(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6867568
(24)【登録日】2021年4月13日
(45)【発行日】2021年4月28日
(54)【発明の名称】ナノスケール光陰極電子源
(51)【国際特許分類】
H01J 37/073 20060101AFI20210419BHJP
H01S 3/00 20060101ALI20210419BHJP
H01J 1/34 20060101ALI20210419BHJP
H01J 9/12 20060101ALI20210419BHJP
【FI】
H01J37/073
H01S3/00 A
H01J1/34
H01J9/12 A
【請求項の数】8
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2016-217035(P2016-217035)
(22)【出願日】2016年11月7日
(65)【公開番号】特開2018-77940(P2018-77940A)
(43)【公開日】2018年5月17日
【審査請求日】2019年11月6日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成28年05月08日〜13日 第7回国際粒子加速器会議(IPAC’16)の「講演番号WEPMY040」において公開 〔刊行物等〕平成28年06月06日http://www.ipac16.org/author‐information/proceedings.html http://accelconf.web.cern.ch/AccelConf/ipac2016/ http://accelconf.web.cern.ch/AccelConf/ipac2016/papers/wepmy040.pdf を通じて発表
(73)【特許権者】
【識別番号】304021417
【氏名又は名称】国立大学法人東京工業大学
(73)【特許権者】
【識別番号】514008402
【氏名又は名称】テラベース株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504151365
【氏名又は名称】大学共同利用機関法人 高エネルギー加速器研究機構
(74)【代理人】
【識別番号】100124257
【弁理士】
【氏名又は名称】生井 和平
(72)【発明者】
【氏名】澁谷 達則
(72)【発明者】
【氏名】林崎 規託
(72)【発明者】
【氏名】吉田 光宏
【審査官】
中尾 太郎
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭56−138848(JP,A)
【文献】
特開平03−176953(JP,A)
【文献】
特開平05−068875(JP,A)
【文献】
特開平07−050129(JP,A)
【文献】
特表平11−509360(JP,A)
【文献】
特開2002−008575(JP,A)
【文献】
特開2002−289126(JP,A)
【文献】
特表2002−500817(JP,A)
【文献】
特表2003−506823(JP,A)
【文献】
特表2009−500275(JP,A)
【文献】
特開2013−168296(JP,A)
【文献】
米国特許第03588570(US,A)
【文献】
米国特許出願公開第2014/0265828(US,A1)
【文献】
欧州特許出願公開第00416175(EP,A1)
【文献】
澁谷達則, 吉田光宏, 林崎規託,生物電子顕微鏡のためのナノ構造光陰極型超コヒーレント電子源の開発,Proceedings of the 12th Annual Meeting of Particle Accelerator Society of Japan,日本,日本加速器学会,2015年 8月,August 5-7,2015,pp. 1036-1039
【文献】
W.A.Schroeder et. al.,High Brightness Nano-patterned Photocathode Electron Sources for UEM,Microscopy and Microanalysis,UK,CAMBRIDGE university press,2010年,Vol.16, Supplement S2,pp. 492-493
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01J 37/073
H01J 1/34
H01J 9/12
H01S 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
