【文献】
Applied Surface Science,2011年,Vol.257,p.8171-8176,ISSN 0169-4332
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0025】
(第1実施形態)
(1)メタン化反応用触媒
メタン化反応用触媒は、COおよび/またはCO
2と水素とをメタン化反応するためのメタン化反応用触媒であって、安定化ジルコニア担体と、安定化ジルコニア担体に担持されるNiと、無機酸化物とを含有している。
【0026】
安定化ジルコニア担体は、Zrを主体とする正方晶系および/または立方晶系の結晶構造(単位格子)に、安定化元素およびNiが固溶している。安定化ジルコニア担体の結晶構造は、Zrを主体(基本成分)として構成しており、安定化ジルコニア担体の結晶構造の複数の格子点には、主にZrイオン(Zr
4+)が配置されている。
【0027】
安定化元素は、安定化ジルコニア担体の結晶構造を、正方晶系および/または立方晶系となるように安定化している。安定化元素は、Y、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Gd、Dy、Ca、Mg、Mn、FeおよびCoからなる群から選択される少なくとも1種の元素である。安定化元素のなかでは、好ましくは、Sm、CaおよびMnが挙げられ、より好ましくは、CaおよびMnが挙げられる。
【0028】
安定化ジルコニア担体に安定化元素およびNiが固溶すると、結晶構造の複数の格子点のうち一部の格子点が、Zrイオンから、上記の安定化元素イオンおよびNiイオンのいずれかに置き換わる。
【0029】
つまり、安定化ジルコニア担体に安定化元素が固溶するとは、結晶構造の格子点に配置されるZrイオンが上記の安定化元素イオンに置き換わることであり、安定化ジルコニア担体にNiが固溶するとは、結晶構造の格子点に配置されるZrイオンがNiイオンに置き換わることである。そのため、安定化ジルコニア担体の複数の格子点には、Zrイオン、上記の安定化元素イオンおよびNiイオンのいずれか1つが配置される。
【0030】
このような安定化ジルコニア担体は、Zrと、上記の安定化元素と、Niと、Oとを含んでおり、好ましくは、Zrと、上記の安定化元素と、Niと、Oとからなる。より具体的には、安定化ジルコニア担体は、下記一般式(1)で示される。
【0031】
一般式(1):
【化1】
(式(1)中、xおよびyは1未満であり、かつ、x+yは1未満である。Mは、Y、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Gd、Dy、Ca、Mg、Mn、FeおよびCoからなる群から選択される少なくとも1種の安定化元素であり、αは、安定化元素の価数を示す。)
【0032】
一般式(1)において、xは、例えば、0.133以上で、1未満、好ましくは、0.248以下である。一般式(1)において、yは、例えば、0.010以上、1未満、好ましくは、0.050以下である。
【0033】
また、安定化ジルコニア担体は、酸素空孔を有している。酸素空孔は、安定化ジルコニア担体に安定化元素および/またはNiが固溶して、価数が3以下(2価または3価)の安定化元素イオンおよび/またはNiイオンが、Zrイオンと置換することにより形成される。このような安定化ジルコニア担体は、メタン化反応用触媒に単独で含有されてもよく、2種以上含有されてもよい。
【0034】
Niは、NiOであってもよく、金属状態のNiであってもよいが、触媒活性の観点から好ましくは、金属状態のNiである。
【0035】
Niは、上記のように、安定化ジルコニア担体に固溶するとともに、安定化ジルコニア担体に担持されている。そのため、メタン化反応用触媒は、安定化ジルコニア担体を構成するZrと、安定化ジルコニア担体に固溶する安定化元素と、安定化ジルコニア担体に固溶するNiと、安定化ジルコニア担体に担持されるNiと、無機酸化物とを含んでおり、好ましくは、安定化ジルコニア担体を構成するZrと、安定化ジルコニア担体に固溶する安定化元素と、安定化ジルコニア担体に固溶するNiと、安定化ジルコニア担体に担持されるNiと、無機酸化物とからなる。
【0036】
無機酸化物は、メタン化反応用触媒に均一に分散されており、Niを担持する安定化ジルコニア担体の複数の粒子の間にスペースを形成するように作用する。
【0037】
無機酸化物は、シリカ(SiO
2)、アルミナ(Al
2O
3)、チタニア(TiO
2)およびセリア(CeO
2)からなる群から選択される少なくとも1種の無機酸化物である。
【0038】
シリカとしては、例えば、石英、クリストバラト、トリディマイト、コーサイトなどが挙げられ、好ましくは、石英が挙げられる。
【0039】
アルミナとしては、例えば、α−アルミナ、θ−アルミナ、γ−アルミナなどが挙げられ、好ましくは、γ−アルミナが挙げられる。
【0040】
チタニアとしては、例えば、ルチル型チタニア、アナターゼ型チタニア、ブルッカイト型チタニアなどが挙げられ、好ましくは、ルチル型チタニアが挙げられる。
【0041】
セリアとしては、例えば、蛍石型セリアなどが挙げられる。
【0042】
