水晶などの無機材料からなる基板や、ポリエステル系、ノルボルネン系、ポリエーテル系、アクリル系、スチレン系、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PES(ポリエーテルスルホン)系、ポリスルホン系、PEN(ポリエチレンナフタレート)系、PC(ポリカーボネート)系、及びポリイミド系などの様々な合成樹脂基板を使用することができる。
【0017】
合成樹脂基板は、ガラスなどの無機基板に比べ、柔軟で軽く、加工性が良いが、膜応力や熱応力による変形や、水分による特性変化を起こしやすい。このため、合成樹脂基板を用いる場合は、高耐熱性(高ガラス転移温度Tg)、高曲げ弾性率、低吸水性の材料を用いることが望ましい。例えば、高耐熱性基板としてポリイミド系やPES系、曲げ弾性率が大きい基板としてはPET、低吸水性基材としてはノルボルネン系などが挙げられる。また、必要に応じて、有機−無機ハイブリッド材料からなる基板、例えばシルセスキオキサン骨格を有する基板などを用いてもよい。
【0018】
なお、本発明において透明な基板とは少なくとも可視光波長において光透過性を有している基板であり、例えば紫外線波長領域や赤外波長領域において光吸収性を有している基板を用いてもよい。このような基板としては例えば、ガラスや樹脂に紫外線吸収剤を練り込んだ紫外線吸収基板、ガラスや樹脂に、赤外吸収性能を有する染料、顔料、銅に代表される金属イオンなどを練り込んだ赤外吸収基板などが挙げられる。
【0019】
また、基板の厚みとしては、小型・軽量化を考慮すると、剛性を保てる範囲で、できるだけ薄い方が好ましく、具体的には20μm〜1mm、25μm〜400μm程度が好適である。尚、光干渉薄膜積層体によって形成される透過帯域以外に光吸収を有する基板を用いる場合は、基板の光吸収特性も考慮し、基材厚みを決定する。
【0020】
(第1及び第2光吸収層)
本発明の第1及び第2光吸収層は、光吸収特性を有する金属A、金属Aの酸化物(AO)、金属Aの窒化物(AN)からなる群から選択される少なくとも1つの光吸収材料が挙げられ、この光吸収材料としては、具体的には、Ti、Ni、Cr、Fe、Nb、Ta、等の金属Aや合金、酸化物、窒化物などを用いることができる。
【0021】
なお、第1光吸収層と第2光吸収層とは、互いに同じ光吸収材料を用いて形成してもよいが、別の光吸収材料によって形成してもよい。本第1及び第2光吸収層として金属Aを利用する場合は、プラズマ振動数が光吸収を発現したい波長領域の光の振動数よりも大きいことが好ましい。
【0022】
ここで、プラズマ振動数とは、金属の自由電子がプラズマ振動をする限界の振動数を指す。プラズマ振動数が光の振動数よりも大きい時、光が金属内へ侵入するのを防ぎ、反射させる。反対に、光の振動数がプラズマ振動数よりも大きいと、光は金属内に侵入し、金属によって吸収される。このため、金属Aのプラズマ振動数が光吸収を発現したい波長領域の光の振動数よりも大きい材料を選択することで、所望の領域においてより透過率平坦性の高い光学フィルタとすることができる。
【0023】
第1及び第2光吸収層として金属Aの酸化物(AO)、金属Aの窒化物(AN)を用いる場合、第1及び第2光吸収層の消衰係数が0.5以上であることが好ましい。ここで、消衰係数とは、物質に光が入射した場合、光がどれだけ減衰されるかを示したものであり、この値が大きいほど、入射光は強く減衰されることになる。
【0024】
ここで、金属や合金などと比較すると、金属Aの酸化物(AO)あるいは金属Aの窒化物(AN)は消衰係数が小さい。第1及び第2光吸収層において、消衰係数が小さすぎると、所望の光量を減衰させるのに必要な層数や膜厚が厚くなり、光学フィルタの反りやクラックなどの要因になるためである。更に、第1及び第2光吸収層は金属Aの酸化物(AO)あるいは金属Aの窒化物(AN)からなる層であることが好ましい。金属酸化物あるいは窒化物は金属と比較し、消衰係数が小さいため、各層の膜厚をある程度厚く保つことができる。
【0025】
このため、膜設計の自由度が高まると共に、光吸収層の膜厚制御の安定性が向上し、分光特性が良好で且つ、光学特性の再現性の良い光学フィルタとすることができる。金属Aの酸化物(AO)あるいは金属Aの窒化物(AN)を第1及び第2吸収膜に使用する場合は、特にチタン酸化物(TiOx 0<x<2)を使用するのが好適である。TiOxは可視領域の吸収特性が比較的リニアであり、より透過率特性の平坦な光学フィルタとすることができるためである。
