特許 6867170 消火栓装置、消火器箱

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)

(12)【公報種別】特許公報(B2)

(11)【特許番号】6867170

(24)【登録日】2021年4月12日

(45)【発行日】2021年4月28日

(54)【発明の名称】消火栓装置、消火器箱

(51)【国際特許分類】

   A62C 35/20 20060101AFI20210419BHJP

   A62C 3/00 20060101ALI20210419BHJP

   A62C 13/78 20060101ALI20210419BHJP

【ＦＩ】

   A62C35/20

   A62C3/00 J

   A62C13/78 A

【請求項の数】1

【全頁数】11

(21)【出願番号】特願2017-3179(P2017-3179)

(22)【出願日】2017年1月12日

(65)【公開番号】特開2018-110722(P2018-110722A)

(43)【公開日】2018年7月19日

【審査請求日】2019年12月23日

(73)【特許権者】

【識別番号】000233826

【氏名又は名称】能美防災株式会社

(74)【代理人】

【識別番号】100127845

【弁理士】

【氏名又は名称】石川 壽彦

(72)【発明者】

【氏名】西村 弘紀

(72)【発明者】

【氏名】栗本 直樹

【審査官】 村山 禎恒

(56)【参考文献】

【文献】 特開２００１−００９０５３（ＪＰ，Ａ）

【文献】 特開２００３−１９０３１５（ＪＰ，Ａ）

【文献】 米国特許第０３１８３９２７（ＵＳ，Ａ）

【文献】 特開２００９−２６８７１９（ＪＰ，Ａ）

(58)【調査した分野】（Int.Cl.，ＤＢ名）

Ａ６２Ｃ ２／００−９９／００

(57)【特許請求の範囲】

【請求項1】

巻いた状態のホースを横にして収納するホース収納部を有し上面が開口した箱形状の本体部と、該本体部の上面開口を覆う天板部を備えた消火栓装置であって、
前記天板部は、奥側の辺部が回動可能に取り付けられて開閉可能になっており、
該天板部を常時開扉方向に付勢する付勢手段と、該天板部が閉止状態で前記本体部の複数箇所に解除可能に係止する複数の係止部と、前記天板部に設けられて前記複数の係止部の係止を同時に解除可能に操作する複数の操作部とを備えたことを特徴とする消火栓装置。

【発明の詳細な説明】

【技術分野】

【0001】

本発明は、トンネル等に設置される消火栓装置及び消火器箱に関する。
なお、本明細書において、消火栓装置に関する位置関係を説明する用語としての「奥側」とは消火栓装置を監視員通路に設置した状態において、トンネルの壁面側であり、「手前側」とは車道側をいう。

【背景技術】

【0002】

トンネル等に設置される消火栓装置は、例えば特許文献１に開示されたように、消火栓装置の筐体を「トンネル壁面に形成された箱抜き部分」に設置していた。

【0003】

しかしながら、最近の大口径のトンネルはシールド工法によって構築されることが多く、この場合、トンネルの壁面がトンネルの掘削と同時に鋼製のセグメントで構築されるため、特許文献１に開示されているような箱抜きをすることができない。
そのため、消火栓装置の本体の設置場所として、トンネル壁面ではなく、監視員通路内に埋め込むことが考えられ、このような態様のものとして特許文献２に開示されたトンネル用消火栓装置がある。

【0004】

特許文献２に開示のものは、「トンネル側壁の路肩に沿って所定の高さに構築された監視員通路を備えたトンネルに設置されるトンネル用消火栓装置に於いて、前記監視員通路の路面側の側壁を装置前面として監視員通路の下部の空間に本体を収納したことを特徴とするトンネル用消火栓装置。」（特許文献２の請求項１参照）である。

