(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第2決定部は、前記希望買電価格が前記希望売電価格よりも低い一以上の前記希望買電価格と前記希望売電価格との組み合わせに含まれる前記希望買電価格と前記第1約定価格との差が大きければ大きいほど高くなるように、前記希望買電価格に対する前記第2買電約定価格を決定する、
請求項1に記載の約定価格決定装置。
前記第2決定部は、前記希望買電価格が前記希望売電価格よりも低い一以上の前記希望買電価格と前記希望売電価格との組み合わせに含まれる前記希望売電価格と前記第1約定価格との差が大きければ大きいほど低くなるように、前記希望売電価格に対する前記第2売電約定価格を決定する、
請求項1に記載の約定価格決定装置。
【発明を実施するための形態】
【0018】
2009年に始まった太陽光発電の余剰電力買取制度(すなわち固定価格買取制度(以下、FITという))により太陽光発電(以下、PVという)の一般世帯への普及が進んできた。PVの電力(以下、PV電力という)のうち、世帯の自家消費で余った電力(以下、余剰電力という)は、FITにより電力会社へ高価格(48円/kWh(2009年にFITを開始した世帯))での売電が保証されていた。
【0019】
ところが、FITが適用される期間は10年であるため、2019年からFIT期間切れ世帯が続々と登場し始める。FIT期間切れ世帯の余剰電力は低価格(約10円/kWhなど)で電力会社に売却されることになるので、これらの世帯は、電力会社へ売電するよりも自家消費する方がよいとも考えられる。しかしながら、余剰電力を蓄積することができない場合、自家消費が少ない時間帯に生じる余剰電力は、低価格で電力会社へ売電するしか選択肢がない。
【0020】
発電設備を有する世帯に蓄電池を導入することで、余剰電力を蓄電し、必要な時に自家消費することが可能になり、余剰電力の蓄電と自家消費により電気代を削減できるようになる。蓄電池の初期費用は年々下がってきており、いずれ電気代削減効果が蓄電池の初期費用を上回ることが想定されるが、現状では全てのFIT期間切れ世帯が蓄電池を導入する動機付けには至っていない。
【0021】
このような場合に期待される他の手段として、世帯の余剰電力を他の世帯に対して売電する電力融通を行うことが考えられる。売り手が電力会社への売電価格(例、10円/kWh)より高価格で仲介事業者に売電し、買い手が電力会社からの買電価格(例、30円/kWh)より低価格で仲介事業者から買電することができると、両者が金銭的なメリットを享受できる。このように、売り手及び買い手の両者が金銭的なメリットを享受できる約定価格を決定するために、本実施形態に係る約定価格決定装置1が使用される。
【0022】
図1は、約定価格決定装置1の概要について説明するための図である。
図1には、買い手としての買電世帯、売り手としての売電世帯、及び電力会社が示されている。また、
図1には、買電を希望している買電世帯と、売電を希望している売電世帯との間で、電力を売買する際の約定価格を決定するための約定価格決定装置1が示されている。
【0023】
約定価格決定装置1は、例えば電力の売買を仲介する仲介事業者により管理される。約定価格決定装置1は、買い手との間の約定価格(以下、買電約定価格という)を売り手との間の約定価格(以下、売電約定価格という)よりも高くする。このようにすることで、約定価格決定装置1を用いて約定価格を決定する仲介事業者は、買電約定価格と売電約定価格との差分に相当する利益を得ることができる。約定価格決定装置1は、買い手、売り手及び仲介事業者の三者にとって利益が生じるように約定価格を決定する。
【0024】
売電世帯はPVを保有している世帯であり、余剰電力を売電できる。売電世帯は、約定価格決定装置1を介して買電世帯に売電する方法、又は電力会社に直接売電する方法のいずれかを選択することができる。また、全ての世帯は宅内消費する電力を、約定価格決定装置1を介して売電世帯から買電する方法、又は電力会社から直接買電する方法のいずれかを選択することができる。なお、説明を簡単にするため、各世帯は蓄電池を保有していないものとする。また、本明細書においては、約定価格決定装置1を介して電力を売買する時間単位として、30分を1コマとして扱い、1日48個の各コマについて売買することを想定する。
