【課題を解決するための手段】
【0025】
従って、これらの目的は、本発明により、添付の特許請求の範囲に記載されるようなラミネートバリアフィルム、縁部カバーストリップ、並びにラミネートバリアフィルム及び包装容器を製造する方法によって実現することができる。
【0026】
本発明に関連して「長期の保存(long−term storage)」との語が用いられる場合、包装容器が、少なくとも1か月間又は2か月間、例えば少なくとも3か月間、好ましくはさらに長期間、例えば6か月間、例えば12か月間又はより長期間、周囲条件において、パックされた食品の品質、すなわち栄養価、衛生上の安全性、及び味を保つことができなければならないことを意味するものである。「パッケージの一体性(package integrity)」との語は、パッケージの耐久性、すなわち包装容器の漏出に対する耐性を広く意味するものである。この特性に対する貢献の主なものは、包装ラミネート内で、ラミネート包装材料の隣接する層間に良好な内部接着性があることである。別の貢献は、材料層内のピンホール、断裂などの欠陥に対する材料の耐性に起因するものであり、さらに別の貢献は、包装容器の成形時に材料が一つに封着されることで形成される封止接合部の強度に起因するものである。このため、ラミネート包装材料そのものに関しては、一体性特性は、各ラミネート層とその隣接層との接着性及び個々の材料層の性質が主に中心となる。ラミネートバリアフィルム及び縁部カバーストリップに関しては、一体性は、ラミネートフィルム構造の層間の内部接着、及びラミネートフィルムと包装材料、すなわち包装容器壁部との間の封止特性の両方により提供される。
【0027】
本発明の第1態様によると、一般的な目的は、液体用のカートン包装容器における縁部カバーストリップ又はパッチのためのラミネートバリアフィルムであって、ベース層の第1面にアモルファスダイアモンドライクカーボン(DLC)コーティングである第1コーティングを有するベース層を備え、当該コートされたベース層は、このようにコートされたベース層の第1面に、第1DLCコーティングと連続的に接触している液密性の熱封止可能な第1最外ポリマー層をさらに有し、ベース層の反対側の第2面に、液密性の熱封止可能な第2最外ポリマー層をさらに有する、ラミネートバリアフィルムにより実現される。
【0028】
アモルファスDLCのコーティングは、ベース層への気相蒸着により適用されるので、ベース層の表面と連続的なものとなる。一実施形態によると、ベース層は、ポリマーフィルム基材である。
【0029】
一実施形態によると、フィルムラミネートのベース層は、第1DLCコーティングでコートされた側と反対側の第2面に、接着促進プライマーコーティングを有し、ベース層は、接着促進プライマーコーティングにより、液密性の熱封止可能な第2最外ポリマー層に結合される。接着促進プライマーコーティングは、アミノシラン及びポリエチレンイミンから成る群から選択される一つ以上の化合物を含む組成物により形成され得る。しかしながら、特定の実施形態によると、接着促進プライマーコーティングは、アモルファスダイアモンドライクカーボン(DLC)コーティングの第2コーティングである。アモルファスDLCの第2コーティングは、ベース層の反対側の第2面への気相蒸着により適用されるので、ベース層の表面と連続的に接触することにもなる。
【0030】
この接着促進プライマーコーティングの目的は、隣接する押出コートされたポリマー、例えばポリオレフィン系ポリマー層及びその接触面に対する接着強度を提供し又は向上させることである。
【0031】
ラミネート包装材料の一実施形態によると、液密性の熱封止可能な第1最外ポリマー層は、DLCコートされたベース層の第1表面に対して直接接触する、すなわち当該第1表面に連続的になるように、コートされたベース層に適用される。別の実施形態によると、液密性の熱封止可能な第2最内ポリマー層は、DLCコートされたベース層の第2表面に対して直接接触する、すなわち当該第2表面に連続的になるように、バリアフィルムに適用される。
【0032】
さらなる実施形態によると、熱封止可能なポリマーは、ポリオレフィン、例えばポリエチレンホモポリマー若しくはコポリマー又は大部分がこのようなポリエチレンポリマーであるポリオレフィンブレンドである。DLCコーティングと押出ポリエチレン層との間の特に良好な接着性について、熱封止可能な最外層のポリマーは、大部分がエチレンモノマーユニットであるか、ポリマーブレンド又はエチレンコポリマーにおいて大部分がエチレンモノマーユニットであるべきであると考えられている。
