(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6867206
(24)【登録日】2021年4月12日
(45)【発行日】2021年4月28日
(54)【発明の名称】油圧装置
(51)【国際特許分類】
F04B 23/02 20060101AFI20210419BHJP
F04B 23/00 20060101ALI20210419BHJP
F04B 53/08 20060101ALI20210419BHJP
【FI】
F04B23/02 E
F04B23/00 A
F04B53/08 E
【請求項の数】2
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2017-60329(P2017-60329)
(22)【出願日】2017年3月27日
(65)【公開番号】特開2018-162718(P2018-162718A)
(43)【公開日】2018年10月18日
【審査請求日】2020年2月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000241267
【氏名又は名称】豊興工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】岸 将男
(72)【発明者】
【氏名】松本 宗一郎
【審査官】
岸 智章
(56)【参考文献】
【文献】
実開昭49−050804(JP,U)
【文献】
特開2012−110151(JP,A)
【文献】
特開平09−275663(JP,A)
【文献】
特開平11−182447(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04B 23/00
F04B 23/02
F04B 53/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に作動油を貯蔵する油タンクと、貯蔵作動油を吸入吐出して負荷側に供給する油圧ポンプと、油圧ポンプを回転駆動し自己を空気冷却する冷却ファンを有する電動機と、油タンクに貯蔵する作動油を冷却する空冷式の熱交換器とを備え、油圧ポンプは可変容量型で、内部からのドレンを排出するドレン管路を有し、ドレン管路を熱交換器に接続し、熱交換器は油圧ポンプのドレンを冷却して油タンクに戻し、熱交換器を電動機の冷却ファンと対向して配置し、冷却ファンは正逆いずれか一方に回転すると回転軸に沿って電動機側から熱交換器側へ送風するもので、中心から径方向へ延び、周方向へ間隙を有して複数の羽根を有し、複数の羽根は回転軸に対して傾斜して配置し、電動機の冷却ファンから排出する冷却空気を熱交換器に当てることを特徴とする油圧装置。
【請求項2】
内部に作動油を貯蔵する油タンクと、貯蔵作動油を吸入吐出して負荷側に供給する油圧ポンプと、油圧ポンプを回転駆動し自己を空気冷却する冷却ファンを有する電動機と、油タンクに貯蔵する作動油を冷却する空冷式の熱交換器とを備え、油圧ポンプは可変容量型で、内部からのドレンを排出するドレン管路を有し、ドレン管路を熱交換器に接続し、熱交換器は油圧ポンプのドレンを冷却して油タンクに戻し、熱交換器を電動機の冷却ファンと対向して配置し、冷却ファンは正逆いずれに回転しても回転軸の径方向外方へ送風するもので、板状部材の一端面に中心から径方向へ延び、周方向へ間隙を有して複数の羽根を有し、複数の羽根は回転軸から直線で放射状に配置し、板状部材の他端面は熱交換器へ対向して配置し、電動機には冷却ファンを覆うカバーを有し、カバーは羽根の径方向外方へ送風した冷却空気を内部に沿わせて熱交換器へ排出し、電動機の冷却ファンから排出する冷却空気を熱交換器に当てることを特徴とする油圧装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作動油を貯蔵する油タンクの上板上に貯蔵作動油を吸入吐出して負荷側に供給する油圧ポンプと油圧ポンプを回転駆動する電動機とを載置し、油タンクに貯蔵する作動油を冷却する空冷式の熱交換器を有する油圧装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の油圧装置は、作動油を貯蔵する油タンクの上板上に油圧ポンプと、油圧ポンプを回転駆動し自己を空気冷却する冷却ファンを有する電動機を載置し、電動機の一側に空冷式の熱交換器を配置して、冷却ファンによる熱交換器側から電動機側への冷却空気の吸込みを利用して、熱交換器の内部を流れる作動油を冷却している(たとえば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開昭59−173533号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、かかる従来の油圧装置では、冷却ファンによる熱交換器側から電動機側への冷却空気の吸込みで熱交換器の内部を流れる作動油を冷却しているため、電動機の冷却ファンが小さいと、作動油の冷却に必要な風量を確保し難く、十分な冷却効果を得ることができないという問題点があった。