高コヒーレントな電子ビームを生成可能なナノスケール光陰極電子源であって、該ナノスケール光陰極電子源は、
レーザ光を照射可能なレーザ光源と、
前記レーザ光源からのレーザ光に対して透過性を有する基板と、
前記レーザ光源からのレーザ光に対して透過性を有する導電性材料からなり、前記基板のレーザ光が照射される側の面と対向する面上に形成され所定の電圧が印加される透明電極層と、
前記透明電極層に形成され光電変換材料からなるナノスケールの光陰極部と、
前記レーザ光源からのレーザ光の影響を抑制するために、光陰極部へレーザ光を照射するときと光陰極部を避けて基板と透明電極層を透過するレーザ光を照射するときとの差分を取るノイズ除去部と、
を具備することを特徴とするナノスケール光陰極電子源。
【請求項2】
請求項1に記載のナノスケール光陰極電子源において、前記光陰極部は、透明電極層のレーザ光が照射される側の面と対向する面内に面一となるように埋め込まれることを特徴とするナノスケール光陰極電子源。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のナノスケール光陰極電子源において、前記光陰極部は、直径がナノスケールのドット形状からなることを特徴とするナノスケール光陰極電子源。
【請求項4】
請求項3に記載のナノスケール光陰極電子源において、前記レーザ光源は、光陰極部のドット形状の直径に極力近い照射径を有するように焦点が合わせられるように構成されることを特徴とするナノスケール光陰極電子源。
【請求項5】
請求項1又は請求項2に記載のナノスケール光陰極電子源において、前記光陰極部は、線幅がナノスケールの微細パターンからなることを特徴とするナノスケール光陰極電子源。
【請求項6】
請求項5に記載のナノスケール光陰極電子源において、前記レーザ光源は、光陰極部の微細パターン全体を照射可能な照射エリアを有するように構成されることを特徴とするナノスケール光陰極電子源。
【請求項7】
請求項1乃至請求項6の何れかに記載のナノスケール光陰極電子源において、前記光陰極部は、Au,Ag,Cu,GaAs,CsTe,CsKSb,NEA−GaAsの何れかであることを特徴とするナノスケール光陰極電子源。
【請求項8】
請求項1乃至請求項7の何れかに記載のナノスケール光陰極電子源において、前記透明電極層は、ITO,ZnO,IGZOの何れかであることを特徴とするナノスケール光陰極電子源。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は光陰極電子源に関し、特に、高コヒーレントな電子ビームを生成可能なナノスケール光陰極電子源に関する。
【背景技術】
【0002】
直流型光陰極電子源は、光電効果を用いて陰極から電子を取り出す方式であり、高周波空洞も不要で構造が簡単である。このような光陰極電子源は、加速器や電子顕微鏡等の電子ビームを生成するために用いられるものである。光陰極電子源としては、電子の取り出し方により、レーザトリガ電界電子放出法、背面照射型光電子放出法等が存在する。レーザトリガ電界電子放出法は、尖った針の先端にレーザを照射して電子を放出させるものである。また、背面照射型光電子放出法は、ガラス上に形成した金属薄膜に対して背面方向からレーザを照射して電子を放出させるものである(例えば特許文献1)。
【0003】
また、例えば特許文献2には、背面照射型光電子放出法のガラス基板と光電変換物質層との間に透明電極層が設けられた光陰極が開示されている。さらに、例えば特許文献3に開示の装置では、量子効率を高めるためにセシウムが被覆された光電子放射材料層とガラス基板との間に透明電極層が設けられている。そして、不要なエリアに設けられたセシウムからの電子ビームの放出を防ぐために、金属コーティング層が光電子放射材料層が設けられる中央領域以外の部分に設けられている。
【0004】
最先端の電子顕微鏡技術開発では、原子分解能レベルでの単独分子をイメージングすることが求められてきている。特に、新薬デザインや低線量放射線影響評価、単独たんぱく質構造解析等の進展が期待されている。そして、原子分解能レベルでのイメージングを可能とする有力な方法として、keV領域以下の低速コヒーレント電子を用いた電子顕微鏡の研究開発が進められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−143648号公報
【特許文献2】特開平11−329215号公報
【特許文献3】特開平3−176953号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
