特許第6867306号(P6867306)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6867306中和抗インフルエンザ結合分子及びその使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6867306
(24)【登録日】2021年4月12日
(45)【発行日】2021年4月28日
(54)【発明の名称】中和抗インフルエンザ結合分子及びその使用
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/13 20060101AFI20210419BHJP
   C07K 16/08 20060101ALI20210419BHJP
   C07K 16/46 20060101ALI20210419BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20210419BHJP
   C12P 21/08 20060101ALI20210419BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20210419BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20210419BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20210419BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20210419BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20210419BHJP
   A61P 31/16 20060101ALI20210419BHJP
【FI】
   C12N15/13
   C07K16/08ZNA
   C07K16/46
   C12N15/63 Z
   C12P21/08
   C12N1/15
   C12N1/19
   C12N1/21
   C12N5/10
   A61K39/395 S
   A61P31/16
【請求項の数】16
【全頁数】104
(21)【出願番号】特願2017-561892(P2017-561892)
(86)(22)【出願日】2016年5月31日
(65)【公表番号】特表2018-518475(P2018-518475A)
(43)【公表日】2018年7月12日
(86)【国際出願番号】US2016035026
(87)【国際公開番号】WO2016196470
(87)【国際公開日】20161208
【審査請求日】2019年5月15日
(31)【優先権主張番号】62/169,272
(32)【優先日】2015年6月1日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】504333972
【氏名又は名称】メディミューン,エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】特許業務法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】カールワード−リレイ,ニコル
(72)【発明者】
【氏名】ジュー,キン
(72)【発明者】
【氏名】レイニー,ゴッドフリー,ジョナ
(72)【発明者】
【氏名】ガオ,クイフア
(72)【発明者】
【氏名】カスツリランガン,スリナス
(72)【発明者】
【氏名】ガオ,チャンスー
【審査官】 佐久 敬
(56)【参考文献】
【文献】 特表2014−527403(JP,A)
【文献】 特表2015−501815(JP,A)
【文献】 国際公開第2015/051010(WO,A1)
【文献】 国際公開第2013/132007(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N
C07K
A61K
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
UniProt/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)A型インフルエンザウイルスヘマグルチニン(HA)に結合し、且つA型インフルエンザウイルスの少なくとも1つのグループ1サブタイプ及び少なくとも1つのグループ2サブタイプを中和する能力がある第1の抗体の抗原結合部分を含む第1の結合ドメインであって、前記第1の結合ドメインが6つのCDRの第1のセットを含み、前記6つのCDRの第1のセットが、
(i)配列番号8のHCDR1、配列番号9のHCDR2、配列番号10のHCDR3、配列番号3のLCDR1、配列番号4のLCDR2及び配列番号5のLCDR3のアミノ酸配列;及び
(ii)配列番号18のHCDR1、配列番号19のHCDR2、配列番号20のHCDR3、配列番号13のLCDR1、配列番号14のLCDR2、配列番号15のLCDR3のアミノ酸配列
から選択されるアミノ酸配列を有する、前記第1の結合ドメイン;及び
(b)B型インフルエンザウイルスヘマグルチニン(HA)に結合し、且つ少なくとも2つの系統学的に異なる系統におけるB型インフルエンザウイルスを中和する能力がある第2の抗体の抗原結合部分を含む第2の結合ドメインであって、前記第2の結合ドメインが6つのCDRの第2のセットを含み、前記6つのCDRの第2のセットが、
(i)配列番号28のHCDR1、配列番号29のHCDR2、配列番号30のHCDR3、配列番号23のLCDR1、配列番号24のLCDR2及び配列番号25のLCDR3のアミノ酸配列;
(ii)配列番号44のHCDR1、配列番号45のHCDR2、配列番号46のHCDR3、配列番号39のLCDR1、配列番号40のLCDR2及び配列番号41のLCDR3のアミノ酸配列;及び
(iii)配列番号60のHCDR1、配列番号61のHCDR2、配列番号62のHCDR3、配列番号55のLCDR1、配列番号56のLCDR2、配列番号57のLCDR3のアミノ酸配列
から選択されるアミノ酸配列を有する、前記第2の結合ドメイン
を含む、A型インフルエンザウイルス及びB型インフルエンザウイルスに特異的に結合する単離された結合分子。
【請求項2】
前記第1の結合ドメインが、H1、H2、H5、H6、H8、H9、H11、H12、H13、H16、H17、H18及びそれらの変異体から選択される1つ以上のA型インフルエンザウイルスのグループ1サブタイプ;並びにH3、H4、H7、H10、H14及びH15及びそれらの変異体から選択される1つ以上のA型インフルエンザウイルスのグループ2サブタイプを中和する能力がある、請求項1に記載の単離された結合分子。
【請求項3】
前記第2の結合ドメインが、Yamagata及びVictoria系統の双方におけるB型インフルエンザウイルスを中和する能力がある、請求項1又は2に記載の単離された結合分子。
【請求項4】
前記第1の結合ドメインが抗A型インフルエンザウイルス抗体又はその抗原結合断片を含み、且つ前記第2の結合ドメインが抗B型インフルエンザウイルス抗体又はその抗原結合断片を含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載の単離された結合分子。
【請求項5】
前記第1の結合ドメインが、
(a)配列番号7のVH及び配列番号2のVL;及び
(b)配列番号17のVH及び配列番号12のVL
から選択されるVH及びVL含む、請求項1〜のいずれか一項に記載の単離された結合分子。
【請求項6】
前記第2の結合ドメインが、
(a)配列番号27のVH及び配列番号22のVL;
(b)配列番号33のVH及び配列番号32のVL;
(c)配列番号36のVH及び配列番号35のVL;
(d)配列番号43のVH及び配列番号38のVL;
(e)配列番号49のVH及び配列番号48のVL;
(f)配列番号52のVH及び配列番号51のVL;
(g)配列番号59のVH及び配列番号54のVL;並びに
(h)配列番号65のVH及び配列番号64のVL
から選択されるVH及びVL含む、請求項1〜のいずれか一項に記載の単離された結合分子。
【請求項7】
前記結合分子が二重特異性抗体である、請求項1〜のいずれか一項に記載の単離された結合分子。
【請求項8】
前記第1の結合ドメインが抗A型インフルエンザウイルスのFvドメインを含み、且つ前記第2の結合ドメインが抗B型インフルエンザウイルスのscFv分子を含む、請求項に記載の単離された結合分子。
【請求項9】
前記第1の結合ドメインの前記Fvドメインが、アミノ末端及びカルボキシ末端を有するポリペプチド鎖を含む重鎖(HC)並びにアミノ末端及びカルボキシ末端を有するポリペプチド鎖を含む軽鎖(LC)を含み、
(a)前記第2の結合ドメインは前記第1の結合ドメインのHCのカルボキシ末端に共有結合されるか;
(b)前記第2の結合ドメインは前記第1の結合ドメインのHCのアミノ末端に共有結合されるか;
(c)前記第2の結合ドメインは前記第1の結合ドメインのLCのアミノ末端に共有結合されるか;又は
(d)前記第2の結合ドメインは前記第1の結合ドメインのHCのポリペプチド鎖内で共有結合的にインターカレートされる
請求項に記載の単離された結合分子。
【請求項10】
前記第1の結合ドメインのHCが式VH−CH1−L1−scFv−L2−CH2−CH3(式中、VHは重鎖可変ドメインであり、CH1は重鎖定常領域ドメイン1であり、CH2は重鎖定常領域ドメイン2であり、CH3は重鎖定常領域ドメイン3であり、L1及びL2は独立してリンカーであり、且つscFvはscFv分子を含む第2の結合ドメインである)を有する、請求項9に記載の単離された結合分子。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか一項に記載の単離された結合分子をコードする核酸を含む単離されたポリヌクレオチド。
【請求項12】
請求項11に記載のポリヌクレオチドを含むベクター。
【請求項13】
請求項11に記載のポリヌクレオチドを含む宿主細胞。
【請求項14】
請求項1〜10のいずれか一項に記載の単離された結合分子及び薬学的に許容できる担体を含む組成物。
【請求項15】
請求項1〜10のいずれか一項に記載の単離された結合分子を作製するための方法であって、請求項13に記載の宿主細胞を前記結合分子の発現に適した条件下で培養するステップを含む、方法。
【請求項16】
請求項1〜10のいずれか一項に記載の単離された結合分子を含む、被験者におけるA型インフルエンザ感染、B型インフルエンザ感染、又はそれらの組み合わせの予防又は治療のための医薬組成物
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2015年6月1日に出願された米国仮特許出願第62/169,272号明細書の利益を主張し、その開示内容はその全体が参照により本明細書中に援用される。
【0002】
電子的に提出された配列表の参照
2016年5月31日に作成され、FLUAB_100WO1_SL.txtという名称が与えられ、本願とともに出願された162,315バイトのサイズを有するASCIIテキストファイルで電子的に提出された配列表の中身は、その全体が参照により本明細書中に援用される。
【0003】
本発明は、A型及びB型インフルエンザウイルスに対して広範な中和活性を有する二重特異性抗体及びかかる抗体の使用に関する。
【背景技術】
【0004】
インフルエンザウイルス(influenza virus)は、毎年のインフルエンザ流行病や偶発的な世界的大流行を引き起こし、世界規模で公衆衛生に多大な脅威をもたらしている。季節性インフルエンザ感染は、毎年、特に幼児、易感染性患者及び高齢者における200,000〜500,000人の死亡に関連している。死亡率は、典型的には、パンデミックインフルエンザの大流行に伴い、季節を通じてさらに増加する。特に十分なサービスを受けていない集団においてインフルエンザ感染を予防し、治療するための強力な抗ウイルス薬という多くの満たされていない医学的需要が残っている。
【0005】
インフルエンザウイルスには、A型、B型及びC型の3つの型が存在する。インフルエンザ疾患の大部分は、A型及びB型インフルエンザウイルスによって引き起こされる(Thompson et al.(2004) JAMA.292:1333−1340;及びZhou et al.(2012)Clin Infect.Dis.54:1427−1436)。A型、B型及びC型インフルエンザウイルスの全体構造は類似しており、中心コアを囲むウイルスエンベロープを含む。ウイルスエンベロープは、2つの表面糖タンパク質であるヘマグルチニン(HA)及びノイラミニダーゼ(NA)を含み、HAはウイルスの標的細胞への結合及び標的細胞への侵入を媒介する一方、NAは子孫ウイルスの感染細胞からの放出に関与する。
【0006】
HAタンパク質は、宿主細胞受容体への結合並びにウイルスと宿主細胞膜との融合に関与し、保護的体液性免疫応答の一次標的である。HAタンパク質は構造が三量体であり、タンパク質分解成熟時、球状頭部(HA1)及びストーク領域(HA2)を有する準安定な中間体に切断される単一のポリペプチド前駆体HA0の3つの同一コピーを含む(Wilson et al.(1981) Nature.289:366−373)。膜遠位の球状頭部は、HA1構造の大部分を構成し、ウイルス侵入及び主要な抗原ドメインに対するシアル酸結合ポケットを有する。HA2及びHA1残基から構築される膜近位「ストーク」構造は、膜融合及び細胞への透過性を誘発するための、後期エンドソームの低pH環境下での立体構造変化を経る融合機構を含む。A型インフルエンザのサブタイプ間の配列相同性の程度は、HA1(サブタイプ間で34%〜59%の相同性)での方がHA2領域(51%〜80%の相同性)でよりも小さい。
【0007】
A型インフルエンザウイルスは、ヘマグルチニン(HA)及びノイラミニダーゼ(NA)遺伝子における遺伝的変異に基づくサブタイプに分類され得る。血清学的に、A型インフルエンザは、18のHAサブタイプに分割することができ、それらは2つの異なる系統学的グループ:グループ1(サブタイプH1、H2、H5、H6、H8、H9、H11、H12、H13、H16、H17及びH18)及びグループ2(サブタイプH3、H4、H7、H10、H14、及びH15)にさらに分割される。現在、季節性の流行病では、A型インフルエンザH1及びH3のHAサブタイプが主にヒト疾患に関連する一方、H5、H7、H9及びH10をコードするウイルスは、動物からの直接感染に起因する孤発性のヒトでの大流行を引き起こす。A型インフルエンザウイルスに対して、B型インフルエンザウイルスはヒト感染に限定され、且つB型インフルエンザウイルスは、2つの表面糖タンパク質に基づくサブタイプに分けられない。事実、1970年代まで、B型インフルエンザウイルスは1つの均一なグループとして分類された。しかしながら、1970年代を通じて、B型インフルエンザウイルスは、Victoria及びYamagata系統と名付けられた2つの抗原的に識別可能な系統に、それら各々の最初の代表であるB/Victoria/2/87及びB/Yamagata/16/88の後から分岐し始めた(Biere et al.(2010) J Clin Microbiol.48(4):1425−7;doi:10.1128/JCM.02116−09.Epub 2010 Jan 27)。Yamagata及びVictoria系統の双方は毎年の流行病に寄与する。B型インフルエンザウイルスに起因する罹患率はA型インフルエンザH3N2に伴うものより低いが、A型インフルエンザH1N1に伴うものより高い(Zhou et al.(2012) Clin Infect.Dis.54:1427−1436)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Thompson et al.(2004) JAMA.292:1333−1340
【非特許文献2】Zhou et al.(2012)Clin Infect.Dis.54:1427−1436
【非特許文献3】Wilson et al.(1981) Nature.289:366−373
【非特許文献4】Biere et al.(2010) J Clin Microbiol.48(4):1425−7;doi:10.1128/JCM.02116−09.Epub 2010 Jan 27
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
インフルエンザウイルス感染によって誘導される中和抗体は通常、ウイルス受容体結合を阻止するため、可変HA1球状頭部に標的化され、通常は株に特異的である。1つ以上のサブタイプ又は系統を中和する広範に交差反応性の抗体は希少である。近年、A型インフルエンザウイルスのグループ1及び2の双方における複数のサブタイプ(Corti et al.(2011)Science 333(6044):850−856,Li et al.(2012)PNAS 109(46):18897−18902,Dreyfus et al.(2012)Science 337(6100):1343−1348、及びNakamura et al.(2013)Cell Host and Microbe 14:93−103)、又は両系統のB型インフルエンザウイルス(Dreyfus et al.(2012)Science 337(6100):1343−1348及びYasugi et al.(2013)PLoS Path 9(2):e1003150.doi:10.1371/journal.ppat.1003150)を中和し得る幾つかの抗体が発見されているが、大部分は適用範囲、耐性特性、又は効力において制限を有する。A型及びB型インフルエンザのHAタンパク質の双方に結合することが記載されているのは1つの抗体にすぎないが、この抗体は、治療的に投与されるとき、B型インフルエンザウイルスを機能的に中和しないか又は疾患を弱毒化することがない(Dreyfus et al.(2012)Science 337(6100):1343−1348)。現在まで、広範囲のA型及びB型インフルエンザウイルス感染を広範に中和若しくは阻害するか又はA型及びB型インフルエンザウイルスによって引き起こされる疾患を弱毒化するような利用可能な抗体は存在しない。したがって、複数のインフルエンザウイルスに対して保護する新たな抗体を同定する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
一実施形態では、A型インフルエンザウイルス及びB型インフルエンザウイルスに特異的に結合する単離された結合分子が提供される。一実施形態では、単離された結合分子は、A型インフルエンザウイルスヘマグルチニン(HA)に結合し、A型インフルエンザウイルスの少なくとも1つのグループ1サブタイプ及び少なくとも1つのグループ2サブタイプを中和する能力がある第1の結合ドメイン;並びにB型インフルエンザウイルスヘマグルチニン(HA)に結合し、少なくとも2つの系統学的に異なる系統におけるB型インフルエンザウイルスを中和する能力がある第2の結合ドメインを含む。一実施形態では、第1の結合ドメインは、H1、H2、H5、H6、H8、H9、H11、H12、H13、H16、H17、H18とそれらの変異体から選択される1つ以上のA型インフルエンザウイルスのグループ1サブタイプ:並びにH3、H4、H7、H10、H14及びH15とそれらの変異体から選択される1つ以上のA型インフルエンザウイルスのグループ2サブタイプを中和する能力がある。一実施形態では、第2の結合ドメインは、Yamagata及びVictoria系統の双方におけるB型インフルエンザウイルスを中和する能力がある。
【0011】
一実施形態では、結合分子の第1の結合ドメインは、抗A型インフルエンザウイルス抗体又はその抗原結合断片を含む。一実施形態では、結合分子の第2の結合ドメインは、抗B型インフルエンザウイルス抗体又はその抗原結合断片を含む。一実施形態では、結合分子は、抗体重鎖の少なくとも1つのVH及び抗体軽鎖の少なくとも1つのVLを含む。さらなる特定の実施形態では、第1の結合ドメインは、抗体重鎖の少なくとも1つのVH及び抗体軽鎖の少なくとも1つのVLを含む。一実施形態では、第2の結合ドメインは、抗体重鎖の少なくとも1つのVH及び抗体軽鎖の少なくとも1つのVLを含む。
【0012】
一実施形態では、結合分子の第1の結合ドメインは、6つのCDRセット:HCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、LCDR3を含み、6つのCDRセットは、
(a)配列番号8のHCDR1、配列番号9のHCDR2、配列番号10のHCDR3、配列番号3のLCDR1、配列番号4のLCDR2及び配列番号5のLCDR3に対して少なくとも75%同一であるアミノ酸配列;
(b)配列番号8のHCDR1、配列番号9のHCDR2、配列番号10のHCDR3、配列番号3のLCDR1、配列番号4のLCDR2及び配列番号5のLCDR3のアミノ酸配列;
(c)配列番号18のHCDR1、配列番号19のHCDR2、配列番号20のHCDR3、配列番号13のLCDR1、配列番号14のLCDR2、配列番号15のLCDR3に対して少なくとも75%同一であるアミノ酸配列;並びに
(d)配列番号18のHCDR1、配列番号19のHCDR2、配列番号20のHCDR3、配列番号13のLCDR1、配列番号14のLCDR2、配列番号15のLCDR3のアミノ酸配列
から選択されるアミノ酸配列を有する。
【0013】
一実施形態では、結合分子の第1の結合ドメインは、配列番号7;及び配列番号17から選択されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%同一であるアミノ酸配列を有するVHを含む。一実施形態では、結合分子の第1の結合ドメインは、配列番号2から選択されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%同一であるアミノ酸配列を有するVL;及び配列番号12のVLを含む。さらなる特定の実施形態では、結合分子の第1の結合ドメインは、配列番号7のVH及び配列番号2のVL;並びに配列番号17のVH及び配列番号12のVLから選択されるVH及びVLのアミノ酸配列の各々に対して少なくとも75%同一であるVH及びVLを含む。一実施形態では、第1の結合ドメインは、配列番号7のVH及び配列番号2のVL;並びに配列番号17のVH及び配列番号12のVLから選択されるVH及びVLを含む。
【0014】
一実施形態では、第2の結合ドメインは、6つのCDRセット:HCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、LCDR3を含み、6つのCDRセットは、
(a)配列番号28のHCDR1、配列番号29のHCDR2、配列番号30のHCDR3、配列番号23のLCDR1、配列番号24のLCDR2及び配列番号25のLCDR3に対して少なくとも75%同一であるアミノ酸配列;
(b)配列番号28のHCDR1、配列番号29のHCDR2、配列番号30のHCDR3、配列番号23のLCDR1、配列番号24のLCDR2及び配列番号25のLCDR3のアミノ酸配列;
(c)配列番号44のHCDR1、配列番号45のHCDR2、配列番号46のHCDR3、配列番号39のLCDR1、配列番号40のLCDR2及び配列番号41のLCDR3のアミノ酸配列に対して少なくとも75%同一であるアミノ酸配列;
(d)配列番号44のHCDR1、配列番号45のHCDR2、配列番号46のHCDR3、配列番号39のLCDR1、配列番号40のLCDR2及び配列番号41のLCDR3のアミノ酸配列;
(e)配列番号60のHCDR1、配列番号61のHCDR2、配列番号62のHCDR3、配列番号55のLCDR1、配列番号56のLCDR2、配列番号57のLCDR3に対して少なくとも75%同一であるアミノ酸配列;並びに
(f)配列番号60のHCDR1、配列番号61のHCDR2、配列番号62のHCDR3、配列番号55のLCDR1、配列番号56のLCDR2、配列番号57のLCDR3のアミノ酸配列
から選択されるアミノ酸配列を有する。
【0015】
一実施形態では、結合分子の第2の結合ドメインは、
(a)配列番号27のVH;
(b)配列番号33のVH;
(c)配列番号36のVH;
(d)配列番号43のVH;
(e)配列番号49のVH;
(f)配列番号52のVH;
(g)配列番号59のVH;及び
(h)配列番号65のVH
から選択されるVHのアミノ酸配列に対して少なくとも75%同一であるアミノ酸配列を有するVHを含む。
【0016】
一実施形態では、結合分子の第2の結合ドメインは、
(a)配列番号22のVL;
(b)配列番号32のVL;
(c)配列番号35のVL;
(d)配列番号38のVL;
(e)配列番号48のVL;
(f)配列番号51のVL;
(g)配列番号54のVL;及び
(h)配列番号64のVL
から選択されるVLのアミノ酸配列に対して少なくとも75%同一であるアミノ酸配列を有するVLを含む。
【0017】
一実施形態では、結合分子の第2の結合ドメインは、
(a)配列番号27のVH及び配列番号22のVL;
(b)配列番号33のVH及び配列番号32のVL;
(c)配列番号36のVH及び配列番号35のVL;
(d)配列番号43のVH及び配列番号38のVL;
(e)配列番号49のVH及び配列番号48のVL;
(f)配列番号52のVH及び配列番号51のVL;
(g)配列番号59のVH及び配列番号54のVL;並びに
(h)配列番号65のVH及び配列番号64のVL
から選択されるVH及びVLのアミノ酸配列の各々に対して少なくとも75%同一であるVH及びVLを含む。
【0018】
一実施形態では、結合分子の第2の結合ドメインは、
(a)配列番号27のVH及び配列番号22のVL;
(b)配列番号33のVH及び配列番号32のVL;
(c)配列番号36のVH及び配列番号35のVL;
(d)配列番号43のVH及び配列番号38のVL;
(e)配列番号49のVH及び配列番号48のVL;
(f)配列番号52のVH及び配列番号51のVL;
(g)配列番号59のVH及び配列番号54のVL;並びに
(h)配列番号65のVH及び配列番号64のVL
から選択されるVH及びVLを含む。
【0019】
一実施形態では、結合分子は、少なくとも2つの抗体重鎖及び少なくとも2つの抗体軽鎖を含む。一実施形態では、結合分子は、二重特異性抗体を含む。一実施形態では、結合分子の1つ以上の結合ドメインは、可変断片(Fv)ドメインを含む。一実施形態では、結合分子の1つ以上の結合ドメインは、scFv分子を含む。一実施形態では、結合分子の1つ以上の結合ドメインはFvドメインを含み、1つ以上の結合ドメインはscFv分子を含む。さらなる特定の実施形態では、結合分子の第1の結合ドメインは、抗A型インフルエンザウイルスのFvドメインを含む。一実施形態では、結合分子は、抗体重鎖可変ドメイン及び抗体軽鎖可変ドメインを含むFvドメインを含み、抗A型インフルエンザウイルスに特異的に結合する。一実施形態では、結合分子の第2の結合ドメインは、抗B型インフルエンザウイルスのscFv分子を含む。
【0020】
一実施形態では、第1の結合ドメインは、抗A型インフルエンザウイルスのFvドメインを含み、第2の結合ドメインは、抗B型インフルエンザウイルスのscFv分子を含む。一実施形態では、第1の結合ドメインのFvドメインは、アミノ末端及びカルボキシ末端を有するポリペプチド鎖を有する重鎖(HC)並びにアミノ末端及びカルボキシ末端を有するポリペプチド鎖を有する軽鎖(LC)を有し、
(a)第2の結合ドメインは第1の結合ドメインのHCのカルボキシ末端に共有結合されるか;
(b)第2の結合ドメインは第1の結合ドメインのHCのアミノ末端に共有結合されるか;
(c)第2の結合ドメインは第1の結合ドメインのLCのアミノ末端に共有結合されるか;又は
(d)第2の結合ドメインは第1の結合ドメインのHCのポリペプチド鎖内で共有結合的にインターカレートされる。
【0021】
一実施形態では、結合分子は、1つ以上のN末端ドメインを有する抗体又はその断片を含み、ここで1つ以上のscFv分子は、抗体又はその断片の1つ以上のN末端ドメインに共有結合される。一実施形態では、抗体又はその断片のN末端ドメインは、1つ以上のFvドメインを含み、1つ以上のscFv分子は、抗体又はその断片の1つ以上のFvドメインに共有結合される。一実施形態では、N末端ドメインは、可変重鎖ドメイン(VH)及び可変軽鎖ドメイン(VL)を含むFvドメインを含む。一実施形態では、1つ以上のscFv分子は、抗体又はその断片の1つ以上の軽鎖可変ドメイン(VL)に共有結合される。一実施形態では、結合分子は、式scFv−L1−VL−CL(式中、scFvはscFv分子であり、L1はリンカーであり、VLは軽鎖可変ドメインであり、CLは軽鎖定常ドメインであり、VLは軽鎖可変ドメインである)を有する抗体軽鎖を含む抗体又はその断片を含む。一実施形態では、1つ以上のscFv分子は、抗体又はその断片の1つ以上の重鎖可変ドメイン(VH)に共有結合される。一実施形態では、重鎖は、式scFv−L1−VH−CH1−CH2−CH3(式中、scFvはscFv分子であり、L1はリンカーであり、VHは重鎖可変ドメインであり、CH1は重鎖定常ドメインドメイン1であり、CH2は重鎖定常ドメインドメイン2であり、CH3は重鎖定常ドメインドメイン3である)を含む。
【0022】
一実施形態では、結合分子は、配列番号7及び配列番号17から選択されるアミノ酸VHドメイン配列に対して少なくとも75%同一であるアミノ酸配列を有する可変重鎖ドメイン(VH)を含む。一実施形態では、結合分子は、配列番号2及び配列番号12から選択されるアミノ酸VLドメイン配列に対して少なくとも75%同一であるアミノ酸配列を有する可変軽鎖ドメイン(VL)を含む。
【0023】
一実施形態では、結合分子は、C末端ドメインを有する抗体又はその断片を含み、ここで1つ以上のscFv分子は、抗体又はその断片のC末端ドメインに共有結合される。一実施形態では、結合分子は、第1及び第2のC末端ドメインを各々有する第1及び第2の重鎖を含み、ここで1つ以上のscFv分子は、第1の重鎖、第2の重鎖、又はそれらの組み合わせのC末端ドメインに共有結合される。一実施形態では、結合分子は、1つ以上の重鎖定常ドメインを含む抗体又はその断片を含み、ここで1つ以上のscFv分子は、1つ以上の重鎖の1つ以上の重鎖定常ドメイン間の重鎖に挿入される。一実施形態では、1つ以上の重鎖は、式VH−CH1−CH2−CH3(式中、VHは重鎖可変ドメインであり、CH1は重鎖定常ドメインドメイン1であり、CH2は重鎖定常ドメインドメイン2であり、且つCH3は重鎖定常ドメインドメイン3である)を含む。一実施形態では、1つ以上の重鎖は、式VH−CH1−L1−scFv−L2−CH2−CH3(式中、L1及びL2は独立してリンカーであり、且つscFvはscFv分子である)を含む。一実施形態では、1つ以上の重鎖は、式VH−CH1−CH2−L1−scFv−L2−CH3(式中、L1及びL2は独立してリンカーであり、且つscFvはscFv分子である)を含む。一実施形態では、L1及びL2は、独立して、(a)[GGGGS]n(式中、nは0、1、2、3、4、若しくは5である)(配列番号93)、(b)[GGGG]n(式中、nは0、1、2、3、4、若しくは5である)(配列番号106)、又は(a)及び(b)の組み合わせを含む。
【0024】
一実施形態では、scFvは式VH−LS−VL(式中、VHは重鎖可変ドメインであり、LSはリンカーであり、且つVLは軽鎖可変ドメインである)を含む。一実施形態では、LSは、(a)[GGGGS]n(式中、nは0、1、2、3、4、若しくは5である)(配列番号93)、(b)[GGGG]n(式中、nは0、1、2、3、4、若しくは5である)(配列番号106)、又は(a)及び(b)の組み合わせを含む。
【0025】
一実施形態では、第1の結合ドメインの重鎖及び軽鎖は、1つ以上のジスルフィド結合によって連結される。さらなる特定の実施形態では、第2の結合ドメインのscFvは、重鎖可変ドメイン(VH)及び軽鎖可変ドメイン(VL)を含み、scFvのVHは、43位、44位、100位、101位、105位、及びこれらの組み合わせから選択される位置にシステイン残基を含み、且つscFvのVLは、43位、44位、46位、49位、50位、100位、及びこれらの組み合わせから選択される位置にシステイン残基を含む。一実施形態では、scFvのVL及びVHは、VL100−VH44、VL43−VH105、VL46−VH101、VL49−VH100、VL50−VH100、及びこれらの組み合わせから選択されるジスルフィド結合によって連結される。一実施形態では、scFvのVH及びVLは、VH44−VL100、VH100−VL49、VH100−VL50、VH101−VL46、VH105−VL43、及びこれらの組み合わせから選択されるジスルフィド結合によって連結される。
【0026】
一実施形態では、VHは、3つのCDRセット:HCDR1、HCDR2、HCDR3を含み、ここで3つのCDRセットは、
(a)配列番号28のHCDR1、配列番号29のHCDR2、配列番号30のHCDR3に対して少なくとも75%同一であるアミノ酸配列;
(b)配列番号28のHCDR1、配列番号29のHCDR2、配列番号30のHCDR3のアミノ酸配列;
(c)配列番号44のHCDR1、配列番号45のHCDR2、配列番号46のHCDR3に対して少なくとも75%同一であるアミノ酸配列;
(d)配列番号44のHCDR1、配列番号45のHCDR2、配列番号46のHCDR3のアミノ酸配列;
(e)配列番号60のHCDR1、配列番号61のHCDR2、配列番号62のHCDR3に対して少なくとも75%同一であるアミノ酸配列;並びに
(f)配列番号60のHCDR1、配列番号61のHCDR2、配列番号62のHCDR3のアミノ酸配列
から選択される。
【0027】
一実施形態では、VLは、3つのCDRセット:LCDR1、LCDR2、LCDR3を含み、ここで3つのCDRセットは、
(a)配列番号23のLCDR1、配列番号24のLCDR2及び配列番号25のLCDR3に対して少なくとも75%同一であるアミノ酸配列;
(b)配列番号23のLCDR1、配列番号24のLCDR2及び配列番号25のLCDR3のアミノ酸配列;
(c)配列番号39のLCDR1、配列番号40のLCDR2及び配列番号41のLCDR3に対して少なくとも75%同一であるアミノ酸配列;
(d)配列番号39のLCDR1、配列番号40のLCDR2及び配列番号41のLCDR3のアミノ酸配列;
(e)配列番号55のLCDR1、配列番号56のLCDR2、配列番号57のLCDR3に対して少なくとも75%同一であるアミノ酸配列;並びに
(f)配列番号55のLCDR1、配列番号56のLCDR2、配列番号57のLCDR3のアミノ酸配列
から選択される。
【0028】
一実施形態では、scFvは、配列番号31、配列番号34、配列番号47、配列番号50、配列番号63から選択されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%同一であるアミノ酸配列を有する。
【0029】
一実施形態では、結合分子は、A型インフルエンザウイルス及びB型インフルエンザウイルスに特異的に結合する二重特異性抗体であり、配列番号66又は配列番号68のアミノ酸配列に対して少なくとも75%同一であるアミノ酸配列を有する軽鎖を含む。一実施形態では、二重特異性抗体は、配列番号66又は配列番号68のアミノ酸配列を有する軽鎖を含む。一実施形態では、結合分子は、A型インフルエンザウイルス及びB型インフルエンザウイルスに特異的に結合する二重特異性抗体であり、配列番号67又は配列番号69のアミノ酸配列に対して少なくとも75%同一であるアミノ酸配列を有する重鎖を含む。一実施形態では、重鎖は、配列番号67又は配列番号69のアミノ酸配列を有する。一実施形態では、結合分子は、A型インフルエンザウイルス及びB型インフルエンザウイルスに特異的に結合する二重特異性抗体であり、配列番号66又は配列番号68のアミノ酸配列に対して少なくとも75%同一であるアミノ酸配列を有する軽鎖及び配列番号67又は配列番号69のアミノ酸配列に対して少なくとも75%同一であるアミノ酸配列を有する重鎖を含む。
【0030】
