特許第6867404号(P6867404)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6867404低圧下における小液滴エマルジョンの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6867404
(24)【登録日】2021年4月12日
(45)【発行日】2021年4月28日
(54)【発明の名称】低圧下における小液滴エマルジョンの製造方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/37 20060101AFI20210419BHJP
   A61K 8/36 20060101ALI20210419BHJP
   A61K 8/44 20060101ALI20210419BHJP
   A61K 8/06 20060101ALI20210419BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20210419BHJP
   A61K 8/31 20060101ALI20210419BHJP
   B01J 13/00 20060101ALI20210419BHJP
【FI】
   A61K8/37
   A61K8/36
   A61K8/44
   A61K8/06
   A61Q19/00
   A61K8/31
   B01J13/00 A
【請求項の数】13
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2018-551337(P2018-551337)
(86)(22)【出願日】2017年4月4日
(65)【公表番号】特表2019-517998(P2019-517998A)
(43)【公表日】2019年6月27日
(86)【国際出願番号】EP2017057987
(87)【国際公開番号】WO2017182265
(87)【国際公開日】20171026
【審査請求日】2020年2月4日
(31)【優先権主張番号】16166488.3
(32)【優先日】2016年4月21日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】590003065
【氏名又は名称】ユニリーバー・ナームローゼ・ベンノートシヤープ
(74)【代理人】
【識別番号】100114188
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100119253
【弁理士】
【氏名又は名称】金山 賢教
(74)【代理人】
【識別番号】100124855
【弁理士】
【氏名又は名称】坪倉 道明
(74)【代理人】
【識別番号】100129713
【弁理士】
【氏名又は名称】重森 一輝
(74)【代理人】
【識別番号】100137213
【弁理士】
【氏名又は名称】安藤 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100143823
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 英彦
(74)【代理人】
【識別番号】100151448
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 孝博
(74)【代理人】
【識別番号】100183519
【弁理士】
【氏名又は名称】櫻田 芳恵
(74)【代理人】
【識別番号】100196483
【弁理士】
【氏名又は名称】川嵜 洋祐
(74)【代理人】
【識別番号】100203035
【弁理士】
【氏名又は名称】五味渕 琢也
(74)【代理人】
【識別番号】100185959
【弁理士】
【氏名又は名称】今藤 敏和
(74)【代理人】
【識別番号】100160749
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100160255
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100202267
【弁理士】
【氏名又は名称】森山 正浩
(74)【代理人】
【識別番号】100146318
【弁理士】
【氏名又は名称】岩瀬 吉和
(74)【代理人】
【識別番号】100127812
【弁理士】
【氏名又は名称】城山 康文
(72)【発明者】
【氏名】ラング,デイビッド・ジョン
(72)【発明者】
【氏名】クアン,コングリング
【審査官】 松井 一泰
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭58−027636(JP,A)