【先行技術文献】

【特許文献】

【0005】

【特許文献1】特開２０１５−４４０３９号公報

【特許文献2】特開２００１−９０５３号公報

【発明の概要】

【発明が解決しようとする課題】

【0006】

特許文献２に開示のものは、本体内に引き出し可能に設けたトレイにホースリールや消火器を収納し、前記トレイを前面側に引き出すようにしている。そのため、消火栓装置の前面側にはトレイを引き出すための空間が必要となる。
しかしながら、消火栓装置の前面側は、車道に近く、事故車等が消火栓装置の前面側にあることもあり、消火栓装置の前面にはほとんど空間がないことも考えられる。そのため、消火活動に支障がでることが想定される。

【0007】

また、特許文献２に開示されたもののように、車道側に引きだすトレイにホースリールや消火器を収納した場合、トレイの引き出しは車道側からしかできず、またホースや消火器の取り出しも車道側からしかできない。そのため、消火活動は車道からしかできず、円滑かつ効果的な消火活動を迅速に行うことができないという問題がある。

【0008】

さらに、特許文献２のトンネル用消火栓装置においては、本体の前面側に設けた消火栓扉をその下側を軸として回動させて開放することで、同時にトレイが前面側に引き出されるようになっている。トレイにはホースが巻かれたホースリールという重量物が収納されており、このようなトレイを引き出す機構の消火栓扉を開放するにはそれ相当の力が必要であると思われ、操作性が悪く、それ故に迅速な消火活動にならないという問題もある。

【0009】

本発明はかかる課題を解決するためになされたものであり、消火栓装置を監視員通路内に埋め込むようにして設置した場合においても、ホースの取り出しに支障が生ずることなく、またホース収納部の蓋等を簡単に開放でき、迅速な消火活動ができる消火栓装置を得ることを目的としている。
また、消火器の取り出しに支障が生ずることなく、また迅速な消火活動ができる消火器箱を得ることを目的としている。

【課題を解決するための手段】

【0010】

（１）本発明に係る消火栓装置は、巻いた状態のホースを横にして収納するホース収納部を有し上面が開口した箱形状の本体部と、該本体部の上面開口を覆う天板部を備えた消火栓装置であって、
前記天板部は、奥側の辺部が回動可能に取り付けられて開閉可能になっており、
該天板部を常時開扉方向に付勢する付勢手段と、該天板部が閉止状態で前記本体部の複数箇所に解除可能に係止する複数の係止部と、前記天板部に設けられて前記複数の係止部の係止を同時に解除可能に操作する複数の操作部とを備えたことを特徴とするものである。

【0011】

（２）また、上記（１）に記載のものにおいて、前記天板部は、手前側天板部と奥側天板部によって奥行き方向で２分割されてなり、
前記手前側天板部は、起立状態で保持可能になっており、前記手前側天板部を開扉した状態で、前記奥側天板部を通路として使用できることを特徴とするものである。

【0012】

（３）本発明に係る消火器箱は、消火器を横に寝かせた状態で収納する消火器収納部を有し上面が開口した箱形状の本体部と、該本体部の上面開口を覆う天板部を備えた消火器箱であって、
前記天板部は、奥側の辺部が回動可能に取り付けられて開閉可能になっており、
該天板部を常時開扉方向に付勢する付勢手段と、該天板部が閉止状態で前記本体部に解除可能に係止する係止部と、前記天板部に設けられて前記係止部の係止を解除可能に操作する操作部とを備えたことを特徴とするものである。

【0013】

（４）また、上記（３）に記載のものにおいて、前記天板部は、手前側天板部と奥側天板部によって奥行き方向で２分割されてなり、
前記手前側天板部は、起立状態で保持可能になっており、前記手前側天板部を開扉した状態で、前記奥側天板部を通路として使用できることを特徴とするものである。

