特許第6867246号(P6867246)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6867246
(24)【登録日】2021年4月12日
(45)【発行日】2021年4月28日
(54)【発明の名称】ガラスシートの製造方法
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/20 20060101AFI20210419BHJP
   C03C 23/00 20060101ALI20210419BHJP
   G02F 1/1333 20060101ALI20210419BHJP
   G02F 1/13 20060101ALI20210419BHJP
   B08B 7/04 20060101ALI20210419BHJP
   B08B 3/02 20060101ALI20210419BHJP
   B08B 1/04 20060101ALI20210419BHJP
   G09F 9/00 20060101ALI20210419BHJP
【FI】
   G02B5/20 101
   C03C23/00 A
   G02F1/1333 500
   G02F1/13 101
   B08B7/04 A
   B08B3/02 C
   B08B1/04
   G09F9/00 338
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2017-129701(P2017-129701)
(22)【出願日】2017年6月30日
(65)【公開番号】特開2019-12227(P2019-12227A)
(43)【公開日】2019年1月24日
【審査請求日】2020年6月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】598055910
【氏名又は名称】AvanStrate株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】508271425
【氏名又は名称】安瀚視特股▲ふん▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】AvanStrate Taiwan Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】110000165
【氏名又は名称】グローバル・アイピー東京特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】富山 慎一郎
【審査官】 中山 佳美
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−136430(JP,A)
【文献】 特開2016−49534(JP,A)
【文献】 特開2003−334512(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/20
G02B 5/20
B08B 1/04
B08B 3/02
B08B 7/04
C03C 23/00
G02F 1/13
G02F 1/1333
G09F 9/00
G09F 9/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ディスプレイ用のガラスシートの製造方法であって、
熔融ガラスからつくられたガラスシートを搬送ベルトと接触させて搬送する工程と、
前記搬送されたガラスシートの表面を洗浄液及びリンス液で洗浄して、前記表面に付着している異物を除去するガラスシート洗浄する工程と、
を備え、
前記搬送ベルトは、予め、ベルトに付着した付着物が純水中で除去された洗浄済みベルトが用いられ、
前記ベルトの付着物の除去のための洗浄は、前記純水への前記付着物の溶出によって上昇する導電率が所定値を超えるまで行う、ことを特徴とするディスプレイ用のガラスシートの製造方法。
【請求項2】
前記導電率における前記所定値は、前記ベルトの表面積1cm当たり、前記純水1000ccに前記付着物が溶出する条件で、0.4μS/cm以上である、請求項1に記載のガラスシートの製造方法。
【請求項3】
前記ベルトの付着物の除去は、超音波洗浄により行われる、請求項1または2に記載のガラスシートの製造方法。
【請求項4】