無機酸化物のなかでは、好ましくは、シリカが挙げられる。無機酸化物は、メタン化反応用触媒に単独で含有されてもよく、2種以上含有されてもよい。
【0043】
なお、以下において、Niの含有量を表す場合には、安定化ジルコニア担体に担持されるNiと、安定化ジルコニア担体に固溶するNiとの総和を、Niとして示す。また、無機酸化物に含まれるSi原子、Al原子、Ti原子およびCe原子のそれぞれを、無機元素とし、それら無機元素の総和を、総無機元素として示す。
メタン化反応用触媒において、Zrと、安定化元素と、Niと、総無機元素との総和(以下、各原子の総和とする。)に対して、Zrの原子割合(=Zr/(Zr+安定化元素+Ni+総無機元素)×100)は、例えば、8.5原子%以上、好ましくは、15.0原子%以上、より好ましくは、23.0原子%以上、例えば、70原子%以下、好ましくは、60原子%以下、より好ましくは、55.0原子%以下である。なお、メタン化反応用触媒における、各原子の原子割合は、後述するメタン化反応用触媒の製造方法において使用される原料成分(ジルコニアおよび/またはZrの塩、安定化元素の塩、Niの塩および無機酸化物)の仕込量から算出される。
【0044】
また、メタン化反応用触媒において、各原子の総和に対して、安定化元素の原子割合(=安定化元素/(Zr+安定化元素+Ni+総無機元素)×100)は、例えば、1.0原子%以上、好ましくは、1.5原子%以上、例えば、20原子%以下、好ましくは、7.5原子%以下である。
【0045】
また、メタン化反応用触媒において、各原子の総和に対して、Niの原子割合(=Ni/(Zr+安定化元素+Ni+総無機元素)×100)は、例えば、10原子%以上、好ましくは、15原子%以上、より好ましくは、23.0原子%以上、例えば、70原子%以下、好ましくは、55.0原子%以下である。
【0046】
また、メタン化反応用触媒において、各原子の総和に対して、総無機元素の原子割合(=無機元素/(Zr+安定化元素+Ni+総無機元素)×100)は、例えば、2.0原子%以上、好ましくは、3.0原子%以上、好ましくは、10原子%以上、例えば、75原子%以下、好ましくは、50原子%以下である。
【0047】
また、無機酸化物がシリカを含む場合、Si原子に対するNi原子のモル比が、0.20以上、好ましくは、0.35以上、より好ましくは、0.70以上、10.0以下、好ましくは、5.0以下、より好ましくは、3.0以下である。
また、無機酸化物がシリカを含む場合、Si原子に対するZr原子のモル比が、例えば、0.10以上、好ましくは、0.20以上、例えば、4.5以下、好ましくは、3.0以下、より好ましくは、1.5以下である。
【0048】
また、無機酸化物がアルミナを含む場合、Al原子に対するNi原子のモル比が、0.20以上、好ましくは、0.30以上、より好ましくは、1.0以上、7.0以下、好ましくは、5.0以下、より好ましくは、2.5以下である。
無機酸化物がアルミナを含む場合、Al原子に対するZr原子のモル比が、例えば、0.10以上、好ましくは、0.15以上、より好ましくは、0.50以上、例えば、4.0以下、好ましくは、2.5以下、より好ましくは、1.5以下である。
【0049】
また、無機酸化物がチタニアを含む場合、Ti原子に対するNi原子のモル比が、0.30以上、好ましくは、0.40以上、より好ましくは、1.0以上、10.5以下、好ましくは、8.0以下、より好ましくは、4.0以下である。
無機酸化物がチタニアを含む場合、Ti原子に対するZr原子のモル比が、例えば、0.15以上、好ましくは、0.20以上、より好ましくは、0.50以上、例えば、6.0以下、好ましくは、4.0以下、より好ましくは、2.0以下である。
【0050】
また、無機酸化物がセリアを含む場合、Ce原子に対するNi原子のモル比が、0.70以上、好ましくは、1.0以上、より好ましくは、2.0以上、25.0以下、好ましくは、15.0以下、より好ましくは、9.0以下である。
無機酸化物がセリアを含む場合、Ce原子に対するZr原子のモル比が、0.30以上、好ましくは、0.50以上、より好ましくは、1.0以上、12.0以下、好ましくは、7.0以下、より好ましくは、5.0以下である。
【0051】
無機元素(Si原子、Al原子、Ti原子およびCe原子の少なくともいずれか1つ)に対するNi原子のモル比が、上記の下限未満であれば、触媒活性成分であるNiの含有割合を十分に確保でき、メタン化反応用触媒のメタン生成速度の向上を図ることができる。無機元素に対するNi原子のモル比が、上記の上限を超過すれば、メタン化反応用触媒における細孔容積の向上を図ることができ、メタン化反応用触媒のメタン生成速度の向上を図ることができる。
なお、無機酸化物がメタン化反応用触媒に2種以上含有される場合、それら無機元素に含有される無機元素の少なくとも1つに対するNi原子のモル比が上記の範囲内であれば、本発明の範囲に含まれる。一方、無機酸化物がメタン化反応用触媒に2種以上含有される場合、それら無機元素に含有される無機元素のいずれに対しても、Ni原子のモル比が上記の範囲外であれば、本発明の範囲外である。
【0052】
