【実施例】
【0033】
<2.実施例>
以下、本発明の実施例について説明する。本実施例では、ガラス基板と、所定高さの配線を有するFPC(Flexible Printed Circuits)とを、平均粒径10μmの導電性粒子を含有する異方性導電フィルム(ACF)を用いて圧着した。そして、接続構造体の回路部材間の距離の測定、粒子潰れの評価、粒子溜りの評価、絶縁性の評価、及び導電性の評価を行った。なお、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。
【0034】
[評価用の回路部材]
第1の回路部材として、0.7mm厚みのITOベタガラスを(15mm×80mm)を300μmピッチ(L/S=1/1)でパターニングしたITOガラス基板を準備した。また、第2の回路部材として、300μmピッチ(L/S=1/1)の所定高さ(4,5,8,12,18,25μm)の配線を有し、接続部の端部にカバーレイを有するFPCを準備した。なお、ITO配線の高さは、0.1μm未満と薄いため、合計の配線高さに含めなかった。
【0035】
[ACFの作製]
表1に示すように、フェノキシ樹脂を30質量部、2官能アクリレートを30質量部、ウレタンアクリレートを20質量部、リン酸エステル型アクリレートを2質量部、導電性粒子を2質量部、ラジカル発生剤A(パーロイルL)を6質量部配合し、DSC(Differential Scanning Calorimetry)で測定した反応開始温度が80℃である組成物1を作製した。
【0036】
表1に示すように、組成物1のラジカル発生剤A(パーロイルL)の代わりに、ラジカル発生剤B(パーヘキサ250)を6質量部配合し、DSCで測定した反応開始温度が100℃である組成物2を作製した。
【0037】
表1に示すように、組成物1のラジカル発生剤A(パーロイルL)の代わりに、ラジカル発生剤C(ナイパーBW)を6質量部配合し、DSCで測定した反応開始温度が110℃である組成物3を作製した。
【0038】
表1に示すように、フェノキシ樹脂を30質量部、液状エポキシ化合物を18質量部、エポキシ用硬化剤(ノバキュア3941HP)を40質量部、シランカップリング剤を2質量部、導電性粒子を2質量部配合し、DSCで測定した反応開始温度が90℃である組成物4を作製した。
【0039】
ACFの厚みは、配線間から流れるACF量をFPCの配線高さから計算し、各FPCで配線間から流れるACF量が同じになるように算出した。ACFの厚みの計算値は、14μm〜22μmの範囲であった。
【0040】
【表1】
【0041】
[接続構造体の作製]
2mm幅の異方性導電フィルムを、ITOガラス基板に貼り付け、その上にFPCを仮固定した後、緩衝材として厚みが200μmのシリコンラバーを使用し、圧着ヘッドにてFPCのカバーレイを踏むように圧着して接続構造体を作製した。すなわち、導電性粒子がカバーレイ部分に溜まり易く、粒子凝集が起こり易いように圧着した。
【0042】
組成物1〜3の異方性導電フィルムを使用した場合の圧着条件は、150℃−5MPa−10秒とし、組成物4の異方性導電フィルムを使用した場合の圧着条件は、180℃−3MPa−10秒とした。
【0043】
[回路部材間の距離]
図4に示すように、第1の回路部材と第2の回路部材とのスペース部の距離Dについて、接続構造体の接続部の断面をSEM(Scanning Electron Microscope)観察して測定した。
【0044】
[粒子潰れの評価]
接続構造体の接続部をFPC側から光学顕微鏡を用いて第1の回路部材と第2の回路部材とのスペース部の100個の導電性粒子を観察し、粒子径の10%以上潰れた導電性粒子をカウントした。粒子潰れの評価は、次の基準により行った。
◎:潰れた導電性粒子が50個以上
○:潰れた導電性粒子が20個以上50個未満
△:潰れた導電性粒子が1個以上20個未満
×:潰れた導電性粒子が0個
【0045】
[粒子溜りの評価]
接続構造体の接続部をFPC側から光学顕微鏡により観察し、カバーレイ部分の導電性粒子の凝集状態を目視した。粒子溜りの評価は、次の基準により行った。
◎:粒子凝集が観察されない。
○:粒子凝集が観察され、連結した導電性粒子が5個以下の凝集が1箇所以上存在する。