【文献】 特開平11−240828(JP,A)
【文献】 特開2006−290762(JP,A)
【文献】 国際公開第2007/003658(WO,A1)
【文献】 特開昭53−113787(JP,A)
【文献】 特開平03−017006(JP,A)
【文献】 特表2013−534903(JP,A)
【文献】 特開2012−140385(JP,A)
【文献】 特開昭61−271029(JP,A)
【文献】 国際公開第2015/071298(WO,A1)
【文献】 特開2006−304782(JP,A)
【文献】 特開2009−297017(JP,A)
【文献】 中国特許出願公開第107080707(CN,A)
【文献】 特開2012−233063(JP,A)
【文献】 特表平08−507066(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2003/0012759(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00− 8/99
A61Q 1/00− 90/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)(1)トリグリセリド、融点が30〜60℃のペトロラタム及びそれらの混合物からなる群から選択される、総ナノエマルジョンの40〜75重量%の油と、(ii)ナノエマルジョンの1.1〜8重量%の、C〜C18脂肪酸とを含む内部相、並びに
b)総ナノエマルジョンの2〜15重量%(活性成分として)の、アミノ酸塩のN−アシル誘導体である1又は複数種の界面活性剤を含む外部水相
を含み、
(b)の前記界面活性剤が、前記外部水相中に存在する全ての界面活性剤の50%以上を構成し、
(a)の液滴の体積平均直径が20〜600ナノメートルである、
ナノエマルジョン組成物の製造方法であって、
1)成分(a)(ii)の前記C〜C18脂肪酸を(a)(i)の油に添加する工程;
2)油相(a)を、全ての化合物が溶融される十分な温度に加熱する工程;
3)前記水相を45〜75℃の温度範囲に加熱する工程、及び
4)500ポンド/平方インチ(psi)以下のプロセス圧力を用いて、ソノレータ又はホモジナイザーを介して前記加熱された水相及び油相を同時にポンプ輸送する工程;
を含む製造方法。
【請求項2】
前記1又は複数種の界面活性剤が、下記:
(i)前記アシル基の65%超〜100%がC14以下の鎖長を有する、ジカルボキシアミノ酸のN−アシル誘導体の塩;及び
(ii)前記アシル基の65%〜100%がC14以下の鎖長を有する、モノカルボキシアミノ酸のN−アシル誘導体の塩;及び
(iii)それらの混合物;
からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ジカルボキシアミノ酸のN−アシル誘導体が、アシルグルタミン酸の塩、アシルアスパラギン酸の塩又はそれらの混合物である、請求項に記載の方法。
【請求項4】
前記モノカルボキシアミノ酸のN−アシル誘導体の塩が、アシルグリシナートの塩、アシルアラニナートの塩又はそれらの混合物である、請求項2または3に記載の方法。
【請求項5】
前記液滴の体積平均直径が100〜500nmである、請求項1から4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
液滴の体積平均直径が70〜400nmである、請求項1から4のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
前記油が、トリグリセリド油であり、
前記トリグリセリド油が、大豆油、ヒマワリ種子油、ヤシ油、菜種油、パーム油、パーム核油、ブドウ種子油、魚油及びこれらの混合物からなる群から選択される、請求項1から6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
前記油が、融点30〜60℃のペトロラタムである、請求項1から7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
前記油混合物がトリグリセリド油とペトロラタムとの混合物である、請求項1から7のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
前記鎖長C〜C18の脂肪酸が、ラウリン酸、ミリスチン酸、ヤシ脂肪酸及びそれらの混合物からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記脂肪酸が、総ナノエマルジョンの少なくとも1.5〜8重量%である、請求項1から10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