【発明の効果】

【0014】

本発明に係る消火栓装置は、巻いた状態のホースを横にして収納するホース収納部を有し上面が開口した箱形状の本体部と、該本体部の上面開口を覆う天板部を備えたものであって、前記天板部は、奥側の辺部が回動可能に取り付けられて開閉可能になっており、
該天板部を常時開扉方向に付勢する付勢手段と、該天板部が閉止状態で本体部の複数箇所に解除可能に係止する複数の係止部と、前記天板部に設けられて前記複数の係止部の係止を同時に解除可能に操作する複数の操作部とを備えたことにより、複数の操作部のうちのいずれかを操作することで係止部の係止を解除することができるので、作業者は自分の近くにある操作部を操作することができ、迅速な操作が可能である。
また、例えば消火栓装置を監視員通路内に埋め込むように設置した場合、前記手前側天板部の開扉を車道側からでも監視員通路上からでも行うことができ、かつホースの引き出しや消火器の取り出しについても、車道側からでも監視員通路上からでも行うことができる。このため、火災時の消火活動を迅速かつ円滑に行うことができる。
さらに、操作部の操作だけで、天板部が付勢手段の付勢力によって開扉するので、操作性に優れ、それ故に迅速な消火活動を行うことができる。

【図面の簡単な説明】

【0015】

【図1】本発明の実施の形態に係る消火栓装置の閉扉状態の斜視図である。

【図2】図１に示した消火栓装置の第１手前側天板部及び第２手前側天板部を開扉した状態の斜視図である。

【図3】図１に示した消火栓装置の第１手前側天板部及び第２手前側天板部を開扉した状態の平面図である。

【図4】トンネル内の車道の路肩に構築された監視員通路に設けられた設置用空間内を説明する説明図である。

【発明を実施するための形態】

【0016】

本実施の形態に係る消火栓装置は、設置場所が限定されるわけでないが、例えばトンネル内の車道の路肩に構築された監視員通路に設けられた設置用空間内に設置される場合に好適なものである。
そこで、まず消火栓装置の設置に好適な監視員通路の設置用空間について図４に基づいて説明する。
図４は、トンネルの路肩の監視員通路８３の一部を示したものであり、図中、８１はトンネル壁面、８３は監視員通路、８５は車道である。

【0017】

設置用空間８７は、図４に示すように、監視員通路８３の前壁８９から監視員通路８３の車道幅方向に切り欠くように設けられ、監視員通路８３の軸線に直交する断面では設置用空間８７を形成する壁がＬ字形状になっている。監視員通路８３の路面には設置用空間８７の上面に該当する開口部があり、該開口部の開口縁部９１は、後述する消火栓装置１の天板部１３の周縁部（張出し部１５）が載置される３辺の部分が一段低くなった段部になっている。

【0018】

上記のような設置用空間８７への設置に好適な本実施の形態の消火栓装置１を、図１〜図３に基づいて説明する。
消火栓装置１は、図２、３のように巻いた状態のホース３を横にして収納するホース収納部５と消火器７を横に寝かせた状態で収納する消火器収納部９を有し上面が開口した箱形状の本体部１１と、本体部１１の上面開口を覆う天板部１３を備えている。
以下、消火栓装置１を構成する各部について詳細に説明する。

【0019】

＜本体部＞
本実施の形態における本体部１１は、ホース収納部５と消火器収納部９を有し、図１、図２に示すように、上面が開口した略直方体形状をしている。
本体部１１の形状は、高さよりも奥行きの大きい扁平な直方体形状をしている。
本体部１１の両側部及び後辺部（奥側の辺部）には、外方に張出す張出し部１５が設けられている。
張出し部１５は、本体部１１を設置用空間８７内に収容する際に、設置用空間８７の開口縁部９１に形成された段部に載置する。これによって、張出し部１５及び天板部１３と、監視員通路８３の路面とが面一になる。なお、張出し部１５は少なくとも両側の２辺に設けられれば良く、その場合は開口縁部９１の段部も両側の２辺にだけあれば良い。

【0020】

本体部１１の前面部には、赤色表示灯１７、非常時であることを監視員に知らせるための非常ボタン１９、非常ボタン１９を押したときに点灯する非常ランプ２１が設けられている。
以下、ホース収納部５と消火器収納部９について詳細に説明する。

