(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
パンチ加工においてエラーが発生した場合、典型的には次のいずれかの対応をとることになる。1つの対応は、加工不良として扱いそのワークを廃棄することである。他の対応は、エラーが発生した箇所すなわち本来パンチ加工がなされるべき箇所を再加工することである。
【0006】
ワークを破棄する場合、ワークの無駄が発生し、歩留まりが悪くなる。エラー発生箇所を再加工する場合は、オペレータが自ら座標計算等を行ってエラー発生箇所の位置座標や加工時の状態(工具選択等)を特定し、手動で再加工を行なうことが一般的である。そのためオペレータに多大な負荷がかかるという問題がある。
【0007】
本発明はこのような課題を解決するためのものであり、パンチ加工後の再加工を支援する数値制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一実施形態にかかる数値制御装置は、パンチ加工を制御する数値制御装置であって、加工プログラムに従ってパンチ加工を実行するパンチ加工実行部と、前記パンチ加工が正常に完了しない事象を検知するパンチ加工エラー検知部と、前ブロックでエラーが発生している場合、次ブロックの実行に先立ち、
前記パンチ加工実行部による前記パンチ加工中に前記事象が発生した複数のブロックに関する情報を収集及び記憶する再パンチ加工情報記憶部と、
複数の前記ブロックのうちユーザにより選択された前記ブロックについて、前記情報を用いて事象発生時の加工状態を復元し、パンチ加工を再実行する再パンチ加工実行部と、を有することを特徴とする。
本発明の一実施形態にかかる数値制御装置は、前記情報は、前記事象が発生したブロックの終点座標又は選択工具の少なくとも1つを含むことを特徴とする
。
本発明の一実施形態にかかる数値制御装置は、前記再パンチ加工実行部は、前記パンチ加工実行部による前記パンチ加工の休止後又は終了後に、パンチ加工を再実行することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、パンチ加工後の再加工を支援する数値制御装置を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は、数値制御装置1の要部を示す概略的なハードウェア構成図である。数値制御装置1は、パンチ加工を行うパンチプレス機(以下、パンチプレス)の制御を行う装置である。数値制御装置1は、CPU11、ROM12、RAM13、不揮発性メモリ14、インタフェース18、バス10、軸制御回路16を有する。数値制御装置1には、サーボアンプ40、サーボモータ50、入出力装置60が接続される。
【0012】
CPU11は、数値制御装置1を全体的に制御するプロセッサである。CPU11は、ROM12に格納されたシステム・プログラムをバス10を介して読み出し、システム・プログラムに従って数値制御装置1全体を制御する。
【0013】
ROM12は、パンチプレスの各種制御等を実行するためのシステム・プログラムを予め格納している。
【0014】
RAM13は、一時的な計算データや表示データ、後述する入出力装置60を介してオペレータが入力したデータやプログラム等を一時的に格納する。
【0015】
不揮発性メモリ14は、例えば図示しないバッテリでバックアップされており、数値制御装置1の電源が遮断されても記憶状態を保持する。不揮発性メモリ14は、入出力装置60から入力されるデータやプログラム等を格納する。不揮発性メモリ14に記憶されたプログラムやデータは、実行時及び利用時にはRAM13に展開されても良い。
【0016】
軸制御回路16は、パンチプレスの動作軸を制御する。軸制御回路16は、CPU11が出力する軸の移動指令量を受けて、軸の移動指令をサーボアンプ40に出力する。
【0017】
サーボアンプ40は、軸制御回路16が出力する軸の移動指令を受けて、サーボモータ50を駆動する。
【0018】
サーボモータ50は、サーボアンプ40により駆動されてパンチプレスの動作軸を動かす。サーボモータ50は、典型的には位置・速度検出器を内蔵する。位置・速度検出器は位置・速度フィードバック信号を出力し、この信号が軸制御回路16にフィードバックされることで、位置・速度のフィードバック制御が行われる。
【0019】
なお、
図1では数値制御装置1は軸制御回路16、サーボアンプ40、サーボモータ50を1セットしか有していないように描かれているが、実際には制御対象となるパンチプレスに備えられた軸の数だけ上記セットが用意される。
【0020】
入出力装置60は、ディスプレイやハードウェアキー等を備えたデータ入出力装置であり、典型的には操作盤である。入出力装置60は、インタフェース18を介してCPU11から受けた情報をディスプレイに表示する。入出力装置60は、ハードウェアキー等から入力された指令やデータ等をインタフェース18を介してCPU11に渡す。