前記アシルグルタミン酸、アシルアスパラギン酸、アシルグリシナート、及びアシルアラニナートの塩が、ナトリウム塩及び/又はカリウム塩である、請求項から11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
前記ナノエマルジョンが、ホモジナイザー又はソノレータ由来の150〜450psiの圧力で調製される、請求項1から11のいずれかに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低圧(500psi以下)において水中油型(o/w)ナノエマルジョンを製造する方法に関する。本方法は、C〜C18脂肪酸を、(1)トリグリセリド油及び/又はペトロラタムを有する内部油相;並びに(2)ジカルボキシアミノ酸(例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸)のN−アシル誘導体の塩、モノカルボン酸(例えば、グリシン、アラニン)のN−アシル誘導体の塩、又はモノカルボキシアミノ酸及びジカルボキシアミノ酸のこのような誘導体の混合物である界面活性剤を含有する外部水相、を含有するナノエマルジョンに添加することを必要とする。
【0002】
本発明は、小液滴(例えば、600ナノメートル以下)でのこのようなトリグリセリド油及びペトロラタム(ナノエマルジョンから送達される有益剤)の提供に関し、これは、有益剤がより大きい油滴形態で送達される組成物よりも見た目が良い。このようなナノエマルジョンを低圧で製造すると、大幅なエネルギー節約、生産融通性の向上、設備の資本投資の大幅な低減、設備保守要件の低減、運転中の停止時間の短縮、運転安全性の向上が実現する。
【0003】
乳化剤としてのアミノ酸界面活性剤のN−アシル誘導体を使用するナノエマルジョンは、2つの同時係属出願において特許請求されている。
【背景技術】
【0004】
皮膚保湿油(上記のトリグリセリド油及びペトロラタム有益剤を含む)は、パーソナルクレンジング組成物(例えば、皮膚を清潔にし、保湿するように設計されたシャワーゲル、洗顔及び手洗い洗浄剤)から大きな油滴の形態(50〜200ミクロン又はそれ以上)で送達されることが多い。
【0005】
例えばGlenn,Jr.の米国特許第5,584,293号及び第6,066,608号は、200ミクロンを超える直径を有する、少なくとも10%の親油性皮膚保湿剤液滴を含む保湿液パーソナルクレンジングエマルジョンを開示している。
【0006】
Restrepoらの米国特許第8,772,212号は、高レベルのペトロラタムを含有する等方性のクレンジング組成物を開示しており、ペトロラタム粒子の50体積%超が、50、100、150又は200ミクロンより大きい直径を有する。
【0007】
大きな油滴を含有する組成物は、(例えば安定剤を使用して)大きな液滴を懸濁させることができるように、十分に構造化する必要がある。例えば、米国特許第5,854,293号及び第6,066,608号は、結晶性、ヒドロキシル含有安定剤、ポリマー性増粘剤、C10〜C18ジエステル、非晶質シリカ又はスメクタイト粘土から選択される安定剤を利用する。このような組成物を調製するためには、典型的には特別なブレンド方法が必要である。例えば、組成物は、油滴のサイズ低減を防ぐために低剪断下で調製しなければならない(米国特許第8,772,212号を参照されたい)。これらの製品は、有益剤の送達は増強されるが、一般に、粒々の外観を生じ得る大きな油滴の存在ゆえに消費者にとって審美的にあまり魅力的ではないと見なされる。
【0008】
例えば、皮膚への有益剤(例えば、シリコーン)の送達を増強する別の方法は、例えば、JAGUAR(登録商標)C−13−Sの名称で販売されているグアーガムのヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウム誘導体などのカチオン性親水性ポリマーの使用によるものである(Helliwellの米国特許第5,500,152号を参照されたい)。この参考文献では、シリコーン油は油滴サイズ0.1〜1ミクロン(μm)の範囲、平均粒子サイズ0.4μmの予備形成エマルジョンである(これが液滴の数平均直径又は体積平均直径を指すかどうかは言及されていない)。この種の製品は、滑らかで審美的に魅力的な傾向がある。しかしながら、栄養を与える植物油(トリグリセリド油)及びペトロラタムのような高度に閉塞性(occlusive)の皮膚保護剤は、典型的には、クレンジング組成物由来の好ましい保湿剤である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許第5,584,293号