【0026】
なお、第1及び第2光吸収層は真空蒸着、イオンプレーティング法、イオンアシスト法、など既知の様々な手法で成膜できる。
【0027】
(中間層)
本発明の中間層は、第1及び第2光吸収層の間に形成された金属Aとは異なる金属元素である金属Bの酸化物BO又は窒化物BNの化合物から形成され、例えば、Si、Al、Mg、La、Zr、Ti、Nb、Taなどの酸化物、窒化物あるいは酸化窒化物から形成される。中間層は、本発明では多層構造、例えば、第1中間層と第2中間層とで形成する場合、第1中間層と第2中間層とは同系の材料を用いてもよいし、別の材料を用いてもよい。
【0028】
中間層は多層構造を有し、例えば、2層(第1及び第2中間層)で構成した場合、第1中間層を第1光吸収層上に形成し、この第1中間層上に第2中間層を形成する。そして、この第2中間層上に第2光吸収層を形成することにより、1つの光学調整層が形成される。
【0029】
この場合、第1中間層の可視光波長領域における消衰係数が、第2中間層の可視光波長領域における消衰係数よりも大きくなるように第1中間層を設ける。このとき、第1中間層を形成する化合物の消衰係数と、第2中間層を形成する化合物の消衰係数とは、同一の波長で大小関係が定義される。
【0030】
なお、中間層は3層以上設けてもよい。その場合には、各中間層を形成する化合物を同系の材料とすることで、屈折率差の低減や密着性などの向上に有利である。
【0031】
例えば、酸化チタンの酸化物(TiO
x)で形成された第1光吸収層上において第1中間層と第2中間層とを酸化アルミニウムでそれぞれ積層する場合、その第1中間層を形成する酸化アルミニウム(Al
2O
y)の酸化数よりも第2中間層を形成する酸化アルミニウム(Al
2O
z)の酸化数を大きく、すなわち、y<zの条件を満たすように形成する。第2中間層は例えばAl
2O
3となるように形成し、可視光波長における消衰係数が極力小さくなるようにすることが好ましい。
【0032】
例えば、第1中間層成膜時には、反応性ガスを導入しないで成膜し、第2中間層成膜時には酸素などの反応性ガスを十分に導入しながら成膜することで、第1中間層の可視光波長領域における消衰係数が、第2中間層の可視光波長領域における消衰係数よりも大きくなり、更に第2中間層の可視光波長領域における消衰係数がゼロに近くなる。なお、第1中間層成膜時に反応性ガスを導入しないことで、第1吸収層の消衰係数が中間層成膜時に変動することを抑制することができる。
【0033】
ここで、第1中間層の消衰係数を第2中間層と比べて大きく設定すると、第1中間層の光吸収率が大きくなるが、本発明では、光学フィルタの光吸収特性への変動要因を最小化するため、第1中間層の厚さを第2中間層よりも極力薄く、好ましくは第2中間層の半分以下の厚さ、より好ましくは1/4以下の厚さとするのが良い。
【0034】
すなわち、第2中間層よりも大きい消衰係数となるように第1中間層を設けて、第2中間層成膜による第1光吸収層の消衰係数の変動を抑え、加えて第1中間層の厚さをなるべく薄くして光学フィルタの光吸収特性に対する影響を最小化し、更に第2中間層の消衰係数が実質ゼロになるように第2中間層を設けることにより、光学フィルタ全体の光吸収特性は、第1及び第2光吸収層によって定めることができる。つまり、中間層に影響されず、安定した光量調整の機能が第1及び第2光吸収層によって得られる。
【0035】
また、第1中間層の消衰係数は0.1以下であることが好ましい。消衰係数が0.1より大きいと、光学フィルタの透過率特性に与える影響が大きくなり、透過率特性の著しい悪化を招く虞があるためである。
【0036】
更に、上述のように第1中間層は第2中間層よりも膜厚が薄く、具体的には60Å〜200Åであることが好ましい。60Åよりも膜厚が薄いと、第1中間層は海島構造となり、十分な層を形成しない虞があり、第2中間層成膜時に導入される反応性ガスによる第1光吸収層の酸化あるいは窒化を十分に防止できないことがある。一方、200Åよりも厚いと、第1中間層の有する可視光波長領域における微小な光吸収特性が光学フィルタの透過率平坦性に悪影響を与える虞がある。
【0037】
中間層は、光学フィルタの透過率平坦性をよりフラットにするための機能を有する。光吸収層の消衰係数は、可視光波長領域において必ずしも均一ではない。このため、光吸収層全体で吸収する光量を可視光波長領域で略均一とするために、光吸収層と中間層との界面で光干渉を起こさせ最適な条件で光を透過或は反射させる必要がある。