前記ベルトの付着物の除去は、前記純水の温度が40℃以上で行われる、請求項1〜3のいずれか1項に記載のガラスシートの製造方法。
【請求項5】
前記ガラスシートは、ブラックマトリックス樹脂が表面に形成されるカラーフィルタ用ガラスシートである、請求項1〜4のいずれか1項に記載のガラスシートの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディスプレイ用のガラスシートの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ガラスシートの製造工程では、ダウンドロー法等によってガラス原料からガラスシートを成形する工程の後に、ガラスシートの表面を洗浄する工程が行われる。ガラスシートの洗浄工程では、ガラスシートの表面に付着したガラスの微小片、塵および汚れ等の異物を除去するために、ガラスシートの表面を酸性またはアルカリ性の薬液や超音波等で洗浄する処理が行われる。
【0003】
また、液晶ディスプレイおよびプラズマディスプレイ等のフラットパネルディスプレイの製造に用いられるガラスシートは、ブラックマトリックス、および、赤色(R)・緑色(G)・青色(B)の光を透過させる波長選択素子であるRGB画素が表面に配置されて、カラーフィルタが形成される。ブラックマトリックスは、RGB画素領域以外におけるバックライトの光漏れを遮断し、互いに隣接するRGB画素の混色を防止することで、表示コントラストを向上させる。すなわち、カラーフィルタにおける光の通過領域は、ブラックマトリックスの形状および配置により決定される。
【0004】
一方、近年のディスプレイの高精細化に伴い、ブラックマトリックスの高精細化および高い寸法精度の必要性が高まっており、ガラスシート表面へのブラックマトリックスの樹脂の高い密着性をより高い精度で実現する必要がある。洗浄後にガラスシートの表面に有機物が残留し、この有機物に起因して、ガラスシート表面へのブラックマトリックスの樹脂の高い密着性が十分に達成できないことを抑制するために、表面への樹脂の密着性を向上させたカラーフィルタ用ガラスシートの製造方法が知られている(特許文献1)。
当該製造方法におけるガラスシート洗浄工程は、第1洗浄工程と、第2洗浄工程とを有する。第1洗浄工程では、界面活性剤が添加された無機アルカリ系の洗浄剤を用いて表面を洗浄し、第2洗浄工程では、例えば水酸化テトラメチルアンモニウムを用いて表面を洗浄する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2014−052622号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
洗浄し乾燥したガラスシートについて、ブラックマトリクス樹脂が均一に付着できるか否かの検査が行われる。例えば、ガラスシートに蒸気を接触させ、ガラスシートへの蒸気のつき方を検査する。蒸気がガラス基板に一様につかず、部分的に蒸気がつかない、いわゆる蒸気の“ムラ”が発生する場合、ブラックマトリックスがガラスシートに旨く付着しないと判定される。上記製造方法で洗浄されたガラスシートでは、蒸気のつき方に“ムラ”が発生する場合があった。この蒸気の“ムラ”は、洗浄時間や洗浄剤等を調整しても、一定数量のガラスシートに依然として“ムラ”が発生してしまっていた。
【0007】
そこで、本発明は、ブラックマトリックスのガラスシートへの付着を、従来に比べて確実に行うことができるディスプレイ用のガラスシートの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、ガラスシートの検査方法において発生する上述の蒸気の“ムラ”が、ガラスシートを挟んで洗浄装置まで搬送する搬送ベルトから、ガラスシートの表面に搬送ベルト由来の物質が付着することに起因することを見出した。ガラスシートに付着した物質は、洗浄液によって大部分は除去されるが、ガラスシートに付着した物質が一定以上残留する場合がある。
さらに、このような搬送ベルト由来の物質のガラスシートへの付着を抑えるには、搬送装置に搬送ベルトとして組み込む前に、搬送ベルトを十分に洗浄することが有効であることを、発明者は見出した。
【0009】
すなわち、本発明の一態様は、ディスプレイ用のガラスシートの製造方法である。当該製造方法は、
熔融ガラスからつくられたガラスシートを搬送ベルトと接触させて搬送する工程と、
