特許第6867265号(P6867265)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6867265高光沢発泡粒子、発泡成形体及びそれらの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6867265
(24)【登録日】2021年4月12日
(45)【発行日】2021年4月28日
(54)【発明の名称】高光沢発泡粒子、発泡成形体及びそれらの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08J 9/16 20060101AFI20210419BHJP
   B29C 44/00 20060101ALI20210419BHJP
   B29C 44/02 20060101ALI20210419BHJP
【FI】
   C08J9/16CFD
   B29C44/00 G
   B29C44/02
【請求項の数】9
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2017-190109(P2017-190109)
(22)【出願日】2017年9月29日
(65)【公開番号】特開2019-65115(P2019-65115A)
(43)【公開日】2019年4月25日
【審査請求日】2020年4月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002440
【氏名又は名称】積水化成品工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000003160
【氏名又は名称】東洋紡株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100065248
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100159385
【弁理士】
【氏名又は名称】甲斐 伸二
(74)【代理人】
【識別番号】100163407
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 裕輔
(74)【代理人】
【識別番号】100166936
【弁理士】
【氏名又は名称】稲本 潔
(72)【発明者】
【氏名】近藤 広隆
(72)【発明者】
【氏名】権藤 裕一
(72)【発明者】
【氏名】高野 雅之
(72)【発明者】
【氏名】山下 洵史
【審査官】 加賀 直人
(56)【参考文献】
【文献】 特開2019−065273(JP,A)
【文献】 特許第6227202(JP,B2)
【文献】 国際公開第2019/050032(WO,A1)
【文献】 特開2017−171846(JP,A)
【文献】 実開昭53−137170(JP,U)
【文献】 特開2009−263639(JP,A)
【文献】 実開平05−026816(JP,U)
【文献】 国際公開第2009/119549(WO,A1)
【文献】 国際公開第2016/052387(WO,A1)
【文献】 特開平05−271453(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 9/16
B29C 44/00
B29C 44/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エステル系エラストマーを基材樹脂として含む樹脂組成物から構成される高光沢発泡粒子であり、
前記高光沢発泡粒子が、A>Bの関係(Aは表層部の平均気泡径、Bは中心部の平均気泡径)を満たす複数の気泡を有し、
前記表層部の平均気泡径が、80〜400μmであり、前記中心部の平均気泡径が、10〜200μmであることを特徴とする高光沢発泡粒子。
【請求項2】
前記A及びBが、A/B>1.5の関係を満たす請求項1に記載の高光沢発泡粒子。
【請求項3】
前記樹脂組成物が
i)1×107〜2×108Paのビカット軟化温度Tv−10℃における固体粘弾性測定による貯蔵弾性率、及
ii)1×106〜2×107Paの結晶化温度Tcにおける溶融粘弾性測定による貯蔵弾性
いずれかの物性を少なくとも有する請求項1又は2に記載の高光沢発泡粒子。
【請求項4】
前記高光沢発泡粒子が、
(i)0.02〜0.4g/cm3の嵩密度、及び
(ii)1.5〜15mmの平均粒子径
のいずれかの物性を少なくとも有する請求項1〜3のいずれか1つに記載の高光沢発泡粒子。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1つに記載の高光沢発泡粒子を製造する方法であって、
前記エステル系エラストマーを基材樹脂とする樹脂粒子に発泡剤を含浸させて発泡性粒子を得る工程と、前記発泡性粒子を発泡させる工程とを含むことを特徴とする高光沢発泡粒子の製造方法。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1つに記載の高光沢発泡粒子を型内発泡させて得られた発泡成形体。
【請求項7】
前記発泡成形体が、
(i)0.02〜0.4g/cm3の密度
(ii)50〜100%の反発弾性率、及び
(iii)20〜65のアスカーC硬度
のいずれかの物性を少なくとも有する請求項6に記載の発泡成形体。
【請求項8】
前記発泡成形体が、建築資材、靴の部材、スポーツ用品、緩衝材、シートクッション又は自動車部材として用いられる請求項6又は7に記載の発泡成形体。