【特許文献2】米国特許第6,066,608号
【特許文献3】米国特許第8,772,212号
【特許文献4】米国特許第5,500,152号
【特許文献5】米国特許第8,834,903号
【特許文献6】米国特許第6,541,018号
【特許文献7】米国特許出願公開第2003/0012759号A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
保湿性油が豊富なクレンジング組成物が直面する1つの課題は、大量のオイルが泡立ちの速度及び体積を低下させる傾向があることである。
【0011】
したがって、審美的に魅力的であり、これらの保湿性油の沈着が高く、高い泡立ち性能を維持する、トリグリセリド油及び/又はペトロラタムナノエマルジョンからなるパーソナルクレンジング組成物を調製することが望ましい。
【0012】
本発明において、本出願人らは、トリグリセリド油及びペトロラタムを、体積平均直径が小さい(100〜600ナノメートル、特に50〜575、さらには20〜400ナノメートル)液滴として送達するためのナノエマルジョン(それ自体が新規)の新規な製造方法を提供する。この方法は、エネルギー節約、生産融通性の向上、設備の初期資本投資の大幅な低減、設備保守要件の低減、運転中の停止時間の短縮、及び運転安全性の向上を実現する低圧を使用する。
【0013】
2つの同時係属出願において、出願人らはナノエマルジョンを特許請求している。一方の出願では、内部油相に脂肪酸を使用する必要はない。他方の出願では、そのような脂肪酸が必要である。脂肪酸の添加は、本主題の低圧法にも必要である。
【0014】
本発明の方法により製造されるナノエマルジョンは、(1)トリグリセリド油、ペトロラタム及びそれらの混合物からなる群から選択される有益剤液滴と、C〜C18脂肪酸共乳化剤とを含有する油相;並びに(2)ジカルボキシアミノ酸のN−アシル誘導体の塩、モノカルボン酸のN−アシル誘導体の塩又はこのような塩の混合物である1又は複数種の界面活性剤(主乳化剤)、特に、(a)規定されたN−アシル基を有する、アシルグルタマート塩、アシルアスパルテート塩、アシルグリシナート塩、アシルアラニナート塩、又は(b)これらの塩の任意の混合物から選択することができる界面活性剤を含む水相、を含む。
【0015】
アミノ酸(アスパラギン酸、グルタミン酸、グリシン及びアラニン)の特定のN−アシル誘導体は、典型的には、ナノエマルジョン(nanoemulson)組成物の水相に存在する全ての界面活性剤の50%以上、好ましくは60%以上、より好ましくは70%以上を構成する。
【0016】
Simonnetらの米国特許第8,834,903号及び米国特許第6,541,018号は両方とも、界面活性剤候補としてアシルグルタミン酸塩を挙げるナノエマルジョン組成物を開示している(例えば、米国特許第8,834,903号、第4欄第27〜31行)。本発明の特定のエマルジョンを製造する方法は開示されていない。低圧プロセスを利用する場合であっても、小液滴を確実に形成するためのC〜C18脂肪酸の必要性の認識が存在しない。
【0017】
ボーエン・リーバー(Bowen−Leaver)の米国特許出願公開第2003/0012759号A1は、約10,000〜20,000psiの高圧装置を使用し、複数パスでナノエマルジョンを調製することを教示している(第3頁の[0021])。該出願は、実施例1においてアニオン性界面活性剤(ステアロイルグルタミン酸ナトリウム)、非イオン性界面活性剤(ステアリン酸グリセリル/ステアリン酸PEG−100)及びステアリン酸からなる乳化剤系を開示している。脂肪酸は、油相中の共乳化剤としてステアリン酸グリセリル/ステアリン酸PEG−100と共に使用される。ナノエマルジョンの生産効率を改善するために、アシルグルタミン酸塩(アニオン性界面活性剤)と脂肪酸とを乳化剤として組み合わせることの重要性(criticality)については言及されていない。本出願において、ステアリン酸グリセリル及びステアリン酸PEG−100のような非イオン性乳化剤は、ナノエマルジョンを調製するための乳化剤系に含まれていない。アシルグルタミン酸塩と脂肪酸との組合せは、予想外に、他の非イオン性界面活性剤を一切有さずに、ペトロラタムナノエマルジョンの液滴サイズをわずか1回のパス後及び450psi以下において300nm未満に低下させることが判明した。脂肪酸の使用に基づくこのようなプロセス効率は、完全に予測不可能である。
【課題を解決するための手段】
【0018】
具体的には、本発明は、
