(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0015】
ここで、その例が図面に示されている、ポリイミド組成物、ガラス物品上の低摩擦コーティング、低摩擦コーティングを有するガラス物品、およびその製造方法の様々な実施の形態を詳しく参照する。そのような被覆ガラス物品は、制限なく、医薬包装などを含む様々な包装用途に使用するのに適したガラス容器であることがある。実施の形態において、低摩擦コーティングは、最初に施された後、脱パイロジェン過程中に利用されるものなどの高温に暴露されたときに、熱安定性である。例えば、ここに記載された被覆ガラス物品は、熱処理後に低い摩擦係数を十分に維持することがあり、そのような熱処理後に実質的に黄変しないことがある。これらの医薬包装は、医薬組成物を収容しても、しなくてもよい。実施の形態において、その低摩擦コーティングは、そのガラス物品上に、完全にイミド化された形態(例えば、ポリアミド酸としてではない)で施すことができるポリイミドを含むことがある。実施の形態において、ここに記載されたポリイミドは、フッ素化されるなどハロゲン化されることがあり、シロキサン部分を含むことがある。そのようなポリイミドは、本開示の全体に亘り、ハロゲン化ポリイミドシロキサンと称されることがある。
【0016】
低摩擦コーティング、低摩擦コーティングを有するガラス物品、およびその形成方法の様々な実施の形態が、添付図面を具体的に参照して、ここにさらに詳しく記載される。ここに記載された低摩擦コーティングの実施の形態はガラス容器の外面に施されているが、記載された低摩擦コーティングは、非ガラス材料を含む多種多様な材料上、および制限なく、ガラスディスプレイパネルなどを含む容器以外の基体上のコーティングとして使用してもよいことを理解すべきである。
【0017】
一般に、低摩擦コーティングは、医薬包装として使用されることがある容器などのガラス物品の表面に施されることがある。その低摩擦コーティングは、低下した摩擦係数および増加した損傷抵抗などの有益な特性を被覆ガラス物品に与えることがある。低下した摩擦係数は、ガラスに対する摩擦損傷を軽減することによって、ガラス物品に改善された強度と耐久性を与えることがある。さらに、低摩擦コーティングは、例えば、脱パイロジェン、オートクレーブ処理などの医薬品の包装に利用される包装工程および事前包装工程中に経験するものなどの、高温および他の条件への暴露後に、上述した改善された強度および耐久性の特徴を維持することがある。したがって、低摩擦コーティングおよび低摩擦コーティングを有するガラス物品は、熱安定性であることがある。
【0018】
前記低摩擦コーティングは、概して、ハロゲン化ポリイミドシロキサンの単層などのハロゲン化ポリイミドシロキサンを含むことがある。別の実施の形態において、その低摩擦コーティングには、ハロゲン化ポリイミドシロキサンと共に、尿素官能化シランなどのカップリング剤が含まれることがある。いくつかの実施の形態において、そのカップリング剤は、ガラス物品の表面上に位置するカップリング剤層中に配置されることがあり、そのハロゲン化ポリイミドシロキサンは、そのカップリング剤層の上に位置する高分子層中に配置されることがある。他の実施の形態において、そのカップリング剤およびハロゲン化ポリイミドシロキサン組成物は、単層内で混合されることがある。
【0019】
図1は、被覆ガラス物品、詳しくは、被覆ガラス容器100の断面を概略示している。被覆ガラス容器100は、ガラス本体102および低摩擦コーティング120を備える。ガラス本体102は、外面108(すわち、第一面)と内面110(すなわち、第二面)との間に延在するガラス容器壁104を有する。ガラス容器壁104の内面110は、被覆ガラス容器100の内容積106を規定する。低摩擦コーティング120は、ガラス本体102の外面108の少なくとも一部の上に位置している。いくつかの実施の形態において、低摩擦コーティング120は、ガラス本体102の実質的に全外面108上に位置することがある。低摩擦コーティング120は、外面122およびガラス本体102と低摩擦コーティング120の界面にあるガラス本体接触面124を有する。その低摩擦コーティング120は、外面108でガラス本体102に結合されることがある。
【0020】
1つの実施の形態において、被覆ガラス容器100は医薬包装である。例えば、ガラス本体102は、バイアル(vial)、アンプル(ampoule)、アンプル(ampul)、瓶、フラスコ、バイアル(phial)、ビーカー、バケツ、カラフェ、バット、注射器本体などの形状にあることがある。被覆ガラス容器100は、どのような組成物を収容するために使用されてもよく、1つの実施の形態において、医薬組成物を収容するために使用されることがある。医薬組成物は、病気の医療診断、治療、処置、または予防に使用する目的のどのような化学物質を含んでもよい。医薬組成物の例としては、以下に限られないが、薬(medicines)、薬物(drugs)、薬剤(medications)、薬剤(medicaments)、治療薬(remedies)などが挙げられる。その医薬組成物は、液体、固体、ゲル、懸濁液、粉末などの形態にあることがある。
【0021】
ここで、
図1および2を参照すると、1つの実施の形態において、低摩擦コーティング120は、ここでは単一層構造と称されることもある単層構造を有する。例えば、低摩擦コーティング120は、ハロゲン化ポリイミドシロキサンなどの1種類以上の高分子の実質的に均質な組成を有することがある。低摩擦コーティング120は、例えば、少なくとも約50質量%、少なくとも約60質量%、少なくとも約70質量%、少なくとも約80質量%、少なくとも約90質量%、少なくとも約95質量%、少なくとも約99質量%の量のハロゲン化ポリイミドシロキサンを含んでもよく、またはハロゲン化ポリイミドシロキサンから実質的になってもよい(例えば、低摩擦コーティング120の少なくとも約99.5質量%がハロゲン化ポリイミドシロキサンである)。別の実施の形態において、ハロゲン化ポリイミドシロキサン化学組成物およびカップリング剤は、単層内で実質的に混合されて、低摩擦コーティング120を形成することがある。例えば、低摩擦コーティング120は、カップリング剤およびハロゲン化ポリイミドシロキサンの混合物であることがあり、低摩擦コーティング120は、例えば、30質量%から70質量%のハロゲン化ポリイミドシロキサンおよび30質量%から70質量%のカップリング剤を含む。
【0022】
ここで、
図1および3を参照すると、1つの実施の形態において、低摩擦コーティング120は二層構造を有する。
図3は被覆ガラス容器100の断面を示しており、この低摩擦コーティングは高分子層170およびカップリング剤層180を含む。ハロゲン化ポリイミドシロキサンなどの高分子化学組成物が高分子層170中に含まれることがあり、カップリング剤がカップリング剤層180中に含まれることがある。カップリング剤層180は、ガラス容器壁104の外面108と直接接触していることがある。高分子層170は、カップリング剤層180と直接接触していることがあり、低摩擦コーティング120の外面122を形成することがある。いくつかの実施の形態において、カップリング剤層180はガラス容器壁104に結合しており、高分子層170は界面174でカップリング剤層180に結合している。高分子層170は、例えば、少なくとも約50質量%、少なくとも約60質量%、少なくとも約70質量%、少なくとも約80質量%、少なくとも約90質量%、少なくとも約95質量%、少なくとも約99質量%の量のハロゲン化ポリイミドシロキサンを含んでもよく、またはハロゲン化ポリイミドシロキサンから実質的になってもよい(例えば、高分子層170の少なくとも約99.5質量%がハロゲン化ポリイミドシロキサンである)。カップリング剤層180は、少なくとも約50質量%、少なくとも約60質量%、少なくとも約70質量%、少なくとも約80質量%、少なくとも約90質量%、少なくとも約95質量%、少なくとも約99質量%の量の1種類以上のカップリング剤を含んでもよく、または1種類以上のカップリング剤から実質的になってもよい(例えば、カップリング剤層180の少なくとも約99.5質量%がカップリング剤である)。
【0023】
いくつかの他の実施の形態において、前記高分子層は前記カップリング剤層の上に位置していることがあり、これは、高分子層170がカップリング剤層180およびガラス容器壁104に対する外層内にあることを意味する。ここに用いたように、第2の層の「上に」位置する第1の層は、その第1の層が、第2の層と直接接触していても、第1と第2の層の間に配置された第3の層などにより、第2の層から隔てられても差し支えないことを意味する。
【0024】
ガラス本体102に施された低摩擦コーティング120の厚さは、約100μm以下、約10μm以下、約8μm以下、約6μm以下、約4μm以下、約3μm以下、約2μm以下、またさらには約1μm以下であることがある。いくつかの実施の形態において、低摩擦コーティング120の厚さは、約800nm以下、約600nm以下、約400nm以下、約300nm以下、約200nm以下、またさらには約100nm以下であることがある。他の実施の形態において、低摩擦コーティング120は、約90nm厚未満、約80nm厚未満、約70nm厚未満、約60nm厚未満、約50nm厚未満、またさらには約25nm厚未満であることがある。いくつかの実施の形態において、低摩擦コーティング120はガラス本体102の全体に亘り均一な厚さのものではなくてもよい。例えば、被覆ガラス容器100は、ガラス本体102を、低摩擦コーティング120を形成する1種類以上の被覆溶液と接触させる過程のために、ある区域において、より厚い低摩擦コーティング120を有することがある。いくつかの実施の形態において、低摩擦コーティング120は不均一な厚さを有することがある。例えば、そのコーティング厚は、被覆ガラス容器100の異なる領域に亘り変動することがあり、これにより、選択された領域における保護が促進されることがある。
【0025】
高分子層170およびカップリング剤層180などの少なくとも2つの層を含む実施の形態において、各層の厚さは、約100μm以下、約10μm以下、約8μm以下、約6μm以下、約4μm以下、約3μm以下、約2μm以下、またさらには約1μm以下であることがある。いくつかの実施の形態において、各層の厚さは、約0.5μm以下、またさらには約100nm以下であることがある。他の実施の形態において、各層は、約90nm厚未満、約80nm厚未満、約70nm厚未満、約60nm厚未満、約50nm厚未満、またさらには約25nm厚未満であることがある。
【0026】
ここに述べたように、低摩擦コーティング120は、高分子ハロゲン化ポリイミド化学組成物を含む。このハロゲン化ポリイミドシロキサンは、250℃、300℃、および350℃を含む、200℃から400℃の範囲の温度で実質的に分解しないハロゲン化ポリイミドシロキサンなどの熱安定性ハロゲン化ポリイミドシロキサンから形成されることがある。これらのハロゲン化ポリイミドシロキサンは、カップリング剤の有無にかかわらずに施してよい。ここに用いたように、「ハロゲン化ポリイミドシロキサン」は、ハロゲン化されており、シロキサン部分を含むポリイミドを称する。「シロキサン部分」は、Si−O−Si結合化学基を称する。そのハロゲン化ポリイミドシロキサンの1つ以上の単量体が、そのようなシロキサン部分を構成することがある。「ハロゲン化」化合物は、以下に限られないが、フッ素、塩素、臭素、および/またはヨウ素などのハロゲン
原子を1種類以上含む化合物であり、その
原子は、時々、炭化水素において水素
原子を置換することがある。
【0027】
前記ハロゲン化ポリイミドシロキサンは、例えば、1種類以上のジアミン単量体組成物の1種類以上の二無水物単量体組成物との反応により形成されることがある。多くのポリイミドは、ポリイミド形態では溶液中において安定ではなく、ポリアミド酸として溶液中に存在し、これは、ジアミン単量体および二無水物単量体から形成される非環化ポリイミド前駆体である。しかしながら、本開示のハロゲン化ポリイミドシロキサンは、完全にイミド化されたポリイミド化学種として安定であることがある。実施の形態において、ハロゲン化ポリイミドシロキサンは、完全にイミド化された状態でガラス物品上に堆積されることがあり、ガラス物品上に堆積されるポリアミド酸に必要であろうような、イミド化する硬化工程は必要ないであろう。実施の形態において、完全にイミド化されたハロゲン化ポリイミドシロキサンは、約30分以下に亘る約300℃の熱処理などによって硬化されることがある。いくつかの実施の形態において、硬化は、カップリング剤層および高分子層の堆積後、または高分子とカップリング剤の混合層の堆積後に行われることがある。理論により束縛されるものではないが、硬化工程は、カップリング剤が使用される実施の形態と、カップリング剤が使用されない実施の形態の両方において、ハロゲン化ポリイミドシロキサンのガラス本体への接着を促進するであろうと考えられる。
【0028】