【0025】
一般的に、買い手はできるだけ低い価格で買電することを希望し、売り手はできるだけ高い価格で売電することを希望する。したがって、多くのケースでは需要と供給が一致しないため、約定価格決定装置1は、買い手と売り手とをマッチングする必要がある。なお、本明細書においては、買い手が希望する買電価格を希望買電価格といい、売り手が希望する売電価格を希望売電価格という。
【0026】
多数の買い手と多数の売り手が存在する場合、希望売電価格と、当該希望売電価格よりも高い希望買電価格との組合せが存在し得る。このような場合、約定価格決定装置1は、希望売電価格よりも高い価格を売り手に対する約定価格(以下、売電約定価格という)に決定し、希望買電価格よりも低い価格を買い手に対する約定価格(以下、買電約定価格という)に決定することで、売り手及び買い手に経済的利益を提供することができる。
【0027】
一方、希望売電価格と、当該希望売電価格よりも低い希望買電価格との組合せが存在する場合に、約定価格決定装置1がどのように約定価格を決定するかが問題になる。そこで、約定価格決定装置1は、希望売電価格と、当該希望売電価格よりも低い希望買電価格との組合せが存在する場合においても、売り手及び買い手に経済的利益を提供することができるように約定価格を決定する。
【0028】
図2は、約定価格決定装置1と買い手及び売り手との関係を示す図である。約定価格決定装置1は、複数の買い手が使用する複数の買い手端末2(
図2における買い手端末2−1、買い手端末2−2、・・・)と,複数の売り手が使用する複数の売り手端末3(
図2における売り手端末3−1、売り手端末3−2、・・・)との間で通信する。買い手端末2及び売り手端末3は、ユーザが情報を入力する操作部と、情報を表示する表示部とを有していれば任意の端末であってよく、例えばスマートフォン又はコンピュータである。
【0029】
約定価格決定装置1は、複数の買い手端末2のそれぞれから希望買電価格を取得し、複数の売り手端末3のそれぞれから希望売電価格を取得する。約定価格決定装置1は、取得した複数の希望買電価格及び複数の希望売電価格に基づいて、複数の買い手及び複数の売り手に対する約定価格を決定し、複数の買い手端末2及び複数の売り手端末3に対して約定価格を通知する。
【0030】
[約定価格決定装置1の構成]
図3は、約定価格決定装置1の構成を示す図である。約定価格決定装置1は、通信部11と、記憶部12と、制御部13とを有する。制御部13は、情報取得部131と、第1決定部132と、第2決定部133とを有する。
【0031】
通信部11は、ネットワークNを介して買い手端末2及び売り手端末3との間でデータを送受信するための通信インターフェースであり、例えばLAN(Local Area Network)コントローラを有する。通信部11は、買い手端末2から希望買電価格及び希望買電量を受信し、売り手端末3から希望売電価格及び希望売電量を受信する。通信部11は、受信した希望買電価格及び希望買電量、並びに希望売電価格及び希望売電量を情報取得部131に通知する。
【0032】
通信部11は、第1決定部132が決定した第1約定価格を買い手端末2及び売り手端末3に送信する。また、通信部11は、第2決定部133が決定した第2買電約定価格を買い手端末2に送信し、第2売電約定価格を売り手端末3に送信する。第1約定価格、第2買電約定価格、及び第2売電約定価格の詳細については後述する。
【0033】
記憶部12は、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)及びハードディスク等の記憶媒体である。記憶部12は、制御部13が実行するプログラムを記憶している。
【0034】
制御部13は、例えばCPU(Central Processing Unit)であり、記憶部12に記憶されたプログラムを実行することにより、情報取得部131、第1決定部132及び第2決定部133として機能する。
【0035】
情報取得部131は、希望買電価格及び希望買電量を複数の希望買電者から取得するとともに、希望売電価格及び希望売電量を複数の希望売電者から取得する。情報取得部131は、取得した希望買電価格及び希望買電量、並びに希望売電価格及び希望買電量を第1決定部132及び第2決定部133に入力する。
