(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
酸素含有ガスと燃料ガスとで発電を行なう燃料電池セルを複数配列してなるセルスタックと、各燃料電池セルに燃料ガスを供給するマニホールドと、原燃料を改質して前記燃料ガスを生成する改質器と、を備えるセルスタック装置と、
前記酸素含有ガスが流通する酸素含有ガス流路と、
前記酸素含有ガスを前記複数の燃料電池セルのそれぞれに供給する酸素含有ガス導入板と、
前記セルスタック装置および前記酸素含有ガス導入板を収容する収納室を備える収納容器と、
前記収納容器の外部から前記収納室内に挿入された複数の挿入部材と、を備え、
前記挿入部材は、前記収納容器の一面より挿入されている、燃料電池モジュール。
【発明を実施するための形態】
【0007】
図1は一実施形態の燃料電池モジュールを側方から見た外観斜視図であり、
図2は燃料電池モジュール10の分解斜視図、
図3はその断面図である。なお、
図2は、モジュール組み立て作業のために、燃料電池モジュール10を作業台等に容器の開口である大形開口1cを上にして載置した状態、いわゆる「横倒し」あるいは「寝かせた」状態を示している。組み立て後に輸送や使用される場合は、
図1,
図3のように、容器開口を側面にしてセルスタック2Aを正立させた状態、すなわち立てた状態で用いられる。また、図中の符号HEは熱交換器である。
【0008】
図に示す実施形態の燃料電池モジュール10は、固体酸化物形燃料電池(SOFC)である。組み立て後の完成図である
図1および
図3に示すように、収納容器1は、インナーケース1Bとアウターカバー1Aとの間にガス流路が形成された二重構造である。収納容器1の内側には、底部断熱材6および側部断熱材7A,7B等から構成される内側断熱材を配設されて、その内部の中央空間に、発電室11Aと燃焼室11Bとが設けられる。発電室11Aと燃焼室11Bの中には、セルスタック2A,マニホールド2Bおよび改質器2C等からなるセルスタック装置2が収容される。なお、発電室11Aと燃焼室11Bとで収納室12となる。
【0009】
なお、発電室11Aと燃焼室11Bとは一体化されていてもよい。また、底部断熱材6、側部断熱材7A,7Bの「底部」、「側部」とは、組み立て後の稼動状態を示す
図1,
図3において底部側、側部側に位置するという意味である。
図2のように組み立て中の場合は、底部断熱材6は横倒しになったセルスタック2Aの側方に位置する。側部断熱材7Aは、横倒しになったセルスタック2Aの下側に相当する、インナーケース1Bの箱体底部1d側の底面側に位置する。側部断熱材7Bは、横倒しになったセルスタック2A上側の蓋体であるクローズドプレート5側に位置する。
【0010】
この燃料電池モジュールは、収納容器1の外部から収納室12内に、燃料電池モジュール10の動作に必要な熱電対33,34,35等のセンサや着火ヒーター32等の挿入部材が、収納容器1の一面より挿入されている。本実施形態では、挿入部材は、収納容器1の開口面である大形開口1cを蓋するクローズドプレート5を貫通して設けられた各貫通孔を介して挿入されている。すなわち、本実施形態では第1貫通孔〜第5貫通孔等を介して挿入されている。これら挿入部材の取り付け作業が、燃料電池モジュール10を組立途中で移動させたり向きを変えたりすることなく行えるようになっている。なお、収納容器1の形状は、図に示す直方体形状のほか、多角柱状とすることもできる。
【0011】
また、収納容器1として、
図2に示すような一面が大きく開口する箱体である二重構造の収納容器1を用いている。この箱体の上面に位置する大形開口1cは、図のように横倒しにしたセルスタック装置2を大形開口1cの上側から挿入できる大きさとされている。言い換えれば、大形開口1cは、その開口長さまたは開口径(対角長さともいう)が、マニホールド2Bおよび改質器2Cを含むセルスタック装置2の側面サイズより大きくなっている。