【請求項9】
請求項6〜8のいずれか1つに記載の発泡成形体を製造する方法であって、
ゲージ圧0.05〜0.4MPaの水蒸気を加熱媒体として請求項1〜4のいずれか1つに記載の高光沢発泡粒子を型内発泡させる工程を含むことを特徴とする発泡成形体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高光沢発泡粒子、発泡成形体及びそれらの製造方法に関する。更に詳しくは、本発明は、光沢性の高い表面を有する発泡成形体を与え得る高光沢発泡粒子及びその製造方法、光沢性の高い表面を有する発泡成形体及びそれらの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、緩衝材や梱包材として、ポリスチレン、ポリプロピレン等からなる発泡粒子を複数個融着させた発泡成形体が汎用されている。発泡粒子を複数個融着させた発泡成形体は、押出発泡による発泡成形体に比べて、複雑な形状を形成可能であるという利点を有している。ポリスチレン、ポリプロピレン等からなる発泡成形体は、高い反発弾性が求められる用途では使用し難いという課題があった。そのため、高い反発弾性を実現できる発泡成形体が求められていた。
上記求めに応じて、特開2016−190989号公報(特許文献1)には、アミド系エラストマー発泡粒子を用いた発泡成形体が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016−190989号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の発明者等は、アミド系エラストマー以外に、優れた反発弾性を有するエステル系エラストマーでも発泡粒子を製造できることを見い出している。
ところで、発泡粒子やこれから得られた発泡成形体を人目につく様な外部構造に使用する場合、デザイン性を向上させるために、表面に高い光沢性を求められることがある。光沢性の付与方法には、基材樹脂に光沢性付与材(パール顔料や金属粉末)を混合する方法、発泡粒子や発泡成形体の表面を光沢性付与材を含む塗料で塗装する方法が挙げられる。しかし、前者の方法では、光沢性付与材が発泡時に気泡核剤として働くため、気泡径の制御が困難であるという課題があった。後者の方法では、塗装工程の追加によるコスト増加や、剥がれによる塗装の耐久性が劣る、という課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の発明者等は、鋭意検討の結果、表層部と中心部との平均気泡径が特定の関係を有する発泡粒子であれば、光沢性の高い表面を有する発泡成形体を提供できることを意外にも見い出すことで本発明に至った。
【0006】
かくして本発明によれば、エステル系エラストマーを基材樹脂として含む樹脂組成物から構成される高光沢発泡粒子であり、
前記高光沢発泡粒子が、A>Bの関係(Aは表層部の平均気泡径、Bは中心部の平均気泡径)を満たす複数の気泡を有し、
前記表層部の平均気泡径が、80〜400μmであり、前記中心部の平均気泡径が、10〜200μmであることを特徴とする高光沢発泡粒子が提供される。
また、本発明によれば、上記高光沢発泡粒子を製造する方法であって、
前記エステル系エラストマーを基材樹脂とする樹脂粒子に発泡剤を含浸させて発泡性粒子を得る工程と、前記発泡性粒子を発泡させる工程とを含むことを特徴とする高光沢発泡粒子の製造方法が提供される。
更に、本発明によれば、上記高光沢発泡粒子を型内発泡させて得られた発泡成形体が提供される。
また、本発明によれば、上記発泡成形体を製造する方法であって、
ゲージ圧0.05〜0.4MPaの水蒸気を加熱媒体として上記高光沢発泡粒子を型内発泡させる工程を含むことを特徴とする発泡成形体の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0007】
本発明の高光沢発泡粒子は、光沢性の高い表面を有する発泡成形体を提供できる。
【0008】
また、以下のいずれかの場合、より光沢性の高い表面を有する発泡成形体を製造し得る高光沢発泡粒子を提供できる。
(1)A及びBが、A/B>1.5の関係を満たす。
(2)樹脂組成物が、(i)1×10〜2×10Paのビカット軟化温度Tv−10℃における固体粘弾性による貯蔵弾性率、及び(ii)1×10〜2×10Paの結晶化温度Tcにおける溶融粘弾性測定による貯蔵弾性率のいずれかの物性を有する。
(3)高光沢発泡粒子が、
(i)0.02〜0.4g/cmの嵩密度
(ii)1.5〜15mmの平均粒子径
のいずれかの物性を少なくとも有する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施例1の発泡粒子の断面写真である。
図2】実施例2の発泡粒子の断面写真である。
図3】実施例3の発泡粒子の断面写真である。
図4】比較例1の発泡粒子の断面写真である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(高光沢発泡粒子)
本発明の高光沢発泡粒子(以下、単に発泡粒子)は、基材樹脂としてのエステル系エラストマーを含む樹脂組成物から構成される。本明細書において高い光沢性とは、正反射方向の反射の度合いが高く、樹脂光沢を有する状態を意味すると発明者等は考えている。
【0011】
(1)エステル系エラストマー
エステル系エラストマーは、発泡成形体を与えさえすれば特に限定されない。例えば、ハードセグメントとソフトセグメントとを含むエステル系エラストマーが挙げられる。