一実施形態では、二重特異性抗体は、
(a)配列番号66を含むアミノ酸配列を有する軽鎖及び配列番号67を含むアミノ酸配列を有する重鎖;又は
(b)配列番号68を含むアミノ酸配列を有する軽鎖及び配列番号69を含むアミノ酸配列を有する重鎖
を含む。
【0031】
さらに提供されるのは、本明細書に記載の結合分子又は二重特異性抗体又は断片を含むか又は産生する細胞である。
【0032】
さらに提供されるのは、本明細書に記載の結合分子又は二重特異性抗体をコードする単離されたポリヌクレオチドである。一実施形態では、本明細書に記載の結合分子又は二重特異性抗体をコードするポリヌクレオチドを含むベクターが提供される。
【0033】
別の実施形態では、本明細書に記載の結合分子又は二重特異性抗体をコードするポリヌクレオチドを含む宿主細胞が提供される。
【0034】
さらに、本明細書に提供されるのは、本明細書に記載のような結合分子又は二重特異性抗体又はその断片、及び薬学的に許容できる担体を含む組成物である。さらに提供されるのは、かかる組成物を含むキットである。別の実施形態では、被験者におけるA型インフルエンザウイルス又はB型インフルエンザウイルス感染を予防又は治療する方法であって、有効量のかかる組成物を被験者に投与するステップを含む、方法が提供される。
【0035】
さらに本明細書に提供されるのは、本明細書に記載のような結合分子又は二重特異性抗体又はその断片を作製するための方法である。一実施形態では、本方法は、宿主細胞を結合分子又は二重特異性抗体又はその断片の発現に適した条件下で培養するステップを含む。一実施形態では、本方法は、宿主細胞培養物から結合分子を単離するステップをさらに含む。
【0036】
さらに提供されるのは、本明細書に記載の結合分子又は二重特異性抗体又はその断片を用いる方法である。一実施形態では、結合分子又は二重特異性抗体又はその断片は、被験者におけるA型インフルエンザ感染、B型インフルエンザ感染、又はそれらの組み合わせの予防又は治療において用いられる。
【0037】
別の実施形態では、本明細書に記載の結合分子又は二重特異性抗体又はその断片は、被験者におけるA型インフルエンザ感染、B型インフルエンザ感染、又はそれらの組み合わせの予防又は治療のための薬剤の作製における使用に適する。一実施形態では、本明細書に記載の結合分子又は二重特異性抗体又はその断片は、被験者におけるA型インフルエンザ及びB型インフルエンザ感染の予防又は治療のための薬剤の作製において用いられる。一実施形態では、被験者におけるA型インフルエンザ感染、B型インフルエンザ感染、又はそれらの組み合わせの予防又は治療のための方法であって、本明細書に記載の結合分子又は二重特異性抗体又はその断片を有効量で被験者に投与するステップを含む、方法が提供される。
【0038】
一実施形態では、被験者におけるA型インフルエンザ及びB型インフルエンザ感染の予防又は治療のための方法であって、本明細書に記載の結合分子又は二重特異性抗体又はその断片を有効量で被験者に投与するステップを含む、方法が提供される。
【0039】
一実施形態では、本明細書に記載の結合分子又は二重特異性抗体又はその断片は、被験者におけるA型インフルエンザ感染、B型インフルエンザ感染、又はそれらの組み合わせのインビトロ診断に適する。
本発明はまた、以下に関する。
[項目1]
(a)A型インフルエンザウイルスヘマグルチニン(HA)に結合し、且つA型インフルエンザウイルスの少なくとも1つのグループ1サブタイプ及び少なくとも1つのグループ2サブタイプを中和する能力がある第1の結合ドメイン;及び
(b)B型インフルエンザウイルスヘマグルチニン(HA)に結合し、且つ少なくとも2つの系統学的に異なる系統におけるB型インフルエンザウイルスを中和する能力がある第2の結合ドメイン
を含む、A型インフルエンザウイルス及びB型インフルエンザウイルスに特異的に結合する単離された結合分子。
[項目2]
前記第1の結合ドメインが、H1、H2、H5、H6、H8、H9、H11、H12、H13、H16、H17、H18及びそれらの変異体から選択される1つ以上のA型インフルエンザウイルスのグループ1サブタイプ;並びにH3、H4、H7、H10、H14及びH15及びそれらの変異体から選択される1つ以上のA型インフルエンザウイルスのグループ2サブタイプを中和する能力がある、項目1に記載の単離された結合分子。
[項目3]
前記第2の結合ドメインが、Yamagata及びVictoria系統の双方におけるB型インフルエンザウイルスを中和する能力がある、項目1〜2のいずれか一項に記載の単離された結合分子。
[項目4]
前記第1の結合ドメインが抗A型インフルエンザウイルス抗体又はその抗原結合断片を含み、且つ前記第2の結合ドメインが抗B型インフルエンザウイルス抗体又はその抗原結合断片を含む、項目1〜3のいずれか一項に記載の単離された結合分子。
[項目5]
前記第1の結合ドメインが、6つのCDRセット:HCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、LCDR3を含み、ここで6つのCDRセットが、
(a)配列番号8のHCDR1、配列番号9のHCDR2、配列番号10のHCDR3、配列番号3のLCDR1、配列番号4のLCDR2及び配列番号5のLCDR3のアミノ酸配列;及び
(b)配列番号18のHCDR1、配列番号19のHCDR2、配列番号20のHCDR3、配列番号13のLCDR1、配列番号14のLCDR2、配列番号15のLCDR3のアミノ酸配列
から選択されるアミノ酸配列を有する、項目1〜4のいずれか一項に記載の単離された結合分子。
[項目6]
前記第1の結合ドメインが、
(a)配列番号7のVH及び配列番号2のVL;及び
(b)配列番号17のVH及び配列番号12のVL
から選択されるVH及びVLのアミノ酸配列の各々に対して少なくとも75%同一であるVH及びVLを含む、項目1〜5のいずれか一項に記載の単離された結合分子。
[項目7]
前記第2の結合ドメインが、6つのCDRセット:HCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、LCDR3を含み、ここで6つのCDRセットが、
(a)配列番号28のHCDR1、配列番号29のHCDR2、配列番号30のHCDR3、配列番号23のLCDR1、配列番号24のLCDR2及び配列番号25のLCDR3のアミノ酸配列;
(b)配列番号44のHCDR1、配列番号45のHCDR2、配列番号46のHCDR3、配列番号39のLCDR1、配列番号40のLCDR2及び配列番号41のLCDR3のアミノ酸配列;及び
(c)配列番号60のHCDR1、配列番号61のHCDR2、配列番号62のHCDR3、配列番号55のLCDR1、配列番号56のLCDR2、配列番号57のLCDR3のアミノ酸配列
から選択されるアミノ酸配列を有する、項目1〜6のいずれか一項に記載の単離された結合分子。
[項目8]
前記第2の結合ドメインが、
(a)配列番号27のVH及び配列番号22のVL;
(b)配列番号33のVH及び配列番号32のVL;
(c)配列番号36のVH及び配列番号35のVL;
(d)配列番号43のVH及び配列番号38のVL;
(e)配列番号49のVH及び配列番号48のVL;
(f)配列番号52のVH及び配列番号51のVL;
(g)配列番号59のVH及び配列番号54のVL;並びに
(h)配列番号65のVH及び配列番号64のVL
から選択されるVH及びVLのアミノ酸配列の各々に対して少なくとも75%同一であるVH及びVLを含む、項目1〜7のいずれか一項に記載の単離された結合分子。
[項目9]
前記結合分子が二重特異性抗体である、項目1〜8のいずれか一項に記載の単離された結合分子。
[項目10]
前記第1の結合ドメインが抗A型インフルエンザウイルスのFvドメインを含み、且つ前記第2の結合ドメインが抗B型インフルエンザウイルスのscFv分子を含む、項目9に記載の単離された結合分子。
[項目11]
前記第1の結合ドメインの前記Fvドメインが、アミノ末端及びカルボキシ末端を有するポリペプチド鎖を含む重鎖(HC)並びにアミノ末端及びカルボキシ末端を有するポリペプチド鎖を含む軽鎖(LC)を含み、
(a)前記第2の結合ドメインは前記第1の結合ドメインのHCのカルボキシ末端に共有結合されるか;
(b)前記第2の結合ドメインは前記第1の結合ドメインのHCのアミノ末端に共有結合されるか;
(c)前記第2の結合ドメインは前記第1の結合ドメインのLCのアミノ末端に共有結合されるか;又は
(d)前記第2の結合ドメインは前記第1の結合ドメインのHCのポリペプチド鎖内で共有結合的にインターカレートされる
項目10に記載の単離された結合分子。
[項目12]
項目1〜11のいずれか一項に記載の単離された結合分子をコードする核酸を含む単離されたポリヌクレオチド。
[項目13]
項目12に記載のポリヌクレオチドを含むベクター。
[項目14]
項目12に記載のポリヌクレオチドを含む宿主細胞。
[項目15]
項目1〜14のいずれか一項に記載の単離された結合分子及び薬学的に許容できる担体を含む組成物。
[項目16]
項目1〜15のいずれか一項に記載の単離された結合分子を作製するための方法であって、宿主細胞を前記結合分子の発現に適した条件下で培養するステップを含む、方法。
[項目17]
被験者におけるA型インフルエンザ感染、B型インフルエンザ感染、又はそれらの組み合わせの予防又は治療のための方法であって、項目1〜16のいずれか一項に記載の単離された結合分子を有効量で前記被験者に投与するステップを含む、方法。
【図面の簡単な説明】
【0040】
図1】5つの異なる二重特異性抗体(BiS)骨格の一般的構造形式であるBiS1、BiS2、BiS3、BiS4、及びBiS5を示す。scFvは暗灰色で示され、IgG Fvは明灰色で示される。
図2図2A〜Dは、漸増量のGL20/39 BiS4 43/105(Flu BiS)、GL20、又はFBC39の存在下でインキュベートされた一次ヒトナチュラルキラー(NK)細胞のADCC活性を示す。(A)A/California/07/2009 H1N1、(B)A/Hong Kong/8/68 H3N2、(C)B/Malaysia/2506/2004 victoria系統及び(D)B/Sichuan/379/99 yamagata系統に感染されたA549細胞の感染細胞死が乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)放出により測定された。
図3図3A〜Cは、GL20/39 BiS4 43/105(Flu BiS)、GL20、又はFBC39抗HA抗体のADCP及びCDC活性を示す。ADCP活性は、(A)A/South Dakota/6/2007 H1N1及び(B)A/Hong Kong/8/68 H3N2のHAタンパク質を発現するMDCK標的細胞を貪食したヒトマクロファージの百分率によって表される。(C)CDC媒介性細胞死は、仔ウサギ補体の存在下でのA/Puerto Rico/8/34に感染されたMDCK細胞からのLDH放出により測定された。
図4図4A〜Dは、致死量のA/Wilson Smith N/33 H1N1(A及びB)、rA/HK/68 H3N2(C及びD)インフルエンザウイルスへの感染の4時間前、GL20/39 BiS4 43/105(Flu BiS)、GL20、及び無関係対照抗体(Ctl.mAb)が異なる濃度でマウスに投与された時の試験の各群における生存率(A及びC)及び感染後5日目の肺ウイルス力価(B及びD)を示す。
図5図5A〜Dは、致死量の(A及びB)B/Florida/4/2006 yamagata系統及び(C及びD)B/Malaysia/2506/2004 victoria系統インフルエンザウイルスへの感染の4時間前、GL20/39 BiS4 43/105(Flu BiS)、FBC39、及び無関係対照抗体(Ctl.mAb)が異なる濃度でマウスに投与された時の試験の各群における生存率(A及びC)及び感染後5日目の肺ウイルス力価(B及びD)を示す。
図6図6A〜Fは、試験の各群における生存率(A及びB)、感染後5日目の肺ウイルス力価(C及びD)、及び感染後6日目のパルス酸素測定により測定された肺機能(E及びF)を示し、ここでマウスは致死量のA/Wilson Smith N/33 H1N1インフルエンザウイルス(A、C、E)又はB/Florida/4/2006 yamagata系統ウイルス(B、D、F)の感染を受けた。5日間、1日2回(BID)、25mg/kgのオセルタミビル、10mg/kgのGL20/39 BiS4 43/105(Flu BiS)、又は10mg/kgの無関係対照抗体(Ctl.mAb)での治療が様々な時点で(感染後1日目、2日目、3日目、4日目)開始された。
【発明を実施するための形態】
【0041】
導入
本明細書に記載されるのは、結合分子、例えば、限定はされないが、少なくとも2つの抗インフルエンザ結合ドメインを含む、二重特異性抗体、ヒト抗体、抗原結合断片、それらの誘導体若しくはコンジュゲートを含む抗体である。一実施形態では、結合分子は、A型インフルエンザウイルスに特異的に結合する第1の結合ドメイン及びB型インフルエンザウイルスに特異的に結合する第2の結合ドメインを含む。A型インフルエンザウイルスに特異的に結合する抗体は、2013年10月2日に出願された米国仮特許出願第61/885,808号明細書及び2014年5月23日に出願された米国仮特許出願第62/002,414号明細書に記載され、またB型インフルエンザウイルスに特異的に結合する抗体は、2014年7月15日に出願された米国仮特許出願第62/024,804号明細書に記載され、ここで各々の開示はその全体が参照により本明細書中に援用される。
【0042】
一実施形態では、第1の結合ドメインは、A型インフルエンザウイルスのヘマグルチニン(HA)ストークに特異的に結合する。さらなる特定の実施形態では、第1の結合ドメインは、A型インフルエンザウイルスのヘマグルチニン(HA)ストークに特異的に結合し、A型インフルエンザウイルスの少なくとも1つのグループ1サブタイプ及び少なくとも1つのグループ2サブタイプを中和する。
【0043】
一実施形態では、第2の結合ドメインは、B型インフルエンザウイルスのヘマグルチニン(HA)に特異的に結合する。さらなる特定の実施形態では、第2の結合ドメインは、B型インフルエンザウイルスのヘマグルチニン(HA)に特異的に結合し、2つの系統学的に異なる系統におけるB型インフルエンザウイルスを中和する。一実施形態では、第2の結合ドメインは、B型インフルエンザウイルスのヘマグルチニン(HA)に特異的に結合し、Yamagata及びVictoria系統の双方におけるB型インフルエンザウイルスを中和する。別の実施形態では、第2の結合ドメインは、B型インフルエンザウイルスのヘマグルチニン(HA)及びA型インフルエンザウイルスのヘマグルチニン(HA)に特異的に結合し、少なくとも1つのYamagata系統のB型インフルエンザウイルス;少なくとも1つのVictoria系統のB型インフルエンザウイルス;少なくとも1つのA型インフルエンザウイルスのサブタイプ、及びそれらの組み合わせを中和する。
【0044】
一実施形態では、結合分子は、1つ以上のA型インフルエンザウイルス株及び/又はB型インフルエンザウイルス株に対して、いずれかの親抗体と比べて増強された中和活性を有する二重特異性抗体である。一実施形態では、結合分子は、1つ以上のA型インフルエンザのグループ1株又はグループ2株に対して増強された中和活性を有する二重特異性抗体である。さらなる特定の実施形態では、結合分子は、サブタイプH1、H2、H5、H6、H8、H9、H11、H12、H13、H16、H17及びH18から選択されるA型インフルエンザウイルスのグループ1株に対して増強された中和活性を有する二重特異性抗体である。さらなる特定の実施形態では、結合分子は、サブタイプH3、H4、H7、H10、H14、及びH15から選択されるA型インフルエンザウイルスのグループ2株に対して増強された中和活性を有する二重特異性抗体である。一実施形態では、結合分子は、A型インフルエンザウイルスのH9サブタイプに対して増強された中和活性を有する二重特異性抗体である。
【0045】
本明細書で用いられるとき、用語「中和する」は、結合分子、例えば抗体、又はその抗原結合断片の、感染病原体、例えばA型インフルエンザ及び/又はB型インフルエンザウイルスに結合し、且つ感染病原体の生物学的活性、例えば病原性を低下させる能力を指す。一実施形態では、結合分子は、A型インフルエンザウイルス;B型インフルエンザウイルス、又はそれらの組み合わせの少なくとも1つの特定のエピトープ又は抗原決定基に免疫特異的に結合する。結合分子は、感染病原体、例えばA型インフルエンザ及び/又はB型インフルエンザウイルスの活性を、ウイルスの生活環の期間中の様々な時点で中和し得る。例えば、抗体は、ウイルスと1つ以上の細胞表面受容体との相互作用に干渉することにより、ウイルスの標的細胞への付着に干渉し得る。或いは、抗体は、例えば、受容体媒介性エンドサイトーシスによるウイルス内部移行に干渉することにより、ウイルスとその受容体との1つ以上の付着後の相互作用に干渉し得る。
【0046】
用語法
本発明を詳細に記載する前に、この発明が具体的な組成物又は方法ステップに限定されるものでなく、それ自体変わり得ることが理解されるべきである。本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用されるとき、単数形「a」、「an」及び「the」は、文脈上明確に別段の指示がない限り、複数形の指示対象を含むことに留意しなければならない。
【0047】
用語「約」は、例えば、化合物、組成物、濃縮物又は製剤を作製するために用いられる典型的な測定及び処理手順を通じて;これらの手順における不注意なエラーを通じて;本方法やそれに類した検討事項を実施するのに用いられる出発物質又は成分の作製、ソース、又は純度における差異を通じて生じ得る数量における変動を指す。用語「約」はまた、化合物、組成物、濃縮物又は製剤の経年劣化に起因して特定の初期濃度又は混合物と異なる量、及び化合物、組成物、濃縮物又は製剤を混合又は処理することに起因して特定の初期濃度又は混合と異なる量を包含する。本明細書に添付される特許請求の範囲は、用語「約」によって修飾される場合、これらの量に対する等価物を含む。
【0048】
特に定義されない限り、本明細書で使用される全ての科学技術用語は、本発明が関係する技術分野の当業者が一般に理解するのと同じ意味を有する。例えば、Concise Dictionary of Biomedicine and Molecular Biology,Juo,Pei−Show(2002)2nd ed.,CRC Press;The Dictionary of Cell and Molecular Biology,3rd ed.(1999)Academic Press;及びOxford Dictionary Of Biochemistry And Molecular Biology,Revised(2000)Oxford University Pressが、この発明において使用される用語の多くの一般的な辞書を当業者に提供する。
【0049】
アミノ酸は、本明細書中で、IUPAC−IUB生化学命名委員会(IUPAC−IUB Biochemical Nomenclature Commission)により推奨される、その一般に公知の3文字記号又は1文字記号のいすれかによって指すことができる。同様に、ヌクレオチドは、その一般に認められた1文字コードによって指すことができる。
【0050】
定義
用語「核酸」又は「ポリヌクレオチド」は、限定はされないが、ヌクレオチドのポリマー、例えばDNA及びRNAポリマー、及び修飾オリゴヌクレオチド、例えば、溶液中の生物学的RNA又はDNAに典型的でない塩基を有するオリゴヌクレオチド、例えば2’−O−メチル化オリゴヌクレオチドを含むヌクレオチドのストリングに対応する単量体単位の任意の物理的ストリングを包含する。ポリヌクレオチドは、古典的ホスホジエステル結合又は非古典的結合、例えばペプチド核酸(PNA)中に見出される、例えばアミド結合を含み得る。核酸は一本鎖又は二本鎖であり得る。別段の指示がない限り、核酸配列は、明示される配列に加えて相補的配列を包含する。
【0051】
用語「遺伝子」は、生物学的機能に関連した核酸を指すように広範に用いられる。したがって、遺伝子は、その発現に必要とされるコード配列及び/又は制御配列を含む。用語「遺伝子」は、具体的なゲノム配列、並びにそのゲノム配列によってコードされるcDNA又はmRNAに適用される。遺伝子はまた、例えば他のタンパク質に対する認識配列を形成する発現されない核酸配列を含む。発現されない制御配列は、隣接又は近隣配列の転写を生じさせる、転写因子などの調節タンパク質が結合する対象の「プロモーター」及び「エンハンサー」を含む。例えば、ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは、プロモーター及び/又は1つ以上のコード領域に作動可能に結合した他の転写若しくは翻訳制御因子を含み得る。「作動可能に結合した」は、遺伝子産物の発現を制御配列の影響又は制御の下に置くように、1つ以上の制御配列に結合した遺伝子産物におけるコード領域を指す。「遺伝子の発現」又は「核酸の発現」は、文脈によって指定される通り、DNAのRNAへの転写、RNAのポリペプチドへの翻訳、又は転写と翻訳の双方を指す。
【0052】
本明細書で用いられるとき、用語「コード領域」は、アミノ酸に翻訳され得るコドンを含む核酸の一部を指す。「停止コドン」(TAG、TGA、又はTAA)はアミノ酸に翻訳されないが、一般にコード領域の一部であると考えられる。しかし、フランキング配列、例えばプロモーター、リボソーム結合部位、転写ターミネーター、及びイントロンは、コード領域の一部であると考えられない。ベクターは、単一のコード領域を含み得るか、又は2つ以上のコード領域を含み得る。加えて、ベクター、ポリヌクレオチド、又は核酸は、目的の遺伝子産物、例えば、抗体、又は抗原結合断片、変異体、又はその誘導体をコードする核酸に融合されるか又は融合されない異種コード領域をコードし得る。異種コード領域は、限定はされないが、特定化された配列又はモチーフ、例えば分泌シグナルペプチド又は異種機能ドメインを含む。
【0053】
用語「ベクター」は、核酸が生物間、細胞間、又は細胞成分間で増殖及び/又は移動され得る手段を指す。ベクターは、限定はされないが、プラスミド、ウイルス、バクテリオファージ、プロウイルス、ファージミド、トランスポゾン、及び人工染色体を含み、自律的に複製するか又は宿主細胞の染色体に組み込む能力がある。ベクターはまた、限定はされないが、ネイキッドRNAポリヌクレオチド、ネイキッドDNAポリヌクレオチド、同じ鎖内にDNAとRNAの双方を含むポリヌクレオチド、ポリリジン結合DNA若しくはRNA、ペプチド結合DNA若しくはRNA、リポソーム結合DNAを含み、自律的に複製することはない。「発現ベクター」は、ベクター、例えばプラスミドであり、それに組み込まれる核酸の発現及び複製を促進する能力がある。典型的には、発現されるべき核酸は、プロモーター及び/又はエンハンサーに「作動可能に連結され」、プロモーター及び/又はエンハンサーによる転写調節制御に従う。
【0054】
用語「宿主細胞」は、異種核酸、例えばベクターを含む細胞を指し、核酸の複製及び/又は発現を支持する。宿主細胞は、大腸菌(E.Coli)などの原核細胞、又は酵母、昆虫、両生類、鳥類若しくは哺乳類細胞、例えばヒト細胞、例えばHEp−2細胞及びVero細胞などの真核細胞であり得る。
【0055】
用語「導入される」は、異種核酸又は単離された核酸に言及するとき、核酸の真核細胞又は原核細胞への導入を指し、ここでは核酸が細胞のゲノム中に組み込まれ得るか、自律レプリコンに変換され得るか、又は一過性に発現され得る。同用語は、「感染」、「遺伝子導入」、「形質転換」及び「形質導入」などの方法を含む。限定はされないが、エレクトロポレーション、リン酸カルシウム沈降、脂質介在性遺伝子導入、及びリポフェクションを含む、核酸を宿主細胞に導入するための種々の方法が利用可能である。
【0056】
用語「発現」は、遺伝子からの情報が機能的遺伝子産物の合成において用いられる過程を指す。遺伝子産物は、タンパク質であることが多いが、機能的RNAでもあり得る。遺伝子発現は、対応するrRNA、tRNA、mRNA、snRNA及び/又はタンパク質レベルでの遺伝子産物の存在を判定することによって検出され得る。
【0057】
「ポリペプチド」は、アミド結合(ペプチド結合としても公知)によって線状に結合される2つ以上のアミノ酸残基を含む分子、例えばペプチド又はタンパク質を指す。用語「ポリペプチド」は、2つ以上のアミノ酸の任意の1つ若しくは複数の鎖を指し、特定の長さの産物を指すことがない。したがって、ペプチド、ジペプチド、トリペプチド、オリゴペプチド、「タンパク質」、「アミノ酸鎖」、又は2つ以上のアミノ酸の1つ若しくは複数の鎖を指すために用いられる任意の他の用語は、「ポリペプチド」の定義内に含まれ、用語「ポリペプチド」は、これらの用語のいずれかと代替的又は互換的に用いることができる。用語「ポリペプチド」はまた、限定はされないが、グリコシル化、アセチル化、リン酸化、アミド化、公知の保護基/ブロッキング基による誘導体化、タンパク質分解切断、又は非天然アミノ酸による修飾を含む、ポリペプチドの発現後修飾の産物を指すことが意図される。ポリペプチドは、天然の生物学的供給源から誘導され得るか又は組換え技術によって生成され得、必ずしも指定の核酸配列から翻訳されるとは限らない。それは任意の様式で、例えば化学合成により作製され得る。ポリペプチドのアミノ酸残基は、天然又は非天然であり得、また非置換物、非修飾物、置換物又は修飾物であり得る。「アミノ酸配列」は、文脈に応じて、アミノ酸残基のポリマー、例えばタンパク質若しくはポリペプチド、又はアミノ酸ポリマーを表す文字列である。
【0058】
本明細書で用いられるとき、用語「抗体」は、抗原の抗原決定基の特徴に対して相補的な内部表面形状及び電荷分布を伴う三次元結合空間を有するポリペプチド鎖のフォールディングから形成される少なくとも1つの結合ドメインを含むポリペプチド又はポリペプチドの基を指す。抗体は、典型的には、2つのポリペプチド鎖対を伴う四量体形態を有し、各対は1つの「軽」鎖及び1つの「重」鎖を有し、各軽鎖/重鎖対の可変領域は抗体結合部位を形成する。典型的には、各軽鎖は重鎖に1つの共有ジスルフィド結合によって連結される一方、ジスルフィド結合の数は異なる免疫グロブリンアイソタイプの重鎖間で変動する。重鎖及び軽鎖の各々はまた、規則的に隔てられた鎖間ジスルフィド架橋を有する。典型的には、各重鎖は、1つの末端に可変ドメイン(VH)とそれに続いて幾つかの定常ドメイン(CH)を有し、各軽鎖は、1つの末端に可変ドメイン(VL)とそのもう一方の末端に定常ドメイン(CL)を有し、ここで軽鎖の定常ドメインは重鎖の第1の定常ドメインと整列され、また軽鎖可変ドメインは重鎖の可変ドメインと整列される。
【0059】
用語「抗体」及び「免疫グロブリン」は、本明細書で用いられるとき、(完全長モノクローナル抗体を含む)モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、少なくとも2つの異なるエピトープ結合断片から形成される多重特異性抗体(例えば二重特異性抗体)、CDR移植、ヒト抗体、ヒト化抗体、ラクダ類抗体、キメラ抗体、一本鎖Fv(scFv)、一本鎖抗体、単一ドメイン抗体、Fab断片、Fab’断片、F(ab’)2断片、所望される生物学的活性を呈する抗体断片(例えば抗原結合部分)、ジスルフィド結合Fv(dsFv)、及び抗イディオタイプ(抗Id)抗体、細胞内抗体、及びエピトープ結合断片、又は上記のいずれかの誘導体を包含する。特に、抗体は、免疫グロブリン分子及び免疫グロブリン分子(すなわち少なくとも1つの抗原結合部位を含む分子)の免疫学的に活性な断片を含む。免疫グロブリン分子は、任意のアイソタイプ(例えば、IgG、IgE、IgM、IgD、IgA及びIgY)、サブアイソタイプ(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1及びIgA2)又はアロタイプ(例えばGm、例えば、G1m(f、z、a若しくはx)、G2m(n)、G3m(g、b、若しくはc)、Am、Em、及びKm(1、2若しくは3))であり得る。抗体は、限定はされないが、ヒト、サル、ブタ、ウマ、ウサギ、イヌ、ネコ、マウスなどを含む任意の哺乳動物種、又はトリ(例えばニワトリ)などの他の動物に由来してもよい。抗体は、異種ポリペプチド配列、例えば精製を促進するためのタグに融合されてもよい。
【0060】
用語「特異的に結合する」は、結合分子、例えば抗体又は断片、変異体、又はその誘導体が、エピトープに、その抗原結合ドメインを介してランダムな無関係のエピトープに結合する場合よりも容易に結合することを指す。用語「特異性」は、特定の結合分子が特定のエピトープに結合する上での相対的親和性について認定するため、本明細書で用いられる。
【0061】
本明細書で用いられるとき、用語「親和性」は、個別のエピトープが免疫グロブリン分子の結合ドメインと結合する強さの尺度を指す。
【0062】
用語「エピトープ」は、本明細書で用いられるとき、抗体結合ドメインに結合する能力があるタンパク質決定基を指す。エピトープは通常、アミノ酸又は糖の側鎖など、分子の化学的活性表面群(groupings)を含み、また通常、特定の三次元構造特性、並びに特定の電荷特性を有する。立体構造エピトープと非立体構造(non−conformational)エピトープは、後者ではなく前者への結合が変性溶媒の存在下で失われるという点から区別される。
【0063】
用語「単離された」は、生物学的材料、例えば核酸又はタンパク質を指し、それはその天然に存在する環境下で通常それに伴うか又はそれと相互作用する成分から実質的に遊離される。他方、単離された材料は、その材料とともにその天然環境下で見出されない材料を含んでもよい。例えば、材料がその天然環境下、例えば細胞内に存在する場合、材料は、その環境下で見出される材料に対して天然でない細胞内のある位置に置かれていてもよい。例えば、天然に存在する核酸は、天然に存在しない手段によりその核酸に対して天然でないゲノムのある遺伝子座に導入される場合、単離されたと考えることができる。かかる核酸はまた、「異種」核酸と称される。
【0064】
用語「組換え」は、ヒト介入により人工的又は合成的に改変されている材料を指す。改変は、その天然環境若しくは状態に含まれるか又はそれから除外された材料に対して実施され得る。例えば、「組換え核酸」は、例えば、クローニング、DNA混合若しくは他の手順の間、又は化学的突然変異誘発若しくは他の突然変異誘発により、核酸を組み換えることによって作製される核酸を指してもよく、「組換えポリペプチド」又は「組換えタンパク質」は、組換え核酸の発現によって生成されるポリペプチド又はタンパク質を指し得る。
【0065】
本明細書で用いられるとき、用語「操作される」は、例えば、組換え技術、インビトロペプチド合成、ペプチドの酵素若しくは化学共役、又はそれらの組み合わせを含む合成手段による核酸又はポリペプチド分子の操作を含む。
【0066】
本明細書で用いられるとき、用語「有効量」又は「治療有効量」は、所与の条件及び投与計画にとって所望される臨床成績を実現するのに必要又は十分な治療組成物の量、例えば被験者におけるインフルエンザ感染を予防又は治療する能力がある化合物の濃度を達成するのに十分な量を指す。かかる量及び濃度は、当業者によって決定され得る。実際に投与される治療組成物の量は、典型的には、限定はされないが、治療されるべき状態、選択される投与経路、投与される実際の化合物、個別患者の年齢、体重、及び応答、並びに患者の症状の重症度を含む関連する状況の観点から医師によって決定されることになる。
【0067】
本明細書で用いられるとき、用語「治療組成物」は、治療用途を有する化合物又は組成物を指し、限定はされないが、生物学的化合物、例えば抗体、タンパク質及び核酸、並びに化学的に合成される小型の有機分子化合物を含む。
【0068】
本明細書で用いられるとき、用語「医薬組成物」は、治療有効量の治療薬とともに薬学的に許容できる担体、また必要に応じて、1つ以上の希釈剤又は賦形剤を含む組成物を指す。本明細書で用いられるとき、用語「薬学的に許容できる」は、それが、哺乳類、より詳細にはヒトへの使用として、連邦又は州政府の規制当局によって認可されるか又は米国薬局方(U.S.Pharmacopia)、欧州薬局方(European Pharmacopia)又は他の一般に認められた薬局方におけるリストに載ることを意味する。
【0069】
用語「相乗効果」は、本明細書で用いられるとき、化合物の組み合わせによりもたらされる相加治療を上回る効果を指し、ここで組み合わせて得られる治療効果は、通常で化合物単独の個別投与から得られることになる相加効果を上回る。特定の実施形態は、A型インフルエンザウイルス及び/又はB型インフルエンザウイルス感染の治療における相乗効果をもたらす方法を含み、ここで前記効果は、対応する相加効果よりも、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも100%、少なくとも200%、少なくとも500%、又は少なくとも1000%上回る。
【0070】
本明細書で用いられるとき、用語「治療」又は「治療する」は、治療的処置と予防的(prophylactic)又は予防的(preventative)手段の双方を指し、その目的は、インフルエンザ感染の1つ以上の症状に対して安定化、予防、緩和若しくは軽減するか、又はインフルエンザ感染の進行を遅延、予防、若しくは阻止することである。治療はまた、被験者におけるA型インフルエンザ及び/又はB型インフルエンザなどの感染病原体の排除又は低減を指し得る。「治療」はまた、生存を、治療を受けない場合に想定される生存と比べて延長することを意味し得る。治療は、感染が完全に治癒されることを必ずしも意味しない。
【0071】
本明細書で用いられるとき、用語「被験者」又は「患者」は、限定はされないが、ヒト及び他の霊長類、例えばチンパンジー及び他の類人猿及びサル種などの非ヒト霊長類を含む、脊索動物亜門(subphylum cordata)の任意のメンバーを指す。ウシ、ヒツジ、ブタ、ヤギ及びウマなどの家畜;イヌ及びネコなどの家畜哺乳類;マウス、ラット及びモルモットなどの齧歯類を含む実験動物;トリ、例えば、飼い慣らされた鳥、野鳥及び狩猟鳥、例えば、ニワトリ、シチメンチョウ及び他の家禽、アヒル、ガチョウなどもまた非限定例である。用語「哺乳類」及び「動物」はこの定義に含まれる。成体及び新生哺乳類の双方は包含されることが意図される。
【0072】
結合分子
本明細書に記載されるのは、A型インフルエンザウイルス及び/又はB型インフルエンザウイルスに特異的に結合する結合分子である。本明細書で用いられるとき、用語「結合分子」は、標的分子又は抗原に、抗体の抗原への結合と類似する様式で結合する能力がある分子を指す。結合分子の例として、インタクト抗体、並びにかかる抗体の抗原結合断片、変異体、類似体、又は誘導体、例えば天然に存在する抗体又は免疫グロブリン分子又は改変された抗体分子又は断片、例えば二重特異性抗体などが挙げられる。結合分子は、1つ以上の結合ドメインを含み得る。結合分子は基準の抗体構造を含み得るが、結合分子によっては1つ以上の結合ドメインを含む他の構造を有し得る。一実施形態では、その結合分子は、少なくとも2つの結合ドメインと少なくとも2つの結合特異性を含む。
【0073】
本明細書で用いられるとき、「結合ドメイン」は、標的分子又は抗原への特異的な結合に関与する結合分子の部分、領域、又は部位を指す。一実施形態では、結合ドメインは、抗体の可変断片(Fv)を含む。一実施形態では、結合ドメインは、抗体の可変重(VH)鎖配列及び可変軽(VL)鎖配列を含む。一実施形態では、結合ドメインは、好適なフレームワーク(FR)領域とともに位置づけられる抗体からの1つ以上、2つ、3つ、4つ、5つ若しくは6つの相補性決定領域(CDR)を含む。結合ドメインは単一種に由来してもよく、又は結合ドメインは、例えばヒト化抗体などの場合、ある種からのCDRと別の種からのフレームワーク配列を含んでもよい。
【0074】