また、無機元素に対するZr原子のモル比が、上記の範囲であれば、メタン化反応用触媒における細孔容積のさらなる向上を図ることができ、メタン化反応用触媒のメタン生成速度のさらなる向上を図ることができる。
【0053】
メタン化反応用触媒の形状は、特に制限されないが、好ましくは、粒子状である。メタン化反応用触媒が粒子状である場合、メタン化反応用触媒の平均二次粒子径は、例えば、1.0μm以上、好ましくは、10μm以上、例えば、200μm以下、好ましくは、150μm以下である。なお、平均二次粒子径は、電子顕微鏡法(JIS H7803:2005)に従って測定される。
【0054】
また、メタン化反応用触媒は、複数の細孔を有している。
複数の細孔のうち細孔直径が2nm〜12nmである細孔(以下、2−12nm細孔とする。)の容積の総和は、メタン化反応用触媒の単位質量当たり、例えば、0.050cm
3/g以上、好ましくは、0.070cm
3/g以上である。2−12nm細孔の容積の総和は、大きければ大きいほどよいが、例えば、0.220cm
3/g以下、好ましくは、0.180cm
3/g以下である。2−12nm細孔の容積の総和は、後述する実施例に準拠して測定される。
【0055】
2−12nm細孔の容積の総和が、上記の範囲であれば、メタン化反応用触媒の比表面積の向上を図ることができ、Niの表面露出量の向上を図ることができる。
【0056】
メタン化反応用触媒の比表面積(BET比表面積)は、例えば、50m
2・g
−1以上、好ましくは、70m
2・g
−1以上である。メタン化反応用触媒の比表面積(BET比表面積)は、大きければ大きいほどよいが、例えば、200m
2・g
−1以下、好ましくは、150m
2・g
−1以下である。なお、メタン化反応用触媒の比表面積は、BET法(JIS Z8830:2013)に従って測定される。
【0057】
(2)メタン化反応用触媒の製造方法
このようなメタン化反応用触媒は、ジルコニアおよび/またはZrの塩と、安定化元素の塩と、Niの塩と、無機酸化物との湿式混合物の焼成体である。
次に、メタン化反応用触媒の製造方法の一実施形態について説明する。
【0058】
メタン化反応用触媒の製造方法は、原料成分を湿式混合して湿式混合物を調製する工程(混合工程)と、湿式混合物を焼成する工程(焼成工程)とを含み、必要に応じて、NiOをNiに還元する工程(還元工程)をさらに含んでいる。
【0059】
混合工程では、原料成分としての、ジルコニア(ZrO
2)および/またはZrの塩と、上記の安定化元素の塩と、Niの塩と、上記の無機酸化物とを、例えば、各原子(Zr、安定化元素、Niおよび無機元素)の原子割合が上記の範囲となるように湿式混合する。
【0060】
ジルコニアとしては、例えば、低結晶性のZrO
2微粒子などが挙げられる。
【0061】
Zrの塩としては、例えば、Zrの硝酸塩(例えば、硝酸ジルコニウム(Zr(NO
3)
4)、硝酸酸化ジルコニウム(ZrO(NO
3)
2)など)、Zrの塩酸塩(例えば、塩化酸化ジルコニウム(ZrCl
2O)など)、Zrの酢酸塩(例えば、酢酸酸化ジルコニウム(ZrO(C
2H
3O
2)
2)など)などが挙げられる。Zrの塩は、単独で使用してもよく、2種以上併用することもできる。
【0062】
ジルコニアおよびZrの塩のなかでは、好ましくは、Zrの酢酸塩が挙げられ、より好ましくは、酢酸酸化ジルコニウムが挙げられる。
【0063】
安定化元素の塩としては、例えば、安定化元素の硝酸塩(例えば、硝酸サマリウム(Sm(NO
3)
3)、硝酸カルシウム(Ca(NO
3)
2)、硝酸マンガン(Mn(NO
3)
2)、硝酸鉄(Fe(NO
3)
3)、硝酸コバルト(Co(NO
3)
2)など)、安定化元素の塩化物(例えば、塩化サマリウム(SmCl
3)、塩化カルシウム(CaCl
2)、塩化マンガン(MnCl
2)、塩化鉄(FeCl
3)、塩化コバルト(CoCl
2)など)などが挙げられる。安定化元素の塩は、単独で使用してもよく、2種以上併用することもできる。安定化元素の塩は、市販品を用いることもできる。
【0064】
安定化元素の塩のなかでは、好ましくは、安定化元素の硝酸塩が挙げられ、より好ましくは、硝酸サマリウムおよび硝酸カルシウムが挙げられる。
【0065】
Niの塩としては、例えば、Niの硝酸塩(例えば、硝酸ニッケル(Ni(NO
3)
2)など)、Niの塩化物(例えば、塩化ニッケル(NiCl
2)など)などが挙げられる。Niの塩は、単独で使用してもよく、2種以上併用することもできる。
【0066】
Niの塩のなかでは、好ましくは、Niの硝酸塩が挙げられ、より好ましくは、硝酸ニッケルが挙げられる。
【0067】
原料成分を湿式混合するには、例えば、ジルコニアのヒドロゾルおよび/またはZrの塩の水溶液に、安定化元素の塩と、Niの塩と、無機酸化物とを、各原子(Zr、安定化元素、Niおよび無機元素)の原子割合が上記の範囲となるように添加して、撹拌混合する。
【0068】
より具体的には、ジルコニアのヒドロゾルおよび/またはZrの塩の水溶液に、安定化元素の塩を加えて、均一なスラリーになるまで撹拌混合(湿式混合)する。
【0069】
次いで、そのスラリーに、Niの塩(好ましくは、Niの塩の水溶液)を加えて、均一な混合溶液になるまで撹拌混合(湿式混合)する。
