特許第6867249号(P6867249)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6867249
(24)【登録日】2021年4月12日
(45)【発行日】2021年4月28日
(54)【発明の名称】床版の交換方法及び門型クレーン
(51)【国際特許分類】
   E01D 19/12 20060101AFI20210419BHJP
   E01D 22/00 20060101ALI20210419BHJP
【FI】
   E01D19/12
   E01D22/00 Z
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2017-136548(P2017-136548)
(22)【出願日】2017年7月12日
(65)【公開番号】特開2019-19477(P2019-19477A)
(43)【公開日】2019年2月7日
【審査請求日】2020年1月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000174943
【氏名又は名称】三井住友建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000958
【氏名又は名称】特許業務法人 インテクト国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100120237
【弁理士】
【氏名又は名称】石橋 良規
(72)【発明者】
【氏名】落合 博幸
(72)【発明者】
【氏名】福島 重美
(72)【発明者】
【氏名】大山 裕太
【審査官】 高橋 雅明
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−131427(JP,A)
【文献】 実開昭60−070617(JP,U)
【文献】 特開2000−257264(JP,A)
【文献】 特開2016−166453(JP,A)
【文献】 特開2005−307684(JP,A)
【文献】 特開平09−209312(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01D 19/12
E01D 22/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋼桁に架設された古い床版の交換方法であって、
前記古い床版上を移動可能な移動手段と、前記移動手段が取り付けられる一対の脚枠と、前記一対の脚枠の上端を連結して概略門型の門型クレーン本体を構成する天枠と、前記天枠の長手方向の一端から垂下するように取り付けられた先端サポート部を有し、前記先端サポート部と前記一対の脚枠の間に形成された作業スペースを有する門型クレーンを準備する工程と、
記先端サポート部の下端に形成された挿入部鋼桁に架設した新たな床版の前記門型クレーンと対向する上面から前記鋼桁と対向する裏面に向けて形成された貫通孔に挿入して前記挿入部を前記鋼桁に当接させる工程と、
前記門型クレーンを前記古い床版上に保持する工程と、
前記作業スペース内の前記古い床版を除去する工程と、
前記古い床版を除去した位置に新たな床版を架設する工程とを備えることを特徴とする床版の交換方法。
【請求項2】
請求項1に記載の床版の交換方法において、
前記新たな床版を架設する際に、橋梁縦断勾配または横断勾配に沿って前記新たな床版を傾ける工程を備えることを特徴とする床版の交換方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の床版の交換方法において、
前記門型クレーンが前記床版上を自走して前記門型クレーンの位置を設定する工程を備えることを特徴とする床版の交換方法。
【請求項4】
鋼桁に架設された古い床版上を移動可能な移動手段と、前記移動手段が取り付けられる一対の脚枠と、前記一対の脚枠の上端を連結して概略門型の門型クレーン本体を構成する天枠と、前記天枠の長手方向の一端から垂下するように取り付けられた先端サポート部を有し、前記先端サポート部と前記一対の脚枠の間に形成された作業スペースを有する門型クレーンであって、
前記先端サポート部の下端には、前記鋼桁に架設した新たな床版の前記門型クレーンと対向する上面から前記鋼桁と対向する裏面に向けて形成された貫通孔に挿入可能な挿入部を有し、
前記作業スペース内を架設する新たな床版を吊り下げて移動せしめるクレーン部を備えることを特徴とする門型クレーン。
【請求項5】
請求項に記載の門型クレーンにおいて、
前記先端サポート部は、橋梁の前記新たな床版とが対向する面の縦断勾配または横断勾配に応じて前記挿入部傾斜又は突出し量を調整する傾斜調整手段を備え、前記挿入部は、前記先端サポート部の下端に揺動自在に取り付けられた保持板に取付けられ、前記横断勾配の調整のために用いられる調整板が着脱自在に取り付けられることを特徴とする門型クレーン。