結合分子は、限定はされないがトリ及び哺乳類を含む、任意の動物起源から得られ得る。結合分子の抗体又はその断片は、ヒト、マウス、ロバ、ウサギ、ヤギ、モルモット、ラクダ、リャマ、ウマ、又はニワトリ抗体であり得る。本明細書で用いられるとき、「ヒト」抗体は、ヒト免疫グロブリンのアミノ酸配列を有する抗体を含み、またヒト免疫グロブリンライブラリーから単離される抗体、又は1つ以上のヒト免疫グロブリンに対してトランスジェニックであり且つ内因性免疫グロブリンを発現しない動物から単離される抗体を含む。
【0075】
一実施形態では、結合分子は、A型インフルエンザウイルスに対して結合し且つ/又は中和する能力がある少なくとも1つの結合ドメインを含む。別の実施形態では、結合分子は、B型インフルエンザウイルスに対して結合し且つ/又は中和する能力がある少なくとも1つの結合ドメインを含む。一実施形態では、結合分子は、A型インフルエンザウイルスに対して結合し且つ/又は中和する能力がある第1の結合ドメイン、及びB型インフルエンザウイルスに対して結合し且つ/又は中和する能力がある第2の結合ドメインを含む。さらなる特定の実施形態では、結合分子は、A型インフルエンザウイルスのヘマグルチニン(HA)に結合し、且つA型インフルエンザウイルスの少なくとも1つのグループ1サブタイプ及び少なくとも1つのグループ2サブタイプを中和する能力がある第1の結合ドメイン;並びにB型インフルエンザウイルスのヘマグルチニン(HA)に結合し、且つ少なくとも2つの系統学的に異なる系統におけるB型インフルエンザウイルスを中和する能力がある第2の結合ドメインを含む。一実施形態では、第1の結合ドメインは、H1、H2、H5、H6、H8、H9、H11、H12、H13、H16、H17、H18及びそれらの変異体から選択される1つ以上のA型インフルエンザウイルスのグループ1サブタイプ;並びにH3、H4、H7、H10、H14及びH15及びそれらの変異体から選択される1つ以上のA型インフルエンザウイルスのグループ2サブタイプを中和する能力がある。一実施形態では、第2の結合ドメインは、Yamagata及びVictoria系統の双方におけるB型インフルエンザウイルスを中和する能力がある。
【0076】
抗体
結合分子は、完全長又はインタクト抗体、抗体断片、例えば抗原結合断片、ヒト、ヒト化、翻訳後修飾、キメラ又は融合抗体、免疫複合体、又はその機能断片などを含み得る。一実施形態では、結合分子は、完全長又はインタクト抗体、又は1つ以上の抗体断片、例えば抗原結合断片などを含む1つ以上の結合ドメインを含む。
【0077】
抗体の「抗原結合断片」の例として、(i)Fab断片、つまり抗体のVL、VH、CL及びCH1ドメインを含む一価断片;(ii)F(ab’)2断片、つまりヒンジ領域でジスルフィド架橋によって連結された2つのFab断片を含む二価断片;(iii)VH及びCH1ドメインを含むFd断片;(iv)抗体の単一アームのVL及びVHドメインを含むFv断片、(v)VHドメインを含むdAb断片(Ward et al.(1989)Nature.341:544−546);及び(vi)単離された相補性決定領域(CDR)が挙げられる。抗原結合断片は、組換えDNA技術により、又はインタクトな免疫グロブリンの酵素的又は化学的切断により、産生することができる。
【0078】
一実施形態では、抗原結合断片は、例えば「一本鎖可変断片」又は「scFv」を含む、一本鎖抗体を含む。用語「一本鎖可変断片」又は「scFv」は、免疫グロブリンの重鎖の少なくとも1つの可変領域(VH)及び軽鎖の少なくとも1つの可変領域(VL)を含む融合タンパク質を指す。これらの一本鎖抗体断片は、当業者に公知の従来技術を用いて得ることができる。例えば、別々の遺伝子によってコードされるFv断片のVH及びVLドメインは、一価分子を形成するためにVL及びVH領域が対合した単一のポリペプチド鎖として構築されることを可能にする合成リンカーによる組換え法を用いて連結され得る(Bird et al.(1988)Science 242:423−426;及びHuston et al.(1988)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:5879−5883を参照)。一実施形態では、scFvのVH及びVL領域は、少なくとも約5、10、15若しくは20アミノ酸であり、最大で約10、15、20、25若しくは30アミノ酸の短いリンカーペプチドと接続される。scFvリンカーは、公知であり、(柔軟性のため)グリシンリッチなリンカーとともに、(溶解度のため)セリン又はトレオニンを含むリンカーを含む。一実施形態では、リンカーはVHのN末端をVLのC末端と接続する。他の実施形態では、リンカーはVHのC末端をVLのN末端と接続する。一実施形態では、scFvは、定常領域の除去やリンカーの導入にもかかわらず、元の免疫グロブリンの特異性を保持する。一本鎖Fvを産生するための方法は、米国特許第4,946,778号明細書及び米国特許第5,258,498号明細書;Huston et al.,(1991)Methods in Enzymology 203:46−88;Shu et al.,(1993)PNAS 90:7995−7999;及びSkerra et al.,(1988)Science 240:1038−1040に記載の方法を含む。
【0079】
一実施形態では、結合分子は、抗A型インフルエンザウイルス抗体又はその抗原結合断片を含む少なくとも1つの結合ドメインを含む。別の実施形態では、結合分子は、抗B型インフルエンザウイルス抗体又はその抗原結合断片を含む少なくとも1つの結合ドメインを含む。さらなる特定の実施形態では、結合分子は、抗A型インフルエンザウイルス抗体又はその抗原結合断片を含む少なくとも1つの結合ドメイン及び抗B型インフルエンザウイルス抗体又はその抗原結合断片を含む少なくとも1つの結合ドメインを含む。
【0080】
本明細書で用いられるとき、免疫グロブリンとしても知られる用語「抗体」は、モノクローナル抗体、例えば、完全長モノクローナル抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体、ラクダ類抗体、キメラ抗体、一本鎖抗体、一本鎖Fv(scFv)、単一ドメイン抗体、ドメイン抗体、Fab断片、F(ab’)2断片、所望される生物学的活性を有する抗体断片、例えば、抗原結合断片、ジスルフィド結合Fv(dsFv)、及び抗イディオタイプ(抗Id)抗体、細胞内抗体、及びそれらの抗原結合断片を包含する。
【0081】
好適な免疫グロブリン分子は、任意のアイソタイプ(例えば、IgG、IgE、IgM、IgD、IgA及びIgY)、サブアイソタイプ(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1及びIgA2)又はアロタイプ(例えば、Gm、例えば、G1m(f、z、a若しくはx)、G2m(n)、G3m(g、b、若しくはc)、Am、Em、及びKm(1、2若しくは3))であり得る。免疫グロブリン分子は、軽鎖定常領域のアミノ酸配列に基づいてλ鎖又はκ鎖のいずれかとして分類される軽鎖を含み得る。
【0082】
典型的な免疫グロブリン(抗体)構造単位は、2つのポリペプチド鎖対(各対は1つの「軽」鎖(約25kD)及び1つの「重」鎖(約50〜70kD)を有する)を含む、約150kDの四量体である。典型的には、各軽鎖は重鎖に1つの共有ジスルフィド結合により連結されるが、異なる免疫グロブリンアイソタイプの重鎖間のジスルフィド結合の数は変動し得る。各々の重鎖及び軽鎖はまた、規則的間隔の鎖間ジスルフィド架橋を有する。大部分の天然に存在する抗体では、ポリペプチド鎖の2対は同一である。しかし、改変された抗体では、例えば三機能抗体などの場合、ポリペプチド鎖の2対は必ずしも同一でない。
【0083】
抗体の軽鎖及び重鎖の双方は、「定常」ドメイン及び「可変」ドメインに分割され得る。重鎖及び軽鎖のC末端部分は定常ドメインと称される。「CH1ドメイン」は、可変重(VH)ドメインとヒンジ領域との間に位置する重鎖免疫グロブリン定常ドメインを指す。「CH2ドメイン」は、ヒンジ領域とCH3ドメインとの間に位置する重鎖免疫グロブリン定常ドメインを指す。「CH3ドメイン」は、CH2ドメインのC末端側に位置する重鎖免疫グロブリン定常ドメインを指す。「CH4ドメイン」は、IgM及びIgE抗体におけるCH3ドメインのC末端側に位置する重鎖免疫グロブリン定常ドメインを指す。用語「ヒンジ領域」は、CH1ドメインをCH2ドメインに連結する重鎖分子の一部を指す。「CLドメイン」は、可変軽(VL)ドメインのC末端側に位置する軽鎖免疫グロブリン定常ドメインを指す。
【0084】
各々の重鎖及び軽鎖のN末端は、可変ドメインと称される三次元抗原結合部位の可変領域を規定する。軽(VL)及び重(VH)鎖の双方の可変ドメインは、約100〜110若しくはそれより多くのアミノ酸を含み、主に抗原認識及び特異性に関与する。軽鎖(CL)及び重鎖(CH1、CH2若しくはCH3)の定常ドメインは、分泌、経胎盤性移動度、Fc受容体結合、及び補体結合などの生物学的特性を与える。慣例により、定常領域ドメインの付番は、ドメインが抗体の抗原結合部位又はN末端から遠ざかる方に増加する。
【0085】
本明細書で用いられるとき、用語「重鎖部分」は、VH、CH1ドメイン、ヒンジ領域、CH2ドメイン、CH3ドメイン、又はそれらの変異体若しくは断片のうちの少なくとも1つを含む、免疫グロブリン重鎖に由来するアミノ酸配列を指す。本明細書で用いられるとき、用語「軽鎖部分」は、VL又はCLドメインのうちの少なくとも1つを含む、免疫グロブリン軽鎖に由来するアミノ酸配列を指す。
【0086】
抗体可変領域
一実施形態では、結合分子は、可変断片(Fv)ドメインを含む少なくとも1つの抗原結合ドメインを含む。一実施形態では、結合分子は、抗体重鎖の少なくとも1つのVH及び抗体軽鎖の少なくとも1つのVLを含む少なくとも1つの結合ドメインを含む。さらなる特定の実施形態では、結合分子は、抗体重鎖の少なくとも1つのVH及び抗体軽鎖の少なくとも1つのVLを含む第1の結合ドメイン、並びに抗体重鎖の少なくとも1つのVH及び抗体軽鎖の少なくとも1つのVLを含む第2の結合ドメインを含む。一実施形態では、結合分子は、A型インフルエンザウイルスに結合し、抗体重鎖の少なくとも1つのVH及び抗体軽鎖の少なくとも1つのVLを含む第1の結合ドメイン、並びにB型インフルエンザウイルスに結合し、抗体重鎖の少なくとも1つのVH及び抗体軽鎖の少なくとも1つのVLを含む第2の結合ドメインを含む。A型インフルエンザウイルス及びB型インフルエンザウイルスに結合する、抗体の例示的なVH及びVLドメインは各々、表1及び2に示される。
【0087】
【表1】
【0088】
【表2】
【0089】
一実施形態では、結合分子は、表1及び2に開示されるVH及び/又はVL配列の1つ以上に対して少なくとも特定パーセントの同一性を有する1つ以上のVH及び/又はVLドメインを含む。本明細書で用いられるとき、用語「パーセント(%)配列同一性」又は「相同性」は、配列同一性の一部として保存的置換を全く考慮せずに、最大のパーセント配列同一性を得るため、必要があれば、配列を整列し、ギャップを導入した後の参照配列内、例えば親抗体配列内のアミノ酸残基又はヌクレオチドと同一である候補配列内のアミノ酸残基又はヌクレオチドの百分率を指す。配列アラインメントは、手作業で、あるいはSmith and Waterman,(1981)Ads App.Math.2,482又はNeddleman and Wunsch,(1970)J.MoI.Biol.48,443の相同性アルゴリズムを用いて、Pearson and Lipman,(1988)Proc.Natl Acad.Sci.USA 85,2444の類似性探索法を用いて、又はこれらのアルゴリズムの1つ以上に基づくコンピュータプログラム(Wisconsin Genetics Software Package,Genetics Computer Group,575 Science Drive,Madison、Wis.におけるGAP、BESTFIT、FASTA、BLAST P、BLAST N及びTFASTA)を用いて生成されてもよい。
【0090】
一実施形態では、結合分子は、本明細書に記載のVHアミノ酸配列(例えば表1又は2に示されるものを含む)に対して少なくとも65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%若しくは100%の同一性を有するVHアミノ酸配列を有する1つ以上の結合ドメインを含む。一実施形態では、結合分子は、本明細書に記載のVHアミノ酸配列(例えば表1又は2に示されるものを含む)に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%若しくは100%の同一性を有するVHアミノ酸配列を有する1つ以上の結合ドメインを含む。
【0091】
一実施形態では、結合分子は、本明細書に記載のVLアミノ酸配列(例えば表1又は2に示されるものを含む)に対して少なくとも65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%若しくは100%の同一性を有するVLアミノ酸配列を有する1つ以上の結合ドメインを含む。一実施形態では、結合分子は、本明細書に記載のVLアミノ酸配列(例えば表1又は2に示されるものを含む)に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%若しくは100%の同一性を有するVLアミノ酸配列を有する1つ以上の結合ドメインを含む。
【0092】
一実施形態では、結合分子は、本明細書に記載のVH及びVLアミノ酸配列(例えば表1又は2に示されるものを含む)の各々に対して少なくとも65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%若しくは100%の同一性を有するVH及びVLアミノ酸配列を有する1つ以上の結合ドメインを含む。一実施形態では、結合分子は、本明細書に記載のVH及びVLアミノ酸配列(例えば表1又は2に示されるものを含む)の各々に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%若しくは100%の同一性を有するVH及びVLアミノ酸配列を有する1つ以上の結合ドメインを含む。
【0093】
一実施形態では、結合分子は、表1に示されるVH及びVLアミノ酸配列の各々に対して少なくとも65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%若しくは100%の同一性を有するVH及びVLアミノ酸配列を有する1つ以上の結合ドメインを含む。一実施形態では、結合分子は、表1に示されるVH及びVLアミノ酸配列の各々に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%若しくは100%の同一性を有するVH及びVLアミノ酸配列を有する1つ以上の結合ドメインを含む。
【0094】
一実施形態では、結合分子は、表2に示されるVH及びVLアミノ酸配列の各々に対して少なくとも65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%若しくは100%の同一性を有するVH及びVLアミノ酸配列を有する1つ以上の結合ドメインを含む。一実施形態では、結合分子は、表2に示されるVH及びVLアミノ酸配列の各々に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%若しくは100%の同一性を有するVH及びVLアミノ酸配列を有する1つ以上の結合ドメインを含む。
【0095】
一実施形態では、結合分子は、表1に示されるVH及びVLアミノ酸配列の各々に対して少なくとも65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%若しくは100%の同一性を有するVH及びVLアミノ酸配列を有する第1の結合ドメイン及び表2に示されるVH及びVLアミノ酸配列の各々に対して少なくとも65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%若しくは100%の同一性を有するVH及びVLアミノ酸配列を有する第2の結合ドメインを含む。一実施形態では、結合分子は、表1に示されるVH及びVLアミノ酸配列の各々に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%若しくは100%の同一性を有するVH及びVLアミノ酸配列を有する第1の結合ドメイン及び表2に示されるVH及びVLアミノ酸配列の各々に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%若しくは100%の同一性を有するVH及びVLアミノ酸配列を有する第2の結合ドメインを含む。
【0096】
一実施形態では、結合分子の第1の結合ドメインは、配列番号7;及び配列番号17から選択されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%同一であるアミノ酸配列を有するVHを含む。一実施形態では、結合分子の第1の結合ドメインは、配列番号2;及び配列番号12のVLから選択されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%同一であるアミノ酸配列を有するVLを含む。さらなる特定の実施形態では、結合分子の第1の結合ドメインは、配列番号7のVH及び配列番号2のVL;並びに配列番号17のVH及び配列番号12のVLから選択されるVH及びVLのアミノ酸配列の各々に対して少なくとも75%同一であるVH及びVLを含む。一実施形態では、第1の結合ドメインは、配列番号7のVH及び配列番号2のVL;並びに配列番号17のVH及び配列番号12のVLから選択されるVH及びVLを含む。
【0097】
相補性決定領域(CDR)
天然に存在する抗体では、「相補性決定領域」又は「CDR」と称されるアミノ酸の6つの短い非隣接配列は、各抗原結合ドメイン内に存在する。抗原結合ドメイン内のアミノ酸の残りは「フレームワーク」領域と称される。フレームワーク領域は、CDRを鎖間の非共有的相互作用により正確な配向性で位置づけるスキャフォールドとして機能する。重鎖の3つのCDRは、CDRH1、CDRH2、及びCDRH3と名付けられ、また軽鎖の3つのCDRは、CDRL1、CDRL2、及びCDRL3と名付けられる。
【0098】
CDR及びフレームワーク領域を構築するアミノ酸は、当業者によって容易に同定することができ、Kabat et al.,(1983)U.S.Dept.of Health and Human Services,“Sequences of Proteins of Immunological Interest”及びChothia et al.,(1987)J.Mol.Biol.196:901−917により説明されている。Kabatら及びChothiaらの定義は、重複アミノ酸残基を含む。Kabatら及びChothiaらによって定義されたCDRを包含するアミノ酸残基は、下の表3に示される。特定のCDRを包含する正確な残基数は、CDRの配列及びサイズに応じて変動し得る。当業者は、抗体の可変領域アミノ酸配列として、どの残基が特定のCDR内に存在するかをルーチン的に判定することができる。
【0099】
【表3】
【0100】
いずれかの定義の適用は、本明細書中での定義及び使用に応じて用語「CDR」の範囲内に含まれることが意図される。しかし、特に指定されない限り、結合分子、抗体、抗原結合断片、変異体、又はその誘導体の中の特定のアミノ酸残基位置の付番については、本明細書ではKabatらの付番システムに従う。
【0101】
一実施形態では、抗体の可変ドメイン、相補性決定領域(CDR)及びフレームワーク領域(FR)におけるアミノ酸は、Kabat et al.に従って同定される。残基のKabat付番は、所与の抗体に対して、抗体の配列の相同性領域での「標準の」Kabat付番配列との整列化により決定してもよい。フレームワーク残基の最大整列化は、付番システムにおいて「スペーサー」残基の挿入を必要とし得る。さらに、任意の所与のKabat部位番号での特定の個別残基の同一性は、種間又は対立遺伝子の相違により、抗体鎖から抗体鎖にかけて変化する場合がある。
【0102】
Kabatらの付番システムによると、HCDR1は、約31のアミノ酸(すなわち、最初のシステイン残基後の約9残基)で開始し、約5〜7のアミノ酸を含み、且つ次のチロシン残基で終結する。HCDR2は、CDR−H1の末端後の15の残基で開始し、約16〜19のアミノ酸を含み、次のアルギニン又はリジン残基で終結する。HCDR3は、HCDR2の末端後の約33のアミノ酸残基で開始し、3〜25のアミノ酸を含み、且つ配列W−G−X−G(式中、Xは任意のアミノ酸である)で終結する。LCDR1は、約24の残基(すなわちシステイン残基の後)で開始し、約10〜17の残基を含み、次のチロシン残基で終結する。LCDR2は、LCDR1の末端後の約16の残基で開始し、約7の残基を含む。LCDR3は、LCDR2の末端後の約33の残基で開始し、約7〜11の残基を含み、且つ配列F−G−X−G(式中、Xは任意のアミノ酸である)で終結する。CDRは抗体から抗体にかけて大幅に変化する(また定義によると、Kabatコンセンサス配列との相同性を呈することがない)。Kabat系を用いて付番された本発明の抗体のCDR重鎖及び軽鎖配列は、下の表4及び5に示される。
【0103】
一実施形態では、結合分子は、少なくとも1つ、2つ、3つ、4つ、5つ若しくは6つのCDRを含む。一実施形態では、結合分子は、表4及び5に示される少なくとも1つ、2つ、3つ、4つ、5つ若しくは6つの重鎖CDR(HCDR)を含む。一実施形態では、結合分子は、表4及び5に示される少なくとも1つ、2つ、3つ、4つ、5つ若しくは6つの軽鎖CDR(LCDR)を含む。一実施形態では、結合分子は、表4及び5に示される少なくとも1つ、2つ、3つ、4つ、5つ若しくは6つのHCDR並びに表4及び5に示される少なくとも1つ、2つ、3つ、4つ、5つ若しくは6つのLCDRを含む。
【0104】
【表4】
【0105】
【表5】
【0106】
別の実施形態では、抗体の可変ドメイン、相補性決定領域(CDR)及びフレームワーク領域(FR)におけるアミノ酸は、免疫遺伝学(IMGT)データベース(http://imgt.cines.fr)(Lefranc et al.(2003) Dev Comp Immunol.27(1):55−77)を用いて同定され得る。IMGTデータベースは、免疫グロブリン(IgG)、T細胞受容体(TcR)及び主要組織適合性複合体(MHC)分子についての配列情報を用いて開発されたものであり、抗体λ及びκ軽鎖、重鎖及びT細胞受容体鎖を通じて付番を統一し、すべてであるが異常に長い挿入に対する挿入コードの使用を回避する。IMGTではまた、Kabatらからのフレームワーク(FR)及び相補性決定領域(CDR)の定義、Chothiaらからの超可変ループの特徴づけ、並びにX線回折試験から得られた構造データが考慮され、組み合わされる。IMGT系を用いて付番された、CDR重鎖及び軽鎖配列は、下の表6に示される。
【0107】
【表6】
【0108】
一実施形態では、結合分子は、HCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、LCDR3から選択される1つ以上、例えば、1つ、2つ、3つ、4つ、5つ若しくは6つのCDRを含む1つ以上の結合ドメインを含む。一実施形態では、結合分子は、6つのCDRセット:HCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、LCDR3を含む1つ以上の結合ドメインを含み、ここでCDRは、表4〜6に示されるHCDR及びLCDRから選択される。別の実施形態では、結合分子は、6つのCDRセット:HCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、LCDR3を含む1つ以上の結合ドメインを含み、ここでCDRは、表4〜6に示されるHCDR及びLCDRのアミノ酸配列に対して少なくとも75%、80%、85%、90%、95%若しくは100%同一であるアミノ酸配列を含む。別の実施形態では、結合分子は、6つのCDRセット:HCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、LCDR3を含む1つ以上の結合ドメインを含み、ここでCDRは、表4〜6に示されるHCDR及びLCDRのアミノ酸配列に対して少なくとも95%、96%、97%、98%、99%若しくは100%同一であるアミノ酸配列を含む。
【0109】
一実施形態では、結合分子は、6つのCDRセット:HCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、LCDR3を含む1つ以上の結合ドメインを含み、ここでCDRは、表4に示されるHCDR及びLCDRから選択される。別の実施形態では、結合分子は、6つのCDRセット:HCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、LCDR3を含む1つ以上の結合ドメインを含み、ここでCDRは、表4に示されるHCDR及びLCDRのアミノ酸配列に対して少なくとも75%、80%、85%、90%、95%若しくは100%同一であるアミノ酸配列を含む。別の実施形態では、結合分子は、6つのCDRセット:HCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、LCDR3を含む1つ以上の結合ドメインを含み、ここでCDRは、表4に示されるHCDR及びLCDRのアミノ酸配列に対して少なくとも95%、96%、97%、98%、99%若しくは100%同一であるアミノ酸配列を含む。
【0110】
一実施形態では、結合分子は、6つのCDRセット:HCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、LCDR3を含む1つ以上の結合ドメインを含み、ここでCDRは、表5及び6に示されるHCDR及びLCDRから選択される。別の実施形態では、結合分子は、6つのCDRセット:HCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、LCDR3を含む1つ以上の結合ドメインを含み、ここでCDRは、表5及び6に示されるHCDR及びLCDRのアミノ酸配列に対して少なくとも75%、80%、85%、90%、95%若しくは100%同一であるアミノ酸配列を含む。別の実施形態では、結合分子は、6つのCDRセット:HCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、LCDR3を含む1つ以上の結合ドメインを含み、ここでCDRは、表5及び6に示されるHCDR及びLCDRのアミノ酸配列に対して少なくとも95%、96%、97%、98%、99%若しくは100%同一であるアミノ酸配列を含む。
【0111】
一実施形態では、結合分子は、表4に示される6つのCDRセット:HCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、LCDR3を含む第1の結合ドメイン、並びに表5及び6に示されるHCDR及びLCDRから選択される6つのCDRセット:HCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、LCDR3を含む第2の結合ドメインを含む。別の実施形態では、結合分子は、表4に示されるHCDR及びLCDRのアミノ酸配列に対して少なくとも75%、80%、85%、90%、95%若しくは100%同一であるアミノ酸配列を含む、6つのCDRセット:HCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、LCDR3を含む第1の結合ドメイン、並びに、表5及び6に示されるHCDR及びLCDRのアミノ酸配列に対して少なくとも75%、80%、85%、90%、95%若しくは100%同一であるアミノ酸配列を含む、6つのCDRセット:HCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、LCDR3を含む第2の結合ドメインを含む。別の実施形態では、結合分子は、表4に示されるHCDR及びLCDRのアミノ酸配列に対して少なくとも95%、96%、97%、98%、99%若しくは100%同一であるアミノ酸配列を含む、6つのCDRセット:HCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、LCDR3を含む第1の結合ドメイン、並びに、表5及び6に示されるHCDR及びLCDRのアミノ酸配列に対して少なくとも95%、96%、97%、98%、99%若しくは100%同一であるアミノ酸配列を含む、6つのCDRセット:HCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、LCDR3を含む第2の結合ドメインを含む。
【0112】
一実施形態では、結合分子の第1の結合ドメインは、6つのCDRセット:HCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、LCDR3を含み、ここでCDRは、
(a)配列番号8のHCDR1、配列番号9のHCDR2、配列番号10のHCDR3、配列番号3のLCDR1、配列番号4のLCDR2及び配列番号5のLCDR3の各々;又は
(b)配列番号18のHCDR1、配列番号19のHCDR2、配列番号20のHCDR3、配列番号13のLCDR1、配列番号14のLCDR2、配列番号15のLCDR3の各々
のアミノ酸配列に対して少なくとも75%、80%、85%、90%、95%若しくは100%同一であるアミノ酸配列を個別に有する。
【0113】
一実施形態では、結合分子の第1の結合ドメインは、6つのCDRセット:HCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、LCDR3を含み、ここでCDRは、
(a)配列番号8のHCDR1、配列番号9のHCDR2、配列番号10のHCDR3、配列番号3のLCDR1、配列番号4のLCDR2及び配列番号5のLCDR3の各々;又は
(b)配列番号18のHCDR1、配列番号19のHCDR2、配列番号20のHCDR3、配列番号13のLCDR1、配列番号14のLCDR2、配列番号15のLCDR3の各々
のアミノ酸配列に対して少なくとも95%、96%、97%、98%、99%若しくは100%同一であるアミノ酸配列を個別に有する。
【0114】
一実施形態では、第2の結合ドメインは、6つのCDRセット:HCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、LCDR3を含み、ここでCDRは、
(a)配列番号28のHCDR1、配列番号29のHCDR2、配列番号30のHCDR3、配列番号23のLCDR1、配列番号24のLCDR2及び配列番号25のLCDR3の各々;
(b)配列番号44のHCDR1、配列番号45のHCDR2、配列番号46のHCDR3、配列番号39のLCDR1、配列番号40のLCDR2及び配列番号41のLCDR3の各々;又は
(c)配列番号60のHCDR1、配列番号61のHCDR2、配列番号62のHCDR3、配列番号55のLCDR1、配列番号56のLCDR2、配列番号57のLCDR3の各々
のアミノ酸配列に対して少なくとも75%、80%、85%、90%、95%若しくは100%同一であるアミノ酸配列を個別に有する。
【0115】
一実施形態では、第2の結合ドメインは、6つのCDRセット:HCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、LCDR3を含み、ここでCDRは、
(a)配列番号28のHCDR1、配列番号29のHCDR2、配列番号30のHCDR3、配列番号23のLCDR1、配列番号24のLCDR2及び配列番号25のLCDR3の各々;
(b)配列番号44のHCDR1、配列番号45のHCDR2、配列番号46のHCDR3、配列番号39のLCDR1、配列番号40のLCDR2及び配列番号41のLCDR3の各々;又は
(c)配列番号60のHCDR1、配列番号61のHCDR2、配列番号62のHCDR3、配列番号55のLCDR1、配列番号56のLCDR2、配列番号57のLCDR3の各々
のアミノ酸配列に対して少なくとも95%、96%、97%、98%、99%若しくは100%同一であるアミノ酸配列を個別に有する。
【0116】
フレームワーク領域
重鎖及び軽鎖の可変ドメインは各々、可変ドメインのより高度に保存された部分である4つのフレームワーク領域(FR1、FR2、FR3、FR4)を含む。重鎖の4つのFRは、FRH1、FRH2、FRH3及びFRH4と名付けられ、また軽鎖の4つのFRは、FRL1、FRL2、FRL3及びFRL4と名付けられる。Kabat付番システムを使用して、FRH1は、位置1で開始して約30のアミノ酸で終結し、FRH2は約36〜49のアミノ酸とし、FRH3は約66〜94のアミノ酸とし、またFRH4は約103〜113のアミノ酸とする。一実施形態では、例えば、結合分子の1つ以上の結合ドメインのA型インフルエンザウイルス及び/又はB型インフルエンザウイルスに対する結合親和性を改善又は最適化するため、1つ以上のFR残基の1つ以上の修飾、例えば置換、欠失又は挿入が導入されてもよい。修飾可能なフレームワーク領域残基の例として、抗原に直接的に非共有結合するもの(Amit et al.,Science,233:747−753(1986));CDRの立体構造に対して相互作用する/影響するもの(Chothia et al.,J.Mol.Biol.,196:901−917(1987));及び/又はVL−VH界面に関与するもの(米国特許第5,225,539号明細書)が挙げられる。
【0117】
一実施形態では、結合分子の1つ以上の結合ドメインのFRは、「生殖系列化(germlining)」を意図しての1つ以上のアミノ酸変化を含む。生殖系列化では、抗体の重鎖及び/又は軽鎖のアミノ酸配列が生殖系列の重鎖及び軽鎖のアミノ酸配列と比較される。重鎖及び/又は軽鎖の特定のフレームワーク残基が、例えばファージライブラリーを調製するために用いられる免疫グロブリン遺伝子の体細胞突然変異の結果として生殖系列の立体配置と異なる場合、改変されたフレームワーク残基を生殖系列の立体配置に「逆突然変異する」(すなわち、フレームワークアミノ酸配列を生殖系列フレームワークアミノ酸配列と同じであるように改変する)ことが望ましい場合がある。フレームワーク残基のかかる「逆突然変異」(又は「生殖系列化」)は、特異的突然変異(例えば部位特異的突然変異誘発;PCR媒介性突然変異誘発など)を導入するための標準的な分子生物学的方法によって達成され得る。
【0118】
ジスルフィド結合
本明細書で用いられる用語「ジスルフィド結合」は、2つの硫黄原子間で形成される共有結合を指す。アミノ酸システインは、第2のチオール基とジスルフィド結合若しくは架橋を形成し得るチオール基を含む。大部分の天然に存在するIgG分子では、CH1及びCL領域は、ジスルフィド結合により連結され、2つの重鎖は、ヒンジ領域(典型的にはKabat付番システムを用いると239及び242に対応する位置)として知られる重鎖の可動部において2つのジスルフィド結合により連結される。
【0119】
一実施形態では、例えば、抗体のその抗原への結合を改善するため、1つ以上のアミノ酸置換がフレームワーク領域内でなされ得る。一実施形態では、例えば、1つ以上の鎖間ジスルフィド結合が欠如した結合分子を作製するため;1つ以上の追加的な鎖間ジスルフィド結合を有する結合分子を作製するため;又は1つ以上の鎖間ジスルフィド結合の位置を変化させるため、鎖間ジスルフィド結合に関与する1つ以上のシステイン残基のアミノ酸置換若しくは欠失を設けるようにフレームワーク領域のアミノ酸配列が修飾され得る。
【0120】