△:粒子凝集が観察され、連結した導電性粒子が6個〜14個の凝集が1箇所以上存在する。
×:粒子凝集が観察され、連結した導電性粒子が15個以上の凝集が1箇所以上存在する。
【0046】
[絶縁性の評価]
接続構造体に30Vの電圧を印加し(2端子法)、15箇所の配線間(スペース部)の絶縁抵抗を測定し、ショートの発生回数をカウントした。絶縁性の評価は、次の基準により行った。
○:ショートの発生箇所が0箇所
×:ショートの発生箇所が1箇所以上
【0047】
[導通性の評価]
デジタルマルチメーターを用いて、4端子法にて接合構造体の抵抗値を測定した。導通性の評価は、次の基準により行った。
◎:0.5Ω未満
○:0.5Ω以上、1.0Ω未満
×:1.0Ω以上
【0048】
<比較例1>
表2に示すように、第2の回路部材として配線高さが25μmのFCPを使用し、異方性導電フィルムとして反応開始温度が110℃である組成物3を使用した。すなわち、導電性粒子の平均粒子径に対する配線高さの比の値は2.5であった。異方性導電フィルムを用いて第1の回路部材と第2の回路部材とを、反応開始温度より40℃高い150℃の温度で圧着させ、接続構造体を得た。第1の回路部材と第2の回路部材とのスペース部の距離は18.3μmであった。また、スペース部での粒子潰れの評価は×、カバーレイ部分での粒子溜りの評価は×、絶縁性の評価は×、導通性の評価は○であった。
【0049】
<比較例2>
表2に示すように、第2の回路部材として配線高さが4μmのFCPを使用し、異方性導電フィルムとして反応開始温度が110℃である組成物3を使用した。すなわち、導電性粒子の平均粒子径に対する配線高さの比の値は0.4であった。異方性導電フィルムを用いて第1の回路部材と第2の回路部材とを、反応開始温度より40℃高い150℃の温度で圧着させ、接続構造体を得た。第1の回路部材と第2の回路部材とのスペース部の距離は8.3μmであった。また、スペース部での粒子潰れの評価は◎、カバーレイ部分での粒子溜りの評価は◎、絶縁性の評価は○、導通性の評価は×であった。
【0050】
<実施例1>
表2に示すように、第2の回路部材として配線高さが18μmのFCPを使用し、異方性導電フィルムとして反応開始温度が110℃である組成物3を使用した。すなわち、導電性粒子の平均粒子径に対する配線高さの比の値は1.8であった。異方性導電フィルムを用いて第1の回路部材と第2の回路部材とを、反応開始温度より40℃高い150℃の温度で圧着させ、接続構造体を得た。第1の回路部材と第2の回路部材とのスペース部の距離は11.7μmであった。また、スペース部での粒子潰れの評価は△、カバーレイ部分での粒子溜りの評価は△、絶縁性の評価は○、導通性の評価は○であった。
【0051】
<実施例2>
表2に示すように、第2の回路部材として配線高さが12μmのFCPを使用し、異方性導電フィルムとして反応開始温度が110℃である組成物3を使用した。すなわち、導電性粒子の平均粒子径に対する配線高さの比の値は1.2であった。異方性導電フィルムを用いて第1の回路部材と第2の回路部材とを、反応開始温度より40℃高い150℃の温度で圧着させ、接続構造体を得た。第1の回路部材と第2の回路部材とのスペース部の距離は7.8μmであった。また、スペース部での粒子潰れの評価は○、カバーレイ部分での粒子溜りの評価は○、絶縁性の評価は○、導通性の評価は○であった。
【0052】
<実施例3>
表2に示すように、第2の回路部材として配線高さが5μmのFCPを使用し、異方性導電フィルムとして反応開始温度が110℃である組成物3を使用した。すなわち、導電性粒子の平均粒子径に対する配線高さの比の値は0.5であった。異方性導電フィルムを用いて第1の回路部材と第2の回路部材とを、反応開始温度より40℃高い150℃の温度で圧着させ、接続構造体を得た。第1の回路部材と第2の回路部材とのスペース部の距離は7.8μmであった。また、スペース部での粒子潰れの評価は◎、カバーレイ部分での粒子溜りの評価は◎、絶縁性の評価は○、導通性の評価は△であった。
【0053】
<実施例4>