【0021】

《ホース収納部》
ホース収納部５は、ホース３を内巻きにした状態で横向き（巻いた状態でホース３により形成される筒体を縦にした向き）にして収納されている。このため、ホース収納部５は、高さよりも奥行きの大きい扁平な矩形状になっている。
なお、ホース収納部５へのホース３の収納は内巻き以外の収納形態でも良く、例えば、ホースリールにホース３を巻き付けるリール式の収納形態でも良い。リール式の場合でも、リールに巻き付けられたホース３は横向きに載置される。

【0022】

また、ホース収納部５の図中左右手前側には、消火栓弁を操作するための第１操作レバー２３、第２操作レバー２５が設けられている。
第１操作レバー２３、第２操作レバー２５は、本体部１１内に設けられてワイヤ（図示なし）を介して消火栓弁（図示なし）を遠隔操作するものである。なお、消火栓弁は、例えば地下の図示しない配水本管の分岐管に設けられ、開弁することで消火水を消火栓装置１に供給（詳細には消火ノズル２７に供給）するものである。

【0023】

第１操作レバー２３と第２操作レバー２５は、図２に示すように、ホース収納部５を挟んでその両側に設けられている。そして、本実施の形態の第１操作レバー２３と第２操作レバー２５とは、交叉させたワイヤ等の連動手段により連動して同方向に動作するようになっている。すなわち、第１操作レバー２３で開操作を行うと第２操作レバー２５のレバーも開動作をしたのと同様の動きをする。そのため、例えば第１操作レバー２３で開操作を行った場合であっても、第２操作レバー２５で閉操作を行うことができる。

【0024】

《消火器収納部》
消火器収納部９は、少なくとも１本以上（本例では２本）の消火器７を横に寝かせた状態で収納できるようになっている。本実施の形態では、図１、図２に示すように、第２手前側天板部３７の下方に２本の消火器７を本体部１１の幅方向に向けて、かつレバー２９を本体１１の内方側に向けて寝かせて収納している。
なお、本例の消火器収納部９は、消火器７の上部側（レバー２９側）が若干高くなるように消火器７を傾斜させて収納している。
消火器７を取り出す際には、消火器７の上部に設けられたレバー２９（図３参照）を持つことになるので、消火器７の上部側を高くすることで、消火器７を横に寝かせた状態であってもレバー２９を持ちやすくなり、消火器７の取り出しが容易になる。

【0025】

なお、消火器収納部９における消火器７が載置される載置面を手前側に向かってさらに下り傾斜となる傾斜面にしてもよい。このような傾斜面を設けることで、手前側の消火器７を取り出すと奥側の消火器７が手前側に滑って移動するので、取り出しがより容易になる。

【0026】

＜天板部＞
天板部１３は、図１に示すように、奥側と手前側とで大きく２分割されており、奥側は奥側天板部３１で構成され、手前側は点検用天板部３３、本発明の手前側天板部に相当する第１手前側天板部３５及び第２手前側天板部３７で構成されている。
天板部１３は、閉止状態では、監視員通路８３の路面として作業者が通行できる。

【0027】

奥側天板部３１は、常時は開扉することなく、点検時に開扉できるようにねじ等で固定されている。
天板部１３の分割位置は、ホース収納部５の上方に位置している。このため、図２に示すように、第１手前側天板部３５を開扉した状態でも、平面視で奥側天板部３１がホース３の一部を覆うようになっている。このような配置にしたことで、奥側天板部３１がホース３の引き出し時にホース３に当接してホース引出し規制手段として機能する。すなわち、仮にホース３の上方を覆うものが何もない場合、第１操作レバー２３又は第２操作レバー２５を操作して消火栓弁を開放してからホース３を引き出す際に、ホース３の動きを規制するものがないため、ホース３が水圧で暴れたり、あるいは無秩序にほどけてしまう場合があるが、奥側天板部３１がホース３を覆うように配置されていることで、ホース３に当接してホース３の暴れを防止したり、無秩序にほどけようとするのを規制したりすることができる。
なお、本実施の形態では、天板部１３の分割位置は、天板部１３の奥行き方向における中央部に位置しており、ホース収納部５の奥行き方向における中央部に位置している。