一実施形態では、結合分子は、1つ以上のscFvを含む。一実施形態では、scFvは、第1の可変領域ドメインのC末端が第2の可変領域ドメインのN末端に可動性ペプチドリンカーを介して接続されるように、VH及びVLを含む。一実施形態では、可変重(VH)ドメインのC末端が可変軽(VL)ドメインのN末端に接続される。これは「VH−VL」又は「HL」配向性と称され得る。他の実施形態では、可変軽(VL)ドメインのC末端が可変重(VH)ドメインのN末端に接続される。これは「VL−VH」又は「LH」配向性と称され得る。scFvのVH及びVLを連結するリンカー(LS)の長さは変化し得る。一実施形態では、リンカー(LS)は、[GGGGS]n(式中、nは0、1、2、3、4、若しくは5)のアミノ酸配列(配列番号93)を有する。別の実施形態では、リンカー(LS)は、[GGGG]n(式中、nは0、1、2、3、4、若しくは5)のアミノ酸配列(配列番号106)を有する。他の実施形態では、リンカーは、2つの配列の組み合わせを含む。さらなる特定の実施形態では、リンカーは、GGGGSGGGGSGGGGSGGGGSのアミノ酸配列(配列番号92)を含む。
【0121】
他の実施形態では、scFvのVHとVLとの間のジスルフィド結合の位置は、scFvにおける1つ以上のシステイン残基の位置を付加、除去、又は改変することにより変化し得る。一実施形態では、scFvのVHは、(Kabatによる付番として)43位、44位、100位、101位、105位、及びそれらの組み合わせにシステイン残基を含む。一実施形態では、scFvのVLは、(Kabatによる付番として)43位、44位、46位、49位、50位、100位、及びそれらの組み合わせにシステイン残基を含む。一実施形態では、scFvは、VL及びVHがVL100−VH44、VL43−VH105、VL46−VH101、VL49−VH100、VL50−VH100、又はその組み合わせでジスルフィド結合により連結されるように、VL−VH配向性を有する。別の実施形態では、scFvは、VH及びVLがVH44−VL100、VH100−VL49、VH100−VL50、VH101−VL46、VH105−VL43、又はその組み合わせでジスルフィド結合により連結されるように、VH−VL配向性を有する。
【0122】
二重特異性抗体
一実施形態では、結合分子は、「二重特異性抗体」を含む。本明細書で用いられるとき、用語「二重特異性抗体」は、2つの異なる標的分子又は抗原に特異的に結合し得る2つ以上の結合ドメインを有する抗体又はその抗原結合断片を指す。一般に、二重特異性抗体は、「親抗体」と称される、1つ以上、しばしば少なくとも2つ、典型的には2つの異なるモノクローナル抗体の特異性及び特性を単一分子に組み込む。一部の二重特異性抗体は相乗活性を示す。一実施形態では、二重特異性抗体は、1つ以上のA型及び/又はB型インフルエンザ株に対して、親抗体と比べると増強された中和活性を示す。
【0123】
一実施形態では、本明細書に記載の二重特異性抗体は、単一のmAbと比べて拡大された利用範囲を有し、さらにA型インフルエンザウイルスの1つ以上の株に対して増強された中和を示す場合がある。一実施形態では、結合分子は、1つ以上のA型インフルエンザグループ1又は2株に対して増強された中和活性を有する二重特異性抗体である。さらなる特定の実施形態では、結合分子は、サブタイプH1、H2、H5、H6、H8、H9、H11、H12、H13、H16、H17及びH18)から選択される、A型インフルエンザウイルスグループ1株に対して増強された中和活性を有する二重特異性抗体である。さらなる特定の実施形態では、結合分子は、サブタイプH3、H4、H7、H10、H14、及びH15から選択される、A型インフルエンザウイルスグループ2株に対して増強された中和活性を有する二重特異性抗体である。一実施形態では、結合分子は、A型インフルエンザウイルスのH9サブタイプに対して増強された中和活性を有する二重特異性抗体である。
【0124】
一実施形態では、結合分子は、2つを超える結合価を有する二重特異性抗体を含む。例えば、一実施形態では、結合分子は三重特異性抗体を含む。三重特異性抗体は公知であり、当業者に公知の方法を用いて調製され得る(Tutt et al.,(1991)J.Immunol.,147:60)。
【0125】
二重特異性抗体は、トリオーマ及びハイブリッドハイブリドーマなどの細胞株により発現され得るか又は組換え手段により構築され得る(Stroehlein and Heiss,Future Oncol.6:1387−94(2010);Mabry and Snavely,IDrugs.13:543−9(2010))。
【0126】
一実施形態では、結合分子は、重鎖及び軽鎖の少なくとも2つの対を含む二重特異性抗体、又はその結合断片を含み、ここで第1の対は第1の「親」抗体に由来し、第1の結合特異性を有し、第2の対は第2の「親」抗体に由来し、第2の結合特異性を有する。一実施形態では、結合分子は、A型インフルエンザウイルスに特異的に結合する第1の重鎖及び軽鎖の対、又はその断片、並びにB型インフルエンザウイルスに特異的に結合する第2の重鎖及び軽鎖の対、又はその断片を含む。一実施形態では、結合分子は、2つの異なる標的分子又は抗原に特異的な2つ以上の化学的に連結されたFab領域を含む二重特異性抗体を含む。さらなる特定の実施形態では、結合分子は、A型インフルエンザウイルスに特異的に結合する1つ以上のFab領域を含む。別の実施形態では、結合分子は、B型インフルエンザウイルスに特異的に結合する1つ以上のFab領域を含む。別の実施形態では、結合分子は、1つ以上の一本鎖可変断片(scFv)を含む二重特異性抗体を含む。一実施形態では、結合分子は、A型インフルエンザウイルスに特異的に結合する少なくとも1つのscFvを含む。別の実施形態では、結合分子は、B型インフルエンザウイルスに特異的に結合する少なくとも1つのscFvを含む。
【0127】
一実施形態では、結合分子は、IgG抗体と1つ以上の一本鎖結合ドメインを融合することによって形成される二重特異性抗体である。一実施形態では、結合分子は、抗体コア構造(IgA、IgD、IgE、IgG又はIgM)を保持する。他の実施形態では、抗体コア構造(IgA、IgD、IgE、IgG又はIgM)は、例えば、二重、三重又は四重特異性抗体、ミニボディ及び一本鎖形式(scFv、BiS−scFv)において保持されない。別の実施形態では、二重特異性抗体は、2つ以上のFab断片が化学架橋剤と融合されるようなF(ab)2融合体を含み得る。多数の二重特異性抗体形式では、例えば、抗体コア(IgA、IgD、IgE、IgG又はIgM)を結合ドメイン(例えばscFv)又は2つ以上のFab断片若しくはscFvsに融合するため、1つ以上のリンカーが用いられる。一部の実施形態では、Fcドメイン、ひいてはFcエフェクター機能は保持される。他の実施形態では、Fcドメインは保持されない。
【0128】
一実施形態では、結合分子は、「Y」形状分子を形成する2つの重鎖及び2つの軽鎖を有する非対称性IgG様構造を含み、ここで抗体の第1の「アーム」は第1の抗原に特異的に結合し、且つ抗体の第2の「アーム」は第2の抗原に結合する。
【0129】
一実施形態では、結合分子は、1つ以上の重鎖可変領域(VH)を単独で又はヒンジ領域(H)、CH1、CH2、及びCH3ドメインのいずれも不在か、一部若しくは全部と組み合わせて含む、及び/又は1つ以上の軽鎖可変領域(VL)を単独で又はCLドメインと組み合わせて含む、1つ以上の抗体断片、例えば一本鎖抗体を含む。
【0130】
一実施形態では、二重特異性抗体は、1つ以上の一本鎖Fv(scFv)を含む。一実施形態では、二重特異性抗体は、2つ以上のscFvを含む。別の実施形態では、二重特異性抗体は、1つ以上のFvドメイン、例えば1つ以上の重鎖及び1つ以上の軽鎖を含む、免疫グロブリンの「基本的」構造、例えば、IgA、IgD、IgE、IgG又はIgM構造の一部又は全部を含み、ここで1つ以上のscFvは免疫グロブリンの「基本的」構造に融合される。さらなる特定の実施形態では、結合分子は、2つの重鎖及び2つの軽鎖を含むIgG構造を含み、ここで1つ以上のscFvはそれに融合される。
【0131】
一実施形態では、抗体の形式は、本明細書に開示される任意の形式であってもよい。別の実施形態では、形式は、BiS1、BiS2、BiS3、BiS4、又はBiS5のいずれか1つである。一実施形態では、第1の結合ドメインのFvドメインは、アミノ末端及びカルボキシ末端を有する重鎖(HC)並びにアミノ末端及びカルボキシ末端を有する軽鎖(LC)を含み、且つ第2の結合ドメインは、第1の結合ドメインのHCのカルボキシ末端に1つ若しくは2つのリンカーを用いて共有結合される。一実施形態では、第1の結合ドメインのFvドメインは、アミノ末端及びカルボキシ末端を有する重鎖(HC)並びにアミノ末端及びカルボキシ末端を有する軽鎖(LC)を含み、且つ第2の結合ドメインは、第1の結合ドメインのHCのカルボキシ末端に1つのリンカーを用いて共有結合される。一実施形態では、第1の結合ドメインのFvドメインは、アミノ末端及びカルボキシ末端を有する重鎖(HC)並びにアミノ末端及びカルボキシ末端を有する軽鎖(LC)を含み、且つ第2の結合ドメインは、第1の結合ドメインのHCのカルボキシ末端に2つのリンカーを用いて共有結合される。一実施形態では、第1の結合ドメインのFvドメインは、アミノ末端及びカルボキシ末端を有する重鎖(HC)並びにアミノ末端及びカルボキシ末端を有する軽鎖(LC)を含み、且つ第2の結合ドメインは、第1の結合ドメインのHCのアミノ末端に共有結合される。一実施形態では、第1の結合ドメインのFvドメインは、アミノ末端及びカルボキシ末端を有する重鎖(HC)並びにアミノ末端及びカルボキシ末端を有する軽鎖(LC)を含み、且つ第2の結合ドメインは、第1の結合ドメインのLCのアミノ末端に共有結合される。別の実施形態では、第1の結合ドメインのFvドメインは、アミノ末端及びカルボキシ末端を有する重鎖(HC)並びにアミノ末端及びカルボキシ末端を有する軽鎖(LC)を含み、且つ第2の結合ドメインは、第1の結合ドメインのHCのポリペプチド鎖に沿って共有結合的に挿入される。
【0132】
一実施形態では、結合分子は、式VH−CH1−H−CH2−CH3(式中、VHは重鎖可変ドメインであり、CH1は重鎖定常領域ドメイン1であり、Hはヒンジ領域であり、CH2は重鎖定常領域ドメイン2であり、且つCH3は重鎖定常領域ドメイン3である)を有する抗体重鎖を含む二重特異性抗体を含む。一実施形態では、結合分子は、式VL−CL(式中、VLは可変軽鎖ドメインであり、且つCLは軽鎖定常ドメインである)を有する抗体軽鎖を含む二重特異性抗体である。
【0133】
一実施形態では、結合分子は、N末端ドメインを有する抗体重鎖及びN末端ドメインを有する抗体軽鎖を含み、ここで抗体重鎖は、式VH−CH1−H−CH2−CH3(式中、VHは重鎖可変ドメインであり、CH1は重鎖定常領域ドメイン1であり、Hはヒンジ領域であり、CH2は重鎖定常領域ドメイン2であり、且つCH3は重鎖定常領域ドメイン3である)を有し、ここで抗体軽鎖は、式VL−CL(式中、VLは可変軽鎖ドメインであり、且つCLは軽鎖定常ドメインである)を有し、またここで1つ以上のscFv分子が、抗体重鎖又は抗体軽鎖の1つ以上のN末端ドメインに共有結合される(図1)。
【0134】
さらなる特定の実施形態では、抗体又はその断片のN末端ドメインは1つ以上のFvドメインを含み、1つ以上のscFv分子が抗体又はその断片の1つ以上のFvドメインに共有結合される(図1)。さらなる特定の実施形態では、1つ以上のscFv分子が、抗体又はその断片の1つ以上の軽鎖可変ドメイン(VL)のN末端ドメインに共有結合される(図1)。さらなる特定の実施形態では、結合分子は、式scFv−L1−VL−CL(式中、scFvはscFv分子であり、L1はリンカーであり、VLは軽鎖可変ドメインであり、VLは軽鎖可変ドメインであり、且つCLは軽鎖定常ドメインである)を有する抗体軽鎖を含む(図1)。
【0135】
一実施形態では、1つ以上のscFv分子が、抗体又はその断片の1つ以上の重鎖可変ドメイン(VH)のN末端ドメインに共有結合される(図1)。一実施形態では、重鎖は、式scFv−L1−VH−CH1−CH2−CH3(式中、scFvはscFv分子であり、L1はリンカーであり、VHは重鎖可変ドメインであり、CH1は重鎖定常ドメインドメイン1であり、CH2は重鎖定常ドメインドメイン2であり、且つCH3は重鎖定常ドメインドメイン3である)を有する(図1)。
【0136】
別の実施形態では、結合分子は、C末端ドメインを有する抗体又はその断片を含み、ここで1つ以上のscFv分子が、抗体又はその断片のC末端ドメインに共有結合される(図1)。一実施形態では、結合分子は、第1及び第2の重鎖と各々の第1及び第2のC末端ドメインを含み、ここで1つ以上のscFv分子が、第1の重鎖、第2の重鎖、又はその組み合わせのC末端ドメインに共有結合される(図1)。一実施形態では、1つ以上の重鎖は、式VH−CH1−CH2−CH3(式中、VHは重鎖可変ドメインであり、CH1は重鎖定常ドメインドメイン1であり、CH2は重鎖定常ドメインドメイン2であり、且つCH3は重鎖定常ドメインドメイン3である)を有する(図1)。一実施形態では、1つ以上の重鎖は、式VH−CH1−CH2−CH3−L1−scFv(式中、L1はリンカーであり、且つscFvはscFv分子である)を有する(図1)。
【0137】
別の実施形態では、結合分子は、C末端ドメインを有する抗体又はその断片を含み、ここで1つ以上のscFv分子が、抗体又はその断片のC末端ドメインに共有結合される(図1)。一実施形態では、結合分子は、第1及び第2の重鎖と各々の第1及び第2のC末端ドメインを含み、ここで1つ以上のscFv分子が、第1の重鎖、第2の重鎖、又はその組み合わせのC末端ドメインに共有結合される(図1)。一実施形態では、1つ以上の重鎖は、式VH−CH1−CH2−CH3(式中、VHは重鎖可変ドメインであり、CH1は重鎖定常ドメインドメイン1であり、CH2は重鎖定常ドメインドメイン2であり、且つCH3は重鎖定常ドメインドメイン3である)を有する(図1)。一実施形態では、1つ以上の重鎖は、式VH−CH1−CH2−CH3−L1−scFvL2(式中、L1及びL2は独立してリンカーであり、且つscFvはscFv分子である)を有する(図1)。
【0138】
一実施形態では、結合分子は、1つ以上の重鎖定常ドメインを有する抗体又はその断片を含み、ここで1つ以上のscFv分子が、1つ以上の重鎖の1つ以上の重鎖定常ドメイン間に挿入される(図1)。一実施形態では、1つ以上の重鎖は、式VH−CH1−CH2−CH3(式中、VHは重鎖可変ドメインであり、CH1は重鎖定常ドメインドメイン1であり、CH2は重鎖定常ドメインドメイン2であり、且つCH3は重鎖定常ドメインドメイン3である)を有する(図1)。一実施形態では、1つ以上の重鎖は、式VH−CH1−L1−scFv−L2−CH2−CH3(式中、L1及びL2は独立してリンカーであり、且つscFvはscFv分子である)を有する(図1)。一実施形態では、1つ以上の重鎖は、式VH−CH1−CH2−L1−scFv−L2−CH3(式中、L1及びL2は独立してリンカーであり、且つscFvはscFv分子である)を有する。
【0139】
一実施形態では、結合分子は、免疫グロブリン構造、例えば1つ以上のFvドメインを有するIgG構造を含む。一実施形態では、Fvドメインは、表1に示されるVH又はVL配列に対して少なくとも65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%若しくは100%の同一性を有するアミノ酸配列を有するVH及びVL配列を含む。別の実施形態では、Fvドメインは、表1に示されるVH又はVL配列に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%若しくは100%の同一性を有するVH及びVL配列を含む。一実施形態では、Fvドメインは、表2に示されるVH又はVL配列に対して少なくとも65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%若しくは100%の同一性を有するアミノ酸配列を有するVH及びVL配列を含む。別の実施形態では、Fvドメインは、表2に示されるVH又はVL配列に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%若しくは100%の同一性を有するVH及びVL配列を含む。
【0140】
一実施形態では、結合分子は、HCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、LCDR3から選択される、1つ以上、例えば、1つ、2つ、3つ、4つ、5つ若しくは6つのCDRを含む1つ以上の結合ドメインを有する免疫グロブリン構造を含む。一実施形態では、結合分子は、6つのCDRセット:HCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、LCDR3を含む1つ以上の結合ドメインを有する免疫グロブリン構造を含み、ここでCDRは、表4〜6に示されるHCDR及びLCDRから選択される。別の実施形態では、結合分子は、6つのCDRセット:HCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、LCDR3を含む1つ以上の結合ドメインを有する免疫グロブリン構造を含み、ここでCDRは、表4〜6に示されるHCDR及びLCDRのアミノ酸配列に対して少なくとも75%、80%、85%、90%、95%若しくは100%同一であるアミノ酸配列を含む。別の実施形態では、結合分子は、6つのCDRセット:HCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、LCDR3を含む1つ以上の結合ドメインを有する免疫グロブリン構造を含み、ここでCDRは、表4〜6に示されるHCDR及びLCDRのアミノ酸配列に対して少なくとも95%、96%、97%、98%、99%若しくは100%同一であるアミノ酸配列を含む。
【0141】
一実施形態では、結合分子は、式VH−LS−VL又は代替的にVL−LS−VH(式中、LSはリンカー配列である)を有する1つ以上のscFvを含む。一実施形態では、scFvは、表1に示されるVH又はVL配列に対して少なくとも65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%若しくは100%の同一性を有するアミノ酸配列を有するVH及びVL配列を含む。別の実施形態では、scFvは、表1に示されるVH又はVL配列に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%若しくは100%の同一性を有するVH及びVL配列を含む。一実施形態では、scFvは、表2に示されるVH又はVL配列に対して少なくとも65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%若しくは100%の同一性を有するアミノ酸配列を有するVH及びVL配列を含む。別の実施形態では、scFvは、表2に示されるVH又はVL配列に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%若しくは100%の同一性を有するVH及びVL配列を含む。
【0142】
一実施形態では、結合分子は、HCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、LCDR3から選択される1つ以上、例えば、1つ、2つ、3つ、4つ、5つ若しくは6つのCDRを有する1つ以上のscFvを含む。一実施形態では、結合分子は、6つのCDRセット:HCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、LCDR3を有する1つ以上のscFvを含み、ここでCDRは、表4〜6に示されるHCDR及びLCDRから選択される。別の実施形態では、結合分子は、6つのCDRセット:HCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、LCDR3を有する1つ以上のscFvを含み、ここでCDRは、表4〜6に示されるHCDR及びLCDRのアミノ酸配列に対して少なくとも75%、80%、85%、90%、95%若しくは100%同一であるアミノ酸配列を含む。別の実施形態では、結合分子は、6つのCDRセット:HCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、LCDR3を有する1つ以上のscFvを含み、ここでCDRは、表4〜6に示されるHCDR及びLCDRのアミノ酸配列に対して少なくとも95%、96%、97%、98%、99%若しくは100%同一であるアミノ酸配列を含む。
【0143】
一実施形態では、リンカーLSは、(a)[GGGGS]n(式中、nは0、1、2、3、4、若しくは5)(配列番号93)、(b)[GGGG]n(式中、nは0、1、2、3、4、若しくは5)(配列番号106)又は(a)と(b)の組み合わせのアミノ酸配列を有する。例えば、例示的なリンカーは、GGGGSGGGGSGGGGSGGGGS(配列番号92)を含む。一実施形態では、scFvは、免疫グロブリン構造、例えばIgG構造に、(a)[GGGGS]n(式中、nは0、1、2、3、4、若しくは5)(配列番号93)、(b)[GGGG]n(式中、nは0、1、2、3、4、若しくは5)(配列番号106)又は(a)と(b)の組み合わせのアミノ酸配列を有する、例えば、GGGGSGGGGSGGGGSGGGGS(配列番号92)のアミノ酸配列を含むリンカー(L1又はL2)を介して融合される。
【0144】
さらなる特定の実施形態では、結合分子は、表1に示されるVH又はVL配列に対して少なくとも65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%若しくは100%の同一性を有するアミノ酸配列を有するVH及びVL配列、又は表1に示されるVH又はVL配列に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%若しくは100%の同一性を有するVH及びVL配列を含む1つ以上のFvドメインを有する免疫グロブリン構造、例えばIgG構造を含む。一実施形態では、式VH−LS−VL又は代替的にVL−LS−VH(式中、LSはリンカー配列である)を有する1つ以上のscFvは、免疫グロブリン構造に融合され、scFvは、表2に示されるVH又はVL配列に対して少なくとも65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%若しくは100%の同一性を有するアミノ酸配列を有するVH及びVL配列を含む。別の実施形態では、scFvは、表2に示されるVH又はVL配列に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%若しくは100%の同一性を有するVH及びVL配列を含む。一実施形態では、リンカーLSは、(a)[GGGGS]n(式中、nは0、1、2、3、4、若しくは5)(配列番号93)、(b)[GGGG]n(式中、nは0、1、2、3、4、若しくは5)(配列番号106)又は(a)と(b)の組み合わせのアミノ酸配列を有する。例えば、例示的なリンカーは、GGGGSGGGGSGGGGSGGGGS(配列番号92)を含む。一実施形態では、scFvは、免疫グロブリン構造、例えばIgG構造に、(a)[GGGGS]n(式中、nは0、1、2、3、4、若しくは5)(配列番号93)、(b)[GGGG]n(式中、nは0、1、2、3、4、若しくは5)(配列番号106)又は(a)と(b)の組み合わせのアミノ酸配列を有する、例えば、GGGGSGGGGSGGGGSGGGGS(配列番号92)のアミノ酸配列を含むリンカー(L1又はL2)を介して融合される。
【0145】
一実施形態では、結合分子の第1の結合ドメインは、抗A型インフルエンザウイルス抗体又はその抗原結合断片を含む。一実施形態では、結合分子の第2の結合ドメインは、抗B型インフルエンザウイルス抗体又はその抗原結合断片を含む。一実施形態では、第1の結合ドメインは、抗A型インフルエンザウイルスのFvドメインを含む。さらなる特定の実施形態では、結合分子は、抗体重鎖可変ドメイン及び抗体軽鎖可変ドメインを有する可変断片(Fv)ドメインを含み、ここでFvは抗A型インフルエンザウイルスに特異的に結合する。一実施形態では、結合分子は、抗B型インフルエンザウイルスのscFv分子を含む1つ以上の結合ドメインを含む。一実施形態では、結合分子は、抗A型インフルエンザウイルスのFvドメインを含む第1の結合ドメイン及び抗B型インフルエンザウイルスのscFv分子を含む第2の結合ドメインを含む。
【0146】
一実施形態では、結合分子は、配列番号66又は配列番号68のアミノ酸配列に対して少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%若しくは99%同一であるアミノ酸配列を有する軽鎖を含む。一実施形態では、結合分子は、配列番号66又は配列番号68のアミノ酸配列を有する軽鎖を含む。
【0147】
一実施形態では、結合分子は、配列番号67又は配列番号69のアミノ酸配列に対して少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%若しくは99%同一であるアミノ酸配列を有する重鎖を有する、A型インフルエンザウイルス及びB型インフルエンザウイルスに特異的に結合する二重特異性抗体である。一実施形態では、結合分子は、配列番号67又は配列番号69のアミノ酸配列を有する重鎖を有する、A型インフルエンザウイルス及びB型インフルエンザウイルスに特異的に結合する二重特異性抗体である。
【0148】
一実施形態では、結合分子は、配列番号66又は配列番号68のアミノ酸配列に対して少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%若しくは99%同一であるアミノ酸配列を有する軽鎖を含む。一実施形態では、結合分子は、配列番号67又は配列番号69のアミノ酸配列に対して少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%若しくは99%同一であるアミノ酸配列を有する重鎖を含む。一実施形態では、結合分子は、配列番号66又は配列番号68のアミノ酸配列に対して少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%若しくは99%同一であるアミノ酸配列を有する軽鎖及び配列番号67又は配列番号69のアミノ酸配列に対して少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%若しくは99%同一であるアミノ酸配列を有する重鎖を含む、A型インフルエンザウイルス及びB型インフルエンザウイルスに特異的に結合する二重特異性抗体である。
【0149】
一実施形態では、結合分子は、配列番号66又は配列番号68のアミノ酸配列を有する軽鎖及び配列番号67又は配列番号69のアミノ酸配列を有する重鎖を含む、A型インフルエンザウイルス及びB型インフルエンザウイルスに特異的に結合する二重特異性抗体である。一実施形態では、結合分子は、配列番号66のアミノ酸配列を有する軽鎖及び配列番号67のアミノ酸配列を有する重鎖を有する二重特異性抗体である。一実施形態では、結合分子は、配列番号68のアミノ酸配列を有する軽鎖及び配列番号69のアミノ酸配列を有する重鎖を有する二重特異性抗体である。
【0150】
一実施形態では、scFv分子は、3つのCDRセット:HCDR1、HCDR2、HCDR3を有するVHドメインを含み、ここで3つのCDRセットは、表5及び6に示されるHCDRのアミノ酸配列に対して少なくとも75%、80%、85%、90%、95%若しくは100%同一であるアミノ酸配列を含む。別の実施形態では、結合分子は、3つのCDRセット:HCDR1、HCDR2、HCDR3を有するVHドメインを含み、ここで3つのCDRセットは、表5及び6に示されるHCDRのアミノ酸配列に対して少なくとも95%、96%、97%、98%、99%若しくは100%同一であるアミノ酸配列を含む。
【0151】
一実施形態では、scFv分子は、3つのCDRセット:LCDR1、LCDR2、LCDR3を有するVLドメインを含み、ここで3つのCDRセットは、表5及び6に示されるLCDRのアミノ酸配列に対して少なくとも75%、80%、85%、90%、95%若しくは100%同一であるアミノ酸配列を含む。別の実施形態では、結合分子は、3つのCDRセット:LCDR1、LCDR2、LCDR3を有するVLドメインを含み、ここで3つのCDRセットは、表5及び6に示されるLCDRのアミノ酸配列に対して少なくとも95%、96%、97%、98%、99%若しくは100%同一であるアミノ酸配列を含む。
【0152】
さらなる特定の実施形態では、結合分子は、配列番号31、配列番号34、配列番号47、配列番号50、及び配列番号63で示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、又は99%同一であるアミノ酸配列を有する1つ以上のscFvを含む。一実施形態では、結合分子は、配列番号31、配列番号34、配列番号47、配列番号50、及び配列番号63で示されるアミノ酸配列を有する1つ以上のscFvを含む。
【0153】
A型インフルエンザ結合ドメイン
一実施形態では、結合分子は、A型インフルエンザウイルスの少なくとも1つの特定エピトープに免疫特異的に結合する1つ以上の結合ドメインを含む。本明細書で用いられるとき、用語「結合ドメイン」又は「抗原結合ドメイン」は、抗原上のエピトープに特異的に結合する部位を含む。抗体の抗原結合ドメインは、典型的には、免疫グロブリン重鎖可変領域の少なくとも一部及び免疫グロブリン軽鎖可変領域の少なくとも一部を含み、ここでこれらの可変領域によって形成される結合部位は抗体の特異性を決定する。
【0154】
さらなる特定の実施形態では、結合分子は、A型インフルエンザウイルスHAタンパク質の少なくとも1つの特定エピトープに免疫特異的に結合する1つ以上の結合ドメインを含む。用語「エピトープ」は、本明細書で用いられるとき、抗体に結合する能力があるタンパク質決定基を指す。エピトープは通常、アミノ酸又は糖側鎖などの分子の化学的活性表面のグルーピングを含み、通常、特定の三次元構造特性、並びに特定の荷電特性を有する。立体構造及び非立体構造エピトープは、変性溶媒の存在下で前者への結合が失われるが後者では失われない点で区別される。
【0155】
一実施形態では、抗体又はその抗原結合断片は、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17若しくは全部のA型インフルエンザのサブタイプの中で保存されるエピトープに結合する。別の実施形態では、抗体又はその抗原結合断片は、H1、H2、H5、H6、H8、H9、H11、H12、H13、H16、H17、及びH18から選択される、1つ以上、又は少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、若しくは10のA型インフルエンザウイルスのグループ1サブタイプ、並びにH3、H4、H7、H10、H14及びH15から選択される、1つ以上、又は少なくとも1、2、3、4、5、若しくは6のグループ2サブタイプの中で保存されるエピトープに結合する。
【0156】
一実施形態では、抗体又はその抗原結合断片は、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、若しくは17又はすべてのA型インフルエンザのサブタイプに、約0.01ug/ml〜約5ug/mlの間、又は約0.01ug/ml〜約0.5ug/mlの間、又は約0.01ug/ml〜約0.1ug/mlの間、又は約5ug/ml未満、1ug/ml、0.5ug/ml、0.1ug/ml、若しくは0.05ug/mlのEC50で結合する。別の実施形態では、抗体又はその抗原結合断片は、H1、H2、H5、H6、H8、H9、H11、H12、H13、H16、H17、及びH18から選択される、1つ以上、又は少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、若しくは10のA型インフルエンザウイルスのグループ1サブタイプ、並びにH3、H4、H7、H10、H14及びH15から選択される、1つ以上、又は少なくとも1、2、3、4、5、若しくは6のグループ2サブタイプに、約0.01ug/ml〜約5ug/mlの間、又は約0.01ug/ml〜約0.5ug/mlの間、又は約0.01ug/ml〜約0.1ug/mlの間、又は約5ug/ml未満、1ug/ml、0.5ug/ml、0.1ug/ml、若しくは0.05ug/mlのEC50で結合する。
【0157】
一実施形態では、抗体又はその抗原結合断片は、線形エピトープ又は連続エピトープのいずれかであるエピトープを認識する。別の実施形態では、抗体又はその抗原結合断片は、非線形又は立体構造エピトープを認識する。一実施形態では、エピトープは、HA2の高度に保存されたストーク領域内に位置する。さらなる特定の実施形態では、抗体又は抗原結合断片は、HA2の高度に保存されたストーク領域内の立体構造エピトープに結合する(Wilson et al.(1981)Nature.289:366−373)。一実施形態では、エピトープは、接触残基としてのHA2のストーク領域内の18、19、42、45、156、及び196から選択される1つ以上のアミノ酸を含む。さらなる特定の実施形態では、エピトープは、接触残基としてのHA2のストーク領域内の18、19、42及び45から選択される1つ以上のアミノ酸を含む。さらなる実施形態では、エピトープは、接触残基としてのHA2のストーク領域内のアミノ酸18、19、42及び45を含む。さらなる実施形態では、エピトープは、接触残基としてのHA2のストーク領域内のアミノ酸18、19、及び42を含む。
【0158】
B型インフルエンザ結合ドメイン
一実施形態では、結合分子は、B型インフルエンザウイルスの少なくとも1つの特定エピトープに免疫特異的に結合する1つ以上の結合ドメインを含む。さらなる特定の実施形態では、結合分子は、B型インフルエンザウイルスHAタンパク質の少なくとも1つの特定エピトープに免疫特異的に結合する1つ以上の結合ドメインを含む。一実施形態では、結合分子は、少なくとも2つの系統学的に異なるB型インフルエンザ系統に提示されるエピトープに特異的に結合する1つ以上の結合ドメインを含む。さらなる特定の実施形態では、結合分子は、少なくとも1つのB型インフルエンザYamagata株及び少なくとも1つのB型インフルエンザVictoria株に提示されるエピトープに結合する1つ以上の結合ドメインを含む。一実施形態では、結合分子は、Yamagata系統及びVictoria系統の双方のB型インフルエンザウイルスに提示されるエピトープに結合する1つ以上の結合ドメインを含む。一実施形態では、結合メンバーは、Yamagata系統及びVictoria系統の双方のB型インフルエンザの中に保存されるエピトープに結合する1つ以上の結合ドメインを含む。
【0159】
一実施形態では、結合分子は、少なくとも1つのB型インフルエンザYamagata株及び少なくとも1つのB型インフルエンザVictoria株に、約1ng/ml〜約500ng/mlの間、又は約1ng/ml〜約250ng/mlの間、又は約1ng/ml〜約50ng/mlの間、又は約500ng/ml未満、250ng/ml、100ng/ml、50ng/ml、40ng/ml、30ng/ml、20ng/ml、若しくは15μg/mlの最大半量有効濃度(EC50)で結合する1つ以上の結合ドメインを含む。別の実施形態では、結合分子は、Yamagata及びVictoria系統のB型インフルエンザウイルスに、約1ng/ml〜約500ng/mlの間、又は約1ng/ml〜約250ng/mlの間、又は約1ng/ml〜約50ng/mlの間、又は約500ng/ml未満、250ng/ml、100ng/ml、50ng/ml、40ng/ml、30ng/ml、20ng/ml、若しくは15μg/mlのEC50で結合する1つ以上の結合ドメインを含む。一実施形態では、結合分子は、Yamagata系統及びVictoria系統の双方のB型インフルエンザウイルスに提示されるエピトープに、約1ng/ml〜約500ng/mlの間、又は約1ng/ml〜約250ng/mlの間、又は約1ng/ml〜約50ng/mlの間、又は約500ng/ml未満、250ng/ml、100ng/ml、50ng/ml、40ng/ml、30ng/ml、20ng/ml、若しくは15μg/mlのEC50で結合する1つ以上の結合ドメインを含む。