【請求項6】
請求項4又は5に記載の門型クレーンにおいて、
前記クレーン部は、前記天枠の長手方向に沿って設けられたクレーン用レールから吊り下げられた吊下部と該吊下部に対して回転手段を介して鉛直方向に回転可能に組付けられた保持板と、前記保持板には、前記新たな床版の上面の勾配に沿って吊り下げた前記新たな床版の傾斜を調整する勾配調整手段を介して取り付けられるとともに垂下する長さを調整可能なフック部を備えことを特徴とする門型クレーン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、橋梁の鋼桁上に架設されている既設床版を撤去し、新設プレキャスト床版に架け替える床版の交換方法及びこの床版の交換に用いる門型クレーンに関する。
【背景技術】
【0002】
橋梁に架設されている床版は、架設後複数年が経過すると、その老朽化に伴って既設床版を撤去して新設床版に架け替える据え付け工事を行う必要がある。このような新設床版の架け替えを行う据え付け工事は、種々の方法が知られている。
【0003】
例えば、既設床版は、鋼桁上に架設された鉄筋コンクリート製の床版が多く用いられているため、既設床版の撤去に際しては、既設床版を所定の大きさに切断したうえで、大型のクレーン車を用いて搬出している。
【0004】
また、特許文献1に記載されているように、昇降手段を備えた複数の走行台車を搬送すべき床版の前後に配置して床版を吊下させ、全走行台車を同期速度で橋面上を走行させ、軌条段差位置で先方走行台車の走行段差を盛替調整し、床版敷設位置で床版下の軌条を撤去して新床版を橋面上に据付け、新床版上に軌条を敷設し、先行走行台車の走行段差を盛り替え、全台車を戻り走行させ、次の床版の搬送・据付を繰り返すという床版の架設方法が知られている。
【0005】
このような床版の架設方法によれば、床版の幅が橋幅と一致し、橋軸直角方向寸法が10mに達する大規模プレキャスト床版を架設することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−74018号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、従来の床版の交換方法によると、大型のクレーン車を用いた場合には、都市部など橋梁の近傍に構築物が多数あり、橋梁の近傍に大型クレーンを設置するスペースを確保することが難しく、橋面に大型クレーンを設置しても床版交換時はクレーンの旋回作業が伴うため、橋梁周りの施工状態から大型クレーンを用いた交換を行うことが難しいという問題があり、特許文献1に記載された架設方法のように門型クレーンを用いた場合であっても、走行台車を走行させる軌条を敷設する必要があり、このような軌条の敷設及び撤去作業が床版の交換作業に必要となり工期短縮を図ることが難しいという問題があった。
【0008】
そこで、本発明は上記問題に鑑みてなされたものであり、橋梁の近傍に設置スペースを必要となる大型のクレーンなどを用いることなく、床版の工期短縮を図ることができる床版の交換方法、及びこの交換方法に用いられる門型クレーンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る床版の交換方法は、鋼桁に架設された古い床版の交換方法であって、前記古い床版上を移動可能な移動手段と、前記移動手段が取り付けられる一対の脚枠と、前記一対の脚枠の上端を連結して概略門型の門型クレーン本体を構成する天枠と、前記天枠の長手方向の一端から垂下するように取り付けられた先端サポート部を有し、前記先端サポート部と前記一対の脚枠の間に形成された作業スペースを有する門型クレーンを準備する工程と、前記先端サポート部の下端に形成された挿入部鋼桁に架設した新たな床版の前記門型クレーンと対向する上面から前記鋼桁と対向する裏面に向けて形成された貫通孔に挿入して前記挿入部を前記鋼桁に当接させる工程と、前記門型クレーンを前記古い床版上に保持する工程と、前記作業スペース内の前記古い床版を除去する工程と、前記古い床版を除去した位置に新たな床版を架設する工程とを備えることを特徴とする。
【0010】
また、本発明に係る床版の交換方法において、前記新たな床版を架設する際に、橋梁縦断勾配または横断勾配に沿って前記新たな床版を傾ける工程を備えると好適である。
【0012】
また、本発明に係る床版の交換方法において、前記門型クレーンが前記床版上を自走して前記門型クレーンの位置を設定する工程を備えると好適である。
【0013】
