特許第6867340号(P6867340)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6867340
(24)【登録日】2021年4月12日
(45)【発行日】2021年4月28日
(54)【発明の名称】把持装置
(51)【国際特許分類】
   B25J 15/08 20060101AFI20210419BHJP
【FI】
   B25J15/08 C
【請求項の数】3
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2018-149479(P2018-149479)
(22)【出願日】2018年8月8日
(65)【公開番号】特開2020-23031(P2020-23031A)
(43)【公開日】2020年2月13日
【審査請求日】2020年3月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】000106760
【氏名又は名称】CKD株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 秀和
【審査官】 松浦 陽
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−320474(JP,A)
【文献】 特開2017−113824(JP,A)
【文献】 特開昭54−042766(JP,A)
【文献】 特開2017−209764(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 15/00 − 15/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体が給排されるシリンダ室を有する筒状のボディと、
前記シリンダ室に収容されるとともに前記シリンダ室に給排される流体によって往復動するピストンと、
前記ボディにおける軸線方向の端部に取り付けられるヘッドカバーと、
前記ピストンの往復動に伴って開閉動作を行う一対のマスタージョウと、
前記ピストンと同軸に配置された状態で前記ボディに内蔵されるとともに前記一対のマスタージョウの位置を検出するLVDTセンサと、を備え、
前記LVDTセンサは、
筒状のセンサケース本体と、
前記センサケース本体に巻回された一次コイル及び2つの二次コイルと、
前記ピストンと一体的に往復動するとともに前記センサケース本体に対して出没可能であるコア軸と、を有している把持装置であって、
前記センサケース本体と同軸に配置され、前記センサケース本体を挟んで前記ヘッドカバーとは反対側に位置するばね受け部材と、
前記センサケース本体と同軸に配置され、前記ヘッドカバーと協働して前記センサケース本体を挟み込む付勢部材と、を備え
前記付勢部材は、一端が前記ばね受け部材に接し、他端が前記センサケース本体の端面において前記センサケース本体の軸線の周囲に接し、前記センサケース本体を前記ヘッドカバーに向けて前記センサケース本体の軸線に沿って付勢することを特徴とする把持装置。
【請求項2】
前記センサケース本体の外周面には、前記センサケース本体の外周面と前記ボディの内周面との間をシールして前記シリンダ室からの流体の洩れを抑制する環状のシール部材が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の把持装置。
【請求項3】
前記ヘッドカバーは、前記ボディに対してねじ込まれる雄ねじ部を有し、
前記センサケース本体における前記ボディに対する回転を防止する回転止め機構をさらに備えていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の把持装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、把持装置に関する。
【背景技術】
【0002】
図7に示すように、例えば特許文献1の把持装置100は、流体が給排されるシリンダ室101を有する筒状のボディ102と、シリンダ室101に収容されるとともにシリンダ室101に給排される流体によって往復動するピストン103と、ピストン103の往復動に伴って開閉動作を行う一対のマスタージョウ104と、を備えている。
【0003】