【0028】

第１手前側天板部３５及び第２手前側天板部３７は、奥側の辺部が奥側天板部３１に回動可能に取り付けられている。
そして、第１手前側天板部３５及び第２手前側天板部３７は、本発明の付勢手段に相当するガススプリング３９によって常時開扉方向に付勢される共に、開扉状態では、図２に示すように起立保持手段４１によって起立状態で保持されるようになっている。
なお、本実施の形態では、ガススプリング３９の付勢力は、第１手前側天板部３５又は第２手前側天板部３７を自動で起立状態にする程度であるものとして説明するが、それより付勢力は弱くても良い。その場合でも手動で第１手前側天板部３５又は第２手前側天板部３７を開扉させるときの補助力となる。
また、ガススプリング３９が第１手前側天板部３５又は第２手前側天板部３７を自動で起立状態にする付勢力を有する場合、起立保持手段４１を備えなくても、第１手前側天板部３５又は第２手前側天板部３７を起立状態で保持することができる。

【0029】

また、第１手前側天板部３５の内面（起立状態での前面）には、ホース３の先端に設けられた消火ノズル２７を保持するノズルホルダ４３（図２参照）と、ホース３の引き出しをガイドするホースガイド４５とが設けられている。
以下、第１手前側天板部３５及び第２手前側天板部３７に付属する部品について詳細に説明する。

【0030】

ガススプリング３９は、シリンダロッド４７の下端側が本体部１１の底部に回動可能に固定され、シリンダ４９の上端側がそれぞれ第１手前側天板部３５及び第２手前側天板部３７に回動可能に連結されている。ガススプリング３９は第１手前側天板部３５、第２手前側天板部３７を閉扉状態から回動させて開扉状態にする付勢力を有している。
そして、第１手前側天板部３５には第１手前側天板部３５を閉扉状態で保持したり、開扉させたりするための第１操作部５１及び第２操作部５３が設けられている。第１操作部５１及び第２操作部５３は同じ機構であり、ラッチ５５（図２参照）を有しており、閉扉状態ではこのラッチ５５が本体部１１に係止して閉扉状態を保持するようになっている。第１操作部５１及び第２操作部５３はワイヤ５７を介して連動しており、いずれを操作しても第１手前側天板部３５を開扉することができる。
なお、図１、図２に示すように、第１操作部５１の近傍には第１操作レバー２３が、第２操作部５３の近傍には第２操作レバー２５がそれぞれ設けられている。

【0031】

また、第２手前側天板部３７には、第１操作部５１及び第２操作部５３と同じ機構の第３操作部５９が設けられている。第３操作部５９は第２手前側天板部３７の内面側の図２中左側に設けられたラッチ機構６１とワイヤ５７を介して連動しており、第３操作部５９を開操作することで第３操作部５９のラッチ５５とラッチ機構６１を同時に開状態にでき、第３操作部５９の操作のみで第２手前側天板部３７の開操作ができるようになっている。
なお、第１操作部５１、第２操作部５３、第３操作部５９は本発明の操作部に相当し、ラッチ５５、ラッチ機構６１は本発明の係止部に相当する。
また、ラッチ５５は、第１操作部５１、第２操作部５３又は第３操作部５９の操作により直接係止解除できるものであり、ラッチ機構６１はラッチ５５と連動して間接的に係止解除するものである。

【0032】

起立保持手段４１は、一端側が第１手前側天板部３５又は第２手前側天板部３７に回動可能に取り付けられ、他端側が本体部１１に係止可能に設けられた幅狭の板状部材によって構成されている（図２参照）。
起立保持手段４１の他端は、本体部１１に設けられた細溝６３に挿入されており、第１手前側天板部３５又は第２手前側天板部３７が起立状態になったときに細溝６３の周縁に係止可能になっている。
なお、第１手前側天板部３５及び第２手前側天板部３７は起立状態で直立するのが望ましいが、若干であれば前傾したり後傾したりしてもよく、閉扉状態から８０度〜１００度程度回動して保持されておればよい。

