(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
平坦に形成された第2のキャピラリー膜システムを更に含む創傷治療システムであって、前記平坦に形成された第2のキャピラリー膜システムは少なくとも1つの供給ラインに接続されているため、液体、媒体、気体及び/又はその他の物質が前記供給ライン及び前記第2のキャピラリー膜システムを通過可能であり、また前記創傷治療システムは分配容器も含み、前記第2のキャピラリー膜システムの少なくとも1つの前記供給ラインを含む前記分配容器は、前記第2のキャピラリー膜システムに取外し可能に接続されており、前記供給ラインから洗浄液を前記第2のキャピラリー膜システムに供給できることを特徴とする、請求項1に記載の創傷治療システム。
ドレナージシステムを含む創傷治療システムであって、前記ドレナージシステムは負圧ユニットと連結可能であって、治療する創傷から前記液体を排出できることを特徴とする、請求項1又は2に記載の創傷治療システム。
【技術分野】
【0001】
明細書:
本発明は、創傷内へ導入するため又は皮膚創傷の上及び創傷ドレッシング材の下に塗布するための創傷管理システムに関し、本創傷管理システムは、平坦に形成されたキャピラリー膜システムを含んでおり、この平坦に形成されたキャピラリー膜システムは、少なくとも1つの供給ラインに接続されているため、液体、媒体、気体及び/又はその他の物質がこの供給ライン及びキャピラリー膜システムを通過可能になっている。
【0002】
最新の創傷管理は、治癒の進行プロセスを促進する湿潤した創傷環境を作り出すことを目標としている。従って、最新のアクティブな創傷被覆材は、治癒の段階に応じて創傷を湿潤した状態に保ち、創傷内の液体交換/物質交換の改善、創傷内への因子/薬剤の導入及び/又は創傷内の液体除去/分泌物除去及び/又は物質除去の改善を行うことができなければならない。用途には、軟部組織創傷、腹部創傷及び皮膚創傷におけるそのような創傷被覆材システムの使用が含まれる。
【0003】
分泌物又は滲出液を創傷から除去する方法及び装置は、商業的にV.A.C.(登録商標)治療システム(KCI社、米国)から知られている。このシステムでは、創傷内へ液体を交互に導入し、続いて、同じく交互に、従って非連続的に液体を創傷から排出するようになっている。このシステムでは、創傷内に導入されたスポンジ材が負圧によって力を創傷に加えることで、創傷の治癒を促進しようとしている。
【0004】
独国特許出願公開第102006042732号には、創傷治療のためのキャピラリー膜システムが説明され、この場合、創傷は、少なくとも1つの共通の供給ラインと少なくとも1つの共通の排出ラインとを備える最大1000個の中空繊維から成る中空糸膜配列を介して、毛細管床を通過するという形で潅流及び供給が行われることにより、抗生物質及び成長因子の潅流を可能にしようとしている。ここでは、穏やかな負圧を発生させながら連続潅流下で物質の均等分布を可能にしなければならない。独国特許出願公開第102006042732号は、最適な供給及び廃棄のために、更なるキャピラリー膜システムが有利であることを説明している。
【0005】
すでに独国特許出願公開第102006042732号で説明されているキャピラリー膜システムによって創傷治療の進歩を達成できるが、簡便かつ効率的な創傷管理システムに対する必要性が存在している。それによって、一方では、洗浄及び消毒などの創傷治療に必要なプロセスが被覆材を取り外さずに行うことができ、必要に応じて、栄養供給、電解液交換及び/又は解毒、あるいは成長因子又は抗生物質の供給も可能になり、簡便かつ確実な治療を行うことができるようになる。
【0006】
治癒過程を加速させるために、自己血清又は他人の血清を創傷に添加する創傷治療も増加している。血清による創傷治療は、連続的にも、不連続的にも行うことができる。最適な適用は創傷に応じて異なっており、治療する患者に応じて個別に決定されなければならない。
【0007】
このことから、治療する創傷に血清を適切に導入できる創傷管理システムに対する要望がある。従って、本発明の課題は、そのような種類の創傷治療システムを提供することである。
【0008】
この課題は、全血から血清を取得するための装置を含む、血清による創傷治療システムによって解決され、血清を取得するための装置は、
全血を収容し、その全血を凝固して、血液の細胞成分を含む固形成分と、血清を含む液体とに分離するための血液バッグであって、血液バックは、液体をこの血液バッグから排出するための出口を有し、この出口の部分には、固形成分の少なくとも大部分を保持するのに適した遮断物がある、血液バックと、
血液バッグの出口を介して前記血液バッグと流体連結しているフィルターモジュールと、を含み、
フィルターモジュールは、内部空間と、この内部空間を境界する内壁を備えるハウジングとを有し、この内壁には半透膜が配置され、この半透膜によって内部空間が保持液スペースと透過液スペースに分割されており、
半透膜は、血液バッグから排出された液体を、血清を含む透過液と、液体に含まれる粒子成分が残留する場合のある保持液とに分離することができ、
フィルターモジュールは、血液バッグから排出された液体を保持液スペースに送り込むための注入器具と、保持液スペースから保持液を排出するための保持液出口と、透過液スペースから透過液を排出するための透過液出口とを有し、