【0005】
本発明の課題は、作動油の十分な冷却効果を得られる油圧装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる課題を達成すべく、本発明は次の手段をとった。即ち、
内部に作動油を貯蔵する油タンクと、貯蔵作動油を吸入吐出して負荷側に供給する油圧ポンプと、油圧ポンプを回転駆動し自己を空気冷却する冷却ファンを有する電動機と、油タンクに貯蔵する作動油を冷却する空冷式の熱交換器とを備え、
油圧ポンプは可変容量型で、内部からのドレンを排出するドレン管路を有し、ドレン管路を熱交換器に接続し、熱交換器は油圧ポンプのドレンを冷却して油タンクに戻し、熱交換器を電動機の冷却ファンと対向して配置し、
冷却ファンは正逆いずれか一方に回転すると回転軸に沿って電動機側から熱交換器側へ送風するもので、中心から径方向へ延び、周方向へ間隙を有して複数の羽根を有し、複数の羽根は回転軸に対して傾斜して配置し、電動機の冷却ファンから排出する冷却空気を熱交換器に当てることを特徴とする油圧装置がそれである。
【0007】
また、内部に作動油を貯蔵する油タンクと、貯蔵作動油を吸入吐出して負荷側に供給する油圧ポンプと、油圧ポンプを回転駆動し自己を空気冷却する冷却ファンを有する電動機と、油タンクに貯蔵する作動油を冷却する空冷式の熱交換器とを備え、油圧ポンプは可変容量型で、内部からのドレンを排出するドレン管路を有し、ドレン管路を熱交換器に接続し、熱交換器は油圧ポンプのドレンを冷却して油タンクに戻し、熱交換器を電動機の冷却ファンと対向して配置し、冷却ファンは正逆いずれに回転しても回転軸の径方向外方へ送風するもので、板状部材の一端面に中心から径方向へ延び、周方向へ間隙を有して複数の羽根を有し、複数の羽根は回転軸から直線で放射状に配置し、板状部材の他端面は熱交換器へ対向して配置し、電動機には冷却ファンを覆うカバーを有し、カバーは羽根の径方向外方へ送風した冷却空気を内部に沿わせて熱交換器へ排出し、電動機の冷却ファンから排出する冷却空気を熱交換器に当てることを特徴とする油圧装置がそれである。
【発明の効果】
【0008】
以上詳述したように、請求項1
および請求項2に記載の発明は、熱交換器を電動機の冷却ファンと対向して配置し、電動機の冷却ファンから排出する冷却空気を熱交換器に当てた。このため、冷却ファンによる電動機側から熱交換器側への冷却空気の排出で熱交換器の内部を流れる作動油を冷却しているから、冷却ファンによる冷却空気の吸込みで、熱交換器の内部を流れる作動油を冷却する従来の装置に比し、作動油の冷却に必要な風量を確保することができ、十分な冷却効果を得ることができる。
【0009】
また、
請求項1および請求項2に記載の発明は、油圧ポンプは可変容量型で、内部からのドレンを排出するドレン管路を有し、ドレン管路を熱交換器に接続し、熱交換器は油圧ポンプのドレンを冷却して油タンクに戻した。このため、油圧ポンプから排出される高温のドレンが熱交換器により冷却されたのち油タンク内に流入するから、ドレンによる油タンク内の温度上昇を抑制することができる。
【0010】
また、
請求項1に記載の発明は、冷却ファンは正逆いずれか一方に回転すると回転軸に沿って電動機側から熱交換器側へ送風するもので、中心から径方向へ延び、周方向へ間隙を有して複数の羽根を有し、複数の羽根は回転軸に対して傾斜して配置した。このため、従来の電動機の冷却ファンを変更することで、冷却空気を電動機側から熱交換器側へ排出できるから、容易に製作することができる。
【0011】
また、
請求項2に記載の発明は、冷却ファンは正逆いずれに回転しても回転軸の径方向外方へ送風するもので、板状部材の一端面に中心から径方向へ延び、周方向へ間隙を有して複数の羽根を有し、複数の羽根は回転軸から直線で放射状に配置し、板状部材の他端面は熱交換器へ対向して配置し、電動機には冷却ファンを覆うカバーを有し、カバーは羽根の径方向外方へ送風した冷却空気を内部に沿わせて熱交換器へ排出した。このため、電動機の回転方向に関わらず十分な冷却効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の一実施形態を示し、油圧装置の一部を断面で示した正面図である。