【0160】
一実施形態では、結合分子は、B型インフルエンザYamagata系統に提示されるエピトープに、約1ng/ml〜約100ng/mlの間、1ng/ml〜約50ng/mlの間、又は約1ng/ml〜約25ng/mlの間、又は約50ng/ml若しくは25ng/ml未満のEC50で;B型インフルエンザVictoria系統に提示されるエピトープに、約1ng/ml〜約500ng/mlの間、又は約1ng/ml〜約250ng/mlの間、又は約1ng/ml〜約50ng/mlの間、又は約500ng/ml未満、250ng/ml、100ng/ml若しくは50ng/mlのEC50で結合する1つ以上の結合ドメインを含む。
【0161】
別の実施形態では、結合分子は、B型インフルエンザYamamoto系統に提示されるエピトープに、約1ng/ml〜約100ng/mlの間、1ng/ml〜約50ng/mlの間、又は約1ng/ml〜約25ng/mlの間、又は約50ng/ml若しくは25ng/ml未満のEC50で;B型インフルエンザVictoria系統に提示されるエピトープに、約1ng/ml〜約500ng/mlの間、又は約1ng/ml〜約250ng/mlの間、又は約1ng/ml〜約50ng/mlの間、又は約500ng/ml未満、250ng/ml若しくは100ng/mlのEC50で;並びにA型インフルエンザHA上のエピトープに、約1μg/ml〜約50μg/mlの間、又は約50μg/ml未満、25μg/ml、15μg/ml若しくは10μg/mlのEC50で結合する1つ以上の結合ドメインを含む。別の実施形態では、結合分子は、B型インフルエンザYamagata系統に提示されるエピトープに、約1ng/ml〜約100ng/mlの間、1ng/ml〜約50ng/mlの間、又は約1ng/ml〜約25ng/mlの間、又は約50ng/ml若しくは25ng/ml未満のEC50で;B型インフルエンザVictoria系統に提示されるエピトープに、約1ng/ml〜約500ng/mlの間、又は約1ng/ml〜約250ng/mlの間、又は約1ng/ml〜約50ng/mlの間、又は約500ng/ml未満、250ng/ml若しくは100ng/mlのEC50で;並びにA型インフルエンザH9 HA上のエピトープに、約1μg/ml〜約50μg/mlの間、又は約50μg/ml未満、25μg/ml、15μg/ml若しくは10μg/mlのEC50で結合する1つ以上の結合ドメインを含む。
【0162】
一実施形態では、結合分子は、線形エピトープ又は連続エピトープのいずれかのエピトープを認識する1つ以上の結合ドメインを含む。別の実施形態では、結合分子は、非線形又は立体構造エピトープを認識する1つ以上の結合ドメインを含む。一実施形態では、エピトープは、B型インフルエンザのヘマグルチニン(HA)糖タンパク質上に位置する。さらなる特定の実施形態では、エピトープは、B型インフルエンザのHA糖タンパク質の頭部領域に位置する。一実施形態では、エピトープは、Wang et al.(2008)J.Virol.82(6):3011−20に記載のようなH3付番システムに従って付番される、接触残基としてのB型インフルエンザHAの頭部領域内の128位、141位、150位若しくは235位に1つ以上のアミノ酸を含む。一実施形態では、エピトープは、接触残基としてのB型インフルエンザHAの頭部領域の配列のアミノ酸128を含む。別の実施形態では、エピトープは、接触残基としてのB型インフルエンザHAの頭部領域の配列のアミノ酸141、150及び235を含む。
【0163】
交差反応
一実施形態では、結合分子は、結合分子が認識するか又は特異的に結合する抗原のエピトープ又は部分の観点で説明又は特定され得る。抗体の抗原結合ドメインと特異的に相互作用する標的分子の部分は、「エピトープ」又は「抗原決定基」と称される。標的抗原は、サイズ、立体構造、及び抗原タイプに応じて任意の数のエピトープを含み得る。一実施形態では、結合分子は、本明細書に記載の抗体の1つ以上と同じエピトープに特異的に結合し、及び/又は本明細書に記載の抗体をエピトープへの結合から競合的に阻害することになる。
【0164】
一実施形態では、結合分子の1つ以上の結合ドメインは、A型インフルエンザウイルス及びB型インフルエンザウイルスとの交差反応性を呈する。本明細書で用いられるとき、用語「交差反応性」は、1つの抗原に特異的な結合分子の結合ドメインが第2の抗原と反応する能力を指す。したがって、結合分子は、その形成を誘導したエピトープ以外のエピトープに結合する場合、交差反応性がある。
【0165】
Fc領域
一実施形態では、結合分子は、所望されるエフェクター機能又は血清半減期を提供するようにFc領域内で修飾される抗体である。一実施形態では、Fc領域は、例えば、抗体依存細胞傷害性(ADCC)を介して、又は補体依存性細胞傷害性(CDC)における補体を動員することにより、又はA型インフルエンザ及び/又はB型インフルエンザウイルスでの結合抗体を認識し、その後、抗体依存性細胞食作用(ADCP)における細胞の食作用を引き起こす1つ以上のエフェクターリガンドを発現する非特異的細胞傷害性細胞を動員することにより、又は一部の他の機構により、細胞傷害性を誘導し得る。他の実施形態では、副作用又は治療合併症を最小化するため、エフェクター機能を除去するか又は低下させることが望ましい場合がある。Fcエフェクター機能を増強するとともに、低下させるか又は除去するための方法は公知である。他の実施形態では、Fc領域は、FcRnに対する結合親和性を増加させ、ひいては血清半減期を延長するように修飾され得る。さらに他の実施形態では、Fc領域は、血清半減期を延長するため、PEG又はアルブミンに複合され得る。Fc変異体は、2013年10月2日に出願された米国仮特許出願第61/885,808号明細書、2014年5月23日に出願された米国仮特許出願第62/002,414号明細書、及び2014年7月15日に出願された米国仮特許出願第62/024,804号明細書(それらの開示は本明細書でそれら全体が参照により本明細書中に援用される)により十分に記載されている。
【0166】
結合特性
本明細書に記載される結合分子は、A型インフルエンザウイルス及び/又はB型インフルエンザウイルスのタンパク質、ペプチド、サブユニット、断片、部分又はそれらの任意の組み合わせの少なくとも1つの特定のエピトープ又は抗原決定基に、他のポリペプチドに対して排他的又は優先的に、免疫特異的に結合する。用語「エピトープ」又は「抗原決定基」は、本明細書で用いられるとき、抗体に結合することが可能なタンパク質決定基を指す。一実施形態では、用語「結合」は、本明細書中で特異的結合に関する。これらのタンパク質決定基又はエピトープは通常、アミノ酸又は糖側鎖などの分子の化学的活性表面グルーピングを含み、通常は特定の三次元構造特性、並びに特定の電荷特性を有する。立体構造的及び非立体構造的エピトープは、後者ではなく前者への結合が変性溶媒の存在下で失われるという点で区別される。用語「不連続エピトープ」は、本明細書で用いられるとき、タンパク質の一次配列内の少なくとも2つの分離領域から形成されるタンパク質抗原上の立体構造的エピトープを指す。
【0167】
抗原と抗体の間の相互作用は、他の非共有結合的なタンパク質−タンパク質相互作用の場合と同じである。一般に、4種の結合相互作用、すなわち、(i)水素結合、(ii)分散力、(iii)ルイス酸とルイス塩基の間の静電力、及び(iv)疎水性相互作用が、抗原と抗体の間に存在する。疎水性相互作用は、抗体−抗原相互作用における主な駆動力であり、また分子間引力ではなく非極性基による水の反発に基づくものである(Tanford(1978)Science.200:1012−8)。しかし、特定の物理的力はまた、抗原−抗体結合、例えば異なる抗体結合部位を有するエピトープ形状のフィット又は優遇(fit or complimentary)に寄与する。さらに、他の材料及び抗原は、抗体と交差反応し、それによって利用可能な遊離抗体と競合し得る。
【0168】
抗原と抗体との間の結合の親和性定数及び特異性の測定は、本明細書に記載される結合分子を用いる予防、治療、診断及び研究方法の有効性を判定するのを補助し得る。「結合親和性」は、一般にある分子(例えば抗体)の単一の結合部位とその結合パートナー(例えば抗原)との間での非共有相互作用全体の力を指す。特に指示されない限り、本明細書で用いられるとき、「結合親和性」は、結合ペアのメンバー(例えば抗体及び抗原)間の1:1相互作用を反映する固有の結合親和性を指す。分子XのそのパートナーYに対する親和性は一般に、koff/kon比として算出される平衡解離定数(Kd)によって表され得る。例えば、Chen et al.(1999) J.Mol Biol.293:865−881を参照のこと。低親和性抗体は一般に、抗原に徐々に結合し且つ容易に解離する傾向がある一方、高親和性抗体は一般に、抗原により迅速に結合し且つ結合状態をより長く維持する傾向がある。結合親和性を測定する種々の方法は当該技術分野で公知である。
【0169】
一実施形態では、結合分子は、抗体の可変領域の1つ以上に導入される、1つ以上のアミノ酸改変、例えば、1つ以上の置換、欠失及び/又は付加を含む。別の実施形態では、アミノ酸改変は、フレームワーク領域に導入される。フレームワーク領域残基の1つ以上の変化は、結合分子の抗原に対する結合親和性における改善をもたらす場合がある。一実施形態では、約1〜約5のフレームワーク残基が改変されてもよい。
【0170】
結合親和性を決定するための一方法は、Chen et al.(1999) J.Mol Biol.293:865−881によって記載の目的の抗体のFabバージョン及びその抗原を用いて実施される放射標識抗原結合アッセイ(RIA)によって解離定数「Kd」を測定することを含む。あるいは、Kd値は、BIAcore(商標)−2000又はBIAcore(商標)−3000(BIAcore,Inc.,Piscataway,N.J.)を用いる表面プラズモン共鳴アッセイを用いることにより測定してもよい。オンレートが表面プラズモン共鳴アッセイにより10−1S−1を超える場合、オンレートは、漸増濃度の抗原の存在下での蛍光発光強度の増加及び低下を測定する蛍光クエンチング技術を用いることにより決定され得る。「オンレート」又は「会合の速度」又は「会合速度」又は「kon」はまた、上記と同じ表面プラズモン共鳴技術を用いて決定され得る。
【0171】
結合分子の結合特性の判定に適した方法及び試薬は、当該技術分野で公知であり、及び/又は市販されている(米国特許第6,849,425号明細書;同第6,632,926号明細書;同第6,294,391号明細書;同第6,143,574号明細書)。さらに、かかる動力学分析のために設計された機器及びソフトウェアは市販されている(例えば、Biacore(登録商標)A100、及びBiacore(登録商標)2000機器;Biacore International AB,Uppsala,Sweden)。
【0172】
一実施形態では、結合分子(その抗原結合断片又は変異体を含む)は、それらのA型インフルエンザウイルス;B型インフルエンザウイルス;又はそれらの組み合わせに対する結合親和性の観点で説明又は特定してもよい。典型的には、高親和性を有する抗体は、10−7M未満のKdを有する。一実施形態では、結合分子又はその抗原結合断片は、A型インフルエンザウイルス;B型インフルエンザウイルス;その断片又は変異体;又はそれらの組み合わせに、5×10−7M、10−7M、5×10−8M、10−8M、5×10−9M、10−9M、5×10−10M、10−10M、5×10−11M、10−11M、5×10−12M、10−12M、5×10−13M、10−13M、5×10−14M、10−14M、5×10−15M若しくは10−15M以下の解離定数すなわちKdで結合する。より特定の実施形態では、結合分子又はその抗原結合断片は、A型インフルエンザウイルス;B型インフルエンザウイルス、その断片又は変異体;又はその組み合わせに、5×10−10M、10−10M、5×10−11M、10−11M、5×10−12M若しくは10−12M以下の解離定数すなわちKdで結合する。本発明は、A型インフルエンザウイルス;B型インフルエンザウイルス;又はそれらの組み合わせに、個別の列挙される値のいずれかの間の範囲内にある解離定数すなわちKdで結合する結合分子又はその抗原結合断片を包含する。
【0173】
別の実施形態では、結合分子又はその抗原結合断片は、A型インフルエンザウイルス;B型インフルエンザウイルス;その断片又は変異体;又はそれらの組み合わせに、5×10−2−1、10−2−1、5×10−3−1若しくは10−3−1、5×10−4−1、10−4−1、5×10−5−1、若しくは10−5−1、5×10−6−1、10−6−1、5×10−7−1若しくは10−7−1以下のオフレート(koff)で結合する。より特定の実施形態では、結合分子又はその抗原結合断片は、A型インフルエンザポリペプチド又はその断片若しくは変異体に、5×10−4−1、10−4−1、5×10−5−1、若しくは10−5−1、5×10−6−1、10−6−1、5×10−7−1若しくは10−7−1以下のオフレート(koff)で結合する。本発明はまた、A型インフルエンザウイルス;B型インフルエンザウイルス;又はそれらの組み合わせに、個々の列挙される値のいずれかの間の範囲内にあるオフレート(koff)で結合する結合分子又はその抗原結合断片を包含する。
【0174】
別の実施形態では、結合分子又はその抗原結合断片は、A型インフルエンザウイルス;B型インフルエンザウイルス;その断片又は変異体;又はそれらの組み合わせに、10−1−1、5×10−1−1、10−1−1、5×10−1−1、10−1−1、5×10−1−1、10−1−1、5×10−1−1、10−1−1、若しくは5×10−1−1以上のオンレート(kon)で結合する。より特定の実施形態では、結合分子又はその抗原結合断片は、A型インフルエンザウイルス;B型インフルエンザウイルス;その断片又は変異体;又はそれらの組み合わせに、10−1−1、5×10−1−1、10−1−1、5×10−1−1、10−1−1若しくは5×10−1−1以上のオンレート(kon)で結合する。本発明は、A型インフルエンザウイルス;B型インフルエンザウイルス;又はそれらの組み合わせに、個別の列挙される値のいずれかの間の範囲内にあるオンレート(kon)で結合する抗体を包含する。
【0175】
一実施形態では、結合アッセイは、直接結合アッセイ又は競合結合アッセイのいずれかとして実施してもよい。結合は、標準ELISA又は標準フローサイトメトリーアッセイを用いて検出され得る。直接結合アッセイでは、候補の結合分子又は抗体が、その同族抗原への結合について試験される。他方、競合結合アッセイでは、候補の結合分子又は抗体が特定の抗原、例えばA型インフルエンザウイルスHA又はB型インフルエンザウイルスHAに結合する既知の抗体又は他の化合物と競合する能力が評価される。一般に、本明細書に開示される結合分子の結合特性を検出及び測定するため、結合分子と検出可能なA型インフルエンザウイルスHA及び/又はB型インフルエンザウイルスHAとの結合を可能にする任意の方法を用いることができる。
【0176】
一実施形態では、結合分子は、A型インフルエンザウイルスHA及び/又はB型インフルエンザウイルスHAに免疫特異的に結合する能力があり、A型インフルエンザウイルス及び/又はB型インフルエンザウイルス感染を中和する能力がある。
【0177】
一実施形態では、結合分子の少なくとも1つの結合ドメインは、A型インフルエンザウイルスHAに免疫特異的に結合する能力があり、A型インフルエンザウイルス感染を中和する能力がある。A型インフルエンザウイルスのヘマグルチニンサブタイプは、サブタイプH1、H2、H5、H6、H8、H9、H11、H12、H13、H16、H17、及びH18を含むグループ1並びにサブタイプH3、H4、H7、H10、H14、及びH15を含むグループ2として同定された、2つの主要な系統学的なグルーピングに該当する。一実施形態では、結合分子又はその結合断片の少なくとも1つの結合ドメインは、H1、H2、H5、H6、H8、H9、H11、H12、H13、H16、H17、及びH18から選択される1つ以上のA型インフルエンザウイルスのグループ1サブタイプ及びその変異体に対して結合及び/又は中和する能力がある。別の実施形態では、結合分子又はその結合断片の少なくとも1つの結合ドメインは、H3、H4、H7、H10、H14及びH15から選択される1つ以上のA型インフルエンザウイルスのグループ2サブタイプ及びその変異体に対して結合及び/又は中和する能力がある。一実施形態では、結合分子は、A型インフルエンザウイルスのグループ1サブタイプH9に免疫特異的に結合する能力がある1つ以上の結合ドメインを含む。一実施形態では、結合分子は、A型インフルエンザウイルスのグループ1サブタイプH9に対して免疫特異的に結合し且つ中和する能力がある1つ以上の結合ドメインを含む。
【0178】
一実施形態では、結合分子の少なくとも1つの結合ドメインは、少なくとも1つのYamagata系統のB型インフルエンザウイルス及び少なくとも1つのVictoria系統のB型インフルエンザウイルスに対して免疫特異的に結合し且つ中和する能力がある。別の実施形態では、結合分子の少なくとも1つの結合ドメインは、Yamagata系統及びVictoria系統の双方のB型インフルエンザウイルスに対して免疫特異的に結合し且つ中和する。
【0179】
一実施形態では、結合分子又はその抗原結合断片の少なくとも1つの結合ドメインは、A型インフルエンザウイルスHA及びB型インフルエンザウイルスHAの双方に免疫特異的に結合し、且つA型インフルエンザウイルス感染及びB型インフルエンザウイルス感染の双方を中和する能力がある。中和アッセイは、当該技術分野で公知の方法を用いて実施され得る。用語「阻害濃度50%」(「IC50」と略記される)は、A型インフルエンザウイルス及び/又はB型インフルエンザウイルスの50%の中和のために必要とされる阻害剤(例えば本明細書で記載される結合分子)の濃度を表す。より低いIC50値がより強力な阻害剤に対応することは当業者によって理解されるであろう。
【0180】
一実施形態では、結合分子又はその結合断片は、マイクロ中和アッセイにおける約0.001μg/ml〜約5μg/mlの範囲内、又は抗体での約0.001μg/ml〜約1μg/mlの範囲内、又は5μg/ml未満、2μg/ml未満、1μg/ml未満、0.5μg/ml未満、0.1μg/ml未満、0.05μg/ml未満若しくは0.01μg/ml未満の、A型インフルエンザウイルス及び/又はB型インフルエンザウイルスを中和するためのIC50を有する。
【0181】
一実施形態では、本発明に記載の抗体又はその抗原結合断片は、マイクロ中和アッセイにおける、約0.001μg/ml〜約5μg/mlの範囲内、又は抗体の約0.001μg/ml〜約1μg/mlの範囲内、又は5μg/ml未満、2μg/ml未満、1μg/ml未満、0.5μg/ml未満、0.1μg/ml未満、0.05μg/ml未満若しくは0.01μg/ml未満の、B型インフルエンザウイルスを中和するためのIC50;及び、マイクロ中和アッセイにおけるA型インフルエンザウイルスの中和のための、約0.1μg/ml〜約5μg/mlの範囲内、又は抗体の約0.1μg/ml〜約2μg/mlの範囲内、又は5μg/ml未満、2μg/ml未満、1μg/ml未満、若しくは0.5μg/ml未満の、A型インフルエンザウイルスを中和するためのIC50を有する。
【0182】
一実施形態では、本発明に記載の抗体又はその抗原結合断片は、マイクロ中和アッセイにおける、約0.001μg/ml〜約50μg/mlの範囲内、又は抗体の約0.001μg/ml〜約5μg/mlの範囲内、又は抗体の約0.001μg/ml〜約1μg/mlの範囲内、又は10μg/ml未満、5μg/ml未満、1μg/ml未満、0.5μg/ml未満、0.1μg/ml未満、0.05μg/ml若しくは0.01μg/ml未満の、B型インフルエンザウイルスを中和するためのIC50;及び、マイクロ中和アッセイにおけるA型インフルエンザウイルスの中和のための、約0.01μg/ml〜約50μg/mlの範囲内、又は抗体の約0.05μg/ml〜約5μg/mlの範囲内、又は抗体の約0.1μg/ml〜約2μg/mlの範囲内、又は50μg/ml未満、25μg/ml未満、10μg/ml未満、5μg/ml未満、又は2μg/ml未満の、A型インフルエンザウイルスを中和するためのIC50を有する。
【0183】
特定の実施形態では、本明細書に記載される結合分子は、細胞死を誘導しうる。「細胞死を誘導する」抗体は、生細胞を生育不能に至らしめるものである。細胞死は、補体及び免疫エフェクター細胞の不在下でインビトロで測定し、抗体依存細胞傷害性(ADCC)又は補体依存性細胞傷害性(CDC)によって誘導される細胞死を区別することができる。従って、細胞死用のアッセイは、熱不活化血清を用いて(すなわち補体の不在下で)且つ免疫エフェクター細胞の不在下で実施してもよい。抗体が細胞死を誘導することができるか否かを判定するため、ヨウ化プロピジウム(PI)、トリパンブルー(Moore et al.(1995)Cytotechnology 17:1−11を参照のこと)、7AADの取り込み又は当該技術分野で周知の方法によって評価される膜完全性の欠損は、未処理細胞と比べて評価することができる。
【0184】
一実施形態では、結合分子は、アポトーシスを介して細胞死を誘導し得る。「アポトーシスを誘導する」結合分子は、アネキシンVの結合、DNAの断片化、細胞収縮、小胞体の拡大、細胞断片化、及び/又は(アポトーシス体と呼ばれる)膜小胞の形成によって判定されるプログラム細胞死を誘導するものである。アポトーシスに関連した細胞事象を評価するための様々な方法が利用可能である。例えば、ホスファチジルセリン(PS)転座は、アネキシンの結合によって測定可能であり、DNA断片化は、DNAラダリングを通じて評価可能であり、またDNA断片化に伴う核/クロマチン凝縮は、低二倍体細胞での任意の増加によって評価可能である。一実施形態では、アポトーシスを誘導する抗体は、アネキシン結合アッセイにおいて、未処理細胞と比べて約2〜50倍、一実施形態では約5〜50倍、また一実施形態では約10〜50倍のアネキシン結合の誘導をもたらすものである。
【0185】
別の実施形態では、本明細書に記載される結合分子は、抗体依存細胞傷害性(ADCC)及び/又は補体依存性細胞傷害性(CDC)及び/又は抗体依存性細胞媒介性食作用(ADCP)を介して細胞死を誘導し得る。ヒトIgG1サブクラス抗体のADCC活性及びCDC活性の発現は、一般に、抗体のFc領域の、キラー細胞、ナチュラルキラー細胞又は活性化マクロファージなどのエフェクター細胞の表面上に存在する抗体に対する受容体(以降「FcγR」と称される)への結合を含む。様々な補体成分が結合され得る。その結合に関しては、抗体のヒンジ領域内の数個のアミノ酸残基及びC領域の2番目のドメイン(以降「Cγ2ドメイン」と称される)が重要であり(Greenwood et al.(1993)Eur.J.Immunol.23(5):1098−104;Morgan et al.(1995)Immunology.86(2):319−324;Clark,M.(1997)Chemical Immunology.65:88−110)、Cγ2ドメイン内の糖鎖(Clark,M.(1997)Chemical Immunology.65:88−110)もまた重要であることが示唆されている。
【0186】
ADCC活性を評価するため、インビトロADCCアッセイ、例えば米国特許第5,500,362号明細書に記載のものを用いることができる。同アッセイはまた、市販のキット、例えばCytoTox96(登録商標)(Promega)を用いて実施してもよい。かかるアッセイに有用なエフェクター細胞として、限定はされないが、末梢血単核球(PBMC)、ナチュラルキラー(NK)細胞、及びNK細胞株が挙げられる。トランスジェニックFc受容体(例えばCD16)及び関連のシグナル伝達ポリペプチド(例えばFCεRI−γ)を発現するNK細胞株は、エフェクター細胞としても役立ち得る(国際公開第2006/023148号パンフレット)。一実施形態では、NK細胞株は、CD16を含み、且つNFATプロモーター下でルシフェラーゼを有し、細胞溶解又は細胞死ではなくNK細胞活性化を測定するために用いることができる。NK細胞の代わりにJurkat細胞を用いる類似の技術が、Promegaにより販売されている(Promega ADCCレポーターバイオアッセイ#G7010)。例えば、任意の特定の抗体が補体活性化及び/又はADCCにより溶解を媒介する能力はアッセイ可能である。目的の細胞はインビトロで成長し、標識され、結合分子は、抗原抗体複合体により活性化され得る免疫細胞、すなわちADCC応答に関与するエフェクター細胞と組み合わせて細胞培養物に添加される。結合分子はまた、補体活性化について試験され得る。いずれの場合でも、細胞溶解は溶解細胞からの標識の放出により検出される。細胞溶解の程度はまた、細胞質タンパク質(例えばLDH)の上清への放出を検出することにより判定してもよい。事実、抗体は、患者自身の血清を補体及び/又は免疫細胞の供給源として用いてスクリーニング可能である。次に、インビトロ試験においてヒトADCCを媒介することが可能な結合分子は、その特定の患者において治療的に用いることができる。結合分子のADCC活性はまた、例えば、Clynes et al.(1998) Proc.Natl.Acad.Sci.USA95:652−656に開示されたものなどの動物モデルで、インビボで評価され得る。さらに、抗体のADCC、及び任意選択的にはCDC活性のレベルを調節する(すなわち増加又は低下させる)ための技術は、当該技術分野で周知である(例えば、米国特許第5,624,821号明細書;米国特許第6,194,551号明細書;米国特許第7,317,091号明細書)。本明細書に記載される結合分子は、ADCC及び/又はCDCを誘導する能力があり得るか、又はその能力を有するように修飾されていてもよい。ADCC機能を判定するためのアッセイは、ヒトADCC機能を評価するため、ヒトエフェクター細胞を用いて実行され得る。かかるアッセイはまた、壊死及び/又はアポトーシス機構により細胞死を誘導、媒介、増強、遮断する抗体についてスクリーニングするように意図されたものを含み得る。生存可能な色素を利用するアッセイ、カスパーゼを検出し、分析する方法、及びDNA切断を測定するアッセイを含むかかる方法は、目的の抗体とともにインビトロで培養された細胞のアポトーシス活性を評価するため、用いることができる。
【0187】
ポリヌクレオチド
さらに本明細書に提供されるのは、アミノ酸配列に対応し、本明細書に記載の結合分子をコードするヌクレオチド配列である。一実施形態では、本発明は、例えば、CDR及びFRを含むVH及びVL領域をコードするポリヌクレオチド配列並びに細胞(例えば哺乳動物細胞)内での効率的発現のための発現ベクターを含む、本明細書に記載の結合分子又はその断片をコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドを提供する。ポリヌクレオチドを用いて結合分子を作製する方法は公知であり、後に簡潔に説明される。
【0188】
さらに含まれるのは、例えば本明細書で定義される通り、本明細書に記載の結合分子又はその断片をコードするポリヌクレオチドに対してストリンジェントな又はより低いストリンジェンシーのハイブリダイゼーション条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドである。用語「ストリンジェンシー」は、本明細書で用いられるとき、プローブとフィルタ結合核酸との間の相同性の程度を表すためのハイブリダイゼーション実験の実験条件(例えば温度及び塩濃度)を指し、ストリンジェンシーが高まると、プローブとフィルタ結合核酸との間のパーセント相同性が高まる。
【0189】
ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件は、限定はされないが、約45℃、6×塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム(SSC)中でのフィルタ結合DNAに対するハイブリダイゼーションとその後の約50〜65℃、0.2×SSC/0.1%SDSでの1回以上の洗浄、高度にストリンジェントな条件、例えば、約45℃、6×SSC中でのフィルタ結合DNAに対するハイブリダイゼーションとその後の約65℃、0.1×SSC/0.2%SDSでの1回以上の洗浄、又は当業者に公知の任意の他のストリンジェントなハイブリダイゼーション条件を含む(例えば、Ausubel et al.,eds.(1989)Current Protocols in Molecular Biology,vol.1,Green Publishing Associates,Inc.及びJohn Wiley and Sons,Inc.,NY at pages 6.3.1 to 6.3.6 and 2.10.3を参照)。
【0190】
実質的に同一な配列は、多形配列、すなわち、集団内の代替配列又は対立遺伝子を含む。対立遺伝子の差異は、1つの塩基対と同程度に小さくてもよい。実質的に同一な配列はまた、サイレント突然変異を有する配列を含む突然変異誘発配列を含んでもよい。突然変異は、1つ以上の残基変化、1つ以上の残基の欠失、又は1つ以上のさらなる残基の挿入を含んでもよい。
【0191】
当該技術分野で公知の任意の方法により、ポリヌクレオチドを入手し、ポリヌクレオチドのヌクレオチド配列を決定してもよい。例えば、結合分子のヌクレオチド配列が公知である場合、結合分子をコードするポリヌクレオチドは、化学合成されたオリゴヌクレオチドから構築されてもよい(例えば、Kutmeier et al.(1994)BioTechniques.17:242に記載の通り)、つまり、結合分子をコードする配列の部分を含むオーバーラップオリゴヌクレオチドの合成、それらのオリゴヌクレオチドのアニーリング及びライゲーション、それに続く連結されたオリゴヌクレオチドのPCRによる増幅を含む。
【0192】
結合分子をコードするポリヌクレオチドはまた、好適な供給源由来の核酸から作製されてもよい。特定の結合分子をコードする核酸を含むクローンが利用可能でないが、結合分子の配列が公知である場合、免疫グロブリンをコードする核酸は、化学的に合成されるか、又は好適な供給源(例えば、抗体cDNAライブラリー、又はそれから作製されるcDNAライブラリー、又は抗体を発現する任意の組織若しくは細胞、例えば抗体を発現するために選択されたハイブリドーマ細胞から単離された核酸、一実施形態ではポリA+RNA)から、配列の3’及び5’末端にハイブリダイズ可能な合成プライマーを用いるPCR増幅により、若しくは例えば抗体をコードするcDNAライブラリー由来のcDNAクローンを同定するための特定の遺伝子配列に特異的なオリゴヌクレオチドプローブを用いるクローニングにより入手されてもよい。次に、PCRにより生成される増幅された核酸は、当該技術分野で周知の任意の方法を用いて複製可能なクローニングベクターにクローン化されてもよい。
【0193】
一旦結合分子のヌクレオチド配列及び対応するアミノ酸配列が決定されると、結合分子のヌクレオチド配列は、異なるアミノ酸配列を有する結合分子を作製するため、例えばアミノ酸置換、欠失、及び/又は挿入を作出するため、ヌクレオチド配列の操作のための当該技術分野で周知の方法、例えば組換えDNA技術、部位特異的突然変異誘発、PCRなどを用いて操作されてもよい(例えば、Sambrook et al.(1990)Molecular Cloning,A Laboratory Manual,2d Ed.,Cold Spring Harbor Laboratory,Cold Spring Harbor,N.Y.and Ausubel et al.eds.(1998)Current Protocols in Molecular Biology,John Wiley & Sons,NYに記載の技術を参照)。
【0194】
結合分子の作製
ポリペプチド、例えば本明細書に記載の結合分子を作製し、それについてスクリーニングするための組換えDNA法は、ルーチン的であり、当該技術分野で周知である(例えば、米国特許第4,816,567号明細書)。結合分子又はその断片をコードするDNA、例えば、VHドメイン、VLドメイン、scFv、又はその組み合わせをコードするDNAは、結合分子を得るため、好適な発現ベクターに挿入され得、次に好適な宿主細胞、例えば大腸菌(E.Coli)細胞、サルCOS細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、又は通常では抗体タンパク質を産生しない骨髄腫細胞に遺伝子導入される。
【0195】
一実施形態では、プロモーターに作動可能に連結された、結合分子、結合分子若しくはその結合ドメインの重鎖若しくは軽鎖、結合ドメインの重鎖若しくは軽鎖可変ドメイン、又は重鎖又は軽鎖CDRをコードするポリヌクレオチドを有する発現ベクター。かかるベクターは、抗体分子の定常領域をコードするヌクレオチド配列を含んでもよく(例えば、米国特許第5,981,216号明細書;米国特許第5,591,639号明細書;米国特許第5,658,759号明細書及び米国特許第5,122,464号明細書を参照)、また抗体の可変ドメインは、全重鎖、全軽鎖、又は全重鎖及び全軽鎖の双方の発現のため、かかるベクターにクローン化されてもよい。
【0196】
発現ベクターを従来の技術により宿主細胞に導入し、遺伝子導入細胞を従来の技術により培養することで、結合分子を作製することができる。一実施形態では、異種プロモーターに作動可能に連結される、結合分子又はその断片、又はその重鎖又は軽鎖、又はその部分、又は一本鎖抗体をコードするポリヌクレオチドを有する宿主細胞が提供される。
【0197】
組換え抗体の発現用宿主として適する哺乳類細胞株は、当該技術分野において周知されており、アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(American Type Culture Collection:ATCC)から入手可能な多くの不死化細胞株、限定はされないが、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、ヒーラー細胞、ベビーハムスター腎(BHK)細胞、サル腎細胞(COS)、ヒト肝細胞癌細胞(例えば、Hep G2)、ヒト上皮腎293細胞、及び数多くの他の細胞株が挙げられる。異なる宿主細胞は、タンパク質及び遺伝子産物の翻訳後プロセシング及び修飾について特徴的で特異的な機構を有する。発現させた抗体又はその一部分の正しい修飾及びプロセシングが確実となるように、適切な細胞株又は宿主系を選択することができる。このため、適切な一次転写物のプロセシング、遺伝子産物のグリコシル化及びリン酸化のための細胞機構を有する真核生物宿主細胞が用いられ得る。かかる哺乳類宿主細胞としては、限定はされないが、CHO、VERY、BHK、ヒーラー、COS、MDCK、293、3T3、W138、BT483、Hs578T、HTB2、BT2O及びT47D、NS0(いかなる機能性免疫グロブリン鎖も内因的に産生しないマウス骨髄腫細胞株)、SP20、CRL7O3O及びHsS78Bst細胞が挙げられる。ヒトリンパ球を不死化することにより開発されたヒト細胞株を使用してモノクローナル抗体を組換え産生することができる。ヒト細胞株PER.C6(登録商標).(Crucell,オランダ)を使用してモノクローナル抗体を組換え産生することができる。
【0198】
組換え抗体の発現用宿主として用いられ得るさらなる細胞株としては、限定はされないが、昆虫細胞(例えばSf21/Sf9、イラクサギンウワバ(Trichoplusia ni)Bti−Tn5b1−4)又は酵母細胞(例えばS.セレビシエ(S.cerevisiae)、ピキア属(Pichia)、米国特許第7326681号明細書;他)、植物細胞(米国特許出願公開第20080066200号明細書);及びニワトリ細胞(国際公開第2008142124号パンフレット)が挙げられる。
【0199】