一般に、ポリアミド酸は、イミド化化学種になるために、硬化されなければならない。そのような硬化は、約30分以下に亘り300℃で、もしくはそれより短い時間に亘り少なくとも320℃、340℃、360℃、380℃、または400℃などの300℃より高い温度で、ポリアミド酸を加熱する工程を含むことがある。理論により束縛されるものではないが、その硬化工程は、カルボン酸部分およびアミド部分の反応によりポリアミド酸をイミド化して、ポリイミドを形成すると考えられる。
【0029】
先に述べたように、多くの従来のポリイミドは、イミド化形態では可溶性ではなく、ポリアミド酸形態でしか溶液中に溶けていないことがある。さらに、従来の完全にイミド化されたポリイミドが溶媒中に溶け得る場合、そのような溶媒は、毒性または高沸点溶媒であろう。被覆ガラス容器などのガラス物品の大規模製造中に大量の毒性または高沸点溶媒が存在する製造環境においてそのような毒性または高沸点溶媒を取り扱うことは、難しく、危険であろう。毒性または高沸点溶媒の例としては、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、および1−メチル−2−ピロリジノン(NMP)溶媒、またはそれらの混合物が挙げられる。
【0030】
ここに記載されたハロゲン化ポリイミドシロキサンは、非毒性で低沸点の溶媒中に完全にイミド化された形態で可溶性であることがある。そのような非毒性で低沸点の溶媒としては、以下に限られないが、酢酸エチル、酢酸2−メトキシ−1−メチルエチル、トルエン、アセトン、2−ブタノン、およびそれらの混合物などの酢酸エステルまたはケトンが挙げられるであろう。理論により束縛されるものではないが、酢酸エステルおよびケトンなどの溶媒との改善された溶解度および相溶性は、高分子中の少なくとも1種類のアミン末端シロキサン単位、少なくとも1種類のフッ素化芳香族二無水物、および少なくとも1種類の芳香族フッ素化ジアミンの組合せによるであろうと考えられる。
【0031】
実施の形態において、前記ハロゲン化ポリイミドシロキサンは、アミン末端シロキサンを含む第1の単量体、ハロゲン化無水物(ハロゲン化二無水物など)を含む第2の単量体、およびハロゲン化アミン(ハロゲン化ジアミンなど)を含む第3の単量体の1つ以上を含む共重合体であることがある。そのハロゲン化ポリイミドシロキサンは、加えて、他の単量体を含んでもよい。実施の形態において、第2の単量体、第3の単量体、またはその両方がフッ素化されていることがある。実施の形態において、第2の単量体はフッ素化芳香族二無水物を含むことがある、および/または第3の単量体は芳香族フッ素化ジアミンを含むことがある。ここに用いたように、「アミン」と称される単量体は、1、2、3、またはさらに多くのアミン部分を含むことがある。また、ここに用いたように、「無水物」単量体は、1、2、3、またはさらに多くの無水物部分を含むことがある。例えば、ポリイミドは、一般に、二無水物およびジアミンから形成されることがある一方で、その二無水物およびジアミンは、それぞれ、追加の無水物またはアミン部分を含むことがある。
【0032】
1つの実施の形態において、アミン末端シロキサンを含む第1の単量体は、1,3−ビス(3−アミノプロピル)−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサンであることがあり、これは、下記の化学構造#1に構造的に示されている。1,3−ビス(3−アミノプロピル)−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサンは、ここでは、「BADS」と省略形態で称されることがある。
【0034】
1つの実施の形態において、ハロゲン化二無水物を含む第2の単量体は、4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物であることがあり、これは、下記の化学構造#2に構造的に示されている。4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物は、ここでは、「6FDA」と省略形態で称されることがある。
【0036】
1つの実施の形態において、ハロゲン化ジアミンを含む第3の単量体は、2,2−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパンであることがあり、これは、下記の化学構造#3に構造的に示されている。2,2−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパンは、ここでは、「6F」と省略形態で称されることがある。
【0038】
1つの実施の形態において、前記ハロゲン化ポリイミドシロキサンは、アミン末端シロキサンを含む第1の単量体、ハロゲン化二無水物を含む第2の単量体、およびハロゲン化ジアミンを含む第3の単量体からなることがある。例えば、そのハロゲン化ポリイミドシロキサンは、化学構造#1、化学構造#2、および化学構造#3に列挙された3つの単量体からなることがある。化学構造#1、化学構造#2、および化学構造#3から形成されたそのようなハロゲン化ポリイミドシロキサンは、下記の化学構造#4に示される構造を有する。化学構造#1、化学構造#2、および化学構造#3から形成されたそのようなハロゲン化ポリイミドシロキサンは、ここでは、「シリミド−6F」と省略形態で称されることがある。
【0040】
化学構造#4において、6FDA単量体は6FおよびBADS単量体と重合され、ここで、6FおよびBADS単量体の合計は、ハロゲン化ポリイミドシロキサン中に存在する6FDA単量体の量とほぼ等しい。化学構造#4において、6F単量体のBADS単量体に対する比は、n対mの比で表される。実施の形態において、6F単量体のBADS単量体に対する比は、約8:2から約2:8、約7:3から約3:7、または約6:4から約4:6、例えば、約1:1などの約9:1から約1:9であることがある。他の実施の形態において、6F単量体のBADS単量体に対する比は
、約9:1から約6:1、または約8:1から約7:1であることがある。それに加え、6FのBADSに対する上述した比は、一般に、ハロゲン化ポリイミドシロキサンを形成するために使用される任意のアミン末端シロキサン単量体のハロゲン化ジアミン単量体に対する比として適用されることがあることを理解すべきである。
【0041】
理論により束縛されるものではないが、ハロゲン化ジアミン単量体のアミン末端シロキサン単量体に対する比が、約9:1超のように高い場合、ひいては、高温での変色(黄変)に対する耐性が許容され、ハロゲン化ポリイミドシロキサンのガラス転移温度が高いが、そのコーティングの接着が劣化することがあると考えられる。約1:9未満のようにその比が低い場合、ハロゲン化ポリイミドシロキサンは、ガラス上の良好な接着を示すことがあるが、より低い温度で熱分解することがあり、ガラス転移温度がより低く、硬化されたとき、または脱パイロジェンなどの熱処理が施されたときに、目に見える変色(黄変)を示すことがある。
【0042】
ここに記載されたハロゲン化ポリイミドシロキサンのガラス転移温度は、約50℃から約300℃であることがある。例えば、1:1のモル比の6FDAと6Fから形成されたポリイミドのガラス転移温度は約300℃であることがあり、1:1のモル比の6FDAとBADSから形成されたポリイミドのガラス転移温度は約50℃であることがある。理論により束縛されるものではないが、6FDA、BADS、および6Fから形成されたポリイミドのガラス転移温度は、約50℃と約300℃の間にあり、そのガラス転移温度は、BADSの6Fに対する比の関数であると考えられる。
【0043】
アミン末端シロキサン、ハロゲン化ジアミン、およびハロゲン化二無水物に加え、他の単量体がハロゲン化ポリイミドシロキサン中に存在することがある。例えば、アミン末端シロキサン、ハロゲン化ジアミン、またはハロゲン化二無水物ではない単量体は、ハロゲン化ポリイミドシロキサンの単量体の5%、単量体の10%、単量体の20%、またさらには単量体の少なくとも約30%ほど多くを占めることがある。そのような追加の単量体は、溶媒中の向上した溶解度のために含まれることがある。
【0044】
追加の単量体がハロゲン化ポリイミドシロキサン中に含まれることがあるが、そのハロゲン化ポリイミドシロキサンは、全単量体の少なくとも約20%、全単量体の少なくとも約30%、全単量体の少なくとも約40%、全単量体の少なくとも約45%、またさらには全単量体の少なくとも約50%の量でハロゲン化二無水物単量体を含むことがある。そのハロゲン化ポリイミドシロキサンは、全単量体の少なくとも約10%、全単量体の少なくとも約15%、全単量体の少なくとも約20%、全単量体の少なくとも約23%、またさらには全単量体の少なくとも約25%の量でハロゲン化ジアミン単量体を含むことがある。そのハロゲン化ポリイミドシロキサンは、全単量体の少なくとも約10%、全単量体の少なくとも約15%、全単量体の少なくとも約20%、全単量体の少なくとも約23%、またさらには全単量体の少なくとも約25%の量でアミン末端シロキサン単量体を含むことがある。ここに用いたように、ポリイミド中の特定の単量体の百分率は、ポリイミド鎖中の単量体の総数で割った、特定の単量体の単量体単位の数のモル比を称する。
【0045】
いくつかの実施の形態において、ハロゲン化ポリイミドシロキサンは、化学構造#5に示される結合した二重ベンゼン部分を含む単量体を含むことがある。化学構造#5において、「A」は−C(CH
3)
2−、−SO
2−、−S−、または−O−を表すことがあり、「a」は0または1を表す(0は、「A」基がなく、ベンゼンが直接接続されていることを意味する)。
【0047】
実施の形態において、ハロゲン化ポリイミドシロキサンはランダム共重合体であることがある。ここに記載されたハロゲン化ポリイミドシロキサンは、約18ダルトンから約20ダルトン、約17ダルトンから約21ダルトン、約16ダルトンから約22ダルトン、または約15ダルトンから約23ダルトンなどの約19ダルトンの数平均モル質量(M
n)を有することがある。例えば、化学構造#4のシリミド−6Fポリイミドは、m:nが約3:1である場合、約19ダルトンに等しいM
nを有するであろう(ここで、「シリミド−6F 25/75」と称される)。ここに記載されたハロゲン化ポリイミドシロキサンは、約39ダルトンから約41ダルトン、約38ダルトンから約42ダルトン、約36ダルトンから約44ダルトン、または約30ダルトンから約50ダルトンなどの約40ダルトンの重量平均モル質量(M
w)を有することがある。例えば、化学構造#4のシリミド−6Fポリイミドは、m:nが約3:1である場合、約19ダルトンに等しいM
wを有するであろう。ここに記載されたハロゲン化ポリイミドシロキサンは、約2.0から約2.3、約1.8から約2.5、または約1.5から約2.8などの約2.15の多分散性指数を有することがある。例えば、化学構造#4のシリミド−6Fポリイミドは、m:nが約3:1である場合、約2.15の多分散性指数を有するであろう。
【0048】
ここに述べたように、いくつかの実施の形態において、低摩擦コーティング120はカップリング剤を含む。そのカップリング剤は、ハロゲン化ポリイミドシロキサンのガラス本体102に対する付着または結合を改善することがあり、一般に、ガラス本体102とハロゲン化ポリイミドシロキサンとの間に配置されるか、またはハロゲン化ポリイミドシロキサンと混合される。ここに用いたように、接着は、熱処理などの被覆ガラス容器に施される処理の前および後の低摩擦コーティングの付着または結合の強度を称する。熱処理としては、制限なく、オートクレーブ処理、脱パイロジェン、凍結乾燥などが挙げられる。ここに記載された硬化過程は、ここに記載されるように、熱安定性を定義するために使用される加熱処理または脱パイロジェンなどの、医薬包装産業における過程と類似または同一の加熱処理などのここに記載された加熱処理とは別であることを理解すべきである。
【0049】
1つの実施の形態において、前記カップリング剤は少なくとも1種類のシラン化学組成物を含むことがある。ここに用いたように、「シラン」化学組成物は、官能性オルガノシラン、並びに水溶液中のシランから形成されたシラノールを含むシラン部分を含む任意の化学組成物である。そのカップリング剤のシラン化学組成物は、芳香族または脂肪族であってもよい。いくつかの実施の形態において、少なくとも1種類のシラン化学組成物は、第1級アミン部分または第2級アミン部分などのアミン部分を含むことがある。さらに、そのカップリング剤は、1種類以上のシラン化学組成物から形成された1種類以上のシルセスキオキサン化学組成物などの、そのようなシランの加水分解物および/またはオリゴマーを含むことがある。そのシルセスキオキサン化学組成物は、完全かご構造、部分かご構造を有しても、かご構造を有さなくてもよい。
【0050】