この創傷治療システムは、創傷に透過液を配分するための創傷管理システムを更に含み、この創傷管理システムは、平坦に形成された第1のキャピラリー膜システムも含み、この第1のキャピラリー膜システムは、少なくとも1つの供給ラインに接続されているため、液体がこの供給ライン及び第1のキャピラリー膜システムを通って流れ、創傷に供給可能であり、透過液出口は、第1のキャピラリー膜システムの少なくとも1つの供給ラインを含む透過液ラインを介して第1のキャピラリー膜システムに接続されている。
【0009】
そのような創傷治療システムを用いて、創傷への血清の直接供給が可能であって、同時に、ほぼ均質に血清を創傷に配分することができる。このとき、創傷管理システムの設定により、取扱いも安全かつ簡便に行うことができる。そのために、適用においては、この創傷管理システムを創傷に導入し、例えば半閉塞性の透明フィルムによってこの創傷管理システムを覆うことで、乾燥又は感染から創傷を保護することができる。
【0010】
第1のキャピラリー膜システムの少なくとも1つの供給ラインを介して、第1のキャピラリー膜システムは、血清を取得するための装置と流体結合している。従って、フィルターモジュールで生成される血清を、第1のキャピラリー膜システムを介して創傷へ運ぶことができる。
【0011】
血液から血清を取得するための装置としては、基本的に、特に血漿分離に用いられる装置、すなわち、重力の作用によって血漿と赤血球濃厚液を取得するのに用いられる装置が利用可能である。この種の装置は、例えば、独国特許公開第U29516471号、欧州特許公開第0266683A号、欧州特許公開第1089778A号、欧州特許公開第1309363A号、米国特許第4639243A号又は国際公開第2011/157822号に説明されている。
【0012】
これらの装置は、全血から血清を取得するための前述の装置と同じく、十分な量の全血を収容するための血液バッグと、この血液バッグに接続されているフィルターモジュールとを含み、血漿分離のケースではこのフィルターモジュールで血液を血漿と赤血球濃厚液との分離が行われ、この適用においては、これらの成分が、対応する収容バッグの中に別々に排出される。
【0013】
重力の作用による前述の血漿分離の場合と同様に、本創傷治療システムでも、血清の取得と創傷部への血清の供給は重力の作用によって行われるため、ポンプ又は圧力の印加などが追加されることはない。このため、適用においては、適切な保持装置により、血液バッグとフィルターモジュールを垂直方向に互いに規定の間隔を保って創傷の上方に配置できるため、血液バッグからフィルターモジュールへの流れ、更にはフィルターモジュールから第1のキャピラリー膜システムを介して創傷部へ向かう流れは、重力の作用によって行われる。
【0014】
血清を取得するための本装置では、適用において、血液バッグに規定量の全血が充填されている。次に、血液バッグ内の血液が凝固又は凝血する。凝固は、さまざまな凝血因子(血小板、フィブリノーゲン、カルシウム及びビタミンKなど)が関連して連鎖反応のように進行する複雑なプロセスである。血液の凝固は、採血及び血液バッグ内のクエン酸塩又はヘパリンといった抗凝固剤の欠乏によって引き起こされる。
【0015】
凝血の結果、血液は、例えば赤血球、血小板及び白血球などの細胞成分を含む固形成分(凝固物)と、凝血時に消費される凝血因子の他に、血液中に自然に溶解したすべての物質を含む液相とに分けられる。この場合、固形成分はゼラチン状の塊として存在する。
【0016】
血清を取得するための本装置の血液バッグは、その出口部分に遮断物を含み、この遮断物は、少なくとも大部分の固形成分、すなわちゼラチン状の塊の形で存在する凝固物を保持するのに適している。そのために、この遮断物は、出口部分にある狭窄部であってよく、この狭窄部は液体成分の通過を可能にする。遮断物はまたクランプであってもよく、このクランプは、血液バッグから液体が通過するのに十分な大きさの隙間を出口部分に有している。
【0017】
血液バッグの出口は、例えば適切なホース部分によって、血清を取得するための装置のフィルターモジュールと流体結合しており、血液バッグとフィルターモジュール間の接続は、このホース部分を介して、好ましくは、例えばルアーロック式コネクターの形での適切なオス/メスコネクターなどによって取外し可能に実施されている。あるいは、血液バッグとフィルターモジュールの間、すなわち血液バッグとホース部分の間、ホース部分とフィルターモジュールの間又はホース部分のセグメント間の接続は、滅菌コネクター(例えばTSCD(登録商標)II滅菌チューブ溶接機、Terumo社)を用いて作製できる滅菌溶接接続として実施してもよい。フィルターモジュールの側又はフィルターモジュールの透過液出口は、第1のキャピラリー膜システムの少なくとも1つの供給ラインを含む透過液ラインによって、第1のキャピラリー膜システムと流体結合している。好ましくは、フィルターモジュールの透過液出口と第1のキャピラリー膜システム間の接続も、例えば適切なオス/メスコネクター、好ましくはルアーロック式コネクターによって取外し可能であってもよく、あるいは前述した滅菌コネクターを使って作製できる滅菌溶接接続として実施されていてもよい。透過液ラインにはブレイクオープンバルブを配置してもよく、これにより、規定の時刻に血清を適宜加えることが可能になる。
【0018】
フィルターモジュール又はフィルターモジュールハウジングの内部空間に配置されている半透膜は、平坦膜又は中空糸膜の形で実施されていてよい。好ましくは、半透膜は中空糸膜の束である。この場合、保持液スペースは中空糸膜の内腔により形成され、透過液スペースは中空糸膜を取り囲む、ハウジングの内壁によって境界されている外部空間によって形成される。ここでは、特に好ましい実施形態において、フィルターモジュール内に配置されている中空糸膜の束がU字形に形成されている。この場合、フィルターモジュールのハウジングには蓋と底部があり、血液バッグから排出される液体を保持液スペースに送り込むための注入器具及び保持液を保持液スペースから排出するための保持液出口は蓋側に配置されている。透過液、すなわち血清を透過液スペースから排出するための透過液出口は、このフィルターモジュールでは底部側に配置されている。