【0012】
すなわち、大形開口1cは、セルスタック装置2のセル配列の側方側から見た装置投影面の最大長さまたは最大横断径より大きくなっている。これにより、セルスタック装置2を、箱体である収納容器1内で移動させたりすることなく、収納容器1内の所定の位置に、一度の作業で容易に収容することができる。
【0013】
上記燃料電池モジュール10の構成と製造方法および組み立て順について説明する。
【0014】
燃料電池モジュール10は、
図2の分解斜視図に下から順に示すように、収納容器1と、側部断熱材7Aと、酸素含有ガス導入板3と、保持用断熱材8A,8Bと、セルスタック装置2と、底部断熱材6と、側部断熱材7Bと、セルスタック保持用断熱材8C,8Dと、ペーパーガスケット4とクローズドプレート5と、を備えている。収納容器1は、アウターカバー(1A)とインナーケース(1B)とを備えている。
【0015】
側部断熱材7Aは、側部断熱材の一方である箱体底面側をなしている。酸素含有ガス導入板3は、燃料電池セルに酸素含有ガスを供給する。セルスタック保持用断熱材8A,8Bは、酸素含有ガス導入板3の上面に配置されたリブ状である。
【0016】
セルスタック装置2は、セルスタック2Aおよび改質器2Cを含む。底部断熱材6は、セルスタック装置2の側方に位置するマニホールド2B側に配設される。側部断熱材7Bは、側部断熱材の他方側に位置する箱体開口側をなしている。
【0017】
セルスタック保持用断熱材8C,8Dは、側部断熱材7Bの下面側に取り付けられるとともにセルスタック保持用断熱材8A,8Bと対をなしている。インナーケース1Bは、ペーパーガスケット4とクローズドプレート5とで蓋をされている。なお、一部の部材を省略してもよく、また他の部材を追加してもよい。
【0018】
そして、収納容器1のインナーケース1B内に収容される、セルスタック装置2を含む各部材は、インナーケース1Bのセルスタック装置挿入用の大形開口1cより小さなサイズとされている。すなわち、酸素含有ガス導入板3、底部断熱材6、側部断熱材7A,7B、セルスタック保持用断熱材8A,8B,8C,8D等は、インナーケース1Bのセルスタック装置挿入用の大形開口1cより小さなサイズとされている。
【0019】
これら各部材は、大形開口1cから、開口から見た箱体の底面に相当する箱体底部1dに向けて、容易に挿入できるようになっている。そのため、
図2に示すように下から順に積み重ねていくことで、燃料電池モジュール10を容易に組み立てることができる。
【0020】
また、酸素含有ガス導入板3は、インナーケース1Bの内壁に設けられた酸素含有ガス流路である第3流路15の酸素含有ガス導出口1eから挿入される。続いて、酸素含有ガス導入板3は、この側部断熱材7Aの上側に載置され、その導入部3d側の基端部3bを、
図3に示すように、酸素含有ガス導出口1eに、溶接やねじ止め等(図示省略)により固定される。
【0021】
ここで、酸素含有ガス導入板3を溶接にて固定する場合は、セルスタック装置2が溶接による熱的影響を受けることがなく、また気密を保持することが容易になるという利点がある。これは、酸素含有ガス導入板3を溶接によって固定した後に、セルスタック装置2を挿入するためである。また、酸素含有ガス導入板3が、セルスタック装置2に対して、センサや補機類の挿入側となるクローズドプレート5と反対側に設けられているため、これらの挿入作業の邪魔になることがない。なお、酸素含有ガス導入板3の固定方法は、溶接だけに限定されるものではなく、たとえば、ねじ止めにより固定してもよい。
【0022】
そして、セルスタック装置2が収容され組み上がった状態で、燃料電池モジュール10の上面となるクローズドプレート5から、ペーパーガスケット4および側部断熱材7Bを通して、セルスタック装置2の近傍まで貫通する複数の貫通孔、この例では貫通孔21〜27が設けられる。
【0023】