【0021】
図2は、数値制御装置1の概略的な機能構成を示すブロック図である。数値制御装置1は、パンチ加工実行部101、パンチ加工エラー検知部102、再パンチ加工情報記憶部103、再パンチ加工実行部104を有する。
【0022】
パンチ加工実行部101は、加工プログラムに従ってパンチ加工を実行する。
【0023】
パンチ加工エラー検知部102は、パンチ加工実行部101がパンチ加工を実行中に発生したエラーを検知する。エラー検知手法は公知であるためここでは詳細を論じないが、例えば特許文献1記載の技術等を採用できる。
【0024】
また本実施の形態におけるパンチ加工エラー検知部102は、エラー検知結果を示すカウンタを有し、各ブロックの実行毎にパンチが完了(成功)したかエラーとなったかに応じてカウンタの操作を行う。
【0025】
すなわちパンチ加工エラー検知部102は、パンチ加工を行うブロックの開始時にカウンタを+1し、パンチ加工が正常に完了したらカウンタを−1又はリセット(0に更新)する。一方、パンチ加工がエラーとなった場合にはカウンタを操作しない。これにより、次ブロックの開始時にカウンタが0であれば、前ブロックの動作は正常に完了していることになる。一方、次ブロックの開始時にカウンタが0以外であれば、前ブロックでエラーが発生したことになる。
【0026】
再パンチ加工情報記憶部103は、エラーが発生したブロックを再実行するために必要な各種情報(ブロックの終点座標、選択工具番号等)を記憶する。
【0027】
例えば再パンチ加工情報記憶部103は、次ブロックの開始前に上述のカウンタの値を参照して0以外である場合、前ブロックに関する情報(終点座標、選択工具番号等)を所定の記憶領域に記憶する。その後、カウンタを−1又はリセットする。
【0028】
再パンチ加工実行部104は、エラーが発生した箇所の再パンチを実行する。好ましくは、再パンチ加工実行部104はユーザに対してエラーが発生していることを通知し、ユーザによる再パンチの起動操作を受け付け、再パンチを実行する。
【0029】
典型的には、再パンチ加工実行部104は加工休止(フィードホールド)後又は加工終了後に、ユーザに対してエラーが発生していることを通知する。その際、再パンチ加工情報記憶部103が記憶した、エラー発生ブロックに関する各種情報(終点座標、選択工具番号等)をユーザに提示する。複数ブロックでエラーが発生した場合は、複数の前記情報が記憶されているので、これらのブロック情報をNC画面に一覧表示し、ユーザに再実行すべき1以上のブロックを選択させても良い。
図6にエラー発生ブロックの表示画面の一例を示す。ここでは2つのブロックが表示されており、ユーザにより1つ(上段)が選択された状態を示している。再パンチ加工実行部104は、選択されたブロックを行う。
【0030】
なお再パンチ加工の実行時機は任意である。上述のように、加工休止又は加工終了後に実行すると、加工精度において有利である(加工精度を高く維持できる)。あるいは、工具交換のタイミングで実行すると、加工時間において有利である(加工時間を短縮できる)。また上述のようにユーザの指示を仰ぐプロセスの実施も任意である。すなわち再パンチ加工実行部104は、エラー発生後の任意の時機に、自動的に再パンチを実行しても良い。
【0031】
<エラー発生時の動作>
ここで
図5を用いて、エラー検知結果を示すカウンタの動きについて具体例に従って説明する。いまパンチ加工実行部101がN01ブロックのパンチ加工を実行し、正常に完了したものとする。このとき、次ブロックN02の実行直前のカウンタ値は0である。
【0032】
パンチ加工実行部101がN02ブロックのパンチ加工を開始する。実行に先立ち、再パンチ加工情報記憶部103はカウンタを参照して0であることを確認し、パンチ加工エラー検知部102はカウンタを+1する。パンチ加工が正常に完了したとき、パンチ加工エラー検知部102がカウンタを−1する。次ブロックN03の実行直前のカウンタ値は0である。
【0033】
パンチ加工実行部101がN03ブロックのパンチ加工を開始する。実行に先立ち、再パンチ加工情報記憶部103はカウンタを参照して0であることを確認し、パンチ加工エラー検知部102はカウンタを+1する。ここで、パンチ加工にエラーが発生したものとする。パンチ加工エラー検知部102がカウンタを操作しないので、次ブロックN03の実行直前のカウンタ値は1である。
【0034】
パンチ加工実行部101がN04ブロックのパンチ加工を開始する。実行に先立ち、再パンチ加工情報記憶部103はカウンタを参照し、0でない(1である)あることを検知すると、前ブロックN03に関する情報(終点座標、選択工具番号等)を取得して所定の記憶領域に格納する。この段階ではまだN04の実行が開始していないため、再パンチ加工情報記憶部103は前ブロックN03に関する情報を取得できる。再パンチ加工情報記憶部103はカウンタを−1して正常完了時と同じ状態に戻す。パンチ加工エラー検知部102がカウンタを+1する。パンチ加工実行部101がパンチ加工を正常に完了したとき、パンチ加工エラー検知部102がカウンタを−1する。次ブロックの実行直前のカウンタ値は0となる。