ハードセグメントは、例えば、ジカルボン酸成分及び/又はジオール成分から構成される。ジカルボン酸成分と、ジカルボン酸成分及びジオール成分との2成分から構成されていてもよい。
ジカルボン酸成分としては、シュウ酸、マロン酸、コハク酸等の脂肪族ジカルボン酸及びその誘導体、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸及びその誘導体に由来する成分が挙げられる。
ジオール成分としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール(例えば、1,4−ブタンジオール)等のC2−10アルキレングリコール、(ポリ)オキシC2−10アルキレングリコール、C5−12シクロアルカンジオール、ビスフェノール類又はこれらのアルキレンオキサイド付加体等が挙げられる。ハードセグメントは、結晶性を有していてもよい。
【0012】
ソフトセグメントは、ポリエステルタイプ及び/又はポリエーテルタイプのセグメントを使用できる。
ポリエステルタイプのソフトセグメントとしては、ジカルボン酸類(アジピン酸のような脂肪族C4−12ジカルボン酸)とジオール類(1,4−ブタンジオールのようなC2−10アルキレングリコール、エチレングリコールのような(ポリ)オキシC2−10アルキレングリコール)との重縮合体、オキシカルボン酸の重縮合体やラクトン(ε−カプロラクトンのようなC3−12ラクトン)の開環重合体等の脂肪族ポリエステルが挙げられる。ポリエステルタイプのソフトセグメントは、非晶性であってもよい。ソフトセグメントとしてのポリエステルの具体例としては、カプロラクトン重合体、ポリエチレンアジペート、ポリブチレンアジペート等のC2−6アルキレングリコールとC6−12アルカンジカルボン酸とのポリエステルが挙げられる。このポリエステルの数平均分子量は、200〜15000の範囲であってもよく、200〜10000の範囲であってもよく、300〜8000の範囲であってもよい。
ポリエーテルタイプのソフトセグメントとしては、ポリアルキレングリコール(例えば、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシテトラメチレングリコール)のような脂肪族ポリエーテルに由来するセグメントが挙げられる。ポリエーテルの数平均分子量は、200〜10000の範囲であってもよく、200〜6000の範囲であってもよく、300〜5000の範囲であってもよい。
【0013】
ソフトセグメントは、脂肪族のポリエステルとポリエーテルとの共重合体(ポリエーテル−ポリエステル)のようなポリエーテル単位を有するポリエステル、ポリオキシアルキレングリコール(例えば、ポリオキシテトラメチレングリコール)のようなポリエーテルと脂肪族ジカルボン酸とのポリエステルに由来するセグメントであってもよい。
ハードセグメントとソフトセグメントとの質量割合は、20:80〜90:10であってもよく、30:70〜90:10であってもよく、30:70〜80:20であってもよく、40:60〜80:20であってもよく、40:60〜75:25であってもよい。
また、ジカルボン酸成分が、テレフタル酸成分とそれ以外のジカルボン酸成分である場合、エステル系エラストマーが、ハードセグメントを30〜80質量%の割合で含み、かつテレフタル酸成分以外のジカルボン酸成分を5〜30質量%の割合で含んでいてもよい。テレフタル酸成分以外のジカルボン酸成分の割合は5〜25質量%であってもよく、5〜20質量%でもよく、10〜20質量%でもよい。なお、ジカルボン酸成分の割合は、樹脂のNMRスペクトルを定量評価することにより入手できる。
テレフタル酸成分以外のジカルボン酸成分が、イソフタル酸成分であることが好ましい。イソフタル酸成分を含むことで、エラストマーの結晶化度が下がる傾向があり、発泡成形性が向上してより低密度の発泡成形体を得ることができる。
エステル系エラストマーには、東洋紡社製ペルプレン(PELPRENE)シリーズやバイロン(VYLON)シリーズが好適に使用できる。特に、ペルプレンシリーズを使用することが好ましい。
【0014】
樹脂組成物は、1×10〜2×10Paの貯蔵弾性率(ビカット軟化温度Tv−10℃における固体粘弾性測定による値)を有している。この範囲の貯蔵弾性率(固体粘弾性)を有することで、高反発弾性の発泡成形体を製造可能な発泡粒子を提供できる。貯蔵弾性率(固体粘弾性)は、1×10〜1.5×10Paの範囲であってもよく、1×10〜1×10Paの範囲であってもよく、1×10〜8×10Paの範囲であってもよい。
また、樹脂組成物は、結晶化温度Tc−10℃における溶融粘弾性測定による貯蔵弾性率が1×10〜2×10Paの範囲を有していることが好ましい。貯蔵弾性率(溶融粘弾性)が1×10Pa未満の場合、発泡後の冷却過程において発泡形状を維持することができずに収縮してしまうことがある。2×10Paより大きい場合、発泡時の軟化が困難になり、所望の発泡倍数(密度)が得られないことがある。貯蔵弾性率(溶融粘弾性)は、1×10〜1.5×10Paの範囲であってもよく、1×10〜1×10Paの範囲であってもよく、3×10〜1×10Paの範囲であってもよい。
【0015】
(2)基材樹脂
基材樹脂には、本発明の効果を阻害しない範囲で、エステル系エラストマー以外に、他の樹脂が含まれていてもよい。他の樹脂は、公知の熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂であってもよい。
基材組成物は、他に、難燃剤、着色剤、帯電防止剤、展着剤、可塑剤、難燃助剤、架橋剤、充填剤、滑剤等を含んでいてもよい。
難燃剤としては、ヘキサブロモシクロドデカン、トリアリルイソシアヌレート6臭素化物等が挙げられる。
着色剤としては、カーボンブラック、グラファイト、酸化チタン等の無機顔料、フタロシアニンブルー、キナクリドンレッド、イソインドリノンエロー等の有機顔料、金属粉、パール等の特殊顔料が挙げられる。
帯電防止剤としては、ポリオキシエチレンアルキルフェノールエーテル、ステアリン酸モノグリセリド等が挙げられる。
展着剤としては、ポリブテン、ポリエチレングリコール、シリコンオイル等が挙げられる。
【0016】
(3)発泡粒子の物性
発泡粒子は、A>Bの関係(Aは表層部の平均気泡径、Bは中心部の平均気泡径)を満たす複数の気泡を有している。この関係を有することで、A≦Bの関係を有する発泡粒子よりも、光沢性の高い表面を有する発泡成形体を提供できる。発明者等は、この理由を光の乱反射を低減できることにあると推測している。
なお、本明細書において、表層部とは、発泡粒子の表面から中心に向かって、発泡粒子の半径の約30%までの領域を意味する。一方、中心部とは、発泡粒子の中心から表面に向かって、発泡粒子の半径の約70%までの領域を意味する。
また、表層部の平均気泡径は、80〜400μmである。一方、中心部の平均気泡径は、10〜200μmである。表層部の平均気泡径が80μm未満の場合、十分な光沢性を得ることができないことがある。400μmより大きい場合、成形性が悪くなることがある。中心部の平均気泡径が10μm未満の場合、収縮して外観不良を起こすことがある。200μmより大きい場合、成形時に発泡粒子同士の融着が悪くなり強度が低下することがある。表層部の平均気泡径は、80〜350μmであることが好ましく、90〜350μmであることがより好ましい。一方、中心部の平均気泡径は、20〜200μmであることが好ましく、30〜200μmであることがより好ましい。
更に、AとBは、A/B>1.5の関係を有することが好ましい。この関係は、発泡粒子の表層部に位置する気泡が、中心部に位置する気泡よりも、かなり大きな平均気泡径を有していることを意味している。
【0017】
発泡粒子は、
(i)0.02〜0.4g/cmの嵩密度
(ii)1.5〜15mmの平均粒子径
のいずれかの物性を少なくとも有することが好ましい。
嵩密度が0.02g/cm未満の場合、収縮して外観不良を起こしたり、強度が低下することがある。0.4g/cmより大きい場合、軽量の発泡成形体を得ることができないことがある。嵩密度は、0.04〜0.4g/cmの範囲であってもよく、0.06〜0.4g/cmの範囲であってもよく、0.06〜0.3g/cmの範囲であってもよい。
平均粒子径が1.5mm未満の場合、発泡粒子の製造自体が困難であり、かつ製造コストが増大することがある。15mmより大きい場合、型内成形により発泡成形体を作製する際に、金型への充填性が低下することがある。平均粒子径は、1.5〜12mmの範囲であってもよく、1.5〜9mmの範囲であってもよい。
【0018】
(高光沢発泡粒子の製造方法)
発泡粒子は、エステル系エラストマー(基材樹脂)を含む樹脂粒子に発泡剤を含浸させて発泡性粒子を得る工程と、発泡性粒子を発泡させる工程とを含む方法により製造できる。
【0019】
(1)発泡性粒子
発泡性粒子は、樹脂粒子に発泡剤を含浸させて発泡性粒子を得る工程(含浸工程)を経て得ることができる。
発泡剤は有機ガスであってもよく、無機ガスであってもよい。無機ガスとしては、空気、窒素及び二酸化炭素(炭酸ガス)等がある。有機ガスとしてはプロパン、ブタン、ペンタン等の炭化水素、フッ素系発泡剤が挙げられる。上記発泡剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
基材樹脂に含まれる発泡剤の量は、基材樹脂100質量部に対して、1〜12質量部であってもよい。1質量部未満であると、発泡力が低くなり、発泡倍数を高くすることが困難である。発泡剤の含有量が12質量部を超えると、可塑化効果が大きくなり、発泡時に収縮が生じて良好な発泡粒子を得られないことがある。発泡剤の量は5〜12質量部であってもよい。この範囲内であれば、発泡力を十分に高めることができ、より一層良好に発泡させることができる。
樹脂粒子に発泡剤を含浸させる方法としては、公知の方法を用い得る。例えば、オートクレーブ内に、樹脂粒子、分散剤及び水を供給して撹拌することによって、樹脂粒子を水中に分散させて分散液を製造し、この分散液中に発泡剤を圧入し、樹脂粒子中に発泡剤を含浸させる方法が挙げられる。
分散剤としては、特に限定されず、例えば、リン酸カルシウム、ピロリン酸マグネシウム、ピロリン酸ナトリウム、酸化マグネシウム等の難水溶性無機物や、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムのような界面活性剤が挙げられる。
【0020】
樹脂粒子への発泡剤の含浸温度は、低いと、樹脂粒子に発泡剤を含浸させるのに要する時間が長くなって生産効率が低下することがある。また、高いと、樹脂粒子同士が融着して結合粒が発生することがある。含浸温度は、−20〜120℃であってもよく、0〜120℃であってもよく、20〜120℃であってもよく、40〜120℃であってもよい。発泡助剤(可塑剤)や気泡調整剤を、発泡剤と併用してもよい。