これらの従来技術は、何れも放出される電子ビームの径が大きいものであった。具体的には、レーザトリガ電界電子放出法では、尖った針の先端が化学エッチングにより形成されるため、エミッタ形状が半球体形状なってしまう。これは、電子ビームが放射状に広がることを招くため、電磁界光学的なレンズ等を用いる必要があった。このため、レンズの球面収差により電子ビームのコヒーレンス性が悪化し、低電圧コヒーレント電子顕微鏡に必要な集束性の高い電子ビームを生成することは困難であった。また、背面照射型光電子放出法や特許文献2の装置では、背面方向から照射するレーザの径を小さくできるため、一般的な前面方向照射に比べて電子ビームの径を小さくすることが可能である。しかしながら、回折限界のためにレーザ光の焦点直径を波長以下にすることはできない。例えば、これまで紫外線から可視光領域では、レーザ光の焦点直径を1μm程度とすることが限界であった。
【0007】
さらに、特許文献3の装置の場合、金属コーティング層により光電子放射材料層の周りを遮蔽する必要がある。このため、光電子放射材料層を小さくして電子ビームの径を小さくしようとした場合には、中央領域がレーザ光の波長以下の径になると、中央領域をレーザ光が通過できなくなり電子ビームが生成されなくなってしまう。したがって、この例でも、電子ビーム径をナノスケールまで小さくすることはできなかった。
【0008】
本発明は、斯かる実情に鑑み、ビーム集束性の高い高コヒーレントな電子ビームを生成可能なナノスケール光陰極電子源を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した本発明の目的を達成するために、本発明によるナノスケール光陰極電子源は、レーザ光を照射可能なレーザ光源と、レーザ光源からのレーザ光に対して透過性を有する基板と、レーザ光源からのレーザ光に対して透過性を有する導電性材料からなり、基板のレーザ光が照射される側の面と対向する面上に形成され所定の電圧が印加される透明電極層と、透明電極層に形成され光電変換材料からなるナノスケールの光陰極部と、を具備するものである。
【0010】
ここで、光陰極部は、透明電極層のレーザ光が照射される側の面と対向する面内に面一となるように埋め込まれるものであれば良い。
【0011】
また、光陰極部は、直径がナノスケールのドット形状からなるものであれば良い。
【0012】
また、レーザ光源は、光陰極部のドット形状の直径に極力近い照射径を有するように焦点が合わせられるように構成されれば良い。
【0013】
また、光陰極部は、線幅がナノスケールの微細パターンからなるものであっても良い。
【0014】
この場合、レーザ光源は、光陰極部の微細パターン全体を照射可能な照射エリアを有するように構成されれば良い。
【0015】
さらに、レーザ光源からのレーザ光の影響を抑制するために、光陰極部へレーザ光を照射するときと光陰極部を避けて基板と透明電極層を透過するレーザ光を照射するときとの差分を取るノイズ除去部を具備するものであっても良い。
【0016】
また、光陰極部は、Au,Ag,Cu,GaAs,CsTe,CsKSb,NEA−GaAsの何れかであれば良い。
【0017】
また、透明電極層は、ITO,ZnO,IGZOの何れかであれば良い。
【発明の効果】
【0018】
本発明のナノスケール光陰極電子源には、ビーム集束性の高い高コヒーレントな電子ビームを生成可能であるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】
図1は、本発明のナノスケール光陰極電子源を説明するための概略図である。
【
図2】
図2は、本発明のナノスケール光陰極電子源の他の例を説明するための概略側断面図である。
【
図3】
図3は、本発明のナノスケール光陰極電子源のさらに他の例を説明するための概略側断面図である。
【
図4】
図4は、本発明のナノスケール光陰極電子源の光陰極部の他の例を説明するための光陰極部周辺の概略平面図である。
【
図5】
図5は、本発明のナノスケール光陰極電子源の製造方法を説明するための概略側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を実施するための形態を図示例と共に説明する。
図1は、本発明のナノスケール光陰極電子源を説明するための概略図であり、
図1(a)が側断面図であり、
図1(b)が光陰極部周辺の平面図である。図示の通り、高コヒーレントな電子ビームを生成可能な本発明のナノスケール光陰極電子源は、レーザ光源10と、基板20と、透明電極層30と、光陰極部40とから主に構成されている。即ち、光陰極は、基板20と、透明電極層30と、光陰極部40とから構成されているものである。
【0021】
