(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6867360
(24)【登録日】2021年4月12日
(45)【発行日】2021年4月28日
(54)【発明の名称】ダイカスト用部品
(51)【国際特許分類】
B22D 17/20 20060101AFI20210419BHJP
B33Y 80/00 20150101ALI20210419BHJP
B22F 3/16 20060101ALI20210419BHJP
B22F 3/105 20060101ALI20210419BHJP
【FI】
B22D17/20 J
B33Y80/00
B22F3/16
B22F3/105
【請求項の数】1
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2018-230607(P2018-230607)
(22)【出願日】2018年12月10日
(65)【公開番号】特開2020-93264(P2020-93264A)
(43)【公開日】2020年6月18日
【審査請求日】2019年8月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006943
【氏名又は名称】リョービ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】佐伯 昌寛
(72)【発明者】
【氏名】山崎 和宏
【審査官】
▲辻▼ 弘輔
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭56−109150(JP,A)
【文献】
特開平2−305617(JP,A)
【文献】
特開平11−348045(JP,A)
【文献】
特開2008−221220(JP,A)
【文献】
特開2012−152762(JP,A)
【文献】
特開2014−113610(JP,A)
【文献】
特開2015−224363(JP,A)
【文献】
特開2017−002399(JP,A)
【文献】
特開2017−154447(JP,A)
【文献】
特開2017−159555(JP,A)
【文献】
特開2019−098384(JP,A)
【文献】
特許第4759759(JP,B2)
【文献】
国際公開第2018/003883(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22D 17/20
B22D 18/02
B22F 3/16
B22F 3/105
B29C 64/00
B33Y 80/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定金型と可動金型とで画成されるキャビティに対して溶湯を導入する湯道の経路中に配置されるダイカスト用部品であって、
部品内部に冷却媒体を通すための冷媒通路が形成されるとともに、当該冷媒通路が前記湯道の形状に沿った液路形状を有して形成され、
前記冷媒通路の形成箇所が3Dプリンターにより形成された積層造形加工部であり、
前記冷媒通路の形成箇所以外の箇所が機械加工により形成された機械加工部であり、
前記積層造形加工部と前記機械加工部とが溶接接合又は拡散接合により接合されるダイカスト金型用射出スリーブであり、前記ダイカスト金型用射出スリーブの切欠きに沿うように前記冷媒通路には退避部が設けられていることを特徴とするダイカスト用部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダイカスト法の実施の際に用いられるダイカスト用部品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、固定金型と可動金型とで画成されるキャビティに対して溶湯を導入する湯道の経路中に配置されるダイカスト金型用射出スリーブなどのダイカスト用部品が公知である。この種の部品は、高温に熱せられた金属の溶湯と接触する部材であるため、部品内部に冷却媒体を通すための冷媒通路が形成される。そのような部材の実施例を開示する先行技術文献として、例えば、下記特許文献1が存在する。
【0003】
特許文献1には、金型のキャビティ内にアルミニウム等の金属溶湯を注入して鋳造品を成形するダイカストマシンに用いられるスプールブッシュに関する発明が開示されている。当該発明は、熱膨張等の影響による冷却液体の漏れがなく、冷却液路の設計の自由度の高い、ダイカストマシン用スプールブッシュを提案するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4759759号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上掲した特許文献1に開示された技術では、複数のピースを接合することで冷却液路を形成する形態が示されている。しかしながら、この形態は、均一な冷却効果を得ることを目的として採用されたものではあるが、接合のための加工作業等に多くの手間が掛かる上に、正確な冷却液路を形成するためには加工精度や接合精度を向上しなければならないといった、製造上の課題が存在していた。
【0006】
