特許第6867569号(P6867569)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6867569-スラスト軸受 図000002
  • 特許6867569-スラスト軸受 図000003
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6867569
(24)【登録日】2021年4月13日
(45)【発行日】2021年4月28日
(54)【発明の名称】スラスト軸受
(51)【国際特許分類】
   F16C 19/12 20060101AFI20210419BHJP
【FI】
   F16C19/12
【請求項の数】1
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2017-4827(P2017-4827)
(22)【出願日】2017年1月16日
(65)【公開番号】特開2018-115667(P2018-115667A)
(43)【公開日】2018年7月26日
【審査請求日】2020年1月14日
【権利譲渡・実施許諾】特許権者において、権利譲渡・実施許諾の用意がある。
(73)【特許権者】
【識別番号】000189589
【氏名又は名称】上野 康男
(72)【発明者】
【氏名】上野 康男
【審査官】 中島 亮
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭53−145222(JP,A)
【文献】 特開平02−292516(JP,A)
【文献】 特開2004−044654(JP,A)
【文献】 実開昭55−112119(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16C 19/00−19/56
F16C 33/30−33/66
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転中心線上で回転する如く軸受で回転自在に支持された回転軸の1端に該回転軸の回転中心と同芯に球面状の凹球面部が形成され、これに対向して設けられた凹球面受け部には上記球面状の凹球面部と同等の球面状の凹球面受け部をケーシング端面部に固定して設けられており、凹球面受け部及び凹球面部の凹球面より小さな曲率半径の球面を有する転動球体は、凹球面部と凹球面受け部の間に挟まれ、各々1点のみでの接触状態で保持されている。また、該凹球面受け部の球面の中心は回転軸の回転中心に対して偏芯した状態とし、その偏心量は該回転軸を支えるための転がり軸受の転動球体の公転半径に対して充分小さくなしている如く構成したことを特徴とするスラスト軸受。
【請求項2】
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【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に広く使用される転がり軸受に関するものであるが特に大きなスラスト荷重を支えるためのものである。
【背景技術】
【0002】
現在一般に使用されているスラスト軸受としては通常のベアリングリストの中からアンギュラーコンタクトタイプかスラストベアリングを選択するか軸端が円錐状に形成されたピボットベアリングを選択する場合が多い。しかし上記の軸受は一般に転導球体の公転半径を基準として評価した場合、いわゆる摩擦係数は0.0010から0.0030程度であり一般にスラスト軸受の方が大きい。しかし、垂直軸型の風力発電装置などでは低風速の場合、ラジアル荷重は小さいが
スラスト荷重は回転軸と回転翼が一体化して重い荷重が軸受に加わりその状態で起動可能であることが求められ、このような用途に使用可能な軸受は既存のものの中からは見つからない。
【0003】
対策として前記のスラスト荷重の一部を磁気的な反発力によって浮かび上がらせる方向の力を補助的に加えて摩擦力の低減を図ろうとするものがあるが、実用的な問題から充分な効果を得ることが出来ない状態である。コストの増加や磁気フィールドの中に外部の磁性体が侵入することで不具合が生じる問題などの解決技術が不充分であるために実用化されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
特許資料 特開2009−299637
【0005】
風力発電装置において起動性能は非常に重要な要素であり、これを高めるため様々な技術が検討されているが結果的にコストが嵩み実用的なコストパフォーマンスを低下させ、商品価値が低下してしまう。本発明のスラスト軸受は磁性体などの異なる分野の技術を用いることがなく長年培われた信頼性の高い転がり軸受の技術を高度に利用したものであり、その信頼性は高く、風車本体への影響がなく、起動トルク自体が向上するために全体的な製品価値を高め、コストダウンにも繋がるものである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
機器の回転軸を支持するべき軸受は一般に転動球体の公転半径を基準として評価した場合、いわゆる摩擦係数は0.0010から0.0030程度であり一般にスラスト軸受の方が大きい。しかし、低風速の場合の垂直軸型の風力発電装置などではラジアル荷重は小さいがスラスト荷重は回転軸と回転翼が一体化して重い荷重が軸受に加わりその状態で起動可能であることが求められ、このような用途に使用可能な軸受は既存のものの中からは見つからない。本発明が解決しようとする課題は、上記の目的を達成するために時計用のテンプ構造に近い軸受の構成によって転動球体の公転半径を可能な限り小さくして摩擦係数を軽減させるためのものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明による上記課題を解決手段は、回転軸の下端部に凹球面部を形成し、この凹球面部と対向する位置に該凹球面部と同等の凹球面を持つ凹球面受け部を対向して設け、上記両凹球面よりやや小さい曲率半径を持つ転動球体を挟んだ如く構成する。そして該凹球面受け部は回転軸の回転中心とは僅かに偏芯した状態で固定する。