各貫通孔21〜27のうち、貫通孔21は、改質器2Cの気化部2C1に原燃料を供給する原燃料供給管、すなわちこの例では、原燃料供給管として改質用水も同時に供給する二重管式ガス継手31の挿通に使用される。
【0024】
貫通孔22は着火ヒーター32の挿通に使用される。貫通孔23は改質器2Cの気化部2C1に配設する熱電対33の挿通に使用される。貫通孔24は改質器2Cの改質部2C2に配設する熱電対34の挿通に使用される。貫通孔25はセルスタック2Aの温度を検出する熱電対35の挿通に使用される。
【0025】
また、貫通孔26,27に挿通されているのは、セルスタック2Aの積層方向両端部から電気を取り出すためのバスバー36,37である。これらバスバー36,37は、セルスタック2Aの積層方向両端に配置されたエンドコレクター(図示せず)に、モジュール組み立て前に予め取り付けられている。
【0026】
バスバー36,37は、先に述べた側部断熱材7B,ペーパーガスケット4およびクローズドプレート5を燃料電池モジュール10に組み込む際、それぞれに予め設けられている、連通した場合に貫通孔を形成する穴(
図2参照。たとえば、貫通孔26形成用の3つの穴26,26,26等)をバスバー36に挿通しながら、各部材を組み付ける。それにより、
図1のような、各バスバー36,37の端子部がクローズドプレート5の表面から突き出る状態に、燃料電池モジュール10を組み上げることができる。なお、上述の各貫通孔は、挿入部材の数にあわせて適宜変更することができ、一部を省略できるほか、他の貫通孔を設けてもよい。
【0027】
ここで、前述のような燃料電池モジュールの組み立てにおいては、セルスタックを容器に収容した後に、該セルスタックの周囲にセンサやヒーター、着火手段等を取り付ける作業が行われる。これらの作業は、収納容器内の狭い空間内で、セルスタック等に傷を付けないように慎重に行う必要があるため、時間がかかることから、モジュール生産の効率の点で改善の余地があった。
【0028】
これに対して、本開示の燃料電池モジュールおよび燃料電池装置によれば、燃料電池モジュールおよびこれを用いた燃料電池装置を、効率良く組み立てることができる。すなわち、本実施形態の燃料電池モジュール10は、
図2のように燃料電池モジュール10を「寝かせた」状態で、あるいは、
図1のように燃料電池モジュール10を「立てた」状態のいずれの態様でも、容易にかつ短時間で組み付けることができる。すなわち、二重管式ガス継手31,着火ヒーター32等や各部の温度測定に用いられる熱電対等のセンサ類等、燃料電池モジュール10内のセルスタック2A近傍に配置する必要のある挿入部材を、先に述べたような収納容器1の開口を蓋した状態で各貫通孔から挿入する。それにより、本開示の燃料電池モジュール10は、容易にかつ短時間で組み付けることができる。
【0029】
したがって、本実施形態の燃料電池モジュール10の製造では、セルスタック装置2を、挿入部材の取り付けのために容器内で移動させる必要がなく、容器内の所定の位置に、一度の作業で、簡単に収めることができる。しかも、配管や配線等の接続作業は、作業スペースが充分にある蓋側から行うことができるため、これらの作業を手早く容易に完了することができる。よって、本実施形態の燃料電池モジュール10の製造は、モジュール生産の効率を向上させることができる。
【0030】
つぎに、前述のようにして組み立てられ、この収納容器1内に収容された、燃料電池モジュール10の各装置および部材について、
図4〜
図6を加えて説明する。
図4は、燃料電池モジュールの二重容器のアウターカバーの内側に設けられる、空気流路の構成を示す図である。
図5は、燃料電池モジュール内部の酸素含有ガス導入板の形状を説明する半断面図である。
図6は、燃料電池モジュールの二重容器の底部に設けられた排ガス処理室の構成を説明する半断面図である。
【0031】
収納容器1内の、