【0036】
第1決定部132及び第2決定部133は、売り手端末3を使用する売り手、買い手端末2を使用する買い手のそれぞれに対応する約定価格を決定する。第1決定部132は、希望売電価格と、当該希望売電価格よりも高い希望買電価格との組合せが存在している1段階目において約定価格を決定する。希望売電価格と、当該希望売電価格よりも高い希望買電価格との組合せは、ある売り手の希望売電価格と、当該希望売電価格が設定された希望売電量と同じ希望買電量に対応し、かつ希望売電価格よりも高い希望買電価格との組合せである。
【0037】
第1決定部132は、複数の希望買電価格及び複数の希望売電価格のうち、希望買電価格が希望売電価格よりも
高い一以上の希望買電価格と希望売電価格との組み合わせに含まれる希望買電価格及び希望売電価格に対する第1約定価格を、一以上の組合せに含まれる希望買電価格と希望売電価格との間の価格に決定する。第1決定部132が第1約定価格を決定する方法は任意である。
【0038】
第2決定部133は、希望売電価格と、当該希望売電価格よりも高い希望買電価格との組合せが存在していない2段階目において約定価格を決定する。第2決定部133は、第1決定部132が第1約定価格を決定した後に、希望買電価格が希望売電価格よりも
低い一以上の希望買電価格と希望売電価格との組み合わせに含まれる希望買電価格に対する第2買電約定価格、及び希望売電価格に対する第2売電約定価格を決定する。
以下、第1決定部132及び第2決定部133による約定価格の決定処理の手順について説明する。
【0039】
[約定価格の決定処理の概要]
電力市場取引のある特定の1個のコマにおける買電と売電の入札に対して、第1決定部132及び第2決定部133が約定価格の計算を実行する場合を例に、約定価格の決定処理の手順を説明する。
【0040】
第1決定部132及び第2決定部133が約定価格を決定する前に、情報取得部131は、本取引市場の外部での売買価格(例えば電力会社に対する売り価格Psと電力会社からの買い価格Pb)を取得し、取得した売買価格を記憶部12に記憶させる。第1決定部132は、手動操作により売買価格を取得してもよく、外部の売買価格を公開しているWebサイトから自動的に売買価格を取得してもよい。
【0041】
買い手と売り手は、買い手端末2及び売り手端末3を通して、それぞれ買電入札と売電入札を行う。売り手は入札価格と売電量kWhの情報を売り手端末3に入力して売電入札を行う。買い手は入札価格と買電量kWhの情報を買い手端末2に入力して買電入札を行う。買い手の入札価格は買電単価円/kWhである。売り手の入札者価格は売電単価円/kWhである。本実施の形態においては、買い手A、B、C、Dと売り手A、B、C、D、Eとが入札に参加したものとする。
【0042】
図4は、複数の買い手及び複数の売り手それぞれの希望買電価格及び希望買電量、並びに希望売電価格及び希望売電量を示す図である。
図4に示す例において、例えば買い手Aの希望買電価格は25円/kWhであり、希望買電量は10kWhである。売り手Aの希望売電価格は12円/kWhであり、希望売電量は10kWhである。
【0043】
第1決定部132は、ある特定コマの入札締め切り時間になったタイミングで、買電入札において取得された複数の希望買電価格と、売電入札において取得された複数の希望売電価格とを集約する。第1決定部132は、集約結果として
図4に示す情報を得る。
図4に示す例の場合、買電量の合計は38kWh、売電量の合計は35kWhである。第1決定部132及び第2決定部133は、入札集約結果と、外部売買価格の情報とに基づいて約定計算を実行する。
【0044】
[1段階目における約定価格の決定方法]
1段階目の約定計算では、第1決定部132が、例えば従来手法のブラインド・シングルプライスオークションを用いることにより約定価格を決定する。第1決定部132は、
図4に示すように、複数の買い手の希望買電価格を示す線を希望買電価格が大きな順に並べた線と、複数の売り手の希望売電価格を示す線を希望売電価格が小さな順に並べた線との交点を約定点とする。そして、約定点よりも左の入札に対する第1約定価格を、約定点に対応する価格に決定する。