【0033】

ホースガイド４５は、第１手前側天板部３５の内面側に設けられており、Ｕ字形状をしており、開扉状態においてＵ字の開口（Ｕ字の辺部で囲まれた空間部）が上下を向くように取り付けられている。そして、ホース３は、ホースガイド４５のＵ字の開口内を下から上に挿通された状態になっている。なお、ホースガイド４５の形状はＵ字形状に限らず、例えば、コ字形状のようにホース３の引き出しをガイドできる形状であれば何でも良い。

【0034】

点検用天板部３３は、常時はねじ固定されて閉扉されており、点検時のみにねじを外すことで開放可能になっている。なお、点検用天板部３３の下方には、図示しない配管系統等が配設されている。

【0035】

上記のように構成された本実施の形態の動作を説明する。
第１手前側天板部３５が閉扉の状態（図１参照）から、第１操作部５１又は第２操作部５３を操作してラッチ５５の係止解除を行うと第１手前側天板部３５はガススプリング３９の付勢力によって自動的に開扉し、起立保持手段４１により図２〜図３に示すように起立状態で保持される。
第２手前側天板部３７も第１手前側天板部３５と同様の動作によって開扉する。したがって、第１手前側天板部３５及び第２手前側天板部３７の開扉作業を極めて円滑かつ容易に行うことができる。

【0036】

上記のように構成された本実施の形態の消火栓装置１においては、通常時は天板部１３が閉扉状態になっており、天板部１３を監視員通路８３として使用できる。
火災時において、例えばホース３を引きだすためには、第１手前側天板部３５を開扉することになるが、この場合、第１操作部５１及び第２操作部５３のいずれを操作しても開扉することができる。したがって、作業者は自分の近くにある第１操作部５１又は第２操作部５３のいずれかを操作すればよく、火災時に迅速な対応ができる。
しかも、この開扉操作は、車道８５側からでも、監視員通路８３の上からでも行うことができる。特に、監視員通路８３の上から開扉操作をする場合、消火栓装置１の天板部１３の左右方向のいずれかの位置から操作を行うことになるが、第１操作部５１及び第２操作部５３が設けられているため、消火栓装置１に対してどちらの位置にいても消火栓装置１を操作することができる。したがって、特許文献２に開示されたもののように、車道８５側からのみトレイの引き出しをするものに比較して、円滑な消火活動ができる。

【0037】

第１手前側天板部３５及び／又は第２手前側天板部３７を開扉すると、ホース３の引き出しや、消火器７の取り出しをすることになるが、この場合においても、車道８５側からでも、監視員通路８３側からでもできる。

【0038】

また、第１手前側天板部３５と第２手前側天板部３７は開扉状態で、図２、図３に示すように起立状態を保持するので、奥側天板部３１を通路として使用することができ、この点でも、作業者の移動が円滑にできるため、消火活動を効率的に行うことができる。

【0039】

第１手前側天板部３５を開扉してホース３による消火を行う場合には、第１操作レバー２３又は第２操作レバー２５を操作することになるが、第１操作部５１の近傍には第１操作レバー２３が、第２操作部５３の近傍には第２操作レバー２５がそれぞれ設けられているので、第１操作部５１又は第２操作部５３のいずれを操作して第１手前側天板部３５を開扉しても消火栓弁の開弁操作を迅速に行うことができる。
第１操作レバー２３又は第２操作レバー２５によって消火栓弁の開弁を行った後、ノズルホルダ４３から消火ノズル２７を取り外してホース３を引き出す。このとき、奥側天板部３１があることで、ホース３が水圧で暴れたり、あるいは無秩序にほどけてしまうのを防止できる。
もっとも、ホース３の引き出されかたによっては、ホース３が奥側天板部３１に意図した以上に干渉して円滑な引出しができにくくなる場合も想定されるが、ホースガイド４５があることで、ホース３がホース３の巻きの中央近傍に常に引き出されるため、奥側天板部３１に過剰に規制されることなく、より円滑なホース３の引出しが可能となる。