本発明は、上述した従来技術に存在する課題に鑑みて成されたものであって、その目的は、部品内部に冷却媒体を通すための冷媒通路が形成されるダイカスト用部品について、部品性能を維持しながらも製造が容易であり、製造時間の短縮化や製造コストの削減が可能なダイカスト用部品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以下、本発明について説明する。なお、本発明の理解を容易にするために添付図面の参照番号を括弧書きにて付記するが、それにより本発明が図示の形態に限定されるものではない。
【0008】
本発明に係るダイカスト用部品は、固定金型(10)と可動金型(20)とで画成されるキャビティ(1a)に対して溶湯(2)を導入する湯道(30a)の経路中に配置されるダイカスト用部品であって、部品内部に冷却媒体を通すための冷媒通路(32a)が形成されるとともに、当該冷媒通路(32a)が前記湯道(30a)の形状に沿った液路形状を有して形成され、前記冷媒通路(32a)の形成箇所が3Dプリンターにより形成された積層造形加工部(32)であり、前記冷媒通路(32a)の形成箇所以外の箇所が機械加工により形成された機械加工部(33)であり、前記積層造形加工部(32)と前記機械加工部(33)とが
溶接接合又は拡散接合により接合される
ダイカスト金型用射出スリーブ(30)であり、前記ダイカスト金型用射出スリーブ(30)の切欠き(32b)に沿うように前記冷媒通路(32a)には退避部(32a1)が設けられていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、部品内部に冷却媒体を通すための冷媒通路が形成されるダイカスト用部品について、部品性能を維持しながらも製造が容易であり、製造時間の短縮化や製造コストの削減が可能なダイカスト用部品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本実施形態に係るダイカスト用部品としてのダイカスト金型用射出スリーブを備えたダイカスト金型を示す断面図であり、溶湯の充填前の状態を示している。
【
図2】本実施形態に係るダイカスト用部品としてのダイカスト金型用射出スリーブを備えたダイカスト金型を示す断面図であり、溶湯の充填後の状態を示している。
【
図3】本実施形態に係るダイカスト金型用射出スリーブの外観斜視透視図である。
【
図4】本実施形態に係るダイカスト金型用射出スリーブを構成する積層造形加工部の形態例を示す斜視透視図である。
【
図5】
図4で示されたダイカスト金型用射出スリーブの積層造形加工部が有する冷媒通路の一形態例を示す図である。
【
図6】本実施形態に係るダイカスト金型用射出スリーブを構成する機械加工部の形態例を示す斜視透視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を実施するための好適な実施形態について、図面を用いて説明する。なお、以下の実施形態は、各請求項に係る発明を限定するものではなく、また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0016】
まず、
図1および
図2を参照して、本実施形態に係るダイカスト用部品としてのダイカスト金型用射出スリーブを用いる鋳造設備の全体構成を説明する。ここで、
図1および
図2は、本実施形態に係るダイカスト用部品としてのダイカスト金型用射出スリーブを備えたダイカスト金型を示す断面図であり、特に、
図1は溶湯の充填前の状態を示しており、
図2は溶湯の充填後の状態を示している。なお、
図1および
図2に示されるように、ダイカスト用部品としてのダイカスト金型用射出スリーブ30は、ダイカストを行うダイカスト金型1に設けられている。
【0017】
本実施形態に係るダイカスト金型1は、固定ダイス12と固定ホルダ11とを備える固定金型10と、可動ダイス22と可動ホルダ21とを備える可動金型20とを有している。固定ダイス12と可動ダイス22とによって、キャビティ1aが画成される。また、ダイカスト金型1には、ダイカスト金型用射出スリーブ30が設けられている。ダイカスト金型用射出スリーブ30は、ビスケット1b、ランナー1cおよびゲート1dを介してキャビティ1aと連通している。また、ダイカスト金型用射出スリーブ30内には、プランジャーチップ31が設けられている。プランジャーチップ31は、ダイカスト金型用射出スリーブ30内を進退可能であり、前進して溶湯2を押圧し、溶湯2を鋳込口であるビスケット1b、ランナー1cおよびゲート1dを介してキャビティ1aに充填するように構成されている。これらビスケット1b、ランナー1cおよびゲート1dなど、キャビティ1aへ溶湯を導入する部分も、後述する本発明の湯道に含まれる。
【0018】
さらに、プランジャーチップ31の前進方向対向位置であるビスケット1bの位置には、分流子40が設けられている。
図1に示される状態から、
図2に示される状態へと、プランジャーチップ31を前進させることにより、プランジャーチップ31によって押圧されてダイカスト金型用射出スリーブ30内を送られてきた溶湯2が、分流子40に衝突する。そして、分流子40に衝突した溶湯2は、分流子40によってランナー1cおよびゲート1dへと導かれるように構成されている。