【0045】
図4に示す例の場合、第1決定部132は、第1約定価格を21円/kWhに決定する。買い手Aの10kWhの電力、及び買い手Bの8kWhの電力の買電価格は21円/kWhとなる。また、売り手Aの10kWhの電力、売り手Bの7kWhの電力、及び売り手Cが売ることができる電力のうち1kWhの電力の売電価格は21円/kWhとなる。
【0046】
1段階目の約定計算で買電入札と売電入札のうち、少なくともどちらか一方の入札が全て約定した場合、それ以上約定量を増加する余地はないため、第1決定部132は約定計算を終了する。どちらか一方、または両方の入札が残った場合、第2決定部133に第1約定価格を通知して、第2決定部133が2段階目の約定計算を実行する。第2決定部133は、買い手C及び買い手Dの電力の買電入札、並びに売り手Cの売電量の一部である9kWh分の電力、売り手D及び売り手Eの電力の売電入札に対して2段階目の約定計算を行う。
【0047】
第1決定部132及び第2決定部133は、約定計算が完了すると約定結果を集約し、各買い手と売り手に通知する約定結果を整理する。第1決定部132及び第2決定部133は、買い手に対しては、その買い手の入札の約定結果(約定価格と約定量)の情報を通知する。売り手に対しては、その売り手の入札の約定結果(約定価格と約定量)の情報を通知する。また、買電入札量の合計や、売電入札量の合計、1段階目の約定価格などの共通的な情報も併せて通知してもよい。
【0048】
具体的には、第1決定部132は、1段階目で約定価格が決定した買い手の買い手端末2及び売り手の売り手端末3に対して、第1約定価格及び約定買電量又は約定売電量を通知する。また、第2決定部133は、2段階目で約定価格が決定した買い手の買い手端末2に対して第2買電約定価格及び約定買電量を通知し、2段階目で約定価格が決定した売り手の売り手端末3に対して第2売電約定価格及び約定売電量を通知する。
【0049】
[2段階目における約定価格の決定方法]
以下、2段階目における約定価格の決定方法として、4つの方法を例示する。第2決定部133は、約定価格決定装置1を使用する仲介事業者の指示に基づいて、複数の決定方法のうちどの決定方法を使用するかを選択する。
【0050】
(第1の方法)
図5は、2段階目における約定価格の第1の決定方法について説明するための図である。第1の方法において、第2決定部133は、第2買電約定価格及び第2売電約定価格を第1約定価格と同一の価格に決定する。
図4に示した例の場合、第2決定部133は、全ての買い手に対して1段階目の約定価格21円/kWhで電力を売り、全ての売り手から1段階目の約定価格21円/kWhで電力を買う。
【0051】
第2決定部133は、以下の順番に約定処理を進める。
・買い手Cの買電量の一部9kWhと売り手Cの売電量9kWhを約定
・買い手Cの買電量の一部1kWhと売り手Dの売電量の一部1kWhを約定
・買い手Dの売電量の一部4kWhと売り手Dの売電量の一部4kWhを約定
・買い手Dの売電量の一部3kWhと売り手Eの売電量3kWhを約定
売電入札が先になくなるので、買い手Dの買電量の一部3kWhは約定せずに終了する。
【0052】
従来の方法を用いる場合、1段階目の約定が終了した後は、買い手及び売り手が電力会社との間で電力を売買しなければならなかった。これに対して、第1の方法を用いる場合、1段階目の約定が終了した後にも1段階目で決定された約定価格を用いることで、買い手及び売り手が電力会社との間で電力を売買する場合に比べて、買い手及び売り手の利益が増加する。したがって、第1の方法は、買い手と売り手にとって金銭的メリットのある約定手法と言える。また、従来の成り行き注文(売り手が希望売電価格を提示せず、売電量のみを提示する方法)と比較して、売買量は同じでありながら、買い手と売り手の両方が約定価格の決定に関与できる点が買い手と売り手の公平性の観点でメリットがあると言える。
【0053】
(第2の方法)
