特許第6867308号(P6867308)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6867308
(24)【登録日】2021年4月12日
(45)【発行日】2021年4月28日
(54)【発明の名称】多層減衰材料
(51)【国際特許分類】
   F16F 15/02 20060101AFI20210419BHJP
   B62D 29/04 20060101ALI20210419BHJP
   B32B 1/04 20060101ALI20210419BHJP
   B32B 3/18 20060101ALI20210419BHJP
【FI】
   F16F15/02 R
   B62D29/04 A
   B32B1/04
   B32B3/18
【請求項の数】10
【全頁数】28
(21)【出願番号】特願2017-565112(P2017-565112)
(86)(22)【出願日】2016年6月15日
(65)【公表番号】特表2018-521275(P2018-521275A)
(43)【公表日】2018年8月2日
(86)【国際出願番号】US2016037608
(87)【国際公開番号】WO2016205357
(87)【国際公開日】20161222
【審査請求日】2019年6月5日
(31)【優先権主張番号】62/175,638
(32)【優先日】2015年6月15日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】505005049
【氏名又は名称】スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100146466
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 正俊
(74)【代理人】
【識別番号】100173107
【弁理士】
【氏名又は名称】胡田 尚則
(74)【代理人】
【識別番号】100202418
【弁理士】
【氏名又は名称】河原 肇
(72)【発明者】
【氏名】ジョナサン エイチ.アレクサンダー
(72)【発明者】
【氏名】ゲオルク アイヒホルン
(72)【発明者】
【氏名】ロナルド ダブリュ.ゲルデス
(72)【発明者】
【氏名】トーマス ピー.ハンシェン
(72)【発明者】
【氏名】トーマス ヘルトレ
(72)【発明者】
【氏名】ユ テウク
【審査官】 鵜飼 博人
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2013/185926(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2006/0208135(US,A1)
【文献】 特表2000−509468(JP,A)
【文献】 実開昭48−029290(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16F 15/00− 15/36
B62D 17/00− 29/04
B32B 1/00− 43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
振動表面を減衰させるための多層減衰材料であって、
少なくとも1つの拘束層と、
少なくとも1つの消散層と、
複数のスペーサ要素を含む少なくとも1つの動的スペーサ層であって、前記複数のスペーサ要素は、前記消散層の材料と異なる材料で構成され、前記動的スペーサ層内部で、互いから離隔して配置されており、前記振動表面を減衰させるために使用される場合に、前記拘束層と前記振動表面との間に配置される、動的スペーサ層と、
を備え、
各スペーサ要素が、両端部を有し、前記複数のスペーサ要素のそれぞれの少なくとも一方の端部が、前記消散層に埋め込まれているか、結合しているか、接触しているか、又は極めて接近していることにより、前記複数のスペーサ要素のそれぞれの前記少なくとも一方の端部の動きにより、前記多層減衰材料内部でエネルギーが消散される、多層減衰材料。
【請求項2】
前記動的スペーサ層が、前記消散層から前記拘束層を隔てるように配置されているか、又は前記消散層が、前記動的スペーサ層から前記拘束層を隔てるように配置されている、請求項1に記載の多層減衰材料。
【請求項3】
基底層を備え、前記複数のスペーサ要素が、前記基底層から延出している、請求項1又は2のいずれかに記載の多層減衰材料。
【請求項4】
前記基底層が、前記複数のスペーサ要素と同じ材料から作製されている、請求項1〜3のいずれか一項に記載の多層減衰材料。
【請求項5】
前記拘束層が、(a)連続的又は不連続的である、(b)前記消散層又は別の消散層に隣接し、かつ接触するように配置されている、(c)前記消散層若しくは別の消散層と、連続的に、又は不連続的に接触している、あるいは(d)(a)、(b)、及び(c)の任意の組み合わせである、請求項1〜4のいずれか一項に記載の多層減衰材料。
【請求項6】
(a)乗り物、(b)電化製品、(c)任意の他の機械又は機械を備えるシステム、あるいは(d)(a)、(b)、及び(c)の任意の組み合わせの内部の、振動及び/又は騒音を減衰させる用途に関して好適な形態の、請求項1〜5のいずれか一項に記載の多層減衰材料。
【請求項7】
前記複数のスペーサ要素のそれぞれの一方の端部のみが、前記消散層に埋め込まれているか、結合しているか、接触しているか、又は極めて接近していることにより、前記複数のスペーサ要素のそれぞれの前記一方の端部が動くことが可能となる、請求項1〜6のいずれか一項に記載の多層減衰材料。
【請求項8】
前記複数のスペーサ要素のそれぞれの前記少なくとも一方の端部が、前記消散層に埋め込まれているか、結合しているか、接触しているか、又は極めて接近していることにより、前記複数のスペーサ要素のそれぞれの前記少なくとも一方の端部の動きによって、前記消散層内に歪み及び/又は変形が引き起こされ、その結果として前記消散層内部でエネルギーが消散される、請求項1〜7のいずれか一項に記載の多層減衰材料。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか一項に記載の多層減衰材料を備えている、自動車構成要素。
【請求項10】
前記構成要素が、車の屋根、ドアパネル、ダッシュの前面、又は床パネルである、請求項9に記載の自動車構成要素。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、振動表面を減衰させるための多層減衰材料に関し、詳細には、少なくとも1つの拘束層と、少なくとも1つの消散層と、少なくとも1つの動的スペーサ層とを備える、減衰材料に関し、より詳細には、動的スペーサ層が、振動表面を減衰させるために使用される場合に、拘束層と振動表面との間に配置される、複数のスペーサ要素を備える、そのような減衰材料に関する。
【背景技術】
【0002】
乗り物(例えば、自動車、飛行機、モーターボートなど)のエンジン、駆動系、及び他の部分は、構造伝播騒音として、その乗り物の本体を貫通して伝播する、機械的振動を発生させる場合がある。そのような構造伝播騒音は、空気伝播騒音へと変容し得る。これらの構造振動は、他の乗り物区域内(例えば、客室の内部)に、それらの運動エネルギーが空気伝播騒音として放射される前に、減衰させることが有用であり得る。
【0003】
典型的には、これらの構造振動を減衰させるために、ビチューメンのような粘弾性材料又は溶射プラスチック物質(すなわち、単層の減衰材料)の1種以上の塗布物が、例えば乗り物の本体パネルの表面上に、コーティング若しくは他の方式で塗布される。それら本体パネル及び付着した粘弾性層が変形することにより、その粘弾性材料内部のポリマー鎖の伸長及び/又は圧縮が引き起こされ、その結果として、例えば構造伝播振動(例えば、エンジン、タイヤ/道路の相互作用、コンプレッサ、ファンなどからの構造伝播振動)の形態の、機械的エネルギーの消散、及び振動の減衰をもたらすことができる。
【0004】
この減衰材料に、第2の層である拘束層を追加することによって、より良好な減衰性能を達成することができる(拘束型層減衰−CLD(constrained layer damping))。この拘束層は、粘弾性材料層ほど弾性ではないように選択され、減衰対象となるパネルの反対側で、その粘弾性材料層又は消散層の上部に取り付けることができる。この拘束層は、例えば、アルミニウムから作製することができる。粘弾性材料層の上部に拘束層が取り付けられている場合、パネルが変形するたびに、消散層内部のポリマー鎖の伸長及び圧縮ばかりではなく、その消散層内部での剪断も引き起こされる。それゆえ、追加的拘束層を有する減衰材料は、消散層のみを有する減衰材料よりも有効である。拘束層のために使用される材料は、その減衰材料の重量を増大させるが、このことは、乗り物内で使用される場合に、問題となる恐れがある。それらの材料はまた、その減衰材料の曲げ剛性も増大させるが、このことは、そのCLD材料を複雑な形状の構造体に適用する場合に、難題を生じさせる恐れがある。
