(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の実施形態を説明する。熱中性子吸収材としては、熱中性子を吸収する作用を奏する公知の材料を適宜用いることができる。熱中性子吸収材としては、例えば、ガドリニウム化合物粒子、ホウ素化合物粒子等が挙げられる。ガドリニウム化合物粒子としては、例えば、酸化ガドリニウム粒子が挙げられ、ホウ素化合物粒子としては、例えば、炭化ホウ素粒子が挙げられる。
【0014】
熱中性子吸収材は、耐アルカリ性の特性を有することが好ましい。耐アルカリ性の特性を有すれば、臨界防止被覆材がアルカリ成分を含む場合でも、そのアルカリ成分によって熱中性子吸収材が分解されてしまうことを抑制できる。
臨界防止被覆材中における熱中性子吸収材の含有量は特に限定されず、目的や施工状況等に応じて調整することができる。
【0015】
アルカリ金属ケイ酸塩はシリカを主成分とするため、アルカリ金属ケイ酸塩を配合することで臨界防止被覆材の耐熱性、耐照射性、及び耐酸性が向上する。アルカリ金属ケイ酸塩は、下記の一般式(1)で表される化合物である。ここで、Rはアルカリ金属であり、nはモル比であって、0.5〜7.5の実数である。
【0016】
一般式(1):R
2O・nSiO
2
アルカリ金属ケイ酸塩の種類は特に限定されないが、上記モル比nが3.0以上であるものが好ましい。この場合、硬化開始時間を短く(例えば60分間以内に)することができる。
【0017】
モル比nが0.5〜7.5程度のアルカリ金属ケイ酸塩は市販されており、アルカリ金属ケイ酸塩として、当該市販品をそのまま使用することができる。また、当該市販品にシリカ源を溶解したものを、アルカリ金属ケイ酸塩として使用することができる。シリカ源としては、例えば、微粉末のシリカゲル、沈降性シリカ、ヒュームドシリカ、シリカコロイド溶液等が挙げられる。また、所定のモル比nとなるように、アルカリ金属とシリカ源とを反応させたものを、アルカリ金属ケイ酸塩として使用することもできる。
【0018】
アルカリ金属ケイ酸塩としては、例えば、液状の剤型を有するものを使用することができる。また、目的に応じて、例えば粉末状のものを使用することもできる。アルカリ金属ケイ塩の種類やモル比n等により、臨界防止被覆材の硬化開始時間を調整することができる。
【0019】
ケイフッ化ナトリウム、第一リン酸アルミニウム、及びポリリン酸アルミニウムから成る群から選ばれる1種以上の含有量は、熱中性子吸収材の含有量を100重量部としたとき、1〜30重量部の範囲が好ましい。この範囲内であることにより、臨界防止被覆材(臨界防止被覆層)の溶融炉心に対する付着力、及び熱中性子の吸収効果が一層高い。
【0020】
ケイフッ化ナトリウム、第一リン酸アルミニウム、及びポリリン酸アルミニウムは、ア
ルカリ金属ケイ酸塩を短時間で硬化させ、耐熱水性を付与する作用を奏する。
ケイフッ化ナトリウム、第一リン酸アルミニウム、及びポリリン酸アルミニウムのうちのいずれを用いるか、及びそれらの含有量(含有比)により、臨界防止被覆材の硬化開始時間を調整することができる。
【0021】
セメントは、臨界防止被覆材の耐熱性、及び耐照射性を向上させる。セメントとしては、例えば、普通ポルトランドセメント、高炉セメント、アルミナセメント等の一般に市販されているセメントを用いることができる。また、セメントの粒子径が5μm程度の超微粒子セメントも使用することができる。
【0022】
セメントの含有量は、熱中性子吸収材の含有量を100重量部としたとき、40〜80重量部の範囲が好ましい。この範囲内であることにより、臨界防止被覆材(臨界防止被覆層)の溶融炉心に対する付着力、及び熱中性子の吸収効果が一層高い。
【0023】
セメント急硬材は、セメントを短時間で硬化させる作用を奏する。セメント急硬材としては、例えば、カルシウムアルミネート系、アルミン酸ナトリウム系等を用いることができる。セメント急硬材の種類や含有量、セメントの種類等により、臨界防止被覆材の硬化開始時間を調整することができる。
【0024】
セメント急硬材の含有量は、熱中性子吸収材の含有量を100重量部としたとき、3〜50重量部の範囲が好ましい。この範囲内であることにより、臨界防止被覆材(臨界防止被覆層)の溶融炉心に対する付着力、及び熱中性子の吸収効果が一層高い。
【0025】