【
図2】他の実施形態を示した油圧装置の一部を断面で示した正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づき説明する。
図1において、1は内部に作動油を貯蔵する油タンクで、上部を開口した略直方体形状に形成し、上部開口を着脱自在の上板2で閉塞している。3は油圧ポンプ4を回転駆動し自己を空気冷却する冷却ファン5を有する電動機で、上板2上に複数の緩衝部材6、基板部材7を介して載置固定している。油圧ポンプ4は可変容量型で、上板2上で電動機3の一側面に固定し、電動機3の回転駆動で油タンク1の貯蔵作動油を吸入管路4Aより吸入して吐出管路4Bに吐出する。吐出管路4Bに吐出した作動油は負荷側としての図示しないアクチュエータに供給する。8は油圧ポンプ4に備えた圧力計で、油圧ポンプ4の吐出圧力を計測する。9は作動油の貯蔵量を外部から視認する油面計で、油タンク1の一側面上方に配置している。10は油タンク1の貯蔵作動油を排出する排出口を着脱自在に閉塞する栓部材で、油タンク1の一側面下方に配置している。油タンク1の上板2上には、作動油を油タンク1内部に注油する注油口兼エアブリーザ11と、装置を吊り上げて移動するための複数のフック部材12と、油タンク1に貯蔵する作動油を冷却する空冷式の熱交換器13を設けている。熱交換器13は、略直方体形状で、電動機3の冷却ファン5と対向して配置している。14は油圧ポンプ4の内部からのドレンを排出するドレン管路で、油圧ポンプ4に有し、熱交換器13に接続している。15は熱交換器13で冷却したドレンを油タンク1に流入するドレン管路で、熱交換器13に有し、油タンク1に接続している。
【0014】
電動機3は、油圧ポンプ4を固定した一側面と軸方向反対の他側面へ複数のねじ部材16Aにより着脱自在にカバー16を取付け、カバー16の内部に冷却ファン5を収装している。カバー16は、電動機3への取付個所に隙間を有すると共に、熱交換器13と対向する一端面に複数の開口16Bを貫通形成している。冷却ファン5は、略円柱形状の本体部5Aの外周面に、中心から半径方向へ延び、周方向へ等間隔に5枚の羽根5Bを有している。羽根5Bは、本体部5Aに
図1の紙面右上方から左下方に傾斜して一体形成している。そして、冷却ファン5は本体部5Aを電動機3の回転軸3Aに取付け、正方向に回転することで、図示矢印の如く電動機3の外周からカバー16内部に吸込んだ冷却空気を、回転軸3Aに沿って電動機3側から熱交換器13側へ送風する。
【0015】
次に、かかる構成の作動を説明する。
電動機3によって油圧ポンプ4を回転駆動すると、油圧ポンプ4は吸入管路4Aより油タンク1に貯蔵した作動油を吸入して吐出管路4Bに吐出し、この吐出した作動油は図示しないアクチュエータに供給される。また、電動機3によって冷却ファン5は正方向に回転し、図示矢印の如く回転軸3Aに沿って電動機3側から冷却空気を吸い込み、熱交換器13側へ排出する。そして、排出された冷却空気は、カバー16の複数の開口16Bを通過して熱交換器13へ当たる。油圧ポンプ4から排出されるドレンは、ドレン管路14を通って熱交換器13に流入し、熱交換器13で冷却空気により冷却されたのちドレン管15を通って油タンク1に流入する。
【0016】
かかる作動で、熱交換器13を電動機3の冷却ファン5と対向して配置し、電動機3の冷却ファン5から排出する冷却空気を熱交換器13に当てた。このため、冷却ファン5による電動機3側から熱交換器13側への冷却空気の排出で熱交換器13の内部を流れる作動油を冷却しているから、冷却ファンによる冷却空気の吸込みで、熱交換器の内部を流れる作動油を冷却する従来の装置に比し、作動油の冷却に必要な風量を確保することができ、十分な冷却効果を得ることができる。
【0017】
また、油圧ポンプ4は可変容量型で、内部からのドレンを排出するドレン管路14を有し、ドレン管路14を熱交換器13に接続し、熱交換器13は油圧ポンプ4のドレンを冷却してドレン管路15を介して油タンク1に戻した。このため、油圧ポンプ4から排出される高温のドレンが熱交換器13により冷却されたのち油タンク1内に流入するから、ドレンによる油タンク1内の温度上昇を抑制することができる。
【0018】