【0038】
光吸収層の材質や必要とされる透過率平坦性にもよるが、光吸収層と中間層との界面で最適な光干渉を得るには、中間層として60〜1500Å程度の膜厚が必要となる。前述のように第1中間層は消衰係数が大きいため、中間層の膜厚が200Åより大きくなる場合は第1中間層と第2中間層の多層構造とし、第1中間層の膜厚を200Å以下とすることが好ましい。
【0039】
ここで、中間層を第1及び第2光吸収層の間に形成された金属Aとは異なる金属元素である金属Bの酸化物BO又は窒化物BNの化合物としたのは、光吸収層と中間層との屈折率差を効果的に持たせるためである。
【0040】
前述のように、光学フィルタの透過率平坦性向上には光吸収層と中間層との光干渉効果を利用する必要があるが、光吸収層と中間層とが同一の金属元素からなる場合、十分な屈折率差を得ることができない虞があり、効果的な光干渉作用を得られないことがあるためである。
【0041】
第1及び第2中間層は、具体的には、真空蒸着、イオンプレーティング法、イオンアシスト法、など既知の様々な手法で成膜できる。例えば、第1及び第2中間層は、金属Bあるいは金属酸化物BOを出発材料として、第一中間層は酸素などの反応性ガスを導入しないで成膜し、第2中間層は十分な酸素あるいは窒素からなる反応性ガスを導入して成膜される。
【0042】
第1及び第2中間層は同じ金属Bから形成される金属酸化物BOあるいは金属窒化物BNからなる化合物であることが好ましい。同じ金属から形成することで、第1及び第2中間層の屈折率差を非常に小さくすることができ、第1及び第2中間層との光干渉により光学フィルタの透過率特性が悪化することを抑制することができる。
【0043】
更に、第1及び第2中間層が同じ金属Bからなる金属酸化物BOあるいは金属窒化物BNからなる化合物とすることで、第1及び第2中間層の密着を強固なものとすることが可能となる。
【0044】
(反射防止層)
本発明の光学フィルタの最表層には、好ましくは反射防止層を形成する。反射防止層はSiO
2やMgF
2などの屈折率の小さい材料からなり、反射を抑制する波長領域の中心波長をλとした時、光学膜厚がλ/4程度となるように成膜される。ここで、光学膜厚とは、屈折率と物理膜厚の積で表される。反射防止層は真空蒸着法やイオンプレーティング法、イオンアシスト法、など既知の様々な手法で成膜できる。なお、反射防止層は必要に応じて屈折率の異なる複数の薄膜から形成されていてもよい。複数の薄膜から形成される場合も、最表層の光学膜厚はλ/4程度であることが好ましい。ここで、λ/4程度とは0.7〜1.3λ/4程度の膜厚を指す。
【0045】
<実施例1>
図2に本実施例に係る光学フィルタの構成図を示す。本実施例の光学フィルタは透明基板の両面に複数の光学調整層と反射防止層からなる光量調整膜8が形成された構成となっている。表1に実施例1に係る光学フィルタの設計例を設計例1として示す。
【0046】
設計例1の光学フィルタ11は、厚み75μmのPET基板からなる透明基板に、TiO
x(0<x<2)からなる第1及び第2光吸収層と、Al
2O
y(第1酸化物)からなる第1中間層とAl
2O
z(第2酸化物)からなる第2中間層が形成されている。
【0047】
ここで、y<zであり、Al
2O
yの可視光波長における消衰係数はAl
2O
zの可視光波長における消衰係数よりも大きい。更に、最表層にMgF2からなる反射防止層が形成されている。
【0048】
本実施例の光量調整膜8は、全ての光学調整層の光吸収層がTiO
x、第一中間層が第1化合物Al
2O
y、第2中間膜が第2化合物Al
2O
zとなっている。
図3に設計例1の光学フィルタの分光透過率特性を示す。
【0050】
本実施例の光学フィルタの製造方法について説明する。実施例1の光学フィルタは真空蒸着法によって作製した。先ず、PET基板を成膜治具にセットし、PET基板の成膜する面を蒸着材料と対向するように蒸着ドームに取り付ける。蒸着ドームを蒸着チャンバーに投入し、排気を行う。蒸着チャンバー内が所望の真空度、例えば1.0×10
−3Pa程度となったら、第1光吸収層の成膜を開始する。
【0051】
第1光吸収層はチタン酸化物を出発材料とし、電子ビームにて坩堝に納められたチタン酸化物を加熱し、PET基板に蒸着させる。チタン酸化物はTiO