a)(i)トリグリセリド油、融点が30〜60℃のペトロラタム及びそれらの混合物からなる群から選択される、総ナノエマルジョンの40〜75重量%の油と、(ii)ナノエマルジョンの1.1〜8%、好ましくは1.2〜6%のC〜C18、好ましくはC10〜C14の脂肪酸(例えば、C12ラウリン酸)とを含む内部油相、並びに
b)総ナノエマルジョンの1〜15重量%(活性成分として)の、アミノ酸のN−アシル誘導体である1又は複数種の界面活性剤、好ましくは、
(i)アシル基の65%超(例えば、65〜100%、好ましくは65〜90%)がC14以下の鎖長を有する、ジ−カルボキシアミノ酸(例えば、アシルグルタミン酸又はアシルアスパラギン酸)のN−アシル誘導体の塩;
(ii)アシル基の65%超(例えば、65〜100%、好ましくは65〜90%)がC14以下の鎖長を有する、モノ−カルボキシアミノ酸のN−アシル誘導体の塩(例えば、アシルグリシナート又はアシルアラニナート);及び
(iii)それらの混合物;
からなる群から選択される1又は複数種の界面活性剤を含む外部水相
を含み、
(b)の界面活性剤が、ナノエマルジョンの水相中に存在する全ての界面活性剤の50%以上、好ましくは60%以上、好ましくは70%以上、好ましくは75〜100%を構成し、
(a)の油滴の体積平均直径が20〜600ナノメートルである、
エマルジョンの製造方法であって、
1)成分(a)(ii)のC〜C18脂肪酸を(a)(i)の油に添加する工程;
2)油相(a)を、完全に溶融され、1つの透明で均質な液体になることが確実な十分な温度に加熱する工程;
を含む製造方法に関する。実際には、これは、油相を、脂肪酸及びペトロラタムを含む混合物の全ての成分の融点よりも高い温度に加熱することを意味する。全ての成分の融点は、標準示差熱量測定法によって測定することができる。本発明の油相成分では、これは、典型的には、油相を45〜75℃の温度範囲に加熱することを意味し、並びに
3)水相を45〜75℃の温度範囲に加熱する工程、
4)500ポンド/平方インチ(psi)以下のプロセス圧力を用いて、ソノレータ又はホモジナイザーを介して加熱された水相及び油相を同時にポンプ輸送する工程;
を含む。
【0019】
好ましくは、このような低圧処理を使用して確実に所望のサイズの粒子を得るためには、溶融油相中にナノエマルジョンに対して最小1.2重量%〜1.3重量%又は1.5重量%の脂肪酸が必要とされる。
【0020】
油相に共乳化剤として脂肪酸を添加することにより、本発明のナノエマルジョンは、典型的には、600以下、又は575以下、又は500以下、又は100〜600、又は50〜575の液滴体積平均直径を有することになる。下限は、20又は50又は100又は125又は150又は175とすることができる。上限は、300又は400又は500又は575又は600とすることができる。
【0021】
本発明のナノエマルジョンは、典型的には、上記のように油相(これに脂肪酸が添加されている)と水相とを、500psi以下の圧力において操作するホモジナイザー又はソノレータを用いて混合することによって調製される。同じ成分を使用するが、油相中の共乳化剤としてC〜C18脂肪酸を使用しない場合、この方法は粗エマルジョンを形成するに過ぎず、次いで第2段階において同じ液滴サイズを有する完成したナノエマルジョンを達成するための均質化を、非常に高い圧力(5000psiまで)で実施する必要がある。
【発明を実施するための形態】
【0022】
実施例を除いて、又は他に明示されている場合を除いて、材料の量又は反応の条件、材料及び/又は使用の物理的特性を示す説明における全ての数字は、「約」という用語によって修飾されると理解されるべきである。全ての量は、特に断らない限り、最終組成物の重量による。
【0023】
任意の範囲の濃度又は量を指定する際には、任意の特定の上限濃度を任意の特定のより低い濃度又は量と関連付けることができることに留意すべきである。
【0024】
疑念を避けるために、「含む(comprising)」という用語は、「含む(including)」を意味することを意図しているが、必ずしも「からなる(consisting of)」又は「から構成される(composed of)」という意味を意図してはいない。言い換えれば、列挙されたステップ又は選択肢は必ずしも網羅的ではない。
【0025】
本明細書に見られるような本発明の開示は、請求項が複数の依存性又は冗長性なしに見出され得るという事実とは無関係に、相互に複数依存するものとして請求項に見出される全ての実施形態をカバーすると考えられるべきである。
【0026】
本発明は、油及び界面活性剤の特定の選択を含む、ナノエマルジョンを製造するための新規な方法を提供する。ナノエマルジョンは、500psi以下のプロセス圧力を用いて調製することができる。新規ナノエマルジョンは、液体洗浄組成物、例えば構造化(例えば、ミセル又はラメラにより構造化)液体洗浄組成物における使用に理想的に適している。