【0005】
減衰材料の効率はまた、粘弾性の減衰層又は消散層の変形が、「動的スペーサ」層又は「スタンドオフ」層によって増幅される場合にも、向上し得る。このスタンドオフ層は、通常、減衰対象となるパネルと拘束層との間に配置され、典型的には、その一方の側又は両側に、粘弾性の消散層を有する。効率を向上させるための1つの方法は、動的スペーサ層を使用することによって、消散層(1つ以上)内部での歪みを増大させることである。
【0006】
市販の減衰材料の一例は、Aearo Technologies LLC(Indianapolis,IN)製の、E−A−Rブランドの材料ADC−1312であり、3M Company(Minnesota,USA)より市販されている。この材料は、低重量で極めて優れた性能を提供するポリウレタン(PU)発泡体と、薄いアルミニウムシートとを含む。
【0007】
更には、スロット付きのスタンドオフ層が既知である。そのようなスロットは、その減衰材料の曲げ剛性若しくは剛直性、及び全体的な質量若しくは重量を低減することが見出されている(例えば、「Society of Photo−Optical Instrumentation Engineers」Vol.3989(2000)、132ページを参照されたい)。
【0008】
米国特許第2,069,413号は、薄い振動性の本体又はパネル、すなわち、本質的に自由振動が可能な薄い本体又はパネルの、振動を減衰させるための材料を開示している。これらの材料は、乗り物が動作中である場合に、その乗り物の本体内部での、騒音及び攪乱性の空気脈動を低減する目的のために使用される。
【0009】
米国特許第5,186,996号は、自動車内での騒音低減のための、吸音多層構造体を開示している。この吸音多層構造体は、揺動することが可能な構造部分と、緩やかに係合する減衰シートとを備える。この減衰シートは、可撓性の材料及び高い材料吸収係数を備えるものであり、粘弾性の支持層が緊密に接続された、重いシートで構成されている。この支持層は、角度付きで構成された複数の支持要素を備える。個々の支持要素は、その支持要素の個々の縁部の区域内で、高められた粘弾性吸収作用が得られるように、角度付き構成のものであることが不可欠である。床、ダッシュボード、ドア、屋根などが、これらの自動車本体部分のそれぞれで発生する騒音レベルを低減するために覆われる。
【0010】
上記に鑑みて、有効性の高い減衰特性を提供する一方で、比較的軽量であり、かつ低度の曲げ剛性を呈する減衰材料が、依然として必要とされている。
【発明の概要】
【0011】
本発明は、振動表面を減衰させるための、多層減衰材料を提供する。本明細書で使用するとき、「振動表面」とは、振動若しくは他の方式で揺動することが可能な、基材(例えば、乗り物、電化製品、又は機械の本体部分)又は他の構造体の表面である。この減衰材料は、少なくとも1つの拘束層と、少なくとも1つの消散層と、複数のスペーサ要素を含む少なくとも1つの動的スペーサ層とを備える。この動的スペーサ層は、振動表面を減衰させるために使用される場合に、拘束層と振動表面との間に配置される。各スペーサ要素は、両端部を有し、それら複数のスペーサ要素のそれぞれの少なくとも一方の端部が、消散層に埋め込まれているか、結合しているか、接触しているか、又は極めて接近していることにより、それら複数のスペーサ要素のそれぞれの少なくとも一方の端部が動いて、その多層減衰材料内部でエネルギーが消散される。
【0012】
本発明による多層減衰材料は、(a)例えば、自動車(例えば、乗用車、トラック、バスなど)、航空機(例えば、単発飛行機又はジェットエンジン飛行機など)、列車、水上船舶(例えば、船、ボートなど)、又は任意の他の乗り物などの、乗り物、(b)電化製品(例えば、衣類洗濯機又は食器洗浄機、ブレンダなど)、並びに/あるいは(c)振動及び/又は騒音を発生する、任意の他の機械若しくはシステム(例えば、発電機、エレベータ、空気処理システムなど)の、振動表面(例えば、本体パネル又は他の本体部若しくは構成要素の一部分を形成するもの)からの、振動エネルギー及び/又は騒音を消散することが可能な、減衰材料あるいは減衰システムを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
ここで、本発明の特定の実施形態を例示する以下の図を参照して、本発明をより詳細に説明するものとする。
図1A】未変形段階での、多層拘束型減衰材料の断面概略図である。
図1B】変形段階での、多層拘束型減衰材料の断面概略図である。
図2】動的スペーサ層を有する、多層拘束型減衰材料の断面概略図である。
図3】本発明による、多層減衰材料の一実施形態の断面概略図である。
図4】本発明による、多層減衰材料の別の実施形態の断面概略図である。
図5】本発明による、多層減衰材料の別の実施形態の断面概略図である。
図6】本発明による、多層減衰材料の別の実施形態の断面概略図である。
図7】本発明による、多層減衰材料の別の実施形態の断面概略図である。
図8】本発明による、多層減衰材料の別の実施形態の断面概略図である。
図9】本発明による、多層減衰材料の別の実施形態の断面概略図である。
図10】本発明による、多層減衰材料の別の実施形態の断面概略図である。
図11】複数の動的スペーサ要素が、互いから等間隔に離隔して配置されている、例示的な動的スペーサ層の概略上面図である。
図12】複数の動的スペーサ要素が、動的スペーサ層内部の場所に、均等又は均一に配置されている、例示的な動的スペーサ層の概略上面図である。
図13】複数の動的スペーサ要素が、動的スペーサ層内部の場所に、不均等又は不均一に配置されている、例示的な動的スペーサ層の概略上面図である。
図14A】本発明による、動的スペーサ層の種々の動的スペーサ要素の概略側面図である。
図14B】本発明による、動的スペーサ層の種々の動的スペーサ要素の概略側面図である。
図14C】本発明による、動的スペーサ層の種々の動的スペーサ要素の概略側面図である。
図14D】本発明による、動的スペーサ層の種々の動的スペーサ要素の概略側面図である。
図14E】本発明による、動的スペーサ層の種々の動的スペーサ要素の概略側面図である。
図14F】本発明による、動的スペーサ層の種々の動的スペーサ要素の概略側面図である。
図14G】本発明による、動的スペーサ層の種々の動的スペーサ要素の概略側面図である。
図14H】本発明による、動的スペーサ層の種々の動的スペーサ要素の概略側面図である。
図15A】本発明による、動的スペーサ層の種々の動的スペーサ要素の概略上面図である。
図15B】本発明による、動的スペーサ層の種々の動的スペーサ要素の概略上面図である。
図15C】本発明による、動的スペーサ層の種々の動的スペーサ要素の概略上面図である。
図15D】本発明による、動的スペーサ層の種々の動的スペーサ要素の概略上面図である。
図15E】本発明による、動的スペーサ層の種々の動的スペーサ要素の概略上面図である。
図15F】本発明による、動的スペーサ層の種々の動的スペーサ要素の概略上面図である。
図15G】本発明による、動的スペーサ層の種々の動的スペーサ要素の概略上面図である。
図15H】本発明による、動的スペーサ層の種々の動的スペーサ要素の概略上面図である。
図15I】本発明による、動的スペーサ層の種々の動的スペーサ要素の概略上面図である。
図15J】本発明による、動的スペーサ層の種々の動的スペーサ要素の概略上面図である。
図15K】本発明による、動的スペーサ層の種々の動的スペーサ要素の概略上面図である。
図16】本発明による、動的スペーサ層の動的スペーサ要素の別の実施形態の概略側面図である。
図17図16に示される動的スペーサ要素の実施形態の概略上面図である。
図18】本発明による、動的スペーサ層の動的スペーサ要素の別の実施形態の概略側面図である。
図19図18に示される動的スペーサ要素の実施形態の概略上面図である。
図20】市販製品と比較した、本発明による種々の多層減衰材料の減衰性能を示す図表である(ピンは上向き)。
図21】市販製品と比較した、本発明による種々の多層減衰材料の減衰性能を示す図表である(ピンは下向き)。
図22】傾斜した動的スペーサ要素のパターンを有し、幅W及び長さLを有する、本発明による動的スペーサ層の別の実施形態の概略上面図である。
図23A】本発明による、動的スペーサ層の動的スペーサ要素の別の実施形態の概略斜視図である。
図23B図23Aの動的スペーサ要素の側面図である。
図23C図23Aの動的スペーサ要素の端面図である。
図24A】本発明による、動的スペーサ層の動的スペーサ要素の別の実施形態の概略斜視図である。
図24B図24Aの動的スペーサ要素の側面図である。
図24C図24Aの動的スペーサ要素の端面図である。
図25】接続ピンによって一体に接合された垂直スペーサ要素を有する、動的スペーサ層の実施形態の概略上面図である。