前記搬送されたガラスシートの表面を洗浄液及びリンス液で洗浄して、前記表面に付着している異物を除去するガラスシート洗浄する工程と、
を備える。
前記搬送ベルトは、予め、ベルトに付着した付着物が純水中で除去された洗浄済みベルトが用いられ、
前記ベルトの付着物の除去のための洗浄は、前記純水への前記付着物の溶出によって上昇する導電率が所定値を超えるまで行う。
【0010】
このとき、前記導電率における前記所定値は、前記ベルトの表面積1cm当たり、前記純水1000ccに前記付着物が溶出する条件で、0.4μS/cm以上である、ことが好ましい。
【0011】
前記ベルトの付着物の除去は、超音波洗浄により行われる、ことが好ましい。
前記ベルトの付着物の除去は、前記純水の温度が40℃以上で行われる、ことが好ましい。
【0012】
前記ガラスシートは、ブラックマトリックス樹脂が表面に形成されるカラーフィルタ用ガラスシートである、ことが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
上述のガラスシートの製造方法によれば、ブラックマトリックスのガラスシートへの付着を、従来に比べて確実に行うことができることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本実施形態のガラスシートの製造方法の工程を説明するためのフロー図である。
図2】本実施形態のガラスシートの製造方法で用いるガラスシートの洗浄を行う洗浄装置と、洗浄の前に端面加工を行う端面加工装置の構成を説明する図である。
図3図2に示す第1洗浄ユニットと端面加工装置の模式的平面図である。
図4図2に示す端面加工装置の面取り機におけるガラスシートの搬送形態の例を示す図である。
図5図2に示す第1洗浄ユニットの模式的側面図である。
図6図2に示す端面加工装置の搬送ベルトに用いるベルトを純水で洗浄したときの、洗浄時間に対する水の導電率の変化の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本実施形態のガラスシートの製造方法について、実施形態に基づいて説明する。本実施形態で製造されるガラスシートは、液晶ディスプレイ等のフラットパネルディスプレイ(FPD)の製造に用いられるガラスシートである。このガラスシートは、ブラックマトリックス、および、赤色(R)・緑色(G)・青色(B)の光を透過させる波長選択素子であるRGB画素が表面に配置されることで、カラーフィルタが形成される。ブラックマトリックスは、RGB画素領域以外におけるバックライトの光漏れを遮断し、互いに隣接するRGB画素の混色を防止することで、表示コントラストを向上させる。すなわち、カラーフィルタにおける光の通過領域は、ブラックマトリックスの形状および配置により決定される。ガラスシートの厚みは、例えば、0.1mm〜0.7mmである。ガラスシートのサイズは、例えば、680mm×880mm(G4サイズ)、2200mm×2500mm(G8サイズ)である。
【0016】
FPDの製造に用いられるガラスシートは、無アルカリガラス、または、微アルカリガラスが好適である。ガラスシートが無アルカリガラスである場合、ガラスの組成は、例えば、SiO2:50質量%〜70質量%、Al23:0質量%〜25質量%、B23:1質量%〜15質量%、MgO:0質量%〜10質量%、CaO:0質量%〜20質量%、SrO:0質量%〜20質量%、BaO:0質量%〜10質量%である。ここで、MgO、CaO、SrOおよびBaOの合計の含有量は、5質量%〜30質量%である。
【0017】
ガラスシートが、微量のアルカリ金属を含む微アルカリガラスである場合、ガラスの組成は、さらに、0.1質量%〜0.5質量%のR’2Oを含み、好ましくは、0.2質量%〜0.5質量%のR’2Oを含む。ここで、R’は、Li、NaおよびKから選択される少なくとも1種である。なお、R’2Oの含有量の合計は、0.1質量%未満であってもよい。
【0018】
また、ガラスシートは、上記成分に加えて、SnO2:0.01質量%〜1質量%(好ましくは、0.01質量%〜0.5質量%)、Fe23:0質量%〜0.2質量%(好ましくは、0.01質量%〜0.08質量%)をさらに含有してもよく、環境負荷を考慮して、As23、Sb23およびPbOを実質的に含有しなくてもよい。
【0019】
図1は、ガラスシートの製造方法の流れを示すフローチャートである。以下、フローチャートの各ステップS1〜S10について説明する。
