特許第6867180号(P6867180)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6867180
(24)【登録日】2021年4月12日
(45)【発行日】2021年4月28日
(54)【発明の名称】半導体発光素子の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 33/32 20100101AFI20210419BHJP
   H01L 21/205 20060101ALI20210419BHJP
【FI】
   H01L33/32
   H01L21/205
【請求項の数】6
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2017-16860(P2017-16860)
(22)【出願日】2017年2月1日
(65)【公開番号】特開2018-125430(P2018-125430A)
(43)【公開日】2018年8月9日
【審査請求日】2019年9月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000226242
【氏名又は名称】日機装株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(72)【発明者】
【氏名】和田 貢
【審査官】 右田 昌士
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2017/013729(WO,A1)
【文献】 特開2001−308017(JP,A)
【文献】 中国特許出願公開第103811609(CN,A)
【文献】 特開2005−259768(JP,A)
【文献】 特開平10−294490(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0032647(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 33/00 − 33/64
H01L 21/205
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
n型AlGaN系半導体材料のn型クラッド層上にAlGaN系半導体材料の活性層を形成する工程と、
前記活性層上にp型AlGaN系半導体材料のp型クラッド層を形成する工程と、
前記p型クラッド層上が露出した状態で前記p型クラッド層を加熱する工程と、
前記p型クラッド層上にp型コンタクト層を形成する工程と、
前記p型コンタクト層を加熱する工程と、を備え、
前記活性層は、波長360nm以下の深紫外光を出力するよう構成され、
前記p型クラッド層を加熱する工程の温度は、750℃以上であり、前記p型コンタクト層を加熱する工程の温度よりも50℃以上高いことを特徴とする半導体発光素子の製造方法。
【請求項2】
n型AlGaN系半導体材料のn型クラッド層上にAlGaN系半導体材料の活性層を形成する工程と、
前記活性層上にp型AlGaN系半導体材料のp型クラッド層を形成する工程と、
前記p型クラッド層上が露出した状態で前記p型クラッド層を加熱する工程と、
前記p型クラッド層上にp型コンタクト層を形成する工程と、
前記p型コンタクト層を加熱する工程と、を備え、
前記活性層は、波長360nm以下の深紫外光を出力するよう構成され、
前記p型クラッド層を加熱する工程の温度は、前記p型コンタクト層を加熱する工程の温度よりも高く、
前記p型クラッド層は、前記p型クラッド層を加熱する工程後の水素濃度が5×1018/cm以下であることを特徴とする半導体発光素子の製造方法。
【請求項3】
前記p型クラッド層を加熱する工程の温度は、750℃以上であることを特徴とする請求項に記載の半導体発光素子の製造方法。
【請求項4】
前記p型クラッド層を加熱する工程は、実質的に水素(H)を含まない雰囲気ガス下でなされることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の半導体発光素子の製造方法。
【請求項5】
前記p型クラッド層を加熱する工程は、窒素(N)の雰囲気ガス下でなされることを特徴とする請求項1からのいずれか一項に記載の半導体発光素子の製造方法。
【請求項6】