また、特許文献1では、一対のマスタージョウ104の位置を検出するために、LVDTセンサ105(差動トランス)を用いている。LVDTセンサ105は、筒状のセンサケース本体106と、センサケース本体106に巻回された一次コイル107及び2つの二次コイル108と、ピストン103と一体的に往復動するとともにセンサケース本体106に対して出没可能であるコア軸109と、を有している。一次コイル107には、交流電圧が印加される。そして、ピストン103の往復動に伴ってコア軸109が往復動することにより、各二次コイル108それぞれに発生する誘起電圧に差が生じる。この誘起電圧の差は、コア軸109の位置に応じて変化する。また、一対のマスタージョウ104の移動量とピストン103の移動量とは比例関係にある。したがって、この誘起電圧の差の変化量によって、コア軸109の移動量、すなわちピストン103の移動量が検出可能となり、結果として、一対のマスタージョウ104の移動量が検出可能となる。これによれば、一対のマスタージョウ104の位置がリニアに検出可能となり、一対のマスタージョウ104の位置検出が高精度に行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−320474号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1の把持装置100においては、ボディ102における軸線方向の端部に第1ヘッドカバー111及び第2ヘッドカバー112が取り付けられている。第1ヘッドカバー111には、センサケース本体106が貫通する貫通孔111aが形成されている。センサケース本体106は、第1ヘッドカバー111の貫通孔111aを貫通した状態で、その一部分が第1ヘッドカバー111及び第2ヘッドカバー112によって挟み込まれることにより、第1ヘッドカバー111及び第2ヘッドカバー112に固定されている。そして、第1ヘッドカバー111及び第2ヘッドカバー112がボディ102の端部に取り付けられることにより、センサケース本体106は、ピストン103と同軸に配置された状態でボディ102内に位置している。
【0006】
このとき、センサケース本体106は、第1ヘッドカバー111及び第2ヘッドカバー112によって片持ち支持された状態でボディ102内に位置している。このため、第1ヘッドカバー111及び第2ヘッドカバー112におけるボディ102に対する取り付け状態によっては、センサケース本体106が、コア軸109の軸線に対して傾いた状態でボディ102内に配置されてしまう場合がある。すると、コア軸109におけるセンサケース本体106に対する出没動作が行われ難くなる虞があり、一対のマスタージョウ104の位置を精度良く検出することができなくなってしまう。
【0007】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、その目的は、コア軸におけるセンサケース本体に対する出没動作をスムーズにすることができる把持装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決する把持装置は、流体が給排されるシリンダ室を有する筒状のボディと、前記シリンダ室に収容されるとともに前記シリンダ室に給排される流体によって往復動するピストンと、前記ボディにおける軸線方向の端部に取り付けられるヘッドカバーと、前記ピストンの往復動に伴って開閉動作を行う一対のマスタージョウと、前記ピストンと同軸に配置された状態で前記ボディに内蔵されるとともに前記一対のマスタージョウの位置を検出するLVDTセンサと、を備え、前記LVDTセンサは、筒状のセンサケース本体と、前記センサケース本体に巻回された一次コイル及び2つの二次コイルと、前記ピストンと一体的に往復動するとともに前記センサケース本体に対して出没可能であるコア軸と、を有している把持装置であって、前記センサケース本体に対して前記センサケース本体の軸線の周囲に当接するとともに前記センサケース本体を前記ヘッドカバーに向けて付勢して前記ヘッドカバーと協働して前記センサケース本体を挟み込む付勢部材を備えた。
【0009】
上記把持装置において、前記センサケース本体の外周面には、前記センサケース本体の外周面と前記ボディの内周面との間をシールして前記シリンダ室からの流体の洩れを抑制する環状のシール部材が設けられているとよい。
【0010】
上記把持装置において、前記ヘッドカバーは、前記ボディに対してねじ込まれる雄ねじ部を有し、前記センサケース本体における前記ボディに対する回転を防止する回転止め機構をさらに備えているとよい。
【発明の効果】
【0011】
この発明によれば、コア軸におけるセンサケース本体に対する出没動作をスムーズにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施形態における把持装置の断面図。