一実施形態では、結合分子は、細胞株で安定して発現させる。安定発現は、組換えタンパク質の長期高収率産生に用いることができる。安定発現のために、宿主細胞を、発現制御エレメント(例えば、プロモーター、エンハンサー、転写ターミネーター、ポリアデニル化部位等)と、選択可能なマーカー遺伝子とを含む適切に操作されたベクターで形質転換することができる。外来DNAの導入後、細胞を1〜2日間強化培地で成長させ、次に選択培地に切り換える。組換えプラスミドにおける選択可能なマーカーが選択に対する耐性を付与し、プラスミドをその染色体に安定的に組み込んだ細胞の成長及びフォーカスの形成を可能にすることで、次にはそのフォーカスをクローニングし、細胞株へと拡大することができる。安定細胞株を高収率で作製する方法は当該技術分野において周知されており、概して試薬が市販されている。
【0200】
一実施形態では、結合分子は、細胞株で一過性に発現させる。一過性トランスフェクションは、細胞に導入された核酸が当該細胞のゲノム又は染色体DNAに組み込まれないプロセスであり、染色体外要素、例えばエピソームとして細胞に維持される。
【0201】
細胞株は、安定的にトランスフェクトされるものも、或いは一過性にトランスフェクトされるものも、結合分子の発現及び産生をもたらす当該技術分野において公知の細胞培養培地及び条件に維持される。特定の実施形態では、哺乳類細胞培養培地は、例えばDMEM又はHam F12を含む市販の培地製剤をベースとする。他の実施形態では、細胞培養培地は、細胞成長及び生物学的タンパク質発現の両方の増加を支援するように修飾される。本明細書で使用されるとき、用語「細胞培養培地」、「培養培地」、及び「培地製剤」は、多細胞生物又は組織の外部の人工インビトロ環境で細胞を維持し、成長させ、増殖させ、又は拡大するための栄養溶液を指す。細胞培養培地は、例えば、細胞の成長を促進するように配合された細胞培養成長培地、又は組換えタンパク質産生を促進するように配合された細胞培養産生培地を含め、特定の細胞培養用途に最適化され得る。用語の栄養素、成分、及び構成成分は、本明細書では、細胞培養培地を構成する構成物を指して同義的に使用される。
【0202】
一実施形態では、細胞株は流加法を用いて維持される。本明細書で使用されるとき、「流加法」は、初めに基礎培地でインキュベートされた後、細胞培養物にさらなる栄養素が供給される方法を指す。例えば、流加法は、所与の時間内に所定の補給スケジュールに従い補足培地を添加することを含み得る。従って、「流加細胞培養物」は、細胞、典型的には哺乳類細胞、及び培養培地が培養槽に最初に供給され、且つ培養終了前の定期的な細胞及び/又は産物の回収を伴い、又は伴わずさらなる培養栄養素が培養中に培養物に対して連続的に、又は不連続に徐々に補給される細胞培養物を指す。
【0203】
細胞培養培地及びそこに含まれる栄養素は、当業者に周知されている。一実施形態では、細胞培養培地は、基礎培地と、少なくとも1つの加水分解物、例えば、大豆ベースの加水分解物、酵母ベースの加水分解物、又はこれらの2種類の加水分解物の組み合わせとを含むことで、変法基礎培地をもたらす。別の実施形態では、さらなる栄養素は、濃縮基礎培地など、基礎培地のみを含んでもよく、又は加水分解物、若しくは濃縮加水分解物のみを含んでもよい。好適な基礎培地としては、限定はされないが、ダルベッコ変法イーグル培地(DMEM)、DME/F12、最小必須培地(MEM)、イーグル基礎培地(BME)、RPMI 1640、F−10、F−12、α−最小必須培地(α−MEM)、グラスゴー最小必須培地(G−MEM)、PF CHO(例えば、CHOタンパク質不含培地(Sigma)又はCHO細胞用タンパク質不含EX−CELL(商標)325 PF CHO無血清培地(SAFC Bioscience)を参照のこと、及びイスコフ改変ダルベッコ培地が挙げられる。本発明において用いられ得る基礎培地の他の例としては、BME基礎培地(Gibco−Invitrogen;Eagle,H(1965)Proc.Soc.Exp.Biol.Med.89,36もまた参照のこと);ダルベッコ変法イーグル培地(DMEM、粉末)(Gibco−Invitrogen(#31600);Dulbecco and Freeman(1959)Virology.8:396;Smith et al.(1960)Virology.12:185.Tissue Culture Standards Committee,In Vitro 6:2,93もまた参照のこと);CMRL 1066培地(Gibco−Invitrogen(#11530);Parker et al.(1957)Special Publications,N.Y.Academy of Sciences,5:303もまた参照のこと)が挙げられる。
【0204】
基礎培地は無血清、つまり培地は血清(例えば、ウシ胎仔血清(FBS)、ウマ血清、ヤギ血清、又は当業者に公知の任意の他の動物由来血清)を含有しないか、又は動物性タンパク質不含培地又は化学限定培地であってもよい。
【0205】
基礎培地は、様々な無機及び有機緩衝剤、1つ又は複数の界面活性剤、及び塩化ナトリウムなどの、標準的な基礎培地に見られる特定の非栄養成分を除去するため、修飾され得る。基礎細胞培地からかかる構成成分を除去することにより、残りの栄養成分の濃度を高めることができ、細胞成長及びタンパク質発現が全体的に向上し得る。加えて、取り除いた構成成分を、細胞培養条件の要件に応じて、変法基礎細胞培地を含有する細胞培養培地に加え戻してもよい。特定の実施形態では、細胞培養培地は、変法基礎細胞培地と、以下の栄養素、すなわち、鉄源、組換え成長因子;緩衝剤;界面活性剤;容量オスモル濃度調節因子;エネルギー源;及び非動物性加水分解物の少なくとも1つとを含有する。加えて、変法基礎細胞培地は、場合により、アミノ酸、ビタミン、又はアミノ酸とビタミンとの両方の組み合わせを含有し得る。別の実施形態では、変法基礎培地は、グルタミン、例えば、L−グルタミン、及び/又はメトトレキサートをさらに含有する。
【0206】
精製及び単離
結合分子は、産生された後、当該技術分野において公知の免疫グロブリン分子を精製する任意の方法により、例えば、クロマトグラフィー(例えば、イオン交換、親和性、特に特異的抗原プロテインA又はプロテインGに対する親和性によるもの、及びサイズ排除カラムクロマトグラフィー)、遠心、溶解度の差によるか、又は任意の他の標準的なタンパク質精製技法により精製され得る。さらに、精製を促進するため、本発明の抗体又はその断片は、異種ポリペプチド配列(本明細書中で「タグ」と称される)に融合されてもよい。
【0207】
一実施形態では、実質的に精製/単離された結合分子が提供される。一実施形態では、これらの単離/精製された組換え的に発現された結合分子は、予防又は治療効果を媒介するため、患者に投与してもよい。予防は、薬物療法であるか、又は疾患、障害若しくは感染を発症から予防するように設計され、用いられる治療である。治療は、特定の疾患、障害又は感染の治療に特異的に関連する。治療量は、特定の疾患、障害又は感染を治療するのに要求される量である。別の実施形態では、これらの単離/精製された抗体は、インフルエンザウイルス感染、例えばA型インフルエンザウイルス感染、B型インフルエンザウイルス感染、又はその組み合わせを診断するのに用いてもよい。
【0208】
グリコシル化
グリコシル化が抗体のエフェクター機能を改変する能力に加えて、可変領域の修飾されたグリコシル化は、抗原に対する抗体の親和性を改変することができる。一実施形態では、本抗体の可変領域におけるグリコシル化パターンが修飾される。例えば、非グリコシル化抗体を作製することができる(すなわち、この抗体はグリコシル化を欠いている)。グリコシル化は、例えば抗原に対する抗体の親和性が増加するように改変することができる。かかる炭水化物修飾は、例えば、抗体配列内の1つ以上のグリコシル化部位を改変して達成することができる。例えば、1つ以上の可変領域フレームワークグリコシル化部位の除去をもたらし、それにより当該の部位のグリコシル化を除去する1つ以上のアミノ酸置換を作製することができる。かかる非グリコシル化により、抗原に対する抗体の親和性が増加し得る。かかる手法は、米国特許第5,714,350号明細書及び同第6,350,861号明細書にさらに詳細に記載されている。Fc領域に存在するグリコシル化部位(例えば、IgGのアスパラギン297)の除去をもたらす1つ以上のアミノ酸置換もまた作製することができる。さらには、非グリコシル化抗体は、必須のグリコシル化機構を欠く細菌細胞において産生され得る。
【0209】
変異体及びコンジュゲート
一実施形態では、結合分子は、可変軽(VL)ドメイン及び/又は可変重(VH)ドメイン及び/又はFc領域における1つ以上のアミノ酸残基及び/又はポリペプチドの置換、付加及び/又は欠失並びに翻訳後修飾を含む1つ以上の結合ドメインを含む。一実施形態では、結合分子は、1つ以上の保存的アミノ酸置換を含む。保存的アミノ酸置換は、関与する残基の極性、電荷、溶解度、疎水性、親水性、及び/又は両親媒性における類似性に基づいて設けられてもよい。例えば、非極性(疎水性)アミノ酸は、アラニン、ロイシン、イソロイシン、バリン、プロリン、フェニルアラニン、トリプトファン、及びメチオニンを含み;極性中性アミノ酸は、グリシン、セリン、トレオニン、システイン、チロシン、アスパラギン、及びグルタミンを含み;陽性荷電(塩基性)アミノ酸は、アルギニン、リジン、及びヒスチジンを含み;また陰性荷電(酸性)アミノ酸は、アスパラギン酸及びグルタミン酸を含む。さらに、グリシン及びプロリンは、鎖配向性に影響を及ぼし得る残基である。非保存的置換は、これらのクラスの1つのメンバーを別のクラスのメンバーと交換することを伴うことになる。さらに、必要に応じて、非古典的アミノ酸又は化学的アミノ酸類似体が抗体配列に置換又は付加として導入され得る。非古典的アミノ酸として、限定はされないが、一般に、共通アミノ酸のD−異性体、α−アミノイソ酪酸、4−アミノ酪酸、Abu、2−アミノ酪酸、γ−Abu、ε−Ahx、6−アミノヘキサン酸、Aib、2−アミノイソ酪酸、3−アミノプロピオン酸、オルニチン、ノルロイシン、ノルバリン、ヒドロキシプロリン、サルコシン、シトルリン、システイン酸、t−ブチルグリシン、t−ブチルアラニン、フェニルグリシン、シクロヘキシルアラニン、β−アラニン、フルオロ−アミノ酸、デザイナーアミノ酸、例えば、β−メチルアミノ酸、Cα−メチルアミノ酸、Nα−メチルアミノ酸、及びアミノ酸類似体、が挙げられる。
【0210】
一実施形態では、分子の酸化安定性を改善し、異常な架橋を阻止するため、1つ以上のシステイン残基が、一般にセリンと置換されてもよい。逆に、システイン結合が抗体に、その安定性を改善するため、添加されてもよい(特に抗体がFv断片などの抗体断片である場合)。
【0211】
一実施形態では、1つ以上の突然変異が抗体分子の1つ以上のフレームワーク領域内に導入される。別の実施形態では、1つ以上の突然変異が抗体分子の1つ以上のCDR領域内に導入される。
【0212】
一実施形態では、結合分子は、当該技術分野で公知の方法を用いて、異種アミノ酸配列又は他の部分若しくは物質に複合又は共有結合される。一実施形態では、結合される物質は、治療剤、検出可能標識(本明細書ではレポーター分子とも称される)又は固体支持体である。抗体との結合に好適な物質としては、限定はされないが、アミノ酸、ペプチド、タンパク質、多糖、ヌクレオシド、ヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、核酸、ハプテン、薬物、ホルモン、脂質、脂質集合体、合成高分子、高分子マイクロパーティクル、生体細胞、ウイルス、フルオロフォア、発色団、色素、毒素、酵素、抗体、抗体断片、放射性同位元素、固体マトリックス、半固体マトリックス及びそれらの組み合わせが挙げられる。別の物質を抗体にコンジュゲート又は共有結合する方法は、公知である。
【0213】
一実施形態では、結合分子は固体支持体にコンジュゲートされる。結合分子は、スクリーニング及び/又は精製及び/又は製造プロセスの一部として固体支持体にコンジュゲートされてもよい。或いは結合分子は、診断方法又は組成物の一部として固体支持体にコンジュゲートされてもよい。固体支持体は、典型的には液相に対して実質的に不溶性である。多数の支持体が利用可能であり、当業者には周知されている。
【0214】
一実施形態では、結合分子は、診断及び他のアッセイを目的として標識に複合され、結合分子及び/又はその関連リガンドは検出され得る。標識は、280nmより大きい波長で吸収最大を示す任意の化学的部分(有機又は無機)を含み、結合分子に共有結合されるとき、そのスペクトル特性を保持する。標識として、限定はされないが、発色団、フルオロフォア、蛍光タンパク質、りん光色素、タンデム色素、粒子、ハプテン、酵素及び放射性同位元素が挙げられる。
【0215】
特定の実施形態では、標識は酵素である。酵素は、アッセイ感受性の増強をもたらす検出可能なシグナルの増幅が得られ得ることから標識として望ましい場合がある。酵素は、検出可能なシグナルの増幅を達成することができ、アッセイ感度の増加がもたらされるため、望ましい標識である。酵素それ自体は検出可能な反応を生じないが、適切な基質を接触させると基質を分解する働きをし、それにより変換された基質が蛍光、比色又は発光シグナルを生じる。標識試薬の一つの酵素が複数の基質についての検出可能なシグナルへの変換をもたらし得るため、酵素は検出可能なシグナルを増幅する。酵素基質は、好ましい計測可能な生成物、例えば比色、蛍光又は化学発光生成物が得られるように選択される。かかる基質は当該技術分野で広範に用いられており、当業者には周知されている。
【0216】
別の実施形態では、標識は、ビオチンなどのハプテンである。ビオチンは、酵素系において検出可能なシグナルをさらに増幅するよう機能することができ、且つ単離目的でアフィニティークロマトグラフィーにおいて使用するタグとして機能することができるため、有用である。検出目的では、アビジン−HRPなどの、ビオチンに対して親和性を有する酵素コンジュゲートが用いられる。続いてペルオキシダーゼ基質を添加すると、検出可能なシグナルが生成される。ハプテンにはまた、ホルモン、天然に存在する及び合成の薬物、汚染物、アレルゲン、作用因子分子、成長因子、ケモカイン、サイトカイン、リンホカイン、アミノ酸、ペプチド、化学的中間体、ヌクレオチドなども含まれる。
【0217】
特定の実施形態では、蛍光タンパク質が標識として用いられてもよい。蛍光タンパク質の例として、緑色蛍光タンパク質(GFP)及びフィコビリンタンパク質並びにそれらのの誘導体が挙げられる。
【0218】
特定の実施形態では、標識は放射性同位体である。好適な放射性物質の例としては、限定はされないが、ヨウ素(121I、123I、125I、131I)、炭素(14C)、硫黄(35S)、トリチウム(H)、インジウム(111In、112In、113mIn、115mIn)、テクネチウム(99Tc、99mTc)、タリウム(201Ti)、ガリウム(68Ga、67Ga)、パラジウム(103Pd)、モリブデン(99Mo)、キセノン(135Xe)、フッ素(18F)、153Sm、177Lu、159Gd、149Pm、140La、175Yb、166Ho、90Y、47Sc、186Re、188Re,142Pr、105Rh及び97Ruが挙げられる。
【0219】
治療及び使用
本明細書に記載の結合分子及びその抗原結合断片は、A型インフルエンザウイルス感染及び/又はB型インフルエンザウイルス感染の治療のため、A型インフルエンザウイルス感染及び/又はB型インフルエンザウイルス感染の予防のため、A型インフルエンザウイルス感染及び/又はB型インフルエンザウイルス感染の検出、診断及び/又は予後のため、又はそれらの組み合わせのため、用いられてもよい。
【0220】
診断の方法は、結合分子又はその断片を試料に接触させることを含んでもよい。かかる試料は、例えば、鼻道、洞腔(sinus cavities)、唾液腺、肺、肝臓、膵臓、腎臓、耳、目、胎盤、消化管、心臓、卵巣、下垂体、副腎、甲状腺、脳又は皮膚から採取された組織試料であってもよい。検出、診断、及び/又は予後の方法もまた、抗原/抗体複合体の検出を含んでもよい。
【0221】
一実施形態では、結合分子又はその結合断片、あるいは結合分子又はその結合断片を含む医薬組成物を有効量で被験者に投与することにより被験者を治療する方法を提供する。一実施形態では、結合分子又はその結合断片は、実質的に精製される(すなわち、その効果を制限するか又は望ましくない副作用をもたらす物質から実質的に遊離される)。一実施形態では、本発明の結合分子又はその結合断片は、曝露後、すなわち被験者がA型インフルエンザウイルス及び/若しくはB型インフルエンザウイルスに曝露されてから又はA型インフルエンザウイルス及び/若しくはB型インフルエンザウイルスに感染後、投与される。別の実施形態では、結合分子又はその結合断片は、曝露前に投与されるか、又はA型インフルエンザウイルス及び/若しくはB型インフルエンザウイルスにまだ曝露されていないか又はA型インフルエンザウイルス及び/若しくはB型インフルエンザウイルスの感染をまだ受けていない被験者に投与される。
【0222】
一実施形態では、結合分子又はその結合断片は、1つ以上のA型インフルエンザウイルスのサブタイプ及び/又はB型インフルエンザウイルス株について血清陰性である被験者に投与される。別の実施形態では、結合分子又はその抗原結合断片は、1つ以上のA型インフルエンザウイルスのサブタイプ及び/又はB型インフルエンザウイルス株について血清陽性である被験者に投与される。一実施形態では、結合分子又はその結合断片は、感染又は症状発症から1、2、3、4、5日以内に被験者に投与される。別の実施形態では、結合分子又はその結合断片は、感染又は症状発症から1、2、3、4、5、6、若しくは7日後、及び2、3、4、5、6、7、8、9若しくは10日以内に被験者に投与される。
【0223】
一実施形態では、本方法は、被験者におけるA型インフルエンザウイルス及び/又はB型インフルエンザウイルス感染を低減する。別の実施形態では、本方法は、被験者におけるA型インフルエンザウイルス及び/又はB型インフルエンザウイルス感染を予防するか、そのリスクを低減するか又は遅延させる。一実施形態では、被験者は動物である。一実施形態では、被験者は亜門網(subphylum cordata)であり、例えばヒト及び他の霊長類、例えば非ヒト霊長類、例えばチンパンジー及び他の類人猿及びサル種などである。別の実施形態では、被験者は、家畜、例えば、ウシ、ヒツジ、ブタ、ヤギ及びウマ;飼育動物、例えばイヌ及びネコ;実験動物、例えば齧歯類、マウス、ラット及びモルモットなど;トリ、例えば、飼い慣らされた鳥、野鳥及び狩猟鳥、例えば、ニワトリ、シチメンチョウ及び他の野禽、アヒル、ガチョウなどである。一実施形態では、被験者は、限定はされないが、A型インフルエンザウイルス及び/又はB型インフルエンザウイルス感染に対して特にリスクがあるか又は罹りやすい者、例えば易感染性被験者を含む。
【0224】
治療は単回用量スケジュール又は複数回用量スケジュールであり得、また結合分子又はその結合断片は、受動免疫又は能動ワクチン接種において用いることができる。
【0225】
一実施形態では、結合分子又はその結合断片は、1つ以上の抗ウイルス薬と組み合わせて被験者に投与される。一実施形態では、結合分子又はその結合断片は、1つ以上の小分子抗ウイルス薬、例えば限定はされないが、ノイラミニダーゼ阻害剤、例えば、オセルタミビル(TAMIFLU(登録商標))、ザナミビル(RELENZA(登録商標))及びアダマンタン、例えばアマンタジン及びリマンタジンなどと組み合わせて被験者に投与される。
【0226】
別の実施形態では、A型インフルエンザウイルス及び/又はB型インフルエンザウイルス感染の予防又は治療のための薬剤として用いられる組成物が提供される。別の実施形態では、結合分子又はその結合断片及び/又は結合分子若しくはその抗原結合断片が結合するエピトープを有するタンパク質が、被験者の治療及び/又は被験者における診断のための薬剤の製造において用いられる。
【0227】
本明細書に記載のような結合分子及びその断片もまた、A型インフルエンザウイルス感染;B型インフルエンザウイルス感染;又はその組み合わせの診断用のキットにおいて用いられてもよい。本明細書に記載のような結合分子、抗体断片、又はその変異体及び誘導体はまた、ワクチン免疫原性を監視するためのキットにおいて用いられてもよい。
【0228】
一実施形態では、医薬組成物を調製する方法であって、本明細書に記載の結合分子を1つ以上の薬学的に許容できる担体と混合するステップを含む、方法が提供される。
【0229】
限定はされないが、リポソーム、微小粒子、及びマイクロカプセル中の被包、結合分子若しくは断片を発現する能力がある組換え細胞、受容体介在性エンドサイトーシス、エレクトロポレーション、レトロウイルス若しくは他のベクターの一部としての核酸の作成などを含む、様々な送達系は公知であり、本明細書に記載の結合分子又はその結合断片を投与するために用いることができる。導入方法は、限定はされないが、皮内、筋肉内、腹腔内、静脈内、皮下、鼻腔内、硬膜外、及び経口経路を含む。一実施形態では、結合分子は、結合分子をコードするDNA又はRNAを有するプラスミドとして、例えばエレクトロポレーションにより投与され得る。組成物は、限定はされないが小分子抗ウイルス性組成物を含む他の生物活性剤とともに投与されてもよい。投与は、全身性又は局所性であり得る。経肺投与はまた、例えば、吸入器又は噴霧器の使用、及びエアロゾル化剤との調合により用いることができる。さらに別の実施形態では、組成物は、徐放システムにおいて送達され得る。
【0230】
結合分子又はその結合断片、及び薬学的に許容できる担体を治療有効量で含む医薬組成物もまた、本明細書で提供される。用語「薬学的に許容できる」は、本明細書で使用されるとき、動物、より詳細にはヒトで使用するため、連邦政府若しくは州政府の規制機関によって認可されている、又は米国薬局方若しくは他の一般に認められている薬局方において収載されていることを意味する。用語「担体」は、治療薬と共に投与される希釈剤、アジュバント、賦形剤、又は媒体を指す。かかる薬学的担体は、滅菌液体、例えば水及び油、例えば石油、動物、植物又は合成起源のもの、例えばピーナッツ油、大豆油、鉱油、ゴマ油等であり得る。水は、医薬組成物が静脈内投与される場合に好ましい担体である。生理食塩水及び水性デキストロース及びグリセロール溶液もまた、特に注射可能溶液用に、液体担体として使用することができる。好適な薬学的賦形剤は、デンプン、グルコース、ラクトース、スクロース、ゼラチン、モルト、米、小麦粉、チョーク、シリカゲル、ステアリン酸ナトリウム、グリセロールモノステアレート、タルク、塩化ナトリウム、乾燥脱脂乳、グリセロール、プロピレン、グリコール、水、エタノール等を含む。組成物はまた、必要に応じて、少量の湿潤剤又は乳化剤、又はpH緩衝剤も含有し得る。これらの組成物は、溶液、懸濁剤、乳剤、錠剤、丸剤、カプセル剤、散剤、徐放性製剤等の形態をとることができる。組成物は、坐剤として、従来型の結合剤及びトリグリセリドなどの担体と配合することができる。経口製剤は、医薬品グレードのマンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、セルロース、炭酸マグネシウム等などの標準担体を含み得る。一実施形態では、医薬組成物は、患者に対する適切な投与のための形態を提供するように、治療有効量の抗体又はその抗原結合断片を、適量の担体とともに、好ましくは精製形態で含有する。製剤は、投与方法に適合させるべきである。典型的には、抗体治療薬においては、患者に投与される用量は、患者の体重に対して約0.1mg/kg〜100mg/kgである。
【0231】
キット
一実施形態では、少なくとも本明細書に記載のような結合分子を含む製品、例えば滅菌剤形及びキットが提供される。例えばELISA又はウエスタンブロットにおけるインビトロでのインフルエンザウイルスの検出及び定量のための結合分子を含むキットが提供され得る。検出にとって有用な結合分子は、蛍光又は放射標識などの標識とともに提供されてもよい。
【0232】
例示的な実施形態
1.(a)A型インフルエンザウイルスヘマグルチニン(HA)に結合し、且つA型インフルエンザウイルスの少なくとも1つのグループ1サブタイプ及び少なくとも1つのグループ2サブタイプを中和する能力がある第1の結合ドメイン;及び
(b)B型インフルエンザウイルスヘマグルチニン(HA)に結合し、且つ少なくとも2つの系統学的に異なる系統におけるB型インフルエンザウイルスを中和する能力がある第2の結合ドメイン
を含む、A型インフルエンザウイルス及びB型インフルエンザウイルスに特異的に結合する単離された結合分子。
2.前記第1の結合ドメインが、H1、H2、H5、H6、H8、H9、H11、H12、H13、H16、H17、H18及びそれらの変異体から選択される1つ以上のA型インフルエンザウイルスのグループ1サブタイプ;並びにH3、H4、H7、H10、H14及びH15及びそれらの変異体から選択される1つ以上のA型インフルエンザウイルスのグループ2サブタイプを中和する能力がある、請求項1に記載の単離された結合分子。
3.前記第2の結合ドメインがYamagata及びVictoria系統の双方におけるB型インフルエンザウイルスを中和する能力がある、請求項1に記載の単離された結合分子。
4.前記第1の結合ドメインが抗A型インフルエンザウイルス抗体又はその抗原結合断片を含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載の結合分子。
5.前記第2の結合ドメインが抗B型インフルエンザウイルス抗体又はその抗原結合断片を含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載の結合分子。
6.抗体重鎖の少なくとも1つのVH及び抗体軽鎖の少なくとも1つのVLを含む、請求項1〜5のいずれかに記載の結合分子。
7.前記第1の結合ドメインが抗体重鎖の少なくとも1つのVH及び抗体軽鎖の少なくとも1つのVLを含む、請求項1〜6のいずれかに記載の結合分子。
8.前記第2の結合ドメインが抗体重鎖の少なくとも1つのVH及び抗体軽鎖の少なくとも1つのVLを含む、請求項1〜7のいずれかに記載の結合分子。
9.前記第1の結合ドメインが、
(a)配列番号8のHCDR1、配列番号9のHCDR2、配列番号10のHCDR3、配列番号3のLCDR1、配列番号4のLCDR2及び配列番号5のLCDR3に対して少なくとも75%同一であるアミノ酸配列;
(b)配列番号8のHCDR1、配列番号9のHCDR2、配列番号10のHCDR3、配列番号3のLCDR1、配列番号4のLCDR2及び配列番号5のLCDR3のアミノ酸配列;
(c)配列番号18のHCDR1、配列番号19のHCDR2、配列番号20のHCDR3、配列番号13のLCDR1、配列番号14のLCDR2、配列番号15のLCDR3に対して少なくとも75%同一であるアミノ酸配列;並びに
(d)配列番号18のHCDR1、配列番号19のHCDR2、配列番号20のHCDR3、配列番号13のLCDR1、配列番号14のLCDR2、配列番号15のLCDR3のアミノ酸配列
から選択されるアミノ酸配列を有する6つのCDRセット:HCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、LCDR3を含む、請求項1〜8のいずれか一項に記載の単離された結合分子。
10.前記第1の結合ドメインが、
(a)配列番号7のVH;及び
(b)配列番号17のVH
から選択されるVHのアミノ酸配列に対して少なくとも75%同一であるアミノ酸配列を有するVHを含む、請求項1〜9のいずれか一項に記載の単離された結合分子。
11.前記第1の結合ドメインが、
(a)配列番号2のVL;及び
(b)配列番号12のVL
から選択されるVLのアミノ酸配列に対して少なくとも75%同一であるアミノ酸配列を有するVLを含む、請求項1〜10のいずれか一項に記載の単離された結合分子。
12.前記第1の結合ドメインが、
(a)配列番号7のVH及び配列番号2のVL;及び
(b)配列番号17のVH及び配列番号12のVL
から選択されるVH及びVLのアミノ酸配列の各々に対して少なくとも75%同一であるVH及びVLを含む、請求項1〜11のいずれか一項に記載の単離された結合分子。
13.前記第1の結合ドメインが、
(a)配列番号7のVH及び配列番号2のVL;及び
(b)配列番号17のVH及び配列番号12のVL
から選択されるVH及びVLを含む、請求項1〜12のいずれか一項に記載の単離された結合分子。
14.前記第2の結合ドメインが、6つのCDRセット:HCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、LCDR3を含み、ここで6つのCDRセットが、
(a)配列番号28のHCDR1、配列番号29のHCDR2、配列番号30のHCDR3、配列番号23のLCDR1、配列番号24のLCDR2及び配列番号25のLCDR3に対して少なくとも75%同一であるアミノ酸配列;
(b)配列番号28のHCDR1、配列番号29のHCDR2、配列番号30のHCDR3、配列番号23のLCDR1、配列番号24のLCDR2及び配列番号25のLCDR3のアミノ酸配列;
(c)配列番号44のHCDR1、配列番号45のHCDR2、配列番号46のHCDR3、配列番号39のLCDR1、配列番号40のLCDR2及び配列番号41のLCDR3のアミノ酸配列に対して少なくとも75%同一であるアミノ酸配列;
(d)配列番号44のHCDR1、配列番号45のHCDR2、配列番号46のHCDR3、配列番号39のLCDR1、配列番号40のLCDR2及び配列番号41のLCDR3のアミノ酸配列;
(e)配列番号60のHCDR1、配列番号61のHCDR2、配列番号62のHCDR3、配列番号55のLCDR1、配列番号56のLCDR2、配列番号57のLCDR3に対して少なくとも75%同一であるアミノ酸配列;及び
(f)配列番号60のHCDR1、配列番号61のHCDR2、配列番号62のHCDR3、配列番号55のLCDR1、配列番号56のLCDR2、配列番号57のLCDR3のアミノ酸配列
から選択されるアミノ酸配列を含む、請求項1〜13のいずれか一項に記載の単離された結合分子。
15.前記第2の結合ドメインが、
(a)配列番号27のVH;
(b)配列番号33のVH;
(c)配列番号36のVH;
(d)配列番号43のVH;
(e)配列番号49のVH;
(f)配列番号52のVH;
(g)配列番号59のVH;及び
(h)配列番号65のVH
から選択されるVHのアミノ酸配列に対して少なくとも75%同一であるアミノ酸配列を有するVHを含む、請求項1〜14のいずれか一項に記載の単離された結合分子。
16.前記第2の結合ドメインが、
(a)配列番号22のVL;
(b)配列番号32のVL;
(c)配列番号35のVL;
(d)配列番号38のVL;
(e)配列番号48のVL;
(f)配列番号51のVL;
(g)配列番号54のVL;及び
(h)配列番号64のVL
から選択されるVLのアミノ酸配列に対して少なくとも75%同一であるアミノ酸配列を有するVLを含む、請求項1〜15のいずれか一項に記載の単離された結合分子。
17.前記第2の結合ドメインが、
(a)配列番号27のVH及び配列番号22のVL;
(b)配列番号33のVH及び配列番号32のVL;
(c)配列番号36のVH及び配列番号35のVL;
(d)配列番号43のVH及び配列番号38のVL;
(e)配列番号49のVH及び配列番号48のVL;
(f)配列番号52のVH及び配列番号51のVL;
(g)配列番号59のVH及び配列番号54のVL;並びに
(h)配列番号65のVH及び配列番号64のVL
から選択されるVH及びVLのアミノ酸配列の各々に対して少なくとも75%同一であるVH及びVLを含む、請求項1〜16のいずれか一項に記載の単離された結合分子。
18.前記第2の結合ドメインが、
(a)配列番号27のVH及び配列番号22のVL;
(b)配列番号33のVH及び配列番号32のVL;
(c)配列番号36のVH及び配列番号35のVL;
(d)配列番号43のVH及び配列番号38のVL;
(e)配列番号49のVH及び配列番号48のVL;
(f)配列番号52のVH及び配列番号51のVL;
(g)配列番号59のVH及び配列番号54のVL;並びに
(h)配列番号65のVH及び配列番号64のVL
から選択されるVH及びVLを含む、請求項1〜17のいずれか一項に記載の単離された結合分子。
19.二重特異性抗体を含む、請求項1〜18のいずれか一項に記載の結合分子。
20.1つ以上の結合ドメインが可変断片(Fv)ドメインを含む、請求項1〜19のいずれか一項に記載の結合分子。
21.1つ以上の結合ドメインがscFv分子を含む、請求項1〜20のいずれか一項に記載の結合分子。
22.1つ以上の結合ドメインがFvドメインを含み、且つ1つ以上の結合ドメインがscFv分子を含む、請求項1〜21のいずれか一項に記載の結合分子。
23.前記第1の結合ドメインが抗A型インフルエンザウイルスのFvドメインを含む、請求項1〜22のいずれか一項に記載の結合分子。
24.2つの抗体重鎖及び2つの抗体軽鎖を含む、請求項1〜23のいずれか一項に記載の結合分子。
25.抗体重鎖可変ドメイン及び抗体軽鎖可変ドメインを含むFvドメインを含み、Fvが抗A型インフルエンザウイルスに特異的に結合する、請求項1〜24のいずれか一項に記載の結合分子。
26.前記第2の結合ドメインが抗B型インフルエンザウイルスのscFv分子を含む、請求項1〜25のいずれか一項に記載の結合分子。
27.前記第1の結合ドメインが抗A型インフルエンザウイルスのFvドメインを含み、且つ前記第2の結合ドメインが抗B型インフルエンザウイルスのscFv分子を含む、請求項1〜26のいずれか一項に記載の結合分子。
28.前記第1の結合ドメインの前記Fvドメインが、アミノ末端及びカルボキシ末端を有するポリペプチド鎖を含む重鎖(HC)並びにアミノ末端及びカルボキシ末端を有するポリペプチド鎖を含む軽鎖(LC)を含み、
(a)前記第2の結合ドメインは前記第1の結合ドメインのHCのカルボキシ末端に共有結合されるか;
(b)前記第2の結合ドメインは前記第1の結合ドメインのHCのアミノ末端に共有結合されるか;
(c)前記第2の結合ドメインは前記第1の結合ドメインのLCのアミノ末端に共有結合されるか;又は
(d)前記第2の結合ドメインは前記第1の結合ドメインのHCのポリペプチド鎖内で共有結合的にインターカレートされる
請求項27に記載の結合分子。
29.前記結合分子が、式scFv−L1−VL−CL(式中、scFvはscFv分子であり、L1はリンカーであり、VLは軽鎖可変ドメインであり、CLは軽鎖定常ドメインであり、且つVLは軽鎖可変ドメインである)を有する抗体軽鎖を含む抗体又はその断片を含む、請求項28に記載の結合分子。
30.前記重鎖が、式scFv−L1−VH−CH1−CH2−CH3(式中、scFvはscFv分子であり、L1はリンカーであり、VHは重鎖可変ドメインであり、CH1は重鎖定常ドメインドメイン1であり、CH2は重鎖定常ドメインドメイン2であり、且つCH3は重鎖定常ドメインドメイン3である)を含む、請求項28に記載の結合分子。
31.配列番号7及び配列番号17から選択されるアミノ酸VHドメイン配列に対して少なくとも75%同一であるアミノ酸配列を有する可変重鎖ドメイン(VH)を含む、請求項28〜30のいずれか一項に記載の結合分子。
32.配列番号2及び配列番号12から選択されるアミノ酸VLドメイン配列に対して少なくとも75%同一であるアミノ酸配列を有する可変軽鎖ドメイン(VL)を含む、請求項28〜31のいずれか一項に記載の結合分子。
33.第1及び第2のC末端ドメインを各々有する第1及び第2の重鎖を含み、ここで1つ以上のscFv分子が第1の重鎖、第2の重鎖、又はその組み合わせのC末端ドメインに共有結合される、請求項28に記載の結合分子。
34.1つ以上の重鎖が、式VH−CH1−CH2−CH3(式中、VHは重鎖可変ドメインであり、CH1は重鎖定常ドメインドメイン1であり、CH2は重鎖定常ドメインドメイン2であり、且つCH3は重鎖定常ドメイン3である)を含む、請求項28に記載の結合分子。
35.1つ以上の重鎖が、式VH−CH1−L1−scFv−L2−CH2−CH3(式中、L1及びL2は独立してリンカーであり、且つscFvはscFv分子である)を含む、請求項34に記載の結合分子。