【0033】
特定の実施形態によると、熱封止可能な最外層は、鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、メタロセン−LLDPE(m−LLDPE)、非常に低密度のポリエチレン(VLDPE)、これらのうち二つ以上のブレンド、及び上記ポリマーのうち任意のものとLDPEとのブレンドから成る群から選択されるポリエチレンを含む。熱封止可能な最外層においてこのようなポリエチレンを含むことの利点は、このようなポリエチレンは十分に強い熱封止が形成され得る操作の温度ウィンドウを広げることができるので、より堅固な封止操作においてより構造が安定しており強い封止接合部が形成され得る、という点である。さらなる実施形態では、熱封止可能な最外層は、構造安定性と封止強度特性とのバランスを互いに取るために、例えばLDPEの部分層及びm−LLDPEを含む部分層を用いるなど、異なるポリマーから成る二つ以上の部分層から構築され得る。
【0034】
異なる実施形態によると、第1DLCコートされたベース層は、介在する熱可塑性結合層により、さらなる同一又は類似の第2DLCコートされたベース層にラミネート及び結合される。
【0035】
このようにして、第1DLCコートされたベース層は、介在する熱可塑性結合層により、さらなる同一又は類似の第2DLCコートされたベース層にラミネート及び結合され、フィルムラミネートは、DLCコートされた第1ポリマーフィルム基層のラミネートされていない反対側に、液密性の熱封止可能な第1最外ポリマー層をさらに備え、DLCコートされた第2ポリマーフィルム基層のラミネートされていない反対側に、液密性の熱封止可能な第2最外ポリマー層をさらに備える。
【0036】
ラミネートバリアフィルムの一実施形態によると、熱可塑性結合層は、コートされた第1ベース層のDLCコーティングの表面とコートされた第2ベース層のDLCコーティングの表面とを一つに結合する。さらなる実施形態によると、熱可塑性結合層は、接着剤又は熱可塑性ポリマーを含む。特別な実施形態によると、熱可塑性結合層は、バリアフィルムの第1表面に対して直接接触する、すなわち当該第1表面に連続的である。
【0037】
一実施形態によると、ベース層は、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート(PET)、一軸延伸若しくは二軸延伸PET(OPET、BOPET)、非延伸若しくは一軸延伸若しくは二軸延伸ポリエチレンフラノレート(PEF)、延伸又は非延伸ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタネート(PEN)など)、ポリアミド(延伸ポリアミド(PA、OPA、BOPA)など)、エチレンビニルアルコールコポリマー(EVOH)、ポリオレフィン(ポリプロピレン、一軸延伸又は二軸延伸ポリプロピレン(PP、OPP、BOPP)、ポリエチレン(延伸又は非延伸高密度ポリエチレン(HDPE)、鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)など)など)、及びシクロオレフィンコポリマー(COC)、並びに上記ポリマーの任意のブレンドのうち任意のものをベースとしたフィルムから成る群から選択されるポリマーフィルム、又は、上記ポリマー若しくはそのブレンドのうち任意のものを含む表面層を有する多層フィルムである。
【0038】
別の実施形態によると、ベース層は、バリアポリマーを備えるフィルムであり、当該バリアポリマーは、フィルムにある程度の機械的安定性を与えるもの、例えば、ポリエステル(PET)、一軸延伸若しくは二軸延伸ポリエステル(BOPET)、ポリアミド(PA)、一軸延伸若しくは二軸延伸ポリアミド(OPA、BOPA)、エチレンビニルアルコールコポリマー(EVOH)、延伸エチレンビニルアルコールコポリマー(BOEVOH)、上記ポリマーのうち二つ以上のブレンドなどのフィルム、又は、上記ポリマーのうち二つ以上の共押出層(例えば延伸共押出ポリアミド/エチレンビニルアルコールコポリマー/ポリアミド(PA/EVOH/PA)など)である。
【0039】
さらなる実施形態によると、ベース層は、ポリエステル若しくはポリアミド若しくはそのブレンドのうち任意のものをベースとしたフィルムから成る群から選択されるポリマーフィルム、又は、上記ポリマー若しくはそのブレンドのうち任意のものを含む表面層を有する多層フィルムである。
【0040】