臨界防止被覆材の剤型は特に限定されず、例えば、液状、粉末状、固形とすることができる。液状の場合は、高粘度であってもよいし、低粘度であってもよい。また、臨界防止被覆材は一剤式(全成分が当初から混合されているもの)であってもよいし、二剤式(一部の成分が第1剤に含まれ、残りの成分が第2剤に含まれるもの)であってもよい。ニ剤式の場合は、使用前に第1剤と第2剤とを混合することができる。
【0026】
臨界防止被覆層は、臨界防止被覆材から成る層である。臨界防止被覆層は溶融炉心の表面の一部又は全部を覆うことができる。臨界防止被覆層は、溶融炉心の表面に直接形成されていてもよいし、他の層を介して形成されていてもよい。
【0027】
臨界防止被覆層を形成する方法(臨界防止被覆材を用いて被覆を行う方法)は特に限定されず、例えば、通常の吹付けモルタル等の施工で使用する設備を用いて、液状の臨界防止被覆材を噴霧または堆積し、臨界防止被覆層を形成することができる。
【0028】
臨界防止被覆層は、例えば、臨界防止被覆材の全ての成分を混合した後、その臨界防止被覆材を吹付けノズルによって吹付けて形成することができる。また、臨界防止被覆材の一部の成分と、他の成分とを別々に圧送し、ラインミキシングにて混合してから吹付けてもよい。
【0029】
アルカリ金属ケイ酸塩を含む臨界防止被覆材を用いる場合は、臨界防止被覆層の形成後、湿度80%以上の環境下で養生することが好ましい。この場合、臨界防止被覆材の硬化を促進させることができる。これは、ケイフッ化ナトリウム、第一リン酸アルミニウム、及びポリリン酸アルミニウムを湿潤状態にすることにより、それらの溶解度を高め、アルカリ金属ケイ酸塩との反応を促進させるためである。
【0030】
臨界防止被覆材は、必要に応じてその他の成分(例えばケイ砂やセラミックス等の骨材等)を含有してもよい。また、セメントを含む臨界防止被覆材については、セルロース系
水溶性高分子を成分とする水中不分離混和剤を含有することができる。この場合、水中での臨界防止被覆材の施工も可能となる。
<実施例1>
1.臨界防止被覆材の製造
表1に示すとおり、各成分をモルタルミキサーで混合することにより、S1〜S12の臨界防止被覆材を製造した。臨界防止被覆材は高粘性液状の剤型を有する。
【0032】
表1におけるA1〜A5は表2に示すものであり、B1〜B3は表3に示すものである。表2に示す比重は20℃における値である。A1〜A5はいずれも液状の剤型を有する。なお、S5は、アルカリ金属ケイ酸塩として、A2を0.1Kg、A5を0.9Kg配合したものである。
【0035】
ただし、S11については、表1記載の成分のうち、硫酸(5質量%の硫酸)以外のも
のと、イオン交換水0.2Kgとをモルタルミキサーで混合した後、5質量%硫酸0.2Kgを投入する方法で臨界防止被覆材を製造した。
【0036】
2.臨界防止被覆層の形成
(1)鉄基材の場合
鉄から成る基材(以下、鉄基材とする)の表面を♯320の工業用パッドで目荒した。次に、S1〜S12の臨界防止被覆材を鉄基材の表面にコテを用いて塗布し、臨界防止被覆層を形成した。塗布量は2000g/m
2とした。その後、20℃にて養生した。
【0037】
ただし、S12の臨界防止被覆材の場合は、塗布後、炭酸ガスを臨界防止被覆層に接触させ、その表面を硬化させた。
上記の施工により、
図1に示すように、鉄基材1の表面に臨界防止被覆材から成る臨界防止被覆層3が形成された。なお、鉄基材1は溶融炉心を模した部材である。
(2)ステンレス基材の場合
ステンレス(SUS304)から成る基材(以下、ステンレス基材とする)の表面を♯24ブラストにて粗面化した。次に、S2の臨界防止被覆材をステンレス基材の表面にリシンガンを用いて吹き付け、臨界防止被覆層を形成した。吹付け量は2000g/m
2と
した。その後、20℃にて養生した。なお、ステンレス基材は溶融炉心を模した部材である。
(3)アルミナ基材の場合
アルミナ系耐火物から成る基材(以下、アルミナ基材とする)の表面に、S2の臨界防止被覆材を、リシンガンを用いて吹き付け、臨界防止被覆層を形成した。吹付け量は2000g/m
2とした。その後、20℃にて養生した。なお、アルミナ基材は溶融炉心を模
した部材である。
【0038】
3.臨界防止被覆材及び臨界防止被覆層の評価
(1)硬化開始時間の評価