前記カップリング剤は、1つの化学組成物、2つの異なる化学組成物、または複数の単量体化学組成物から形成されたオリゴマーを含む3つ以上の異なる化学組成物などの、いくつかの異なる化学組成物を含んでもよい。1つの実施の形態において、そのカップリング剤は、(1)第1のシラン化学組成物、その加水分解物、またはそのオリゴマー、および(2)少なくとも第1のシラン化学組成物および第2のシラン化学組成物のオリゴマー化により形成された化学組成物の少なくとも一方を含むことがある。別の実施の形態において、そのカップリング剤は第1と第2のシランを含む。ここに用いたように、「第1の」シラン化学組成物および「第2の」シラン化学組成物は、異なる化学組成を有するシランである。第1のシラン化学組成物は、芳香族または脂肪族化学組成物であってよく、必要に応じて、アミン部分を含むことがあり、必要に応じて、アルコキシシランであることがある。同様に、第2のシラン化学組成物は、芳香族または脂肪族化学組成物であってよく、必要に応じて、アミン部分を含むことがあり、必要に応じて、アルコキシシランであることがある。
【0051】
例えば、1つの実施の形態において、1つのシラン化学組成物しかカップリング剤として適用されない。そのような実施の形態において、そのカップリング剤は、シラン化学組成物、その加水分解物、またはそのオリゴマーを含むことがある。
【0052】
別の実施の形態において、多数のシラン化学組成物がカップリング剤として適用されることがある。そのような実施の形態において、そのカップリング剤は、(1)第1のシラン化学組成物および第2のシラン化学組成物の混合物、および(2)少なくとも第1のシラン化学組成物および第2のシラン化学組成物のオリゴマー化により形成された化学組成物の少なくとも一方を含むことがある。
【0053】
先に記載された実施の形態を参照すると、前記第1のシラン化学組成物、第2のシラン化学組成物、またはその両方は、芳香族化学組成物であることがある。ここに用いたように、芳香族化学組成物は、ベンゼン系および関連する有機部分の特徴を示す1つ以上の炭素の六員環を含有する。その芳香族シラン化学組成物は、以下に限られないが、ジアルコキシシラン化学組成物、その加水分解物、またはそのオリゴマー、もしくはトリアルコキシシラン化学組成物、その加水分解物、またはそのオリゴマーなどのアルコキシシランであることがある。いくつかの実施の形態において、その芳香族シランは、アミン部分を含むことがあり、アミン部分を含むアルコキシシランであることがある。別の実施の形態において、その芳香族シラン化学組成物は、芳香族アルコキシシラン化学組成物、芳香族アシルオキシシラン化学組成物、芳香族ハロゲンシラン化学組成物、または芳香族アミノシラン化学組成物であることがある。別の実施の形態において、その芳香族シラン化学組成物は、アミノフェニル、3−(m−アミノフェノキシ)プロピル、N−フェニルアミノプロピル、または(クロロメチル)フェニル置換アルコキシ、アシルオキシ、ハロゲン、またはアミノシランからなる群より選択されることがある。例えば、その芳香族アルコキシシランは、以下に限られないが、アミノフェニルトリメトキシシラン(ここでは「APhTMS」と称されることもある)、アミノフェニルジメトキシシラン、アミノフェニルトリエトキシシラン、アミノフェニルジエトキシシラン、3−(m−アミノフェノキシ)プロピルトリメトキシシラン、3−(m−アミノフェノキシ)プロピルジメトキシシラン、3−(m−アミノフェノキシ)プロピルトリエトキシシラン、3−(m−アミノフェノキシ)プロピルジエトキシシラン、N−フェニルアミノプロピルトリメトキシシラン、N−フェニルアミノプロピルジメトキシシラン、N−フェニルアミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニルアミノプロピルジエトキシシラン、その加水分解物、またはそのオリゴマー化された化学組成物であることがある。例示の実施の形態において、その芳香族シラン化学組成物はアミノフェニルトリメトキシシランであることがある。
【0054】
先に記載された実施の形態を再び参照すると、前記第1のシラン化学組成物、第2のシラン化学組成物、またはその両方は、脂肪族化学組成物であることがある。ここに用いたように、脂肪族化学組成物は、以下に限られないが、アルカン、アルケン、およびアルキン等の開鎖構造を有する化学組成物などの非芳香族である。例えば、いくつかの実施の形態において、前記カップリング剤は、アルコキシシランである化学組成物を含むことがあり、以下に限られないが、ジアルコキシシラン化学組成物、その加水分解物、またはそのオリゴマー、もしくはトリアルコキシシラン化学組成物、その加水分解物、またはそのオリゴマーなどの脂肪族アルコキシシランであることがある。いくつかの実施の形態において、その脂肪族シランは、アミン部分を含むことがあり、アミノアルキルトリアルコキシシランなどの、アミン部分を含むアルコキシシランであることがある。1つの実施の形態において、脂肪族シラン化学組成物は、3−アミノプロピル、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピル、ビニル、メチル、N−フェニルアミノプロピル、(N−フェニルアミノ)メチル、N−(2−ビニルベンジルアミノエチル)−3−アミノプロピル置換アルコキシ、アシルオキシ、ハロゲン、またはアミノシラン、その加水分解物、もしくはそのオリゴマーからなる群より選択されることがある。アミノアルキルトリアルコキシシランとしては、以下に限られないが、3−アミノプロピルトリメトキシシラン(ここでは「GAPS」と称されることがある)、3−アミノプロピルジメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルジエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルジメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルジエトキシシラン、その加水分解物、およびそのオリゴマー化された化学組成物が挙げられる。他の実施の形態において、その脂肪族アルコキシシラン化学組成物は、アルキルトリアルコキシシランまたはアルキルビアルコキシシランのように、アミン部分を含有しないことがある。そのようなアルキルトリアルコキシシランまたはアルキルビアルコキシシランとしては、以下に限られないが、ビニルトリメトキシシラン、ビニルジメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルジエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルジメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルジエトキシシラン、その加水分解物、またはそのオリゴマー化された化学組成物が挙げられる。例示の実施の形態において、その脂肪族シラン化学組成物は3−アミノプロピルトリメトキシシランである。また、ここでは、カップリング剤組成物として、以下に限られないが、ビス((3−トリエトキシシリル)プロピル)アミンまたはビス((3−トリメトキシシリル)プロピル)アミンなどのアミノビスシランも考えられる。
【0055】
1つの実施の形態において、前記カップリング剤は、尿素官能化シランを含むことがあり、アミノ基および芳香族基を持たないことがある。理論により束縛されるものではないが、そのような尿素官能化シラン層は、どのような変色も経ず、それゆえ、脱パイロジェンなどの熱処理が施されたときに、その保護コーティングの黄変を防ぐと考えられる。それに加え、尿素官能化シランカップリング剤はアミノ官能化シランほど高価ではないであろうし、脂肪族シランは芳香族シランほど高価ではないであろう。それゆえ、脂肪族尿素官能化シランは、あるアミノ官能化芳香族シランよりも望ましいであろう。尿素官能化シランの例としては、1−[3−(トリメトキシシリル)プロピル]尿素、1−(3−(トリエトキシシリル)プロピル)尿素、ビス(ウレイド)シラン、およびイソシアネートまたはアミノシランから調製された尿素が挙げられる。
【0056】
別の実施の形態において、前記カップリング剤は、アミノアルキルシルセスキオキサンである化学組成物を含むことがある。1つの実施の形態において、そのカップリング剤はアミノプロピルシルセスキオキサン(APS)オリゴマー(Gelestから水溶液として市販されている)を含む。1つの実施の形態において、前記芳香族シラン化学組成物はクロロシラン化学組成物である。別の実施の形態において、そのカップリング剤は、以下に限られないが、(3−アミノプロピル)シラントリオール、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピル−シラントリオールおよび/またはその混合物などのアミノアルコキシシランの加水分解類似体である化学組成物を含むことがある。
【0057】
別の実施の形態において、前記カップリング剤は、金属および/またはセラミック膜などの無機材料であることがある。そのカップリング剤として使用される適切な無機材料の非限定的例としては、チタン酸塩、ジルコン酸塩、スズ、チタン、および/またはその酸化物が挙げられる。
【0058】
再び
図1、2および3を参照すると、低摩擦コーティング120は、単一堆積工程で施されることがある(低摩擦コーティング120が、
図2に示されるように単層からなる場合)、または多段階過程で施されることがあり、その場合、ガラス本体102がカップリング剤と接触させられて、カップリング剤層180(上述したような)を形成し、必要に応じて、乾燥させられ、次に、浸漬過程などによって、溶液中のハロゲン化ポリイミドシロキサンなどの高分子化学組成物溶液と接触させられるか、あるいは、高分子層170がスプレイまたは他の適切な手段によって施され、必要に応じて、乾燥させられることがある。ここに記載された低摩擦コーティング120の適切な堆積方法の記載が、ここに全てが引用される、「Glass Articles with Low-Friction Coatings」と題する米国特許出願第13/780740号明細書に見つかるであろう。
【0059】
低摩擦コーティング120を施すことのできるガラス容器などのガラス物品は、様々な異なるガラス組成物から形成されることがある。そのガラス物品の特定の組成物は、そのガラスが所望の組の物理的性質を有するように、特定の用途にしたがって選択されるであろう。
【0060】
前記ガラス容器は、約25×10
-7/℃から80×10
-7/℃の範囲の熱膨張係数を有するガラス組成物から形成されることがある。例えば、ここに記載されたいくつかの実施の形態において、ガラス本体102は、イオン交換による強化に適したアルカリアルミノケイ酸塩ガラス組成物から形成される。そのような組成物は、一般に、SiO
2、Al
2O
3、少なくとも1種類のアルカリ土類酸化物、およびNa
2Oおよび/またはK
2Oなどの、1種類以上のアルカリ酸化物の組合せを含む。これらの実施の形態のいくつかにおいて、そのガラス組成物は、ホウ素およびホウ素を含有する化合物を含まないことがある。いくつかの他の実施の形態において、そのガラス組成物は、例えば、SnO
2、ZrO
2、ZnO、TiO
2、As
2O
3などの1種類以上の追加の酸化物を微量でさらに含むことがある。これらの成分は、清澄剤として、および/またはそのガラス組成物の化学的耐久性をさらに向上させるために、加えられることがある。別の実施の形態において、ガラス表面は、SnO
2、ZrO
2、ZnO、TiO
2、As
2O
3などを含む金属酸化物コーティングを含むことがある。
【0061】
ここに記載されたいくつかの実施の形態において、ガラス本体102は、イオン交換強化などによって強化されており、ここでは、「イオン交換ガラス」と称される。例えば、ガラス本体102は、約300MPa以上、またさらには約350MPa以上の圧縮応力を有することがある。いくつかの実施の形態において、その圧縮応力は、約300MPaから約900MPaの範囲にあることがある。しかしながら、いくつかの実施の形態において、ガラス中の圧縮応力は、300MPa未満または900MPa超であってもよいことを理解すべきである。いくつかの実施の形態において、ガラス本体102は、20μm以上の層の深さを有することがある。これらの実施の形態のいくつかにおいて、その層の深さは50μm超、またさらには75μm以上であることがある。さらに他の実施の形態において、その層の深さは100μmまでまたはそれより大きいことがある。前記イオン交換強化は、約350℃から約500℃の温度に維持された溶融塩浴中で行われることがある。所望の圧縮応力を達成するために、ガラス容器(未被覆)は、その塩浴中に、約30時間未満、またさらには約20時間未満に亘り浸漬されることがある。例えば、1つの実施の形態において、ガラス容器は、約8時間に亘り450℃の100%のKNO
3塩浴中に浸漬される。
【0062】
1つの特に典型的な実施の形態において、ガラス本体102は、Corning,Incorporatedに譲渡された、「Glass Compositions with Improved Chemical and Mechanical Durability」と題する、2012年10月25日に出願された係属中の米国特許出願第13/660894号明細書に記載されたイオン交換可能なガラス組成物から形成されることがある。