前記p型クラッド層は、窒化アルミニウム(AlN)のモル分率が50%以上であることを特徴とする請求項1からのいずれか一項に記載の半導体発光素子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体発光素子および半導体発光素子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、深紫外光を出力する半導体発光素子の開発が進められている。深紫外光用の発光素子は、基板上に順に積層される窒化アルミニウムガリウム(AlGaN)系のn型クラッド層、活性層、p型クラッド層を有する。p型AlGaN層の形成には、マグネシウム(Mg)がドーパントとして用いられるが、原料ガスに含まれる水素(H)がMgと結合し、p型AlGaN層に多量の水素(H)が取り込まれる。p型AlGaN層に導入される水素(H)は、活性層へと拡散し、活性層を劣化させる一因となることが知られている。活性層への水素の拡散を防止するため、p型AlGaNとp型窒化ガリウム(GaN)の超格子構造をp型クラッド層に用いることが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−67792号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
波長360nm以下の深紫外光を出力させる場合、p型クラッド層として高AlN組成比のAlGaNを用いる必要がある。上述の超格子構造を適用した場合、高AlN組成のp型AlGaN層を実現することが難しい。
【0005】
本発明はこうした課題に鑑みてなされたものであり、その例示的な目的のひとつは、半導体発光素子の発光出力の低下を抑制する技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のある態様は、半導体発光素子の製造方法である。この方法は、n型AlGaN系半導体材料のn型クラッド層上にAlGaN系半導体材料の活性層を形成する工程と、活性層上にp型AlGaN系半導体材料のp型クラッド層を形成する工程と、p型クラッド層上が露出した状態でp型クラッド層を加熱する工程と、を備える。活性層は、波長360nm以下の深紫外光を出力する。
【0007】
この態様によると、p型クラッド層上が露出した状態でp型クラッド層を加熱してアニール処理を施すことにより、p型クラッド層の水素濃度を低減できる。これにより、p型クラッド層から活性層への水素の拡散を抑制し、水素に起因する活性層の劣化を低減できる。これにより、波長360nm以下の深紫外光を出力する半導体発光素子において、通電使用に伴う発光出力の低下を抑制できる。
【0008】
p型クラッド層上にp型コンタクト層を形成する工程と、p型コンタクト層を加熱する工程と、をさらに備えてもよい。p型クラッド層を加熱する工程の温度は、p型コンタクト層を加熱する工程の温度よりも高くてもよい。
【0009】
p型クラッド層を加熱する工程の温度は、750℃以上であってもよい。
【0010】
p型クラッド層を加熱する工程は、実質的に水素(H)を含まない雰囲気ガス下でなされてもよい。
【0011】
p型クラッド層を加熱する工程は、窒素(N)の雰囲気ガス下でなされてもよい。
【0012】
p型クラッド層は、窒化アルミニウム(AlN)のモル分率が50%以上であってもよい。
【0013】
p型クラッド層は、p型クラッド層を加熱する工程後の水素濃度が5×1018/cm以下であってもよい。
【0014】
本発明の別の態様は、半導体発光素子である。この半導体発光素子は、n型AlGaN系半導体材料のn型クラッド層と、n型クラッド層上に設けられ、AlGaN系半導体材料の活性層と、活性層上に設けられ、p型AlGaN系半導体材料のp型クラッド層と、を備える。活性層は、波長360nm以下の深紫外光を出力し、p型クラッド層は、水素濃度が5×1018/cm以下である。
【0015】
この態様によると、波長360nm以下の深紫外光を出力する半導体発光素子において、p型クラッド層の濃度を5×1018/cm以下とすることにより、活性層への水素の拡散を好適に抑えることができる。これにより、通電使用に伴う半導体発光素子の発光出力の低下を抑制できる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、深紫外用の半導体発光素子の発光出力の低下を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】実施の形態に係る半導体発光素子の構成を概略的に示す断面図である。
図2】半導体発光素子の製造方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照しながら、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。なお、説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を適宜省略する。また、説明の理解を助けるため、各図面における各構成要素の寸法比は、必ずしも実際の発光素子の寸法比と一致しない。
【0019】