レーザ光源10は、レーザ光を照射可能なものである。レーザ光源10は、後述の光陰極部40にレーザ光を照射することで光陰極部40から光電子が放出されるようなものであれば良い。レーザ光源10は、具体的には例えば紫外線レーザ光や緑色レーザ光を出力可能な光源であれば良い。また、レーザ光源10は、CWレーザ(連続波レーザ)又はパルスレーザ(モード同期法、Qスイッチ法等)であれば良い。さらに、レーザ光源10は、レーザダイオード等により構成しても良い。
【0022】
基板20は、レーザ光源10からのレーザ光に対して透過性を有するものである。即ち、例えばレーザ光源10のレーザ光が紫外線レーザ光であれば、紫外線に対して透過率の高いものであれば良く、レーザ光が緑色レーザ光であれば、緑色に対して透過率の高いものであれば良い。基板20は、例えばガラス基板であれば良い。ガラス基板は、例えばサファイアガラスや石英ガラス等であれば良い。
【0023】
透明電極層30は、レーザ光源10からのレーザ光に対して透過性を有する導電性材料からなるものである。即ち、例えばレーザ光源10のレーザ光が紫外線レーザ光であれば、紫外線に対して透過率の高いものであれば良く、レーザ光が緑色レーザ光であれば、緑色に対して透過率の高いものであれば良い。また、透明電極層30は、基板20のレーザ光が照射される側の面と対向する面上形成されるものである。即ち、レーザ光が照射される側の面の裏面上に透明電極層30が形成される。透明電極層30は、具体的に一例を挙げると125nmの膜厚で基板20上に形成されれば良い。また、透明電極層30は、具体的には例えばITOやZnO,IGZO等であれば良い。そして、透明電極層30には、所定の電圧が印加される。
【0024】
光陰極部40は、光電変換材料からなるナノスケールのものである。光陰極部40は、透明電極層30に形成されている。ここで、ナノスケールとは、電子ビーム放射面となる部分がナノサイズとなるものをいう。例えば、
図1(b)に示されるように、光陰極部40がナノスケールのドット形状からなるものであれば良い。具体的には、光陰極部40は、直径が30〜500nmの円筒形であれば良い。また、厚みは例えば5〜40nmであれば良い。このように、本発明のナノスケール光陰極電子源で用いられる光陰極部40の直径は、レーザ波長以下のナノサイズである。なお、光陰極部40の形状は、必ずしも図示例のような真円の円筒形には限定されず、楕円形状や方形状等、任意の形状であっても良い。光陰極部40は、例えばAu,Ag,Cu,GaAs,CsTe,CsKSb,NEA−GaAs等からなれば良い。そして、図示例のように、光陰極部40は、透明電極層30のレーザ光が照射される側の面と対向する面内に面一となるように埋め込まれるように設けられれば良い。即ち、透明電極層30に光陰極部40が埋め込まれる溝(穴)が設けられており、光陰極部40の表面が露出するように溝内に形成されれば良い。これにより、光陰極部40の側部も透明電極層30で覆われることから、光陰極部40の側部からの電子ビームの放出が抑えられ、より高コヒーレントな電子ビームを生成可能となる。
【0025】
このように構成されたナノスケール光陰極電子源では、レーザ光源10からのレーザ光の照射径よりも小さい径の光陰極部40を構成することが可能となる。レーザ光源10からのレーザ光は、基板20及び透明電極層30を透過して光陰極部40を励起し、電子ビームを放出させる。したがって、光陰極部40と略同サイズの高コヒーレントな電子ビームが生成可能となる。レーザ光源10からのレーザ光の照射強度を変調させたり、透明電極層30に印加する電圧を調整することにより、電子ビーム電流を変調可能である。
【0026】
ここで、レーザ光源10は、光陰極部40のドット形状の直径に極力近い照射径を有するように焦点が合わせられれば良い。但し、レーザ光源10のレーザ光の径は波長に依存して小さくするのに限界があるため、ナノスケールの光陰極部40のサイズまで小さくはできない。このため、生成される電子ビームにレーザ光源10からのレーザ光が含まれる状態で放出されることになる。これについては、電子ビームの用途によって、レーザ光源10からのレーザ光の影響を抑制する必要がある場合には、レーザ光の成分を除去可能である。即ち、光陰極部40へレーザ光を照射するときと光陰極部40を避けて基板20と透明電極層30を透過するレーザ光を照射するときとの差分を取るノイズ除去部を設けることで、レーザ光の成分を差し引くことが可能である。
【0027】
上述の図示例では、光陰極部40が透明電極層30に面一となるように埋め込まれる例を示した。しかしながら、本発明はこれに限定されない。
図2は、本発明のナノスケール光陰極電子源の他の例を説明するための概略側断面図である。図中、