各成分を混合してS1〜S12の臨界防止被覆材を製造してから、流動性がなくなるまでの時間(硬化開始時間)を測定した。その結果を上記表1に示す。
(2)付着力の評価
臨界防止被覆層の形成後、20℃にて24時間養生した時点で臨界防止被覆層を目視観察した。そして、以下の基準で基材に対する臨界防止被覆層の付着力を評価した。
【0039】
○:剥離、ひび割れなし
△:小さな剥離、ひび割れあり
×:大きな剥離、ひび割れあり
なお、S2については、鉄基材、ステンレス基材、及びアルミナ基材のそれぞれについて臨界防止被覆層を形成し、付着力を評価した。その他の臨界防止被覆材については、鉄基材について臨界防止被覆層を形成し、付着力を評価した。評価結果を上記表1に示す。
【0040】
S1〜S10の臨界防止被覆材を用いた場合は付着力が高かった。特に、S2の臨界防止被覆材を用いた場合は、鉄基材、ステンレス基材、及びアルミナ基材のそれぞれにおいて付着力が高かった。一方、S11〜S12の臨界防止被覆材を用いた場合は付着力が低かった。
(3)耐熱水性の評価
直径50mm、高さ100mmの型枠にS2、S4、S7、S8の臨界防止被覆材を打設し、その後20℃にて7日間養生したものを試験体とした。この試験体の重量測定を行った後、沸騰した蒸留水に試験体を5時間浸漬した。その後、再び試験体の重量測定を行い、浸漬前の重量と浸漬後の重量とを用い、以下の式(2)より耐熱水比を算出した。
【0041】
式(2):耐熱水比(%) = ((浸漬後重量)/ (浸漬前重量))×100
そして、耐熱水比の値を以下の基準に当てはめて、臨界防止被覆材の耐熱水性を評価した。その評価結果を表4に示す。
【0042】
○:96〜105%
△:90〜95%
×:89%以下
【0044】
S2、S4、S7、S8の臨界防止被覆材から成る試験体はいずれも優れた耐熱水性を有していた。
<実施例2>
1.臨界防止被覆材の製造
表5に示すとおり、各成分をモルタルミキサーで混合することにより、S13〜S16の臨界防止被覆材を製造した。これらの臨界防止被覆材は高粘性液状の剤型を有する。
【0046】
なお、表5におけるC1は、カルシウムアルミネート系のセメント急硬材(商品名:デンカES)であって、C12A7組成の非晶質ブレーン値5,900cm
2/g品である。また、C2は、アルミン酸ナトリウム系のセメント急硬材であって、アルミン酸ナトリウムと炭酸ナトリウムとの混合品である。
【0047】
2.臨界防止被覆層の形成
(1)鉄基材の場合
鉄基材の表面を♯320の工業用パッドで目荒した。次に、S13〜S16の臨界防止被覆材を鉄基材の表面にコテを用いて塗布し、臨界防止被覆層を形成した。塗布量は2000g/m
2とした。その後、20℃にて養生した。
(2)ステンレス基材の場合
ステンレス基材の表面を♯24ブラストにて粗面化した。次に、S13の臨界防止被覆材をステンレス基材の表面にリシンガンを用いて吹き付け、臨界防止被覆層を形成した。吹付け量は2000g/m
2とした。その後、20℃にて養生した。
(3)アルミナ基材の場合
S13の臨界防止被覆材をアルミナ基材の表面、リシンガンを用いて吹き付け、臨界防止被覆層を形成した。吹付け量は2000g/m
2とした。その後、20℃にて養生した
。
【0048】
3.臨界防止被覆材及び臨界防止被覆層の評価
前記実施例1と同様にして、硬化開始時間、付着力、及び耐熱水性を評価した。硬化開始時間、及び付着力の評価結果を上記表5に示す。
【0049】
なお、付着力の評価において、S13については、鉄基材、ステンレス基材、及びアルミナ基材のそれぞれについて臨界防止被覆層を形成し、付着力を評価した。その他の臨界防止被覆材については、鉄基材について臨界防止被覆層を形成し、付着力を評価した。また、耐熱水性の評価はS13の臨界防止被覆材について行った。
【0050】
表5に示すように、S13〜S15の臨界防止被覆材の硬化開始時間は適度な長さであった。一方、S16の臨界防止被覆材の硬化開始時間は非常に長かった。S13〜S16の臨界防止被覆材を用いた場合、付着力は高かった。また、S13の臨界防止被覆材から成る試験体は優れた耐熱水性を有していた。
【0051】
尚、本発明は前記実施形態になんら限定されるものではなく、本発明を逸脱しない範囲において種々の態様で実施しうることはいうまでもない。
例えば、熱中性子吸収材として、ホウ素化合物粒子を用いてもよい。この場合でも、略同様の効果を奏することができる。