図26】それぞれが同じ角度で傾き、接続ピンによって一体に接合された、複数列の傾斜型スペーサ要素を有し、隣り合う列のスペーサ要素が、反対方向で傾いている、動的スペーサ層の実施形態の概略上面図である。
図27】接続ピンによって一体に接合された、不規則に角度付けされたスペーサ要素を有する、動的スペーサ層の実施形態の概略上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以降では、本発明の種々の実施形態が説明され、一部が図面で示されるが、同様の要素には、同様の参照番号が付されている。本発明の更なる教示もまた、以下で説明される。
【0015】
図1aは、減衰対象となる構成要素又は振動表面であるパネル10を有する、先行技術による多層拘束型減衰材料の断面概略図である。この減衰材料自体は、消散層3及び拘束層4を備える。消散層3は、粘弾性材料を備え得るものであり、拘束層4は、消散層3ほど弾性ではない材料を備え得る。拘束層4が、消散層に取り付けられている場合、パネル10が変形するたびに、消散層の伸長及び圧縮ばかりではなく、剪断も引き起こされる(図1bを参照)。それゆえ、追加的拘束層を有する減衰材料は、消散層のみを有する減衰材料よりも有効である。
【0016】
図2は、動的スペーサ層を有する、先行技術による多層拘束型減衰材料の断面概略図である。この図もまた、減衰対象となる構成要素又は振動表面である、パネル10を示す。この多層減衰材料は、第1の消散層又は接着剤層1、動的スペーサ層2、第2の消散層3、及び拘束層4を備える。動的スペーサ層2は、パネル10の変形を、消散層3内に伝達する。てこの効果により、この変形は増大され、それゆえ、消散層内で引き起こされる伸長、圧縮、及び剪断も同様に増大される。それゆえ、動的スペーサ層2により、消散層3内の歪みが増大する。従来技術で使用される動的スペーサ層材料の一例は、PU発泡体である。
【0017】
図3は、本発明による多層減衰材料の一実施形態の断面概略図である。図3もまた、減衰対象となる構成要素又は振動表面である、パネル10を示す。本発明による多層減衰材料は、パネル10に隣接する第1の消散層1、動的スペーサ層2、第2の消散層3、及び拘束層4を、その順で備える。動的スペーサ層2は、基底層2aと、その基底層2aから延出する複数のスペーサ要素2bとを備える。基底層2aは、第1の消散層1に隣接して配置されているため、複数のスペーサ要素2bは、第2の消散層3の方向へと延出している(ピンは上向き)。複数のスペーサ要素2bを有する動的スペーサ層2を設けることにより、a)均質な動的スペーサ層を有するスペーサ層と比較して軽量化され、b)本発明による多層減衰材料の屈曲が可能となるという利点がもたらされる。
【0018】
図4は、本発明による多層減衰材料の一実施形態の断面概略図である。図4もまた、減衰対象となる構成要素である、パネル10を示す。本発明による多層減衰材料は、図3に示される実施形態のように、パネル10に隣接する第1の消散層1、動的スペーサ層2、任意選択的な第2の消散層3、及び拘束層4を、その順で備える。第2の消散層3が使用されない場合には、拘束層4及び基底層2aは、例えば、熱、摩擦などの適用を使用して一体に融着されることによって、又は他の方式で、例えば機械的締結具(1つ以上)を使用して、互いに対して固定されることによって、互いに結合可能であることが望ましい場合がある。この動的スペーサ層もまた、基底層2aと、その基底層2aから延出する複数のスペーサ要素2bとを備える。これら2つの実施形態の相違点は、多層減衰材料の他の層に対する、複数のスペーサ要素2b及び基底層2aの向きである。基底層2aは、第2の消散層3に隣接して配置されているため、複数のスペーサ要素2bは、第1の消散層1の方向へと延出している(ピンは下向き)。
【0019】
図5によれば、動的スペーサ層2は、動的スペーサ要素2bの各側に1つずつの、2つの基底層2aを備える。
【0020】
図6は、本発明による多層減衰材料の別の実施形態の断面概略図である。この場合もまた、その多層構成は、減衰対象となる構成要素である、パネル10から開始される。本発明による多層減衰材料は、図3及び図4に示される実施形態のように、パネル10に隣接する第1の消散層1、動的スペーサ層2、第2の消散層3、及び拘束層4を、その順で備える。動的スペーサ層2は、基底層を備えず、動的スペーサ要素2bのみを備える。
【0021】
図7は、本発明による多層減衰材料の別の実施形態の断面概略図である。パネル10に隣接して、図3図4図5、及び図6に示される実施形態のように、パネル10に隣接する第1の消散層1、動的スペーサ層2、第2の消散層3、及び拘束層4を有する、多層減衰材料を見ることができる。動的スペーサ層2は、基底部2aと、その基底層2aの両方向に延出して、2つの消散層1及び消散層3に埋め込まれているか若しくは結合されている、複数の動的スペーサ要素2bとを備える。また、2つの層2aの間に更なる第3の消散層を有する、分割型基底層2a(図面では示さず)を有することも可能である。
【0022】
図8に示される実施形態は、2つの上部層(消散層3及び拘束層4)が取り除かれている点で、本発明の前述の実施形態とは異なる。それゆえ、この多層減衰材料は、消散層1及びスペーサ層2を備えるものであり、スペーサ層2は、基底層2a及び複数の動的スペーサ要素2bを備える。それら複数の動的スペーサ要素は、消散層1と基底層2aとを隔てるように配置されている。この実施形態では、基底層2aが、拘束層4としての役割を果たす。
【0023】
図9及び図10に示される実施形態は、層1を有さない場合(図9)、及び層3を有さない場合(図10)の、図3の実施形態を示す。図4図7に示される他の全ての実施形態の場合もまた、層1又は層3のいずれかを除去することが可能である。これらの実施形態では、動的スペーサ層は、例えばエポキシ樹脂接着剤などの、粘弾性特性を全く有さないか若しくは殆ど有さない接着剤によって、パネル10に(図9)、又は拘束層に(図10)、取り付けることができる。
【0024】
次に続く図11図13及び図22は、複数の動的スペーサ要素が、種々の方式で配置されている、動的スペーサ層の概略上面図である。図11では、それら複数の動的スペーサ要素は、互いから等間隔に離隔して配置されている。図12では、それら複数の動的スペーサ要素は、動的スペーサ層内部の場所に、均等又は均一に配置されている。この場合、それら複数の動的スペーサ要素は、5つの動的スペーサ要素からなるグループの内部で、配置されている。図13では、それら複数の動的スペーサ要素は、動的スペーサ層内部の場所に、不均等又は不均一に配置されている。この場合、それら複数の動的スペーサ要素は、不規則に配置されている。本発明の動的スペーサ層2は、一定の(例えば、図22に示されるような約20°の)角度で幅方向Wから傾斜している横方向の列で配置された、動的スペーサ要素2bを有することが望ましい場合がある。
【0025】
図14A図14Hは、動的スペーサ層2bの、可能な動的スペーサ要素の概略側面図を示す。これらの図面から見ることができるように、例えば、種々のI字形状、H字形状、又はx字形状の動的スペーサ要素などの多種多様な形状、並びに、例えば、中実の、若しくは薄い壁部の中空の、ガラス、セラミック、又はプラスチックのビーズとすることが可能な、球形状の動的スペーサ要素(図示せず)などの他の形状が可能である。これらの動的スペーサ要素は、1つの均質体として示されているが、既に上述されたように、2種以上の材料から、それらの動的スペーサ要素を作製することも可能である。図示の形状は全て、サイズ、寸法を変更する、外面層をより丸くするなどのように、変更することができる。それらの形状はまた、中空にすることもできる。
【0026】
図15A図15Kは、動的スペーサ層2bの、可能な動的スペーサ要素の概略上面図を示す。これらの図面から見ることができるように、円形、正方形、六角形、八角形、三角形、特殊形状の多角形、星形状の動的スペーサ要素のような、多種多様な断面形状が可能である。これらの動的スペーサ要素は、充填されたものとすることができ、又は中空(例えば、管状)のものとすることもできる。それらの動的スペーサ要素は、そのスペーサ要素を形成する外側シースと同じ材料で充填することができ、又は異なる材料(例えば、更なる減衰特性をもたらす材料)で充填することもできる。
【0027】
図16は、I字形状の動的スペーサ層要素が基底層から延出している、本発明による更なる動的スペーサ層の側面図である。図17で見ることができるように、それらの動的スペーサ要素は、互いから等間隔に離隔している。
【0028】
図18は、円筒形の動的スペーサ要素が基底層から延出している、本発明による更なる動的スペーサ層の側面図である。これらの動的スペーサ要素は、丸い上端部を備える。この動的スペーサ層の各スペーサ要素の丸い上端部は、上述の理由のために、キャップを装着することが望ましい場合がある。図19で見ることができるように、それらの動的スペーサ要素は、互いから等間隔に離隔している。