また、本発明に係る門型クレーンは、鋼桁に架設された古い床版上を移動可能な移動手段と、前記移動手段が取り付けられる一対の脚枠と、前記一対の脚枠の上端を連結して概略門型の門型クレーン本体を構成する天枠と、前記天枠の長手方向の一端から垂下するように取り付けられた先端サポート部を有し、前記先端サポート部と前記一対の脚枠の間に形成された作業スペースを有する門型クレーンであって、前記先端サポート部の下端には、前記鋼桁に架設した新たな床版の前記門型クレーンと対向する上面から前記鋼桁と対向する裏面に向けて形成された貫通孔に挿入可能な挿入部を有し、前記作業スペース内を架設する新たな床版を吊り下げて移動せしめるクレーン部を備えることを特徴とする。
【0015】
また、本発明に係る門型クレーンにおいて、前記先端サポート部は、橋梁の前記新たな床版とが対向する面の縦断勾配または横断勾配に応じて前記挿入部傾斜又は突出し量を調整する傾斜調整手段を備え、前記挿入部は、前記先端サポート部の下端に揺動自在に取り付けられた保持板に取付けられ、前記横断勾配の調整のために用いられる調整板が着脱自在に取り付けられると好適である。
【0016】
また、本発明に係る門型クレーンにおいて、前記クレーン部は、前記天枠の長手方向に沿って設けられたクレーン用レールから吊り下げられた吊下部と該吊下部に対して回転手段を介して鉛直方向に回転可能に組付けられた保持板と、前記保持板には、前記新たな床版の上面の勾配に沿って吊り下げた前記新たな床版の傾斜を調整する勾配調整手段を介して取り付けられるとともに垂下する長さを調整可能なフック部を備えと好適である。
【0019】
上記発明の概要は、本発明の必要な特徴の全てを列挙したものではなく、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた発明となり得る。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係る床版の交換方法によれば、門型クレーンの一端に設けられた先端サポート部を鋼桁に当接させる工程を備えているので、門型クレーンを支持する部材を別途設けることなく、門型クレーンの保持を図ることができる。また、本発明に係る門型クレーンは、先端サポート部が鋼桁に当接すると共に床版上を移動可能な移動手段を備えているので、門型クレーンを支持する部材や軌条などの部材を別途設けることなく門型クレーンの設置及び移動を図ることができる。したがって、橋梁の近傍に設置スペースを必要となる大型のクレーンなどを用いることなく、門型クレーンの準備にも別途部材を設けることなく、床版の工期短縮を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本実施形態に係る門型クレーンの概要を説明するための図。
図2】本実施形態に係る門型クレーンの正面図。
図3】本実施形態に係る門型クレーンの先端サポート部を示す拡大図であって、(A)は側面図、(B)は正面図を示す。
図4】本実施形態に係る門型クレーンのクレーン部を示す拡大図であって、(A)は側面図、(B)は正面図を示す。
図5】本実施形態に係る床版の交換方法を説明するための図であって、門型クレーンを準備する工程及び先端サポート部を鋼桁に当接させる工程を説明するための図。
図6】本実施形態に係る床版の交換方法を説明するための図であって、古い床版を除去する工程を説明するための図。
図7】本実施形態に係る床版の交換方法を説明するための図であって、古い床版の除去が完了した状態を示す図。
図8】本実施形態に係る床版の交換方法を説明するための図であって、新しい床版を架設する工程を説明するための図。
図9】本実施形態に係る床版の交換方法を説明するための図であって、新しい床版を架設する工程を説明するための図。
図10】本実施形態に係る床版の交換方法を説明するための図であって、床版の交換工程が完了し、次の床版の交換工程に移動する状態を説明するための図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明を実施するための好適な実施形態について、図面を用いて説明する。なお、以下の実施形態は、各請求項に係る発明を限定するものではなく、また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0023】
図1は、本実施形態に係る門型クレーンの概要を説明するための図であり、図2は、本実施形態に係る門型クレーンの正面図であり、図3は、本実施形態に係る門型クレーンの先端サポート部を示す拡大図であって、(A)は側面図、(B)は正面図を示す図であり、図4は、本実施形態に係る門型クレーンのクレーン部を示す拡大図であって、(A)は側面図、(B)は正面図を示す図であり、図5は、本実施形態に係る床版の交換方法を説明するための図であって、門型クレーンを準備する工程及び先端サポート部を鋼桁に当接させる工程を説明するための図であり、図6は、本実施形態に係る床版の交換方法を説明するための図であって、古い床版を除去する工程を説明するための図であり、図7は、本実施形態に係る床版の交換方法を説明するための図であって、古い床版の除去が完了した状態を示す図であり、図8は、本実施形態に係る床版の交換方法を説明するための図であって、新しい床版を架設する工程を説明するための図であり、図9は、本実施形態に係る床版の交換方法を説明するための図であって、新しい床版を架設する工程を説明するための図であり、図10は、本実施形態に係る床版の交換方法を説明するための図であって、床版の交換工程が完了し、次の床版の交換工程に移動する状態を説明するための図である。