図2】把持装置を拡大して示す断面図。
図3】ワークを把持した状態を示す把持装置の断面図。
図4】ボディの平面図。
図5】把持装置の分解断面図。
図6】別の実施形態における把持装置を拡大して示す断面図。
図7】従来例における把持装置の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、把持装置を具体化した一実施形態を図1図5にしたがって説明する。
図1に示すように、把持装置10は、四角筒状のボディ11を備えている。ボディ11には、ボディ11の軸線方向に貫通する円孔状の貫通孔12が形成されている。貫通孔12は、雌ねじ孔13、センサ収容孔14、シリンダ孔15、ロッド挿通孔16、及び収容孔17により形成されている。雌ねじ孔13、センサ収容孔14、シリンダ孔15、ロッド挿通孔16、及び収容孔17は、ボディ11の軸線方向の一端部から他端部にかけてこの順に並んでボディ11に形成されている。よって、雌ねじ孔13は、ボディ11の一端面11aに開口している。収容孔17は、ボディ11の他端面11bに開口している。
【0014】
雌ねじ孔13におけるボディ11の一端面11aとは反対側の端部は、センサ収容孔14に連通している。センサ収容孔14における雌ねじ孔13とは反対側の端部は、シリンダ孔15に連通している。シリンダ孔15におけるセンサ収容孔14とは反対側の端部は、ロッド挿通孔16に連通している。ロッド挿通孔16におけるシリンダ孔15とは反対側の端部は、収容孔17に連通している。
【0015】
雌ねじ孔13の孔径は、センサ収容孔14の孔径よりも大きい。また、センサ収容孔14の孔径は、シリンダ孔15の孔径よりも大きい。よって、ボディ11は、センサ収容孔14の内周面とシリンダ孔15の内周面とを接続するとともにボディ11の軸線方向に対して直交する方向に延びる環状の第1段差面18を有している。また、シリンダ孔15の孔径は、ロッド挿通孔16の孔径よりも大きい。よって、ボディ11は、シリンダ孔15の内周面とロッド挿通孔16の内周面とを接続するとともにボディ11の軸線方向に対して直交する方向に延びる環状の第2段差面19を有している。
【0016】
ロッド挿通孔16の孔径は、収容孔17の孔径よりも小さい。よって、ボディ11は、ロッド挿通孔16の内周面と収容孔17の内周面とを接続するとともにボディ11の軸線方向に対して直交する方向に延びる環状の第3段差面20を有している。ロッド挿通孔16の内周面には、環状のシール装着溝16aが形成されている。シール装着溝16aは、第3段差面20に開口している。
【0017】
図2に示すように、センサ収容孔14は、小径孔14aと、小径孔14aよりも孔径が大きい大径孔14bとから形成されている。小径孔14aは、大径孔14bよりもシリンダ孔15側に位置しており、シリンダ孔15に連通している。大径孔14bは、雌ねじ孔13に連通している。小径孔14aの内周面と大径孔14bの内周面とは、円錐状のテーパ面14cによって接続されている。テーパ面14cは、大径孔14bから小径孔14aに向かうにつれて縮径していく。
【0018】
図1に示すように、ボディ11の他端面11bには、平板状の一対の支持部21が突出している。図1では、図面の都合上、一対の支持部21の一方のみが図示されている。一対の支持部21は、ボディ11の他端面11bからボディ11の軸線方向に突出している。一対の支持部21は、互いに平行に延びている。貫通孔12は、一対の支持部21の間に開口している。
【0019】
貫通孔12内には、円板状のばね受け部材22が収容されている。ばね受け部材22の外径は、シリンダ孔15の孔径よりも大きく、且つセンサ収容孔14の小径孔14aの孔径よりも僅かに小さい。ばね受け部材22の一端面22aの外周部は、第1段差面18に当接している。ばね受け部材22の他端面22bには、円環状のばね収容溝22cが形成されている。ばね受け部材22の中央部には、円孔状の挿通孔22hが形成されている。
【0020】
そして、貫通孔12内には、ばね受け部材22の一端面22a、シリンダ孔15の内周面、及び第2段差面19によってシリンダ室23が区画されている。よって、ボディ11は、シリンダ室23を有している。シリンダ室23には、円環状のピストン24が収容されている。ピストン24の外周面には、円環状のピストンパッキン25が装着されている。ピストンパッキン25は、ピストン24の外周面とシリンダ孔15の内周面との間をシールする。