表2に示すように、第2の回路部材として配線高さが8μmのFCPを使用し、異方性導電フィルムとして反応開始温度が110℃である組成物3を使用した。すなわち、導電性粒子の平均粒子径に対する配線高さの比の値は0.8であった。異方性導電フィルムを用いて第1の回路部材と第2の回路部材とを、反応開始温度より40℃高い150℃の温度で圧着させ、接続構造体を得た。第1の回路部材と第2の回路部材とのスペース部の距離は5.2μmであった。また、スペース部での粒子潰れの評価は◎、カバーレイ部分での粒子溜りの評価は○、絶縁性の評価は○、導通性の評価は○であった。
【0054】
<実施例5>
表2に示すように、第2の回路部材として配線高さが18μmのFCPを使用し、異方性導電フィルムとして反応開始温度が100℃である組成物2を使用した。すなわち、導電性粒子の平均粒子径に対する配線高さの比の値は1.8であった。異方性導電フィルムを用いて第1の回路部材と第2の回路部材とを、反応開始温度より50℃高い150℃の温度で圧着させ、接続構造体を得た。第1の回路部材と第2の回路部材とのスペース部の距離は12.1μmであった。また、スペース部での粒子潰れの評価は○、カバーレイ部分での粒子溜りの評価は○、絶縁性の評価は○、導通性の評価は○であった。
【0055】
<実施例6>
表2に示すように、第2の回路部材として配線高さが18μmのFCPを使用し、異方性導電フィルムとして反応開始温度が80℃である組成物1を使用した。すなわち、導電性粒子の平均粒子径に対する配線高さの比の値は1.8であった。異方性導電フィルムを用いて第1の回路部材と第2の回路部材とを、反応開始温度より70℃高い150℃の温度で圧着させ、接続構造体を得た。第1の回路部材と第2の回路部材とのスペース部の距離は12.6μmであった。また、スペース部での粒子潰れの評価は○、カバーレイ部分での粒子溜りの評価は◎、絶縁性の評価は○、導通性の評価は○であった。
【0056】
<実施例7>
表2に示すように、第2の回路部材として配線高さが8μmのFCPを使用し、異方性導電フィルムとして反応開始温度が80℃である組成物1を使用した。すなわち、導電性粒子の平均粒子径に対する配線高さの比の値は0.8であった。異方性導電フィルムを用いて第1の回路部材と第2の回路部材とを、反応開始温度より70℃高い150℃の温度で圧着させ、接続構造体を得た。第1の回路部材と第2の回路部材とのスペース部の距離は5.4μmであった。また、スペース部での粒子潰れの評価は◎、カバーレイ部分での粒子溜りの評価は◎、絶縁性の評価は○、導通性の評価は○であった。
【0057】
<実施例8>
表2に示すように、第2の回路部材として配線高さが8μmのFCPを使用し、異方性導電フィルムとして反応開始温度が90℃である組成物4を使用した。すなわち、導電性粒子の平均粒子径に対する配線高さの比の値は0.8であった。異方性導電フィルムを用いて第1の回路部材と第2の回路部材とを、反応開始温度より90℃高い180℃の温度で圧着させ、接続構造体を得た。第1の回路部材と第2の回路部材とのスペース部の距離は4.9μmであった。また、スペース部での粒子潰れの評価は◎、カバーレイ部分での粒子溜りの評価は◎、絶縁性の評価は○、導通性の評価は○であった。
【0058】
【表2】
【0059】
比較例1のように、端子の合計高さが、導電性粒子の平均粒子径の2.5倍と大きい場合、スペース部での粒子潰れが無く、粒子溜りが発生し、絶縁性の評価が不良であった。また、比較例2のように、端子の合計高さが、導電性粒子の平均粒子径の0.4倍と小さい場合、ライン部で端子上の導電性粒子を潰す圧力が分散され、押し込み不足が生じるため、導通性の評価が不良であった。
【0060】
一方、実施例1〜8のように、端子の合計高さが、導電性粒子の平均粒子径の0.5倍以上1.8倍以下である場合、スペース部で導電性粒子が潰れ、良好な絶縁性及び導通性が得られた。また、実施例1,2,4〜8のように、回路部材間のスペース部の距離が、端子の合計高さよりも小さいことにより、優れた導通性が得られた。また、実施例4,7,8のように、導電性粒子の平均粒子径に対する回路部材間のスペース部の距離の比の値が、0.6以下であることにより、スペース部で導電性粒子が潰れる割合が大きくなり、より良好な絶縁性及び導通性が得られた。また、実施例6〜8のように、圧着温度が異方性導電フィルムのDSCで測定した発熱開始温度よりも70℃以上高いことにより、ペース部分で導電性粒子が潰れる割合が大きくなり、粒子溜りの発生を抑制することができた。