【0040】

なお、上記の実施の形態では、天板部１３を奥行き方向で２分割した例を示したが、本発明の天板部１３は奥行き方向で分割されていなくてもよい。この場合、天板部１３の奥側の辺部を本体部１１の上辺部に回動可能に取り付けるようにすればよい。

【0041】

また、上記の実施の形態においては第１手前側天板部３５及び第２手前側天板部３７が平板の例を示したが、第１手前側天板部３５及び第２手前側天板部３７は、その前辺側が下方に屈曲して奥行き方向断面形状がＬ字状になるようにしてもよい。この場合、本体部１１の前面部の上部は第１手前側天板部３５及び第２手前側天板部３７の前辺側に対応して切り欠いて、高さを低くすればよい。このようにすれば、第１手前側天板部３５及び第２手前側天板部３７を開扉したときに、開扉スペースが広く機器の取り出しをスムーズに行うことができ、円滑な消火活動に資することができる。

【0042】

さらに、上記の実施の形態では、消火栓弁を開閉する操作レバーとして第１操作レバー２３又は第２操作レバー２５の２つを設けた場合を示したが、操作レバーは一つであってもよい。この場合、第１操作部５１又は第２操作部５３のうちのより操作の可能性の高い方（例えば、第１操作部５１）の近傍に操作レバーを設けるか、あるいは第１操作部５１又は第２操作部５３のいずれからでも近くなるような位置に操作レバーを設けることで第１手前側天板部３５を開扉した後の作業の迅速化を図ることができる。

【0043】

上記の実施の形態は、ホース３を収納するホース収納部５を有する消火栓装置１について説明したが、監視員通路８３には消火栓装置ではなく、消火器のみを収容する消火器箱を設置することも考えられ、このような場合には、消火器箱にも上述した消火栓装置１の特徴を適用することができる。
すなわち、消火器箱を、消火器を横に寝かせた状態で収納する消火器収納部を有し上面が開口した箱形状の本体部と、該本体部の上面開口を覆う天板部を備えたものであって、前記天板部は、奥側の辺部が回動可能に取り付けられて開閉可能になっており、該天板部を常時開扉方向に付勢する付勢手段と、該天板部が閉止状態で本体部に解除可能に係止する係止部と、前記天板部の上面に設けられて前記係止部の係止を解除可能に操作する操作部とを備えた構成にすればよい。

【0044】

また、前記天板部は、手前側天板部と奥側天板部によって奥行き方向で２分割されてなり、前記手前側天板部は、開放途中の起立状態で保持可能になっており、前記手前側天板部を開扉した状態で、前記奥側天板部を通路として使用できるようにしてもよい。

【0045】

そして、このような消火器箱においても、消火栓装置１で述べたのと同様に消火器の取り出しや消火活動の円滑化に関する作用効果を奏する。

【符号の説明】

【0046】

１ 消火栓装置
３ ホース
５ ホース収納部
７ 消火器
９ 消火器収納部
１１ 本体部
１３ 天板部
１５ 張出し部
１７ 赤色表示灯
１９ 非常ボタン
２１ 非常ランプ
２３ 第１操作レバー
２５ 第２操作レバー
２７ 消火ノズル
２９ レバー
３１ 奥側天板部
３３ 点検用天板部
３５ 第１手前側天板部
３７ 第２手前側天板部
３９ ガススプリング
４１ 起立保持手段
４３ ノズルホルダ
４５ ホースガイド
４７ シリンダロッド
４９ シリンダ
５１ 第１操作部
５３ 第２操作部
５５ ラッチ
５７ ワイヤ
５９ 第３操作部
６１ ラッチ機構
６３ 細溝
＜監視員通路＞
８１ トンネル壁面
８３ 監視員通路
８５ 車道
８７ 設置用空間
８９ 前壁
９１ 開口縁部

【図1】

【図2】

【図3】

【図4】