【0021】
ピストン24は、シリンダ室23を、ばね受け部材22側の第1圧力作用室26と、第2段差面19側の第2圧力作用室27とに区画している。ボディ11の外周壁におけるばね受け部材22寄りには、第1圧力作用室26に連通する第1流体給排ポート28が形成されている。そして、第1圧力作用室26には、第1流体給排ポート28によって流体が給排される。また、ボディ11の外周壁における第2段差面19寄りには、第2圧力作用室27に連通する第2流体給排ポート29が形成されている。そして、第2圧力作用室27には、第2流体給排ポート29によって流体が給排される。したがって、シリンダ室23には流体が給排される。ピストン24は、第1圧力作用室26及び第2圧力作用室27に対して流体の給排が行われることにより、シリンダ室23を往復動する。したがって、ピストン24は、シリンダ室23に給排される流体によってシリンダ室23を往復動する。
【0022】
ピストン24には、ピストン24におけるばね受け部材22とは反対側の端面からボディ11の軸線方向に延びるピストンロッド30が一体化されている。よって、ピストンロッド30は、ピストン24と一体的に移動する。ピストンロッド30は、ロッド挿通孔16及び収容孔17を通過してボディ11の他端面11bから突出している。ピストンロッド30におけるピストン24とは反対側の先端部は、一対の支持部21の間に位置している。よって、ピストンロッド30は、一対の支持部21の間で、ボディ11に対して出没可能になっている。
【0023】
シール装着溝16a内にロッドパッキン31が装着されている。ロッドパッキン31は、ロッド挿通孔16の内周面とピストンロッド30の外周面との間をシールする。また、収容孔17内には抜け止め部材32が配置されている。抜け止め部材32は、ロッドパッキン31におけるシール装着溝16aからの抜けを防止する。
【0024】
把持装置10は、ピストン24の往復動に伴って開閉動作を行う一対のマスタージョウ33を備えている。また、把持装置10は、一対のマスタージョウ33を互いに接離する方向へ案内するガイドプレート34を備えている。ガイドプレート34は、一対の支持部21におけるボディ11の他端面11bとは反対側の端部に取り付けられている。ガイドプレート34における一対の支持部21とは反対側の端面には、一対のマスタージョウ33を互いに接離する方向へ案内するガイド凹部34aが形成されている。また、ガイドプレート34には、一対のレバー用貫通孔34hが形成されている。
【0025】
把持装置10は、一対のレバー35を備えている。各レバー35は、略L字板状である。各レバー35の一部は、一対の支持部21の間に配置されている。各レバー35の一端部には、U字形状の係合溝35aが形成されている。各レバー35の係合溝35aは、ピストンロッド30の先端部に設けられた係合軸36に係合されている。また、各レバー35のL字の屈曲部分には、支持軸37がそれぞれ貫通している。各支持軸37は、一対の支持部21に架け渡された状態で一対の支持部21に固定されている。そして、ピストンロッド30が、ボディ11に対して出没動作を行うことによって、各レバー35が各支持軸37を回動中心として回動する。
【0026】
各レバー35の他端部は、各レバー用貫通孔34hを通過してガイドプレート34における一対の支持部21とは反対側の端面から突出している。各レバー35の他端部には、係合子38が設けられている。そして、各レバー35の係合子38は、各マスタージョウ33に形成された収容凹部33hに挿入されている。これにより、各係合子38と各収容凹部33hとが互いに掛止されている。この各係合子38と各収容凹部33hとの掛止によって、各レバー35の先端部に各マスタージョウ33が連結されている。
【0027】
図3に示すように、第2流体給排ポート29から第2圧力作用室27に流体が供給されると、ピストン24がばね受け部材22に向けて移動し始め、第1圧力作用室26の流体が第1流体給排ポート28を介して外部へ排出され、ピストン24がばね受け部材22に向けて移動していく。これにより、ピストンロッド30がボディ11に対して没入する方向へ移動する。このピストンロッド30におけるボディ11に対する没入方向への移動に伴って、一対のレバー35の一端部が係合軸36を介してピストンロッド30に引き込まれて、各レバー35が各支持軸37を回動中心として各係合子38が互いに接近する方向へ回動する。この各係合子38における互いに接近する方向への移動によって、一対のマスタージョウ33が互いに接近する方向へ移動し、ワークW1を把持する。