さらなる実施形態では、ベース層は、ポリエチレンテレフタレート(PET)、一軸延伸若しくは二軸延伸PET(OPET、BOPET)、ポリアミド、延伸ポリアミド(PA、OPA、BOPA)、及びそのブレンドのうち任意のものをベースとしたフィルムから成る群から選択されるポリマーフィルム、又は、上記ポリマー若しくはそのブレンドのうち任意のものを含む表面層を有する多層フィルムである。
【0041】
別の実施形態では、ベース層は、ポリアミドフィルムであり、当該ポリアミドは、ポリアミド6やポリアミド6,6などの脂肪族ポリアミド、ナイロン−MXD6やSelarなどの半芳香族ポリアミド、及び上記脂肪族ポリアミドと半芳香族ポリアミドとのブレンドから成る群から選択される。
【0042】
さらなる実施形態によると、第1アモルファスダイアモンドライクカーボンDLCコーティングは、厚さが2〜50nm、例えば5〜40nm、例えば10〜40nm、例えば10〜35nmとなるように適用される。
【0043】
異なる実施形態によると、第1アモルファスダイアモンドライクカーボンDLCコーティングは、接着促進コーティングであり、厚さが2〜50nm、例えば2〜10nm、例えば2〜5nmとなるように適用される。
【0044】
さらなる実施形態によると、第2アモルファスダイアモンドライクバリアコーティングは、厚さが2〜50nm、例えば2〜40nm、例えば2〜10nm、例えば2〜5nmとなるように適用される。
【0045】
上記に記載のラミネートバリアフィルムにおいて、ベース層は、延伸PETフィルムであり、厚さが8〜12μm、好ましくは10〜12μmであり得る。
【0046】
これより薄いポリマーフィルム基材も商業上は存在し、本発明の範囲内で実施可能であるが、現在のところ8μm未満になると現実的ではなく、厚さが4μm未満のフィルムは、包装用の産業用コーティング及びラミネーションプロセスにおけるウェブの取り扱いの観点から困難であろう。一方、12〜15μmよりも厚いフィルムも当然ながら実施可能であるが、費用効果の観点から、本発明のラミネート包装材料としてはあまり興味深いものではない。フィルムの厚さが20μmを超えると、より堅くなってしまい、縁部カバーストリップとして利用するには十分な可撓性を有さないようになるというリスクがある。一実施形態によると、ポリマーフィルム基材は、例えば厚さが10〜18μm、例えば10〜12μm、例えば約12μmの延伸PETフィルムのように、18μm以下とすべきである。
【0047】
本発明の第2態様によると、上述のようなラミネートバリアフィルムから作製された熱封止可能な縁部カバーバリアストリップが提供される。
【0048】
本発明の第3態様によると、熱封止可能な縁部カバーバリアストリップを備える包装容器が提供される。
【0049】
本発明の第4態様によると、上述のようなラミネートバリアフィルムを製造する方法であって、予め製造されたベース層に対してアモルファスダイアモンドライクカーボン(DLC)のコーティングの気体蒸着を行うステップと、上述のようにDLCコートされたベース層を、コートされたベース層の両側で、液密性の熱封止可能なポリマーの最外層にラミネートするステップと、含む方法が実現される。
【0050】
本方法の一実施形態によると、液密性の熱封止可能なポリマーの最外層のうち少なくとも一つは、DLCコートされたベース層に対してポリマー溶融物の押出コーティングを行うことにより適用される。
【0051】
本方法の別の実施形態によると、液密性の熱封止可能なポリマーの最外層のうち少なくとも一つは、予め製造されたポリマーフィルムの形態で、DLCコートされたベース層にラミネートされる。
【0052】
具体的な実施形態によると、本方法は、DLCコートされたベース層の表面処理を行うステップを、上述のように表面処理されたDLCコートされたベース層に対して液密性の熱封止可能なポリマーの最外層をラミネートするステップの前にさらに含む。適切な表面処理として、プラズマ処理、コロナ処理、火炎処理その他の酸化及び/又は還元表面処理がある。このような表面処理により、加熱され及び/又は溶融したポリマー層に対してラミネーションを行う際に、新鮮な結合部位が確実に利用可能となる。
【0053】
本方法のさらなる実施形態によると、熱封止可能なポリマーは、ポリエチレンホモポリマーやコポリマーなどのポリオレフィン、又は大部分がこのようなポリエチレンポリマーであるポリオレフィンブレンドである。
【0054】