【0020】
最初に、ステップS1において、上述の組成を有するガラスシートを製造するために調整されたガラス原料の加熱により熔融ガラスが生成され、ダウンドロー法、リドロー法またはフロート法等によって熔融ガラスまたはプリフォームガラスから所定の厚みを有するガラスリボンが連続的に成形される。ステップS2において、ステップS1で生成されたガラスリボンが切断されて、所定のサイズを有する素板ガラスが得られる。ステップS3において、ステップS2で得られた素板ガラスは、素板ガラスの表面を保護するための合紙を介して積層された積層体として、素板ガラスを搬送および保管するためのパレットに載置される。
【0021】
次に、ステップS4において、素板ガラスの積層体から素板ガラスが取り出され、素板ガラスは、製品であるガラスシートのサイズに切断される。ステップS5において、ステップS4で得られたガラスシートは、端面の研削および研磨、端面のエッチング等の端面加工処理が行われる。
【0022】
次に、ステップS6において、ガラスシートの洗浄が行われる。すなわち、搬送されたガラスシートの表面を洗浄液及びリンス液で洗浄して、表面に付着している異物を除去する。ガラスシートの洗浄工程では、ガラスシートの表面に付着した、ガラスの微小片であるカレット、塵、汚れ、粘着性の異物等が除去される。また、ガラスシートの洗浄工程では、洗浄されたガラスシートの表面にこれらの異物が再度付着しないように、界面活性剤が含まれる無機アルカリ系の洗浄剤が用いられる。
【0023】
次に、ステップS7において、ステップS6で洗浄されたガラスシートの検査が行われる。具体的には、ガラスシートに蒸気を当てて、ガラスシートの表面に付着した蒸気に“ムラ”が生じるか否かを検査が行われ、また、ガラスシートの表面に光学的欠陥を有するキズが形成されていないか、および、ガラスシートの表面に塵や汚れが付着していないか等の光学的検査が行われる。ステップS8において、ステップS7の検査に合格したガラスシートは、ガラスシートの表面を保護するための合紙と交互に積層された積層体として、パレットに載置されて梱包される。ステップS9において、梱包されたガラスシートの積層体は、FPDの製造業者等の納入先に出荷される。出荷されるガラスシートの積層体に挟みこまれる合紙は、ガラスシートの表面に、合紙に由来する異物が付着することを防止する観点から、再生紙を含まないパルプ紙が用いられる。
【0024】
また、ステップS3においてパレットに載置された素板ガラスの積層体は、ステップS10において、数週間または数ヶ月の長期間に亘って保管されてもよい。この場合、保管される素板ガラスの積層体に挟みこまれる合紙は、コストおよび環境保護の観点から再生紙が用いられる。長期間保管された素板ガラスの積層体は、上述したように、ステップS4の切断工程からステップS8の梱包工程までを経て、ステップS9において出荷される。なお、ステップS8においてパレットに載置され梱包されたガラスシートの積層体が、ステップS10において、数週間または数ヶ月の長期間に亘って保管されてもよい。この場合、ガラスシートの積層体に挟みこまれる合紙として、再生紙が用いられてもよい。
【0025】
図1に示すステップS5で行われるガラスシートの端面加工は、ガラスシートの4辺の端面を面取りする面取り加工処理と、ガラスシートの4角のコーナー部をカットするコーナー加工処理とを含む。図2は、ガラスシートの洗浄を行う洗浄装置1と、洗浄の前に端面加工を行う端面加工装置5の構成を説明する図である。図3は、後述する第1洗浄ユニット10と端面加工装置5の模式的平面図である。図4は、端面加工装置5の面取り機50におけるガラスシートGの搬送形態の例を示す図である。
【0026】
端面加工装置5は、面取り機50及びコーナーカット機60を有する。
面取り機50及びコーナーカット機60は、ガラスシートGを主表面の両側から搬送ベルトで挟んで搬送しながら、ガラスシートの端面に円筒形状の砥石ローラを接触させて面取りを行い、さらに、搬送して所定の位置にあるガラスシートのコーナーを丸くするようにガラスシートのコーナーに砥石ローラを接触させてコーナーカットを行う。面取りとは、ガラスシートの側壁に、ガラスシートの主表面とこの主表面に垂直な側壁面との間に、主表面および側壁面に対して傾斜した傾斜面を形成することをいう。このとき、側壁面と面取り面の表面は、砥石ローラによりスムーズに研磨される。
【0027】