【0019】
特に重力の作用によって血清を取得する際に、フィルターモジュールの半透膜を通って十分な量の透過液流を生成できるように、フィルターモジュールの半透膜は、好ましくは10,000〜40,000L/(m
2・h・bar)の範囲で膜貫通流量を有している。もう1つの好ましい実施形態では、フィルターモジュールの半透膜が、0.2μmの公称孔径を有している。このとき、公称孔径は、特定の微生物に対する膜の保持能力によって決定される。0.2μmの公称孔径を備える膜は、ブレブンディモナス属の細菌ブレブンディモナス・ディミヌタを保持することから、一般に防菌と呼ばれている。同様に、この膜は、例えばセラチア属のセラチア・マルセッセンスなどの細菌も保持し、これらの細菌に対しては0.45μmの公称孔径を備える膜で十分であろう。公称孔径サイズの検査又は検出は、例えばHIMA規定No.3,Vol.4,1982(保健機器製造業者協会)の中で説明されている。
【0020】
前述したように、血清を取得するための装置に含まれるフィルターモジュールの透過液出口は、第1のキャピラリー膜システムの少なくとも1つの供給ラインを含む透過液ラインによって、第1のキャピラリー膜システムと流体結合している。この場合、好ましい実施形態では、透過液ラインの中に、透過液又はフィルターモジュールから流出する血清を収容するための、入口及び出口を備える少なくとも1つの収容容器が配置されていてもよい。この場合、収容容器の入口は、フィルターモジュールの方を向く透過液ライン部分を介してフィルターモジュールの透過液出口と接続され、収容容器の出口は、透過液ラインの部品である排出ラインを介して第1のキャピラリー膜システムと接続されている。
【0021】
もう1つの有利な実施形態では、収容容器が、互いに並列接続で配置されている多数の部分収容容器から構成されている。部分収容容器の出口は、それぞれ排出ラインに接続されており、この排出ラインは、接続エレメントを介して最終的に第1のキャピラリー膜システムの供給ラインに接続されている。この場合、排出ラインは、好ましくはそれぞれ制御エレメントを有しており、これによって、それぞれの部分収容容器を接続又は遮断できるか、あるいは排出ラインを通る流量を規定値に調整することができる。そのような実施形態が特に有利なのは、例えば、フィルターモジュールで生成される血清をアリコートに分けて複数の部分収容容器に分割し、創傷治療の際に血清のアリコートを一定時間ごとに順番に供給するような場合である。
【0022】
好ましい実施形態では、血清による本創傷治療システムが、第1のキャピラリー膜システムの他に、平坦な形に形成されたもう1つのキャピラリー膜システムを含み、これを介して別の液体又は有効成分又は気体を創傷に供給することができ、あるいはこれを介して創傷部から液体を除去することもできる。特に好ましい実施形態では、本創傷治療システムが平坦に形成された第2のキャピラリー膜システムを含み、この平坦に形成された第2のキャピラリー膜システムは少なくとも1つの供給ラインに接続されているため、液体、媒体、気体及び/又はその他の物質がこの供給ライン及び第2のキャピラリー膜システムを通過可能である。また、本創傷治療システムは分配容器も含み、第2のキャピラリー膜システムの少なくとも1つの供給ラインを含むこの分配容器は、第2のキャピラリー膜システムに取外し可能に接続されており、この供給ラインから洗浄液を第2のキャピラリー膜システムに供給できる。同様に、本創傷治療システムは、ドレナージシステムを含んでいてもよく、このドレナージシステムは負圧ユニットと連結可能であって、治療する創傷から液体を排出することができる。
【0023】
適用においては、第1のキャピラリー膜システム及び必要に応じて取り付けられる更なるキャピラリー膜システムを創傷に導入し、前述したように、例えば半閉塞性の透明フィルムによってこの創傷管理システムを覆うことで、乾燥又は感染から創傷を保護することができる。キャピラリー膜システムの供給ラインは、フィルムの下で創傷部から引き出され、創傷部の外で、血清を取得するための装置のフィルターモジュール又はそれぞれ割り当てられている分配容器などに接続されている。必要に応じて取り付けられるドレナージシステムは、例えば負圧に対して安定している適切なホースなどを使って負圧ユニットと接続することができ、このホースも同様に創傷部から引き出される。
【0024】
この場合、第1のキャピラリー膜システム又は必要に応じて取り付けられる平坦に形成された更なるキャピラリー膜システム(以下、少なくとも1つのキャピラリー膜システムと呼ぶ)は、それぞれ、波形に配置されている個々のキャピラリー膜から成っていてよい。この実施形態では、波形のキャピラリー膜の少なくとも1つの端部が開口しており、供給ラインに接続されている。しかしまた、少なくとも1つのキャピラリー膜システムは、波形に配置された複数のキャピラリー膜を含んでいてもよく、これらのキャピラリー膜の端部は共通の供給ラインに合流している。好ましくは、少なくとも1つのキャピラリー膜システムが、互いに平行に配置された多数のキャピラリー膜を含んでいる。
【0025】