【0028】
図1に示すように、第1流体給排ポート28から第1圧力作用室26に流体が供給されると、ピストン24が第2段差面19に向けて移動し始め、第2圧力作用室27の流体が第2流体給排ポート29を介して外部へ排出され、ピストン24が第2段差面19に向けて移動していく。これにより、ピストンロッド30がボディ11に対して突出する方向へ移動する。このピストンロッド30におけるボディ11に対する突出方向への移動に伴って、一対のレバー35の一端部が係合軸36を介してピストンロッド30に押し込まれて、各レバー35が各支持軸37を回動中心として各係合子38が互いに離間する方向へ回動する。この各係合子38における互いに離間する方向への移動によって、一対のマスタージョウ33が互いに離間する方向へ移動し、ワークW1の把持状態が解除される。
【0029】
図2に示すように、雌ねじ孔13には、円板状のヘッドカバー39が取り付けられている。よって、ヘッドカバー39は、ボディ11における軸線方向の一端部に取り付けられている。ヘッドカバー39の外周面には、雌ねじ孔13に対してねじ込まれる雄ねじ部39aが形成されている。よって、ヘッドカバー39は、ボディ11に対してねじ込まれる雄ねじ部39aを有している。そして、貫通孔12内には、ヘッドカバー39、センサ収容孔14の内周面、及びばね受け部材22の他端面22bによってセンサ収容室40が区画されている。よって、ボディ11は、センサ収容室40を有している。
【0030】
把持装置10は、一対のマスタージョウ33の位置を検出するLVDTセンサ50を備えている。LVDTセンサ50は、円筒状のセンサケース本体51と、センサケース本体51に巻回された一次コイル61及び2つの二次コイル62と、ピストン24と一体的に往復動するとともにセンサケース本体51に対して出没可能であるコア軸63と、を有している。
【0031】
センサケース本体51は、樹脂製である有底円筒状の本体部52を有している。本体部52は、円板状の底壁52aと、底壁52aの外周部から延びる円筒状の周壁52bと、を有している。周壁52bの内径は、ばね受け部材22の挿通孔22hの孔径と同じである。また、本体部52は、周壁52bにおける底壁52aとは反対側の端部から外方へ突出する環状のフランジ52cを有している。センサケース本体51においては、一次コイル61及び2つの二次コイル62が本体部52に樹脂モールドされており、一次コイル61及び2つの二次コイル62は本体部52の周壁52bに埋設されている。一次コイル61及び2つの二次コイル62は、本体部52の軸線方向に並んで配置されている。本体部52の軸線方向において、一次コイル61は、2つの二次コイル62の間に配置されている。
【0032】
また、センサケース本体51は、本体部52の周壁52bの外周面を覆う円筒状の被覆部材53を有している。被覆部材53は、例えば、鉄製である。さらに、センサケース本体51は、被覆部材53の外周面を覆う円筒状のケース部材54を有している。ケース部材54は、例えば、アルミニウム製である。ケース部材54の外径は、フランジ52cの外径と略同じである。ケース部材54におけるフランジ52c側の端面は、フランジ52cに接触している。また、ケース部材54におけるヘッドカバー39側の端面は、ヘッドカバー39に当接している。
【0033】
フランジ52cの外径、及びケース部材54の外径は、センサ収容孔14の小径孔14aの孔径よりも僅かに小さい。センサケース本体51は、センサ収容室40に収容されている。フランジ52cは、小径孔14aの内側に配置されている。本体部52の周壁52bの軸心は、ばね受け部材22の挿通孔22hの軸心と一致している。
【0034】
コア軸63は、ピストン24におけるばね受け部材22側の端面に形成された雌ねじ孔24hに螺合される雄ねじ63aが形成されている。そして、コア軸63は、雄ねじ63aが雌ねじ孔24hに螺合されることにより、ピストン24におけるばね受け部材22側の端面からボディ11の軸線方向に延びた状態でピストン24に一体化されている。なお、雄ねじ63aにはナット64が螺着されており、雄ねじ63aにおける雌ねじ孔24hに対するねじの緩みが抑制されている。
【0035】
コア軸63は、シリンダ室23からばね受け部材22の挿通孔22hを通過して本体部52の周壁52bの内側に挿入されている。コア軸63の外径は、周壁52bの内径、及びばね受け部材22の挿通孔22hの孔径よりも小さい。LVDTセンサ50は、ピストン24と同軸に配置された状態でボディ11に内蔵されている。