【0029】
図23A図23Cは、本発明による動的スペーサ層の動的スペーサ要素の別の実施形態の図であり、スペーサ要素2bのそれぞれは、隣り合う3つの要素2bからなるグループ内で、約45°の角度で傾いている。各グループの3つのスペーサ要素2bは、それらの端部の一方で、(例えば、接着剤又は熱定着によって)一体に接合されることにより、三脚形状を形成している。これらの3つのスペーサ要素2bのグループは、それらの他方の端部で、互いに接合されている。
【0030】
図24A図24Cは、本発明による動的スペーサ層の動的スペーサ要素の別の実施形態の概略図であり、スペーサ要素2bのそれぞれは、隣り合う4つの要素2bからなるグループ内で、約45°の角度で傾いている。各グループの4つのスペーサ要素2bは、それらの端部の一方で、(例えば、接着剤又は熱定着によって)一体に接合されることにより、図23の実施形態の三脚形状と類似した形状を形成している。これらの4つのスペーサ要素2bのグループは、同様に、それらの他方の端部で、互いに接合されている。
【0031】
図25は、垂直スペーサ要素2bを有する動的スペーサ層の実施形態の概略上面図であり、それらの垂直スペーサ要素2bは、それぞれが、比較的細い接続ピン又は接続棒12によって、それらの隣り合うスペーサ要素2bに接合されている。接続ピン12は、各スペーサ要素2bの長さに沿った中間に配置されて示されているが、ピン12は、各スペーサ要素2bの長さに沿った、任意の所望の地点に配置することができる。
【0032】
図26は、複数列の傾斜型スペーサ要素2bを有する動的スペーサ層の実施形態の概略上面図であり、それらの傾斜型スペーサ要素2bは、それぞれが、約45°の角度で傾いており、接続ピン又は接続棒12によって一体に接合されている。隣り合う列のスペーサ要素2bは、反対方向で傾いている。接続ピン12は、各スペーサ要素2bの長さに沿った中間に配置されて示されているが、ピン12は、各スペーサ要素2bの長さに沿った、任意の所望の地点に配置することができる。
【0033】
図27は、接続ピン又は接続棒12によって一体に接合された、不規則に角度付けされたスペーサ要素2bを有する、動的スペーサ層の実施形態の概略上面図である。接続ピン12は、各スペーサ要素2bの長さに沿った中間に配置されて示されているが、ピン12は、各スペーサ要素2bの長さに沿った、任意の所望の地点に配置することができる。
【0034】
動的スペーサ要素に関する例示的実施例として、ここで、以下の寸法に言及する。円筒形要素は、約2mmの直径を有し得るものであり、約4.1mm離隔して配置することができる。それらの円筒形要素は、高さ約0.4mm〜約8mmの範囲(例えば、高さ約2.2mm又は2.6mm)とすることができる。基底層は、約0.01mm〜約2mmの範囲(例えば、約0.2mm)の厚さを有し得る。それらは、例えば、ポリプロピレン樹脂から作製することができる。それらは、両側に0.13mmの接着剤の2つの層と、0.13mmの拘束層とを有し得る。
【0035】
本実施形態の減衰処理法で構成された片持ちビームを、その曲げコンプライアンスと、従来のスタンドオフ減衰器の曲げコンプライアンスとを比較するために、モデル化するものとした。市販のコードであるANSYSを使用して、本実施形態の線形弾性有限要素モデルを構築した。これらのモデルは、通常の振動表面を有さずに、減衰処理法のみからなるものとした。支持されていないビームの長さは、216mmとし、ビームの幅及び高さは、それぞれ、2.87mm及び約2.80mmとした。動的スペーサ要素は、それらの自由端部がアルミニウム拘束層から離れる方向を向くように、配置するものとした。片持ちビームの端部に対する力は、単位幅当たり1Nとした。コンプライアンスは、ビームの端部の偏向を、負荷荷重で除算したものとして算出される。このコンプライアンス値が大きいほど、その試料はより可撓性となる。PU発泡体に関するモデル化されたコンプライアンス、及び、PU発泡体を中実ポリプロピレン(PP)で置き換えたスタンドオフ減衰器に関するモデル化されたコンプライアンスと比較した場合、本実施形態は、以下の表に示されるように、遥かに大きいコンプライアンスを示す。
【表1】
【0036】
これらの有限要素モデルを更に拡張して、上記の表に列挙された3つの処理法の減衰性能を試験するものとした。振動表面を組み込むために、厚さ1mmの鋼ビームを、それらのモデルに追加した。周知のモード歪みエネルギー法を使用して、各処理法に関するシステム損失係数を算出した。様々な処理法に関する材料特性を、以下の表に示す。
【表2】
【0037】
この棒鋼の第2の曲げモードに関する、各構成のシステム損失係数を、以下で要約されるように算出した。次いで、システム損失係数対坪量の比(すなわち、「重量効率」=システム損失係数/坪量)を算出した。重量効率は、m/Kgの単位を有する。これは、その減衰処理法に関して提供される、単位質量当たりの減衰の尺度である。
【表3】
【0038】
減衰特性を向上させるために、消散層は、変形及び/又は応力印加及び/又は圧縮されている場合に、並びに/あるいは、剪断力及び/又は歪み力に晒されている場合に、エネルギーを消散することが可能な、粘弾性材料(例えば、感圧性接着剤)を備えることが望ましい場合がある。換言すれば、エネルギーの消散の大半を、消散層内部での剪断歪みによるものとすることができる。また、一部のエネルギーは、複数のスペーサ要素内で消散させることも可能である。一般的に、粘弾性材料の特性は、それらの粘弾性材料が、剪断歪み及び直接的な歪みを受けた場合に、より多くのエネルギーを消散させる傾向があるように、選択することができる。通常は、消散層は、ビチューメン、ブチル、ゴム、接着剤(例えば、エポキシ接着剤又は感圧性接着剤)、又はそのような材料に基づく樹脂組成物の材料から作製される。消散層が接着剤であり、減衰対象となる振動を経験する表面に、動的スペーサ層を接着するために使用される場合には、その消散層は、例えば、その表面が熱くなる場合などに、高温耐性接着剤であることが望ましい場合がある。この消散層は、例えば自動車用途に関しては、0.05〜5mm、典型的には0.1〜3mmの厚さを備え得る。
【0039】
この減衰構造体は、基材(例えば、乗り物、電化製品、機械などの本体パネル)に固定された後に、その減衰構造体が呈する減衰特性と比較して、いくらか(すなわち、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、又は50%未満の)、主に(すなわち、50%、55%、60%、65%、又は70%超の)、又は圧倒的に(すなわち、75%、80%、85%、90%、又は95%超の)、補剛特性を呈するように、作動的に適合させる(すなわち、寸法決定する、設計する、及び/又は構成する)ことができる。本発明による、そのような減衰構造体は、基材の全体的な重量を低減するために、厚さが低減されている基材(例えば、金属薄板)、及び/又はより軽い/より脆弱な材料(例えば、鋼からアルミニウム)で作製されている基材を、補剛するために使用することが可能である。そのような用途では、追加される減衰構造体の重量は、基材から除去された材料の重量よりも小さいことが、望ましい場合がある。より大きい補剛特性を呈するために、消散層は、エネルギーを消散するために応力下で変形する能力が劣る、より高い弾性率の材料(例えば、二液型エポキシ接着剤)を備え、その消散層に埋め込まれているか、結合しているか、接触しているか、又は極めて接近している複数のスペーサ要素のそれぞれの、少なくとも一方の端部の動きを、より強固に拘束することが、望ましい場合がある。
【0040】
本発明による多層減衰材料の拘束層は、粘弾性材料で作製された消散層ほど弾性ではないように選択されることが、望ましい場合がある。この拘束層は、例えば、何らかのプラスチック(例えば、ポリカーボネートなど)、何らかの金属(例えば、アルミニウム合金、チタン、鋼(例えば、ステンレス鋼)など)、比較的剛性の不織布若しくは織布ポリマーと繊維との複合マット、プレート、又はシート(例えば、プラスチック含浸ガラス繊維マット、炭素繊維ポリマー複合シート)、あるいは他の複合層状構造体などの、任意の軽量の高弾性率材料から、部分的に又は完全に作製することができる。
【0041】
粘弾性材料の消散層の上部に、拘束層が結合されるか、又は他の方式で取り付けられている場合、その多層減衰材料が上に配置されている(例えば、乗り物、電化製品などの本体パネルの)表面が変形するたびに、消散層内部のポリマー鎖の伸長及び圧縮ばかりではなく、その消散層内部での剪断も引き起こすことができる。したがって、本発明の例示的一実施形態では、多層減衰材料は、動的スペーサ層の各側に1つずつの、2つの消散層を含み得る。
【0042】