それぞれのキャピラリー膜システムの互いに平行に配置されたキャピラリー膜は、それらの少なくとも1つの端部で、その外周が液密に供給ラインの壁に埋め込まれているため、供給ラインの内腔とキャピラリー膜の内腔との間に流体連結が生じ、液体、媒体、気体及び/又はその他の物質がこの供給ライン及び少なくとも1つのキャピラリー膜システムを通過できるようになっている。この埋め込みは、例えば硬化性シリコン材料、ポリウレタン樹脂又はエポキシ樹脂を使って行うことができる。その優れた柔軟性の理由から、硬化性シリコン材を使用するのが好ましい。キャピラリー膜の一方の端部だけが供給ラインの中に埋め込まれている場合、反対側にあるキャピラリー膜のもう一方の端部は、例えば溶接又は接着によって閉口されている。キャピラリー膜はまた、その両側の端部が開口しており、配置の片側で両端部が共に個々の供給ラインの中に埋め込まれていてもよく、このとき、キャピラリー膜の自由端をU字形に形成することにより、その自由端を閉じている。これらのケースにおいて、キャピラリー膜はデッドエンドモードで動作する。
【0026】
特に幅の広い創傷管理システムでは、互いに平行に配置されたキャピラリー膜を備えるキャピラリー膜システムの実施形態が有利である。この場合、キャピラリー膜の両端部は開口しており、それぞれ1つの供給ラインの中に埋め込まれ、好ましくは、供給ラインがそれぞれ平坦に形成されたキャピラリー膜システムの対向する両方の側に取り付けられている。この場合も、埋め込みは、キャピラリー膜の外周が液密に埋め込まれており、それぞれの供給ラインの内腔とキャピラリー膜の内腔との間に流体連結が生じるように実施されている。2つの供給ラインを備えるこの種の実施形態は、クロスフローモードで少なくとも1つのキャピラリー膜システムによる供給及び/又は廃棄を可能にする。創傷表面上での供給又は廃棄の良好な均質性という視点でも、特に幅広いマット又は創傷管理システムでは、2つの供給ラインを備える少なくとも1つのキャピラリー膜システムの実施が適切であり得る。しかしまた、2つの供給ラインを備える実施形態では、同一のキャピラリー膜システムを介してさまざまな媒体を同時に又は交互に創傷に供給することも可能である。
【0027】
供給ラインの直径は、まず第一に、その供給ラインの中に埋め込まれたキャピラリー膜の外径に依存する。従って、少なくとも1つの供給ラインは、好ましくは0.1〜10mmの範囲の内径を有している。同様に、壁厚は0.1〜5mmの範囲にあることが好ましい。非円形断面を備える供給ラインを使用する場合、内径として内部断面の等価直径d=4A/Uの式が立てられ、このときAは内部断面の面積であり、Uはその周囲の長さである。例えば、供給ラインは楕円形の内部断面を有してもよく、あるいはほぼ正方形又は矩形の内部断面を有していてもよい。供給ラインには、例えばシリコンホースの適合性が証明されており、その壁を通過してキャピラリー膜端部が中に入り込むことで、キャピラリー膜端部が埋め込まれている。好ましくは、供給ラインが、柔軟なシリコンホースから形成されている。供給ラインの壁への埋め込み又は貼り付けは、一般的な接着剤、例えば硬化性シリコン材、ポリウレタン樹脂又はエポキシ樹脂などを使って行うことができる。
【0028】
有利な実施形態では、少なくとも1つのキャピラリー膜システムが、互いに平行に配置されたキャピラリー膜からなるキャピラリー膜マットの形で形成することができ、このとき、マット内のキャピラリー膜は、互いに間隔をあけて平行に通る接続エレメントによって相互に接続されており、これらの接続エレメントによってキャピラリー膜相互の間隔が保たれている。接続エレメントは、互いに平行に配置されたキャピラリー膜に対して横方向に通っていてもよいが、あるいはその他の角度をとることもできる。この場合、接続エレメントは、キャピラリー膜の外周に接触しているか、又はキャピラリー膜を取り囲んでいる。接続エレメントは、それらの長手方向範囲に沿って閉じられた流路を有していないため、結果的に、それらの長手方向範囲に沿って液体が通ることはない。接続エレメントは粘着テープであってよく、あるいはシリコン材製の紐状エレメントなどでもよい。好ましい実施形態では、キャピラリー膜が、糸状の連結エレメントによってマットに接続されている。特に好ましくは、接続エレメントが繊維のマルチフィラメント糸である。繊維のマルチフィラメント糸としては、多繊維のポリエステル糸、ポリプロピレン糸又はポリテトラフルオロエチレン糸が特に有用である。最適なのは、親水性糸、好ましくはポリエステル製の親水性糸である。
【0029】
好ましい実施形態によれば、キャピラリー膜マットは編みマットであってよい。そのような編みマットの場合、キャピラリー膜と接続糸が互いに編み込まれており、キャピラリー膜は、キャピラリー膜マットの伸長方向に対して横方向に通っている。キャピラリー膜の長さは、マット幅によって決められている。もう1つの好ましい実施形態では、キャピラリー膜マットが織りマットであってよい。そのような織りマットでは、キャピラリー膜と接続糸が互いに織り合わされている。この場合、キャピラリー膜はキャピラリー膜マットの伸長方向又は進行方向に通り、繊維糸はそれに対して横方向に通っているキャピラリー膜編みマット及び織りマット並びにそれらの製造方法は、例えば独国特許出願公開第3839567号、独国特許出願公開第4308850号及び欧州特許出願公開第0442147号で説明される。特に編成技術を用いることにより、キャピラリー膜の自由端をU字形に形成し、そこで閉じられているマットを簡単なやり方で製造することができる。そのような種類のマットは、編み糸によって相互に接続されている互いに平行なストランドでキャピラリー膜を波形に積み重ねることによって製造することができる。この場合、編みマットの製造後、U字形に形成した端部を編みマットの少なくとも一方の側で切り離し、このとき生じるキャピラリー膜の開口端部を供給ラインに埋め込む。U字形に形成した端部を編みマットの両端で切り離す場合、それによって生じる対向する両側の開口端部をそれぞれ供給ラインに埋め込むことができる。