【0035】
図3のフローチャートを用いて、パンチ加工実行部101、パンチ加工エラー検知部102及び再パンチ加工情報記憶部103が、エラーが発生したブロックを検知して当該ブロックに関する情報を記憶する処理について説明する。
【0036】
S101:パンチ加工実行部101は、加工プログラムに記述されたブロックを順次実行する機能を有する。本ステップでは、パンチ加工実行部101は次に実行すべきブロック(次ブロックという)を特定し、実行を開始する。
【0037】
S102:パンチ動作の実行に先立ち、再パンチ加工情報記憶部103はカウンタを参照する。カウンタが0であればS105に遷移する。カウンタが0以外であればS103に遷移する。
【0038】
S103:再パンチ加工情報記憶部103は、前ブロックの実行に関する各種情報(例えばブロックの終点座標、選択工具番号等)を収集し、所定の記憶領域に記憶する。これらはエラーが発生したブロックを再実行するために必要な情報である。
【0039】
S104:再パンチ加工情報記憶部103はカウンタを−1又はリセットする。
【0040】
S105:パンチ加工エラー検知部102はカウンタを+1する。
【0041】
S106:パンチ加工実行部101は、パンチ動作を実行する。
【0042】
S107:パンチ加工エラー検知部102は、公知技術を用いてS106におけるパンチ動作が正常に完了したか否かを判定する。正常に完了した場合、ステップS108に遷移する。エラーが発生した場合、S108を実行せずにステップS101に遷移する。
【0043】
S108:再パンチ加工情報記憶部103はカウンタを−1又はリセットする。
【0044】
<再加工時の動作>
図4のフローチャートを用いて、再パンチ加工実行部104が、エラーが発生したブロックについて再度パンチ加工を実施する処理の一例について説明する。このフローは、典型的には加工休止又は加工終了後に実行される。
【0045】
S201:再パンチ加工実行部104は、再パンチ加工情報記憶部103が上述のステップS103で記憶したエラー発生ブロックに関する情報を参照し、
図6に示すようなエラー発生ブロック一覧画面を表示する。画面には、複数のエラー発生ブロックが表示され、そのうち1以上をユーザが選択できるように構成され得る。再パンチ加工実行部104は、ユーザが選択した1以上のエラー選択ブロックを取得する。
【0046】
S202:再パンチ加工実行部104は、ステップS201で取得したブロックを再実行するため、再パンチ加工情報記憶部103が上述のステップS103で記憶したエラー発生ブロックに関する情報に基づいて、加工時の状態を復元する。例えば、エラー発生ブロックの終点座標にXY軸を位置決めし、当時選択されていた工具番号を選択する動作を行う。
【0047】
S203:再パンチ加工実行部104は、パンチ動作を実行する。
【0048】
S204:ステップS201で選択されたエラー発生ブロック全てについて再パンチ動作が完了したならば、ステップS206に遷移する。再加工が完了していないエラー発生ブロックがある場合はステップS205に遷移する。
【0049】
S205:選択されたエラー発生ブロックが全て再パンチされるまで、ステップS201以降の処理を繰り返す。
【0050】
S206:再パンチ加工実行部104が加工休止後に実行されている場合は、ステップS207に遷移する。その他の場合、例えば再パンチ加工実行部104が加工終了後に実行されている場合等は、処理を終了する。
【0051】
S207:XY軸や選択工具を加工休止時の状態に戻して、加工を再開する。
【0052】
<効果>
本実施の形態によれば、加工プログラム実行時に何らかの外的要因等によりパンチ動作がエラーとなった場合、エラー発生ブロックを再実行するのに必要なブロック情報(終点座標や選択工具番号等)が自動的に記憶される。そして再パンチ動作が起動されたときに、記憶していた終点座標や選択工具番号などのブロック情報を用いてエラー発生時の状態が自動的に復元され、エラー発生箇所でのパンチ動作のみが再実行される。これにより、オペレータが自ら座標計算等を行ってエラー発生箇所の位置座標を算出し、加工時の状態(XY軸座標や選択工具等)を復元する作業が不要となる。
【0053】
また本実施の形態では、加工中に複数回エラーが発生した場合でも、エラーが発生する度にそのブロック情報を記憶し、再パンチ時はその中から必要なものを選択して起動する事が可能である。また、選択された複数箇所で再パンチを行なうことができる。これにより、オペレータの負担を一層軽減できる。
【0054】
以上、本発明の主要な実施の形態について説明したが、本発明は上述した実施の形態の例のみに限定されることなく、適宜の変更を加えることにより様々な態様で実施することができる。