【0063】
しかしながら、ここに記載された被覆ガラス容器100は、制限なく、イオン交換可能なガラス組成物およびイオン交換可能ではないガラス組成物を含む他のガラス組成物から形成されてもよいことを理解すべきである。例えば、いくつかの実施の形態において、ガラス容器は、例えば、SchottタイプIBアルミノケイ酸塩ガラスなどのタイプIBガラス組成物から形成されることがある。
【0064】
ここに記載されたいくつかの実施の形態において、前記ガラス物品は、加水分解耐性に基づいて、USP(米国薬局方)、EP(ヨーロッパ薬局方)、およびJP(日本薬局方)などの規制当局により記載された医療用ガラスの基準を満たすガラス組成物から形成されることがある。USP 660およびEP 7によれば、ホウケイ酸ガラスは、タイプIの基準を満たし、非経口包装に日常的に使用されている。ホウケイ酸ガラスの例としては、以下に限られないが、Corning(登録商標)Pyrex(登録商標)7740、7800およびWheaton 180、200、および400、Schott Duran、Schott Fiolax、KIMAX(登録商標)N−51A、Gerrescheimer GX−51 Flintなどが挙げられる。ソーダ石灰ガラスは、タイプIIIの基準を満たし、溶液または緩衝剤を製造するために後で溶かされる乾燥粉末の包装に許容される。タイプIIIのガラスは、アルカリに反応しにくいことが実証されている液体製剤を包装するのにも適している。タイプIIIのソーダ石灰ガラスの例に、Wheaton 800および900がある。脱アルカリ化されたソーダ石灰ガラスは、より高レベルの水酸化ナトリウムおよび酸化カルシウムを有し、タイプIIの基準を満たす。これらのガラスは、タイプIのガラスほど浸出に対して耐性はないが、タイプIIIのガラスよりは耐性がある。タイプIIのガラスは、その保管寿命に亘りpH7未満のままである製品に使用できる。その例に、硫酸アンモニウム処理されたソーダ石灰ガラスがある。これらの医療用ガラスは、様々な化学組成を有し、20〜85×10
-7/℃の範囲の線熱膨張係数(CTE)を有する。
【0065】
ここに記載された被覆ガラス物品がガラス容器である場合、被覆ガラス容器100のガラス本体102は、様々な形態を取ることがある。例えば、ここに記載されたガラス本体を使用して、バイアル、アンプル、カートリッジ、注射器本体および/または医薬組成物を貯蔵するための任意の他のガラス容器などの被覆ガラス容器100を形成することができる。さらに、被覆前にガラス容器を化学強化する能力を利用して、そのガラス容器の機械的耐久性をさらに改善することができる。したがって、少なくとも1つの実施の形態において、そのガラス容器は、低摩擦コーティングを施す前に、イオン交換強化されることがあることを理解すべきである。あるいは、米国特許第7201965号明細書に記載されているような、熱焼入れ、火炎研磨、および積層などの他の強化方法を使用して、被覆前にガラスを強化しても差し支えない。
【0066】
被覆ガラス容器が、被覆されたままの状態にあるとき(すなわち、該当する場合、硬化以外のどのような追加の処理も行わずに、コーティングの施用後)、または制限なく、洗浄、凍結乾燥、脱パイロジェン、オートクレーブ処理などを含む、医薬品充填ラインで行われる処理と類似または同一の処理などの1つ以上の加工処理後に、被覆ガラス容器の様々な性質(すなわち、摩擦係数、水平圧縮強度、4点曲げ強度)を測定してよい。
【0067】
脱パイロジェンは、パイロジェンが物質から除去される過程である。医薬包装などのガラス物品の脱パイロジェンは、試料がある期間に亘り高温に加熱される熱処理をその試料に施すことによって行うことができる。例えば、脱パイロジェンは、制限なく、20分、30分、40分、1時間、2時間、4時間、8時間、12時間、24時間、48時間、および72時間を含む、約30秒から約72時間の期間に亘り、約250℃と約380℃の間の温度にガラス容器を加熱する工程を含むことがある。この熱処理後、ガラス容器は室温まで冷却される。医薬産業に通常用いられる従来の脱パイロジェン条件の1つは、約30分に亘る約250℃の温度での熱処理である。しかしながら、より高い温度が利用される場合、熱処理の時間が減少するであろうと考えられる。ここに記載されたような被覆ガラス容器は、ある期間に亘り高温に暴露されることがある。ここに記載された加熱の高温および期間は、ガラス容器を脱パイロジェン化するのに十分であってもなくてもよい。しかしながら、ここに記載された加熱の高温および期間のいくつかは、ここに記載された被覆ガラス容器などの被覆ガラス容器を脱パイロジェン化するのに十分であることを理解すべきである。例えば、ここに記載されたように、被覆ガラス容器は、約30分の期間に亘り、約260℃、約270℃、約280℃、約290℃、約300℃、約310℃、約320℃、約330℃、約340℃、約350℃、約360℃、約370℃、約380℃、約390℃、または約400℃の温度に暴露されることがある。
【0068】
ここに用いたように、凍結乾燥条件(すなわち、フリーズ・ドライ)は、試料が、タンパク質を含有する液体で充填され、次に、−100℃で凍結され、その後、真空下において−15℃で20時間に亘り水の昇華が行われる過程を称する。
【0069】
ここに用いたように、オートクレーブ処理条件は、100℃での10分間に亘る試料の蒸気パージであって、その後、試料が121℃の環境に暴露される20分間の滞留時間が行われ、その後、121℃での30分間の熱処理が行われる、蒸気パージを称する。
【0070】
前記低摩擦コーティングを有する被覆ガラス容器の部分の摩擦係数(μ)は、同じガラス組成物から形成された未被覆ガラス容器の表面の摩擦係数より低いことがある。摩擦係数(μ)は、2つの表面間の摩擦の定量的測定であり、表面粗さ、並びに以下に限られないが、温度および湿度などの環境条件を含む、第1と第2の表面の機械的性質と化学的性質の関数である。ここに用いたように、被覆ガラス容器100の摩擦係数測定は、第1のガラス容器(約16.00mmと約17.00mmの間の外径を有する)の外面と、その第1のガラス容器と同一の第2のガラス容器の外面との間の摩擦係数として報告され、ここで、第1と第2のガラス容器は、同じ本体と同じコーティング組成物(施された場合)を有し、製造前、製造中、および製造後に同じ環境に暴露されてきた。この中に特に明記のない限り、摩擦係数は、ここに記載されたように、バイアル上バイアル試験治具で測定された30Nの垂直荷重で測定された最大摩擦係数を称する。しかしながら、特定の印加荷重で最大摩擦係数を示す被覆ガラス容器は、より小さい荷重で同じまたは良好な(すなわち、より低い)最大摩擦係数も示すであろうことを理解すべきである。例えば、被覆ガラス容器が、50Nの印加荷重の下で0.5以下の最大摩擦係数を示す場合、その被覆ガラス容器は、25Nの印加荷重の下で0.5以下の最大摩擦係数も示すであろう。
【0071】
ここに記載された実施の形態において、前記ガラス容器(被覆と未被覆の両方)の摩擦係数は、バイアル上バイアル試験治具により測定される。試験治具200が、
図4に概略示されている。その治具内に配置された2つのガラス容器の間の摩擦力を測定するためにも、同じ装置を使用してもよい。バイアル上バイアル試験治具200は、交差形態に配置された第1のクランプ212および第2のクランプ222を備える。第1のクランプ212は、第1のベース216に取り付けられた第1の固定アーム214を備える。第1の固定アーム214は、第1のガラス容器210に付着し、第1のガラス容器210を第1のクランプ212に対して静止状態に保持する。同様に、第2のクランプ222は、第2のベース226に取り付けられた第2の固定アーム224を備える。第2の固定アーム224は、第2のガラス容器に付着し、それを第2のクランプ222に対して静止状態に保持する。第1のガラス容器210の長軸および第2のガラス容器220の長軸が、互いに対して約90°の角度で、x−y軸により規定される水平面上に位置するように、第1のガラス容器210が第1のクランプ212上に配置され、第2のガラス容器220が第2のクランプ222上に配置される。
【0072】
第1のガラス容器210は、接触点230で第2のガラス容器220と接触して配置される。x−y軸により規定される水平面に垂直な方向に、垂直力が印加される。この垂直力は、静止重または静止した第1のクランプ212上にある第2のクランプ222に印加された他の力により印加してよい。例えば、錘が第2のベース226上に配置されることがあり、第1のベース216が安定表面上に置かれることがあり、それゆえ、接触点230で第1のガラス容器210と第2のガラス容器220との間に測定可能な力を生じさせる。あるいは、力は、UMT(ユニバーサル機械式試験機)装置などの機械式装置で印加してもよい。
【0073】
第1のクランプ212または第2のクランプ222は、第1のガラス容器210および第2のガラス容器220の長軸と45°の角度にある方向に、互いに対して動かすことができる。例えば、第1のクランプ212は静止状態に保持されることがあり、第2のクランプ222は、第2のガラス容器220がx軸の方向に第1のガラス容器210を横断して動くように動かされることがある。同様の設定が、The Journal of Adhesion、78:113-127,2002の「Scratch Resistant Polyimide Coatings for Alumino Silicate Glass surfaces」にR.L.De Rosa等により記載されている。摩擦係数を測定するために、第2のクランプ222を動かすのに要する力および第1と第2のガラス容器210、220に印加される垂直力がロードセルにより測定され、摩擦係数が、摩擦力と垂直力の割合として計算される。その治具は、25℃および50%の相対湿度の環境で作動される。
【0074】
ここに記載された実施の形態において、前記低摩擦コーティングを有する被覆ガラス容器の部分は、先に記載されたバイアル上バイアル試験治具で測定して、同様の被覆ガラス容器に対して、約0.7以下の摩擦係数を有する。他の実施の形態において、その摩擦係数は、約0.6以下、またさらには約0.5以下であることがある。いくつかの実施の形態において、その低摩擦コーティングを有する被覆ガラス容器の部分は、約0.4以下、またさらには約0.3以下の摩擦係数を有する。約0.7以下の摩擦係数を有する被覆ガラス容器は、一般に、摩擦損傷に対して改善された耐性を示し、その結果、改善された機械的性質を有する。例えば、従来のガラス容器(低摩擦コーティングを持たない)は、0.7超の摩擦係数を有するであろう。
【0075】
ここに記載されたいくつかの実施の形態において、前記低摩擦コーティングを有する被覆ガラス容器の部分の摩擦係数は、同じガラス組成物から形成された未被覆ガラス容器の表面の摩擦係数よりも少なくとも20%小さい。例えば、その低摩擦コーティングを有する被覆ガラス容器の部分の摩擦係数は、同じガラス組成物から形成された未被覆ガラス容器の表面の摩擦係数よりも、少なくとも20%小さい、少なくとも25%小さい、少なくとも30%小さい、少なくとも40%小さい、またさらには少なくとも50%小さいことがある。
【0076】
いくつかの実施の形態において、前記低摩擦コーティングを有する被覆ガラス容器の部分は、30分の期間に亘る、約260℃、約270℃、約280℃、約290℃、約300℃、約310℃、約320℃、約330℃、約340℃、約350℃、約360℃、約370℃、約380℃、約390℃、または約400℃の温度への暴露後に約0.7以下の摩擦係数を有することがある。他の実施の形態において、その低摩擦コーティングを有する被覆ガラス容器の部分は、30分の期間に亘る、約260℃、約270℃、約280℃、約290℃、約300℃、約310℃、約320℃、約330℃、約340℃、約350℃、約360℃、約370℃、約380℃、約390℃、または約400℃の温度への暴露後に約0.7以下(すなわち、約0.6以下、約0.5以下、約0.4以下、またさらには約0.3以下)の摩擦係数を有することがある。いくつかの実施の形態において、その低摩擦コーティングを有する被覆ガラス容器の部分の摩擦係数は、30分間の約260℃の温度への暴露後に、約30%を超えて増加しないであろう。他の実施の形態において、その低摩擦コーティングを有する被覆ガラス容器の部分の摩擦係数は、30分の期間に亘る、約260℃、約270℃、約280℃、約290℃、約300℃、約310℃、約320℃、約330℃、約340℃、約350℃、約360℃、約370℃、約380℃、約390℃、または約400℃の温度への暴露後に、約30%(すなわち、約25%、約20%、約15%、またさらには約10%)を超えて増加しないであろう。他の実施の形態において、その低摩擦コーティングを有する被覆ガラス容器の部分の摩擦係数は、30分の期間に亘る、約260℃、約270℃、約280℃、約290℃、約300℃、約310℃、約320℃、約330℃、約340℃、約350℃、約360℃、約370℃、約380℃、約390℃、または約400℃の温度への暴露後に、約0.5(すなわち、約0.45、約0.04、約0.35、約0.3、約0.25、約0.2、約0.15、約0.1、またさらには約0.5)を超えて増加しないであろう。いくつかの実施の形態において、その低摩擦コーティングを有する被覆ガラス容器の部分の摩擦係数は、30分の期間に亘る、約260℃、約270℃、約280℃、約290℃、約300℃、約310℃、約320℃、約330℃、約340℃、約350℃、約360℃、約370℃、約380℃、約390℃、または約400℃の温度への暴露後に、全く増加しないであろう。