面取り機50は、図4に示すように、搬送ベルト52,54と、駆動ローラ53a,53b,55a,55bと、を備える。搬送ベルト52,54は、ガラスシートGを上面及び下面から挟んで、駆動ローラ53a,53b,55a,55bの回転によりガラスシートGを図中の左側から右側へ搬送させる。このとき、移動するガラスシートGの端面には、円筒状の回転砥石56が設けられており、この回転砥石56に、移動するガラスシートGの端面が接触することにより、ガラスシートGの端面が研磨される。
このとき、搬送ベルト52,54は、ガラスシートGの幅方向の両側の端面近くの2箇所で、ガラスシートGの上面及び下面を挟む。ガラスシートGの幅が大きいときは、ガラスシートGのたわみを抑制するために、ガラスシートGの端面近くの部分の他に、ガラスシートの幅方向の中央部分を挟むとよい。
【0028】
コーナーカット機60においても、面取り機50と同様に、搬送ベルト52,54は、ガラスシートGを上面及び下面から挟んで、駆動ローラ53a,53b,55a,55bの回転によりガラスシートGを図中の左側から右側へ搬送させる。なお、コーナーカット機60では、所定の位置に静止させたガラスシートGのコーナーに円筒状の回転砥石66が設けられており、この回転砥石66を移動させてガラスシートGのコーナーに接触させることにより、ガラスシートGのコーナーが研磨される。
このように、端面加工装置5では、ガラスシートGを搬送ベルト52,54と接触させて搬送する。
【0029】
ガラスシートの洗浄工程は、第1洗浄ユニット10が行う第1洗浄工程および第2洗浄ユニット20が行う第2洗浄工程を有する。第1洗浄工程では、例えば、界面活性剤が添加された無機アルカリ系の洗浄剤を用いてガラスシート表面の洗浄が行われる。第2洗浄工程では、例えば、水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)を用いてガラスシート表面の洗浄が行われる。
【0030】
第1洗浄工程で用いられる無機アルカリ系の洗浄剤は、市販のガラスシート用洗浄液を水で希釈して得られた希釈液に、アルカリ成分を添加することで生成される。ガラスシート用洗浄液としては、例えば、パーカーコーポレーション社製のPK−LCGシリーズ、あるいは、横浜油脂工業株式会社製のセミクリーンシリーズ等が用いられる。ガラスシート用洗浄液は、例えば、1wt%〜5wt%の濃度になるように、水で希釈される。希釈液のアルカリ成分の濃度は、水酸化カリウム(KOH)の濃度に換算して、例えば、0.02wt%〜0.15wt%である。
【0031】
洗浄剤を希釈するための水は、イオン交換処理、EDI(Electrodeionization)処理、逆浸透膜(RO膜)によるフィルタ処理、および、脱炭酸ガス装置を通した脱炭酸ガス処理を施した純水または超純水であることが、ガラスシート表面を清浄に保つ点で好ましい。また、溶解性の有機物を除去するために、水を活性炭に通す処理を行うことが好ましい。具体的には、フィルタを用いて微粒子等の異物を水から除去し、次に、水を活性炭に通して有機物を除去し、次に、イオン交換処理、EDI処理、逆浸透膜によるフィルタ処理、および、脱炭酸ガス装置を通した脱炭酸ガス処理を施すことが好ましい。
【0032】
イオン交換処理では、水に含まれるイオン性物質、例えば、塩素イオンやナトリウムイオン等を、イオン交換樹脂膜を用いて水から除去する。EDI処理では、イオン交換樹脂膜を用い、かつ、電極に電位を与えて形成された電位勾配を利用して、イオン性物質を高い精度で水から除去する。逆浸透膜によるフィルタ処理では、イオン性物質、塩類および有機物を水から除去する。脱炭酸ガス処理では、脱炭酸ガス装置を用いて炭酸ガスを水から除去する。
【0033】
本実施形態では、ガラスシート用洗浄液の希釈液に、KOH、NaOH、ETDA−4Na、ETDA−4K、Na4P2O7およびK4P2O7からなる群から選択される1種以上のアルカリ成分が添加されて、第1洗浄工程で用いられる洗浄剤が生成される。
【0034】
図3には、第1洗浄ユニット10の平面図が示されている。図5は、第1洗浄ユニット10の模式的側面図である。図3および図5において、ガラスシートGを搬送する搬送装置は省略されている。なお、第2洗浄ユニット20の構成は、第1洗浄ユニット10の構成と実質的に同じであるので、以下、第1洗浄ユニット10の構成のみについて説明する。
【0035】