【0070】
次いで、混合溶液に、無機酸化物(好ましくは、無機酸化物のヒドロゾル)を加えて、均一な溶液になるまで撹拌(湿式混合)して、湿式混合物を調製する。
【0071】
これによって、ジルコニアおよび/またはZrの塩と、安定化元素の塩と、Niの塩と、無機酸化物とを含有する湿式混合物が調製される。
【0072】
次いで、湿式混合物を、例えば、恒温乾燥炉により加熱して、余剰な水分を揮発させる。
【0073】
湿式混合物の加熱温度としては、例えば、100℃以上、好ましくは、150℃以上、例えば、200℃以下、好ましくは、170℃以下である。湿式混合物の加熱時間としては、例えば、30分以上、好ましくは、1時間以上、例えば、10時間以下、好ましくは、3時間以下である。
【0074】
次いで、湿式混合物を、焼成工程において、例えば電気炉などの加熱炉により焼成する。
【0075】
焼成温度としては、400℃以上、好ましくは、500℃以上、より好ましくは、600℃以上、800℃以下、好ましくは、750℃以下、より好ましくは、700℃以下である。
【0076】
焼成温度が上記範囲内であれば、安定化ジルコニア担体の結晶構造を確実に正方晶系および/または立方晶系とすることができる。
【0077】
焼成時間としては、例えば、1時間以上、好ましくは、5時間以上、例えば、24時間以下、好ましくは、10時間以下である。
【0078】
これによって、湿式混合物が焼成されて、上記一般式(1)で示す安定化ジルコニア担体が形成するとともに、下記一般式(2)で示すように、安定化ジルコニア担体に酸化ニッケルが担持される。
【0079】
一般式(2):
【化2】
(式(2)中、xおよびyは一般式(1)のxおよびyと同様の範囲であり、Mは一般式(1)のMと同様の安定化元素を示し、αは一般式(1)のαと同様の範囲である。)
【0080】
以上によって、湿式混合物の焼成体であるメタン化反応用触媒が調製される。
メタン化反応用触媒は、NiOがNiに還元される前の還元前触媒であって、上記一般式(2)に示される酸化ニッケルが担持される安定化ジルコニア担体と、無機酸化物とを含有している。メタン化反応用触媒において、上記一般式(2)の安定化ジルコニア担体と、無機酸化物とは、互いに均一に分散されている。
【0081】
還元前触媒(ジルコニアおよび/またはZrの塩と、安定化元素の塩と、Niの塩と、無機酸化物との湿式混合物の焼成体の総和)に対する、無機酸化物の含有割合は、例えば、5質量%以上、好ましくは、10質量%以上、例えば、62質量%以下、好ましくは、45質量%以下である。
【0082】
無機酸化物の含有割合が上記の範囲であれば、Niの分散性の向上を安定して図ることができ、メタン化反応用触媒における細孔容積の向上を安定して図ることができる。
【0083】
還元前触媒における2−12nm細孔の容積の総和は、上記した範囲と同じである。
【0084】
次いで、還元工程において、還元前触媒を、水素気流により還元処理する。
【0085】
より具体的には、還元前触媒を、所定の反応管内に充填した後、反応管内が下記の還元温度となるように、例えば電気管状炉などの加熱器によって加熱するとともに、反応管内に水素を流通させる。
【0086】
還元温度としては、例えば、200℃以上、好ましくは、300℃以上、例えば、600℃以下、好ましくは、500℃以下である。還元時間としては、例えば、2時間以上、好ましくは、5時間以上、例えば、10時間以下である。
【0087】
これによって、安定化ジルコニア担体に担持される酸化ニッケルが、下記一般式(3)で示すように、金属状態のニッケルに還元される。
【0089】
以上によって、上記一般式(3)に示される金属状態のニッケルが担持される安定化ジルコニア担体と、無機酸化物とを含有するメタン化反応用触媒(還元後触媒)が調製される。還元後触媒において、上記一般式(3)の安定化ジルコニア担体と、無機酸化物とは、互いに均一に分散されている。
【0090】
また、還元後触媒におけるSi原子に対するNi原子のモル比の範囲およびSi原子に対するZr原子のモル比の範囲のそれぞれは、上記と範囲と同じである。還元後触媒の単位質量当たりの2−12nm細孔の容積の総和の範囲は、上記と範囲と同じである。
【0091】
(3)メタンの製造方法
次に、上記のメタン化反応用触媒を用いたメタンの製造方法について説明する。
【0092】
メタン化反応用触媒によりメタンを製造するには、メタン化反応用触媒を、200℃以上の反応温度において、COおよび/またはCO
2と、水素ガスとを含む混合ガスに接触させる。
【0093】
より具体的には、メタン化反応用触媒を所定の反応管に充填する。そして、その反応管を、常圧下において、下記の反応温度に維持し、混合ガスを反応管に供給する。
【0094】
反応温度は、200℃以上、好ましくは、250℃以上、より好ましくは、300℃以上、例えば、500℃以下、好ましくは、400℃以下である。
【0095】
混合ガスがCO
2および水素ガスを含有する場合、CO
2と水素ガスとのモル比は、1:4であり、混合ガスがCOおよび水素ガスを含有する場合、COと水素ガスとのモル比は、1:3である。
【0096】