【0036】
一次コイル61には交流電圧が印加されている。各二次コイル62には、ピストン24の往復動に伴ってコア軸63が各二次コイル62の内側を往復動することにより誘起電圧がそれぞれ発生する。
【0037】
ばね受け部材22のばね収容溝22c内には、付勢部材65が収容されている。付勢部材65は、例えば、ウェーブワッシャである。付勢部材65は、本体部52における底壁52aとは反対側の端面に当接している。よって、付勢部材65は、センサケース本体51に対してセンサケース本体51の軸線の周囲に当接するとともにセンサケース本体51をヘッドカバー39に向けて付勢している。そして、付勢部材65は、ヘッドカバー39と協働してセンサケース本体51を挟み込んでいる。
【0038】
フランジ52cの外周面には、円環状のシール部材66が装着されている。シール部材66は、フランジ52cの外周面と小径孔14aの内周面との間をシールしている。よって、センサケース本体51の外周面には、センサケース本体51の外周面とボディ11の内周面との間をシールしてシリンダ室23からの流体の洩れを抑制するシール部材66が設けられている。
【0039】
把持装置10は、センサケース本体51におけるボディ11に対する回転を防止する回転止め機構70をさらに備えている。回転止め機構70は、ケース部材54の外周面にねじ込まれるボルト71と、ボディ11に形成されるとともにボルト71の頭部71aが内側に配置される孔72とから構成されている。
【0040】
図4に示すように、ボディ11の外周壁の外側面には、凹部11cが形成されている。そして、孔72は、凹部11cの底面11dに形成されている。孔72は、センサ収容孔14の大径孔14bに連通している。孔72は、平面視すると、楕円孔形状である。孔72の長手方向は、ボディ11の軸線方向に一致している。孔72の内周縁は、孔72の長手方向に互いに平行に延びる一対の長側縁72aと、一対の長側縁72aにおけるばね受け部材22側の端部同士を接続するとともに弧状に湾曲する第1湾曲縁72bと、一対の長側縁72aにおけるヘッドカバー39側の端部同士を接続するとともに弧状に湾曲する第2湾曲縁72cとから形成されている。
【0041】
図2に示すように、フランジ52cが小径孔14aの内側に配置されており、センサケース本体51が、付勢部材65とヘッドカバー39とによって挟み込まれている状態において、ボルト71の頭部71aは、孔72の第1湾曲縁72b寄りに位置している。このとき、ボディ11の軸線方向において、ボルト71の頭部71aと孔72の第2湾曲縁72cとの間の距離L1は、テーパ面14cからシール部材66までの距離L2よりも大きくなっている。
【0042】
図4に示すように、凹部11cの底面11dには、配線用挿通孔11hが形成されている。図2に示すように、配線用挿通孔11hは、孔72よりもヘッドカバー39寄りに位置するとともに、センサ収容孔14の大径孔14bに連通している。また、ケース部材54には、切欠54kが形成されている。配線用挿通孔11hと切欠54kとは、ボディ11の軸線方向に対して直交する方向で重なり合っている。そして、一次コイル61及び2つの二次コイル62から引き出された電気配線73は、切欠54k及び配線用挿通孔11hを通過して凹部11c内に向けて延びている。
【0043】
図1に示すように、ボディ11の外周壁の外側面には、増幅器74が搭載されている。よって、増幅器74は、把持装置10に一体化されている。増幅器74は、凹部11cを閉塞した状態でボディ11の外周壁の外側面に取り付けられている。電気配線73における一次コイル61及び2つの二次コイル62とは反対側の端部は、増幅器74に電気的に接続されている。増幅器74は、コネクタ74aを介して外部制御機器75に電気的に接続されている。増幅器74は、各二次コイル62から出力される誘起電圧を増幅する。そして、増幅器74によって増幅された電圧は、コネクタ74aを介して外部制御機器75へ供給される。
【0044】
次に、本実施形態の作用について説明する。
ピストン24の往復動に伴ってコア軸63が往復動することにより、各二次コイル62それぞれに発生する誘起電圧に差が生じる。この誘起電圧の差は、コア軸63の位置に応じて変化する。また、一対のマスタージョウ33の移動量とピストン24の移動量とは比例関係にある。したがって、外部制御機器75は、各二次コイル62から電気配線73及び増幅器74を介して供給される誘起電圧の差の変化量を検出することによって、コア軸63の移動量、すなわちピストン24の移動量が検出可能となり、結果として、一対のマスタージョウ33の移動量が検出可能となる。これによれば、一対のマスタージョウ33の位置がリニアに検出可能となり、一対のマスタージョウ33の位置検出が高精度に行われる。