36.1つ以上の重鎖が、式VH−CH1−CH2−L1−scFv−L2−CH3(式中、L1及びL2は独立してリンカーであり、且つscFvはscFv分子である)を含む、請求項34に記載の結合分子。
37.1つ以上の重鎖が、式VH−CH1−CH2−CH3−L1−scFv−L2−CH3(式中、L1及びL2は独立してリンカーであり、且つscFvはscFv分子である)を含む、請求項34に記載の結合分子。
38.L1及びL2が、独立して、(a)[GGGGS]n(式中、nは0、1、2、3、4、若しくは5である)、(b)[GGGG]n(式中、nは0、1、2、3、4、若しくは5である)、又は(a)及び(b)の組み合わせを含む、請求項35、36、又は37に記載の結合分子。
39.scFvが式VH−LS−VL(式中、VHは重鎖可変ドメインであり、LSはリンカーであり、且つVLは軽鎖可変ドメインである)を含む、請求項21〜38に記載の結合分子。
40.LSが、(a)[GGGGS]n(式中、nは0、1、2、3、4、若しくは5である)、(b)[GGGG]n(式中、nは0、1、2、3、4、若しくは5である)、又は(a)及び(b)の組み合わせを含む、請求項39に記載の結合分子。
41.前記第2の結合ドメインの重鎖及び軽鎖が1つ以上のジスルフィド結合によって連結される、請求項28に記載の結合分子。
42.前記第2の結合ドメインのscFvが、重鎖可変ドメイン(VH)及び軽鎖可変ドメイン(VL)を含み、scFvのVHが、43位、44位、100位、101位、105位、及びこれらの組み合わせから選択される位置にシステイン残基を含み、且つscFvのVLが、43位、44位、46位、49位、50位、100位、及びこれらの組み合わせから選択される位置にシステイン残基を含む、請求項41に記載の結合分子。
43.前記scFvのVL及びVHが、VL100−VH44、VL43−VH105、VL46−VH101、VL49−VH100、VL50−VH100、及びこれらの組み合わせから選択されるジスルフィド結合によって連結される、請求項42に記載の結合分子。
44.前記scFvのVL及びVHが、VH44−VL100、VH100−VL49、VH100−VL50、VH101−VL46、VH105−VL43、及びこれらの組み合わせから選択されるジスルフィド結合によって連結される、請求項42に記載の結合分子。
45.VHが、3つのCDRセット:HCDR1、HCDR2、HCDR3を含み、ここで3つのCDRセットが、
(a)配列番号28のHCDR1、配列番号29のHCDR2、配列番号30のHCDR3に対して少なくとも75%同一であるアミノ酸配列;
(b)配列番号28のHCDR1、配列番号29のHCDR2、配列番号30のHCDR3のアミノ酸配列;
(c)配列番号44のHCDR1、配列番号45のHCDR2、配列番号46のHCDR3に対して少なくとも75%同一であるアミノ酸配列;
(d)配列番号44のHCDR1、配列番号45のHCDR2、配列番号46のHCDR3のアミノ酸配列;
(e)配列番号60のHCDR1、配列番号61のHCDR2、配列番号62のHCDR3に対して少なくとも75%同一であるアミノ酸配列;並びに
(f)配列番号60のHCDR1、配列番号61のHCDR2、配列番号62のHCDR3のアミノ酸配列
から選択される、請求項39に記載の結合分子。
46.VLが、3つのCDRセット:LCDR1、LCDR2、LCDR3を含み、ここで3つのCDRセットが、
(a)配列番号23のLCDR1、配列番号24のLCDR2及び配列番号25のLCDR3に対して少なくとも75%同一であるアミノ酸配列;
(b)配列番号23のLCDR1、配列番号24のLCDR2及び配列番号25のLCDR3のアミノ酸配列;
(c)配列番号39のLCDR1、配列番号40のLCDR2及び配列番号41のLCDR3に対して少なくとも75%同一であるアミノ酸配列;
(d)配列番号39のLCDR1、配列番号40のLCDR2及び配列番号41のLCDR3のアミノ酸配列;
(e)配列番号55のLCDR1、配列番号56のLCDR2、配列番号57のLCDR3に対して少なくとも75%同一であるアミノ酸配列;並びに
(f)配列番号55のLCDR1、配列番号56のLCDR2、配列番号57のLCDR3のアミノ酸配列
から選択される、請求項39に記載の結合分子。
47.前記scFvが、配列番号31、配列番号34、配列番号47、配列番号50、配列番号63から選択されるアミノ酸配列を有する、請求項21〜46のいずれか一項に記載の結合分子。
48.A型インフルエンザウイルス及びB型インフルエンザウイルスに特異的に結合する二重特異性抗体であって、配列番号66又は配列番号68のアミノ酸配列に対して少なくとも75%同一であるアミノ酸配列を有する少なくとも1つの軽鎖を含む、二重特異性抗体。
49.配列番号66又は配列番号68を含むアミノ酸配列を有する少なくとも1つの軽鎖を含む、請求項48に記載の二重特異性抗体。
50.A型インフルエンザウイルス及びB型インフルエンザウイルスに特異的に結合する二重特異性抗体であって、配列番号67又は配列番号69のアミノ酸配列に対して少なくとも75%同一であるアミノ酸配列を有する少なくとも1つの重鎖を含む、二重特異性抗体。
51.配列番号67又は配列番号69を含むアミノ酸配列を有する少なくとも1つの重鎖を含む、請求項50に記載の二重特異性抗体。
52.A型インフルエンザウイルス及びB型インフルエンザウイルスに特異的に結合する二重特異性抗体であって、配列番号66又は配列番号68のアミノ酸配列に対して少なくとも75%同一であるアミノ酸配列を有する少なくとも1つの軽鎖及び配列番号67又は配列番号69のアミノ酸配列に対して少なくとも75%同一であるアミノ酸配列を有する少なくとも1つの重鎖を含む、二重特異性抗体。
53.(a)配列番号66を含むアミノ酸配列を有する少なくとも1つの軽鎖及び配列番号67を含むアミノ酸配列を有する少なくとも1つの重鎖;又は
(b)配列番号68を含むアミノ酸配列を有する少なくとも1つの軽鎖及び配列番号69を含むアミノ酸配列を有する少なくとも1つの重鎖
を含む、請求項52に記載の二重特異性抗体。
54.請求項1〜47のいずれか一項に記載の結合分子、請求項48〜53に記載の二重特異性抗体若しくはその断片、又はそれらの任意の組み合わせを含むか又は産生する細胞。
55.請求項1〜47のいずれか一項に記載の結合分子又は請求項48〜53記載の二重特異性抗体若しくはその断片をコードする核酸を含む単離されたポリヌクレオチド。
56.請求項55に記載のポリヌクレオチドを含むベクター。
57.請求項55に記載のポリヌクレオチド又は請求項56に記載のベクターを含む宿主細胞。
58.請求項1〜47のいずれか一項に記載の結合分子、請求項48〜53に記載の二重特異性抗体若しくはその断片、及び薬学的に許容できる担体を含む組成物。
59.請求項58に記載の組成物を含むキット。
60.被験者におけるA型インフルエンザウイルス又はB型インフルエンザウイルス感染を予防又は治療する方法であって、それを必要とする被験者に有効量の請求項58に記載の組成物を投与するステップを含む、方法。
61.請求項1〜47のいずれか一項に記載の結合分子又は請求項48〜53に記載の二重特異性抗体若しくはその断片を作製するための方法であって、請求項57に記載の宿主細胞を結合分子又は二重特異性抗体又はその断片の発現に適した条件下で培養するステップを含む、方法。
62.宿主細胞培養物から結合分子を単離するステップをさらに含む、請求項61に記載の方法。
63.被験者におけるA型インフルエンザ感染、B型インフルエンザ感染、又はそれらの組み合わせの予防又は治療において用いるための、請求項1〜47のいずれか一項に記載の結合分子又は請求項48〜53に記載の二重特異性抗体若しくはその断片。
64.被験者におけるA型インフルエンザ感染、B型インフルエンザ感染、又はそれらの組み合わせの予防又は治療のための薬剤の作製における請求項1〜47のいずれか一項に記載の結合分子又は請求項48〜53に記載の二重特異性抗体若しくはその断片の使用。
65.被験者におけるA型インフルエンザ及びB型インフルエンザ感染の予防又は治療のための薬剤の作製における請求項1〜47のいずれか一項に記載の結合分子又は請求項48〜53に記載の二重特異性抗体若しくはその断片の使用。
66.被験者におけるA型インフルエンザ感染、B型インフルエンザ感染、又はそれらの組み合わせの予防又は治療のための方法であって、請求項1〜47のいずれか一項に記載の結合分子又は請求項48〜53に記載の二重特異性抗体若しくはその断片を有効量で被験者に投与するステップを含む、方法。
67.被験者におけるA型インフルエンザ及びB型インフルエンザ感染の予防又は治療のための方法であって、請求項1〜47のいずれか一項に記載の結合分子又は請求項48〜53に記載の二重特異性抗体若しくはその断片を有効量で被験者に投与するステップを含む、方法。
68.被験者におけるA型インフルエンザ感染、B型インフルエンザ感染、又はそれらの組み合わせのインビトロ診断のための請求項1〜47のいずれか一項に記載の結合分子又は請求項48〜53に記載の二重特異性抗体若しくはその断片の使用。
【実施例】
【0233】
実施例1.二重特異性抗体構築物の調製
A型インフルエンザウイルスに特異的に結合する抗HA IgG抗体は、2013年10月2日に出願された米国仮特許出願第61/885,808号明細書及び2014年5月23日に出願された米国仮特許出願第62/002,414号明細書に記載され、またB型インフルエンザウイルスに特異的に結合する抗HA IgG抗体は、2014年7月15日に出願された米国仮特許出願第62/024,804号明細書に記載されている。つまり、これらの抗体は、広義には、A型インフルエンザウイルスを認識する交差反応性抗体(FY1及びGL20)及びB型インフルエンザウイルスを認識する交差反応性抗体(FBD94、FBC39、及びFBC39FTL)である。一連の二重特異性(BiS)抗体は、これらの抗体のIgG VH及びVL遺伝子配列を用いて構築した。得られた二重特異性抗体は、すべてのA型及びB型インフルエンザ株を中和する能力がある単一の抗体様分子を作出するため、異なる抗A型インフルエンザ又は抗B型インフルエンザHA mAbの相補的活性を組み合わせている。
【0234】
図1は、5つの異なるBiS骨格の配向性の模式図を示す。例えば作製したBiS−Flu A+B抗体では、抗A型インフルエンザ抗体(FY1又はその最適化された形態のGL20)をIgGとして用い、抗B型インフルエンザ抗体(FBD94、FBC39又はその最適化された形態のFBC39FTL)をscFvとして用い、scFvは異なるBiS形式におけるIgG構造に沿う異なる位置に挿入した。BiS構築物は、BiS抗体の由来元である2つのIgGの略称を用いて名付け、その後にBiS形式を用い、次いでその後、scFvにおける安定化ジスルフィド結合を形成するため、2つのシステイン残基のアミノ酸位置を用いた。
【0235】
A.FY1/39 BiS2 100/44
FY1/39 BiS2 100/44軽鎖(配列番号107)及びFY1/39 BiS2 100/44重鎖(配列番号108)を含むFY1/39 BiS2 100/44構築物を作製するため、以下の方法を用いた。つまり、FY1 VH及びVL配列を含むベクター(pOE−FY1ベクター)をBssHII/BsiWIで消化し、FY1 VL DNA(配列番号1)を得た。次に、FY1 VL DNA(配列番号1)をゲル精製し、BssHII/BsiWIで消化した、軽鎖、scFv及び重鎖配列を含むベクター(BiS2ベクター)にクローン化し、FY1 LC−BiS2ベクターを形成した。
【0236】
FBC39 scFv−FY1 VH DNA(配列番号111)は、Geneartにより合成し、5’及び3’末端にBsrGI/Sallに対する認識配列を有する以下のプライマー、すなわち、
フォワードプライマー:
【化1】
リバースプライマー:
【化2】
を用いてPCR増幅した。
【0237】
FBC39 scFv−FY1 VH DNA(配列番号111)の増幅を検証し、DNAをゲル精製した。
【0238】
次に、FY1−LC−BiS2ベクターをBsrGI/SalIで消化し、ベクターバンドをゲル精製した。精製したFY1−LC−BiS2ベクターに、FBC39 scFv−FY1 VH(配列番号111)PCR産物を、In−Fusionシステム(Clontech(登録商標))を用いて注入し、FY1/39 BiS2 100/44構築物を作製した。Stellarコンピテント細胞をFY1/39 BiS2 100/44構築物で形質転換し、コロニーにおける正確なFY1 VL、VH及びFBC39 scFv配列について配列決定した。
【0239】
B.FY1/39 BiS4 100/44
FY1/39 BiS4 100/44軽鎖(配列番号109)及びFY1/39 BiS4 100/44重鎖(配列番号110)を含むFY1/39 BiS4 100/44構築物を作製するため、同様の方法を用いた。つまり、pOE−FY1−VLベクターをBssHII/BsiWIで消化し、FY1 VL DNA(配列番号1)を得た。次に、FY1 VL DNA(配列番号1)をゲル精製し、BssHII/BsiWIで消化した、軽鎖、VH、CH1、scFv、CH2及びCH3配列を含むベクター(BiS4ベクター)にクローン化し、FY1−LC BiS4ベクターを形成した。
【0240】
FBC39 scFv DNA(配列番号112)は、Geneartにより合成したFBC39 scFv−FY1 VH DNA(配列番号111)から、以下のプライマー:
フォワードプライマー:
CTCTGGCGGAGGGGGATCCGACATCCAGATGACCCAGTCTC(配列番号72)
リバースプライマー:
【化3】
を用いて増幅した。
【0241】
次に、FY1−LC−BiS4ベクターをBsrGI/SalIで消化し、ベクターバンドをゲル精製した。FY1 VL及びVH配列を含むベクター(pOE−FY1)をBsrGI/SalIで消化し、FY1 VH(配列番号6)を得た。
【0242】
次に、FY1−LC−BiS4ベクター(BsrGI/SalIで消化、5及び6行目に記載)をFY1 VH(配列番号6)と連結し、ベクターBiS4−FY1を得て、それをBamHIで消化し、ゲル精製した。次に、精製したBiS4−FY1ベクターに、上で得られたFBC39 scFv PCR産物を、In−Fusionシステム(Clontech(登録商標))を用いて注入し、FY1/39 BiS4 100/44構築物を得た。Stellarコンピテント細胞をFY1/39 BiS4 100/44構築物で形質転換し、コロニーにおける正確なFY1 VL、VH及びFBC39 scFv配列について配列決定した。
【0243】
C.FY1/39 BiS1 100/44
FY1/39 BiS1 100/44軽鎖(配列番号113)及びFY1/39 BiS1 100/44重鎖(配列番号114)を含むFY1/39 BiS1 100/44構築物を作出するため、同様の方法を用いた。
【0244】
FY1 VLを、上記のFY1/FBC39 BiS4 100/44(配列番号109)から、以下のプライマー:
BiS1 FY1−VLフォワードプライマー:
AGGGGGATCCGGCGGAGGGGGCTCTGATATTCAGATGACCCAGAGCCC(配列番号76)
BiS1 FY1−VLリバースプライマー:
TGGTGCAGCCACCGTACGTTTGATCTCCACCTTAGTGCCC(配列番号77)
を用いて増幅した。
【0245】
FBC39 scFvを、Geneartにより合成したFBC39 scFv−FY1 VH DNA(配列番号111)から、以下のプライマー:
BiS1 FBC39フォワードプライマー:
CTGGCTCCCCGGGGCGCGCTGTGACATCCAGATGACCCAGTCTCC(配列番号74)
BiS1 FBC39リバースプライマー:
CCCCTCCGCCGGATCCCCCTCCGCCTGAGGAGACGGTGACCGTGGTC(配列番号75)
を用いて増幅した。
【0246】
FBC39 scFv及びFY1−VLのPCRバンドをゲル精製した。
【0247】
FY1/FBC39 BiS4 100/44をBsrGI/SalIで消化し、FY1 VHを得て、FY1 VHバンドをゲル精製した。FY1 VH(配列番号6)は、さらにBsrGI/SalIで消化した、scFv、LC及びHC配列を含むベクター(BiS1ベクター)と連結した。
【0248】
次に、得られたベクターFY1 HC BiS1をBssHII/BsiWIで消化し、ベクターバンドはゲル精製し、FBC39 scFv及びFY1 VLのPCR産物を、In−Fusionシステム(Clontech(登録商標))を用いて注入し、FY1/39 BiS1 100/44構築物を形成した。Stellarコンピテント細胞をFY1/39 BiS1 100/44構築物で形質転換し、コロニーにおける正確なFY1 VL、VH及びFBC39 scFv配列について配列決定した。
【0249】
D.FY1/39 BiS3 100/44
FY1/39 BiS3 100/44軽鎖(配列番号115)及びFY1/39 BiS3 100/44重鎖(配列番号116)を有するFY1/39 BiS3 100/44構築物を、同様の方法で構築した。
【0250】
Geneartにより合成したFBC39 scFv−FY1 VH DNA(配列番号111)からFBC39 scFv(配列番号112)を増幅するため、以下のプライマー:
フォワードプライマー:
【化4】
リバースプライマー:
TCAATGAATTCGCGGCCGCTCATGAGGAGACGGTGACCGTGGTC(配列番号79)
を用いた。
【0251】
FBC scFv DNAの増幅を検証し、ゲル精製した。
【0252】
FY1/FBC39 BiS4 100/44をBssHII/SalIで消化し、FY1 LC/VHを得た。FY1 LC/VHバンドはゲル精製し、さらにBssHII/SalIで消化した、LC、HC及びscFv配列を含むベクター(BiS3ベクター)と連結し、FY1 BiS3ベクターを形成した。
【0253】
次に、FY1 BiS3ベクターをBamHIで消化し、ゲル精製した。精製したFY1 BiS3ベクターに、FBC39 scFv(配列番号112)PCR産物を、In−Fusion(Clontech(登録商標))システムを用いて注入し、FY1/39 BiS3 100/44構築物を形成した。Stellarコンピテント細胞をFY1/39 BiS3 100/44構築物で形質転換し、コロニーにおける正確なFY1 VL、VH及びFBC39 scFv配列について配列決定した。
【0254】
E.FY1/94 BiS2 100/44
FY1/94 BiS2 100/44軽鎖(配列番号117)及びFY1/94 BiS2 100/44重鎖(配列番号118)を有するFY1/94 BiS2 100/44を次のように構築した。
【0255】
FBD94 scFv DNA(配列番号119)をEurofinにより合成し、BiS2ベクターへの挿入のため、以下のプライマー:
フォワードプライマー:
TTCTCTCCACAGGTGTACACTCCGAAATTGTGTTGACACAGTCTC(配列番号80)
リバースプライマー:
CCCCTCCGCCGGATCCCCCTCCGCCTGAGGAGACGGTGACCGTGGTC(配列番号81)
を用いて増幅した。
【0256】
FY1 VH(配列番号6)を、FY1/39 BiS4 100/44(配列番号110)から、以下のプライマー:
フォワードプライマー:
AGGGGGATCCGGCGGAGGGGGCTCTCAGGTCCAGCTGCAGGAGAGC(配列番号82)
リバースプライマー:
GGATGGGCCCTTGGTCGACGCGCTTGACACGGTGACCATAGTC(配列番号83)
を用いてPCR増幅した。
【0257】
PCR産物のFBD94 scFv DNA(配列番号119)及びFY1 VH(配列番号6)の増幅を検証し、PCR産物をゲル精製した。BiS2−FY1−LCベクターは、BsrGI/SalIでの消化により直線化し、FBD94 scFv DNA(配列番号119)及びFY1 VH(配列番号6)を、In−Fusionシステム(Clontech(登録商標))を用いて注入した。ベクター内部のPCR産物の配向性は、ベクターとの重複配列を有するプライマーを用いて制御した。Stellarコンピテント細胞をFY1/94 BiS2 100/44構築物で形質転換し、コロニーにおける正確なFY1 VL、VH及びFBD94 scFv配列について配列決定した。
【0258】
F.FY1/94 BiS4 100/44
FY1/94 BiS4 100/44を次のように構築した。
【0259】
FBD94 scFv(配列番号119)をEurofinにより合成し、軽鎖、VH、CH1、scFv、CH2及びCH3配列を含むベクター(BiS4ベクター)への挿入のため、以下のプライマー:
フォワードプライマー:
CTCTGGCGGAGGGGGATCCGAAATTGTGTTGACACAGTCTC(配列番号84)
リバースプライマー:
【化5】
を用いて増幅した。
【0260】
PCR産物の増幅を検証し、FBD94をゲル精製した。
【0261】
BiS4−FY1ベクター(上記)は、BamHIを用いて直線化し、In−Fusionシステム(Clontech(登録商標))を用いてFBD94を注入した。Stellarコンピテント細胞をFY1/94 BiS4 100/44構築物で形質転換し、コロニーにおける正確なFY1 VL、VH及びFBD94 scFv配列について配列決定した。
【0262】
G.FY1/39 BiS4 43/105
FY1/39 BiS4 43/105軽鎖(配列番号120)及びFY1/39 BiS4 43/105重鎖(配列番号121)を有するFY1/39 BiS4 43/105を次のように構築した。
【0263】
FBC39−43/105 scFv DNAをEurofinにより合成し、BiS4ベクターへの挿入のため、以下のプライマー:
フォワードプライマー:
CTCTGGCGGAGGGGGATCCGACATCCAGATGACCCAGTCTC(配列番号86)
リバースプライマー:
【化6】
を用いて増幅した。
【0264】
PCR産物の増幅を検証し、ゲル精製した。
【0265】
BiS4−FY1ベクターは、BamHIを用いて直線化し、上で得られたFBC39−43/105 scFv DNA(配列番号124)を、In−Fusionシステム(Clontech(登録商標))を用いて注入した。Stellarコンピテント細胞をFY1/39 BiS4 43/105構築物で形質転換し、コロニーにおける正確なFY1 VL、VH及びFBC39−43/105 scFv配列について配列決定した。
【0266】
H.GL20/39 BiS4 100/44
GL20/39 BiS4 100/44重鎖(配列番号66)及びGL20/39 BiS4 100/44軽鎖(配列番号67)を含むGL20/39 BiS4 100/44を同様の方法で構築した。
【0267】
FY−GL20 LC及びHCを含むベクター(pOE−FY1−GL20)をBssHII/SalIで消化し、GL20 LC(VL−CL)及びVH(配列番号123)を得て、それをゲル精製した。FY1/39 BiS4 100/44ベクターをBssHII/SalIで消化し、GL20 LC/VH(配列番号123)と連結した。コロニーにおける正確なGL20 VL、VH及びFBC39 scFv配列について配列決定した。
【0268】
I.GL20/39 BiS4 43/105
GL20/39 BiS4 43/105重鎖(配列番号68)及びGL20/39 BiS4 43/105軽鎖(配列番号69)を含むGL20/39 BiS4 43/105を同様の方法で構築した。pOE−FY1−GL20をBssHII/SalIで消化し、GL20 LC/VH(配列番号123)を得て、それをゲル精製した。FY1/39 BiS4 43/105軽鎖(配列番号120)をBssHII/SalIで消化し、GL20 LC/VH(配列番号123)と連結した。コロニーにおける正確なGL20 VL、VH及びFBC39−43/105 scFv配列について配列決定した。
【0269】
J.GL20/39FTL BiS4 100/44
GL20/39FTL BiS4 100/44を同様の方法で構築した。
【0270】
FBC39FTL scFv DNA(配列番号124)をEurofinにより合成し、BiS4ベクターへの挿入のため、以下のプライマー:
フォワードプライマー:
CTCTGGCGGAGGGGGATCCGACATCCAGATGACCCAGTCTC(配列番号88)
リバースプライマー:
【化7】
を用いて増幅した。
【0271】
PCR産物の増幅を検証し、FBC39FTL scFv DNA(配列番号124)を精製した。GL20/39 BiS4 43/105ベクターは、BamHIを用いて直線化し、FBC39FTL scFv DNA(配列番号124)を、In−Fusionシステム(Clontech(登録商標))を用いて注入した。コロニーにおける正確なGL20 VL、VH及びFBC39FTL scFv配列について配列決定した。
【0272】
K.GL20/39FTL BiS4 43/105
GL20/39FTL BiS4 43/105軽鎖(配列番号125)及びGL20/39FTL BiS4 43/105重鎖(配列番号126)を含むGL20/39FTL BiS4 43/105を同様の方法で構築した。
【0273】
FBC39FTL43/105 scFv DNA(配列番号127)をEurofinにより合成し、BiS4ベクターへの挿入のため、以下のプライマー:
フォワードプライマー:
CTCTGGCGGAGGGGGATCCGACATCCAGATGACCCAGTCTC(配列番号90)
リバースプライマー:
【化8】
を用いて増幅した。
【0274】
増幅されたPCR産物は、精製し、(BamHIで消化した)直線化したGL20/39 BiS4 43/105ベクターを注入し、コロニーにおける正確なGL20 VL、VH及びFBC39FTL−43/105 scFv配列について配列決定した。
【0275】
L.BiS5 GL20−FBC39
【化9】
【0276】
【化10】
【0277】
M.BiS5 GL20−FBC39−43−105
【化11】
【0278】
【化12】
【0279】
実施例2:BiS構築物の発現
293F又はCHO細胞に由来する哺乳動物細胞株の一過性遺伝子導入により、組換え抗体を産生した。培養の7〜10日後、遺伝子導入細胞からの上清を収集した。プロテインAカラム(GE Healthcare製HiTrap Protein A HP)を用いて精製を実施した。単量体含量をHPLC−SEC分析により測定し、凝集体をサイズ排除クロマトグラフィーにより除去した。
【0280】
実施例3:BiS4構築物の最適化
依然として活性のある高度な単量体発現構築物を作出するため、FY1/39 BiS4構築物を、scFvの最適化に対する骨格として用いた。これらの試験においては、scFvの配向性をVL/VHからVH/VLに変化させ、scFvリンカー長を20アミノ酸から10、15、若しくは25アミノ酸に変化させ、安定化ジスルフィド結合を除去するか又は100/44から4つの異なる位置へ位置を変化させ、FBC39のフレームワーク領域を完全に生殖系列化した。表7は、構築物についての具体的な情報を提供する。
【0281】
【表7】
【0282】
これらの最適化されたBiS4構築物の発現及び活性は、リンカー長による影響をあまり受けなかった。しかし、ジスルフィド結合の位置は、発現と活性の双方にとって重要であった。最高の発現特性が、ジスルフィド結合を全く有しないか、43/105、46/101若しくは49/100に変化したジスルフィド結合位置を有する構築物、又はジスルフィド結合100/44を有する生殖系列化されたFBC39構築物において認められた。しかし、発現が改善されたとはいえ、これらのクローンの多くが、実施例4及び5に後述する通り、HA結合及び中和により測定される抗ウイルス活性を失った。1つの構築物(FY1/39 BiS4 43/105)が、FY1/39 BiS4 100/44より優れた発現特性を示し、機能的な抗ウイルス性活性を維持した。これらの2つの構築物(FY1/FBC39 BiS4 100/44及びBiS 43/105)が優れた発現とともに優れた機能的活性を示したことから、最適化されたBiSクローン(GL20/FBC39 BiS)が、BiS4 100/44及びBiS 43/105の配向性を各々伴って構築された。
【0283】
実施例4.A型及びB型インフルエンザのBiS構築物はA型及びB型インフルエンザウイルスのHAタンパク質に結合する
A型及びB型インフルエンザのBiS構築物を、親IgG構築物の特異性を保持するか否かを判定するため、HA交差反応性ELISA結合アッセイを用いて試験した。384ウェルのMaxisorb ELISAプレート(Nunc)を、PBS中、A型インフルエンザ株としてのA/California/07/2009 H1N1(A/CA/09)及びA/Perth/2009 H3N2(A/PTH/09)、並びにB型インフルエンザ株としてのYamagata系統のB/Florida/4/2006(B/FLA/06)及びVictoria系統のB/Brisbane/60/2008(B/BNE/08)に由来する1ug/mlの組換えHAで、4℃で一晩コーティングした。未コートタンパク質を除去するため、プレートを、0.1%v/vツイーン20を含有するPBSで洗浄し、1%(w/v)カゼイン(Thermo Scientific)を含有するブロッキング溶液を室温で1時間添加した。ブロッキング溶液を廃棄し、PBS中の抗HA IgG及びBiS抗体各々の3倍連続希釈物を添加し、室温で1時間インキュベートした。プレートを3回洗浄し、結合されたIgG及びBiS抗体を、ペルオキシダーゼ結合ヤギ抗ヒトIgG(H+L)抗体(KPL)を用いて検出した。結合活性を、テトラメチルベンジジン(TMB)一成分基質(KPL)とのインキュベーション後に450nmでの色変化を測定することにより計算し、その後、2N硫酸を添加し、反応を停止した。
【0284】
表8は、結合曲線から計算したEC50値を示す。想定通り、A型インフルエンザIgG mAb(FY1及びGL20)が両方のA型インフルエンザHAタンパク質に結合し、3つのB型インフルエンザIgG mAb(FBD94、FBC39及びFBC39FTL)がB型インフルエンザHAタンパク質に結合した。すべてのBiS構築物がA型及びB型に属する4つすべてのインフルエンザHAタンパク質に結合した。FBC39及びFBD94におけるBiS4構築物が最良の全体的な結合性を示した。最適化されたIgGを100/44若しくは43/105にジスルフィド結合を有するBiS4構築物中に設けるとき、GL20/39 BiS4 43/105が最良の全体的な結合性を示し、EC50値は、A/CA/09、A/PTH/09、及びB/FL/06に対して<1nMであり、B/BNE/08に結合するのがより困難な場合に10nM未満であった。
【0285】
【表8】
【0286】
結合相互作用の動力学をさらに特徴づけるため、傾斜した384ウェルプレートを用いるForteBio Octet QK384 Kinetic Analyzer(Menlo Park,CA)を用いて親和性測定を実施した。すべての試薬をOctet Kinetics Buffer(ForteBio)で希釈した。異なるインフルエンザウイルス:A型インフルエンザサブタイプH1(A/California/7/04(H1N1))、A型インフルエンザサブタイプH3(A/Perth/16/09(H3N2))、B型インフルエンザ系統Victoria(B/Brisbane/60/2008(Victoria))、及びB型インフルエンザ系統Yamagata(B/Florida/4/2006(Yamagata))のHisタグ化HAを、8μg/mLで抗His Ni−NTAセンサー上に固定化した。次に、抗HA mAbの会合/解離を、mAb対照とともに、100nMからの2倍希釈下で監視した。会合及び解離の生データを、mAb対照における任意のドリフトに対して補正し、次に親和性カーブフィッティングのためにGraphPad Prism(San Diego,CA)に送った。データを、>5×10−6sec−1の課せられた制限下でのグローバルな会合/解離方程式を用いてフィットさせた。表9に示すように、両方のBiS構築物は、A型及びB型インフルエンザ株に属する4つすべてのHAタンパク質に対して高い親和性結合を示した。
【0287】
【表9】
【0288】
実施例5.A型及びB型インフルエンザのBiS構築物のインビトロ中和活性
改良されたマイクロ中和アッセイは、読み取りとしてノイラミニダーゼ活性(NA)を用いる前述の高速化されたウイルス阻害アッセイに基づいた(Hassantoufighi,A. et al.2010,Vaccine 28:790)。つまり、抗生物質、グルタミン(完全MEM培地)及び10%(v/v)ウシ胎仔血清を添加したMEM培地(Invitrogen)中で培養したMDCK細胞に対してアッセイを実施した。60TCID50(50%組織培養感染用量)のウイルスを、384ウェルプレート内、0.75ug/mlのTPCKトリプシン(Worthington)を含有するMEM培地中の3倍希釈した抗体に二連ウェルで添加した。室温で30分のインキュベーション後、2×10個の細胞/ウェルをプレートに添加した。5%COインキュベーター内、33℃で約40時間のインキュベーション後、蛍光標識基質のメチルウンベリフェリル−N−アセチルノイラミン酸(ΜU−NANA)(Sigma)を各ウェルに添加することによりNA活性を測定し、37℃で1時間インキュベートした。NA活性によって表されるウイルス複製を、励起355nm、放射460nm;10フラッシュ/ウェルの設定を用いるEnvision Fluorometer(PerkinElmer)を用いて蛍光を読み取ることによって定量化した。中和力価(50%阻害濃度[IC50])は、蛍光シグナルを細胞対照ウェルと比べて50%低下させる最終抗体濃度として表した。
【0289】
表10及び11で用いられるA型及びB型インフルエンザウイルス株は、以下に列挙する通りである。
【0290】
表10では、A/WSN/33(A/Wilson Smith N/33(H1N1));A/BJ/95(A/Beijing/262/95(H1N1));A/SI/06(A/Solomon Island/3/2006(H1N1));A/CA/09(A/California/07/2009(H1N1));A/HK/68(A/Hong Kong/8/68(H3N2));A/VIC/75(A/Victoria/3/75(H3N2));A/SD/93(A/Shangdong/9/93(H3N3));A/Pan/99(低温適応(ca)A/Panama//2007/99(H3N2));B/BJ/97(ca B/Beijing/243/97(Vic));B/HK/01(B/Hong Kong/330/2001(Vic));B/MY/04(B/Malaysia/2506/2004(Vic));B/OH/05(B/Ohio/1/2005(Vic));B/YI/98(B/Yamanashi/166/98(Yam));B/SIC/99(B/Sichuan/379/99(Yam));及びB/FLA/06(B/Florida/4/2006(Yam))。
【0291】