発泡助剤(可塑剤)としては、アジピン酸ジイソブチル、トルエン、シクロヘキサン、エチルベンゼン等が挙げられる。
【0021】
気泡調整剤としては、高級脂肪酸アミド、高級脂肪酸ビスアミド、高級脂肪酸塩、無機気泡核剤等が挙げられる。これら気泡調整剤は、複数種組み合わせてもよい。
高級脂肪酸アミドとしては、ステアリン酸アミド、12−ヒドロキシステアリン酸アミド等が挙げられる。
高級脂肪酸ビスアミドとしては、エチレンビスステアリン酸アミド、メチレンビスステアリン酸アミド等が挙げられる。
高級脂肪酸塩としては、ステアリン酸カルシウムが挙げられる。
無機気泡核剤としては、タルク、珪酸カルシウム、合成あるいは天然に産出される二酸化ケイ素等が挙げられる。
上記以外に化学気泡剤としての役割も果たす気泡調整剤を使用してもよい。そのような気泡調整剤としては、重曹クエン酸、炭酸水素ナトリウム、アゾジカルボンアミド、ジニトロソペンタメチレンテトラミン、ベンゼンスルホニルヒドラジド、ヒドラゾジカルボンアミド等が挙げられる。
気泡調整剤の含有量は、発泡性粒子100質量部に対して、0.005〜2質量部であってもよく、0.01〜1.5質量部であってもよい。気泡調整剤が0.005質量部よりも少ない場合、気泡径の制御が難しくなることがある。気泡調整剤が2質量部よりも多い場合、樹脂物性が変化し、例えば成形体強度の低下が起こることがある。
【0022】
(2)樹脂粒子
樹脂粒子の形状は、特に限定されず、真球状、楕円球状(卵状)、円柱状、角柱状、ペレット状又はグラニュラー状等が挙げられる。
樹脂粒子は、長さ0.5〜5mm及び平均径0.5〜5mmを有してもよい。長さが0.5mm未満及び平均径が0.5mm未満の場合、発泡性粒子とした場合のガス保持性が低くなるため、発泡することが困難なことがある。長さが5mmより大きい及び平均径が5mmより大きい場合、発泡させた際、内部まで熱が伝わらないため、発泡粒子に有芯が生じてしまうことがある。ここで、樹脂粒子の長さL及び平均径Dは、ノギスを用いて次のように測定する。リペレットする際の押出方向の樹脂粒子の長さを長さL、押出方向に直交する方向の樹脂粒子の最小直径(最小径)及び最大直径(最大径)の平均値を平均径Dとする。
【0023】
(3)発泡粒子
発泡粒子は、発泡性粒子を発泡させる工程(発泡工程)を経て得ることができる。
発泡粒子の形状は、特に限定されず、真球状、楕円球状(卵状)、円柱状、角柱状、ペレット状又はグラニュラー状等が挙げられる。
発泡工程では、発泡性粒子を発泡させて、発泡粒子を得ることができれば発泡温度、加熱媒体は特に限定されない。
【0024】
発泡工程において、発泡性粒子に、合着防止剤を添加してもよい。合着防止剤の添加量は、発泡性粒子100質量部に対して、0.03〜0.3質量部の範囲でもよく、0.05〜0.25質量部の範囲でもよい。合着防止剤が0.03質量部よりも少ない場合、合着防止効果を十分にだすことができないことがある。合着防止剤が0.3質量部よりも多い場合、発泡成形体の強度低下が起こったり、洗浄コストが増えることがある。
なお、発泡前に、発泡性粒子の表面に、ステアリン酸亜鉛のような粉末状金属石鹸類、炭酸カルシウム及び水酸化アルミニウムを塗布してもよい。この塗布により、発泡工程における発泡性粒子同士の結合を減少できる。また、帯電防止剤、展着剤等の表面処理剤を塗布してもよい。
【0025】
(発泡成形体)
(1)各種物性
発泡成形体は、0.02〜0.4g/cmの密度を有し得る。密度が0.4g/cmよりも大きい場合、発泡成形体の軽量性が低下することがある。密度が0.02g/cmよりも小さい場合、発泡成形体が収縮して外観不良を起こしたり、強度が低下することがある。密度は、0.04〜0.4g/cmの範囲であってもよく、0.06〜0.4g/cmの範囲であってもよく、0.06〜0.3g/cmの範囲であってもよい。
発泡成形体は、50〜100%の反発弾性率を有し得る。反発弾性率が50%よりも低い場合、反発弾性が求められる用途での使用が難しくなる。
発泡成形体は、20〜65のアスカーC硬度を有し得る。アスカーC硬度が20よりも小さい場合、発泡成形体の形状安定性が低下することがある。65より大きい場合、例えば十分な反発弾性や柔軟性を得られない場合がある。アスカーC硬度は、20〜60の範囲であってもよく、20〜55の範囲であってもよい。
発泡成形体は、例えば、建築資材、靴の部材、スポーツ用品、緩衝材、シートクッション、自動車部材等に用いることができる。具体的には、シューズのミッドソール・インソール・アウトソール部材、ラケットやバット等のスポーツ用品の打具類の芯材、パッドやプロテクター等のスポーツ用品の防具類、パッドやプロテクター等の医療・介護・福祉・ヘルスケア用品、自転車や車椅子等のタイヤ芯材、自動車等の輸送機器の内装材・シート芯材・衝撃吸収部材・振動吸収部材、防舷材やフロート等の衝撃吸収材、玩具、床下地材、壁材、鉄道車両、飛行機、ベッド、クッション等に用いることができる。
発泡成形体は、上記用途に応じて適切な形状を取り得る。
【0026】
(2)製造方法
発泡成形体の製造方法は、ゲージ圧0.05〜0.4MPaの水蒸気を加熱媒体として発泡粒子を型内発泡させる工程を含む。例えば、多数の小孔を有する閉鎖金型内に発泡粒子を充填し、水蒸気で発泡粒子を加熱発泡させ、発泡粒子間の空隙を埋めると共に、発泡粒子を相互に融着させ、一体化させることにより得ることができる。その際、例えば、金型内への発泡粒子の充填量を調整する等して、発泡成形体の密度を調整できる。水蒸気のゲージ圧が0.05MPa未満の場合、発泡粒子を型内発泡することが難しくなり発泡粒子同士の融着が低下して、発泡成形体に十分な強度を付与できないことがある。0.4MPaより高い場合、発泡成形体が収縮して、外観が良好な発泡成形体を得られないことがある。水蒸気のゲージ圧は、0.05〜0.35MPaであってもよく、0.05〜0.3MPaであってもよく、0.1〜0.3MPaであってもよい。