特定の実施形態によると、熱封止可能な最外層は、鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、メタロセン−LLDPE(m−LLDPE)、非常に低密度ポリエチレン(VLDPE)から成る群から選択されるポリエチレン、これらのうち二つ以上のブレンド、又は上記のポリマーのうち任意のものとLDPEとのブレンドを含む。熱封止可能な最外層においてこのようなポリエチレンを含むことの利点は、このようなポリエチレンは十分に強い熱封止が形成され得る操作の温度ウィンドウを広げることができるので、より堅固な封止操作においてより堅固で強い封止接合部が形成され得る。さらなる実施形態では、熱封止可能な最外層は、構造安定性と封止強度特性とのバランスを互いに取るために、例えばLDPEの部分層及びm−LLDPEを含む部分層を用いるなど、異なるポリマーから成る二つ以上の部分層から構築され得る。
【0055】
本方法の一実施形態によると、ポリマーフィルム基層は、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート(PET)、一軸延伸又は二軸延伸PET(OPET、BOPET)、一軸延伸若しくは二軸延伸若しくは非延伸ポリエチレンフラノレート(PEF)、延伸若しくは非延伸ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタネート(PEN)など)、ポリアミド(延伸又は非延伸ポリアミド(PA、OPA、BOPA)など)、エチレンビニルアルコールコポリマー(EVOH)、ポリオレフィン(ポリプロピレン、一軸延伸又は二軸延伸ポリプロピレン(PP、OPP、BOPP)、ポリエチレン(延伸又は非延伸高密度ポリエチレン(HDPE)、鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)など)など)、及びシクロオレフィンコポリマー(COC)、並びに上記ポリマーの任意のブレンドのうち任意のものをベースとしたフィルムから成る群から選択されるポリマーフィルム、又は、上記ポリマー若しくはそのブレンドのうち任意のものを含む表面層を有する多層フィルムである。
【0056】
本方法の一実施形態によると、第1アモルファスダイアモンドライクカーボンDLCコーティングは、厚さが2〜50nm、例えば5〜40nm、例えば10〜40nm、例えば10〜35nmとなるように適用される。
【0057】
本方法の一実施形態によると、第1アモルファスダイアモンドライクカーボンDLCコーティングは、接着促進コーティングであり、厚さが2〜50nm、例えば2〜10nm、例えば2〜5nmとなるように適用される。
【0058】
本方法の一実施形態によると、第2アモルファスダイアモンドライクバリアコーティングは、厚さが2〜50nm、例えば2〜10nm、例えば2〜5nmとなるように適用される。
【0059】
気相蒸着アモルファスダイアモンドライクカーボンのバリアコーティングを有するラミネートバリアフィルムによる縁部カバーストリップは、多くの面で良好な性質を示す。例えば、低い酸素透過率(OTR)低い水蒸気透過率(WVTR)、良好な芳香・香気バリア特性を有する。また、当該材料からパッケージを生産する際の折り曲げ成形及び封止操作におけるラミネート包装材料に対する熱封止といったその後の取扱い操作において、良好な機械的性質を有する。
【0060】
特に、本発明に係るラミネートバリアフィルムは、当該ラミネート構成内の隣接する層間に優れた接着性を提供することにより、また、良好なバリア特性を提供することにより、優れた一体性を有することがわかった。特に、液体及び湿った食品の包装のためには、湿潤包装条件下であってもラミネートバリアフィルム内の層間接着性を維持するということが重要である。様々な種類の気相蒸着バリアコーティングのうち、プラズマ増強化学気相蒸着(PECVD)などのプラズマコーティング技術により適用された、このDLCタイプの気相蒸着バリアコーティングが優れたラミネート一体性を有することが確認された。一方、その他の種類の気相蒸着化学種、例えばSiOxやAlOxコーティングによるバリアコーティングは、湿潤条件及び湿った条件下での同種のラミネート材料において、良好な一体性を示さない。湿潤条件下であってもDLCコーティングがポリオレフィン(特にポリエチレンなど)に対してこの異常な接着適合性を示すことは、予想できなかった驚くべきことであり、このようなバリアフィルムを液体用の包装に特に適したものとする。
【0061】