また、冷却ファン5は正方向に回転すると回転軸3Aに沿って電動機3側から熱交換器13側へ送風するもので、中心から径方向へ延び、周方向へ間隙を有して5枚の羽根5Bを有し、5枚の羽根5Bは回転軸3Aに対して傾斜して配置した。このため、従来の電動機の冷却ファンを変更することで、冷却空気を電動機3側から熱交換器13側へ排出できるから、容易に製作することができる。
【0019】
図2は、本発明の他実施形態を示し、一実施形態と同一個所には同符号を付して説明を省略し、異なる個所についてのみ説明する。
図2において、電動機3は油圧ポンプ4を固定した一側面と軸方向反対の他側面へ複数のねじ部材17Aにより着脱自在にカバー17を取付け、カバー17の内部に冷却ファン5に替えて冷却ファン18を収装している。カバー17は電動機3への取付個所に隙間を有している。また、カバー17は、冷却ファン18を覆うように配置され、冷却ファン18の軸方向中央部から両端部に向かって縮径する形状で、熱交換器13と対向する一端面には複数の開口17Bを貫通形成している。冷却ファン18は、円形の板状部材18Aの一端面に中心から径方向に延び、周方向へ等間隔に6枚の羽根18Bを有すると共に、半径方向の中心部には本体部18Cを有している。羽根18Bは、本体部18Cから直線で放射状に一体形成している。冷却ファン18は本体部18Cを電動機3の出力軸3Aに取付け、正逆いずれの方向に回転しても、電動機3の外周からカバー17内部に吸込んだ冷却空気を、板状部材18Aの一端面に沿って羽根18Bの径方向外方へ送風する。そして、羽根18Bの径方向外方へ送風した冷却空気は、図示矢印の如く冷却ファン18を覆うカバー17の内部に沿って熱交換器13へ排出される。
【0020】
作動は、電動機3によって油圧ポンプ4を回転駆動すると、油圧ポンプ4は吸入管路4Aより油タンク1に貯蔵した作動油を吸入して吐出管路4Bに吐出し、この吐出した作動油は図示しないアクチュエータに供給される。また、電動機3によって冷却ファン18は回転し、図示矢印の如く電動機3側から冷却空気を吸い込み、板状部材18Aの一端面に沿って羽根18Bの径方向外方へ送風する。そして、羽根18Bの径方向外方へ送風した冷却空気は、図示矢印の如く冷却ファン18を覆うカバー17の内部に沿って熱交換器13側へ排出され、カバー17の複数の開口17Bを通過して熱交換器13へ当たる。油圧ポンプ4から排出されるドレンは、ドレン管路14を通って熱交換器13に流入し、熱交換器13で冷却空気により冷却されたのちドレン管15を通って油タンク1に流入する。
【0021】
かかる作動で、一実施形態と略同様に、冷却ファン18による電動機3側から熱交換器13側への冷却空気の排出で熱交換器13の内部を流れる作動油を冷却しているから、冷却ファンによる冷却空気の吸込みで、熱交換器の内部を流れる作動油を冷却する従来の装置に比し、作動油の冷却に必要な風量を確保することができ、十分な冷却効果を得ることができる。また、油圧ポンプ4から排出される高温のドレンが熱交換器13により冷却されたのち油タンク1内に流入するから、ドレンによる油タンク1内の温度上昇を抑制することができる。
【0022】
また、冷却ファン18は正逆いずれに回転しても回転軸3Aの径方向外方へ送風するもので、板状部材18Aの一端面に中心から径方向へ延び、周方向へ間隙を有して6枚の羽根18Bを有し、6枚の羽根18Bは回転軸3Aから直線で放射状に配置し、板状部材18Aの他端面は熱交換器13へ対向して配置し、電動機3には冷却ファン18を覆うカバー17を有し、カバー17は羽根18Bの径方向外方へ送風した冷却空気を内部に沿わせて熱交換器13へ排出した。このため、電動機3の回転方向に関わらず十分な冷却効果を得ることができる。
【0023】
なお、前述の各実施形態では、カバー16、17は熱交換器13と対向する一端面を複数の開口16B、17Bを貫通形成して閉塞したが、一端面を開口形成してもよい。また、油圧ポンプ4を電動機3の一側面に固定したが、油圧ポンプ4を油タンク1の上板2上に載置固定し、電動機3とカップリングで結合してもよい。また、一実施形態では、羽根5Bは、本体部5Aに
図1の紙面右上方から左下方に傾斜して一体形成し、冷却ファン5を正方向に回転することで、図示矢印の如く電動機3側から熱交換器13側へ送風したが、これに限らず、羽根5Bは、本体部5Aに
図1の紙面左上方から右下方に傾斜して一体形成し、冷却ファン5を逆方向に回転することで、図示矢印の如く電動機3側から熱交換器13側へ送風してもよいことは勿論である。
【符号の説明】
【0024】
1:油タンク
3:電動機
3A:回転軸
4:油圧ポンプ
5、18:冷却ファン
5B、18B:羽根
13:熱交換器
14、15:ドレン管路
16、17:カバー
18A:板状部材