【0027】
本発明のナノエマルジョンを、以下により詳細に定義する。
【0028】
油相
ナノエマルジョンの油相中の油は、1もしくは複数種のトリグリセリド油(動物油及び/又は植物油)、ペトロラタム、又は1もしくは複数種のトリグリセリド油の混合物であってよい。
【0029】
使用できるトリグリセリド油の例としては、例えば、大豆油、ヒマワリ種子油、ヤシ油、菜種油、パーム油、パーム核油、ブドウ種子油、魚油が挙げられる。大豆油及びヒマワリ種子油が好ましいトリグリセリドである。
【0030】
油相中の油はペトロラタムであってもよい。ペトロラタムは、好ましくは30℃〜約60℃の範囲の融点を有する。このようなペトロラタム油の例としては、Unilever社のVaseline(登録商標)Petrolatum Jelly、Calumet Penreco社のWHITE PETROLATUM USP、Sonneborn社のPetrolatum G2212及びWhite Protopet(登録商標)1Sが挙げられる。
【0031】
油は、総ナノエマルジョン組成物の40重量%〜75重量%の範囲であり得る。トリグリセリド油又はペトロラタム液滴の好ましい体積平均直径は、100〜600nm、好ましくは50〜575nm、より好ましくは20〜400である。下限は、20又は50又は100又は125又は150nmとすることができ、上限は250又は300又は400又は500又は575又は600nmとすることができる。
【0032】
トリグリセリド油及びペトロラタムの選択は、本発明のナノエマルジョンが組み込まれた完全に配合されたクレンジング組成物で皮膚が洗浄された後に、トリグリセリド油及び/又はペトロラタムが皮膚に沈着するとき、皮膚へのエモリエント性及び閉塞性を与えるのに役立つ。
【0033】
トリグリセリド油(1又は複数種)及び/又はペトロラタムに加えて、油相は、例えばビタミンA、ビタミンE、サンスクリーン、香料、パルミチン酸レチノール、12−ヒドロキシステアリン酸、共役リノール酸などの油溶性皮膚有益活性成分;抗菌剤;蚊の忌避剤などを、0.01〜5%のレベルで含むことができる。
【0034】
油相中に見出され得る別の成分は、油相安定剤である。例えば、少量(ナノエマルジョンの0.01〜2重量%、好ましくは0.1〜1重量%)の酸化防止剤を使用することができる。使用される油がトリグリセリドである場合、使用され得る好ましい酸化防止剤はブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)である。これは多くの場合食品用酸化防止剤として使用される。
【0035】
総ナノエマルジョンの1.0重量%〜8重量%、好ましくは1.1重量%〜8重量%、より好ましくは1.2重量%〜6重量%はC〜C18、好ましくはC10〜C14脂肪酸で構成される。脂肪酸の例は、ラウリン酸、ミリスチン酸、ヤシ脂肪酸及びそれらの混合物である。この共乳化剤は、低圧を確実に使用可能にするために必要であり、600nm以下の液滴を生成する。例えば、油相は、ナノエマルジョンの40〜70重量%の範囲のペトロラタムと、ナノエマルジョンの1.1〜8重量%のラウリン酸とを含有することができる。
【0036】
脂肪酸は、好ましくは、ナノエマルジョンの1.2重量%のレベル、又は1.3%又は1.5%又は2.0%又は2.5又は3.0%又は3.5%又は4.0%のレベルで存在し、好ましい範囲は1.5〜5.0%又は2.0〜4.0%又は2.5〜4.0%である。
【0037】
水相
水相は、主乳化剤としてアミノ酸のN−アシル誘導体の塩を含有する(ナノエマルジョンの水相中に存在する全ての界面活性剤の50%以上、好ましくは60%以上)。好ましい乳化剤は、アシルグルタマート、アシルアスパルテート、アシルグリシナート及びアシルアラニナート界面活性剤である。好ましくは、これらは、アシルグルタマート、又はアシルアスパルテート、又はアシルグリシナート及び又はアシルアラニナートのカリウム塩及び/又はナトリウム塩であり、アシル鎖の65%超が鎖長C14以下、例えばC〜C14(例えばヤシ脂肪酸由来)を有する。アシル鎖の好ましくは75%超、より好ましくは80%超がC14以下の鎖長を有する。好ましくは、鎖長の75%超、最も好ましくは80%超がC12、C14又はそれらの混合物である。これらの(例えば長鎖C16及びC18と比較して)主に短鎖アシル基は、本発明のナノエマルジョンが完全に配合された液体クレンジング組成物(特に構造化液体クレンジング組成物)に組み込まれた場合、発泡能力の維持又は向上を助ける。
【0038】