【0024】
まず、本実施形態に係る床版の交換方法に好適に用いられる門型クレーン10について説明を行う。本実施形態に係る床版の交換方法は、図1に示すように、橋梁50の鋼桁40に架設された古い床版141を新たな床版41に交換する交換方法であって、本実施形態に係る門型クレーン10は、古い床版141上を移動可能な移動手段12が取り付けられた一対の脚枠15,15と、該一対の脚枠15,15の上端を連結して概略門型の門型クレーン本体11を構成する天枠14と、門型クレーン本体11の一端に設けられた先端サポート部20とを備えている。天枠14の橋梁50の長手方向に沿った長さは、脚枠15よりも長く形成されており、これによって、先端サポート部20と門型クレーン本体11の間には、作業スペース60が形成されている。
【0025】
図2に示すように、脚枠15の下端に設けられた移動手段12は、電動モータ等の周知の駆動手段によって回転駆動可能な車輪16が取り付けらえており、該車輪の回転によって門型クレーン10を既設の古い床版141上で移動可能としている。
【0026】
また、脚枠15の下端には、古い床版141に当接可能な固定ジャッキ13を備えている。固定ジャッキ13は、周知のジャッキ機構が好適に用いられるが、例えば油圧ジャッキなどを用いると好適である。固定ジャッキ13は、移動手段12によって門型クレーン10を所定の位置に移動させた後、当該位置に門型クレーン10を固定するために用いられる。
【0027】
門型クレーン本体11の天枠14には、長手方向に沿ってクレーン用レール34が設けられており、該クレーン用レール34には、後述するクレーン部30が移動可能に取り付けられている。
【0028】
先端サポート部20は、天枠14の一端から垂下するように取り付けられており、先端サポート部20の下方には、傾斜調整手段21を介して新たな床版41の貫通孔43に挿入可能な挿入部22が設けられている。図3(A)及び(B)に示すように、先端サポート部20は、天枠14から垂下する支持腕24と、支持腕24の下端に傾斜調整手段21を介して取り付けられた保持板23を備えている。保持板23には、床版41に形成された貫通孔43に対応した複数の挿入部22が形成されており、本実施形態に係る門型クレーン10では、貫通孔43の数や位置に応じて幅方向に4つの挿入部22の列を長手方向に2列備え、合計で8つの挿入部22を備えている。
【0029】
また、傾斜調整手段21は、保持板23を橋梁50の傾斜勾配に応じて傾斜可能に取り付けており、具体的には、図3(B)に示すように、支持腕24の一端に保持板23の幅方向に沿ってピンを挿入し、該ピンの周方向に保持板23を揺動自在に保持することで橋梁50の長手方向に沿った縦断勾配の傾斜勾配に応じて保持板23を傾斜可能に取り付けている。
【0030】
さらに、図3(A)に示すように、幅方向の傾斜については、所定の厚さを有する高さ調整板25を介して挿入部22を取り付けることで、挿入部22の突出し量を調整することで幅方向の横断勾配に応じた高さ調整を行うことが可能となっている。このような傾斜調整手段21によって、橋梁50が所定の勾配を有していた場合であっても、挿入部22を確実に鋼桁40に当接させて門型クレーン10を保持することができる。
【0031】
図4(A)及び(B)に示すように、クレーン部30は、クレーン用レール34から吊り下げられた吊下部35と、吊下部35に対して回転手段33を介して鉛直方向を軸に回転可能に組み付けられた保持板36とを備えている。保持板36には、勾配調整手段31を介してフック部32が取り付けられており、該フック部32を新たな床版41に設けられた被フック部44に係合させて床版41の移動及び設置を行うことができる。
【0032】
回転手段33は、保持板36を鉛直方向を軸に回転させることができれば如何なる構成を備えても構わないが、例えば電動モータによる駆動力をベアリングなどの軸受部材を介して荷重を保持するように構成すると好適である。
【0033】
また、勾配調整手段31は、床版41を架設する際に、橋梁50の傾斜勾配に沿って床版41を架設することができるように床版41自体を傾斜させる機構を有しており、例えばフック部32をスクリュージャッキを介して保持板36に取り付けることで、該スクリュージャッキによってフック部32の垂下する長さを調整して床版41の勾配を調整することができる。なお、スクリュージャッキは、図4(A)及び(B)に示すように、保持板36の四隅に合計4つ備えると橋梁50の長手方向及び幅方向の双方の勾配を調整することができる。