図1は、実施の形態に係る半導体発光素子10の構成を概略的に示す断面図である。半導体発光素子10は、中心波長λが200nm以上360nm以下となる「深紫外光」を発するように構成されるLED(Light Emitting Diode)チップである。このような波長の深紫外光を出力するため、半導体発光素子10は、バンドギャップが約3.4eV以上となる窒化アルミニウムガリウム(AlGaN)系半導体材料で構成される。本実施の形態では、特に、中心波長λが約240nm〜350nmの深紫外光を発する場合について示す。
【0020】
本明細書において、「AlGaN系半導体材料」とは、主に窒化アルミニウム(AlN)と窒化ガリウム(GaN)を含む半導体材料のことをいい、窒化インジウム(InN)などの他の材料を含有する半導体材料を含むものとする。したがって、本明細書にいう「AlGaN系半導体材料」は、例えば、In1−x−yAlGaN(0≦x+y≦1、0≦x≦1、0≦y≦1)の組成で表すことができ、AlN、GaN、AlGaN、窒化インジウムアルミニウム(InAlN)、窒化インジウムガリウム(InGaN)、窒化インジウムアルミニウムガリウム(InAlGaN)を含むものとする。
【0021】
また「AlGaN系半導体材料」のうち、AlNを実質的に含まない材料を区別するために「GaN系半導体材料」ということがある。「GaN系半導体材料」には、主にGaNやInGaNが含まれ、これらに微量のAlNを含有する材料も含まれる。同様に、「AlGaN系半導体材料」のうち、GaNを実質的に含まない材料を区別するために「AlN系半導体材料」ということがある。「AlN系半導体材料」には、主にAlNやInAlNが含まれ、これらに微量のGaNが含有される材料も含まれる。
【0022】
半導体発光素子10は、基板20と、バッファ層22と、n型クラッド層24と、活性層26と、電子ブロック層28と、p型クラッド層30と、p型コンタクト層32と、p側電極34と、n側電極36と、を有する。
【0023】
基板20は、半導体発光素子10が発する深紫外光に対して透光性を有する基板であり、例えば、サファイア(Al)基板である。基板20は、第1主面20aと、第1主面20aの反対側の第2主面20bを有する。第1主面20aは、バッファ層22より上の各層を成長させるための結晶成長面となる一主面である。第2主面20bは、活性層26が発する深紫外光を外部に取り出すための光取出面となる一主面である。変形例において、基板20は、窒化アルミニウム(AlN)基板であってもよいし、窒化アルミニウムガリウム(AlGaN)基板であってもよい。
【0024】
バッファ層22は、基板20の第1主面20aの上に形成される。バッファ層22は、n型クラッド層24より上の各層を形成するための下地層(テンプレート層)である。バッファ層22は、例えば、アンドープのAlN層であり、具体的には高温成長させたAlN(HT−AlN;High Temparature AlN)層である。バッファ層22は、AlN層上に形成されるアンドープのAlGaN層を含んでもよい。変形例において、基板20がAlN基板またはAlGaN基板である場合、バッファ層22は、アンドープのAlGaN層のみで構成されてもよい。つまり、バッファ層22は、アンドープのAlN層およびAlGaN層の少なくとも一方を含む。
【0025】
n型クラッド層24は、バッファ層22の上に形成される。n型クラッド層24は、n型のAlGaN系半導体材料層であり、例えば、n型の不純物としてシリコン(Si)がドープされるAlGaN層である。n型クラッド層24は、活性層26が発する深紫外光を透過するように組成比が選択され、例えば、AlNのモル分率が30%以上、好ましくは、40%以上または50%以上となるように形成される。n型クラッド層24は、活性層26が発する深紫外光の波長よりも大きいバンドギャップを有し、例えば、バンドギャップが4.3eV以上となるように形成される。n型クラッド層24は、AlNのモル分率が80%以下、つまり、バンドギャップが5.5eV以下となるように形成されることが好ましく、AlNのモル分率が70%以下(つまり、バンドギャップが5.2eV以下)となるように形成されることがより望ましい。n型クラッド層24は、1μm〜3μm程度の厚さを有し、例えば、2μm程度の厚さを有する。
【0026】
活性層26は、AlGaN系半導体材料で構成され、n型クラッド層24と電子ブロック層28の間に挟まれてダブルへテロ接合構造を形成する。活性層26は、単層または多層の量子井戸構造を有してもよく、例えば、アンドープのAlGaN系半導体材料で形成されるバリア層と、アンドープのAlGaN系半導体材料で形成される井戸層の積層体で構成されてもよい。活性層26は、波長360nm以下の深紫外光を出力するためにバンドギャップが3.4eV以上となるように構成され、例えば、波長310nm以下の深紫外光を出力できるようにAlN組成比が選択される。活性層26は、n型クラッド層24の上に形成されるが、n型クラッド層24の全面に形成されず、n型クラッド層24の一部領域上にのみ形成される。つまり、n型クラッド層24の露出面24aの上には活性層26が設けられない。