2つの形態の市販のアミノ酸界面活性剤がある。1つは、典型的にはより高価で高純度の粉末又はフレーク形態である。固体ジカルボキシアミノ酸界面活性剤の例としては、
・N−ココイル−L−グルタミン酸ナトリウム(例えば、Amisoft(登録商標)CS−11、味の素(株))
・N−ラウロイル−L−グルタミン酸ナトリウム(例えば、Amisoft(登録商標)LS−11、味の素(株))
・N−ミリストイル−L−グルタミン酸ナトリウム(Amisoft(登録商標)MS−11、味の素(株))
・N−ココアシル−l−グルタミン酸カリウム(例えば、Amisoft(登録商標)CK−11、味の素(株))
・N−ミリストイル−L−グルタミン酸カリウム(Amisoft(登録商標)MK−11、味の素(株))
・N−ラウロイル−L−グルタミン酸カリウム(Amisoft(登録商標)LK−11、味の素(株))
・ラウロイルアスパラギン酸ナトリウム(AminoFoamer(商標)FLMS−P1、旭化成ケミカルズ(株))
・ラウロイルグルタミン酸ナトリウム(Aminosurfact(商標)ALMS−P1/S1、旭化成ケミカルズ(株))
・ミリストイルグルタミン酸ナトリウム(Aminosurfact(商標)AMMS−P1/S1、旭化成ケミカルズ(株)
が挙げられる。
【0039】
固体モノカルボキシアミノ酸界面活性剤の例としては、
・ココイルグリシナートナトリウム(例えば、Amilite(登録商標)GCS−11、味の素(株))
・ココイルグリシナートカリウム(例えば、Amisoft(登録商標)GCK−11、味の素(株))
が挙げられる。
【0040】
上記のアミノ酸界面活性剤(粉末形態であり、生産設備(plant production)において取り扱いが容易ではない)に加えて、共乳化剤として脂肪酸を使用すると、通常安価であるが、pHが高く無機塩が多い液体形態のアミノ酸界面活性剤の使用が可能になる。工業用液体アミノ酸界面活性剤と併せて共乳化剤として脂肪酸、特にラウリン酸を使用すると、安定したエマルジョンが形成され、より小さな油滴が効率的に形成され、非常に優れたナノエマルジョンが形成された。500psi以下のプロセス圧力を使用して、600nm未満の油滴サイズが生成された。
【0041】
液体アミノ酸界面活性剤は、典型的には、20〜35%の界面活性成分を含有し、pHが高く、無機塩が多い(例えば、3〜6%のNaCl)。例としては、
・AMISOFT(登録商標)ECS−22SB:ココイルグルタミン酸二ナトリウム(30%水溶液)
・AMISOFT(登録商標)CS−22:ココイルグルタミン酸二ナトリウム ココイルグルタミン酸ナトリウム(25%水溶液)
・AMISOFT(登録商標)CK−22:ココイルグルタミン酸カリウム(30%水溶液)
・AMISOFT(登録商標)LT−12:TEA−ラウロイルグルタミン酸(30%水溶液)
・AMISOFT(登録商標)CT−12 TEA−ココイルグルタミン酸(30%水溶液)
・AMILITE(登録商標)ACT−12:TEA−ココイルアラニナート(30%水溶液)
・AMILITE(登録商標)ACS−12:ココイルアラニナートナトリウム(30%水溶液)
・AMILITE(登録商標)GCK−12/GCK−12K:ココイルグリシナートカリウム(30%水溶液)
・Aminosurfact(商標)ACDS−L:ココイルグルタミン酸ナトリウム(25%水溶液)
・Aminosurfact(商標)ACDP−L:ココイルグルタミン酸カリウム(22%)+ココイルグルタミン酸ナトリウム(7%)
・Aminosurfact(商標)ACMT−L:TEA−ココイルグルタミン酸(30%水溶液)
・AminoFoamer(商標)FLDS−L:ラウロイルアスパラギン酸ナトリウム(25%水溶液)
が挙げられる。
【0042】
味の素(株)のAmisoft及びAmilite、旭化成ケミカルズ(株)のAminosurfact(商標)及びAminoFoamer(商標)に加えて、液体アミノ酸界面活性剤の他の供給業者としては、Clariant(例えば、Hostapon SG ココイルグリシナートナトリウム)、Solvay(例えば、Geropon(登録商標)PCG ココイルグルタミン酸カリウム水溶液;Gerapon(登録商標)LG 3S ラウリルグリシナートナトリウム及びグリセリン)、Galaxy(Galsoft(登録商標)KCGL ココイルグルタミン酸カリウム水溶液;GalSoft(登録商標)SCG+ココイルグリシナートナトリウム、活性成分20%)及びSino Lion(Eversoft(登録商標)USK−30K ココイルグルタミン酸カリウム水溶液;Eversoft(登録商標)YCS−30S ココイルグリシナートナトリウム)が挙げられる。
【0043】