本発明による動的スペーサ層は、減衰対象となる(例えば、本体パネルの)表面の変形又は振動を、消散層に伝達することにより、その消散層内部に増大した歪みを生じさせる機能を発揮し得るものであり、このことにより減衰が増大する。本発明の多層減衰材料は、動的スペーサ層の一方の側に、少なくとも1つ以上の消散層を含み得るか、又は動的スペーサの両側に、少なくとも1つ以上の消散層を含み得る(すなわち、動的スペーサ層は、対向する消散層の間に配置することができる)。これらの動的スペーサ層はまた、「スタンドオフ」層と称される場合もあり、歪み拡大器としての役割を果たし得る。本発明による動的スペーサ層は、振動表面を減衰させるために使用される場合に、拘束層と振動表面との間に配置される、複数のスペーサ要素を提供する。それらの複数のスペーサ要素は、この多層減衰材料の構成体に大きい曲げ剛性を追加することなく、減衰対象となる(例えば、本体パネルの)表面の変形を、本発明の消散層内に伝達することができる。この多層減衰材料は、基材(例えば、本体パネルの側面を形成するために使用されている金属薄板)の表面に接着又は他の方式で固定される前は、それ自体、比較的低い曲げ剛性を呈し得るものであるが、そのように固定された後は、この多層減衰材料は、その基材の剛性の増大を引き起こし得る。
【0043】
減衰対象となる(例えば、パネルの)表面の変形又は振動を、消散層内に伝達して、エネルギーを消散させることを可能にするために、動的スペーサ層のスペーサ要素の両端部の少なくとも一方は、消散層に埋め込まれているか、結合しているか、接触しているか、又はある時点で接触するように極めて接近していることにより、そのスペーサ要素の少なくとも一方の端部は、消散層に対して、そのように配置されていると同時に動くことが可能となる。この動きを実行している間に、消散層内に歪み及び/又は変形を引き起こすことができ、その結果として、この多層減衰材料内部でエネルギーが消散される。消散層に対するスペーサ要素の端部の結合は、その消散層に対する直接的又は間接的な結合を含むものであり、このことは、それら動的スペーサ要素と消散層との間に追加層を有する実施形態を含み、この追加層は、スペーサ要素の端部のそのような動きを可能にし得るもの(例えば、薄いフィルム)である。動的スペーサ要素の両端部は、拘束層に面する、その動的スペーサ層の側を、又は、減衰対象となる(例えば、パネルの)表面に面する、反対の側を、追加層が間に存在するか否かに関わらず、双方向で画定し得る。この追加層は、プライマ処理層とすることが可能である。
【0044】
本発明の例示的一実施形態によれば、動的スペーサ要素は、消散層から拘束層を隔てるように配置することができる(例えば、図8を参照)。そのような実施形態では、動的スペーサ層(すなわち、その基底層又はスペーサ要素)は、例えば、何らかの熱定着若しくは摩擦融着操作によって、及び/又は追加的接着剤層を使用して、拘束層に取り付けることができる。例えば、この追加的接着剤層は、例えばエポキシ樹脂などの、粘弾性特性を全く又は殆ど提供しない、任意の種類の接着剤層とすることが可能である。また、動的スペーサ層が、減衰対象となる表面に、直接(例えば、機械的締結具、融着によって、又は接着剤を使用して)結合され、消散層が、そのスペーサ層と拘束層との間に配置される、本発明による多層減衰材料の実施形態を有することも可能である(例えば、図9を参照)。この場合もまた、動的スペーサ層(すなわち、その基底層又はスペーサ要素)は、例えば、何らかの熱定着若しくは摩擦融着操作によって、及び/又は追加的接着剤層を使用して、減衰対象となる表面に取り付けることが可能である。例えば、この追加的接着剤層は、例えば典型的なエポキシ樹脂などの、粘弾性特性を全く又は殆ど提供しない、任意の種類の接着剤層とすることが可能である。
【0045】
本発明の他の例示的一実施形態によれば、消散層は、動的スペーサ層から拘束層を隔てるように配置することができる。この実施形態では、消散層は、動的スペーサ層と拘束層とを一体に結合する、粘弾性接着剤層とすることができる。
【0046】
本発明の別の例示的実施形態によれば、消散層は、スペーサ要素の0〜100%が、その消散層内に埋め込まれるように、選択することができる。例えば、スペーサ要素の端部は、消散層に単に接触するのみ(すなわち、0%の埋め込み)とすることもでき、又は、消散層は、それらスペーサ要素間の空間を、完全に取り囲むか若しくは他の方式で充填する、発泡体(すなわち、100%の埋め込み)とすることも可能である。スペーサ要素が、消散層内に100%は埋め込まれない場合、それらスペーサ要素間の残余の空間は、追加的な減衰材料若しくは断熱材料で、及び/又は、その動的スペーサ層に他の特性を提供する代替的材料で、充填することが可能である。
【0047】
本発明の例示的一実施形態によれば、動的スペーサ要素は、動的スペーサ層内部で、互いから等間隔に離隔して配置することができる。互いから等間隔に離隔していることは、各スペーサ要素がいずれも、隣接するスペーサ要素(1つ以上)に対して同じ距離を有することを意味し得る。そのような等間隔に離隔した動的スペーサ要素の一実施例は、行及び列で配置されたスペーサ要素であり、それらの行及び列が、互いから等間隔に離隔しているものである。
【0048】
本発明の別の例示的実施形態によれば、動的スペーサ要素は、動的スペーサ層内部の場所に、均等又は均一に配置することができる。動的スペーサ層内部の場所に、均等又は均一に配置されることは、動的スペーサ要素が、あるパターンの内部に配置され、そのパターンが、動的スペーサ層内部で何度も繰り返されることを意味し得る。そのパターン内部の動的スペーサ要素は、互いから等間隔に離隔している場合もあれば、そうではない場合もある。
【0049】
本発明の別の例示的実施形態によれば、動的スペーサ要素は、動的スペーサ層内部の場所に、不均等又は不均一に配置することができる。この実施形態は、動的スペーサ層内部で不規則に配置された、動的スペーサ要素を提供する。例えば、動的スペーサ要素が互いから等間隔に離隔している区域、並びに、互いから等間隔に離隔していない区域が存在し得る。
【0050】
本発明の更に別の例示的実施形態によれば、動的スペーサ要素は、均一な形状及びサイズにすることができ、このことは、全ての動的スペーサ要素、又は動的スペーサ要素の全てのグループが、同じ形状及び同じサイズを有することを意味する。また、動的スペーサ要素は、不均一な形状及びサイズにすることも可能である。例えば、1つの動的スペーサ層内部の全ての動的スペーサ要素が、その1つの動的スペーサ層内部の全ての他の動的スペーサ要素とは、異なる形状及び/又は異なるサイズを備えることが可能である。また、それらの動的スペーサ要素の形状及び/又はサイズのうちの一部が、1つの動的スペーサ層内部で繰り返されることも可能である。
【0051】
本発明の別の例示的実施形態によれば、動的スペーサ要素は、例えば、円筒、角錐、樽の形状などの、任意の種類の好適な形状を有し得るものであり、かつ/又は、それら動的スペーサ要素は、球形の形状とすることもできる。上述の形状の動的スペーサ要素、又は任意の他の形状の動的スペーサ要素は、中空若しくは中実とすることができる。動的スペーサ要素は、円形、長方形、多角形の断面部、又は上記の断面部幾何学形状の組み合わせを有し得る。これらのスペーサ要素は、両側がテーパ状の(例えば、樽のように凸状の、又は数字の「8」のように凹状の)ステムの形態とすることができる。動的スペーサ要素はまた、凹状部分も有し得る。動的スペーサ要素は、空隙区域を、例えば、気泡若しくはガラス球によって局所的に、又は設計によって領域的に含み得るものであり、例えば、上述のような、中空の筒又は管である。それらの動的スペーサ要素は、壁部と、異なる材料からのコアとを備え得る。それらの壁部は、例えば、コアよりも硬く、かつ/又は強固なものとすることができる。動的スペーサ要素はまた、ステム形状である代わりに、大きいガラスビーズ又はガラス球も含み得る。これらのスペーサ要素はまた、例えば充填材として、砂の粒子も含み得る。これらのスペーサ要素は、プラスチック又はセラミック材料、また場合により金属から作製することができる。これらのスペーサ要素は、ポリマーペレットを含み得る。これらのスペーサ要素はまた、例えば、3M CompanyよりBrushlon(商標)の名で販売されている繊維構造体などの、緩く又は緊密に圧縮された繊維も含み得る。更には、これらのスペーサ要素は、互いに接触しないように、離隔して拡散させることができ、又は、それらスペーサ要素の殆ど若しくは全てが、隣接するスペーサ要素と接触するように、一体に緊密に圧縮することもできる。
【0052】
これら動的スペーサ要素の垂直軸線(すなわち、動的スペーサ層の厚さ方向での軸線)は、消散層の平面に垂直(90°)に配置することができる。当然ながら、この動的スペーサ要素の垂直軸線はまた、消散層の平面に対して、約25°〜約90°の範囲の角度で傾けることも可能である。また、1つ以上又は全ての動的スペーサ要素の垂直軸線を、一定のパターンで全て同じ方向に(例えば、図26を参照)、又は不規則な方向に(例えば、図27を参照)傾けることもできる。
【0053】