図3における下側の発電室11Aと上側の燃焼室11Bを合わせた収納室12に収容されたセルスタック装置2は、先にも述べたように、セルスタック2A,マニホールド2Bおよび改質器2Cを組み合わせて構成されている。なお収納室12とは、インナーケース1Bと、側部断熱材7A,7Bと、底部断熱材6とで囲まれた空間を言う。
【0032】
セルスタック2Aは、内部を燃料ガスが、稼動時の上下方向に相当する長手方向に流通する燃料ガス流路(図示せず)を有する中空平板型の柱状燃料電池セルを立設させた状態で一列に配列し、隣接する燃料電池セル間が集電部材(図示せず)を介して電気的に直列に接続されている。なお、燃料電池セルとしては、柱状のものであればよく、たとえば円筒型や横縞型にも適用できる。
【0033】
セルスタック2Aは、
図3のように、収納室12における発電室11A内に収納されており、これを構成する各燃料電池セルの下端は、ガラスシール材等の絶縁性接合材(図示せず)でマニホールド2Bに固定されている。
【0034】
セルスタック2Aの上方、すなわち組み立て前の横倒し状態の
図2では側方に、天然ガスや灯油等の原燃料を改質して燃料電池セルに供給する燃料ガスを生成するための改質器2Cが配設されている。この改質器2Cで生成された燃料ガスが、燃料ガス供給管2d(
図3参照)を通じてマニホールド2Bに供給される。
【0035】
マニホールド2Bに供給された燃料ガスは、セルスタック2Aの内部に設けられたガス流路を下端より上端に向けて流れる。各燃料電池セルでは、この燃料ガスと、側方に位置する酸素含有ガス導入板3の吐出口3cから供給される酸素含有ガスとで、発電が行なわれる。
【0036】
なお、セルスタック装置2においては、各セルスタック2Aの上端において燃料ガス流路の終端より排出される、発電に寄与しなかった余剰の燃料ガスと酸素含有ガスとを燃焼させて、改質器2Cの加熱および原燃料の改質に利用している。すなわち、混合された余剰の燃料ガスと酸素含有ガスとは、セルスタック2Aと改質器2Cの間に位置する燃焼部11cにおいて、着火ヒーター32により着火して燃焼され、その燃焼熱が改質器2Cの加熱および原燃料の改質に利用されている。そのため、収納室12における、セルスタック2Aより改質器2C側の高温の上側空間を燃焼室11B、セルスタック2A側の低温の下側空間を発電室11Aと呼称している。
【0037】
つぎに、断熱材は、セルスタック装置2の周囲に配置され、このセルスタック装置2の断熱および位置固定と、収納室12である発電室11A,燃焼室11Bを形成する。断熱材は、
図3に示すように、セルスタック装置2の側方に配置される大形の側部断熱材7A,7Bと、その内側でセルスタック装置2を挟み込むように両側から支持するセルスタック保持用断熱材8A,8Cおよび8B,8Dと、セルスタック装置2の下側に配置される底部断熱材6と、からなる。なお、断熱材としては、一般的に使用される断熱材料を用いることができ、たとえば、アルミナ系、シリカ系、アルミナシリカ系材料から構成された断熱材を用いることができる。
【0038】
図示左側の大形の側部断熱材7Bの内側面でかつセルスタック装置2側には、溝状凹部7c,7cが形成されている。セルスタック保持用断熱材8C,8Dは、これら溝状凹部7c,7cに嵌入され、所定の適切な位置で、セルスタック装置2を支持するようになっている。一方で、セルスタック保持用断熱材8A,8Bは、酸素が入ガス導入板3に設けられた断熱材固定部材9により保持され、所定の適切な位置で、セルスタック装置2を支持するようになっている。
【0039】
底部断熱材6,側部断熱材7Aの外側と、外壁に相当する二重容器であるアウターカバー1A、内壁に相当するインナーケース1Bとの間には、各流路が設けられている。たとえば、
図3に示すような、セルスタック装置2に酸素含有ガスを供給する流路13,14,15が設けられている。
【0040】