【0030】
好ましい実施形態では、マット内のキャピラリー膜相互の間隔がキャピラリー膜の外径の1〜10倍であるような密度でキャピラリー膜をマット内部に取り付けている。この場合、測定されるのは、キャピラリー膜の長手方向軸の間隔である。この場合、マット内のキャピラリー膜相互の間隔はキャピラリー膜の外径の1.05〜6倍であるようなマットが好ましい。特に好ましくは、マット内のキャピラリー膜相互の間隔が、キャピラリー膜の外径の1.05〜3倍の範囲内にある。もう1つの特に好ましい実施形態では、マット内のキャピラリー膜相互の間隔が、キャピラリー膜の外径の1.5倍よりも大きい。これにより、キャピラリー膜を相互に確実に分離できることが発見された。
【0031】
同時に、治療する創傷に極めて均質に供給を行うという点においても重要となるのは、キャピラリー膜システム内のキャピラリー膜が、互いに間隔をあけて平行に通る複数の接続エレメントによって相互にマットに接続され、キャピラリー膜相互の間隔はこれらの接続エレメントによって保たれていること、更には、これらの接続エレメントが、好ましくは1〜50mmの範囲にある規定の間隔を相互に有しており、特に好ましくは間隔が3〜20mmの範囲にあり、最適には4〜6mmの範囲にあるということである。つまり、例えばかなりの量の治療液剤又は栄養液剤などを治療する創傷に供給する場合、キャピラリー膜と接続エレメントとの間の接触箇所は、キャピラリー膜の配列面上への液体の配分を促進することが示されている。そのようなキャピラリー膜システムを治療する創傷に適用したところ、接触箇所ではキャピラリー膜からの液体の排出が促進されることが観察された。
【0032】
少なくとも1つのキャピラリー膜システムのキャピラリー膜は、好ましくは200〜1500μmの範囲にある外径を有している。同様に、20〜400μmの壁厚を備えるキャピラリー膜が有利であり、その外径は、好ましくは前述の範囲にあってよい。
【0033】
本創傷管理システムの場合、少なくとも1つのキャピラリー膜システムは、液状媒体の供給又は排出のために設計されていてよい。従って、治療する創傷への均質な供給を確保するため、このケースにおいて、好ましい実施形態では、キャピラリー膜が液体に対する高い透過性を有している。この場合、好ましくは、水に対するキャピラリー膜の膜貫通流量は0.01〜50mL/(min・cm
2・bar)の範囲にある。しかしながら、後で説明するように、この創傷管理システムは、例えば創傷への酸素の供給又はpH値調整に用いるキャピラリー膜システムを含んでいることも可能である。
【0034】
少なくとも1つのキャピラリー膜システムのキャピラリー膜は、防菌であることが好ましい。これにより、例えば洗浄液及び/又はその他の治療液剤を供給する際に、創傷内への細菌の侵入を防ぐことができる。この場合、すでに前述したように、本発明における防菌性とは、キャピラリー膜が0.2μmの公称孔径を有していることを意味する。つまり、第1及び/又は第2のキャピラリー膜システムのキャピラリー膜は、0.2μmの公称孔径を有していることが好ましい。
【0035】
キャピラリー膜システムのキャピラリー膜及びフィルターモジュールの半透膜の材料としては、基本的にすべて従来技術で知られている有機ポリマーが考えられ、これらは特にキャピラリー膜の形成に適している。この場合、これらのポリマーは優れた生体適合性を有していなければならない。更に、膜ポリマーが、例えば蒸気滅菌、ガンマ線滅菌又はエチレンオキシド滅菌によって創傷管理システム及びフィルターモジュールの滅菌を行えることも必要である。この場合、有機ポリマーは天然ポリマー又は合成によって製造されたポリマーであってよい。天然ポリマーは、特に、いわゆる類似重合体反応を受けているポリマーであるセルロース系ポリマーをベースにした天然ポリマーも同様に含んでいる。セルロース系ポリマーの例としては、再生セルロース、酢酸セルロース、あるいは例えばセルロースエステル、セルロースエーテル、ベンジル基で変性されたセルロース(ベンジルセルロース)又はジエチルアミノエチルで変性されたセルロースなどの変性セルロース、もしくはこれらのセルロース系ポリマーの混合物から成るものがある。更に、キチン又はキトサンをベースとするポリマーも使用できる。
【0036】
合成によって製造するポリマー、すなわち合成ポリマーとしては、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリアクリロニトリル、ポリカーボネート、ポリエステル又はスルホンポリマー並びにそれから得られる、これらのポリマーの変性物、ブレンド、混合物又は共重合体から成るものを使用することができる。好ましくは、特にポリスルホン又はポリエーテルスルホンなどのスルホンポリマーをベースにしている合成ポリマーが使用される。これらの合成ポリマーには、例えばポリエチレンオキシド、ポリヒドロキシエーテル、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール又はポリカプロラクトンなど、その他のポリマーを添加剤として加えることもできる。更に、キャピラリー膜は添加剤を備えるコーティングを有していてもよい。好ましくは、そのようなキャピラリー膜は、例えばポリビニルピロリドンなどの親水化剤、又はこれらのポリマーの親水性変性物も含んでいる。