図1と同一の符号を付した部分は同一物を表している。なお、光陰極部周辺のみを図示した。図示の通り、この例では、光陰極部40は、透明電極層30の表面上に形成されている。このような構成であっても、透明電極層30から十分に電子が供給されると共に、従来技術と比べても十分小さい径の電子ビームが生成可能となる。
【0028】
さらに、光陰極部40は、基板20まで達していても良い。
図3は、本発明のナノスケール光陰極電子源のさらに他の例を説明するための概略側断面図である。図中、
図1と同一の符号を付した部分は同一物を表している。なお、光陰極部周辺のみを図示した。図示の通り、この例では、光陰極部40は、透明電極層30を貫通して基板20の表面上まで到達するように形成されている。このような構成であっても、透明電極層30から十分に電子が供給されると共に、従来技術と比べても十分小さい径の電子ビームが生成可能となる。
【0029】
ここで、本発明のナノスケール光陰極電子源は、その光陰極部が
図1(b)に示されるようにドット形状に限定されるものではない。
図4は、本発明のナノスケール光陰極電子源の光陰極部の他の例を説明するための光陰極部周辺の概略平面図である。図中、
図1と同一の符号を付した部分は同一物を表している。図示の通り、この例では、光陰極部41は、ドット形状ではなく、微細パターンからなるものを示した。この微細パターンの線幅がナノスケールとなっている。なお、図示例のパターンは、あくまでも説明用のパターンであり、このパターンに限定されるものではない。このような微細パターンの光陰極部41を設けた場合、レーザ光源10は、微細パターン全体を照射可能な照射エリアを有するように構成されれば良い。
【0030】
このように構成された本発明のナノスケール光陰極電子源は、ナノスケールの微細パターンからなる光陰極部とすることにより、例えば所定のターゲット基板に対して微細パターンを転写することが可能となる。これにより、ナノスケールの微細パターンを簡単にターゲット基板上に形成可能となる。
【0031】
次に、本発明のナノスケール光陰極電子源の光陰極部の製造方法の一例について説明する。なお、以下の製造方法はあくまでも一例であり、この製造方法に限定されるものではなく、同様の構造が製造可能であれば、従来の又は今後開発されるべきあらゆる製造方法が適用可能である。
【0032】
図5は、本発明のナノスケール光陰極電子源の製造方法を説明するための概略側断面図であり、
図5(a)〜
図5(g)は各過程における図である。図中、
図1と同一の符号を付した部分は同一物を表している。まず、
図5(a)に示されるように、基板20を用意し、研磨、洗浄する。基板20は、例えばSiO
2である。そして、
図5(b)に示されるように、基板20上に透明電極層30をスパッタ法により成膜する。透明電極層30は、例えばITOである。次に、
図5(c)に示されるように、透明電極層30上をアクリル樹脂層31でコーティングし、加熱処理を施す。アクリル樹脂層31は、例えばPMMAである。また、コーティング処理は、例えば基板20上にPMMAを滴下し、スピンコーターを用いて5000rpmで30秒行う。加熱処理は、例えば180度で5分行う。そして、
図5(d)に示されるように、アクリル樹脂層31上にアルミニウム層32をスパッタ法により成膜する。次に、
図5(e)に示されるように、集束イオンビームにより穴開けを行う。具体的には、ガリウムイオンによるイオンビームを照射することで、アルミニウム層32及びアクリル樹脂層31を貫通し、透明電極層30まで到達する穴を開ける。図示例では、ドット形状の穴が開けられるものを示した。これは、微細パターンの溝を加工するようにしても良い。集束イオンビームによりナノスケールの微細な穴開け加工が可能となる。また、穴の深さは、後に形成される光陰極部40の厚みとなるように、透明電極層30が例えば5〜40nm掘り下げられるように調整されれば良い。そして、
図5(f)に示されるように、アルミニウム層32上に、金膜33をスパッタ法により成膜する。これにより、
図5(e)の過程で形成された穴内にも金が満たされる。最後に、
図5(f)に示されるように、アクリル樹脂層31、アルミニウム層32、金膜33がリフトオフにより剥離され、透明電極層30に形成された穴に金からなる光陰極部40が形成されたナノスケール光陰極電子源が得られる。
【0033】
なお、本発明のナノスケール光陰極電子源は、上述の図示例にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0034】
10 レーザ光源
20 基板
30 透明電極層
31 アクリル樹脂層
32 アルミニウム層
33 金膜
40,41 光陰極部