【0077】
いくつかの実施の形態において、前記低摩擦コーティングを有する被覆ガラス容器の部分は、10分に亘る約70℃の温度の水浴中に浸漬された後に、約0.7以下の摩擦係数を有することがある。他の実施の形態において、その低摩擦コーティングを有する被覆ガラス容器の部分は、5分、10分、20分、30分、40分、50分、またさらには1時間に亘る約70℃の温度の水浴中に浸漬された後に、約0.7以下(すなわち、約0.6以下、約0.5以下、約0.4以下、またさらには約0.3以下)の摩擦係数を有することがある。いくつかの実施の形態において、その低摩擦コーティングを有する被覆ガラス容器の部分の摩擦係数は、10分に亘る約70℃の温度の水浴中に浸漬された後に、約30%を超えて増加しないであろう。他の実施の形態において、その低摩擦コーティングを有する被覆ガラス容器の部分の摩擦係数は、5分、10分、20分、30分、40分、50分、またさらには1時間に亘る約70℃の温度の水浴中に浸漬された後に、約30%(すなわち、約25%、約20%、約15%、またさらには約10%)を超えて増加しないであろう。いくつかの実施の形態において、その低摩擦コーティングを有する被覆ガラス容器の部分の摩擦係数は、5分、10分、20分、30分、40分、50分、またさらには1時間に亘る約70℃の温度の水浴中に浸漬された後に、全く増加しないであろう。
【0078】
いくつかの実施の形態において、前記低摩擦コーティングを有する被覆ガラス容器の部分は、凍結乾燥条件への暴露後に、約0.7以下の摩擦係数を有することがある。他の実施の形態において、その低摩擦コーティングを有する被覆ガラス容器の部分は、凍結乾燥条件への暴露後に、約0.7以下(すなわち、約0.6以下、約0.5以下、約0.4以下、またさらには約0.3以下)の摩擦係数を有することがある。いくつかの実施の形態において、その低摩擦コーティングを有する被覆ガラス容器の部分の摩擦係数は、凍結乾燥条件への暴露後に、約30%を超えて増加しないであろう。他の実施の形態において、その低摩擦コーティングを有する被覆ガラス容器の部分の摩擦係数は、凍結乾燥条件への暴露後に、約30%(すなわち、約25%、約20%、約15%、またさらには約10%)を超えて増加しないであろう。いくつかの実施の形態において、その低摩擦コーティングを有する被覆ガラス容器の部分の摩擦係数は、凍結乾燥条件への暴露後に、全く増加しないであろう。
【0079】
いくつかの実施の形態において、前記低摩擦コーティングを有する被覆ガラス容器の部分は、オートクレーブ処理条件への暴露後に、約0.7以下の摩擦係数を有することがある。他の実施の形態において、その低摩擦コーティングを有する被覆ガラス容器の部分は、オートクレーブ処理条件への暴露後に、約0.7以下(すなわち、約0.6以下、約0.5以下、約0.4以下、またさらには約0.3以下)の摩擦係数を有することがある。いくつかの実施の形態において、その低摩擦コーティングを有する被覆ガラス容器の部分の摩擦係数は、オートクレーブ処理条件への暴露後に、約30%を超えて増加しないであろう。他の実施の形態において、その低摩擦コーティングを有する被覆ガラス容器の部分の摩擦係数は、オートクレーブ処理条件への暴露後に、約30%(すなわち、約25%、約20%、約15%、またさらには約10%)を超えて増加しないであろう。いくつかの実施の形態において、その低摩擦コーティングを有する被覆ガラス容器の部分の摩擦係数は、オートクレーブ処理条件への暴露後に、全く増加しないであろう。
【0080】
ここに記載された被覆ガラス容器は、水平圧縮強度を有する。
図1を参照すると、ここに記載されたような、水平圧縮強度は、そのガラス容器の長軸に対して平行に向けられた2つの平行なプラテンの間に被覆ガラス容器100を水平に配置することによつて測定される。次に、ガラス容器の長軸に対して垂直な方向にプラテンにより、被覆ガラス容器100に機械的荷重が印加される。バイアル圧縮の荷重速度は0.5インチ/分(約1.27cm/分)であり、プラテンが0.5インチ/分(約1.27cm/分)の速度で互いに向かって動くことを意味する。この水平圧縮強度は、25℃および50%の相対湿度で測定される。この水平圧縮強度の測定は、選択された垂直圧縮荷重での破損確率として与えることができる。ここに用いたように、ガラス容器が試料の少なくとも50%において水平圧縮下で潰れたときに、破損が起こる。いくつかの実施の形態において、被覆ガラス容器は、未被覆バイアルよりも少なくとも10%、20%、または30%大きい水平圧縮強度を有することがある。
【0081】
ここで、
図1および4を参照すると、摩耗したガラス容器にも水平圧縮強度の測定を行うことができる。具体的には、試験治具200の作動により、被覆ガラス容器100の強度を弱める表面引っ掻き傷または摩耗などの損傷が被覆ガラス容器の外面122に生じることがある。次に、そのガラス容器に、先に記載された水平圧縮手順が行われ、ここで、その容器は2つのプラテンの間に置かれ、引っ掻き傷はプラテンに対して平行に外側に向いている。その引っ掻き傷は、バイアル上バイアル試験治具により印加された選択された垂直圧力および引っ掻き傷の長さにより特徴付けることができる。特に明記のない限り、水平圧縮手順のための摩耗したガラス容器の引っ掻き傷は、30Nの垂直荷重により生じた20mmの引っ掻き傷の長さにより特徴付けられる。
【0082】
前記被覆ガラス容器は、熱処理後に水平圧縮強度について評価することができる。その熱処理は、30分の期間に亘る、約260℃、約270℃、約280℃、約290℃、約300℃、約310℃、約320℃、約330℃、約340℃、約350℃、約360℃、約370℃、約380℃、約390℃、または約400℃の温度への暴露であることがある。いくつかの実施の形態において、その被覆ガラス容器の水平圧縮強度は、上述した熱処理などの熱処理に暴露され、次に、先に記載されたように、摩耗された後に、約20%、30%、またさらには40%を超えて低下しない。1つの実施の形態において、その被覆ガラス容器の水平圧縮強度は、30分の期間に亘る、約260℃、約270℃、約280℃、約290℃、約300℃、約310℃、約320℃、約330℃、約340℃、約350℃、約360℃、約370℃、約380℃、約390℃、または約400℃の熱処理が施され、次に、摩耗された後に、約20%を超えて低下しない。
【0083】
ここに記載された被覆ガラス物品は、30分の期間に亘り少なくとも260℃の温度に加熱した後に、熱安定性であることがある。ここに用いた「熱安定性」という句は、そのガラス物品に施された低摩擦コーティングが、高温への暴露後に、その被覆ガラス物品の機械的性質、具体的には、摩擦係数および水平圧縮強度が、たとえあるとしても、最小しか影響を受けないように、暴露後にガラス物品の表面上に実質的に完全なままであることを意味する。これは、その低摩擦コーティングが、高温暴露後にガラスの表面に付着したままであり、摩耗、衝撃などの機械的傷害からそのガラス物品を保護し続けることを示す。
【0084】
ここに記載された実施の形態において、被覆ガラス物品は、その被覆ガラス物品が、規定の温度に加熱され、その温度で規定時間に亘り維持された後に、摩擦係数の基準および水平圧縮強度の基準の両方を満たす場合、熱安定性であると考えられる。その摩擦係数の基準が満たされたか否かを判定するために、
図4に示された試験治具および30Nの印加荷重を使用して、受け取った状態(すなわち、いずれの熱暴露の前)で、第1の被覆ガラス物品の摩擦係数が決定される。第2の被覆ガラス物品(すなわち、第1の被覆ガラス物品と同じガラス組成物および同じコーティング組成物を有するガラス物品)が、所定の条件下で熱暴露され、室温に冷却される。その後、
図4に示された試験治具を使用して、第2のガラス物品の摩擦係数を決定して、30Nの印加荷重により被覆ガラス物品を摩耗して、約20mmの長さを有する摩耗部(すなわち、「引っ掻き傷」)を生じる。第2の被覆ガラス物品の摩擦係数が0.7未満であり、摩耗区域の第2のガラス物品のガラスの表面が、どのような観察可能な損傷も有さない場合、ひいては、低摩擦コーティングの熱安定性を決定する目的のための摩擦係数の基準が満たさていれる。ここに用いた「観察可能な損傷」という用語は、ガラス物品の摩耗区域のガラスの表面が、LEDまたはハロゲン光源により100倍の倍率でNomarskiまたは微分干渉コントラスト(DIC)分光顕微鏡で観察した場合、摩耗区域の0.5cmの長さ当たり6未満しかガラスのひびを含まないことを意味する。ガラスのひびまたはガラスの浅割れ目の標準定義が、G.D.Quinn、「NIST Recommended Practice Guide: Fractography of Ceramics and Glasses」、NIST special publication 960-17(2006)に記載されている。
【0085】
水平圧縮強度の基準が満たされたか否かを判定するために、30Nの荷重下で
図4に示された試験治具内で第1の被覆ガラス物品を摩耗して、20mmの引っ掻き傷を形成する。次に、第1の被覆ガラス物品に、ここに記載されたように、水平圧縮試験を行い、第1の被覆ガラス物品の残留強度を決定する。第2の被覆ガラス物品(すなわち、第1の被覆ガラス物品と同じガラス組成物および同じ被覆組成物を有するガラス物品)を、所定の条件下で熱暴露し、室温に冷却する。その後、30Nの荷重下で、
図4に示された試験治具内で、第2の被覆ガラス物品を摩耗させる。次に、第2の被覆ガラス物品に、ここに記載されたように、水平圧縮試験を行い、第2の被覆ガラス物品の残留強度を決定する。第2の被覆ガラス物品の残留強度が、第1の被覆ガラス物品と比べて約20%を超えて減少していない場合、ひいては、低摩擦コーティングの熱安定性を決定する目的のために、水平圧縮強度の基準が満たされている。
【0086】
ここに記載された実施の形態において、前記被覆ガラス容器は、その被覆ガラス容器を約30分の期間に亘り少なくとも約260℃の温度に暴露した後に、摩擦係数の基準と水平圧縮強度の基準が満たされた場合、熱安定性である(すなわち、その被覆ガラス容器は、約30分の期間に亘り少なくとも約260℃の温度で熱安定性である)と考えられる。熱安定性は、約260℃から約400℃までの温度で評価されることもある。例えば、いくつかの実施の形態において、被覆ガラス容器は、約30分の期間に亘り少なくとも約270℃またさらには約280℃の温度で前記基準が満たされた場合、熱安定性であると考えられる。さらに他の実施の形態において、被覆ガラス容器は、約30分の期間に亘り少なくとも約290℃またさらには約300℃の温度で前記基準が満たされた場合、熱安定性であると考えられる。さらなる実施の形態において、被覆ガラス容器は、約30分の期間に亘り少なくとも約310℃またさらには約320℃の温度で前記基準が満たされた場合、熱安定性であると考えられる。さらに他の実施の形態において、被覆ガラス容器は、約30分の期間に亘り少なくとも約330℃またさらには約340℃の温度で前記基準が満たされた場合、熱安定性であると考えられる。さらに他の実施の形態において、被覆ガラス容器は、約30分の期間に亘り少なくとも約350℃またさらには約360℃の温度で前記基準が満たされた場合、熱安定性であると考えられる。いくつかの他の実施の形態において、被覆ガラス容器は、約30分の期間に亘り少なくとも約370℃またさらには約380℃の温度で前記基準が満たされた場合、熱安定性であると考えられる。さらに他の実施の形態において、被覆ガラス容器は、約30分の期間に亘り少なくとも約390℃またさらには約400℃の温度で前記基準が満たされた場合、熱安定性であると考えられる。
【0087】
ここに開示された被覆ガラス容器は、ある温度範囲に亘り熱安定性であることもあり、その被覆ガラス容器は、その範囲の各温度で摩擦係数の基準と水平圧縮強度の基準を満たすことによって熱安定性であることを意味する。例えば、ここに記載された実施の形態において、被覆ガラス容器は、少なくとも約260℃から約400℃以下の温度まで熱安定性であることがある。いくつかの実施の形態において、被覆ガラス容器は、少なくとも約260℃から約350℃の範囲おいて熱安定性であることがある。いくつかの他の実施の形態において、被覆ガラス容器は、少なくとも約280℃から約350℃以下の温度まで熱安定性であることがある。さらに他の実施の形態において、被覆ガラス容器は、少なくとも約290℃から約340℃まで熱安定性であることがある。別の実施の形態において、被覆ガラス容器は、約300℃から約380℃の温度の範囲で熱安定性であることがある。別の実施の形態において、被覆ガラス容器は、約320℃から約360℃の温度の範囲で熱安定性であることがある。