【0037】
キャピラリー膜システムのキャピラリー膜は、特定の用途においては、例えば機能グループを連結することにより変更することも可能であって、あるいは例えばヘパリン又は1種類以上の抗生物質によってコーティングしてもよい。
【0038】
キャピラリー膜システムの平面範囲における平坦に形成された形状は任意であってよい。互いに平行なキャピラリー膜から成るキャピラリー膜システムの場合、もっとも単純な実施形態では、キャピラリー膜システムが四角形又は矩形の形状を有している。しかし、例えばキャピラリー膜の一方の端部だけが供給ラインに埋め込まれているシステムでは、互いに平行なキャピラリー膜の自由な閉口端部を、相応に適合させた溶接などによって弓形の輪郭にすることが可能である。同様に、互いに平行なキャピラリー膜から成る配置は、例えば台形の輪郭を有することも可能である。
【0039】
また、本創傷管理システムは、すでに言及したように、例えば少なくとも1つの更なるキャピラリー膜配置など、その他のコンポーネントを有していてもよい。別の配置のキャピラリー膜は、例えば酸素化のための膜、つまり創傷への酸素供給が可能な膜であってもよい。この種の膜は、例えば欧州特許出願公開第1144096A号、欧州特許出願公開第0299381A号又は独国特許出願公開第2833493号に開示されている。半透過性キャピラリー膜又は流体不透過性キャピラリーによる平坦に形成された別のシステム又は配置との組み合わせも可能であり、それらによって、例えば温度調整やpH値調整を行うこともできる。この場合は、それぞれのキャピラリー膜システムと、必要に応じて半透過性キャピラリー膜又は流体不透過性キャピラリーによる平坦に形成された別のシステムとを、相互に重ね合わせることができる。しかしまた、例えば、異なる種類のキャピラリー膜システムのキャピラリー膜を、1つのマットに一緒に接続することも可能である。この場合、異なる種類のキャピラリー膜の端部は、好ましくはそのマットの反対側の側面に配置されている異なる種類の供給ラインに埋め込まれている。そのようなマットは、例えば、互いにずれて配置された波形のキャピラリー膜を編み込むことによって得ることができ、そこでは、キャピラリー膜のU字形の曲線部がマット幅のさまざまな場所に位置している。これらのキャピラリー膜は、それぞれ外側にあるU字形の曲線部を切断することにより、マットの一方の側だけを開口できるため、そこを供給ラインの中に埋め込むことができる。
【0040】
好ましい実施形態では、創傷治療システム又は創傷管理システムが、第1のキャピラリー膜システム及び必要に応じて取り付けられる第2のキャピラリー膜システム以外に、例えば洗浄液又は滲出液を創傷から排出できるドレナージシステムを含んでおり、このドレナージシステムは、洗浄液及び/又は滲出液用の吸引ラインが装備された吸引スポンジを含んでいてもよい。このドレナージシステムは、別のキャピラリー膜システムとして形成されていてもよい。しかしながら、ドレナージシステムは、例えばシリコン材製のホース又は細管の形による、少なくとも1つのドレナージカテーテルでことが好ましい。そのようなドレナージカテーテルは、その壁にパーフォレーションを有しており、ドレナージカテーテルを負圧ユニットに接続すれば、それらのパーフォレーションを介して液体を創傷から吸引することができる。少なくとも1つのドレナージカテーテルは、好ましくは、0.1〜15mmの範囲の内径と、0.1〜3mmの範囲の壁厚を有している。ドレナージカテーテルは、非円形断面を有していてもよい。このケースでは、内径として内部断面の等価直径d
D=4A
D/U
Dの式が立てられ、このときA
Dはドレナージカテーテルの内部断面の面積であり、U
Dはその周囲の長さである。
【0041】
1つの実施形態では、この創傷管理システムは、ポケット形創傷被覆材を更に含み、このポケット形創傷被覆材は、その外縁部が閉じられ、上側、下側及びポケット内部を有しており、下側と上側はそれぞれ平坦な材料から形成され、下側は液体透過性であって、第1のキャピラリー膜システム及び必要に応じて取り付けられる更なるキャピラリー膜システムは、ポケット内部に配置されている。この場合、供給ラインと、フィルターモジュール及び必要に応じて取り付けられる収集容器などとの接続は、ポケット形創傷被覆材の外にある。
【0042】
キャピラリー膜システムを内包するポケット形創傷被覆材は、下側が創傷に接触するように、治療する創傷内に導入することができる。希望する液体は、キャピラリー膜システムを介して創傷に供給することができ、この液体は、キャピラリー膜から出た後、ポケットの中で配分され、半透過性のポケット下側を介して創傷へと送り出される。
【0043】
ポケット形創傷被覆材は、好ましくは、キャピラリー膜システムのキャピラリー膜と各供給ラインがポケット内部で接続されており、各供給ラインは、それらの外部断面に液密に適合させた貫通開口部を介してポケット形創傷被覆材から外へ出るように実施することができる。同様に、キャピラリー膜と各供給ラインとの接続は、ポケット形創傷被覆材の外部の上側に配置することができ、キャピラリー膜の配置は、少なくとも1つの供給ラインに接続するため、液密に適合させた貫通開口部を介してポケット形創傷被覆材から外へ出ていてもよい。
【0044】