【0019】
つぎに、本実施形態に係るダイカスト金型用射出スリーブ30のより詳細な構成を、
図3〜
図6に示す。ここで、
図3は、本実施形態に係るダイカスト金型用射出スリーブの外観斜視透視図である。また、
図4は、本実施形態に係るダイカスト金型用射出スリーブを構成する積層造形加工部の形態例を示す斜視透視図であり、
図5は、
図4で示されたダイカスト金型用射出スリーブの積層造形加工部が有する冷媒通路の一形態例を示す図である。さらに、
図6は、本実施形態に係るダイカスト金型用射出スリーブを構成する機械加工部の形態例を示す斜視透視図である。
【0020】
図3に示すように、本実施形態に係るダイカスト金型用射出スリーブ30は、円筒形状をした外形を有する部材である。ダイカスト金型用射出スリーブ30には、内部を貫通する貫通孔30aが設けられており、この貫通孔30aが溶湯2を導入するための湯道としての機能を有している。
【0021】
また、ダイカスト金型用射出スリーブ30は、溶湯2が射出される側が
図4で示される積層造形加工部32によって構成されており、溶湯2の反射出側が
図6で示される機械加工部33によって構成されており、さらに、これら積層造形加工部32と機械加工部33とが溶接接合されることでダイカスト金型用射出スリーブ30が形成されている。
【0022】
図4で示す積層造形加工部32は、部品内部に冷却媒体を通すための冷媒通路32aが形成されており、また、この冷媒通路32aは、積層造形加工部32の内部を貫通して形成された湯道としての貫通孔30aの形状に沿った液路形状を有して構成されている。そのような液路形状を有する冷媒通路32aの一形態例が、
図5に示されている。具体的には、湯道に合わせて設けられた積層造形加工部32の切欠き32bの形状に沿うように冷媒通路32aに退避部32a1が設けられている。さらに、
図5で示す液路形状を有する冷媒通路32aを積層造形加工部32の内部に形成するとともに、積層造形加工部32を一部材で形成するために、本実施形態に係る積層造形加工部32は、3Dプリンターにより形成されたものとなっている。このように構成することで、切欠き形状に対応し、溶湯に対して等距離を保った冷媒通路32aを形成することができ、確実な冷却を実現することができる。
【0023】
ここで、仮にダイカスト金型用射出スリーブ30全体を3Dプリンターによって形成してしまうと、製造コストが増大してしまう。一方で、3Dプリンターを使用せず、機械加工のみによって貫通孔30aの形状に沿った液路形状を有する冷媒通路32aを形成しようとすると、従来技術のように、複数のピースを接合したり、複数方向に貫通した複数の冷媒通路を組み合わせておき、不要な加工部分に埋め栓をしたりするなどといった、製造コストが増大してしまう製造方法を採用せざるを得なかった。
【0024】
そこで、本実施形態では、冷媒通路32aの形成が必要となる溶湯2の射出側の部位を3Dプリンターで形成した積層造形加工部32とし、冷媒通路32aの形成が不要な溶湯2の反射出側の部位を機械加工で形成した機械加工部33とした。なお、機械加工部33を形成するための機械加工については、切削バイトを用いた切削加工や研削砥石を用いた研削加工など、従来公知のあらゆる機械加工手段を用いることができる。このように、3Dプリンターによって形成された積層造形加工部32と、機械加工によって形成された機械加工部33とを組み合わせてダイカスト金型用射出スリーブ30を構成することで、部品性能を維持しながらも製造が容易であり、製造時間の短縮化や製造コストの削減が可能なダイカスト用部品を提供することが可能となった。
【0025】
なお、積層造形加工部32と機械加工部33との接合手段については、上述した溶接接合のほか、拡散接合など、従来公知のあらゆる金属接合手段を用いることが可能である。
【0026】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態に記載の範囲には限定されない。上記実施形態には、多様な変更又は改良を加えることが可能である。
【0027】
例えば、上述した実施形態では、本発明に係るダイカスト用部品がダイカスト金型用射出スリーブ30である場合を例示して説明を行った。しかし、本発明に係るダイカスト用部品は、ダイカスト法の実施の際に用いられるあらゆる部品に対して適用可能であり、例えば、埋子などの金型用部品に対して本発明を適用することが可能である。
【0028】
その様な変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【符号の説明】
【0029】
1 ダイカスト金型、1a キャビティ、1b ビスケット、1c ランナー、1d ゲート、2 溶湯、10 固定金型、11 固定ホルダ、12 固定ダイス、20 可動金型、21 可動ホルダ、22 可動ダイス、30 ダイカスト金型用射出スリーブ(ダイカスト用部品)、30a 貫通孔(湯道)、32 積層造形加工部、32a 冷媒通路、32a1 退避部、32b 切欠き、33 機械加工部、31 プランジャーチップ、40 分流子。