また、混合ガスの流量は、メタン化反応用触媒1g当たり、例えば、1000L・h
−1・g
−1以上、好ましくは、2000L・h
−1・g
−1以上、例えば、5000L・h
−1・g
−1以下、好ましくは、4000L・h
−1・g
−1以下である。
【0097】
このように、メタン化反応用触媒と混合ガスとを接触させると、安定化ジルコニア担体がNiOを担持している場合であっても、NiOが、混合ガス中の水素によって、金属状態のNiに還元される。
【0098】
そして、安定化ジルコニア担体の酸素空孔がCOおよび/またはCO
2の酸素原子を引き付けるとともに、安定化ジルコニア担体に担持される金属状態のNiが水素を引き付けるため、メタン化反応用触媒の表面上において、COおよび/またはCO
2と水素とが効率よく反応して、メタンが生成する。
【0099】
このとき、250℃におけるメタン化反応用触媒1g当たりのメタン生成速度は、例えば、0.070mmol・s
−1・g
−1以上、好ましくは、0.080mmol・s
−1・g
−1以上である。250℃におけるメタン化反応用触媒1g当たりのメタン生成速度は、速ければ速いほどよいが、例えば、0.125mmol・s
−1・g
−1以下である。
【0100】
(4)作用効果
メタン化反応用触媒は、ジルコニアおよび/またはZrの塩と、安定化元素の塩と、Niの塩と、無機酸化物との湿式混合物の焼成体である。
また、無機酸化物がシリカを含む場合、Si原子に対するNi原子のモル比が、0.20以上10.0以下であり、無機酸化物がアルミナを含む場合、Al原子に対するNi原子のモル比が、0.20以上7.0以下であり、無機酸化物がチタニアを含む場合、Ti原子に対するNi原子のモル比が、0.30以上10.5以下であり、無機酸化物がセリアを含む場合、Ce原子に対するNi原子のモル比が、0.70以上25.0以下である。
【0101】
そのため、無機酸化物が、触媒活性成分である複数のNiの間にスペースを形成するように作用して、Niの凝集を抑制する。その結果、メタン化反応用触媒における細孔容積の向上を図ることができ、Niの分散性の向上を図ることができる。これによって、メタン化反応用触媒の比表面積の向上を図ることができ、Niの表面露出量の増加を図ることができる。そのため、メタン化反応用触媒の触媒活性の向上を図ることができ、メタン生成速度の向上を図ることができる。
【0102】
一方、無機酸化物が含有する無機元素(Si原子、Al原子、Ti原子およびCe原子のそれぞれ)に対するNi原子のモル比が上記範囲外である場合、上記の作用効果を奏することはできない。
詳しくは、無機酸化物が含有する無機元素に対するNi原子のモル比が上記上限を超過する場合、例えば、特許文献1に記載されるように、Si原子に対するNi原子のモル比が、11.8(=60.2/5.1)である場合、無機酸化物の含有割合が不十分であり、複数のNiの間にスペースを十分に形成することができず、メタン化反応用触媒における細孔容積の向上を十分に図ることができない。
そのため、メタン化反応用触媒の触媒活性の向上を十分に図ることができず、メタン生成速度の向上を十分に図ることができない。
また、無機酸化物が含有する無機元素に対するNi原子のモル比が上記下限未満である場合、触媒活性成分であるNiの含有割合を十分に確保できず、メタン生成速度が低下してしまう。これらは、後述する実施例および比較例からも明らかである。
【0103】
また、メタン化反応用触媒は、好ましくは、無機酸化物がシリカを含む場合、Si原子に対するZr原子のモル比が、0.10以上4.5以下であり、無機酸化物がアルミナを含む場合、Al原子に対するZr原子のモル比が、0.10以上4.0以下であり、無機酸化物がチタニアを含む場合、Ti原子に対するZr原子のモル比が、0.15以上6.0以下であり、無機酸化物がセリアを含む場合、Ce原子に対するZr原子のモル比が、0.30以上12.0以下である。
【0104】
そのため、無機酸化物が、安定化ジルコニア担体の複数の粒子の間にスペースを形成するように作用して、メタン化反応用触媒における細孔容積のさらなる向上を図ることができる。これによって、メタン化反応用触媒の比表面積のさらなる向上を図ることができ、メタン生成速度のさらなる向上を図ることができる。
【0105】
また、無機酸化物の含有割合は、好ましくは、還元前触媒(湿式混合物の焼成体の総和)に対して、5質量%以上62質量%以下である。そのため、Niの分散性の向上を安定して図ることができ、メタン化反応用触媒における細孔容積の向上を安定して図ることができる。
【0106】
また、メタン化反応用触媒(還元前触媒)において、好ましくは、細孔直径が2nm〜12nmである細孔の容積の総和が、単位質量当たり0.050cm
3/g以上である。そのため、Niの表面露出量のさらなる増加を図ることができ、メタン化反応用触媒の触媒活性のさらなる向上を図ることができる。
【0107】
また、ジルコニアおよび/またはZrの塩と、無機酸化物と、安定化元素の塩と、Niの塩とを、Si原子、Al原子、Ti原子およびCe原子の少なくともいずれか1つに対するNi原子のモル比が上記の範囲となるように湿式混合して、湿式混合物を調製した後、湿式混合物を400℃以上800℃以下で焼成して、メタン化反応用触媒を製造する。