創傷管理システムがポケット形創傷被覆材を有するケースでは、キャピラリー膜システムがポケット内部で平坦に広がっている。キャピラリー膜システムの大きさは、それぞれ、その平坦な範囲の外側寸法になる。好ましくは、少なくとも1つのキャピラリー膜システムが、その平坦な範囲に関して、ポケット形創傷被覆材のポケット内部の平坦な範囲を少なくとも20%満たしており、特に好ましくは少なくとも50%満たしている。特に有利には、少なくとも1つのキャピラリー膜システムが、その平坦な範囲に関して、ポケット形創傷被覆材のポケット内部の平坦な面を少なくとも70%満たしており、この場合、90%の範囲で占有することも実現可能である。このとき、少なくとも1つのキャピラリー膜システムが、ポケット形創傷被覆材の中央に配置されている場合は有利である。
【0045】
ポケット形創傷被覆材は、任意の輪郭を有してよい。しかし、この輪郭は、円形、楕円形、正方形又は矩形であるのが好ましい。ポケット形創傷被覆材の下側と上側は、創傷被覆材の外縁又は外側のエッジが溶接又は接着などによって互いに接続されている。接着には、特に、硬化するシリコンストリップが適している。矩形又は正方形のポケット形創傷被覆材では、その中に配置されている、平坦に形成されたキャピラリー膜システムが、好ましくは同じく矩形又は正方形の輪郭を有している。円形又は楕円形のポケット形創傷被覆材では、その中にあるキャピラリー膜システムが、目的に応じて、同様に正方形又は矩形に形成されており、このとき、寸法に関しても、前述した大きさが当てはまる。しかしまた、キャピラリー膜システムがそれぞれ1つの供給ラインしか備えていない場合も、例えば相応に適合させた溶接をキャピラリー膜の埋め込まれていない側の端部に施すことによって、キャピラリー膜システムをポケット形創傷被覆材の輪郭に適合させることができ、これにより、キャピラリー膜システムのこのエッジに弓形の輪郭が与えられる。
【0046】
ポケット形創傷被覆材の下側は、液体が通過できるようになっており、液体に対して透過性である。この場合、下側は、例えばフリース状の平坦な材料、格子状又は網状の材料、有孔フィルム又は半透過性の微孔性平膜から成っていてよい。有利な実施形態では、下側が、フリース状の平坦な材料又は半透過性の微孔性平膜から成る。下側は、好ましくは少なくとも0.01mL/(min・cm
2・bar)の水透過性を有し、特に好ましくは少なくとも10mL(min・cm
2・bar)の水透過性を有している。下側は、少なくとも500mL/(min・cm
2・bar)の水透過性を備えているのが最適であることが証明された。
【0047】
創傷管理システムを介して液体を創傷に供給するだけではなく、廃棄も行う、すなわちドレナージシステムを介して創傷から液体を排出する創傷管理システムを適用する場合には、下側に開口部があり、この開口部が、好ましくは最低100μmの直径を有していると有利である。この場合、開口部の直径は10mm以下であることが好ましく、5mm以下であると特に好ましい。下側が半透過性の微孔性平幕から成るケースでは、有利な実施形態において、この下膜は、例えばパーフォレーションなどの形で、追加的に開口部を有している。開口部が非円形輪郭を有するケースでは、直径として開口部の等価直径d=4A/Uの式が立てられ、このとき、Aはそれぞれの開口部の面積であり、Uはその周囲の長さである。これらの開口部は、規則的に又は不規則に下側の面上に分布させてよいが、規則的に、均質に分布していることが好ましい。この場合、開口部と開口部の間隔は、開口部の外縁から測定して、1〜20mmの範囲にあってよい。
【0048】
ポケット形創傷被覆材の下側と上側は、同じ材料又は異なる材料から成っていてよい。しかし、下側は常に液体に対し透過性である一方で、上側は好ましくは流体不透過性材料、有利にはフィルム状の材料から形成されており、この材料は、その1つ以上の側端部が液密に下側と接続されている。上側はまた、半透過性の微孔性平膜であってよい。しかし、この場合、上側は下側よりも液体に対して低い透過性を有し、それにより、供給された液体がポケット形創傷被覆材の下側へ、ひいては創傷へと配分されるようにしなければならない。下側及び上側が、同一又は同等の半透過性の微孔性平膜である場合、下面はパーフォレーションを有している。
【0049】
ポケット形創傷被覆材の下側又は上側の材料としては、基本的に、すでにキャピラリー膜用のポリマーとして言及した、平坦なフィルム又は平膜に加工可能である同一の有機ポリマーが考えられる。好ましくは、ポケット形創傷被覆材の下側及び/又は上側は、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリアクリロニトリル、ポリカーボネート、ポリエステル又はスルホンポリマー並びにそれらから得られる、これらのポリマーの変性物、ブレンド、混合物又は共重合体から構成されている。特に好ましくは、下側及び上側が、材料としてスルホンポリマーを含み、ポリスルホン又はポリエーテルスルホンがもっとも適している。
【0050】
創傷管理システムがポケット形創傷被覆材を含んでいる有利なケースでは、好ましくは少なくとも1つのドレナージカテーテルの形で1つの実施形態に従って取り付けられているドレナージシステムが、相応に液密に適合させた貫通開口部を介してポケット形創傷被覆材から外へ引き出され、ポケット形創傷被覆材の外部で負圧ユニットと接続が可能であって、使用の際にポケット内部に負圧を発生させることができる。少なくとも1つのドレナージカテーテルは、例えばシリコン材製のホース又は細管であってよく、これは創傷被覆材のポケット内部に配置され、貫通開口部を介して創傷被覆材から外へ出ている。ポケット形創傷被覆材の内部にある、少なくとも1つのドレナージカテーテルのセグメントには、好ましくはその壁にパーフォレーションを有しており、少なくとも1つのドレナージカテーテルを負圧ユニットに接続した後、それらのパーフォレーションを介して、例えば滲出液又は供給された血清などの液体も創傷又はポケット形創傷被覆材の内部から吸引可能である。