【0045】
また、外部制御機器75は、一対のマスタージョウ33がワークW1を把持している際に、一対のマスタージョウ33の位置を検出することにより、一対のマスタージョウ33の位置情報に基づいて、ワークW1の寸法を測定することもできる。したがって、本実施形態のLVDTセンサ50は、ワークW1の寸法を測定するために用いられる測長センサとしても機能する。
【0046】
図5に示すように、ところで、例えば、メンテナンス時など、ボディ11に対するヘッドカバー39の組み付けや取り外しが行われる。このとき、ケース部材54におけるヘッドカバー39側の端面とヘッドカバー39とが当接した状態でヘッドカバー39の雄ねじ部39aにおける雌ねじ孔13に対する螺進又は螺退が行われると、センサケース本体51がヘッドカバー39と共に連れ回ろうとする。このとき、ボルト71の頭部71aが、孔72の一対の長側縁72aの一方に接触することにより、センサケース本体51におけるボディ11に対する回転が防止される。
【0047】
例えば、メンテナンス時など、センサケース本体51をボディ11から取り外す際には、まず、ヘッドカバー39をボディ11から取り外すとともに、増幅器74をボディ11の外周壁の外側面から取り外す。そして、ボルト71の頭部71aが孔72の第2湾曲縁72cに当接するまで、ボルト71の頭部71aを第2湾曲縁72cに向けて移動させる。すると、センサケース本体51が雌ねじ孔13に向けて移動し、フランジ52cが、小径孔14aからテーパ面14cを介して大径孔14bの内側に位置する。これにより、シール部材66におけるフランジ52cの外周面と小径孔14aの内周面との間のシールが解除され、シール部材66とボディ11との間の摺動抵抗が低下する。その結果、センサケース本体51におけるボディ11内での軸線方向への移動がスムーズになり、センサケース本体51がボディ11から取り外し易くなる。そして、ボルト71をケース部材54から取り外して、センサケース本体51を貫通孔12から引き抜くことにより、センサケース本体51がボディ11から取り外される。
【0048】
上記実施形態では以下の効果を得ることができる。
(1)把持装置10は、センサケース本体51に対してセンサケース本体51の軸線の周囲に当接するとともにセンサケース本体51をヘッドカバー39に向けて付勢してヘッドカバー39と協働してセンサケース本体51を挟み込む付勢部材65を備えている。これによれば、センサケース本体51は、センサケース本体51の軸線の周囲に当接する付勢部材65とヘッドカバー39とによって挟み込まれているため、センサケース本体51が、コア軸63の軸線に対して傾いた状態でボディ11内に配置されてしまうことを抑制することができる。したがって、コア軸63におけるセンサケース本体51に対する出没動作をスムーズにすることができる。
【0049】
(2)センサケース本体51の外周面には、センサケース本体51の外周面とボディ11の内周面との間をシールしてシリンダ室23からの流体の洩れを抑制する環状のシール部材66が設けられている。これによれば、センサケース本体51の軸線に対して直交する方向において、ボディ11内におけるセンサケース本体51の位置を、シリンダ室23からの流体の洩れを抑制する環状のシール部材66の弾性力を利用して位置決めすることができる。したがって、センサケース本体51の軸線が、コア軸63の軸線に対してずれてしまうことを抑制することができるため、コア軸63におけるセンサケース本体51に対する出没動作をさらにスムーズにすることができる。
【0050】
(3)ヘッドカバー39は、ボディ11に対してねじ込まれる雄ねじ部39aを有している。また、把持装置10は、センサケース本体51におけるボディ11に対する回転を防止する回転止め機構70をさらに備えている。これによれば、例えば、ヘッドカバー39が、ボディ11に対して圧入によって取り付けられている場合に比べると、ボディ11に対するヘッドカバー39の組み付け性を向上させることができる。また、例えば、メンテナンス時など、ヘッドカバー39をボディ11に対して取り外す必要がある場合においても、ヘッドカバー39がボディ11に対して圧入によって取り付けられている場合に比べると、ヘッドカバー39をボディ11に対して容易に取り外すことができる。さらに、ボディ11に対するヘッドカバー39の組み付けや取り外しを行う際に、センサケース本体51がヘッドカバー39と共に連れ回りしてしまうことを回転止め機構70によって防止することができる。よって、センサケース本体51が回転することに伴って、一次コイル61及び二次コイル62それぞれに接続されている電気配線73が引っ張られて損傷してしまう等の不具合が生じてしまうことを回避することができる。