【0108】
そのため、簡易な方法でありながら、メタン化反応用触媒の触媒活性の向上を図ることができ、メタン生成速度の向上を図ることができるメタン化反応用触媒を製造できる。
【実施例】
【0109】
以下に実施例を示し、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は、それらに限定されない。以下の記載において用いられる配合割合(含有割合)、物性値、パラメータなどの具体的数値は、上記の「発明を実施するための形態」において記載されている、それらに対応する配合割合(含有割合)、物性値、パラメータなど該当記載の上限値(「以下」、「未満」として定義されている数値)または下限値(「以上」、「超過」として定義されている数値)に代替することができる。
【0110】
以下において記載されるメタン生成速度の測定法を下記する。
<メタン生成速度>
メタン化反応用触媒(還元後触媒)を、反応管(SUS304管、内径15mm×高さ100mm)に充填した。
【0111】
次いで、反応管を、常圧下において、250℃(反応温度)に維持し、二酸化炭素、水素および窒素を含む原料ガス(混合ガス)を反応管に供給して、メタン化反応用触媒と接触させた。
【0112】
なお、原料ガスにおいて、水素/二酸化炭素=4(モル比)であり、窒素は5体積%であった。また、原料ガスの流量は、1.0L/minであった。
【0113】
そして、メタン化反応用触媒と接触した後、反応管から流出する反応ガスを、熱伝導度検出(TCD)型ガスクロマトグラフィで分析した。反応ガスには、未反応の水素、未反応の二酸化炭素、および、生成物であるメタンのみが含有されていた。
【0114】
反応管に供給した水素および二酸化炭素の量と、反応管から流出する未反応の水素および二酸化炭素の量の比率から、触媒1g当たりのメタン生成速度(単位:mmol・s
−1・g
−1)を算出した。
【0115】
(実施例1〜9、比較例1〜3)
ジルコニアのヒドロゾル(商品名:Zr30AH、日産化学工業社製、ZrO
2:30wt.%、pH=4.0)15.00gに、硝酸サマリウム六水和物の結晶1.97gを加え、均一なスラリー(クリーム状のスラッジ)になるまで撹拌(湿式混合)した。
【0116】
次いで、そのスラリーに、硝酸ニッケル六水和物19.81gを20mLの純水に溶解した硝酸ニッケル水溶液を加えて、均一な混合溶液になるまで撹拌(湿式混合)した。
【0117】
次いで、混合溶液に、シリカゾル(商品名:スノーテックスOS、日産化学工業社製、SiO
2:20wt.%、pH=2.0〜4.0)を、Siの原子比[Si/(Ni+Zr+Sm+Si)]が下記表1に示す値となるように加えて、均一な溶液になるまで撹拌(湿式混合)して、湿式混合物を調製した。湿式混合物は、比較例1を除き、ジルコニアと、硝酸サマリウムと、硝酸ニッケルと、シリカとの混合物であった。なお、比較例1では、混合溶液にシリカゾルを添加せず、湿式混合物は、シリカを含有しなかった。
【0118】
次いで、湿式混合物を170℃に維持した恒温乾燥炉に入れて2時間乾燥させた。これにより、湿式混合物から余剰水分を揮発させた。
【0119】
次いで、乾燥後の湿式混合物を、500℃で8時間焼成して、メタン化反応用触媒(以下、還元前触媒とする。)を調製した。還元前触媒は、NiおよびSmが固溶する安定化ジルコニア担体と、安定化ジルコニア担体に担持されるNiOと、シリカとを備えていた。なお、比較例1の還元前触媒は、シリカを備えていなかった。
【0120】
各還元前触媒の細孔分布を窒素吸着法により測定した。得られた細孔分布から、細孔直径が2nm〜12nmである細孔(以下、2−12nm細孔とする。)の容積の総和Vを算出した。その結果を表1に示す。なお、表1では、比較例1の還元前触媒における2−12nm細孔の容積の総和V
0に対する、各還元前触媒のそれぞれにおける2−12nm細孔の容積の総和Vの割合(V/V
0)を示す。
【0121】
また、実施例4〜6および比較例1のそれぞれの細孔分布を、
図1に示す。
【0122】
次いで、還元前触媒20mgと反応不活性なアルミナ(γ−Al
2O
3)5gと均一に混合し、内径15mmの石英管(反応管)中に石英ウールで固定した。反応管を電気炉内に配置して、反応管内の温度が300℃となるように加熱し、反応管内に水素を流通させて、2時間維持した。これによって、還元前触媒に含まれるNiOが、金属状態のNiに還元された。
【0123】
以上によって、NiおよびSmが固溶する安定化ジルコニアと、シリカと、金属状態のNiとを備えるメタン化反応用触媒(還元後触媒)が調製された。なお、比較例1のメタン化反応用触媒(還元後触媒)は、シリカを備えていなかった。
【0124】
次いで、各メタン化反応用触媒(還元後触媒)のメタン生成速度kを測定した。その結果を表1に示す。なお、表1では、比較例1のメタン化反応用触媒のメタン生成速度k
0に対する、各メタン化反応用触媒のそれぞれのメタン生成速度kの割合(k/k
0)を示す。
【0125】
また、各メタン化反応用触媒(還元後触媒)におけるSi原子に対するNi原子のモル比(Ni/Si)と、k/k
0との相関について