更に、発泡粒子に不活性ガス又は空気(以下、不活性ガス等と称する)を含浸させて、発泡粒子の発泡力を向上させてもよい(内圧付与工程)。発泡力を向上させることにより、型内発泡時に発泡粒子同士の融着性が向上し、発泡成形体は更に優れた機械的強度を有する。なお、不活性ガスとしては、例えば、二酸化炭素、窒素、ヘリウム、アルゴン等が挙げられる。
発泡粒子に不活性ガス等を含浸させる方法としては、例えば、常圧以上の圧力を有する不活性ガス等雰囲気下に発泡粒子を置くことによって、発泡粒子中に不活性ガス等を含浸させる方法が挙げられる。発泡粒子は、金型内に充填する前に不活性ガス等が含浸されてもよいが、発泡粒子を金型内に充填した後に金型ごと不活性ガス等雰囲気下に置くことで含浸されてもよい。なお、不活性ガスが窒素である場合、ゲージ圧0.1〜2MPaの窒素雰囲気中に発泡粒子を20分〜24時間に亘って放置してもよい。
【0027】
発泡粒子に不活性ガス等を含浸させた場合、発泡粒子をこのまま、金型内にて加熱、発泡させてもよいが、発泡粒子を金型内に充填する前に加熱、発泡させて、低嵩密度の発泡粒子とした上で金型内に充填して加熱、発泡させてもよい。このような低嵩密度の発泡粒子を用いることによって、低密度の発泡成形体を得ることができる。
また、発泡粒子の製造時に、合着防止剤を用いた場合、発泡成形体の製造時に、合着防止剤が発泡粒子に付着したまま成形を行ってもよい。また、発泡粒子相互の融着を促進するために、合着防止剤を成形工程前に洗浄して除去してもよい。
【実施例】
【0028】
次に実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
<樹脂粒子のショアD硬度>
100℃で3時間乾燥した樹脂粒子を融点Tm+30℃の温度で熱プレスし、平滑な厚み3mm以上のフィルムを作製した。これを温度23±2℃、湿度50±5%の環境下で24時間以上状態調節後、テクロック社製「テクロックデュロメータタイプD」硬度計を用いて測定した。押針が試験片測定面に垂直になるように加圧面を密着させて、直ちに目盛を読み取った。試料の5箇所を測定し、これらの平均値をショアD硬度とした。
【0029】
<樹脂粒子の融点Tm、結晶化温度Tc及び結晶化熱量>
融点及び結晶化温度は、JIS K7121:1987、JIS K7121:2012「プラスチックの転移温度測定方法」に記載されている方法で測定した。但し、サンプリング方法・温度条件に関しては以下のように行った。試料をアルミニウム製測定容器の底にすきまのないよう5〜7mg充てん後、アルミニウム製の蓋をした。次いで、日立ハイテクサイエンス社製「DSC7000X、AS−3」又はSIIナノテクノロジー社製「DSC6220」示差走査熱量計を用い、窒素ガス流量20mL/分のもと、30℃から−70℃まで降温した後10分間保持し、−70℃から220℃まで昇温(1回目昇温)、10分間保持後220℃から−70℃まで降温(冷却)、10分間保持後−70℃から220℃まで昇温(2回目昇温)した時のDSC曲線を得た。なお、全ての昇温・降温は速度10℃/分で行い、基準物質としてアルミナを用いた。本発明において、融解温度(融点)とは、装置付属の解析ソフトを用いて、2回目昇温過程にみられる最も大きな融解ピークのトップの温度を読みとった値とした。
更に、結晶化温度は、装置付属の解析ソフトを用いて、冷却過程にみられる最も高温側の結晶化ピークのトップの温度を読み取った値とした。
結晶化熱量は、JIS K7122:1987、JIS K7122:2012「プラスチックの転移熱測定方法」に記載されている方法で測定した。冷却過程における最も高温側の結晶化ピークの結晶化熱量は、装置付属の解析ソフトを用い、高温側のベースラインからDSC曲線が離れる点と、そのDSC曲線が再び低温側のベースラインへ戻る点とを結ぶ直線と、DSC曲線に囲まれる部分の面積から算出した。
【0030】
<樹脂粒子のビカット軟化温度Tv>
JIS K7206:2016「プラスチックー熱可塑性プラスチックービカット軟化温度(VST)の求め方」のA法に準拠して測定した。100℃で3時間乾燥した樹脂粒子を融点Tm+30℃で熱プレスをして、10mm×10mm×厚み5mmの試験片を作製した。安田精機製作所社製「HAD−6型」ヒートディストーションテスターを用いて、昇温速度50℃/時、試験荷重10Nの条件で3回測定を行い、これらの平均値をビカット軟化温度とした。
【0031】
<樹脂粒子の貯蔵弾性率(固体粘弾性)>
90〜100℃で3時間乾燥した樹脂を熱プレス機にて、温度190〜200℃の条件下で、長さ120mm、幅10mm、厚さ0.7〜10mmの短冊状試料を作製した。固体粘弾性測定装置には、SIIナノテクノロジー社製「EXSTRAR DMS6100」粘弾性スペクトロメータを用いた。試料を長さ40〜50mmにサンプリングし、引張制御モードにて窒素雰囲気下で周波数1Hz、昇温速度5℃/分、測定温度30℃〜260℃、チャック間隔20mm、歪振幅5μm、最小張力/圧縮力20mN、張力/圧縮力ゲイン1.2、力振幅初期値20mNの条件で測定した。なお、解析は装置付属の解析ソフトを用いた。