想定している余剰電力を世帯間で融通する電力融通では、PV普及が進むまでは売電量の方が買電量より少ないことが予想される。売電量が買電量より少ない場合、第1の方法において、売り手は電力会社への売電価格より高い価格で売電することが保証されることを意味する。この場合、約定価格を高くすることで売り手の金銭的メリットは増大するため、電力会社からの買電価格よりわずかに低い売電価格を入札することが支配的な入札戦略になり、約定価格の高騰につながってしまうという懸念がある。そこで、第2決定部133は、以下に説明する第2の方法で2段階目における約定価格を決定してもよい。
【0054】
第1の方法は、2段階目の約定価格を1段階目と同じ約定価格を2段階目でも使用する手法であった。第2の方法では、買い手と売り手のそれぞれに対して、1段階目と異なる約定価格を算出する。
【0055】
第2決定部133は、希望買電価格が希望売電価格よりも低い一以上の希望買電価格と希望売電価格との組み合わせに含まれる希望買電価格と第1約定価格との差が大きければ大きいほど高くなるように、希望買電価格に対する第2買電約定価格を決定する。言い換えると、第2決定部133は、希望買電価格が希望売電価格よりも低い一以上の希望買電価格と希望売電価格との組み合わせに含まれる希望買電価格と第1約定価格との差が小さければ小さいほど低くなるように、希望買電価格に対する第2買電約定価格を決定する。第2決定部133は、例えば、ある買い手iの2段階目の約定価格Pc_iを、例えば次式に基づいて決定する。
Pc_i=min(Pc−(Pb_i−Pc),Pb)
【0056】
ここで、Pb_iは買い手iの買電の入札価格、Pcは1段階目の約定価格である。min(a,b)は、aとbの最小値を計算する関数である。また、Pbは電力会社からの買電価格(外部買い価格)である。(Pb_i−Pc)は負の値になるが、この値が小さくなるほど(すなわち絶対値が大きくなるほど)、買い手iの買電価格は高くなる。ただし、買電価格の上限は電力会社からの買電価格Pbになる。
【0057】
第2決定部133は、希望買電価格が希望売電価格よりも低い一以上の希望買電価格と希望売電価格との組み合わせに含まれる希望売電価格と第1約定価格との差が大きければ大きいほど低くなるように、希望売電価格に対する第2売電約定価格を決定する。言い換えると、第2決定部133は、希望買電価格が希望売電価格よりも低い一以上の希望買電価格と希望売電価格との組み合わせに含まれる希望売電価格と第1約定価格との差が小さければ小さいほど高くなるように、希望売電価格に対する第2売電約定価格を決定する。第2決定部133は、例えば、ある売り手jの2段階目の約定価格Pc_jを、例えば次式に基づいて決定する。
Pc_j=max(Pc−(Ps_j−Pc),Ps)
【0058】
ここで、Ps_jは売り手jの売電の入札価格である。max(a,b)はaとbの最大値を計算する関数である。また、Psは電力会社への売電価格(外部売り価格)である。(Ps_j−Pc)は正の値になるが、この値が大きくなるほど、売り手jの売電価格は低くなる。ただし、売電価格の下限は電力会社への売電価格Psになる。
【0059】
図6は、第2の方法を用いた場合の2段階目の約定価格の例を示す図である。
図6には1段階目の約定価格も含まれている。
図6から明らかなように、1段階目の約定価格Pcから離れた価格で入札するほど、買い手や売り手の約定価格は損をするようになっている。
【0060】
図7は、第2の方法を用いた場合の各買い手及び各売り手の収支を示す図である。
図7に示すように、1段階目の第1約定価格で売買ができる買い手A、Bは、買い手C、Dよりも大きな利益を得られ、売り手A、Bは、売り手C、D、Eよりも大きな利益を得られる。第2決定部133がこのように2段階目の約定価格を決定することで、買い手及び売り手は、1段階目の約定価格Pcとして予想される価格から乖離し過ぎない価格で入札するように動機付けられるので、適正な額での入札が行われやすくなる。
【0061】
[第3の方法]
約定価格の高騰につながってしまうという第1の方法の問題点を解消するための他の方法として、第2決定部133は、第2買電約定価格が電力会社の買電価格以下になるように第2買電約定価格を決定する。同様に、第2決定部133は、第2売電約定価格が電力会社の売電価格以上になるように第2売電約定価格を決定する。すなわち、第2決定部133は、第2買電約定価格を、電力会社の買電価格よりも固定値だけ高い価格にし、第2売電約定価格を、電力会社の売電価格よりも固定値だけ低い価格にする。