表11では、A/WSN/33 H1(A/Wilson Smith N/33(H1N1));A/PR/34 H1(A/Puerto Rico/8/34(H1N1));A/FM/47 H1(A/Fort Monmouth/1/47(H1N1));A/BJ/95 H1(ca A/Beijing/262/95(H1N1));A/SZ/95 H1(A/Shenzhen/227/95(H1N1));A/NC/99 H1(ca A/New Caledonia/20/99(H1N1));A/SI/06 H1(A/Solomon Island/3/2006(H1N1));A/SD/07 H1(ca A/South Dakota/6/2007(H1N1));A/CA/09 H1(ca A/California/7/2009(H1N1));A/BS/10 H1(A/Brisbane/10/2010(H1N1));A/HK/10 H1(A/Hong Kong/2212/2010(H1N1));A/NH/10 H1(A/New Hampshire/04/2010(H1N1));A/WS/12 H1(A/Washington/24/2012(H1N1));A/NY/12 H1(A/New York/36/2012(H1N1));A/BO/13 H1(A/Bolivia/559/2013(H1N1));A/Jap/57 H2(ca A/Japan/57(H2N2));A/VN/04 H5(ca A/Vietnam/1203/04(H5N1));A/Alb/85 H6(ca A/mallard/Alberta/89/85(H6N2));A/HK/97 H9(ca A/chicken/Hong Kong/G9/97(H9N2));A/HK/68 H3(A/Hong Kong/8/68(H3N2));A/Vic/75 H3(A/Victoria/3/75(H3N2));A/SD/93 H3(A/Shan dong/9/93(H3N2));A/WH/95 H3(ca A/Wuhan/359/95(H3N2));A/SY/97 H3(ca A/Sydney/5/97(H3N2));APA/99 H3(ca A/Panama/2007/99(H3N2));A/CA/04 H3(A/California/7/2004(H3N2));A/WS/05 H3(A/Wisconsin/67/2005(H3N2));A/Perth/09 H3(ca A/Perth/16/2009(H3N2)),A/VC/11 H3(A/Victoria/361/2011(H3N2));A/BR/11 H3(A/Berlin/93/2011(H3N2));A/NY/12 H3A/New York/39/2012(H3N2));A/X/12 H3(A/Texas/50/2012(H3N2));A/AS/13 H3(A/AmericanSomoa/4786/2013(H3N2));A/SW/13 H3(A/Switzerland/9715293/2013(H3N2));A/PU/14 H3(A/Palau/6759/2014(H3N2));A/NC/14 H3(A/New Caledonia/71/2014(H3N2));A/IN/11 H3v(A/Indiana/10/2011(H3N2v));A/MN/10 H3v(A/Minnesota/11/2010(H3N2v));A/BC/04 H7(ca A/Brit.Columbia/CN−6/04(H7N3−LP);B/Lee/40(B/Lee/40);B/AA/66(ca B/Ann Arbor/1/66);B/HK/72(B/Hong Kong/5/72);B/BJ/97(ca B/Beijing/243/97(victoria)),B/HK/01(B/Hong Kong/330/2001(victoria));B/MY/04(B/Malaysia/2506/2004(victoria));B/OH/05(B/Ohio/1/2005(victoria));B/BNE/08(ca B/Brisbane/60/2008(victoria));B/NV/11(B/Nevada/3/2011(victoria));B/NJ/12(B/New Jersey/01/2012(victoria));B/TX/13(B/Texas/2/2013(victoria));B/Wis/13(B/Wisconsin/5/2013(victoria));B/Yam/88(B/Yamagata/16/88(yamagata));B/AA/94(ca B/Ann Arbor/2/94(yamagata));B/geo/98(ca B/Georgia/02/98(yamagata));B/YSI/98(ca B/Yamanashi/166/98(yamagata));B/Joh/99(ca B/Johannesburg/5/99(yamagata));B/Sic/99(B/Sichuan/379/99(yamagata));B/Vic/00(ca B/Victoria/504/2000(yamagata));B/Shg/02(B/Shanghai/361/02(yamagata));及びB/FL/06(B/Florida/4/2006(yamagata));B/WS/10(B/Wisconsin/1/2010(yamagata));B/Mass/12(B/Massachusetts/2/2012(yamagata));B/AZ/13(B/Arizona/8/2013(yamagata));B/PH/13(B/Phuket/3073/2013(yamagata))。
【0292】
【表10】
【0293】
表10は、2つの独立実験からの平均IC50値を示す。親IgG FY1及びGL20がすべてのA型インフルエンザ株を中和し、試験したB型インフルエンザ株との交差反応を全く示さなかった。想定通り、FBD94、FBC39及びFBC39 LTL IgGが、すべてのB型インフルエンザ株を中和し、試験したA型インフルエンザ株に対する活性を全く伴わなかった。しかし、結合実験と同様、BiS4構築物は、試験したすべてのA型インフルエンザ株及びすべてのB型インフルエンザ株に対する中和活性とともに最高の全体的な中和特性を示した。最適化された抗体クローンGL20/39 BiS4 100/44及びGL20/39 BiS4 43/105を用いて作製したBiS4構築物は、試験したすべての株に対する親BiS4を上回る全体的な中和の改善を示した。GL20/39 BiS4 43/105は、試験した15すべてのA型及びB型インフルエンザウイルスにおいてIC50値<50nMをもたらした。
【0294】
最適化されたBiS4構築物において適用範囲が維持されたことを確認するため、39のA型インフルエンザウイルス及び25のB型インフルエンザウイルスのより大きいパネルでの中和について試験した。表11は、2つの独立実験からの平均IC50値を示す。GL20/39 BiS4 100/44及びGL20/39 BiS4 43/105は、試験したすべてのウイルスに対して中和活性を示した。A型インフルエンザウイルスにおける平均IC50(nM)は、GL20 IgG、GL20/39 BiS4 100/44、及びGL20/39 BiS4 43/105において各々、8.2、8.0、及び7.5であり、BiS構築物が親IgGの全体的な中和活性を維持することを示した。B型インフルエンザウイルスに対する平均IC50は、FBC39 IgG、GL20/39 BiS4 100/44、及びGL20/39 BiS4 43/105において各々、0.4、13.9、及び9.0であった。BiS構築物は、B型ウイルスに対して親IgG mAbと比べて10倍を超える活性低下を示したが、全体的な中和活性はA型インフルエンザウイルスに対する場合と類似するレベルで維持された。GL20/39 BiS4 100/44、及びGL20/39 BiS4 43/105の双方のBiS構築物が類似する特性を示したが、GL20/39 BiS4 43/105は、より優れた全体的な中和特性を示し、すべてのウイルスに対してIC50値<50nMであった。前述の通り、A型インフルエンザmAb GL20のように、FBC39 mAbは、B型インフルエンザ株に加えて、インフルエンザA/HK/97 H9株を中和することができた。BiS4抗体は、BiS4形式に構築されるとき、A/HK/97 H9に対していずれかの親mAbと比べて増強された中和活性を示し、IC50値(nM)は、GL20/39 BiS4 100/44及びGL/20/39 BiS4 43/105において各々、1.6及び1.1であり、GL20及びFBC39において各々、3.0及び13.3であった。
【0295】
【表11】
【0296】
【表12】
【0297】
実施例6.赤血球凝集阻害活性
BiS構築物のB型インフルエンザmAb部分はHAタンパク質の球状頭部に結合し、ウイルスの宿主細胞への侵入を阻害する。この同じ作用機序がBiS構築物のB型インフルエンザへの機能性にとって重要であるか否かを判定するため、我々はB型インフルエンザウイルス株の多様な群を用いて赤血球凝集阻害(HAI)アッセイを予め構築した。HAIアッセイでは、ウイルス受容体の細胞表面に発現されるシアル酸との会合を遮断する抗体を、ウイルス媒介性の赤血球凝集の阻害を測定することにより検出する。B型インフルエンザウイルス(実施例5で記載のように略記)を、抗体の不在下での0.05%シチメンチョウ赤血球(Lampire Biological Laboratories)とのインキュベーションにより決定される4HA単位に調節した。96ウェルのU底プレート内で、GL20/39 BiS4 100/44、GL20/39 BiS4 43/105、及びFBC39 IgGを、2倍連続希釈し、希釈したウイルスをウェルに添加した。30〜60分のインキュベーション後、50ulの0.05%シチメンチョウ赤血球を添加した。プレートをさらに30〜60分インキュベートし、凝集について観察した。HAI力価が、凝集を完全に阻害する抗体の最小有効濃度(nM)であると判定した。表12は、両方のGL20/39 BiS4構築物が試験したすべてのB型インフルエンザ株に対するHAI活性を有したことを示し、BiS構築物がB型インフルエンザHAの球状頭部に結合するという証拠を提供した。HAI活性の全体的効力は2つの構築物間で変動し、GL20/39 BiS4 43/105はGL20/39 BiS4 100/44よりも強力な阻害をもたらすとともに、試験した多数のウイルスに対する活性がFBC39親mAbと類似していた。
【0298】
【表13】
【0299】
実施例7.A型及びB型インフルエンザBiS構築物のインビトロでのFcエフェクター機能
インフルエンザHAモノクローナル抗体は、抗体依存性細胞傷害(ADCC)、抗体依存性細胞食作用(ADCP)、及び補体依存性死滅(CDC)などのFcエフェクター機能を通じて、ウイルス感染細胞を排除する可能性を有する。BiS構築物がこれらのエフェクター機能をそれらの親IgG mAbと類似するレベルで示したことを確認するため、我々は、ADCC、ADCP及びCDC活性を測定するための3つの異なるインビトロアッセイでそれらを試験した。ADCCアッセイでは、一次ヒトNK細胞が抗体によって活性化されるときにインフルエンザ感染細胞を殺滅する能力を測定する。A549細胞を、10の感染多重度(MOI)でA/California/07/2009 H1N1、10のMOIでA/Hong Kong/8/68 H3N2、20のMOIでB/Malaysia/2506/2004 victoria系統及び10のMOIでB/Sichuan/379/99 yamagata系統に感染させ、37℃で15時間インキュベートした。感染細胞をGL20、FBC39、又はGL20/39 BiS4 43/105の希釈系列とともにインキュベートし、次に6:1のエフェクター対標的比でヒト末梢血単核細胞(PBMC)(Miltenyi)から正に選択された精製NK細胞とともにインキュベートした。感染細胞、抗体、及びNK細胞を4時間インキュベートし、細胞死をLDH放出により測定した(Roche)。図2は、GL20/39 BiS4 43/105が、A型インフルエンザ感染A549細胞の用量依存性死滅をGL20と比べて約3倍低下させることを示したとともに、GL20及びGL20/39 BiS4 43/105におけるIC50値(nM)が各々、A/California/07/2009 H1N1に対して0.024及び0.086であり、A/Hong Kong/8/68 H3N2に対して0.018及び0.052であったことを示す(A及びB)。GL20/39 BiS4 43/105は、FBC39 IgGと同じ用量依存性応答を示したとともに、FBC39及びGL20/39 BiS4 43/105における算出されたIC50値(nM)は各々、B/Malaysia/2506/2004 victoriaに対して1.45及び1.50であり、B/Sichuan/379/99 yamagataに対して0.85及び0.42であった(C及びD)。
【0300】
抗HABiS抗体がADCPアッセイにおける食作用を媒介する能力を測定するため、我々は、標的細胞としてのA/South Dakota/6/2007 H1N1及びA/Hong Kong/8/68 H3N2に各々由来するHAタンパク質が遺伝子導入されたMDCK細胞の安定性を用いた。ヒト単球をPBMCから単離し、M−CSFの存在下で7日間培養し、マクロファージに分化させた。ヒトマクロファージ及びHAを発現する標的細胞を各々、青紫色及び緑色に蛍光標識した(CellTrace Violet又はCSFE,Invitrogen)。標識したエフェクター及び標的細胞を、6:1の比でIgG又はBiS抗体の希釈系列の存在下で2時間インキュベートし、次にフローサイトメトリーによって分析した。パーセント食作用を、緑色標的細胞についても陽性(二重陽性)である青紫色で染色されたマクロファージのパーセントとして測定した。図3は、GL20/39 BiS4 43/105がH1発現細胞及びH3発現細胞に対してGL20 IgGと類似するADCP活性を有し、想定通り、FBC39 IgGがA型インフルエンザ発現細胞の食作用を全く示さなかったことを示す。
【0301】
抗HA BiS抗体媒介性の補体依存性細胞死を測定するため、我々はインフルエンザ感染性MDCK細胞を標的として用いた。このCDCアッセイでは、MDCK細胞を、2のMOIでA/Puerto Rico/8/34に感染させ、1:18のエフェクター対標的比で、ウサギ由来の補体(Cedarlane)の存在下で、GL20 IgG、GL20/39 BiS4 43/105、又は無関係対照mAbの希釈系列とともにインキュベートした。細胞死をLDH放出により測定した(Roche)。図3Cは、GL20/39 BiS 43/105がGL20 IgGと類似レベルの細胞殺滅能を示したことを示す。
【0302】
実施例8.A型インフルエンザ及びB型インフルエンザ感染の致死マウスモデルにおけるA型及びB型インフルエンザBiS構築物のインビボでの予防的保護
予防的有効性を試験するため、6〜8週齢のBALB/c(Harlan Laboratories)マウスに、GL20 IgGの単回腹腔内注射(IP)を、3、0.3、若しくは0.03mg/kg又はGL20/39 BiS4 43/105相当の等モルで100μlの容量で施した。投与後4時間を経て、A型インフルエンザ感染モデルにおける試験では、50μlの容量で2.5倍の50%マウス致死量(2.5MLD50)のA/Wilson Smith N/33 H1N1(A/WSN/33)若しくは7MLD50のA/Puerto Rico/8/34:A/Hong Kong/8/68が7:1のHAリアソータント(rA/HK/68)を;又はB型インフルエンザ感染モデルを用いる試験では、50μlの容量で7MLD50のB/Florida/4/2006 yamagata系統(B/FLA/06)若しくは10MLD50のB/Malaysia//2506/2004 victoria系統(B/MAL/04)を、マウス鼻腔内に接種した。8〜10匹のマウス群は、ウイルス負荷日に秤量し、体重減少及び生存について14日間毎日監視した(体重減少≧25%を有するマウスは安楽死させた)。さらに、ウイルスタイトレーションのため、感染後5日目、さらなる動物4匹から肺を採取した。肺を10%w/v溶液中、Teen Lysing Matrix A及びFastprep24ホモジナイザーを用いて均質化した。TCID50の定量を、384ウェルの黒色壁組織培養プレート内の連続希釈した肺ホモジネートに対して4連で実施した。次に、トリプシン処理したMDCK細胞を2.0×10個の細胞/ウェルでホモジネートに添加し、プレートを5%CO下、33℃で約40時間インキュベートした。ウイルス複製を、上記のように40μMのΜU−NANAの添加により測定した。感染性ウイルス力価をKarber法(Karber et al,1931 Arch.Exp.Pathol.Pharmak.162:480−3)を用いて計算し、陽性試料を、細胞単独の平均値を超える10より大きい標準偏差を示すものと定義した。
【0303】
A型インフルエンザ感染に対する予防的活性
GL20/39 BiS4 43/105と親IgG GL20の双方が、マウスに類似の用量依存性様式でのA型インフルエンザの致死性負荷からの保護を提供した。GL20のように、BiS分子の3mg/kg相当のIP注射がA/WSN/33 H1ウイルスを負荷した動物の100%を保護し、3及び0.3mg/kg相当のIP注射がrA/HK/68 H3ウイルスを負荷した動物の100%における致死を阻止した(図4A及びC)。感染後5日目に採取した肺においてウイルス力価を評価した時、両方の抗体分子は肺のウイルス力価を低下させ、3mg/kg相当用量での低下がより明白であった。BiSをIgGと比べると、我々は、H1モデルにおいてやや低下したウイルス力価を有するGL20治療動物を有する2群中で類似するウイルス力価の低下を認める一方、BiSはH3モデルにおいてより低いウイルス力価を示した(図4B及びD)。全体としてこれらのデータは、GL20/39 BiS4 43/105が、GL20 IgGと同程度まで、致死を阻止し、肺でのウイルス複製を低下させ得ることを示す。
【0304】
B型インフルエンザ感染に対する予防的活性
GL20/39 BiS4 43/105と親FBC39 IgGの双方が、用量依存性様式で致死性のB型インフルエンザ感染に対する保護を与えた。BiS分子の3mg/kg相当のIP注射が、B/FLA/06 yamagata系統及びB/MAL/04 victoria系統ウイルスを負荷した動物の100%を保護した(図5A及びCの実線)。BiS及びFBC39は3mg/kg用量で100%の生存率で完全な保護をもたらしたが、FBC39は、両方のB型インフルエンザ感染モデルにおいて0.3mg/kgの用量レベルでFBC39よりも優れた保護を示した。肺におけるウイルス力価を感染後5日目に評価した時、両方の抗体分子が肺ウイルス力価を低下させ、それは3mg/kg相当用量で最も明白であった。BiSをIgGと比べると、我々は、B/FLA/06 yamagata感染モデルにおいて類似するウイルス力価の低下を認めるが、BiSは、B/Mal/04 victoria株に感染させたマウスにおいて、肺ウイルス力価低下ではFBC39ほど有効ではなかった(図5B及びD)。まとめると、図4及び5でのこれらのデータは、GL20/39 BiS4 43/105が、A型及びB型インフルエンザ致死感染モデルの双方において致死を有効に阻止し、肺でのウイルス複製を低下させ得ることを示す。
【0305】
実施例9.A型インフルエンザ及びB型インフルエンザ感染の致死マウスモデルにおけるA型及びB型インフルエンザBiS構築物のオセルタミビルと比べてのインビボでの治療的保護
BiS分子の治療効果を小分子NA阻害剤のオセルタミビルと直接的に比較するため、我々はA型及びB型インフルエンザ感染のインフルエンザマウスモデルを用いた。
【0306】
GL20/39 BiS4 43/105とオセルタミビルの治療的比較(図5
マウスに2.5MLD50のA/WSN/33 H1ウイルス又は7MLD50のB/FLA/06 yamagata系統ウイルスを接種し、次に、感染後1日目、2日目、3日目、又は4日目のいずれかに開始した5日間のオセルタミビルの、GL20/39 BiS4 43/105の10mg/kg相当(14.1mg/kg)又は1日2回の25mg/kgでの単回静注投与量で経口的に治療した。1群あたり動物10匹における体重減少及び生存について監視し、動物4匹を屠殺し、肺ウイルス力価を上記のように測定した。さらに、肺機能の非浸潤的な読み取りとして、1群あたり動物4匹に対する感染後6日目、血液酸素飽和レベルをパルス酸素測定(マウスox)を用いて測定した。
【0307】
BiS分子を用いる治療は、感染後2日目の投与時、マウスの100%をA/WSN/33又はB/FLA/06での致死感染から保護した(図6A及びB)。BiS分子は、治療が感染後3日目まで遅延した時でさえ、A型又はB型インフルエンザウイルスのいずれかを感染させた動物の50%における致死を依然として阻止した。A型インフルエンザ感染モデルでは、1日目又はそれより以降に治療を行った時、オセルタミビルは保護を全く示さなかったが、それは優れた保護をもたらし、B型インフルエンザ感染後1日目又は2日目に投与を開始した時、生存率は90〜100%であった。オセルタミビルはB型インフルエンザモデルにおいて十分に保護したが、BiSは、より優れた保護への傾向を示し、感染後2日目、3日目及び4日目に投与した時、生存率がオセルタミビルより高まった(図6A及びB)。
【0308】
図6(C及びD)は、感染後5日目にBiS又はオセルタミビルで治療したマウスにおける肺ウイルス力価を示した。A/WSN/33 H1N1ウイルスでの感染後の様々な時点でBiS分子を用いる治療は、肺でのウイルス複製を、感染後1日目の治療開始時の3より大きいlogのウイルス低下から感染後4日目の治療開始時の1logのウイルス力価低下まで時間依存性様式で阻害した(図6C)。オセルタミビルと比べて、BiS分子は、感染後2日目、3日目又は4日目の治療開始時、1〜2logのより大きい低下を示した。
【0309】
肺機能に対する異なる治療の効果を評価するため、酸素飽和レベルをパルス酸素測定により測定した(図6E及びF)。無関係対照mAbのみで治療した感染動物は、ナイーブ動物における98%と比べて、A/WSN/33に対して80%及び感染後6日目での78%までのパーセント酸素飽和における低下を示した。GL20/39 BiS4 43/105を用いる治療は、治療が感染後4日目まで遅延した時でさえ、酸素飽和レベルを90%未満への低下から阻止した一方、オセルタミビルで治療した動物は、無関係対照mAbで治療した場合と類似するレベルで酸素飽和の低下を示した(図6E)。マウスをB/FLA/06に感染させ、次にBiS又はオセルタミビルで治療した時、両方の薬剤は肺機能を保護し、感染後1日目の治療開始時、BiS治療動物はややより高い酸素飽和レベルを有した(図6F)。感染後2日目の治療開始時、BiS治療動物は、4匹中3匹の治療動物においてオセルタミビル治療動物よりも有意に改善した肺機能を示した(平均92%対86%)。全体として、これら2つの試験によると、GL20/39 BiS4 43/105が、A型及びB型インフルエンザに致死量で感染した動物において、感染後3日目までの治療開始時、致死を阻止し、ウイルス力価を減少させ、肺機能を保護することが示される。
【0310】
参照による援用
特許、特許出願、論文、教科書などを含む、本明細書中で引用されるすべての参考文献や、それらの中で引用される参考文献は、それらがまだ引用されない限り、本明細書でそれら全体が参照により本明細書中に援用される。
【0311】
配列
配列番号1 (FY1 VL核酸配列)
【化13】
配列番号2 (FY1 VLアミノ酸配列)
【化14】
配列番号3 LCDR1 RTSQSLSSYLH
配列番号4 LCDR2 AASSLQS
配列番号5 LCDR3 QQSRT
配列番号6 (FY1 VH核酸配列)
【化15】
配列番号7 (FY1 VHアミノ酸配列)
【化16】
配列番号8 HCDR1 SNNAVWN
配列番号9 HCDR2 RTYYRSKWYNDYAESVKS
配列番号10 HCDR3 SGHITVFGVNVDAFDM
配列番号11 (GL20 VL核酸配列)
【化17】
配列番号12 (GL20 VLアミノ酸配列)
【化18】
配列番号13 LCDR1 RTSQSLSSYTH
配列番号14 LCDR2 AASSRGS
配列番号15 LCDR3 QQSRT
配列番号16 (GL20 VH核酸配列)
【化19】
配列番号17 (GL20 VHアミノ酸配列)
【化20】
配列番号18 HCDR1 SYNAVWN
配列番号19 HCDR2 RTYYRSGWYNDYAESVKS
配列番号20 HCDR3 SGHITVFGVNVDAFDM
配列番号21 (FBC39 VL DNA)
【化21】
配列番号22 (FBC39 VLタンパク質)
【化22】
配列番号23 (FBC39 LCDR−1−Kabat):RASQDISTWLA
配列番号24 (FBC39 LCDR−2−Kabat):AASSLQS
配列番号25 (FBC39 LCDR−3−Kabat):QQANSFPPT
配列番号26 (FBC39 VH DNA)
【化23】
配列番号27 (FBC39 VHタンパク質)
【化24】
配列番号28 (FBC39 HCDR−1−Kabat):NAWMS
配列番号29 (FBC39 HCDR−2−Kabat):RIKSNTDGGTTDYAAPVKG
配列番号30 (FBC39 HCDR−3−Kabat):DGPYSDDFRSGYAARYRYFGMDV
配列番号31 (FBC39 scFvアミノ酸配列):
【化25】
配列番号32 (FBC39 VLタンパク質−scFv)
【化26】
配列番号33 (FBC39 VHタンパク質−scFv)
【化27】
配列番号34 (FBC39−43/105 scFvアミノ酸配列):
【化28】
配列番号35 (FBC39 VLタンパク質−scFv43/105)
【化29】
配列番号36 (FBC39 VHタンパク質−scFv43/105)
【化30】
配列番号37 (FBC39 FTL VL DNA)
【化31】
配列番号38 (FBC39 FTL VLタンパク質)
【化32】
配列番号39 (FBC39 FTL LCDR−1−Kabat):RASQDISTWLA
配列番号40 (FBC39 FTL LCDR−2−Kabat):AASSLQS
配列番号41 (FBC39 FTL LCDR−3−Kabat):QQANSFPPT
配列番号42 (FBC39 FTL VH DNA)
【化33】
配列番号43 (FBC39 FTL VHタンパク質)
【化34】
配列番号44 (FBC39 FTL HCDR−1−Kabat):NAWMS
配列番号45 (FBC39 FTL HCDR−2−Kabat):RIKSNTDGGTTDYAAPVKG
配列番号46 (FBC39 FTL HCDR−3−Kabat):DGPYSDDFRSGYAARYRYFGMDV
配列番号47 (FBC39 FTL scFvアミノ酸配列):
【化35】
配列番号48 (FBC39 FTL VLタンパク質−scFv)
【化36】
配列番号49 (FBC39 FTL VHタンパク質−scFv)
【化37】
配列番号50 (FBC39FTL−43/105 scFvアミノ酸配列):
【化38】
配列番号51 (FBC39 FTL VLタンパク質−scFv43/105)
【化39】
配列番号52 (FBC39 FTL VHタンパク質−scFv43/105)
【化40】
配列番号53 (FBD94 VL DNA)
【化41】
配列番号54 (FBD94 VLタンパク質)
【化42】
配列番号55 (FBD94 LCDR−1−Kabat):RASRSITTFLA
配列番号56 (FBD94 LCDR−2−Kabat):DASNRAT
配列番号57 (FBD94 LCDR−3−Kabat):QQRDHWPPI
配列番号58 (FBD94 VH DNA)
【化43】
配列番号59 (FBD94 VHタンパク質)
【化44】
配列番号60 (FBD94 HCDR−1−Kabat):DYAIN
配列番号61 (FBD94 HCDR−2−Kabat):IISWDSGRIGYADSVRG
配列番号62 (FBD94 HCDR−3−Kabat):DMLAYYYDGSGIRYNLYGMDV
配列番号63 (FBD94 scFvアミノ酸配列):
【化45】
配列番号64 (FBD94 VLタンパク質−scFv)
【化46】
配列番号65 (FBD94 VHタンパク質−scFv)
【化47】
配列番号66 (GL20/39 BiS4 100/44軽鎖):
【化48】
配列番号67 (GL20/39 BiS4 100/44重鎖):
【化49】
配列番号68 (GL20/39 BiS4 43/105軽鎖):
【化50】
配列番号69 (GL20/39 BiS4 43/105重鎖):
【化51】
配列番号70 (FY1/39 BiS2 100/44フォワードプライマーにおけるFBC39 scFv−FY1 VH DNA)
TTCTCTCCACAGGTGTACACTCCGACATCCAGATGACCCAGTCTC
配列番号71 (FY1/39 BiS2 100/44リバースプライマーにおけるFBC39 scFv−FY1 VH DNA)
GGATGGGCCCTTGGTCGACGCGCTTGACACGGTGACCATAGTC
配列番号72 (FBC39 scFv FY1/39 BiS4 100/44フォワードプライマー)
CTCTGGCGGAGGGggatccGACATCCAGATGACCCAGTCTC
配列番号73 (FBC39 scFv FY1/39 BiS4 100/44リバースプライマー)
【化52】
配列番号74 (BiS1 FBC39フォワードプライマー):
CTGGCTCCCCGGGGCGCGCTGTGACATCCAGATGACCCAGTCTCC

配列番号75 (BiS1 FBC39リバースプライマー):
CCCCTCCGCCGGATCCCCCTCCGCCTGAGGAGACGGTGACCGTGGTC
配列番号76 (BiD1 FY1−VLフォワードプライマー):
AGGGGGATCCGGCGGAGGGGGCTCTGATATTCAGATGACCCAGAGCCC
配列番号77 (BiS1 FY1−VLリバースプライマー):
TGGTGCAGCCACCGTACGTTTGATCTCCACCTTAGTGCCC
配列番号78 (FY1/39 BiS3 100/44−FBC39 scFvフォワードプライマー):
【化53】
配列番号79 (FY1/39 BiS3 100/44−FBC39 scFvリバースプライマー):
TCAATGAATTCGCGGCCGCTCATGAGGAGACGGTGACCGTGGTC
配列番号80 (FY1/94 BiS2 100/44−FBD94 scFvフォワードプライマー):
TTCTCTCCACAGGTGTACACTCCGAAATTGTGTTGACACAGTCTC
配列番号81 (FY1/94 BiS2 100/44−FBD94 scFvリバースプライマー):
CCCCTCCGCCGGATCCCCCTCCGCCTGAGGAGACGGTGACCGTGGTC
配列番号82 (FY1/94 BiS2 100/44−FY1 VHフォワードプライマー):
AGGGGGATCCGGCGGAGGGGGCTCTCAGGTCCAGCTGCAGGAGAGC
配列番号83 (FY1/94 BiS2 100/44−FY1 VHリバースプライマー):
GGATGGGCCCTTGGTCGACGCGCTTGACACGGTGACCATAGTC
配列番号84 (FY1/94 BiS4 100/44−FBD94 scFvフォワードプライマー):
CTCTGGCGGAGGGGGATCCGAAATTGTGTTGACACAGTCTC
配列番号85 (FY1/94 BiS4 100/44−FBD94 scFvリバースプライマー):
【化54】
配列番号86 (FY1/39 BiS4 43/105−FBC39−43/105 scFvフォワードプライマー):
CTCTGGCGGAGGGggatccGACATCCAGATGACCCAGTCTC
配列番号87 (FY1/39 BiS4 43/105−FBC39−43/105 scFvリバースプライマー):
【化55】
配列番号88 (GL20/39FTL BiS4 100/44−FBC39FTL scFvフォワードプライマー):
CTCTGGCGGAGGGGGATCCGACATCCAGATGACCCAGTCTC
配列番号89 (GL20/39FTL BiS4 100/44−FBC39FTL scFvリバースプライマー):
【化56】
配列番号90 (GL20/39FTL BiS4 43/105−FBC39FTL43/105 scFvフォワードプライマー):
CTCTGGCGGAGGGggatccGACATCCAGATGACCCAGTCTC
配列番号91 (GL20/39FTL BiS4 43/105−FBC39FTL43/105 scFvリバースプライマー):
【化57】
配列番号92 (Gly/serリンカー)
GGGGSGGGGSGGGGSGGGGS
配列番号93 (Gly/serリンカー)
[GGGGS]n(式中、nは0、1、2、3、4、若しくは5)
配列番号94 (FBC−39 LCDR−1−IMGT):QDISTW
配列番号95 (FBC−39 LCDR−2−IMGT):AAS
配列番号96 (FBC−39 LCDR−3−IMGT):QQANSFPPT
配列番号97 (FBC−39 HCDR−1−IMGT):GLSFLNAW
配列番号98 (FBC−39 HCDR−2−IMGT):IKSNTDGGTT
配列番号99 (FBC−39 HCDR−3−IMGT):TDGPYSDDFRSGYAARYRYFGMDVW
配列番号100 (FBC−39 FTL LCDR−1−IMGT):QDISTW
配列番号101 (FBC−39 FTL LCDR−2−IMGT):AAS
配列番号102 (FBC−39 FTL LCDR−3−IMGT):QQANSFPPT

配列番号103 (FBC−39 FTL HCDR−1−IMGT):GFTFLNAW
配列番号104 (FBC−39 FTL HCDR−2−IMGT):IKSNTDGGTT
配列番号105 (FBC−39 FTL HCDR−3−IMGT):TTDGPYSDDFRSGYAARYRYFGMDV
配列番号106 (Gly/serリンカー)
[GGGG]n(式中、nは0、1、2、3、4、若しくは5)
配列番号107 (FY1/39 BiS2 100/44軽鎖)
【化58】
配列番号108 (FY1/39 BiS2 100/44重鎖)
【化59】
配列番号109 (FY1/39 BiS4 100/44軽鎖)
【化60】
配列番号110 (FY1/39 BiS4 100/44重鎖)
【化61】
配列番号111 (FBC39 scFv−FY1 VH DNA):
【化62】
配列番号112 (FBC39 scFv DNA):
【化63】
配列番号113 (FY1/39 BiS1 100/44軽鎖)
【化64】
配列番号114 (FY1/39 BiS1 100/44重鎖)
【化65】
配列番号115 (FY1/39 BiS3 100/44軽鎖)
【化66】
配列番号116 (FY1/39 BiS3 100/44重鎖)
【化67】
配列番号117 (FY1/94 BiS2 100/44軽鎖)
【化68】
配列番号118 (FY1/94 BiS2 100/44重鎖)
【化69】
配列番号119 (FBD94 scFv DNA):
【化70】
配列番号120 (FY1/39 BiS4 43/105軽鎖)
【化71】
配列番号121 (FY1/39 BiS4 43/105重鎖)
【化72】
配列番号122 (FBC39−43/105 scFv DNA):
【化73】
配列番号123 (GL20 LC/VH):
【化74】
配列番号124 (FBC39FTL scFv DNA):
【化75】
配列番号125 (GL20/39FTL BiS4 43/105軽鎖)
【化76】
配列番号126 (GL20/39FTL BiS4 43/105重鎖)
【化77】
配列番号127 (FBC39FTL43/105 scFv DNA):
【化78】
配列番号128 (GL20/39FTL BiS5 43/105軽鎖)
【化79】
配列番号129 (GL20−FBC39 BiS5−GL20VH−Fc(CH3−)−リンカー−FBC39 scFv−リンカー−Fc(−CH3))
【化80】
配列番号130 (GL20/39FTL BiS5 43/105軽鎖)
【化81】
配列番号131 (GL20VH BiS5−Fc(CH3−)−リンカー−FBC39(43−105)scFv−リンカー−Fc(−CH3))
【化82】
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]