また、セルスタック装置2から排出される燃焼排ガスを、排ガス処理室18またはモジュール外の熱交換器等へ輸送するための流路16,17および19等が設けられている。なお、各断面図は模式図であるため、流路の厚みを実際より誇張して描いており、流路の、容器の厚み方向である紙面表裏方向の重なりや蛇行、迂回等、三次元的な形状を、必ずしも反映させているものではない。また、他の部材の厚みや寸法も、実際のものとは異なる。
【0041】
酸素含有ガス流路13,14,15は、酸素含有ガス流入管13aと、第1の酸素含有ガス流路(第1流路13)と、第2の酸素含有ガス流路(第2流路14)と、第3の酸素含有ガス流路(第3流路15および空気溜まり)と、から構成されている。
【0042】
酸素含有ガス流入管13aは、図示しない空気ブロア等の補機から送給される酸素含有ガスを受け入れる。第1の酸素含有ガス流路は、容器底部に設けられている。第2の酸素含有ガス流路は、後述の第1の排ガス流路17(排ガスポケット)と対向して排ガスとの熱交換を主に担う。第3の酸素含有ガス流路は、容器上部で酸素含有ガスをさらに加温する。
【0043】
上部の第3流路15には、
図3に示すように、この第3流路15から下方のマニホールド2B部位に向けて垂下する、酸素含有ガス導入板3が接続されている。加温された酸素含有ガスは、柱状のセルスタック2Aの下端部近くまで送給され、ここからセルスタック2Aの下端部に向けて、直接的に供給される。また、セルスタック2Aの下端部に供給された酸素含有ガスは、各燃料電池セルの柱状の外形に沿って、セルスタック2Aの上端の燃焼室12の方向へ移動する。
【0044】
第2流路14と第3流路15について、
図4を用いて、より詳しく説明する。
図4は、収納容器1のアウターカバー1Aを取り外した状態を示している。容器底部の第1流路13を経由した酸素含有ガス(空気:白抜き矢印)は、底部の中央側から、幅広の燃料電池モジュール10側面のインナーケース1Bの箱体底部1dを流れる第2流路14に流入する。
【0045】
第2流路14に流入した酸素含有ガスは、上方に向かって流れる間にこの箱体底部1dを挟んでその内側に配設された第1の排ガス流路17(
図3参照)内を流れる高温の排ガスとの熱交換により暖められる。第2流路14を流れた酸素含有ガスは、容器上部に設けられた第3流路15に流入する。
【0046】
また、第3流路15中に設けられた、酸素含有ガス導入板3のスリット状の導入部3dの周囲には、
図4に示すような、平面視略コの字状の整流板15aが配設されている。それにより、モジュール箱体側面のインナーケース1Bの箱体底部1dから箱体上面に廻り込んだ酸素含有ガスが、酸素含有ガス導入板3のスリット状の導入部3dに、直接的に到達しないようになっている。
【0047】
すなわち、この整流板15aは、酸素含有ガス導入板3に導入される酸素含有ガスを、図示白抜き矢印のように導入部3dの周囲を迂回させて流すためのものである。これにより、箱体上面における酸素含有ガスの流路長が延長されるとともに、この整流板15aを迂回している間に、側面で暖められた酸素含有ガスがさらに暖められる。また、セルスタック2Aに供給される酸素含有ガスの温度が上昇することから、発電効率を向上させる効果がある。
【0048】
なお、インナーケース1B上面の第3流路15の整流板15aの構成は一例であり、必ずしもこの構成とする必要はない。同様の整流板で形状や流路を変更してもよく、あるいは、流路そのものが、酸素含有ガス導入板3の導入部3dを迂回する形状とされていてもよい。
【0049】
また、モジュール箱体の側面のインナーケース1Bの箱体底部1d側の第2流路14も、実施形態での開示例に限定されるものではなく、たとえば、
図4に二点鎖線で表示した直線F,Fの位置に、それぞれ、追加の整流板等を設置してもよい。このように、幅広のモジュール箱体側面のインナーケース1Bの箱体底部1dに、この側面を流れる酸素含有ガスを、中央の高温領域に向けて集める整流板を設置することにより、このモジュール箱体の側面を流れる酸素含有ガスの温度を、より上げることができる。