【0062】
図8は、第3の方法を用いた場合の2段階目の約定価格の例を示す図である。
図8には1段階目の約定価格も含まれている。電力会社の買電価格が10円/kWhであるところ、第2決定部133は、第2買電約定価格を11円/kWhに決定し、電力会社の買電価格が30円/kWhであるところ、第2決定部133は、第2売電約定価格を29円/kWhに決定している。このようにすることで、買い手及び売り手は、電力会社と売買する場合に比べて利益は生じるものの、第1段階で第1決定部132が決定した第1約定価格で売買する場合に比べると利益が小さい。そこで、第3の方法を採用することで、買い手及び売り手は、第1約定価格で売買ができるように、希望買電価格を低くし過ぎず、希望売電価格を高くし過ぎないようにするように動機付けられる。
【0063】
[第4の方法]
第1の方法を用いた場合、第1約定価格が高騰してしまうと、希望売電価格を低く設定した売り手が損をすることになるので、売り手が希望売電価格を下げる動機が発生しづらい。そこで、第2決定部133は、希望買電価格が希望売電価格よりも低い一以上の希望買電価格と希望売電価格との組み合わせに含まれる希望買電価格が、第2売電約定価格よりも所定額以上大きい場合に、希望買電価格から所定のインセンティブ額を減算した額を、希望買電価格に対する第2買電約定価格に決定してもよい。
【0064】
同様に、第2決定部133は、希望買電価格が希望売電価格よりも低い一以上の希望買電価格と希望売電価格との組み合わせに含まれる希望売電価格が、第2買電約定価格よりも所定額以上小さい場合に、希望売電価格に所定のインセンティブ額を加算した額を、希望売電価格に対する第2売電約定価格に決定してもよい。インセンティブ額は、例えば、仲介事業者が、第3の方法を用いて売買を仲介した場合に得られる利益の一部の額である。
【0065】
図9は、第4の方法について説明するための図である。
図9(a)は、売り手A及び売り手Bの希望売電価格が29円/kWhで一致している場合、約定価格は29円/kWhとなり、仲介事業者は利益を出すことができない。
【0066】
一方、
図9(b)に示すように、売り手Aが希望売電価格を21円/kWhに下げたことによって第1約定価格が21円/kWhになった場合、第2決定部133は、第3の方法に基づいて、売り手Bに対する第2売電約定価格を11円/kWhに決定する。この場合、仲介事業者は、売り手Bから21円−11円=10円/kWhの利益を得ることができる。そこで、第2決定部133は、仲介事業者が得られる利益10円/kWhのうちの一部(
図9(b)においては9円/kWh)をインセンティブ額として売り手Aに還元して、売り手Aに対する第2売買約定価格を30円/kWhにする。このようにすることで、約定価格決定装置1は、売り手は希望売電価格を下げる方が大きな利益を得られる可能性があるので、売り手に対して希望売電価格を下げるように動機付けることができる。
【0067】
本実施形態に係る約定価格決定装置1においては、第2決定部133が、第1決定部132が第1約定価格を決定した後に、希望買電価格が希望売電価格よりも
低い一以上の希望買電価格と希望売電価格との組み合わせに含まれる希望買電価格に対する第2買電約定価格、及び希望売電価格に対する第2売電約定価格を決定する。このようにして、希望買電価格が希望売電価格よりも
低い組合せの電力の買い手と売り手に対しても、電力会社との間で売買するよりも利益が出るように約定させることで、買い手と売り手の双方の利益を増やすことができる。
【0068】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。例えば、装置の分散・統合の具体的な実施の形態は、以上の実施の形態に限られず、その全部又は一部について、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。また、複数の実施の形態の任意の組み合わせによって生じる新たな実施の形態も、本発明の実施の形態に含まれる。組み合わせによって生じる新たな実施の形態の効果は、もとの実施の形態の効果を合わせ持つ。