長い時間をかけて、気体バリア性の基準並びに様々な機械的性質及びその他の物理的性質の必要性を満たすラミネート包装材料を設計するにあたり、様々な気相蒸着バリアコーティングが検討された。気相蒸着バリア層は、フィルム材料の基材表面への物理気相蒸着(PVD)又は化学気相蒸着(CVD)により適用され得る。基材材料自体も、いくつかの特性により貢献し得るが、何をおいても、気相蒸着コーティングを受容するとともに気相蒸着プロセスにおいて効率的に機能するのに適した適切な表面特性を有するものとすべきである。
【0062】
薄い気相蒸着層の厚さは、通常、僅かナノメートルレベル、すなわち、ナノメートルの大きさのオーダー、例えば1〜500nm(50〜5000Å)、好ましくは1〜200nm、より好ましくは1〜100nm、最も好ましくは1〜50nmである。
【0063】
いくつかのバリア特性、特に水蒸気バリア特性を有することの多い一般的な種類の気相蒸着コーティングの一つは、いわゆる金属化層、例えば金属アルミニウム物理気相蒸着コーティングである。
【0064】
このような気相蒸着層は、実質的に金属アルミニウムから成り、厚さが5〜50nmであってよく、これは、包装用の従来の厚さ、すなわち6.3μmのアルミニウム箔中に存在する金属アルミニウム材料の1%未満に対応する。気相蒸着金属コーティングは、要する金属材料が著しく少量となるが、よくても低レベルの酸素バリア特性を提供するのみであり、最終的なラミネート材料に十分なバリア特性を付与するためには、さらなる気体バリア材料と組み合わせる必要がある。一方で、さらなる気体バリア層を補完し得るが、水蒸気バリア特性は有さず、むしろ水分に対して敏感である。
【0065】
気相蒸着コーティングの別の例は、アルミニウム酸化物(AlO
x、Al
2O
3)及びシリコン酸化物(SiO
x)コーティングである。一般に、このようなPVD−コーティングは、より脆く、ラミネーションにより包装材料へ組み込むには適していない。例外として、金属化層は、PVDで形成されたにもかかわらず、ラミネーション材料に適した機械的性質を有するものであるが、一般的に酸素ガスに対するバリア性はより低いものとなる。
【0066】
ラミネート包装材料のために研究されてきた他のコーティングが、プラズマ増強化学気相蒸着法(PECVD)によって適用されてもよい。PECVDでは、程度の差はあるが酸化雰囲気下において、化合物の蒸気が基材に蒸着される。例えば、シリコン酸化物コーティング(SiO
x)がPECVDプロセスにより適用されてもよく、これにより、特定コーティング条件及び気体組成の下で非常に良好なバリア特性を得ることができる。残念ながら、SiO
xコーティングは、溶融押出ラミネーションによりポリオレフィン及び他の隣接するポリマー層にラミネートされて、当該ラミネート材料が湿潤又は非常に湿った包装条件に曝された場合、接着特性が不十分である。液体カートン包装を想定した種類の包装ラミネートにおいて十分な接着性を実現しこれを維持するためには、特別で高価な接着剤又は接着性ポリマーが必要とされる。
【0067】
本発明によると、ラミネートバリアフィルムは、プラズマ増強化学気相蒸着プロセス(PECVD)により適用されたアモルファス水素化カーボンバリア層、いわゆるダイアモンドライクカーボン(DLC)からの気相蒸着コーティングを有する。DLCとは、ダイアモンドの典型的な性質のうちいくつかを呈するアモルファス炭素材料の分類であると定義されます。好ましくは、例えばアセチレンやメタンなどの炭化水素ガスが、コーティングを形成するためのプラズマ中のプロセスガスとして使用される。ここで、上記で指摘したように、このようなDLCコーティングは、湿潤な試験条件下で、ラミネート包装材料において隣接するポリマー層又は接着剤層に対する良好かつ十分な接着性を提供するものであることがわかった。隣接するラミネートポリマー層、すなわちDLCバリアコーティングに接着又はコートされたポリマー層に対する、特に良好な接着適合性が、ポリオレフィン、特にポリエチレン及びポリエチレン系コポリマーにおいて見られた。
【0068】