x膜としてPET基板に蒸着される。本実施例では第1光吸収層成膜時に酸素などの反応性ガスを導入しなかったが、必要に応じて適宜導入してもよい。
【0052】
続けて、第1光吸収層を所望の膜厚で成膜したら、次に第1中間層を成膜する。第1中間層は出発材料に酸化アルミニウムを用いる。坩堝に充填された出発材料である酸化アルミニウムを電子ビームで加熱し、酸素ガスを導入しないで蒸着させる。
【0053】
酸素ガスを導入しないで成膜すると、電子ビームのエネルギーによって発生した出発材料である酸化アルミニウムの酸素欠損が、PET基板到達までの間に十分に補完されずに成膜される。第1中間層成膜時に酸素ガスを導入しないことで、第1吸収層の消衰係数の変動を抑制して、中間層を形成することができる。
【0054】
更に、第1中間層の成膜が終了したら、第2中間層の成膜を行う。第2中間層は第1中間層と同じく、出発材料に酸化アルミニウムを用いる。第2中間層は、電子ビームによって出発材料である酸化アルミニウムを加熱し、チャンバー内の圧力が3.0×10
−3Paとなるように酸素ガスを導入し成膜を行う。
【0055】
このように成膜することで、電子ビームのエネルギーによって発生した出発材料の酸化アルミニウムの酸素欠損が、チャンバー内に導入された酸素によって十分に補完された層とすることができる。
【0056】
なお、本実施例では、第2中間層成膜時の圧力を3.0×10
−3Paとしたが、これに限らず成膜レートや成膜開始時の圧力に応じて最適な酸素ガス導入量とすればよい。ここで、第1中間層は第2中間層よりも膜厚が薄い構成となっている。
【0057】
第1中間層と第2中間層は共にアルミニウムの酸化物だが、第1中間層は酸素欠損が生じた状態となっており、可視光波長領域に弱い吸収を有しているため、第1中間層を厚膜とすると光量調整膜の透過率平坦性を悪化させる虞があるためである。
【0058】
続けて、第2中間層の成膜が終わったら、第2吸収層であるTiO
xを成膜する。第2吸収層は第1吸収層と同じ要領で成膜することができる。前述の要領で光吸収層と中間層を順次成膜していき、9層目の成膜が終わったら、反射防止層を形成する。なお、このような反射防止層は設けなくてもよい。
【0059】
本実施例では反射防止層としてMgF
2を成膜した。反射防止層は出発材料である弗化マグネシウムが充填された坩堝を電子ビームにより加熱し、MgF
2を所望の膜厚で成膜する。反射防止層の成膜が終わったら、ベントを行い、蒸着機チャンバー内の圧力を常圧とし、PET基板を取り出す。更に、PET基板の反対面にも同様に光吸収層、中間層及び反射防止層からなる光量調整膜を形成する。
【0060】
特に、本実施例の様に、透明基板として樹脂製基板などを用いる場合は、透明基板の両面に光量調整膜を設けることが好ましく、基板の両面に設けられた光量調整膜が略同一の設計であることが更に好ましい。このような構成とすることで、透明基板として比較的剛性の低い樹脂基板を用いても、反りやうねりの小さい光学フィルタとすることができる。
【0061】
本実施例では、同一設計の光量調整膜が透明基板の両面に形成された光学フィルタとしたが、光量調整膜が透明基板の片方のみに構成されていてもよいし、それぞれの面で異なる膜設計の光量調整膜としてもよい。また、基板の一方の面のみに光量調整膜が形成されていてもよい。
【0062】
また、透明基板と光量調整膜との界面に下地層を設けてもよい。下地層としては金属の酸化物が好ましく、例えばSiO
2やAl
2O
3、TiO
2などが好適である。下地層としては、光量調整膜の透過率平坦性に影響を与えないことが好ましく、可視光波長領域において光吸収性が小さいことが好ましい。
【0063】
具体的には、第2中間層と同程度の酸化数、即ち、略完全に酸化した金属酸化物であることが好ましい。これらの下地層を設けることで、透明基板と光量調整膜との密着性を向上させることができる。更に、特に本実施例の様にガラス製と比較して吸水率の大きい樹脂製の透明基板を用いた場合、下地層を設けることで、透明基板から第一層へ水蒸気や酸素などが移動するのを抑制する効果も期待できる。
【0064】
なお、設計例1では、全ての中間層が多層構造となっているが、例えば表2の設計例2で示すように、一部の中間層が1層からなる構成であってもよい。設計例2では4層目と6層目の光吸収層の間に存在する中間層がAl
3O
yのみとなっている。
【0065】
設計例2においては、5層目の中間層に求められる膜厚が十分に薄く、5層目の中間層の酸素欠損による光吸収は、光量調整膜の平坦性に影響を与えないレベルの膜厚であるためである。