1つ又は殆ど又は全ての動的スペーサ要素の各自由端部は、消散層、基底層、及び/又は拘束層と接触する、並びに/あるいは結合するための、そのスペーサ要素の表面積を最大化するために、平坦表面を有するように形成するか、若しくはキャップを装着することが望ましい場合がある。それらのキャップは、スペーサ要素の残部ほど幅広ではない場合もあるが、それらスペーサ要素端部の接触表面積を増大させるために、キャップが外向きに広がることにより、より大きい表面積を有することが好ましい場合がある(例えば、図14A図14C、及び図16を参照)。また、それら動的スペーサ要素の、平坦な端部又はキャップ装着された端部の平面は、その長手方向軸線に概して垂直であることが好ましい場合もある。それゆえ、本発明による動的スペーサ要素もまた、少なくとも一方の端部、例えば、拘束層に面する端部及び/又は振動表面に面する端部上に、少なくとも1つのキャップを備え得る。動的スペーサ要素はまた、その動的スペーサ要素の各端部上に1つずつの、2つのキャップを備え得る。また、複数の(2つ以上の)動的スペーサ要素を、少なくとも1つの共通キャップに接続することも可能である。また、複数の(2つ以上の)動的スペーサ要素を、それら動的スペーサ要素の各端部上に1つずつの、2つの共通キャップに接続することも可能である。それら動的スペーサ要素の両端部上の共通キャップは、底部と上部とで、異なる動的スペーサ要素を接続することができ、又は、それらの共通キャップは、双方の側で、同じ動的スペーサ要素を接続することもできる。上述の全ての実施形態及び実施例を、互いに組み合わせることができる。
【0054】
本発明の別の実施形態によれば、動的スペーサ要素は、I字ビーム、X字ビーム、又はH字ビームの形状を備え得る。これらの文字の様々な線はまた、曲線状にすることも可能である。更なる実施例に関しては、それらの図の説明を参照されたい。上述の形状を有するスペーサ要素は、側面図から、又は上面図からも見られるように配置することが可能である。
【0055】
本発明の別の実施形態によれば、多層減衰材料は、基底層を備え、動的スペーサ要素は、この基底層から延出している。この基底層は、動的スペーサ要素に関する支持層の機能を含み得る。この基底層は、動的スペーサ要素と同じ材料から作製することができる。そのような実施形態は、1つの製造ステップの範囲内で、基底層及び動的スペーサ層を作製することが可能であるという利点をもたらし、このことにより、時間及びコストが節減される。そのような動的スペーサ要素を作製する1つの可能な方法は、微細複製技術、ラピッドプロトタイピング、又は積層造形である。動的スペーサ層及び動的スペーサ要素の他の製造方法は、成型、エンボス加工、又は波型成形である。また、基底層と、動的スペーサ要素を有する動的スペーサ層とは、異なる材料から作製することも可能である。
【0056】
本発明の別の実施形態によれば、動的スペーサ要素は、基底層の一体部分である。これらの動的スペーサ要素は、例えば、1つの製造ステップの範囲内で、一体に形成することができ、又は、それらの動的スペーサ要素は、別個の製造ステップの範囲内で、基底層に結合することもできる。
【0057】
一般的に、動的スペーサ要素の作製に関しては、全ての既知の材料が可能である。本発明の一実施形態によれば、動的スペーサ要素は、セラミック、ガラス、例えばアルミニウムなどの金属、カーボン、クレイ、発泡PU、例えばポリエステル、ポリプロピレン、ポリエチレン、アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)、ナイロンなどの、例えば熱可塑性材料などのプラスチックの材料のうちの、少なくとも1つを含み得る。基底層は、動的スペーサ要素とは異なる材料から作製される場合もある。
【0058】
動的スペーサ要素は、上記で列挙された材料の任意の組み合わせを含み得る。また、それら動的スペーサ要素のうちの一部は、他の動的スペーサ要素とは異なる化学組成物で構成される。
【0059】
動的スペーサ要素はまた、繊維の形状及びサイズも含み得る。動的スペーサ要素としての繊維の一例は、例えば、3M Company(Minnesota,USA)より市販のbrushlon(商標)繊維などの、ナイロン繊維である。
【0060】
本発明の別の実施形態によれば、動的スペーサ要素は、2種以上の材料を含み得る。それらの材料は、上述の材料の列挙の任意の組み合わせを含み得る。所望の特性を有するマスターバッチに、上述の材料を配合することができる。本発明による多材料動的スペーサ要素の別の実施例は、1つの材料からのステムと、そのステムの一方の端部及び/又は2つの端部の、別の材料の薄い層とを備える、スペーサ要素とすることができる。この薄い層の材料は、例えば、エネルギーを消散させることが可能な、粘弾性材料とすることができる。この薄い層の厚さは、例えば、3μmとすることができる。動的スペーサ要素はまた、シース/コア構成も提供し得るものであり、この構成は、動的スペーサ要素のコアが、その動的スペーサ要素のシースとは異なる組成物を有することを意味する。動的スペーサ要素はまた、層状構成体も提供し得るものであり、それらの層は、異なる材料を含み得る。動的スペーサ要素は、上述の実施形態のそれぞれにおいて、2種以上の異なる材料を提供する。動的スペーサ要素はまた、それらの要素の構成体内に組み込まれた、ガラス球も含み得る。
【0061】
動的スペーサ要素は、顧客のニーズによって決定される、約0.1mm〜約15mmの範囲内の高さを備え得る。
【0062】
本発明の別の実施形態によれば、基底層は、アクリレート、ポリプロピレン、ポリエステルの材料のうちの、少なくとも1つを含み得る。基底層はまた、上記の材料の組み合わせも含み得る。
【0063】
基底層は、0.0mm(基底層は存在せず)〜約3mmの範囲内の厚さを備え得る。
【0064】
基底材料の高さ又は厚さに対する、動的スペーサ要素の高さ(すなわち、動的スペーサ層の厚さ方向での高さ)の比率は、例えば、1.1/1超、10/1超、及び20/1超とすることができる。動的スペーサ要素は、幅広であることよりも、高いものであることにより、消散層に埋め込まれているか、結合しているか、接触しているか、又は極めて接近している、各スペーサ要素の少なくとも一方の端部が、その消散層と相互作用するように動くことができ、それにより、その多層材料内部でエネルギーが消散されることが望ましい。各動的スペーサ要素は、約0.3:1超〜約20:1以下の範囲の、高さ/幅のアスペクト比を有することが望ましい場合がある。一般的には、動的スペーサ層の性能は、スペーサ要素の高さ/幅の比が増大するにつれて低下し得るものであり、その性能は、スペーサ要素の高さ/幅の比が減少するにつれて向上し得る。
【0065】
本発明の別の実施形態によれば、動的スペーサ層が基底層を含む場合、その基底層は、ネット又はフィルムを含み得る。そのような動的スペーサ層として有用であり得る、有孔フィルム構造体又はネット構造体の一例を、その全体が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第8,889,243号に見出すことができる。このネット又はフィルムは、マトリックス材料などの材料内に、埋め込むことができる。しかしながら、基底層が、ネット又はフィルムのみを含むことも、また可能である。このネット又はフィルムは、基底層全体の内部に展開させることができ、あるいは、特定の区域内のみに配置することもできる。基底層はまた、不織布材料も含み得る。
【0066】
別の実施形態によれば、基底層が不織布材料を有する場合、その動的スペーサ層の基底層は、開口及び/又はスリットを備え得る。そのような実施形態は、開口及び/又はスリットを有さない基底層を備える多層減衰材料よりも、少ない材料を含み得るため、重量に関して最適化することができる。基底層が、開口を有するネット又はフィルムを含む場合には、それらの開口は、そのネット又はフィルムの開口とすることができる。動的スペーサ要素は、それらの開口の間に配置することができる。また、動的スペーサ要素が、それら基底層の開口又はスリットを、少なくとも部分的に覆うことも可能である。
【0067】
本発明の別の実施形態によれば、この多層減衰材料の消散層は、開口及び/又はスリットを備え得る。消散層はまた、スポット、斑点、及び/又は島部も備え得る。本発明はまた、消散層が、各動的スペーサ要素の端部上の、小さい島部のみを含み(すなわち、スペーサ要素の端部とほぼ同じサイズであるか、又は、端部よりも小さいものであり)、それらの島部が、それら島部の隣接層に、例えば拘束層又は振動表面に接触している、実施形態も含む。この実施形態は、開口又はスリットを有さないか、あるいはスポット、斑点、及び/又は島部の形態ではない消散層を備える多層減衰材料よりも、少ない材料を含み得るため、重量に関して最適化することができる。
【0068】