【0034】
次に、本実施形態に係る門型クレーン10を用いた床版の交換方法について説明を行う。第一に、図5に示すように、門型クレーン10を古い床版141上で走行させて交換を行う床版の位置に作業スペース60が重畳するように移動する。このとき、門型クレーン10は、橋梁50上で組み立てても構わないし、トラックなどの搬送手段を備えた車両から床版上に移動させても構わない。
【0035】
門型クレーン10を所定の位置に移動した後、脚枠15に備えられた固定ジャッキ13によって古い床版141上に門型クレーン10が移動しないように設置する。そして、すでに架設が終わった新たな床版41の貫通孔43に先端サポート部20に形成された挿入部22を挿入して、鋼桁40に該挿入部22を当接させる。このように、門型クレーン10は、固定ジャッキ13と挿入部22とによって橋梁50に固定設置される。このとき、移動手段12は、軌条の敷設作業を不要とするので、工期短縮に寄与し、挿入部22によって門型クレーン10の先端を鋼桁40によって支持しているので、門型クレーン10を確実に支持することが可能となる。
【0036】
次に、図6に示すように、作業スペース60に架設されている古い床版141の除去作業を行う。除去作業は、橋梁50の長手方向に沿った所定の区間の古い床版141を除去し、例えば幅方向に二分割に切断してクレーン部30によって切断除去した古い床版141を除去していく。
【0037】
図7に示すように、作業スペース60における古い床版141の除去が完了すると、鋼桁40のフランジ面の清掃を行った後、新たな床版の架設を行う。図8に示すように、新たな床版41は、橋梁の幅方向に長い長尺の部材であることから、搬入トラック70によって長手方向に沿った方向で搬入される。この状態で、クレーン部30によって新たな床版41を吊り下げ、作業スペース60まで移動させる。
【0038】
そして、図9に示すように、作業スペース60でクレーン部30の回転手段33によって新たな床版41を略90度回転させて、新たな床版41を鋼桁40に据付ける。その後、同様の作業を繰り返し、作業スペース60における古い床版141を除去した位置に新たな床版41を敷き詰めるように据付ける。最後に、据付けられた新たな床版41の貫通孔43にスタッドジベルを打ち込み、貫通孔にモルタルを流し込んで鋼桁40と接合する。なお、新たな床版41の据付けの際に、新たな床版41と鋼桁40の間に高さ調整のためのピンなどを用いて新たな床版41のレベル合わせを行う。その後、図10に示すように、床版の交換工程が完了し、次の床版の交換工程に移動して図5の状態で次の床版の交換工程に移行する。このように、交換が必要な床版の交換が完了するまで交換工程を繰り返し行って床版の交換を行う。
【0039】
続いて、次の作業箇所へ門型クレーン10を移動させて古い床版141の交換作業を連続して行う。
【0040】
このように構成された古い床版の交換方法によれば、古い床版上を移動可能な門型クレーン10を用いているので、軌条の敷設及び撤去作業を必要としないと共に、大型のクレーンなどを必要としないことから、都市部など大型クレーンを設置するスペースを十分に確保することができない場所でも古い床版の交換作業を行うことが可能となり、工期の短縮を図ることができる。また、門型クレーンの先端サポート部を鋼桁に当接させて支持し、先端サポート部と門型クレーン本体の間を作業スペースとして確保することで、重量物となる交換前後の床版を確実に保持して交換作業を確実に行うことができる。
【0041】
以上説明したように、上述した本実施形態に係る床版の交換方法では、古い床版を二分割に切断して除去する場合について説明を行ったが、二分割に限定されず、三分割以上または、分割せずに古い床版の除去を行っても構わない。その様な変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれうることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【符号の説明】
【0042】
10 門型クレーン, 11 門型クレーン本体, 12 移動手段, 13 ジャッキ, 14 天枠, 15 脚枠, 16 車輪, 20 先端サポート部, 21 傾斜調整手段, 22 挿入部, 23 保持板, 24 支持腕, 25 高さ調整板, 30 クレーン部, 31 勾配調整手段, 32 フック部, 33 回転手段, 34 クレーン用レール, 35 吊下部, 36 保持板, 40 鋼桁, 41 新たな床版, 43 貫通孔, 44 被フック部, 50 橋梁, 60 作業スペース, 141 古い床版。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10