図3に設計例2の光学フィルタの分光透過率特性を示す。
【0067】
設計例1では、第1中間層と第2中間層を共に金属酸化物(Al
2O
yまたはAl2O
z)としたが、設計例3で示すように、例えば第1中間層を第1化合物SiO
n、第2中間層を第2化合物Si
3N
mの様に、一方を金属酸化物(第1酸化物)、もう一方を金属窒化物(第2窒化物)としてもよい。この場合も、第1中間層の可視光波長領域における消衰係数は、第2中間層の可視光波長領域における消衰係数よりも大きく、且つ、第1中間層は第2中間層よりも薄い層となっている。
【0068】
なお、第2中間層のSi
3N
mは十分に窒化した状態、即ちSi
3N
4となるように成膜され、可視光波長領域における消衰係数が略ゼロであることが好ましい。ここで、SiO
nは酸化ケイ素を出発材料として、電子ビームにより酸化ケイ素を加熱し、反応性ガスを導入することなく成膜することで得られ、窒化膜SiN
mはケイ素を出発材料とし、電子ビームによって出発材料であるケイ素を加熱し、チャンバー内の圧力が8.0×10
−3Paとなるように窒素ガスを導入し成膜することで得られる。
【0069】
このように成膜することで、中間層成膜による第1光吸収層の消衰係数の変動を抑制することができ、光学特性の安定した光学調整膜とすることができる。
図3に設計例3(表3)の光学フィルタの分光透過率特性を示す。
【0071】
光量調整膜は、面方向に段階的あるいは連続的に透過率が変化する領域を有していてもよい。段階的に透過率濃度の異なる光学フィルタは、例えば、光学調整膜を成膜する際に、開口の異なる複数の成膜マスクを使用することで作製できる。
【0072】
成膜マスクは、透明基板に形成される蒸着膜の範囲を決定するもので、成膜マスクの開口が透明基板への成膜領域となる。開口の異なる複数の成膜マスクを使用して、複数回蒸着をすることで、それぞれの蒸着工程で成膜される領域が異なるため、段階的に透過率の異なる光量調整膜とすることができる。
【0073】
透過率が連続的に変化する光学フィルタは、例えば、光量調整膜の透過率を主に決定している光吸収層の膜厚を面方向で連続的に変化さたり、光吸収層の成膜時の反応性ガス導入量を調整し面方向で酸化数あるいは窒化数を連続低に変化させることで作製できる。
【0074】
なお、段階的あるいは連続的に透過率が変化する場合、光吸収層の成膜されていない領域、即ち略透明な領域が光学フィルタ内に存在することが好ましい。段階的あるいは連続的に透過率が変化する光量調整膜は前述した手法に限らず、すでに既知の様々な方法で作製可能である。
【0075】
<実施例2>
図4には本実施例に係る光学フィルタの構成図を示す。本実施例の光学フィルタは透明基板1の一方の面に光量調整膜8、もう一方の面に反射防止膜9が構成された構成となっている。表4に実施例2に係る光学調整フィルタの設計例を設計例4として示す。
【0076】
本実施例の光学フィルタは、透明基板である板厚400μmのガラス基板(B270i:ショット社製)の一方の面に光吸収層及び中間層からなる光学調整層が形成されており、もう一方の面に複数層からなる反射防止膜が形成された構成となっている。設計例4の光学フィルタは
図5に示したような分光透過率特性を有し、可視光波長領域における分光透過率が略均一となっている。
【0078】
設計例4の光学調整膜は光吸収層としてTiO
x及びTiを用いている。設計例4では透明基板の片面のみで光を減衰することが光量調整膜に求められる。このため、設計例4では、光吸収層の一部に金属膜であるTiを使用した。TiはTiO
xと比較し消衰係数が大きく、Tiを使用することで、光吸収層のトータル膜厚を薄くすることができる。
【0079】
Tiは蒸着材料として金属チタンを使用し、金属チタンを充填した坩堝に電子ビームを照射し、成膜時に酸素ガスなどの反応性ガスを導入することなく成膜することで形成される。他の光吸収層であるTiO
x、第1及び第2中間層に関しては、実施例1と同様の条件で成膜した。
【0080】
なお、設計例4では光吸収層の一部のみを金属膜としたが、光吸収層の全ての層を金属膜としてもよいし、金属膜を使用しなくてもよい。また、第1吸収層と第2吸収層を形成する金属元素が異なっていてもよい。
【0081】
ここで、反射防止膜について説明する。設計例4において反射防止膜は、透明基板の光量調整膜が成膜されていない面の表面反射を抑制するために設けられる。反射防止膜は屈折率の異なる複数の薄膜を積層することで形成され、設計例4ではTiO