本発明の別の実施形態によれば、拘束層は、同じく軽量化に関する潜在的可能性を提供する、開口及び/又はスリットを備え得る。拘束層は、消散層と連続的に、又は不連続的に接触し得る。拘束層は、消散層に隣接するように、又は消散層と接触するように、配置することができる。拘束層は、動的スペーサ層とは反対の、消散層の側に、配置することができる(例えば、図9を参照)。拘束層は、より有効な減衰を引き起こすことが可能な、消散層内部の剪断を更にもたらすという利点を提供し得る。また、拘束層自体も、連続的又は不連続的であることが可能である。
【0069】
追加的実施形態
1. 基材を補剛するための、及び/又は基材の振動表面を減衰させるための多層材料であって、この多層材料は、基材の表面に結合されるか、機械的に締結されるか、又は他の方式で固定される。この多層材料は、少なくとも1つの拘束層と、少なくとも1つの消散層と、複数のスペーサ要素を含む少なくとも1つの動的スペーサ層とを備え、動的スペーサ層は、基材の補剛及び/又は振動表面の減衰のために使用される場合に、拘束層と振動表面との間に配置される。各スペーサ要素は、両端部を有する。複数のスペーサ要素のそれぞれの少なくとも一方の端部は、消散層に埋め込まれているか、結合しているか、接触しているか、又は極めて接近している。この多層材料が、減衰のために使用される場合、少なくとも部分的に、各スペーサ要素の少なくとも一方の端部が、消散層と相互作用することにより、それら複数のスペーサ要素のそれぞれの少なくとも一方の端部の動きを介して、その多層材料内部でエネルギーが消散される。
【0070】
2. 動的スペーサ要素が、消散層から拘束層を隔てるように配置されている、実施形態1による多層減衰及び/又は補剛材料。
【0071】
3. 消散層が、動的スペーサ層から拘束層を隔てるように配置されている、実施形態1又は実施形態2による多層減衰及び/又は補剛材料。
【0072】
4. スペーサ要素の0〜100%が消散層内に埋め込まれるように、スペーサ要素が消散層に接触している、先行の実施形態のうちのいずれかによる多層減衰及び/又は補剛材料。
【0073】
5. 動的スペーサ要素が、動的スペーサ層内部で、互いから等間隔に離隔して配置されている、先行の実施形態のうちのいずれかによる多層減衰及び/又は補剛材料。
【0074】
6. 動的スペーサ要素が、動的スペーサ層内部の場所に、均等又は均一に配置されている、先行の実施形態のうちのいずれか1つによる多層減衰及び/又は補剛材料。
【0075】
7. 動的スペーサ要素が、動的スペーサ層内部の場所に、不均等又は不均一に配置されている、先行の実施形態のうちのいずれか1つによる多層減衰及び/又は補剛材料。
【0076】
8. 動的スペーサ要素が、均一な形状及びサイズである、先行の実施形態のうちのいずれか1つによる多層減衰及び/又は補剛材料。
【0077】
9. 動的スペーサ要素が、不均一な形状及びサイズである、先行の実施形態のうちのいずれか1つによる多層減衰及び/又は補剛材料。
【0078】
10. 動的スペーサ要素が、円筒形、角錐形、樽、又は球形の形状である、先行の実施形態のうちのいずれか1つによる多層減衰及び/又は補剛材料。
【0079】
11. 基底層を備え、動的スペーサ要素が、この基底層から延出している、先行の実施形態のうちのいずれか1つによる多層減衰及び/又は補剛材料。
【0080】
12. 基底層が、動的スペーサ要素と同じ材料から作製されている、先行の実施形態のうちのいずれか1つによる多層減衰及び/又は補剛材料。
【0081】
13. 動的スペーサ要素のそれぞれが、基底層の一体部分である(例えば、1つの部分として一体に形成されるか、又は一体に結合される)、先行の実施形態のうちのいずれか1つによる多層減衰及び/又は補剛材料。
【0082】
14. 基底層が、動的スペーサ要素とは異なる材料から作製されている、先行の実施形態のうちのいずれか1つによる多層減衰及び/又は補剛材料。
【0083】
15. 動的スペーサ要素が、セラミック、ガラス、例えばアルミニウムなどの金属、カーボン、クレイ、発泡PU、例えばポリエステル、ポリプロピレン、ポリエチレン、アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)、ナイロンなどのプラスチックの材料のうちの、少なくとも1つを含み得る、先行の実施形態のうちのいずれか1つによる多層減衰及び/又は補剛材料。
【0084】
16. 動的スペーサ要素が、列挙された材料の任意の組み合わせを含み得る、実施形態11による多層減衰及び/又は補剛材料。
【0085】
17. 基底層が、アクリレート、ポリプロピレン、ポリエステルの材料のうちの、少なくとも1つを含み得る、先行の実施形態のうちのいずれか1つによる多層減衰及び/又は補剛材料。
【0086】
18. 基底層が、0mm(基底層は存在せず)〜約3mmの範囲内の厚さを備える、先行の実施形態のうちのいずれか1つによる多層減衰及び/又は補剛材料。
【0087】
19. 基底層が、ネット、不織布、及び/又はフィルムを含む、先行の実施形態のうちのいずれか1つによる多層減衰及び/又は補剛材料。
【0088】
20. 基底層が、開口及び/又はスリットを備える、先行の実施形態のうちのいずれか1つによる多層減衰及び/又は補剛材料。
【0089】
21. 基底層が、連続的又は不連続的である、先行の実施形態のうちのいずれか1つによる多層減衰及び/又は補剛材料。
【0090】
22. 消散層が、連続的又は不連続的である、先行の実施形態のうちのいずれか1つによる多層減衰及び/又は補剛材料。
【0091】
23. 消散層が、不連続的であり、複数のスペーサ要素の一方の端部上にのみ配置されている、先行の実施形態のうちのいずれか1つによる多層減衰及び/又は補剛材料。
【0092】
24. 消散層が、開口及び/又はスリットを備える、先行の実施形態のうちのいずれか1つによる多層減衰及び/又は補剛材料。
【0093】
25. 拘束層が、開口及び/又はスリットを備える、先行の実施形態のうちのいずれか1つによる多層減衰及び/又は補剛材料。
【0094】
26. 拘束層が、連続的又は不連続的である、先行の実施形態のうちのいずれかによる多層減衰及び/又は補剛材料。
【0095】
27. 拘束層が、消散層若しくは別の消散層に隣接し、かつ接触するように配置されている、先行の実施形態のうちのいずれか1つによる多層減衰及び/又は補剛材料。
【0096】
28. 拘束層が、消散層若しくは別の消散層と、連続的に、又は不連続的に接触している、実施形態18〜実施形態21のうちのいずれか1つによる多層減衰及び/又は補剛材料。
【0097】
29. 例えば、自動車、トラック、航空機、列車、船、船舶、若しくはボートなどの乗り物内部の、振動及び/又は騒音を減衰させる用途に関して好適な(すなわち、寸法決定された、設計された、及び/又は構成された)形態の、先行の実施形態のうちのいずれか1つによる多層減衰及び/又は補剛材料。
【0098】
30. 例えば、洗濯機、食器洗浄機などの電化製品内部の、振動及び/又は騒音を減衰させる用途に関して好適な(すなわち、寸法決定された、設計された、及び/又は構成された)形態の、先行の実施形態のうちのいずれか1つによる多層減衰及び/又は補剛材料。
【0099】
31. 例えば、発電機システム、エレベータ、又は空気処理システムなどの、任意の他の機械若しくは機械を備えるシステム内部の、振動及び/又は騒音を減衰させる用途に関して好適な(すなわち、寸法決定された、設計された、及び/又は構成された)形態の、先行の実施形態のうちのいずれか1つによる多層減衰及び/又は補剛材料。
【0100】
32. 複数のスペーサ要素のそれぞれの一方の端部のみが、消散層に埋め込まれているか、結合しているか、接触しているか、又は極めて接近していることにより、その複数のスペーサ要素のそれぞれの一方の端部が、動くことが可能となる、先行の実施形態のうちのいずれか1つによる多層減衰及び/又は補剛材料。
【0101】
33. 複数のスペーサ要素のそれぞれの少なくとも一方の端部が、消散層に埋め込まれているか、結合しているか、接触しているか、又は極めて接近していることにより、それら複数のスペーサ要素のそれぞれの少なくとも一方の端部の動きを介して、消散層内に歪み及び/又は変形が引き起こされ、その結果として消散層内部でエネルギーが消散される、先行の実施形態のうちのいずれか1つによる多層減衰及び/又は補剛材料。
【0102】
34. 先行の実施形態のうちのいずれか1つによる、多層減衰及び/又は補剛材料を備える、乗り物構成要素(例えば、自動車構成要素)。この多層減衰及び/又は補剛材料を備える乗り物構成要素は、例えば、その乗り物の本体全体の任意の部分とすることができる。例えば、本発明による多層減衰及び/又は補剛材料を、例えば乗り物のエンジンなどの振動表面に、極めて接近して配置することが有用であり得る。
【0103】
35. 乗り物が自動車であり、構成要素が、車の屋根、ドアパネル、ダッシュの前面(例えば、ダッシュボード)、又は床パネルである、実施形態34による乗り物構成要素。
【0104】