【0088】
ここに記載された被覆ガラス容器は4点曲げ強度を有する。ガラス容器の4点曲げ強度を測定するために、被覆ガラス容器100の前駆体であるガラス管を測定に利用する。そのガラス管は、前記ガラス容器と同じ直径を有するが、ガラス容器の底面またはガラス容器の口を含まない(すなわち、その管をガラス容器に成形する前)。次に、そのガラス管に4点曲げ応力試験を行って、機械的に破損させる。その試験は、10mm/分の荷重速度で3インチ(約7.5cm)だけ間隔があけられた内側接触部材および9インチ(約22.5cm)だけ間隔があけられた外側接触部材により、50%の相対湿度で行われる。
【0089】
その4点曲げ応力測定は、被覆され、摩耗された管に行われることもある。試験治具200の操作により、摩耗バイアルの水平圧縮強度の測定に記載されたように、管の強度を弱める表面引っ掻き傷などの摩耗をその管に生じさせることがある。次に、そのガラス管に4点曲げ応力試験を行って、機械的に破損させる。この試験は、その引っ掻き傷が試験中に張力下に置かれるように配置されている間に、10mm/分の荷重速度で9インチ(約22.5cm)だけ間隔があけられた外側プローブおよび3インチ(約7.5cm)だけ間隔があけられた内側接触部材を使用して、25℃および50%の相対湿度で行われる。
【0090】
いくつかの実施の形態において、摩耗後の、低摩擦コーティングを有するガラス管の4点曲げ強度は、同じ条件下で摩耗した未被覆ガラス管に関する機械的強度よりも、平均で、少なくとも10%、20%、またさらには50%高い機械的強度を示す。
【0091】
いくつかの実施の形態において、被覆ガラス容器100が30Nの垂直力で同一のガラス容器により摩耗された後、その被覆ガラス容器100の摩耗区域の摩擦係数は、同じ地点で30Nの垂直力により同一のガラス容器による別の摩耗後に約20%を超えて増加しない、または全く増加しない。他の実施の形態において、被覆ガラス容器100が30Nの垂直力で同一のガラス容器により摩耗された後、その被覆ガラス容器100の摩耗区域の摩擦係数は、同じ地点で30Nの垂直力により同一のガラス容器による別の摩耗後に約15%またさらには10%を超えて増加しない、または全く増加しない。しかしながら、被覆ガラス容器100の全ての実施の形態がそのような性質を示す必要はない。
【0092】
質量損失は、被覆ガラス容器100が選択された期間に亘り選択された高温に暴露されたときに、その被覆ガラス容器から放出される揮発性物質の量に関連する被覆ガラス容器100の測定可能な特性を称する。質量損失は、一般に、熱暴露によるコーティングの機械的劣化を表す。その被覆ガラス容器のガラス本体は、報告された温度で測定可能な質量損失を示さないので、ここに詳しく記載されるような質量損失試験は、そのガラス容器に施された低摩擦コーティングのみに関する質量損失のデータを生じる。質量損失に多数の要因が影響するであろう。例えば、そのコーティングから除去され得る有機材料の量が、質量損失に影響するであろう。高分子中の炭素主鎖と側鎖の分解により、コーティングの理論上100%の除去がもたらされる。有機金属高分子材料は、典型的に、その全ての有機成分を失うが、無機成分は後に残る。それゆえ、質量損失の結果は、完全な理論上の酸化の際に、そのコーティングのどのくらいの量が有機質であり、無機質であるか(例えば、コーティングのシリカ%)に基づいて正規化される。
【0093】
質量損失を決定するために、被覆ガラスバイアルなどの被覆試料を最初に150℃に加熱し、この温度に30分に亘り保持して、コーティングを乾燥させ、そのコーティングからH
2Oを効果的に取り去る。次に、その試料を、空気などの酸化環境内において10℃/分の昇温速度で150℃から350℃に加熱する。質量損失を決定する目的のために、150℃から350℃まで収集されたデータのみを検討する。いくつかの実施の形態において、前記低摩擦コーティングの質量損失は、10℃/分の昇温速度で150℃の温度から350℃に加熱されたときに、その質量の約5%未満である。他の実施の形態において、その低摩擦コーティングの質量損失は、10℃/分の昇温速度で150℃の温度から350℃に加熱されたときに、約3%未満またさらには約2%未満である。いくつかの他の実施の形態において、その低摩擦コーティングの質量損失は、10℃/分の昇温速度で150℃の温度から350℃に加熱されたときに、約1.5%未満である。いくつかの他の実施の形態において、その低摩擦コーティングは、10℃/分の昇温速度で150℃の温度から350℃に加熱されたときに、その質量を実質的に全く失わない。
【0094】
質量損失の結果は、被覆ガラス容器の質量が、ここに記載されたような、150℃から350℃までの10℃/分の昇温速度などの熱処理の前後で比較される手順に基づく。熱処理前のバイアルと熱処理後のバイアルとの間の質量差は、コーティングの質量差であり、これは、コーティングの熱処理前の質量(容器のガラス本体を含まず、予備加熱工程後の質量)は、未被覆ガラス容器の質量を処理前の被覆ガラス容器の質量と比べることによって分かるようにコーティングの質量損失の百分率として標準化できる。あるいは、コーティングの総質量は、全有機体炭素試験または他の同様の手段によって決定してもよい。
【0095】
ガス放出は、被覆ガラス容器100が選択された期間に亘り選択された高温に暴露されたときに、その被覆ガラス容器から放出される揮発性物質の量に関連する被覆ガラス容器100の測定可能な特性を称する。ガス放出の測定は、ある期間に亘りその高温に暴露された最中に、コーティングを有するガラス容器の表面積当たりに放出された揮発性物質の質量による量としてここでは報告されている。被覆ガラス容器のガラス本体は、ガス放出に報告された温度で測定可能なガス放出を示さないので、先に詳しく記載されたようなガス放出試験は、実質的に、ガラス容器に施された低摩擦コーティングのみに関するガス放出データを生じる。ガス放出の結果は、
図5に示された装置400のガラス試料室402内に被覆ガラス容器100が置かれる手法に基づく。各試料について実施する前に、空の試料室のバックグラウンド試料を収集する。その試料室を、ロタメータ406により測定される一定の100ml/分の空気パージの下に保持し、その間、炉404は350℃に加熱され、その温度に1時間に亘り保持されて、試料室のバックグラウンド試料を収集する。その後、被覆ガラス容器100を試料室402内に入れ、試料室402を一定の100ml/分の空気パージ下に保持し、高温に加熱し、その温度である期間に亘り保持して、被覆ガラス容器100から試料を収集する。そのガラス試料室はパイレックス(登録商標)から作られており、分析の最高温度が600℃に制限される。Carbotrap300の吸着剤トラップ408を試料室の排気口に取り付け、生じた揮発性種が試料から放出され、その揮発性種が吸着される吸着剤樹脂上を空気パージガス410によって掃引されるときに、その揮発性種を吸着する。次に、その吸着剤樹脂を、Hewlett Packard 5890 Series IIガスクロマトグラフ/Hewlett Packard 5989 MSエンジンに直接結合されたGerstel Thermal Desorptionユニット中に直接配置する。ガス放出種は、吸着剤樹脂から350℃で熱的に脱着され、非極性ガスクロマトグラフィーカラム(DB−5MS)のヘッドに低温で集められる。揮発性および準揮発性有機種の分離および精製を行うように、そのガスクロマトグラフ内の温度を、10℃/分の速度で325℃の最終温度に上昇させる。分離の機構は、実質的に、沸点または蒸留クロマトグラムをもたらす、異なる有機種の気化熱に基づいて示されてきた。分離後、精製種を従来の電子衝突イオン化質量分光プロトコルによって分析する。標準状態下で作動させることにより、得られた質量スペクトルを既存の質量スペクトルのライブラリと比較することができる。
【0096】
いくつかの実施の形態において、ここに記載された被覆ガラス容器は、約15分、約30分、約45分、または約1時間の期間に亘る約250℃、約275℃、約300℃、約320℃、約360℃、またさらには約400℃の高温への暴露中に、約54.6ng/cm
2以下、約27.3ng/cm
2以下、またさらには約5.5ng/cm
2以下のガス放出を示す。さらに、その被覆ガラス容器は、規定の温度範囲において熱安定性であることがあり、その被覆容器は、その規定の範囲内の全ての温度で、上述したように、特定のガス放出を示すことを意味する。ガス放出測定の前に、その被覆ガラス容器は、被覆されたままの状態(すなわち、低摩擦コーティングの施用の直後)または脱パイロジェン、凍結乾燥、またはオートクレーブ処理のいずれか1つの後であってよい。いくつかの実施の形態において、被覆ガラス容器100はガス放出を実質的に示さないことがある。
【0097】
いくつかの実施の形態において、ガス放出データを使用して、前記低摩擦コーティングの質量損失を決定することがある。熱処理前のコーティングの質量は、そのコーティングの厚さ(SEM画像または他の手法によって決定される)、低摩擦コーティングの密度、およびそのコーティングの表面積によって決定することができる。その後、その被覆ガラス容器にガス放出手順を行うことができ、熱処理前の質量に対するガス放出において放出された質量の比を見出すことによって質量損失を決定することができる。
【0098】
前記被覆容器の透明度および色は、分光光度計を使用して、400〜700nmの波長範囲内のその容器の光透過率を測定することによって評価されることがある。その測定は、光線が、最初に容器に入るときと、次いで、容器を出るときの2回、低摩擦コーティングを通過するように、光線が容器に対して垂直に向けられるように行われる。いくつかの実施の形態において、その被覆ガラス容器を通る光透過率は、約400nmから約700nmの波長について、未被覆ガラス容器を通る光透過率の約55%以上であることがある。ここに記載されたように、ここに記載された熱処理などの熱処理前または熱処理後に、光透過率を測定することができる。例えば、約400nmから約700nmの各波長について、光透過率は、未被覆ガラス容器を通る透過率の約55%以上であることがある。他の実施の形態において、前記被覆ガラス容器を通る光透過率は、約400nmから約700nmの波長について、未被覆ガラス容器を通る光透過率の約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、またさらには約90%以上である。
【0099】
ここに記載されたように、光透過率は、ここに記載された熱処理などの環境処理の前、または環境処理の後に測定することができる。例えば、約30分の期間に亘る、約260℃、約270℃、約280℃、約290℃、約300℃、約310℃、約320℃、約330℃、約340℃、約350℃、約360℃、約370℃、約380℃、約390℃、または約400℃の熱処理後、もしくは凍結乾燥条件への暴露後、またはオートクレーブ処理条件への暴露後、前記被覆ガラス容器を通る光透過率は、約400nmから約700nmの波長について、未被覆ガラス容器を通る光透過率の約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、またさらには約90%以上である。
【0100】
熱処理への暴露によって生じる黄変は、
図11に示されるような、CEI 1931色空間によるxおよびy座標により測定できる。脱パイロジェン条件後のxおよびy座標の変化は、被覆ガラス物品の黄変の証拠となることがある。
【0101】
いくつかの実施の形態において、被覆ガラス容器100は、どの角度で見たときにも、ヒトの裸眼にとって無色透明と知覚されることがある。いくつかの他の実施の形態において、低摩擦コーティング120は、低摩擦コーティング120が、Aldrichから市販されているポリ(プロメリト酸二無水物−4,4’−オキシジアニリン共重合体)アミド酸から形成されたポリイミドを含む場合などに、知覚可能な色合いを有することがある。
【0102】
いくつかの実施の形態において、被覆ガラス容器100は、接着剤ラベルを受け取れる低摩擦コーティング120を有することがある。すなわち、被覆ガラス容器100は、接着剤ラベルがしっかりと貼り付けられるように、その被覆表面上に接着剤ラベルを受け取ることがある。しかしながら、接着剤ラベルの貼付け能力は、ここに記載された被覆ガラス容器100の全ての実施の形態にとっての要件ではない。
【実施例】
【0103】
低摩擦コーティングを有するガラス容器の様々な実施の形態が、以下の実施例によってさらに明白になるであろう。それらの実施例は、事実上は説明的であり、本開示の主題を制限すると理解すべきではない。
【0104】
実施例1
ここで「シリミド−6F 50/50」と称されるフッ素化ポリイミドシロキサンを、2,2−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン(6F)、1,3−ビス(3−アミノプロピル)−1,1,3,3−テトラメチル−ジシロキサン(BADS)、および4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物(6FDA)から粉末形態で調製した。6F:BADS:6FDAのモル比は、1:1:2であった。