このため、良好な機械的性質と、いずれかの方向にこのようなラミネート材料を通って移動する様々な物質に対する良好なバリア特性とをもって貢献することにより、また、ラミネートにおいて隣接するポリマー層に対する優れた接着性が得られることにより、DLCバリアコーティングは、当該バリアコーティングを有するベース層を備えるラミネートバリアフィルムに対して、良好なバリア性及び一体性を提供する。従って、DLCバリアコーティングを有するポリマーフィルムのベース層を備える縁部カバーストリップによって、長期間の大気保存(例えば最大2〜6か月間、例えば最大12か月間など)のための、酸素バリア特性及び水蒸気バリア特性を有する包装容器を提供することができる。加えて、DLCバリアコーティングにより、パックされた食品中に存在する様々な芳香物質及び風味物質、隣接する材料層に存在するかもしれない低分子物質、香気、並びに酸素以外の気体に対する良好なバリア特性が提供される。また、DLCバリアコーティングは、ポリマーフィルム基材のベース層にコートされると、良好な機械的性質を呈し、充填されたカートンパッケージにおける縁部カバーストリップとして採用された場合に、ラミネーション並びにその後のラミネートバリアフィルムの熱封止及び折り曲げ成形に耐える。例えば、ポリエステル及びポリアミドフィルムは、気相蒸着コーティングプロセス中、DLCコーティング層の開始及び成長に優れたベース層及び基材表面を提供する。コーティングプロセスにおける有益な条件では、コーティング品質が向上するので、コーティング層を薄く形成することができ、それでも所望のバリア特性、接着特性、及び密着特性を実現することができる。
【0069】
DLCバリアコーティングでコートされた二軸延伸PETフィルムのクラック開始歪み(crack−onset strain;COS)は、2%を超えるものであり得る。これは通常コーティングの酸素バリア特性に関し得るもので、フィルムに2%を超える歪みが生じるまでは劣化が始まらない。
【0070】
DLCバリアコーティングは、米国特許第7,806,981号明細書に記載されたような、電力に容量結合されたマグネトロン電極プラズマや欧州特許第0575299号明細書に記載されたような、炭素前駆体を使用した誘導結合式の無線周波数プラズマ増強化学気相蒸着といったプラズマアシストコーティング技術により、基材に堆積され得る。
【0071】
一実施形態によると、ベース層は、厚さが12μm以下、例えば8〜12μmのBOPETフィルムである。延伸フィルムは、通常、フィルムを貫通する引裂又は切断に対する強度及び強靭性が向上しており、ラミネート包装材料において含まれる場合には、このようなフィルムは、パッケージの開封を困難なものとし得る。できる限り薄いこのようなポリマーフィルム基材をベース層用に選択することにより、包装材料表面に対して容易に熱封止可能な、高い可撓性を有する縁部カバーストリップを得ることができる。
【0072】
PETフィルムは、良好な機械的性質を有する堅固かつ費用効果の高いフィルムであるので、高温に対する幾分の固有の耐性並びに化学物質及び水分に対する相対的な耐性のために、DLC気相蒸着コーティングに特に適した物質である。PETフィルムの表面はまた、高い滑らかさ及び気相蒸着DLCコーティングに対する良好な親和性を有し、逆に気相蒸着DLCコーティングもPETフィルムに対する親和性を有する。さらなる実施形態によると、ベース層は、フィルムをラミネートしてラミネート包装材料とする際に、バリアフィルムの両側で隣接する層に対するより良好な結合性を提供するために、BOPETフィルムの他面に適用された接着プライマーコーティングを有するBOPETフィルムである。
【0073】
さらに別の実施形態によると、ベース層は、フィルムをラミネートしてラミネート包装材料とする際に、バリアフィルムの両側で隣接する層に対するより良好な結合性を提供するために、BOPETフィルムの他面に適用された追加DLCコーティングを有するBOPETフィルムである。
【0074】
DLCコーティングは、リサイクルされる内容物中に、自然及び我々の周囲環境には元来存在しない要素又は材料を含む残留物を残さず、容易にリサイクル可能であるという利点をさらに有する。
【0075】
本発明のラミネートフィルム構造における液密性の熱封止可能な外側層に適した熱可塑性ポリマーの例としては、ポリエチレンやポリプロピレンホモポリマー又はコポリマーなどのポリオレフィン、好ましくはポリエチレン、より好ましくは、低密度ポリエチレン(LDPE)、鎖状LDPE(LLDPE)、シングルサイト触媒メタロセンポリエチレン(m−LLDPE)、及びこれらのブレンド又はコポリマーから成る群から選択されるポリエチレンがある。一実施形態によると、最適なラミネーション特性及び熱封止特性のために、液密性の熱封止可能な外側層は、m−LLDPEとLDPEとのブレンド組成物であり得る。
【0076】