【0027】
電子ブロック層28は、活性層26の上に形成される。電子ブロック層28は、アンドープのAlGaN系半導体材料層であり、例えば、AlNのモル分率が40%以上、好ましくは、50%以上となるように形成される。電子ブロック層28は、AlNのモル分率が80%以上となるように形成されてもよく、実質的にGaNを含まないAlN系半導体材料で形成されてもよい。電子ブロック層28は、1nm〜10nm程度の厚さを有し、例えば、2nm〜5nm程度の厚さを有する。なお、電子ブロック層28は、アンドープ層ではなく、マグネシウム(Mg)がドープされるp型層であってもよい。
【0028】
p型クラッド層30は、電子ブロック層28の上に形成されるp型半導体層である。p型クラッド層30は、p型のAlGaN系半導体材料層であり、例えば、p型の不純物としてMgがドープされるAlGaN層である。p型クラッド層30は、AlNのモル分率が50%以上となるように形成される。p型クラッド層30は、水素(H)濃度が5×1018/cm以下となるように形成され、好ましくは、1×1018/cm以下となるように形成される。p型クラッド層30は、10nm〜100nm程度の厚さを有し、例えば、20nm〜50nm程度の厚さを有する。
【0029】
p型コンタクト層32は、p型クラッド層30の上に形成されるp型半導体層である。p型コンタクト層32は、p型のGaN系半導体材料層またはp型のAlGaN系半導体材料層であり、p型クラッド層30よりもAlNのモル分率が低くなるように形成される。p型コンタクト層32は、AlNのモル分率が30%以下となるように形成され、好ましくは20%以下または10%以下となるように形成される。p型コンタクト層32は、p型のGaN層であってもよいし、p型のInGaN層であってもよいし、p型のAlGaN層であてもよいし、p型のInAlGaN層であってもよい。p型コンタクト層32は、300nm〜1μm程度の厚さを有し、例えば、400nm〜600nm程度の厚さを有する。
【0030】
p側電極34は、p型コンタクト層32の上に形成される。p側電極34は、p型コンタクト層32の上に順に積層されるニッケル(Ni)/金(Au)の多層膜で形成される。n側電極36は、n型クラッド層24の一部領域である露出面24a上に形成される。n側電極36は、n型クラッド層24の上に順にチタン(Ti)/アルミニウム(Al)/Ti/金(Au)が順に積層された多層膜で形成される。
【0031】
つづいて、半導体発光素子10の製造方法について説明する。図2は、半導体発光素子10の製造方法を示すフローチャートである。まず、基板20の第1主面20aの上にバッファ層22、n型クラッド層24、活性層26、電子ブロック層28、p型クラッド層30が順に形成される(S10)。
【0032】
基板20は、サファイア(Al)基板であり、AlGaN系半導体材料を形成するための成長基板である。例えば、サファイア基板の(0001)面上にバッファ層22が形成される。バッファ層22は、例えば、高温成長させたAlN(HT−AlN)層と、アンドープのAlGaN(u−AlGaN)層とを含む。n型クラッド層24、活性層26、電子ブロック層28およびp型クラッド層30は、AlGaN系半導体材料またはAlN系半導体材料で形成される層であり、有機金属化学気相成長(MOVPE)法や、分子線エピタキシ(MBE)法などの周知のエピタキシャル成長法を用いて形成できる。p型クラッド層30は、例えば、1000℃〜1150℃の成長温度で形成される。
【0033】
次に、p型クラッド層30を第1温度で加熱してアニール処理を行う(S12)。p型クラッド層30のアニール処理は、p型クラッド層30の上が露出した状態、つまり、p型クラッド層30の上にp型コンタクト層32が形成されていない状態で行われる。p型クラッド層30を加熱する第1温度は、p型クラッド層30の成長温度より低く設定され、例えば、750℃〜950℃の温度が設定される。第1温度は、例えば、750℃、800℃、850℃、900℃または950℃であってもよい。つまり、第1温度は、p型クラッド層30の成長温度よりも200℃程度低い。p型クラッド層30のアニール温度は、p型クラッド層30の組成比、例えば、AlNのモル分率に応じて決められてもよい。
【0034】
p型クラッド層30のアニール処理は、実質的に水素(H)を含まない雰囲気ガス下で行われ、例えば、水素(H)、アンモニア(NH)、水蒸気(HO)といった水素(H)を含むガスが避けられる。p型クラッド層30のアニール時の雰囲気ガスとして、窒素(N)ガス、酸素(O)ガス、または、アルゴン(Ar)などの希ガスを用いることができ、例えば、純窒素ガスや乾燥空気を用いることができる。水素を実質的に含まない雰囲気ガス下でアニール処理を行うことにより、p型クラッド層30に含まれる水素を除去し、p型クラッド層30の水素濃度を低下させることができる。p型クラッド層30のアニール処理は、5分以上、好ましくは10分以上行われ、例えば、30分または1時間のアニール処理がなされる。