2とSiO
2が交互に4層積層されている。
【0082】
設計例4ではTiO
2とSiO
2を用いているが、これらに限らずMgF
2、SiO、Si
3H
4、Al
2O
3、MgO、LaTiO
3、ZrO
2、Nb
2O
5、Ta
2O
5など様々な材料を任意に組み合わせて使用することができる。
【0083】
反射防止膜の最表層は、低屈折率材料とすることが好ましく、実施例4ではSiO
2としているが、MgF
2も好適に使用できる。本実施例において、反射防止膜を複数層からなるものとしたのは、光量調整膜の透過率平坦性に極力影響を与えないようにするためである。
【0084】
単層の反射防止膜は、中心波長において反射率が最も低くなり、中心波長から遠ざかるにつれて徐々に反射率が上昇する。すなわち、単層から形成される反射防止膜の場合、反射防止膜の中心波長から遠ざかるに従い、反射防止膜の影響で光学フィルタの透過率が低くなり、透過率平坦性の悪化を招く虞がある。一方、反射防止膜を複数層からなる積層構造とすることで、単層の反射防止膜と比較して広い波長範囲で反射を抑制することができ、光学フィルタの透過率平坦性を著しく悪化することを抑制することができる。
【0085】
本実施例では第1中間層と第2中間層に金属酸化物を用いたが、設計例2の様に、単層の中間層を含んでいてもよいし、設計例3の様に第一中間層に金属酸化物、第2中間層に金属窒化物を用いてもよい。なお、実施例1と同様に、本実施例における光量調整膜においても、段階的あるいは連続的に透過率が変化する領域を有していてもよい。
【0086】
<実施例3>
図6に本実施例に係る光学フィルタの構成図を示す。本実施例の光学フィルタは、透明基板の一方の面に光量調整膜、もう一方の面に赤外カット膜が形成された構造となっている。表5に実施例3に係る光学フィルタの設計例を設計例5として示す。
【0087】
本実施例の光学フィルタは、可視光を略透過し、赤外光波長領域に吸収機能を有する板厚400μmの赤外吸収ガラス(NF50T:旭硝子社製)を透明基板1とし、赤外吸収ガラスの一方の面に、光吸収層及び中間層からなる光学調整層を有する光量調整膜8が形成されており、もう一方の面に屈折率の異なる複数の薄膜の積層体からなる赤外カット膜10が形成されている。設計例5の光学フィルタの分光特性を
図7に示す。
【0088】
設計例5の光学フィルタは、光量調整膜により可視光波長領域の透過率が略均一に減衰されると同時に、赤外カット膜によって近赤外光波長領域の光の透過が遮蔽されている。
【0090】
本実施例の光学フィルタの製造方法について説明する。赤外吸収ガラスを成膜治具にセットし、実施例1と同様の方法で赤外吸収ガラスの一方の面に光量調整膜を形成する。次に、赤外吸収ガラスの光量調整膜を形成した面とは反対面に赤外カット膜を形成する。
【0091】
ここで、赤外カット膜について説明する。赤外カット膜は屈折率の異なる複数の薄膜積層構造体である。薄膜の屈折率差を利用して光干渉を発現させ、赤外光波長領域の光を反射するように積層される。薄膜材料としては、MgF
2、SiO
2、SiO、Si
3H
4、Al
2O
3、MgO、LaTiO
3、ZrO
2、TiO
2、Nb
2O
5、Ta
2O
5などを用いることができる。
【0092】
赤外カット膜は、赤外カット膜によって形成されるカット波長領域における中心波長をλとすると、光学膜厚がλ/4程度、具体的には0.7〜1.3λ/4程度の屈折率の異なる無機薄膜が複数積層された構造を基本構成としている。但し、透過帯域のリップルを低減するためにλ/4から大きく離れた層を有していても良い。特に透明基板との界面にリップルを低減する層を複数層形成することが効果的である。
【0093】
赤外カット膜は
図8に示したような分光特性を有しており、透過領域からカット領域へと遷移する遷移波長領域を有し、この遷移波長領域中に透過率が50%となる赤外半値波長が存在する。本実施例で使用したような赤外吸収ガラスも赤外半値波長を有しているが、赤外カット膜によって形成される赤外半値波長が赤外吸収ガラスの赤外半値波長よりも長波長側に存在するようにすることが好ましい。
【0094】
赤外カット膜と比較し、赤外吸収ガラスの赤外半値波長は製造方法的にバラつきが発生しにくい。このため、主に赤外吸収ガラスにより赤外半値波長が決定する構成とすることで、赤外半値波長の安定した光学フィルタとすることができる。