図2に示し、各メタン化反応用触媒(還元後触媒)におけるSi原子に対するZr原子のモル比(Zr/Si)と、k/k
0との相関について
図3に示す。
【0126】
(比較例4)
比較例1と同様にして還元前触媒を製造した。また、上記のシリカゾルを、500℃で8時間焼成して、シリカ粉体を調製した。
【0127】
次いで、比較例1の還元前触媒とシリカ粉体とを、Siの原子比[Si/(Ni+Zr+Sm+Si)]が29.8原子%となるように乾式混合して、乾式混合物を調製した。乾式混合物の細孔分布を窒素吸着法により測定した。その結果を表1および
図1に示す。
【0128】
次いで、乾式混合物を、実施例1と同様の条件で還元して、メタン化反応用触媒(還元後触媒)を製造した。そして、メタン化反応用触媒(還元後触媒)のメタン生成速度kを測定した。その結果を表1に示す。
【0129】
(比較例5)
比較例1と同様にして還元前触媒を製造した。そして、還元前触媒と上記のシリカゾルとを、Siの原子比[Si/(Ni+Zr+Sm+Si)]が29.8原子%となるように撹拌混合して、懸濁溶液を調製した。
【0130】
次いで、懸濁溶液を、500℃で8時間焼成して還元前触媒を製造した。還元前触媒の細孔分布を窒素吸着法により測定した。その結果を表1に示す。
【0131】
次いで、還元前触媒を、実施例1と同様の条件で還元して、メタン化反応用触媒(還元後触媒)を製造した。そして、メタン化反応用触媒(還元後触媒)のメタン生成速度kを測定した。その結果を表1に示す。
【0132】
(実施例10〜14および比較例6〜8)
硝酸サマリウム六水和物1.97gに代えて、硝酸カルシウム四水和物2.15gを用いたこと、および、混合溶液に、上記シリカゾルを、Siの原子比[Si/(Ni+Zr+Ca+Si)]が下記表2に示す値となるように加えたこと以外は、実施例1と同様にして、メタン化反応用触媒(還元後触媒)を製造した。なお、比較例6では、混合溶液にシリカゾルを添加しなかった。
【0133】
また、各還元前触媒における2−12nm細孔の容積の総和V、および、比較例6の還元前触媒における2−12nm細孔の容積の総和V
0に対する、各還元前触媒のそれぞれにおける2−12nm細孔の容積の総和Vの割合(V/V
0)を、表2に示す。
【0134】
また、各メタン化反応用触媒(還元後触媒)のメタン生成速度k、および、比較例6のメタン化反応用触媒のメタン生成速度k
0に対する、各メタン化反応用触媒のそれぞれのメタン生成速度kの割合(k/k
0)を、表2に示す。
【0135】
また、各メタン化反応用触媒(還元後触媒)におけるSi原子に対するNi原子のモル比(Ni/Si)と、k/k
0との相関について
図2に示し、各メタン化反応用触媒(還元後触媒)におけるSi原子に対するZr原子のモル比(Zr/Si)と、k/k
0との相関について
図3に示す。
【0136】
【表1】
【0137】
【表2】
【0138】
安定化元素がSmおよびCaのいずれであっても、Si原子に対するNi原子のモル比(Ni/Si)が、0.20以上10.0以下であれば、2−12nm細孔の容積の総和の著しい増加が認められ、メタン生成速度の顕著な向上が確認された(実施例1〜14参照)。
一方、Ni/Siが10.0を超過する比較例2および比較例7では、2−12nm細孔の容積の総和の増加が不十分であり、メタン生成速度が十分に向上されなかった。また、Ni/Siが0.20未満の比較例3および比較例8においても、メタン生成速度が十分に向上されなかった。
【0139】
また、比較例4では、2−12nm細孔の容積の総和が減少しており、メタン生成速度が低下することが確認された。比較例5では、2−12nm細孔の容積の総和の増加がみられる一方、メタン生成速度が低下することが確認された。これは、触媒活性成分であるNiが、無機酸化物(シリカ)により被覆されて、Niの露出量が減少したことに起因すると推察される。
【0140】
(実施例15〜19、比較例9、10)
上記のシリカゾルを、アルミナゾル(商品名:アルミナゾル520、産化学工業社製、Al
2O
3:20wt.%、pH=3.0〜5.0)に変更したこと以外は、実施例1、3、4、7、9および比較例2、3と同様にして、メタン化反応用触媒(還元後触媒)を製造した。また、上記と同様にして、細孔分布およびメタン生成速度を測定した。その結果を表3、
図4および
図5に示す。
【0141】
(実施例20〜24、比較例11、12)
上記シリカゾルに代えて、上記アルミナゾルを、Alの原子比[Al/(Ni+Zr+Ca+Al)]が下記表4に示す値となるように加えたこと以外は、実施例10〜14および比較例7、8と同様にして、メタン化反応用触媒(還元後触媒)を製造した。また、上記と同様にして、細孔分布およびメタン生成速度を測定した。その結果を表4、
図4および
図5に示す。
【0142】
【表3-4】
【0143】
安定化元素がSmおよびCaのいずれであっても、Al原子に対するNi原子のモル比(Ni/Al)が、0.20以上7.0以下であれば、2−12nm細孔の容積の総和の著しい増加が認められ、メタン生成速度の顕著な向上が確認された。
【0144】
(実施例25〜29、比較例13、14)