本発明の実施形態は、以下の実施例によって更に例示されるが、これらの実施例において列挙される特定の材料及びその量は、他の諸条件及び詳細と同様に、本開示を過度に制限するものと解釈されるべきではない。
【0105】
実施例
特許請求の範囲による複数のスペーサ要素を備える動的スペーサ層を使用した、スタンドオフ減衰の効果が、動的スペーサ層を2通りの向きにした、3つの異なる構造体で実証されている。
【0106】
試料の調製:
図3及び図4は、これらの試料の原理構造、及び種々の層の向きを示す。動的スペーサ要素は、基底層2aからパネル10の方向へと延出している(ピンは下向き)か、又は、パネル10から離れる方向に向いている(ピンは上向き)。これらの試料に関して使用された材料の詳細を、表1に示す。これらの試験に関しては、図3及び図4のパネル10は、以下で説明されるOberst測定用の鋼ビームに置き換えられている。
【0107】
3つの異なる動的スペーサ層、並びに市販の減衰材料を試験するものとした。
【0108】
試料A−1及び試料A−2
互いから約1.35mm離隔して配置された約0.76mmの直径を有する円筒形のステム要素を備えるウェブを、米国特許第5,792,411号で説明されるように作製した。それらは、高さ約0.44mmであり、約0.12mmの基底層の厚さを有する。それらは、ポリプロピレン樹脂から作製されている。
【0109】
試料B−1及び試料B−2
パターン#1は、約0.96mmの直径及び約1.1mmのキャップ直径を有する、図16及び図17に示されるような円筒形要素を備える。それらは、互いから約1.3mm離隔して配置されている。それらは、高さ約2.11mmであり、約0.51mmのウェブ厚さを有する。それらは、DS Accura 60樹脂から作製されている。
【0110】
試料C−1及び試料C−2
パターン#2は、約1.23mmの直径及び約1.67mmのキャップ直径を有する、図16及び図17に示されるような円筒形要素を備える。それらは、互いから約2.25mm離隔して配置されている。それらは、高さ約2.07mmであり、約0.51mmのウェブ厚さを有する。それらは、DS Accura 60樹脂から作製されている。
【0111】
比較試料として、3M(商標)振動テープCL1151(3M Germany(Neuss,Germanyより市販)を使用した。その比較試料は、表1に列挙されている材料を有する、拘束層及び消散層を備える拘束型層減衰材料である。
【0112】
これらの試料は、拘束層4及び消散層3で開始して、次いで動的スペーサ層2及び更なる消散層1を追加する、手作業による種々の層の積層によって調製するものとした。重量及び厚さの測定の後、これらの試料を、試験パネル(鋼:厚さ1mm;面積:10mm×240mm;被覆面積:10mm×210mm)に積層した。
【0113】
実施例測定
これらの実施例の減衰挙動を、DIN53440及びISO5721によるOberst法を使用して測定するものとした。減衰性能は、この方法を使用して、減衰材料で覆われ、かつ無被覆の端部でクランプ固定されている鋼ビームの、振動励起によって判定される。システム減衰損失係数は、曲げ共振モードでのいわゆる伝達関数の、形状及び幅から算出することができる。
【0114】
これらの測定は、20℃の温度増分を使用する、0℃〜60℃の温度の環境チャンバ内で実行するものとした。
【0115】
それらの結果を、図20(ピンは上向き)及び図21(ピンは下向き)に示す。曲げ共振の次数2、次数3、及び次数4での減衰性能が、上記の評価温度に関してプロットされている。低い重量/面積を有するものではあるが、試料Aの減衰損失係数は、市販の3M制振テープCL1151と比較して、同等以上である。試料B及び試料Cは、CL1151と比較して、遥かに大きい減衰性能を示しており、このことは、減衰用途に関する、本発明による新規の構造体の好適性を明確に実証するものである。スタンドオフ層の向きが、試料材料の損失係数に与える影響は、軽微なものであり得る。
【表4】

本発明の実施態様の一部を以下の項目1−15に記載する。
項目1
振動表面を減衰させるための多層減衰材料であって、
少なくとも1つの拘束層と、
少なくとも1つの消散層と、
複数のスペーサ要素を含む少なくとも1つの動的スペーサ層であって、前記振動表面を減衰させるために使用される場合に、前記拘束層と前記振動表面との間に配置される、動的スペーサ層と、
を備え、
各スペーサ要素が、両端部を有し、前記複数のスペーサ要素のそれぞれの少なくとも一方の端部が、前記消散層に埋め込まれているか、結合しているか、接触しているか、又は極めて接近していることにより、前記複数のスペーサ要素のそれぞれの前記少なくとも一方の端部の動きにより、前記多層減衰材料内部でエネルギーが消散される、多層減衰材料。
項目2
前記動的スペーサ要素が、前記消散層から前記拘束層を隔てるように配置されているか、又は前記消散層が、前記動的スペーサ層から前記拘束層を隔てるように配置されている、項目1に記載の多層減衰材料。
項目3
前記スペーサ要素の0〜100%が前記消散層内に埋め込まれるように、前記スペーサ要素が前記消散層に接触している、項目1に記載の多層減衰材料。
項目4
前記動的スペーサ要素が、(a)前記動的スペーサ層内部で、互いから等間隔に離隔して、(b)前記動的スペーサ層内部の場所に、均等又は均一に、(c)前記動的スペーサ層内部の場所に、不均等又は不均一に、あるいは(d)(a)、(b)、及び(c)の任意の組み合わせで配置されている、項目1〜3のいずれか一項に記載の多層減衰材料。
項目5
前記動的スペーサ要素が、(a)均一な形状及びサイズ、(b)不均一な形状及びサイズ、(c)円筒形、角錐形、樽、又は球形の形状、あるいは(d)(a)、(b)、及び(c)の任意の組み合わせである、項目1〜4のいずれか一項に記載の多層減衰材料。
項目6
基底層を備え、前記動的スペーサ要素が、前記基底層から延出している、項目1〜5のいずれか一項に記載の多層減衰材料。
項目7
前記基底層が、前記動的スペーサ要素と同じ材料から作製されている、項目1〜6のいずれか一項に記載の多層減衰材料。
項目8
前記基底層が、(a)基底層は0〜約3mmの範囲内の厚さ、(b)ネット、不織布、及び/又はフィルム、(c)開口及び/又はスリット、(d)連続的又は不連続的である、あるいは(e)(a)、(b)、(c)、及び(d)の任意の組み合わせを含む、項目1〜7のいずれか一項に記載の多層減衰材料。
項目9
前記消散層が、(a)連続的又は不連続的である、(b)不連続的であり、かつ前記複数のスペーサ要素の前記一方の端部上にのみ配置されている、(c)開口及び/又はスリットを備えている、あるいは(d)(a)、(b)、及び(c)の任意の組み合わせである、項目1〜8のいずれか一項に記載の多層減衰材料。
項目10
前記拘束層が、(a)連続的又は不連続的である、(b)前記消散層又は別の消散層に隣接し、かつ接触するように配置されている、(c)前記消散層若しくは別の消散層と、連続的に、又は不連続的に接触している、あるいは(d)(a)、(b)、及び(c)の任意の組み合わせである、項目1〜9のいずれか一項に記載の多層減衰材料。
項目11
(a)乗り物、(b)電化製品、(c)任意の他の機械又は機械を備えるシステム、あるいは(d)(a)、(b)、及び(c)の任意の組み合わせの内部の、振動及び/又は騒音を減衰させる用途に関して好適な形態の、項目1〜10のいずれか一項に記載の多層減衰材料。
項目12
前記複数のスペーサ要素のそれぞれの一方の端部のみが、前記消散層に埋め込まれているか、結合しているか、接触しているか、又は極めて接近していることにより、前記複数のスペーサ要素のそれぞれの前記一方の端部が動くことが可能となる、項目1〜11のいずれか一項に記載の多層減衰材料。
項目13
前記複数のスペーサ要素のそれぞれの前記少なくとも一方の端部が、前記消散層に埋め込まれているか、結合しているか、接触しているか、又は極めて接近していることにより、前記複数のスペーサ要素のそれぞれの前記少なくとも一方の端部の動きによって、前記消散層内に歪み及び/又は変形が引き起こされ、その結果として前記消散層内部でエネルギーが消散される、項目1〜12のいずれか一項に記載の多層減衰材料。
項目14
項目1〜13のいずれか一項に記載の多層減衰材料を備えている、自動車構成要素。
項目15
前記構成要素が、車の屋根、ドアパネル、ダッシュの前面、又は床パネルである、項目14に記載の自動車構成要素。
図1A
図1B
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14A
図14B
図14C
図14D
図14E
図14F
図14G
図14H
図15A
図15B
図15C
図15D
図15E
図15F
図15G
図15H
図15I
図15J
図15K
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23A
図23B
図23C
図24A
図24B
図24C
図25
図26
図27