代替的な実施形態によると、ラミネートフィルム内部の、すなわち熱封止可能な外側層とバリアコート若しくはプライマーコートされたベース層との間の結合層又は繋ぎ層に適しているものとしては、LDPE若しくはLLDPEコポリマー、カルボキシル基やグリシジル基など(例えばアクリル(メタクリル)酸モノマーや無水マレイン酸(MAH)モノマーなど)のモノマーユニットを含む官能基を有するグラフトコポリマー(すなわちエチレンアクリル酸コポリマー(EAA)やエチレンメタクリル酸コポリマー(EMAA)など)、エチレン−グリシジルアクリレート(メタクリレート)コポリマー(例えば(M)A)、又はMAH−グラフトポリエチレン(MAH−g−PE)を主にベースとする、いわゆる接着性熱可塑性ポリマー(改質ポリオレフィンなど)もあり得る。このような改質ポリマー又は接着性ポリマーの別の例は、いわゆるアイオノマー又はアイオノマーポリマーである。好ましくは、改質ポリオレフィンは、エチレンアクリル酸コポリマー(EAA)又はエチレンメタクリル酸コポリマー(EMAA)である。
【0077】
対応する改質ポリプロピレン系の熱可塑性接着剤又は結合層も、包装容器の完成品の必要条件によっては有用な場合がある。
【0078】
このような接着性ポリマー層又は繋ぎ層は、共押出コーティング操作において、各外側層とともに適用される。
【0079】
しかしながら、通常、上述の接着性ポリマーの使用は、本発明のDLCバリアコーティングに対する結合に必要とされるべきではない。隣接する各層としてのポリオレフィン層、特にポリエチレン層に対する十分かつ適正な接着性は、少なくとも200N/m、例えば少なくとも300N/mのレベルであると結論付けられた。接着性の測定は、LDPEラミネーションから24時間後に、180度剥離力試験装置(Telemetric Instrument AB)を用いて室温で実行される。DLC/LDPEの界面で剥離が実行され、剥離アームはバリアフィルムである。必要に応じて、湿潤条件下、すなわち、ラミネート包装材料が、ラミネート材料から作製された包装容器に保存された液体からの、及び/又は湿潤環境又は非常に湿った環境での保存による、材料層を通って移動する水分で飽和した条件下における接着性を評価するために、剥離中に蒸留水の小滴が剥離界面に加えられる。与えられる接着性の値は、N/m単位で与えられ、6回の測定の平均である。
【0080】
200N/mを超える乾式接着により、通常のパッケージ製造条件下では、例えばラミネート材料を曲げて折り曲げ成形する際には各層が剥がれないようになる。これと同じレベルの湿式接着により、充填及びパッケージ成形の後、輸送、流通、及び保存中に、包装ラミネートの各層が剥がれないようになる。
【0081】
熱封止可能な最外ポリマー層は、一般的な技術及び機械、例えば、アルミニウム箔のラミネーション用に知られているもの、特に溶融ポリマーからDLCバリアコーティング上へのポリマー層の高温ラミネーション(押出)を使用することにより、DLCバリア層がコートされたポリマーフィルム基材に直接コートされ得る。また、予め作製されたポリマーフィルムを使用して、当該ポリマーフィルムを局所的に溶融させることにより(例えば高温のシリンダー又は加熱されたローラーで熱を加えることにより)、バリアコートされたキャリアフィルムに直接結合させることが可能である。さらに、環境的な観点からはあまり好ましくないが、バリアコートされたフィルムに対してポリマー層の溶媒ラミネーションを行うことも可能である。上記より、DLCコートされたバリアフィルムは、ラミネーション及びラミネート包装材料への転換を行う方法におけるアルミニウム箔バリアと同様の方法で、すなわち押出ラミネーション及び押出コーティングにより、取り扱うことができることは明らかである。ラミネーション装置及びラミネーション方法は、例えば、従来既知のプラズマコートされた材料で必要とされ得るような具体的な接着性ポリマー又はバインダー/繋ぎ層を追加するといった修正を必要としない。
【0082】
DLCバリアコーティング面を隣接する層、例えばポリエチレン(LDPEなど)層にラミネートする際には、バリアフィルムによる貢献する酸素バリア特性が2〜3倍大きな値に増加することがわかった。単に本発明のDLCバリアコーティングをラミネートしてラミネート体を形成するだけでこのようにバリア性が向上することは、次のような単純なラミネート理論では説明することができない。
1/OTR=SUMi(1/OTRi)
しかしながら、本発明は、このように、各ラミネート層によるOTRへの個々の貢献を超えて全体のバリア性を向上させるものである。二つの材料間の界面が特に良好に一体化されて、これにより酸素バリア特性が向上するのは、DLCコーティングとポリオレフィン表面との間の優れた接着性に起因するものであると考えられる。
【0083】