【0050】
さらに、箱体底面の第1流路13上、たとえば、底面の点線で表示した直線G,Gの位置に、上記追加の整流板と同様の整流板等を配置してもよく、その整流板は、図のように第2流路14に対する空気出口(空気流出口)を中央側に絞る流路形状としてもよい。このように、整流板等の形状や流路配置は、適宜変更することができる。
【0051】
つぎに、前述のように温度の上昇した酸素含有ガスをセルスタック2Aに供給する酸素含有ガス導入板3は、たとえば薄い板状部材を2枚用いて中空の厚板状に成型される。具体的には、セルスタック2Aのセル配列方向長さに相当する板幅を有している。
【0052】
図3では上側の、酸素含有ガス流入側の第3流路15側の基端部3bは、先述の
図4のように、導入板幅方向にスリット状に開口する導入部3dとなっている。
図3では下側の、セルスタック2A側の先端部3aには、その先端の縁部より少し距離をおいた位置に、酸素含有ガス吐出口3cが設けられている。
【0053】
酸素含有ガス吐出口3cは、一方の薄板状部材を貫通する小孔状で、通常、幅方向に所定の間隔を開けて複数個形成されている。これにより、酸素含有ガス導入板3は、前述のように第2流路14および第3流路15で温められた酸素含有ガスを、柱状のセルスタック2Aの下端部に、効率的に供給することができる。
【0054】
また、
図5の一部断面図に示すように、酸素含有ガス導入板3における導入部3d側または基端部3b側の上部には、排ガス流通口3fとして貫通口が設けられている。排ガス流通口3fは、セルスタック2A上部の燃焼室11Bで発生する燃焼排ガスを、第1の排ガス流路17の上部空間16に向けて、酸素含有ガス導入板3の幅広面に直交する方向に通過させて、セルスタック装置2と反対側に流通させる。排ガス流通口3fは、改質器2Cの気化部2C1側(図示右側)および改質部2C2側(図示左側)にそれぞれ設けられている。
【0055】
なお、本実施形態においては、排ガス流通口3fは、改質器2Cの気化部2C1側と改質部2C2側の2箇所に設けられているが、少なくとも気化部2C1側に設けられていればよい。これにより、高温の排ガスは改質器2Cの気化部2C1近傍を流れるため、気化部2C1の温度を高温に維持することができる。
【0056】
つぎに、酸素含有ガス導入板3を貫通する排ガス流通口3f,3f(
図5参照)を通過した高温の燃焼排ガス(以下、排ガス)は、側部断熱材7A上側の空間である上部空間16に排出される。続いて、排ガスは、その空間に連通する側面の第1の排ガス流路17(インナーケース1B内側の排ガスポケット)を経由して、収納容器1底部の排ガス処理室18に導入される。排ガスは、この排ガス処理室18内で処理される。
【0057】
排ガス処理室18は、モジュールの収納容器1の底部に沿って、改質器2Cの改質部2C2側(図示奥側で左側)から気化部2C1側(図示手前で右側)にかけて設けられている。その内部には、
図6のモジュール底部の一部断面図に示すように、排ガス再加熱用のヒーター41と、排ガスを浄化する燃焼触媒42とが配設されている。なお、本実施形態においてヒーター41は、挿入部材とは異なる面から挿入された例を示しているが、挿入部材と同様に、クローズドプレート5を貫通して設けてもよく、また設けなくてもよい。
【0058】
また、先の第1の排ガス流路17を経由した排ガスは、
図6の黒塗り矢印に示すように、排ガス処理室18の一方側(図示奥側で左側)に設けられた排ガス導入口18aから排ガス処理室18内に導入される。続いて、排ガスは、排ガス処理室18内を奥側から手前側に向かう一方向の流れとして処理され、処理後の排ガスが、白抜き矢印で示すように、他方側(図示手前で右側)に設けられた排ガス導出口18bから導出される。
【0059】
そして、
図6において、手前側(図示右側)の排ガス導出口18bから上方に導出された排ガスは、