【0035】
つづいて、p型クラッド層30の上にp型コンタクト層32を形成する(S14)。p型コンタクト層32は、AlGaN系半導体材料またはGaN系半導体材料で形成され、有機金属化学気相成長(MOVPE)法や、分子線エピタキシ(MBE)法などの周知のエピタキシャル成長法を用いて形成できる。p型コンタクト層32は、例えば、950℃〜1100℃の成長温度で形成される。
【0036】
つづいて、p型コンタクト層32を第2温度で加熱してアニール処理を行う(S16)。p型コンタクト層32を加熱する第2温度は、p型コンタクト層32の成長温度より低く設定され、p型クラッド層30をアニールする第1温度より低く設定される。p型コンタクト層32をアニールする第2温度は,例えば、700℃〜900℃の温度が設定される。第2温度は、例えば、700℃、750℃、800℃、850℃または900℃であってもよい。つまり、第2温度は、p型コンタクト層32の成長温度よりも200℃程度低い。p型コンタクト層32のアニール温度は、p型コンタクト層32の組成比、例えば、AlNのモル分率に応じて決められてもよい。p型コンタクト層32のアニール処理は、5分以上、好ましくは10分以上行われ、例えば、30分または1時間のアニール処理がなされる。これにより、p型コンタクト層32からも水素が除去される。
【0037】
つづいて、p型コンタクト層32の上にp側電極34が形成される(S18)。また、n型クラッド層24の一部領域が露出面24aとなるように、活性層26、電子ブロック層28、p型クラッド層30およびp型コンタクト層32の一部が除去され、n型クラッド層24の露出面24aの上にn側電極36が形成される。p側電極34およびn側電極36は、例えば、電子ビーム蒸着法やスパッタリング法などの周知の方法により形成することができる。これにより、図1に示す半導体発光素子10ができあがる。
【0038】
なお、p型クラッド層30のアニール処理は、p型クラッド層30を形成するための結晶成長装置を用いてなされてもよいし、p型クラッド層30を形成する結晶成長装置とは異なる加熱装置、例えばアニール炉などを用いてもよい。同様に、p型コンタクト層32のアニール処理は、p型クラッド層30を形成するための結晶装置を用いてもよいし、p型コンタクト層32を形成する結晶成長装置とは別の加熱装置を用いてもよい。
【0039】
本実施の形態によれば、p型クラッド層30の上が露出した状態でp型クラッド層30をアニールすることで、p型コンタクト層32の形成後にのみアニールをする場合と比べてp型クラッド層30の水素濃度をより低減させることができる。p型クラッド層30の形成後にアニール処理をせず、p型コンタクト層32の形成後にアニール処理をした比較例では、p型クラッド層30の水素濃度が1×1019/cm以上となってしまう。一方、p型クラッド層30の形成後であってp型コンタクト層32の形成前にアニール処理をした場合には、p型クラッド層30の水素濃度を5×1018/cm以下にでき、好ましい実施例では、1×1018/cm以下にできる。p型クラッド層30の水素濃度を低減させることで、半導体発光素子10の通電使用による活性層26やn型クラッド層24への水素の拡散量を低減させ、水素の拡散に起因する発光出力の低下を抑制することができる。
【0040】
本実施の形態によれば、p型クラッド層30の形成後であってp型コンタクト層32の形成前にアニール処理をすることで、p型コンタクト層32をアニールする第2温度よりも高い第1温度でp型クラッド層30をアニールできる。p型クラッド層30を比較的高温でアニール処理することにより、水素除去の効果を高めることができ、例えば、第1温度を第2温度より50℃以上高くすることで、水素除去効果を向上できる。仮に、p型コンタクト層32の形成後に第2温度よりも高い第1温度でアニール処理をした場合、高温処理によってp型コンタクト層32にダメージを与えるおそれがある。一方、本実施の形態によれば、p型コンタクト層32の形成前に比較的高い第1温度でp型クラッド層30をアニールするため、p型コンタクト層32への熱影響を抑えつつ、p型クラッド層30の水素濃度を効果的に低減させることができる。
【0041】
以上、本発明を実施例にもとづいて説明した。本発明は上記実施の形態に限定されず、種々の設計変更が可能であり、様々な変形例が可能であること、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは、当業者に理解されるところである。
【符号の説明】
【0042】
10…半導体発光素子、24…n型クラッド層、26…活性層、30…p型クラッド層、32…p型コンタクト層、36…n側電極。
図1
図2