【0105】
最初に、鉱油またはシリコーン油が充填されたオイルバブラーを備えたDeanStarckトラップ、および2つの隔膜が設けられた、N−メチルピロリドン(50ml)を収容する250mlの三口丸底フラスコ中に2,2−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン(3.75g、11.2ミリモル)を秤量した。このフラスコにアルゴンガスをパージし、完全に溶解した後、1,3−ビス(3−アミノプロピル)−1,1,3,3−テトラメチル−ジシロキサン(2.8g、11.2ミリモル)を加え、その溶液を撹拌した。約15分の撹拌後、室温でのアルゴン雰囲気下で、4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物(10.00g、22.5ミリモル)を迅速に加えた。60℃以下の温度での約30分の混合後、連続的に穏やかにアルゴンを流しながら、生じた低粘度溶液を190℃にゆっくりと加熱した。その反応溶液を、合計で約5mlの蒸留液(水およびN−メチルピロリドン)と共に、3時間に亘り190℃で撹拌して、イミド化させた。この中程度に粘性のオレンジ−金色の反応溶液を室温まで冷却した。このオレンジ−金色の反応溶液に50mlの新たなNMPを加えて、粘度を低下させ、この低粘度溶液を、穏やかにかき混ぜながら、2−プロパノール(2000ml)中に滴下した。50μmの開口のナイロンメッシュ篩を使用して、白色の沈殿物を濾過した。収集された固体をイソプロピルアルコール中に懸濁させ、もう一度濾過した。最後に、流動性粉末が得られるまで、湿った固体を真空下で乾燥させた。その高分子粉末は、使用前に4℃で冷蔵庫内に貯蔵した。
【0106】
このポリイミドは、酢酸エチル、酢酸2−メトキシ−1−メチルエチル、トルエン、アセトン、2−ブタノンなどの速いまたは中程度の蒸発速度の溶媒を含む様々な溶媒中に可溶性であることが分かった。
【0107】
形成されたポリイミドを、1H−NMR分光法を使用して分析した。
図6は、実施例1として形成されたフッ素化ポリイミドシロキサン化学組成物の1H−NMRスペクトルを示す。参照番号504、506、508、510、および512は、形成されたフッ素化ポリイミドシロキサン中の同様の部分に対応する1H−NMRスペクトルの部分を示す。
【0108】
その形成されたポリイミドを、19F−NMR分光法も使用して分析した。
図7は、実施例1として形成されたフッ素化ポリイミドシロキサン化学組成物の19F−NMRスペクトルを示す。参照番号514および516は、形成されたフッ素化ポリイミドシロキサン中の同様の部分に対応する19F−NMRスペクトルの部分を示す。
【0109】
実施例2
ガラスバイアルを、アミノプロピルシルセスキオキサンの層および実施例1のフッ素化ポリイミドシロキサン(シリミド−6F 50/50)の層で被覆した。
【0110】
ガラスバイアルは、「Glass Compositions with Improved Chemical and Mechanical Durability」と題する米国特許出願第13/660394号明細書の表1の組成物Eのガラス組成物から形成した。そのガラスバイアルを続いて、米国特許出願第13/660394号明細書に記載されているように、コーティングの施用前に、イオン交換により強化した。
【0111】
23.5質量%のアミノプロピルシルセスキオキサン水溶液(ABCRからAB127715として入手できる)をメタノールで希釈して、2% w/vのシルセスキオキサン溶液を得た。
【0112】
そのバイアルを脱イオン水で洗浄し、窒素を吹き付けて乾燥させ、最後に、被覆前に15秒に亘り酸素プラズマへの暴露によりクリーニングした。次に、バイアルを、上述したように調製した2%のシルセスキオキサン溶液で浸漬被覆した(引抜き速度は80cm/分であった)。シルセスキオキサン被覆バイアルを10分に亘り室温で乾燥させた。次に、そのバイアルを、実施例1において合成した2.5gのシリミド−6F粉末を100mlの酢酸n−プロピル溶媒に溶かすことによって調製したシリミド−6Fの50/50溶液中に浸漬した(引抜き速度は20cm/分であった)。
【0113】
その後、被覆したバイアルを30分に亘り360℃の予熱炉に置くことによって、コーティングを硬化させた。
【0114】
硬化後、シリミド−6Fで被覆されたバイアルは、目に見える色を示さなかった。そのコーティングは、バイアル対バイアルの接触試験における低い摩擦係数および非常に良好なガラス保護を示した。
図10は、硬化したままと、360℃での12時間に亘る脱パイロジェン後の、実施例2の被覆ガラス容器に関する30Nまでの荷重(x軸)での被覆ガラス容器の摩擦係数(y軸)を示す。
【0115】
実施例3
ガラスバイアルを、3−アミノプロピルトリメトキシシランの層および実施例1のフッ素化ポリイミドシロキサン(シリミド−6F)の層で被覆した。
【0116】
実施例2に記載したようにイオン交換したバイアルを、3−アミノプロピルトリメトキシシラン(「GAPS」)層および実施例1で調製したシリミド−6F 50/50で連続して被覆した。その被覆手順は、実施例2のシルセスキオキサン結合層を、15mlの遠心管中に秤量した0.51gのGAPS(0.0028モル)を0.075mlの脱イオン水(0.0042モル)および20μlの37質量%のHClと混合することによって調製したGAPS加水分解物で置き換えたことを除いて、実施例2に記載した手順と同じであった。この溶液を一晩撹拌し、次いで、メタノールで希釈して、GAPS被覆溶液の最終的な2% w/v溶液を得た。
【0117】
実施例4
ガラスバイアルを、1−[3−(トリメトキシシリル)プロピル]尿素(「TMSPU」)の層および実施例1のフッ素化ポリイミドシロキサン(シリミド−6F)の層で被覆した。
【0118】
実施例2に記載したようにイオン交換したバイアルを、1−[3−(トリメトキシシリル)プロピル]尿素(TMSPU)層および実施例1で調製したシリミド−6F 50/50で連続して被覆した。その被覆手順は、実施例2のシルセスキオキサン結合層を、15mlのプラスチック管中に入れた0.622gのTMSPU(0.0028モル)を0.060mlの脱イオン水(0.0033モル)および20μlの37質量%のHClと混合することによって調製したTMSPUで置き換えたことを除いて、実施例2に記載した手順と同じであった。この溶液を一晩撹拌し、次いで、メタノールで希釈して、最終的な2% w/v溶液を得た。
【0119】
図11は、360℃での12時間に亘る脱パイロジェン後の実施例4の被覆ガラス容器に関するX−Y色座標を示す。点536および538は実施例4の色データを示し(点538は硬化したままであり、点536は脱パイロジェン後である)、点540および542は、未被覆ガラス容器の色を表す(硬化されたままと脱パイロジェン後)。マクアダム楕円は、実施例4はヒトの眼で検出可能な色変化を示さなかったことを示す。
【0120】
実施例5
ここで「シリミド−6F 25/75」と称されるフッ素化ポリイミドシロキサンを、2,2−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン(6F)、1,3−ビス(3−アミノプロピル)−1,1,3,3−テトラメチル−ジシロキサン(BADS)、および4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物(6FDA)から粉末形態で調製した。6F:BADS:6FDAのモル比は、1:3:4であった。
【0121】
最初に、鉱油またはシリコーン油が充填されたオイルバブラーを備えたDeanStarckトラップ、および2つの隔膜が設けられた、N−メチルピロリドン(50ml)を収容する250mlの三口丸底フラスコ中に2,2−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン(5.61g、16.8ミリモル)を秤量した。このフラスコにアルゴンガスをパージし、完全に溶解した後、1,3−ビス(3−アミノプロピル)−1,1,3,3−テトラメチル−ジシロキサン(1.39g、5.59ミリモル)を加え、その溶液を撹拌した。約15分の撹拌後、室温でのアルゴン雰囲気下で、4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物(10.00g、22.5ミリモル)を迅速に加えた。60℃以下の温度での約30分の混合後、連続的に穏やかにアルゴンを流しながら、生じた低粘度溶液を190℃にゆっくりと加熱した。その反応溶液を、合計で約5mlの蒸留液(水およびN−メチルピロリドン)と共に、3時間に亘り190℃で撹拌して、イミド化させた。この中程度に粘性のオレンジ−金色の反応溶液を室温まで冷却した。このオレンジ−金色の反応溶液に50mlの新たなNMPを加えて、粘度を低下させ、この低粘度溶液を、穏やかにかき混ぜながら、2−プロパノール(2000ml)中に滴下した。50μmの開口のナイロンメッシュ篩を使用して、白色の沈殿物を濾過した。収集された固体をイソプロピルアルコール中に懸濁させ、もう一度濾過した。最後に、流動性粉末が得られるまで、湿った固体を真空下で乾燥させた。その高分子の組成と純度(単量体および残留溶媒の存在)をNMRおよびFTIRで調べた。その高分子粉末は、使用前に4℃で冷蔵庫内に貯蔵した。
【0122】
実施例6
ガラスバイアルを、実施例1のフッ素化ポリイミドシロキサン(シリミド−6F 50/50)の層で被覆した。このシリミド−6Fは、ガラスバイアル上に直接堆積させた(すなわち、中間のカップリング剤層がない)。
【0123】
実施例2に記載されたようにイオン交換したバイアルを、脱イオン水で洗浄し、窒素を吹き付けて乾燥させ、最後に、被覆前に15秒に亘り酸素プラズマへの暴露によりクリーニングした。次に、そのバイアルを、実施例1において合成した2.5gのシリミド−6F粉末を100mlの酢酸2−メトキシ−1−メチルエチルの(DOWANOL(商標)PMA)溶媒に溶かすことによって調製したシリミド−6Fの50/50溶液中に浸漬した(引抜き速度は20cm/分であった)。その後、被覆したバイアルを15分に亘り360℃の予熱炉に置くことによって、コーティングを硬化させた。
【0124】
硬化後、シリミド−6F 50:50で被覆されたバイアルは、目に見える色を示さなかった。そのコーティングは、バイアル対バイアルの接触試験における低い摩擦係数(0.30から0.35のCOF)および非常に良好なガラス保護を示した。引っ掻き傷に対するコーティングの性能も、様々な温度での一連の脱パイロジェン後に評価した。シリミド−6F 50:50は、270℃での4時間、300℃での12時間、およびオートクレーブ処理(121℃での20分)後にほぼ同じ性質(COF<0.50および良好なガラス保護)を維持した。これらの後処理後に性能の低下は観察されず、どのような熱処理が施されようとも、変色は観察されなかった。
【0125】
実施例7
ガラスバイアルを、実施例5のフッ素化ポリイミドシロキサン(シリミド−6F 25/75)の層で被覆した。このシリミド−6F 25/75は、ガラスバイアル上に直接堆積させた(すなわち、中間のカップリング剤層がない)。
【0126】
実施例2に記載されたようにイオン交換したバイアルを、実施例5において調製したシリミド−6Fの25/75溶液で被覆した。その被覆手順は、実施例6のシリミド−6F 50:50コーティングを、2.50gのシリミド−6F 25:75粉末を100mlの酢酸2−メトキシ−1−メチルエチルの(「DOWANOL」PMA)溶媒に溶かすことによって調製したシリミド−6F 25/75コーティングで置き換えたことを除いて、実施例6に記載した手順と同じであった。浸漬被覆を40cm/分で行って、実施例6のシリミド−6F 50:50コーティングの厚さと同じ厚さを得た(同じ実験条件で被覆し、硬化した顕微鏡スライド上でZYGOにより測定して、約50nm厚)。被覆バイアルの硬化工程は、実施例6に記載されたものに類似していた。シリミド−6F 25/75から得られたコーティングは、シリミド−6F 50:50コーティングに関する実施例6とほぼ同じ低い摩擦係数およびほぼ同じ良好なガラス保護を示した。このコーティングの性質は、同じ一連の脱パイロジェンおよびオートクレーブ処理後にも維持された。試料は、360℃での12時間の脱パイロジェンにも耐え、30Nの荷重下での引掻き試験後に、ガラス基板に全くまたはわずかしかひびがなかった。
【0127】
図8は、様々な熱処理後の30Nまでの荷重(x軸)での実施例7の被覆ガラス容器の摩擦係数(y軸)を示す。参照番号562は360℃での12時間に亘る脱パイロジェン後のCOFに対応し、参照番号564は300℃での12時間に亘る脱パイロジェン後のCOFに対応し、参照番号566は270℃での4時間に亘る脱パイロジェン後のCOFに対応し、参照番号568は360℃での15分に亘る硬化後のCOFに対応し、参照番号570は121℃での20分に亘るオートクレーブ処理後のCOFに対応する。