図5に示すように、改質器2Cの気化部2C1側(図示手前で右側)に設けられた第2の排ガス流路19により、収納容器1の幅狭側面の内側を上に向かって流れる。続いて、排ガスは、第2の排ガス流路19の上部に設けられた、熱交換器接続口である排ガス流出口20から、燃料電池モジュール10の外部に設けられた熱交換器HEへと流れる。
【0060】
なお、排ガス処理室18の排ガスの流れを、
図6に図示したものとは逆の、手前側から奥側に向かう一方向の流れとすることもできる。その場合は、排ガス導入口18aを排ガス処理室18の他方側(図示手前で右側)に設け、排ガス導出口18bを排ガス処理室18の一方側(図示奥側で左側)に設ければよい。その場合、排ガス再加熱用のヒーター41は図示手前側に、排ガスを浄化する燃焼触媒42は図示奥側に配設される。また、第2の排ガス流路19および排ガス流出口20は、図示では見えない奥側の収納容器1の幅狭側面に設けられるとともに、モジュール外部の熱交換器HEも、収納容器1の奥側に配設される。
【0061】
以上の構成により、本実施形態の燃料電池モジュール10は、モジュールの筐体を途中で移動させたり向きを変えたりすることなく、補機類やセンサ等を簡単に取り付けすることができる。したがって、モジュール組み立てにかかる時間やコストを低減することができる。また、セルスタック2Aに供給される酸素含有ガスの温度が上昇することから、燃料電池の発電効率を向上させることができる。
【0062】
しかも、燃料電池モジュール10と熱交換器HEとが、該燃料電池モジュール10の長手方向に並んで配置されるため、モジュール幅を小さく設計することが可能である。したがって、薄形でコンパクトな燃料電池モジュールとすることができる。
【0063】
つぎに、
図7は、燃料電池モジュール10と、この燃料電池モジュール10を作動させるための補機とを、外装ケース50に内に収納した燃料電池装置60の一例を示す透過斜視図である。なお、
図7においては、モジュールの運転に用いる補機や、各種センサ類、配管・配線等と、外装板である化粧パネルとを図示していない。
【0064】
燃料電池装置60は、各支柱51と外装板(図示省略)から構成される外装ケース50内に、前記実施形態の燃料電池モジュール10を収容したものである。この外装ケース50内には、図示した燃料電池モジュール10の他、蓄熱用のタンク、発電した電力を外部に供給するためのパワーコンディショナ、ポンプやコントローラ等の補機類が配設される。
【0065】
このような燃料電池装置60においては、1つの外装ケース50内に、コンパクトな燃料電池モジュール10および熱交換器、各種補機類等を収納することで、外装ケース50の高さや幅を小さくでき、それにより燃料電池装置全体を小型化することができる。
【0066】
しかも、前述のような薄形の燃料電池モジュール10を使用した場合、燃料電池装置全体がスリム化され、戸建て住宅の軒下等、奥行きのとれない細長いスペースにも設置することも可能である。したがって、本実施形態の燃料電池装置60は、装置設置場所の選択の幅が広く、設置の自由度の高い燃料電池装置とすることができる。
【0067】
以上、発明の実施形態について詳細に説明したが、本発明は上述の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々の変更、改良等が可能である。
【0068】
また、セルスタックの形状も、列状のものに限られるものではなく、他の配列のセルスタックを有するセルスタック装置を用いることもできる。また、収納容器も、そのセルスタック装置の形状や外形に合わせて、直方体状、円筒状のほか、立方体状や角柱状等であってもよい。
【0069】
本発明は、その精神または主要な特徴から逸脱することなく、他のいろいろな形態で実施できる。したがって、前述の実施形態はあらゆる点で単なる例示に過ぎず、本発明の範囲は請求の範囲に示すものであって、明細書本文には何ら拘束されない。さらに、請求の範囲に属する変形や変更は全て本発明の範囲内のものである。