【0095】
赤外カット膜においては薄膜の屈折率差が大きい方が、所望の分光特性を得るのに必要な積層数が少なくなるため、極力屈折率差の大きい組み合わせとするのが好ましく、本実施例ではSiO
2とTiO
2により赤外カット膜を形成した。この組み合わせとしたのは、実質的に屈折率差が最も大きくなる組合せであるためである。
【0096】
赤外カット膜は次のように作製する。赤外吸収ガラスの光学調整層を形成した面とは反対の面が、蒸着材料と対応するように蒸着ドームにセットし、蒸着チャンバー内の圧力が1.0×10
−3Paになるまで排気を行う。チャンバー内の圧力が1.0×10
−3Paに到達したら、坩堝に充填されたSiO
2層の出発材料である酸化ケイ素を電子ビームにより加熱し、蒸着させる。
【0097】
この時、蒸着チャンバー内にプラズマを発生させ、蒸着成分がプラズマ雰囲気を通って赤外吸収ガラスへと到達するように成膜する。SiO
2層が所定の厚みとなったら、次にTiO
2層を形成する。TiO
2層の出発材料には酸化チタンを用い、坩堝に充填された酸化チタンを電子ビームにて加熱し、SiO
2層成膜時と同様に蒸着チャンバー内にプラズマを発生させ、プラズマ雰囲気を通過した蒸着成分が赤外吸収ガラスに到達するように成膜する。このように所望の積層数SiO
2層とTiO
2層を交互に積層していく。
【0098】
設計例5では、赤外カット膜を一方の面に積層したが、
図9(a)に示すように透明基板1のそれぞれの面に分割して赤外カット膜10a,赤外カット膜10bを成膜してもよい。赤外カット膜10を分割して成膜する場合は、
図10に示すように、透明基板のそれぞれの面に形成する赤外カット膜10a、10bのカット波長が異なり、且つ、少なくとも一部が重なるような光学特性とすることが好ましい。このように形成することで、効率的に赤外光波長をカットすることが可能となると共に、赤外波長領域でカット機能が不十分な領域をなくすことができる。
【0099】
更に、設計例5では透明基板の一方の面に光量調整膜を形成したが、
図9(b)に示すように透明基板の両面に光量調整膜8a、光量調整膜8bを形成してもよい。この時、透明基板の両面に形成された光量調整膜を合わせて、所望の光量を減衰できるように形成する。
【0100】
なお、赤外カット膜と光量調整膜とを基板の同一面に設ける場合、赤外カット膜上に光量調整膜を形成することで、帯電防止機能を有する光学フィルタとすることができる。光量調整膜は、導電性を有する光吸収層(金属あるいは金属の酸化物又は窒化物)を有し、反射防止層などを有していても表面抵抗率は10×10
10Ω/□程度以下であり、十分に帯電防止機能を有しているためである。このため、異物などの付着しにくい光学フィルタとすることができる。
【0101】
一方、光量調整膜上に赤外カット膜を形成することで、光学特性を長期に安定させることができる。光量調整膜は金属あるいは金属の酸化物又は窒化物からなる光吸収層が、大気中の酸素や水蒸気と接することで酸化が促進され、経時的に透過率が上昇することがあるが、赤外カット膜を光量調整膜上に形成することで第一層が酸素や水蒸気と接するのを抑制し、透過率変化が生じにくくなる。
【0102】
更には、端面を含む赤外カット膜を光量調整膜で覆う、あるいは、端面を含む光量調整膜を赤外カット膜で覆う構成にすることが好ましい。このようにすることで、上述の帯電防止機能あるいは光学特性の長期安定性を更に向上させることができる。
【0103】
光量調整膜と赤外カット膜は形成方法によっては、応力方向が異なることがある。このため、光量調整膜と赤外カット膜とを透明基板の同一面に形成した場合、光量調整膜と赤外カット膜との界面における密着性が問題となることがある。このような場合は、光量調整膜と赤外カット膜との界面に密着層を設けると良い。密着層としては、光量調整膜と赤外カット膜との応力差を緩和する応力緩和層が最適で、連続的に応力が変化する層などが好適である。
【0104】
このような応力緩和層としては、例えば、酸化数が膜厚方向で連続的に変化する層や膜密度が連続的に変化する層が挙げられる。酸化数が膜厚方向で連続的に変化する層は、例えば、複数の蒸着材料を同時に成膜し、その混合比率を変化させること得られる。また、膜密度が連続的に変化する層としては、例えば成膜時の蒸着チャンバー内圧力を連続的に変化させることで得られる。更に、応力緩和層は金属膜であってもよい。
【0105】