【0051】
(4)メンテナンス時など、センサケース本体51をボディ11から取り外す際には、ボルト71の頭部71aが孔72の第2湾曲縁72cに当接するまで、ボルト71の頭部71aを第2湾曲縁72cに向けて移動させる。これにより、センサケース本体51が雌ねじ孔13に向けて移動して、フランジ52cを、小径孔14aからテーパ面14cを介して大径孔14bの内側に位置させることができる。その結果、シール部材66におけるフランジ52cの外周面と小径孔14aの内周面との間のシールが解除されて、シール部材66とボディ11との間の摺動抵抗を低下させることができ、センサケース本体51におけるボディ11内での軸線方向への移動がスムーズになり、センサケース本体51をボディ11から容易に取り外すことができる。
【0052】
(5)本実施形態によれば、コア軸63におけるセンサケース本体51に対する出没動作がスムーズに行われるため、外部制御機器75での一対のマスタージョウ33の位置を精度良く検出することができる。
【0053】
なお、上記実施形態は、以下のように変更して実施することができる。上記実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0054】
図6に示すように、回転止め機構70が、ボディ11にねじ込まれるボルト81と、センサケース本体51に形成されるとともにボルト81の軸部81aが内側に配置される穴82とから構成されていてもよい。凹部11cの底面11dには、ボルト81の軸部81aがねじ込まれる雌ねじ孔11eが形成されている。被覆部材53には、ボルト81の軸部81aが挿通される溝53eが形成されている。穴82、溝53e、及び雌ねじ孔11eは、ボディ11の軸線方向に対して直交する方向で重なり合っている。そして、雌ねじ孔11e及び溝53eを通過したボルト81の軸部81aの先端部が穴82に挿入されている。これによれば、センサケース本体51がヘッドカバー39と共に連れ回ろうとすると、穴82の内周面が、ボルト81の軸部81aの先端部に接触することにより、センサケース本体51におけるボディ11に対する回転が防止される。なお、図6に示す実施形態では、把持装置10の小型化を図るために、ピストン24の外径が上記実施形態よりも小さくなっている。それに伴って、センサケース本体51の外径も小さくなっている。具体的には、図6に示す実施形態のセンサケース本体51は、上記実施形態で説明したケース部材54が省略された構成になっている。
【0055】
・ 実施形態において、シリンダ室23からの流体の洩れを抑制する環状のシール部材66が、センサケース本体51の外周面に設けられておらず、例えば、ばね受け部材22の外周面、及びばね受け部材22の他端面22bとセンサケース本体51との間にそれぞれ設けられていてもよい。
【0056】
・ 実施形態において、ヘッドカバー39が、ボディ11に対して圧入によって取り付けられていてもよい。
・ 実施形態において、付勢部材65が、例えば、コイルスプリングであってもよい。
【0057】
・ 実施形態において、LVDTセンサ50は、一次コイル61及び2つの二次コイル62が、本体部52の軸線方向に並んで配置されている構成でなくてもよく、例えば、2つの二次コイル62の内周側に一次コイル61が配置されている構成であってもよい。
【0058】
・ 実施形態において、増幅器74が、ボディ11の外周壁の外側面に搭載されていなくてもよい。要は、増幅器74が、把持装置10に一体化されていなくてもよい。
・ 実施形態において、ボディ11は、四角筒状に限らず、例えば、円筒状であってもよい。
【符号の説明】
【0059】
10…把持装置、11…ボディ、23…シリンダ室、24…ピストン、33…マスタージョウ、39…ヘッドカバー、39a…雄ねじ部、50…LVDTセンサ、51…センサケース本体、61…一次コイル、62…二次コイル、63…コア軸、65…付勢部材、66…シール部材、70…回転止め機構。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7