【0051】
好ましい実施形態では、創傷管理システムの第1及び第2のキャピラリー膜システムが同一であって、唯一の供給キャピラリー膜システムを形成しており、この供給キャピラリー膜システムは、少なくとも1つの供給ラインに接続され、血清を取得するための装置及び第2のキャピラリー膜システムに接続されている分配容器が、供給キャピラリー膜システムの少なくとも1つの供給ラインを介して供給キャピラリー膜システムに接続されている。この場合、供給キャピラリー膜システムは2つの供給ラインを有してもよく、これらのラインは、そのキャピラリー膜の対向する両側の端部に取り付けられている。このケースでは、例えば血清を取得するための装置及び好ましくは洗浄液を含む分配容器が、互いに独立したさまざまな供給ラインに接続されていてもよい。しかしまた、血清を取得するための装置及び分配容器を、例えばT字形ピース又はY字形コネクターによって相互に接続されているライン部を介して供給キャピラリー膜システムの1つの供給ラインにだけ接続することも可能である。この場合、供給キャピラリー膜システムが1つの供給ラインだけに接続されている供給キャピラリー膜システムも実施可能である。
【0052】
適用においては、例えば洗浄液は分配容器から、血清はフィルターモジュールから、交互に供給できる場合は有利である。そのために好ましくは、ライン経路が、フィルターモジュールと、このフィルターモジュールに接続されているキャピラリー膜システムとの間に、フィルターモジュールに割り当てられている第1のシャットオフ装置を有している。同様に、このライン経路は、前述の分配容器と、この分配容器に接続されているキャピラリー膜システムとの間に、この分配容器に割り当てられている第2のシャットオフ装置を有しており、第1と第2のシャットオフ装置は互いに無関係に設定可能である。創傷管理システムの実施形態に応じて、フィルターモジュール又は分配容器のシャットオフ装置は、フィルターモジュール又は分配容器と、フィルターモジュールと分配容器のライン部分を接続しているT字形ピース又はY字形コネクターとの間のライン部分の中に、もしくはそれぞれの供給ラインの中に取り付けられていてよい。
【0053】
好ましい実施形態では、フィルターモジュールと分配容器が、オス/メスコネクターを介して取外し可能にそれぞれの供給ラインに接続されている。特に好ましくは、オス/メスコネクターがルアーロック式コネクターである。ここでも、この接続は、前述した滅菌コネクターを用いて作製できる滅菌溶接接続として実施してもよい。
【0054】
すでに指摘したように、第2のキャピラリー膜システムによって供給できる洗浄液としては、創傷の洗浄に適している一般的な液体が考えられる。好ましくは、第2のキャピラリー膜システムに接続されている分配容器は、生理食塩水を含んでいる。例えば、更なるキャピラリー膜システムを介して、成長因子含有溶液、抗生物質又はその他の薬剤を含む溶液、pH調整用の溶液といった追加の治療液剤を創傷に供給することができる。
【0055】
創傷治療システムに使用されるキャピラリー膜又は平膜の特性は、以下の測定方式に基づいて特徴づけられる:
キャピラリー膜の膜貫通流量(透水性):
検査するキャピラリー膜から、規定のキャピラリー膜数と長さを備える検査細胞を作る。そのために、キャピラリー膜の両側の端部をポリウレタン樹脂の中に埋め込む。樹脂を硬化させた後、埋め込みを約30mmの長さに切断する。このとき、キャピラリー膜の内腔が切断によって開かれる。埋め込みの中にあるキャピラリー内腔の貫通性を点検する。埋め込み間のキャピラリー膜の自由長さは、通常120+/−10mmである。キャピラリー膜の数は、キャピラリー膜の自由長さと内径を考慮して、約30cm
2のろ過面積が試験セル内に提供されるように計算しなければならない。
【0056】
限外ろ過した脱塩水を試験機に組み込んで25℃に温度調整し、これを規定の試験圧力(約0.4bar)で試験セルに潅流させる。2分間の測定時間で得られたろ過水の量、すなわち測定中に生成された透過液を、重量測定法又は容量分析法によって測定する。測定を開始する前に、空気がない状態にシステムを洗い流す必要がある。TMFを特定するために、試験機の入口圧力と出口圧力を測定する。この測定は25℃で行う。
【0057】
膜貫通流量(TMF)を公式(I)に従って
【数1】
求める。このとき:
V
W=測定時間中に膜試料を通過する水量[mL]
Δt=測定時間[分]
A
M=膜試料の潅流面(通常30cm
2)
Δp=測定中の設定圧力[bar]
【0058】
ポケット形創傷被覆材下側の水透過性
ポケット形創傷被覆材下側の平坦な検査材料からディスク形の試料を打ち出し、適切な試料ホルダーの中で周辺を液密に固定して、17.35cm
2の自由測定面が得られるようにする。試料ホルダーは、加圧によって水が流れるハウジング内にある。次に、25℃の温度に調整した脱塩水を0.1〜0.2barの規定圧力で固定された試料に流す。60分の測定時間の間、試料を通過して流れた水の量を重量測定法又は容量分析法によって検出する。
【0059】
水透過性TMF
Wを数式(II)によって
【数2】
求める。このとき:
V
W=測定時間中に試料を通過する水量[mL]
Δt=測定時間[分]
A
M=試料の潅流面(17.35cm
2)
Δp=測定中の設定圧力[bar]
【0060】
以下の図によって本発明を更に詳しく説明する。ただし、本発明の範囲はこれらの図に制限されるものではない。