金属膜は金属結合からなる膜であり、共有結合やイオン結合からなる膜に比べ、延性に優れ、比較的自由に変形可能である。このため、応力方向の異なる光量調整膜と赤外カット膜との間に、金属膜を配置することで、光量調整膜と赤外カット膜の応力エネルギーが金属膜の変形に使用され、光量調整膜と赤外カット膜との界面での剥離を抑制できる。
【0106】
更に、光量調整膜と赤外カット膜を透明基板の同一面にもうける場合、光量調整膜と赤外カット膜との間に干渉調整層を導入してもよい。干渉調整層は光量調整膜と赤外カット膜との干渉条件を調整するための層であり、光量調整膜と赤外カット膜を積層することで発生するリップルを調整する。
【0107】
干渉調整膜は例えばTiO
2などが好適に使用できるが、これ以外にも、MgF
2、SiO
2、SiO、Si
3H
4、Al
2O
3、MgO、LaTiO
3、ZrO
2、Nb
2O
5、Ta
2O
5なども好適に使用でき、単層あるいは積層体とのいずれの構成としてもよい。
【0108】
赤外カット膜は、紫外線領域の透過をカットする機能を有していてもよい。紫外線カット機能は、カットする紫外線領域の波長をλとした時、それぞれの層の光学膜厚が略λ/4となるように、屈折率の異なる薄膜を積層することで得られる紫外線カット膜によってもたらされる。
【0109】
紫外線カット膜は赤外カット膜と同様の材料を使用することができ、薄膜間の屈折率差が大きいほど積層数は少なくすることができる。例えば、SiO
2層とTiO
2層の組合せは実質的に屈折率差の最も大きい組み合わせとなり好適である。
【0110】
本実施例では光量調整膜の第1中間層と第2中間層に金属酸化物を用いたが、設計例2の様に単層の中間層を含んでいてもよいし、設計例3の様に第一中間層に金属酸化物、第2中間層に金属窒化物を用いてもよい。なお、光量調整膜は実施例1と同様、基板の面方向に対して段階的あるいは連続的に透過率が変化する領域を有していてもよい。
【0111】
図11にカメラなどの撮像光学系を示す。入射光はレンズ12、15〜17、絞り羽根13a、13bや光学フィルタ11等から形成される光量調整装置20を通り、CCDやCMOSセンサから成る撮像素子18へと入射して電気信号に変換され映像化される。
【0112】
絞り羽根13a、13bの位置情報は光量制御部19へと伝達され、光量制御部19は撮像素子18からの光量情報と絞り羽根13a、13bの位置情報から最適な開口となるように絞り羽根13a、13bを駆動させる。
【0113】
光学フィルタ11は、絞り羽根13a、13bが一定の開口以下となると光学フィルタ駆動部14によって光路に挿入され、絞り羽根13a、13bの開口が小さくなり過ぎることで発生するフレアなどの弊害を抑制する。
【0114】
光学フィルタ11には、実施例1〜3で作製した光学フィルタが挿入され、撮影時の光量に応じて適宜光路に挿入される。
【0115】
ここで、実施例3の光学フィルタを用いる場合は、赤外半値波長を有する赤外カット膜と撮像素子との間に光量調整膜が存在するように配置されることが好ましい。このように配置することで、ゴーストの発生を抑制することができる。
【0116】
なお、ゴーストとは撮像光学系内における光の多重反射により発生し、光学フィルタに起因するゴースト強度を簡易的に求める式は、(光学フィルタの透過率)×(光学フィルタの反射率)×(撮像素子の感度)で表される。赤外カット膜の赤外半値波長近辺では透過率と反射率の赤外大きい領域であり、且つ、人の眼が認識できる限界領域の波長を含むため特にゴーストの影響が大きくなってしまう。
【0117】
赤外カット膜と撮像素子との間に光量調整膜を配置すると、赤外カット膜と透過した光が光量調整膜により減衰され、更に、撮像素子などに反射した光量調整膜へ再度入射してきた光が光量調整膜により減衰されたのち、赤外カット膜に到達するため、赤外カット膜に起因する反射を効率的に減衰することができるためである。
【0118】
更には、透明基板に赤外吸収ガラスを使用し、赤外半値波長を有する赤外カット膜と撮像素子との間に赤外吸収ガラスを設けることが好ましい。赤外吸収ガラスは赤外カット膜の赤外半値波長領域に光吸収機能を有しており、赤外カット膜の半値波長近辺におけるゴーストの要因となる光を効果的に減衰することができる。
【0119】
本発明に係る光学フィルタは透過率平坦性が良好であるため、被写体のカラーバランスを崩すことなく、撮像素子に到達する光量を適切に減衰することができる。