【0128】
図13は、実施例7の被覆ガラス容器の様々な熱処理後と、硬化したままのCOF試験後の被覆ガラス容器の光学顕微鏡写真の画像を示す。
【0129】
実施例8
1単量体部の2,2−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン(6F)に対して1単量体部の4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物(6FDA)からポリイミドシロキサンを調製した。高分子の調製は、実施例1に記載されたものに類似していた。その後、実施例2に記載されたようにイオン交換されたガラスバイアルを、実施例6に記載された過程と類似の過程で合成した単量体で被覆した。
【0130】
実施例9
1単量体部の1,3−ビス(3−アミノプロピル)−1,1,3,3−テトラメチル−ジシロキサン(BADS)に対して1単量体部の4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物(6FDA)からポリイミドシロキサンを調製した。高分子の調製は、実施例1に記載されたものに類似していた。その後、実施例2に記載されたようにイオン交換されたガラスバイアルを、実施例6に記載された過程と類似の過程で合成した単量体で被覆した。
【0131】
図9は、実施例1、5、8、および9の高分子についてここに記載されたように、TGAによって測定された質量損失を示す。参照番号552は実施例8の高分子に対応し、参照番号554は実施例5の高分子に対応し、参照番号556は実施例1の高分子に対応し、参照番号558は実施例9の高分子に対応する。
図9のデータは、下記の表1にさらに示されている。
【0132】
【表1】
【0133】
比較例A
混合されたアミノフェニルトリメトキシシラン(「APhTMS」)と3−アミノプロピルトリメトキシシラン(「GAPS」)の層、およびポリ(プロメリト酸二無水物−4,4’−オキシジアニリン共重合体)の層でガラスバイアルを被覆した。
【0134】
ポリ(プロメリト酸二無水物−4,4’−オキシジアニリン共重合体)アミド酸(「PMDA−ODA」)を比較のポリイミドとして使用した。このポリイミドの完全にイミド化された形態は有機溶媒中に不溶性であるので、またそのポリアミド酸形態は、速く蒸発する溶媒中に可溶性ではないので、10gのPMDA−ODAポリアミド酸溶液(Sigma Aldrichから入手できる12.0質量%±0.5質量%[80%のNMP/20%のキシレン])を1.16gのトリエチルアミンと混合することによって、ポリアミド酸塩に転化させた。激しく混ぜ合わせた後、28.84gのメタノールを加えて、3質量%溶液を形成した。
【0135】
混合APhTMSおよびGAPSコーティングを調製するために、100mlの25:75 v/vの水/メタノール混合物に1gのGAPSおよび1gのAPhTMSを加えた。最終的な溶液の総シラン濃度は、2% w/vであった。この溶液を使用する24時間前に調製して、シランを加水分解させた。
【0136】
一組のバイアルを、APhTMSおよびGAPSの混合物で被覆し、続いて、メタノール中の0.5%のPMDA−ODAポリアミド酸で被覆した。その被覆バイアルを、360℃で15分に亘り硬化させ、360℃で12時間に亘り脱パイロジェン化させた。脱パイロジェンを行わない試料(硬化したまま)と脱パイロジェンを行った試料を、30Nの垂直力でバイアル上バイアル試験治具内で引っ掻いた。
【0137】
ポリ(プロメリト酸二無水物−4,4’−オキシジアニリン共重合体)の溶液で被覆したバイアルは、バイアル対バイアルの接触試験において低い摩擦係数を示し、黄色であった。
【0138】
図10は、硬化したままと、360℃での12時間に亘り脱パイロジェン後の比較例Aの被覆ガラス容器に関する30Nまでの荷重(x軸)での被覆ガラス容器の摩擦係数(y軸)を示す。
【0139】
比較例B
ガラスバイアルを、TMSPUの層およびPMDA−ODAの層で被覆した。
【0140】
TMSPU結合層を実施例4に記載されているように調製し、PMDA−ODA溶液を比較例Aに記載されているように調製した。TMSPUおよびPMDA−ODAコーティングに関する引抜き速度は、それぞれ、80cm/分および20cm/分であった。その被覆バイアルを、360℃で15分に亘り硬化させ、360℃で12時間に亘り脱パイロジェン化させた。脱パイロジェンを行わない試料(硬化したまま)と脱パイロジェンを行った試料を、30Nの垂直力でバイアル上バイアル試験治具内で引っ掻いた。ポリ(プロメリト酸二無水物−4,4’−オキシジアニリン共重合体)の溶液およびTMSPU結合層で被覆したバイアルは、許容できないほど高い摩擦係数を示した。この高い摩擦係数は、TMSPU結合層に対するPMDA−ODAの不十分な付着の原因であろう。
【0141】
図10は、硬化したままと、360℃での12時間に亘り脱パイロジェン後の比較例Bの被覆ガラス容器に関する30Nまでの荷重(x軸)での被覆ガラス容器の摩擦係数(y軸)を示す。
【0142】
比較例C
ガラスバイアルを、APhTMSとGAPSの層、および実施例1からのフッ素化ポリイミドシロキサン(シリミド−6F 50/50)の層で被覆した。
【0143】
APhTMS/GAPS混合層の被覆手順は、比較例Aに記載された手順と同一であった。APhTMS/GAPS層の被覆後、APS層の代わりにAPhTMS/GAPS層上であることを除いて、実施例2に記載されたように、シリミド−6F 50/50を施した。
【0144】
図11は、360℃での12時間に亘る脱パイロジェン後の比較例Cの被覆ガラス容器に関するX−Y色座標を示す。点532および534は比較例Cの色データを表し(点534は硬化したままであり、点532は脱パイロジェン後である)、点540および542は未被覆ガラス容器の色を表す(脱パイロジェンの前後)。マクアダム楕円は、比較例Cはヒトの眼で検出可能な色変化を有したことを示す。
【0145】
下記に示された表2は、様々な試料に関するCOFおよび黄変指数を示し、ここで、COF試験について、各試料について2つの試料バイアルを試験した。ASTM E313試験法にしたがって、黄変指数も決定した。表2に報告された黄変指数は、2°の観測角でD65照明に関する。比較例AおよびCは目に見える黄変を有し、比較例Bは脱パイロジェン後に著しく上昇したCOFを有した。ここに記載された被覆物品は、約10、8、またさらには6以下の黄変指数を有するであろう。
【0146】
【表2】
【0147】
比較例D
ガラスバイアルをPMDA−ODAの層で被覆した。このPMDA−ODAは、ガラスバイアル上に直接堆積させた(すなわち、中間のカップリング剤層がない)。PMDA溶液を比較例Aにおける溶液と同様に調製し、比較例Aの過程と同様に、ガラスバイアル上に直接施した。
【0148】
図12は、様々な熱処理後の30Nまでの荷重(x軸)での比較例Dの被覆ガラス容器の摩擦係数(y軸)を示す。参照番号572は360℃での12時間に亘る脱パイロジェン後のCOFに対応し、参照番号574は300℃での12時間に亘る脱パイロジェン後のCOFに対応し、参照番号576は270℃での4時間に亘る脱パイロジェン後のCOFに対応し、参照番号578は360℃での15分に亘る硬化後のCOFに対応し、参照番号580は121℃での20分に亘るオートクレーブ処理後のCOFに対応する。
【0149】
図13は、比較例Dの被覆ガラス容器の様々な熱処理後と、硬化したままのCOF試験後の被覆ガラス容器の光学顕微鏡写真の画像を示す。
【0150】
ここで、ここに記載された低摩擦コーティングを有するガラス容器は、低摩擦コーティングを施した結果として、機械的損傷に対する改善された耐性を示し、それゆえ、そのガラス容器の機械的耐久性は向上していることを理解すべきである。この特性のために、そのガラス容器は、制限なく、医薬包装材料を含む様々な用途に使用するのに適切なものとなる。
【0151】
請求項の主題の精神および範囲から逸脱せずに、ここに記載された実施の形態に様々な改変および変更を行えることが、当業者に明白であろう。それゆえ、本明細書は、ここに記載された様々な実施の形態の改変および変更を、そのような改変および変更が付随の特許請求の範囲およびその同等物の範囲に入るという条件で、包含することが意図されている。
【0152】
以下、本発明の好ましい実施形態を項分け記載する。
【0153】
実施形態1
被覆ガラス物品において、
第一面と該第一面の反対の第二面を有するガラス容器、および
前記ガラス容器の第一面の少なくとも一部に結合した低摩擦コーティングであって、ハロゲン化されており、シロキサン部分を有するポリイミド化学組成物を含む低摩擦コーティング、
を備えた被覆ガラス物品。
【0154】
実施形態2
前記ポリイミド化学組成物が、フッ素を含むことによってハロゲン化されている、実施形態1に記載の被覆ガラス物品。
【0155】
実施形態3
前記ポリイミド化学組成物が、少なくとも
アミン末端シロキサンを含む第1の単量体、
ハロゲン化無水物を含む第2の単量体、および
ハロゲン化アミンを含む第3の単量体、
から形成された共重合体である、実施形態1に記載の被覆ガラス物品。
【0156】
実施形態4
前記第1の単量体が1,3−ビス(3−アミノプロピル)−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサンである、実施形態3に記載の被覆ガラス物品。
【0157】
実施形態5
前記第2の単量体が4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物である、実施形態3に記載の被覆ガラス物品。
【0158】
実施形態6
前記第3の単量体が2,2−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパンである、実施形態3に記載の被覆ガラス物品。
【0159】
実施形態7
前記低摩擦コーティングを有する前記被覆ガラス物品の第一面の前記一部の摩擦係数が約0.7以下である、実施形態1に記載の被覆ガラス物品。
【0160】
実施形態8
前記被覆ガラス物品の摩擦係数が、30分に亘る少なくとも約280℃の温度での熱処理後に、約0.7以下に維持される、実施形態7に記載の被覆ガラス物品。
【0161】
実施形態9
前記被覆ガラス物品を通る光透過率が、約400nmから約700nmの各波長について、未被覆ガラス容器を通る光透過率の約55%以上である、実施形態1に記載の被覆ガラス物品。
【0162】
実施形態10
前記被覆ガラス物品が、30分に亘る少なくとも約280℃の温度での熱処理後に、約400nmから約700nmの各波長について、前記未被覆ガラス容器を通る光透過率の約55%以上の該被覆ガラス物品を通る光透過率を維持する、実施形態9に記載の被覆ガラス物品。
【0163】
実施形態11
前記低摩擦コーティングの質量損失が、約10℃/分の昇温速度で150℃から350℃の温度まで加熱されたときに、その質量の約5%未満である、実施形態1に記載の被覆ガラス物品。
【0164】
実施形態12
前記第1面が前記ガラス容器の外面である、実施形態1に記載の被覆ガラス物品。
【0165】
実施形態13
前記低摩擦コーティングがカップリング剤をさらに含む、実施形態1に記載の被覆ガラス物品。
【0166】
実施形態14
前記カップリング剤が尿素官能化シランを含む、実施形態13に記載の被覆ガラス物品。
【0167】
実施形態15
前記低摩擦コーティングが、
前記ガラス容器の第一面と直接接触したカップリング剤層であって、前記カップリング剤を含むカップリング剤層、および
前記カップリング剤層と直接接触した高分子層であって、前記ハロゲン化ポリイミドシロキサン化学組成物を含む高分子層、
を含む、実施形態13に記載の被覆ガラス物品。
【0168】
実施形態16
前記ガラス物品がイオン交換ガラスを含む、実施形態1に記載の被覆ガラス物品。
【0169】
実施形態17
透明基体を被覆するためのポリイミド化学組成物であって、該ポリイミド化学組成物は、
アミン末端シロキサンを含む第1の単量体、
ハロゲン化芳香族無水物を含む第2の単量体、および
芳香族ハロゲン化アミンを含む第3の単量体、
の重合から形成され、
該ポリイミド化学組成物は、酢酸塩、ケトン、またはその混合物中に、完全にイミド化された形態で可溶性である、ポリイミド化学組成物。
【0170】
実施形態18
前記ポリイミド化学組成物が、完全にイミド化されており、酢酸塩、ケトン、またはその混合物から選択される溶媒中に溶けている、実施形態17に記載のポリイミド化学組成物。
【0171】
実施形態19
前記ポリイミド化学組成物が固体である、実施形態17に記載のポリイミド化学組成物。
【0172】
実施形態20
ガラス物品を被覆する方法において、
ハロゲン化されており、シロキサン部分を有するポリイミド化学組成物を含む低摩擦コーティングを前記ガラス物品の第一面上に堆積させる工程、
を有してなる方法。