第1洗浄ユニット10は、図3に示されるように、ブラシユニット12と、スポンジユニット14と、シャワーユニット16とを備えている。これらのユニットは、ガラスシートGの搬送方向の上流側から下流側に向かって、この順番に配置されている。第1洗浄ユニット10は、図5に示されるように、さらに、洗浄剤タンク18と、純水タンク19と、ノズル18a,18b,18c,18d,19a,19bを備えている。
【0036】
ブラシユニット12は、洗浄ブラシロール12a,12bを有する。洗浄ブラシロール12a,12bは、ガラスシートGの搬送方向に沿って配置されている。洗浄ブラシロール12a,12bは、それぞれ、搬送されるガラスシートGの両表面を洗浄可能なように、ガラスシートGの上下に一対配置される。洗浄ブラシロール12a,12bは、それぞれ、ガラスシートGの搬送方向を横切るように配置される。洗浄ブラシロール12a,12bの外周面には、複数の洗浄ブラシが取り付けられている。洗浄ブラシロール12a,12bの軸回転によって、搬送されるガラスシートGの表面に洗浄ブラシが接触して、ガラスシートGの表面が洗浄される。図3において、洗浄ブラシロール12a,12bは、ガラスシートGの搬送方向に沿って2列配置されているが、1列のみ配置されてもよく、3列以上配置されてもよい。
【0037】
スポンジユニット14は、洗浄スポンジロール14a,14bを有する。洗浄スポンジロール14a,14bは、ガラスシートGの搬送方向に沿って配置されている。洗浄スポンジロール14a,14bは、それぞれ、搬送されるガラスシートGの両表面を洗浄可能なように、ガラスシートGの上下に一対配置される。洗浄スポンジロール14a,14bは、それぞれ、ガラスシートGの搬送方向を横切るように配置される。洗浄スポンジロール14a,14bの外周面には、洗浄スポンジが取り付けられている。洗浄スポンジロール14a,14bの軸回転によって、搬送されるガラスシートGの表面に洗浄スポンジが接触して、ガラスシートGの表面が洗浄される。図3において、洗浄スポンジロール14a,14bは、ガラスシートGの搬送方向に沿って2列配置されているが、1列のみ配置されてもよく、3列以上配置されてもよい。
【0038】
第1洗浄ユニット10の洗浄剤タンク18は、第1洗浄工程で用いられる、界面活性剤が添加された無機アルカリ系の洗浄剤を貯留する。洗浄剤タンク18は、例えば、50℃〜80℃の温度範囲に洗浄剤を加熱して保温する機能を有する。ノズル18a,18bは、洗浄剤タンク18から供給される洗浄剤を、ブラシユニット12内を搬送されるガラスシートGの両表面に噴射する。ノズル18c,18dは、洗浄剤タンク18から供給される洗浄剤を、スポンジユニット14内を搬送されるガラスシートGの両表面に噴射する。
【0039】
純水タンク19は、上述の純水または超純水を貯留する。ノズル19a,19bは、純水タンク19から供給される純水または超純水を、リンス液としてシャワーユニット16内を搬送されるガラスシートGの両表面に噴射する。
【0040】
第2洗浄ユニット20は、第1洗浄ユニット10と同じ構成を有する。しかし、第2洗浄ユニット20の洗浄剤タンク18は、第2洗浄工程で用いられるTMAHを貯留する。
まず、第2洗浄ユニット20のブラシユニット12において、ガラスシートGのブラシ洗浄が行われる。具体的には、ノズル18a,18bから噴射されたTMAHが、ガラスシートGの両表面に付着して、洗浄ブラシロール12a,12bの軸回転によってガラスシートGの両表面が洗浄される。
次に、第2洗浄ユニット20のスポンジユニット14において、ガラスシートGのスポンジ洗浄が行われる。具体的には、ノズル18c,18dから噴射されたTMAHが、ガラスシートGの両表面に付着して、洗浄スポンジロール14a,14bの軸回転によってガラスシートGの両表面が洗浄される。
次に、第2洗浄ユニット20のシャワーユニット16において、ガラスシートGの表面に付着したTMAHが除去される。具体的には、ノズル19a,19bから噴射された純水または超純水(リンス液)が、ガラスシートGの両表面に付着することで、ガラスシートGの表面が純水または超純水ですすがれて、表面に付着したTMAHが洗い流される。
【0041】
このような洗浄装置1によって、ガラスシートGの洗浄が行われる。しかし、上述のような入念な洗浄を行っても、ガラスシートへ蒸気を拭きつける検査において、蒸気の“ムラ”が発生し、ブラックマトリックスの付着が十分でないと判定される場合がある。