さらに、他のマイルドなクレンジング界面活性剤を水相に使用することができる。使用可能なアニオン性界面活性剤としては、ココイルイセチオン酸ナトリウム、ラウロイルイセチオン酸ナトリウム、並びに他のアミノ酸系界面活性剤、例えば、ラウロイルサルコシンナトリウム、ココイルサルコシンナトリウムが挙げられる。両性物質、例えば、ココベタイン、コカミドプロピルベタイン、ラウロアンホ酢酸ナトリウム、ラウラミドプロピルヒドロキシスルタイン及びコカミドプロピルヒドロキシスルタインも使用することができる。これらの共界面活性剤は、典型的には、ナノエマルジョンの水相中の総界面活性剤の50%以下、好ましくは40%以下、好ましくは30%以下のレベルで存在する。
【0044】
水相中の総界面活性剤は、総ナノエマルジョンの1〜15重量%、好ましくは4〜12重量%を構成する。上記のように、アミノ酸のN−アシル誘導体の塩、好ましくはアシルグルタマート、アシルアスパルテート、アシルアシルグリシナート、アシルアラニナート又はそれらの混合物は、本ナノエマルジョンの主界面活性剤である。それらは、水相中の全ての界面活性剤の50%以上、好ましくは60%以上を構成する。好ましくは、それらは70%以上、より好ましくは75%以上を構成する。当然ながら、それらは存在する唯一の界面活性剤であってもよい。
【0045】
好ましくは、水相は、1又は複数種の防腐剤を含有することができる。典型的には、防腐剤は0.01〜1.0重量%、好ましくは0.1〜0.5重量%のレベルで存在する。
【0046】
本発明のナノエマルジョンは、600nm以下、好ましくは50nm〜575nm、より好ましくは100〜400nmの体積平均(average)直径(体積平均(mean)直径又は「体積平均サイズ」という用語でも互換的に使用される)を有する。上限及び下限は、先に定義した通りであってよい。
【0047】
これらの範囲の液滴サイズを有するナノエマルジョンは、ホモジナイザー又はソノレータにおいて低圧(500psi以下)流を用いて、本発明において得られる。具体的には、圧力/1平方インチ(psi)は、上方範囲500又は450又は400psi及び下方範囲250又は300又は350psiとすることができる。好ましい範囲は300〜400psiである。
【0048】
ナノエマルジョンの調製
ナノエマルジョンは以下のように形成される。
【0049】
第1に、脂肪酸(例えば、ナノエマルジョンの1.1〜5重量%)を確実に油に添加することが重要である。油相及び水相を、透明で均質になるように75℃まで別々に加熱して、続いて500psi以下の圧力で水相と油相をソノレータ又はホモジナイザーを介して同時にポンプ輸送した。本発明におけるナノエマルジョン形成には、500psiより高い圧力は必要とされない。エマルジョンは、低圧(500psi以下)で操作するホモジナイザーを使用することによって作製することができる。1つの例は、Sonic Corporation、Connecticut州によって製造された標準の標準的なSonolator装置であり、例えば、これらの標準的なソノレータは、通常、エマルジョンを形成するために200〜500psiの圧力で操作される。
【0050】
実施例において、以下の用語は下記のように定義される:
D[4,3]:体積平均直径(volume average diameter又はvolume mean diameter)又は体積平均サイズ
平均直径はMalvern Mastersizerによって決定される。
【0051】
比較例A及び実施例1〜6:50〜55%のペトロラタムを使用し、主乳化剤として活性物質4〜8.2%の液体形態のココイルグルタミン酸カリウム又はココイルグリシナートナトリウムのいずれか及び、共乳化剤として1〜4%の範囲のラウリン酸を用いてナノエマルジョンを形成した。エマルジョンを、450psiまでの圧力において60〜75℃の溶融油相及び水相を同時に低圧ソノレータのオリフィスを通してポンプ輸送する低圧ソノレータによって調製し、エマルジョンを形成した。
【0052】
実施例1〜6を参照されたい
【表1】
【0053】
実施例1から6から分かるように、C〜C18脂肪酸(例えば、ラウリン酸)を1.0%より多く使用すると、低圧プロセスを使用しながら600nm未満の液滴サイズを得ることが可能になる。
【0054】
小さな液滴の効率的な製造は、界面活性剤の総量の関数ではなく、むしろ界面活性剤のタイプ及び相互作用の関数であると考えられる。これは、実施例1と実施例4との比較から分かる。アニオン性グルタミン酸塩とより多量の脂肪酸との相互作用のため、実施例1では総界面活性成分がほぼ等量であるが(10.2%、これに対して実施例4では10%)、実施例4でのペトロラタムの液滴サイズが279nmであるのに対して、実施例1では514nmである。