【0032】
<樹脂粒子の貯蔵弾性率(溶融粘弾性)>
本発明における動的粘弾性測定はAnton Paar社製「PHYSICA MCR301」粘弾性測定装置及び「CTD450」温度制御システムにて測定した。まず、90〜100℃で3時間乾燥した樹脂を熱プレス機にて、温度190〜200℃の条件下で、直径25mm、厚さ3mmの円盤状試験片を作製した。次に試験片を測定開始温度220℃に加熱した粘弾性測定装置のプレート上にセットし窒素雰囲気下にて5分間に亘って加熱し溶融させた。その後、直径25mmのパラレルプレートにて間隔を2mmまで押しつぶし、プレートからはみ出した樹脂を取り除いた。更に測定開始温度220±1℃に達してから5分間加熱後、歪み0.025%、周波数1Hz、降温速度2℃/分、測定間隔30秒、ノーマルフォース0Nの条件下にて、動的粘弾性測定を行い、220〜80℃の範囲の貯蔵弾性率を測定した。
【0033】
<発泡性粒子の含浸ガス量>
得られた発泡性粒子の質量W1(g)を直ちに計量し、温度23±2℃、湿度50±5%の環境下で24時間静置した。静置後、発泡性粒子の質量W2(g)を計量し、次式により発泡性粒子の含浸ガス量を算出した。
発泡性粒子の含浸ガス量(質量%)=(W1−W2)/W1×100
【0034】
<発泡粒子の嵩密度>
発泡粒子を測定試料として任意の質量W(g)計量した。この測定試料をメスシリンダー内に自然落下させた後、メスシリンダーの底をたたいて体積を一定にし、試料の見掛け体積V(cm)を測定した。下記式に基づいて発泡粒子の嵩密度を算出した。
嵩密度(g/cm)=測定試料の質量W/測定試料の体積V
【0035】
<発泡粒子の平均粒子径>
発泡粒子の直径の最大値と最小値をミツトヨ社製デジマチックキャリパで測定して、下記式により平均粒子径(mm)を算出した。無作為に選択した10個の発泡粒子の平均粒子径の平均値を平均粒子径とした。
平均粒子径(mm)=(直径の最大値+直径の最小値)/2
【0036】
<発泡粒子の平均気泡径>
発泡粒子の平均気泡径は、次の方法で測定した。具体的には、発泡粒子の中心を通るように、剃刀を用いて発泡粒子を2等分して、切断面を日立製作所社製「S−3000N」又は日立ハイテクノロジーズ社製「S−3400N」走査電子顕微鏡にて撮影した。撮影した画像をA4用紙に印刷し、発泡粒子の中心を通る最小径及び最大径を引いた。中心から、最小径を基準とする半径7/10の円を描いた。描かれた円の内側を中心部としての領域Bとした。また、中心から、最大径を基準とする半径7/10の円を描いた。描かれた円の外側を表層部としての領域Aとした。
領域Bの中に気泡20個以上に接する任意の直線を描き、直線の長さLを測定すると共に、直線に接している気泡数Nを数えた。気泡20個に接する直線が描けない場合は、領域内で最も長い直線を描いた。任意の直線は可能な限り接点でのみ接しないようにし、接してしまう場合は気泡数に含めた。気泡が小さく数えることが難しい場合は、拡大して撮影、計測を行った。計測結果から、下記式により平均弦長t及び気泡径Dを算出し、気泡径Dの算術平均を平均気泡径(中心部)とした。
平均弦長t(μm)=線長L/(気泡数N×写真の倍率)
気泡径D(μm)=平均弦長t/0.616
領域Aについても同様に算出し、これらの算術平均を平均気泡径(表層部)とした。
【0037】
<発泡粒子の含浸ガス量>
まず、内圧付与前の発泡粒子の質量W1(g)を計量した。次に、内圧付与後の発泡粒子の質量W2(g)を計量した。次式により発泡粒子の含浸ガス量を算出した。
発泡粒子の含浸ガス量(質量%)=(W2−W1)/W2×100
【0038】
<発泡成形体の密度>
成形直後に発泡成形体を温度40℃で12時間乾燥し、乾燥後に温度23±2℃、湿度50±5%の環境下で72時間状態調節した。状態調節した発泡成形体の質量a(g)を小数点2桁まで測定すると共に、外寸をデジマチックキャリパ(ミツトヨ社製)で1/100mmまで測定して、見掛けの体積b(cm3)を求めた。発泡成形体の密度を次式により算出した。
密度(g/cm3)=a/b
【0039】
<発泡成形体のアスカーC硬度>
アスカーC硬度は、平滑な面を有する厚み10mm以上の試験片を温度23±2℃、湿度50±5%の環境下で72時間以上状態調節後、高分子計器社製「アスカーゴム・プラスチック硬度計C形」硬度計を用いて測定した。押針が試験片の平滑な測定面に垂直になるように加圧面を密着させて、直ちに目盛を読み取った。発泡粒子同士の融着面をさけて、試料の5箇所を測定し、これらの平均値をアスカーC硬度とした。
【0040】
<発泡成形体の反発弾性率>
JIS K 6400−3:2011に準拠して測定した。高分子計器社製「FR−2」反発弾性試験機に、温度23±2℃、湿度50±5%の環境下で72時間以上状態調節した、同一の発泡体から切り出した試料を厚み40mm以上になるように重ねてセットし、500mmの高さ(a)から銅球(φ5/8インチ、16.3g)を自由落下させて、その反発最高到達時の高さ(b)を読み取り、式(b)/(a)×100により反発弾性率(%)を算出した。ただし、同一試験片を用いて3回測定を行い、これらの平均値を反発弾性率とした。
【0041】
<発泡成形体の光沢性>
蛍光灯下で発泡成形体を45°傾けた際に、目視で光沢性が確認できる場合は○、確認できない場合は×とした。
【0042】
<実施例1>
(1)樹脂粒子