本発明の好ましい実施形態では、乾燥条件及び(剥離界面に水を加えることによる)湿潤条件下で(上述のように)180°剥離試験法により測定された場合の、DLCバリアコーティング層とさらなるラミネート結合ポリマー層との間の剥離力の強さは、200N/mより大きく、例えば300N/mより大きい。200N/mを超える乾式接着により、通常の製造条件下では、例えばラミネート材料を曲げて折り曲げ成形する際には各層が剥がれないようになる。これと同じレベルの湿式接着により、充填及びパッケージ成形の後、輸送、流通、及び保存中に、包装ラミネートの各層が剥がれないようになる。
【0084】
本発明の液体用のカートン包装容器の成形に適した典型的なラミネートカートン包装材料は、通常曲げ力が320mNである紙又は板紙のバルク層を備えることができ、バルク層の外側に適用されたポリオレフィンの液密性の熱封止可能な外側層をさらに備えることができ、当該外側層の側は、包装ラミネートから生産される包装容器の外側に向かう側となる。外側層のポリオレフィンは、熱封止可能な性質を有する従来の低密度ポリエチレン(LDPE)であってもよいが、LLDPEなど、さらなる同様のポリマーを含んでもよい。液密性の熱封止可能な最内層が、包装ラミネートから生産される包装容器の内側に向かう側となるバルク層の反対側に配置される。すなわち、最内層は、包装される製品と直接接触することになる。このように熱封止可能な最内層は、ラミネート包装材料から作製された液体包装容器の最も強い封止を形成するものであり、LDPE、鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、及び、メタロセン触媒の存在下においてC4〜C8、より好ましくはC6〜C8のα−オレフィンアルキレンモノマーとエチレンモノマーとを重合させることにより生産されるLLDPE、すなわちいわゆるメタロセン−LLDPE(m−LLDPE)から成る群から選択されるポリエチレンの一つ以上の組合せを備える。あるいは、熱封止可能な最内層は、同種又は異なる種類のLDPE若しくはLLDPE又はそのブレンドの二つ以上の部分層から成るものとすることができる。
【0085】
バルク層は、バリアフィルム又は箔にラミネートされることにより、バルク層と熱封止可能な最内層との間に配置される。バリアフィルム又は箔は、アルミニウム箔又はバリアコートされたポリマーフィルムであってよい。
【0086】
特定の実施形態では、このようなバリアフィルムは、ポリマーフィルム(例えば、厚さが12μmの延伸PETフィルム)の基層を備え、基層は、厚さ2〜50nm(例えば5〜40nm)で第1面にアモルファスDLCバリア材料の薄いPECVD気相蒸着層がコートされている。反対側の第2面では、ポリマーフィルム基材が、接着促進プライマー、この場合は三菱化学製のプライマー組成物である2−DEFでコートされている。あるいは、ポリマーフィルム基材は、第2アモルファスDLCコーティングでコートされてもよい。第2アモルファスDLCコーティングは、バリア特性を付与することもできるが、単に接着促進プライマーコーティングとして作用することもでき、その場合には厚さは僅か2〜4nmとすることができる。
【0087】
このようにバリアコートされたフィルムのDLCコートされた第1面は、結合性の熱可塑性ポリマーの中間層により、又は官能性ポリオレフィン系接着性ポリマー、この例では低密度ポリエチレン(LDPE)により、バルク層にラミネートされる。この中間結合層は、バルク層及び耐久性を有するバリアフィルムを互いに対して押出ラミネートすることにより形成される。中間結合層の厚さは、7〜20μm、より好ましくは12〜18μmとすることができる。これらの層間では優れた接着性が得られ、ラミネート材料の良好な一体性を提供する。ここで、PECVDコートされたDLCバリアコーティングは、相当量の炭素材料を含み、ポリオレフィン、特にポリエチレン及びポリエチレン系コポリマーなどの有機ポリマーに対する良好な接着適合性を示す。
【0088】
本発明の一実施形態によると、ラミネート包装材料が、最外層及び熱封止可能な最内層と少なくとも一側にDLCコーティングを有する内部バリアフィルムとを備えた上述のような板紙ラミネートであり、折り曲げ成形及び封止が行われて包装容器とされた場合に、添付の特許請求の範囲に記載されるラミネートバリアフィルムのストリップによりカバーされた長手方向の重畳封止部において露出する切開縁を有する、包装容器が提供される。
【0089】
以下、本発明の好ましい実施形態について、図面を参照して説明する。