上記のシリカゾルを、チタニアゾル(商品名:タイノックAM−15、多木化学社製、TiO
2:15wt.%、pH=4.0)に変更したこと以外は、実施例1、3、4、7、9および比較例2、3と同様にして、メタン化反応用触媒(還元後触媒)を製造した。また、上記と同様にして、細孔分布およびメタン生成速度を測定した。その結果を表5、
図6および
図7に示す。
【0145】
(実施例30〜34、比較例15、16)
上記シリカゾルに代えて、上記チタニアゾルを、Tiの原子比[Ti/(Ni+Zr+Ca+Ti)]が下記表6に示す値となるように加えたこと以外は、実施例10〜14および比較例7、8と同様にして、メタン化反応用触媒(還元後触媒)を製造した。また、上記と同様にして、細孔分布およびメタン生成速度を測定した。その結果を表6、
図6および
図7に示す。
【0146】
【表5-6】
【0147】
安定化元素がSmおよびCaのいずれであっても、Ti原子に対するNi原子のモル比(Ni/Ti)が、0.30以上10.5以下であれば、2−12nm細孔の容積の総和の著しい増加が認められ、メタン生成速度の顕著な向上が確認された。
【0148】
(実施例35〜39、比較例17、18)
上記のシリカゾルを、セリアゾル(商品名:CE−20A、日産化学工業社製、CeO
2:20wt.%、pH=2.0〜4.0)に変更したこと以外は、実施例1、3、4、7、9および比較例2、3と同様にして、メタン化反応用触媒(還元後触媒)を製造した。また、上記と同様にして、細孔分布およびメタン生成速度を測定した。その結果を表7、
図8および
図9に示す。
【0149】
(実施例40〜44、比較例19、20)
上記シリカゾルに代えて、上記セリアゾルを、Ceの原子比[Ce/(Ni+Zr+Ca+Ce)]が下記表8に示す値となるように加えたこと以外は、実施例10〜14および比較例7、8と同様にして、メタン化反応用触媒(還元後触媒)を製造した。また、上記と同様にして、細孔分布およびメタン生成速度を測定した。その結果を表8、
図8および
図9に示す。
【0150】
【表7-8】
【0151】
安定化元素がSmおよびCaのいずれであっても、Ce原子に対するNi原子のモル比(Ni/Ce)が、0.70以上25.0以下であれば、2−12nm細孔の容積の総和の著しい増加が認められ、メタン生成速度の顕著な向上が確認された。
【0152】
(実施例45〜48)
メタン化反応用触媒の組成を下記表9に示す原子%に変更したこと以外は、実施例4と同様にして、メタン化反応用触媒(還元後触媒)を製造した。
(比較例21〜24)
シリカゾルを添加しなかったこと以外は、実施例45〜48と同様にして、メタン化反応用触媒(還元後触媒)を製造した。また、上記と同様にして、細孔分布およびメタン生成速度を測定した。その結果を表9に示す。
【0153】
(実施例49〜52)
メタン化反応用触媒の組成を下記表9に示す原子%に変更したこと以外は、実施例12と同様にして、メタン化反応用触媒(還元後触媒)を製造した。
(比較例25〜28)
シリカゾルを添加しなかったこと以外は、実施例45〜48と同様にして、メタン化反応用触媒(還元後触媒)を製造した。また、上記と同様にして、細孔分布およびメタン生成速度を測定した。その結果を表9に示す。
【0154】
【表9】
【0155】
メタン化反応用触媒の組成が種々変更されても、Si原子に対するNi原子のモル比(Ni/Ce)が、0.20以上10.0以下であれば、2−12nm細孔の容積の総和の著しい増加が認められ、メタン生成速度の顕著な向上が確認された。
【0156】
(実施例53および比較例29)
上記のジルコニアのヒドロゾルを、酢酸酸化ジルコニウム水溶液(商品名:ジルコゾールZA−20、第一稀元素化学工業社製、ZrO(C
2H
3O
2)
2:20wt.%)に変更したこと以外は、実施例4と同様にして、メタン化反応用触媒(還元後触媒)を製造した。なお、比較例29では、混合溶液にシリカゾルを添加しなかった。
(実施例54)
上記のジルコニアのヒドロゾルを、硝酸酸化ジルコニウム水溶液(商品名:ジルコゾールZN、第一稀元素化学工業社製、ZrO(NO
3)
2:25wt.%)に変更したこと以外は、実施例4と同様にして、メタン化反応用触媒(還元後触媒)を製造した。また、上記と同様にして、細孔分布およびメタン生成速度を測定した。その結果を表10に示す。
【0157】
【表10】
【0158】
メタン化反応用触媒が、Zrの塩(例えば、酢酸酸化ジルコニウム、硝酸酸化ジルコニウムなど)から製造されても、Si原子に対するNi原子のモル比(Ni/Ce)が、0.20以上10.0以下であれば、メタン生成速度が向上することが確認された。
【0159】
(実施例55〜57)
混合溶液に、上記シリカゾルおよび上記アルミナゾルを、下記表11に示すSiの原子比およびAlの原子比となるように加えたこと以外は、実施例1と同様にして、メタン化反応用触媒(還元後触媒)を製造した。また、上記と同様にして、細孔分布およびメタン生成速度を測定した。その結果を表11に示す。
【0160】
【表11】
【0161】
無機酸化物として2種以上が混合されても、2−12nm細孔の容積の総和の著しい増加が認められ、メタン生成速度の顕著な向上が確認された。