エステル系エラストマー(商品名:「ペルプレン GP−475」、東洋紡社製、ハードセグメント:ポリブチレンテレフタレート及びポリブチレンイソフタレート、ソフトセグメント:脂肪族ポリエーテル)100質量部と有機系気泡調整剤(エチレンビスステアリン酸アミド、商品名:「花王ワックスEBFF」、花王社製)0.3質量部を単軸押出機に供給し、180〜280℃で溶融混練した。次に、溶融状態のエステル系エラストマーを冷却して粘度を調整した後、単軸押出機の前端に取り付けたマルチノズル金型(直径1.3mmのノズルを8穴有する)の各ノズルから樹脂を押し出し、30〜50℃の水中でカットした。得られた樹脂粒子は、粒子の長さLが1.4〜1.8mm、粒子の平均径Dが1.4〜1.8mmであった。
(2)発泡性粒子
内容積5Lの撹拌機付オートクレーブに、樹脂粒子1.5kg(100質量部)、蒸留水3L、界面活性剤(直鎖アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、商品名:「ニューレックスR」、油化産業社製)4gを投入し、密閉した後、撹拌状態で発泡剤のブタン(ノルマルブタン:イソブタン=7:3)16質量部を圧入した。次に、オートクレーブを70℃で2時間加熱して、25℃まで冷却した。冷却完了後にオートクレーブを除圧し、直ちに蒸留水で界面活性剤を洗浄し、脱水することで発泡性粒子を得た。発泡性粒子の含浸ガス量は、6.6質量%であった。
【0043】
(3)発泡粒子
発泡性粒子1.5kg(100質量部)に合着防止剤(ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、商品名:「エパン450」、第一工業製薬社製)0.25質量部を塗布した後、内容積50Lの撹拌機付円筒型予備発泡機に投入し、撹拌させながらゲージ圧0.12MPaの水蒸気で加熱して、発泡粒子を得た。
(4)発泡成形体
発泡粒子をオートクレーブに投入し、ゲージ圧0.3MPaの窒素ガスを圧入した後、30℃で18時間静置して、発泡粒子に窒素ガスを含浸した(内圧付与)。窒素ガスの含浸量は、0.9質量%であった。
発泡粒子をオートクレーブから取り出して、直ちに水蒸気孔を有する400mm×300mm×厚み20mmの大きさの成形用キャビティ内に充填し、ゲージ圧0.21MPaの水蒸気で加熱成形を行い、発泡成形体を得た。
【0044】
<実施例2>
(1)発泡性粒子
内容積5Lの撹拌機付オートクレーブに、実施例1で作製した樹脂粒子1.5kg(100質量部)、蒸留水3L、界面活性剤(直鎖アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、商品名:「ニューレックスR」、油化産業社製)4gを投入し、密閉した後、撹拌状態で発泡剤のブタン(ノルマルブタン:イソブタン=7:3)16質量部及びペンタン(ノルマルペンタン:イソペンタン=8:2)1質量部を圧入した。次に、オートクレーブを70℃で2時間加熱して、25℃まで冷却した。冷却完了後にオートクレーブを除圧し、直ちに蒸留水で界面活性剤を洗浄し、脱水することで発泡性粒子を得た。発泡性粒子の含浸ガス量は、6.5質量%であった。
(2)発泡粒子
実施例1と同様の方法で発泡粒子を得た。
(3)発泡成形体
実施例1と同様の方法で発泡成形体を得た。なお、内圧付与による発泡粒子の窒素ガス含浸量は、0.8質量%であった。
【0045】
<実施例3>
(1)発泡性粒子
実施例1で作製した樹脂粒子を用いて、オートクレーブの加熱温度を100℃に変更したこと以外は実施例1と同様の方法で発泡性粒子を得た。なお、発泡性粒子の含浸ガス量は、6.7質量%であった。
(2)発泡粒子
発泡性粒子1.5kg(100質量部)に合着防止剤(ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、商品名:「エパン450」、第一工業製薬社製)0.25質量部を塗布して、オートクレーブから抜出後20分間経過の時点で、内容積50Lの撹拌機付円筒型予備発泡機に投入し、撹拌させながらゲージ圧0.14MPaの水蒸気で加熱して、発泡粒子を得た。
(3)発泡成形体
実施例1と同様の方法で発泡成形体を得た。なお、なお、内圧付与による発泡粒子の窒素ガス含浸量は、0.8質量%であった。
【0046】
<比較例1>
(1)発泡性粒子
内容積5Lの撹拌機付オートクレーブに、実施例1で作製した樹脂粒子1.5kg(100質量部)、蒸留水3L、界面活性剤(直鎖アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、商品名:「ニューレックスR」、油化産業社製)4gを投入し、密閉した後、撹拌状態で発泡剤のブタン(ノルマルブタン:イソブタン=7:3)16質量部を圧入した。次に、オートクレーブを100℃で2時間加熱して、25℃まで冷却した。冷却完了後にオートクレーブを除圧し、直ちに蒸留水で界面活性剤を洗浄し、脱水することで発泡性粒子を得た。発泡性粒子の含浸ガス量は、7.2質量%であった。
(2)発泡粒子
実施例1と同様の方法で発泡粒子を得た。
(3)発泡成形体
実施例1と同様の方法で発泡成形体を得た。なお、内圧付与による発泡粒子の窒素ガス含浸量は、0.9質量%であった。
実施例1〜3及び比較例1の各種物性値をまとめて表1に示す。また、実施例1〜3及び比較例1の発泡粒子の断面写真を図1〜4に示す。
【0047】
【表1】
【0048】
表1から、実施例1〜3の発泡成形体は、光沢性の高い表面を有していることが分かる。図1〜4から、実施例1〜3の発泡粒子は、表層部の平均気泡径が大きいことが分かる。
図1
図2
図3
図4