このため、本実施形態では、端面加工装置5に組み込む前の搬送ベルト52,54を十分に洗浄する。洗浄することにより、ガラスシートGにおける蒸気の“ムラ”を抑制することができ、ブラックマトリックスの付着を確実にすることができる。
すなわち、本実施形態の搬送ベルト52,54は、予め、ベルトに付着した付着物が純水中で除去された洗浄済みベルトが用いられる。すなわち、純水を洗浄液として用いるとき上記ベルトの付着物の除去のための洗浄は、純水への付着物の溶出によって上昇する洗浄液の導電率が所定値を超えるまで行われる。ベルトから純水へ溶出する付着物は電解質であり、純水(純水の導電率は、0.0548μS/cm)の導電率を上昇させる。上記
付着物は、例えば、フタル酸ビス(2−エチルヘキシル)(DEHP) 、フタル酸ジオクチル(DOP)を含む可塑剤、炭化水素、あるいはステアリン酸である。
【0042】
このように、ガラスシートの検査方法において発生する蒸気の“ムラ”が、ガラスシートを挟んで洗浄装置まで搬送する搬送ベルトから、ガラスシートの表面に搬送ベルト由来の物質が付着することに起因することを発明者は見出し、かつ、この搬送ベルト由来の物質(付着物)のガラスシートGへの付着を抑えるには、端面加工装置5の搬送機構に搬送ベルトを組み込む前に、搬送ベルトを十分に洗浄することが、上記“ムラ”の発生を抑制する上で有効であることを見出している。このとき、発明者は、さらに、純水を用いた洗浄液の導電率を測定することにより、搬送ベルトの洗浄の程度を知ることができることも見出している。
このように、本実施形態では、搬送ベルト52,54として使用するためのベルトの洗浄の程度を導電率の範囲で規定することにより、ガラスシートのブラックマトリックスの付着を確実にすることができる。
【0043】
図6は、純水を洗浄液として超音波洗浄法を用いて搬送ベルトを洗浄したときの、洗浄時間に対する洗浄液の導電率の変化の一例を示す図である。図6に示す例では、純水28875ccを洗浄液とし、搬送ベルトの表面積を1434cmとした条件における洗浄液の導電率(μS/cm)の変化を示している。このとき、各洗浄時間洗浄した搬送ベルトを用いてガラスシートGを搬送して洗浄を行った後、検査工程でガラスシートGの“ムラ”の発生の有無を検査したとき、“ムラ”の発生の有無は、15μS/cm以上では“ムラ”は発生しなかった。これより、搬送ベルトの単位表面積1cm当たり、純水1000ccに付着物が溶出する条件において、0.4μS/cm以上になるまで、ベルトの洗浄を行うことが好ましい。また、上記条件(純水28875ccを洗浄液とし、搬送ベルトの表面積を1434cm)において、導電率が20μS/cm以上になるまで洗浄した搬送ベルト52,54を組み込んだ端面加工装置5を用いて製造したガラスシートGの“ムラ”の発生はなく、ブラックマトリックスの付着の不良は見られなかった。
【0044】
このようなベルトの付着物の除去は、例えば、超音波洗浄により行われることが、洗浄を短時間に効率よく行う点で好ましい。また、ベルトの付着物の除去は、純水を洗浄液とする水温が40℃以上、好ましくは45℃以上、より好ましくは50℃以上の条件で行われる。洗浄液の水温が高いほど、ベルトの付着物の除去を効果的に行うことができる。
本実施形態の製造方法は、ブラックマトリックス樹脂が表面に形成されるカラーフィルタ用ガラスシートを対象としたガラスシートであることが特に好ましい。
【0045】
以上、本発明のガラスシートの製造方法について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されず、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々の改良や変更をしてもよいのはもちろんである。
なお、搬送ベルトを洗浄する洗浄水(純水)は、超純水、RO水、イオン交換水であってもよい。ベルトから純水へ溶出する微量な付着物によって変化する導電率を検出できる水であればよい。
【符号の説明】
【0046】
1 洗浄装置
5 端面加工装置
10 第1洗浄ユニット
12 ブラシユニット
14 スポンジユニット
16 シャワーユニット
18 洗浄剤タンク
19 純水タンク
20 第2洗浄ユニット
50 面取り機
52,54 搬送ベルト
56,66 研磨砥石
60 コーナーカット機
図1
図2
図3
図4
図5
図6