このような状態で回転軸が回転すると凹球面部と転動球体及び凹球面受け部と転動球体のそれぞれが点接触状態で回転する。しかるに上記2点の接触位置は転動球体の中心に対して真反対の位置ではないので少しずつ移動していく。この移動量は極めて小さいが相対的な移動現象によって介在する潤滑油を接触点に連続して供給する効果を持つ。仮に従来の転がり軸受を用いて軸径が200mmの回転軸を支えるためには軸受の転動球体の公転半径は130mm程度となるがこの値が摩擦の力発生するポイントとなる。これに対して上記構造のスラスト軸受の転動球体の凹球面受け部との接触点の公転半径は僅か数ミリメートルである。従ってこの接触点の移動速度も極めて小さなものとなる。両者を比較すれば本発明のスラスト軸受の摩擦力発生がいかに小さいか判断できるであろう。更に時計のテンプ機構などに使用されているピボット軸受は、回転軸のセンターでの点接触構造で摩擦トルクを減少しようとするものである。耐久性を向上するために材料として宝石などの硬度の高い材料を使用しているが、結局は滑り軸受であり転がり接触ではないので使用条件は潤滑剤の粘性による一種の浮力に依存できる範囲のごく軽荷重状態に限られ結果的には本発明のスラスト軸受とは別の用途と考えられるものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明の効果は、回転軸の下端に設けた凹球面部とこれに対向してわずかに偏芯した位置に設けた凹球面受け部との間に両凹球面部の曲率半径よりやや小さな転動球体を設けることでそれぞれが転がり状態での点接触状態を保つ如く構成する。従って接触点の回転軸上の回転半径を極力小さくして回転軸の回転に伴う摩擦トルク損失を極力小さくするとともに、接触点が常に少しずつ移動して、それに伴って潤滑剤が接触面に供給されることで潤滑油切れとされる接触点の焼き付きを防止できる構造のスラスト軸受として長期間回転し続ける如くなすものである。結果的に従来の構造の軸受構造を使用するより大幅な摩擦トルク損失軽減効果を発揮しうるスラスト軸受を提供しうるものである。接触点の面積は凹曲面と凸曲面の接触なので通常の軸受における円弧溝と凸曲面の接触より設計の段階で広い範囲での最適値選択が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は本発明の1実施形態を示した側断面図である。
図2図2は本発明の他の実施形態を示した側団面図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0010】
図において構造的にはその機能を損なわない限り簡略化して表示しているものとする。本発明のスラスト軸受の構造は図1に於いて鉛直軸の周りに回転する回転軸1の下端には該回転軸1の回転中心と同芯に球面状の凹球面部2が形成され、これに対向して設けられた凹球面受け部には上記球面状の凹球面部2と同等の球面状の凹球面受け部3をケーシング端面部4に固定して設ける。該凹球面受け部3の球面の中心は回転軸1の回転中心に対してわずかに偏芯した状態としている。尚、凹球面受け部3を軸受端面部4に取り付ける方法についてはネジなので取り付け位置を調整可能にしても本発明の趣旨に反するものではない。5は上記転動球体であり、凹球面受け部3及び凹球面部2の凹球面より小さな曲率半径の球面を有し、凹球面部2と凹球面受け部3の間に挟まれた状態で保持されている。回転軸1のラジアル方向は該回転軸1に嵌合したラジアル軸受6によってケーシング筒部7とスライド可能に支持されている。回転軸1には通常図示しない垂直軸型の風車が取り付けられ、増速歯車などを介して発電機に接続しての発電その他に利用されるものである。通常の使用状態ではラジアル荷重は比較的小さく回転軸その他の重量がスラスト荷重となって矢印T方向に加わりこれを転動球体5が凹球面部2、凹球面受け部3の間に挟まれた状態で支えている。
【実施例2】
【0011】
図2は本発明の他の実施形態を示した側断面図である。図2に於いて回転軸1は両端が同じ形状及び構造をしている。この場合回転軸1は水平に配置されても良く、その場合回転軸1に付随する重量はあまり大きくないがスラスト荷重は両方向から繰り返し加わるような用途において有効である。例えばウェルズ型の水力タービンなどがその良い例である。
更にラジアル荷重がごく小さい場合にはラジアル軸受6を取り除いて回転軸1の両端の凹球面部2、凹球面受け部3、軸受端面部4、転動球体5のみによって構成することも可能である。
その場合、回転軸1振れ回り誤差が発生することとなるので高速回転部分には適さないが摩擦トルクを最小にすることが可能である。
[動作]
【0012】
上記実施形態に示すスラスト軸受の動作について説明する。垂直軸風車に応用された場合の回転軸1は通常鉛直に支持され該回転軸1に取り付けられた複数の回転翼が自然の風を受けて回転する。強風の時の風力に耐えるだけの剛性を有する構造はかなりの重量を持つものであるが弱い風の時にも軽く回転しなければならない。そのために回転軸1を支持する軸受の摩擦は極めて小さなものであることが望まれる。風の少ない時は風力によるラジアル荷重は極めて小さきので
回転軸1を支えるラジアル軸受6に加わる荷重は小さく、荷重にほぼ比例する摩擦力もわずかなものである。しかるに回転軸1に固定された回転翼その他の重量には変化がなくその重力による大きなスラスト荷重が凹球面部2、凹球面受け部3と転動球体5の接触部には大きな接触圧力が発生している。しかし、これらの接触点では相互の滑り運動はなく凹球面部2と転動球体5、凹球面受け部3と転動球体5とはお互いに転がり接触をしている状態なので相互の摩擦力は極めて少なく、接触点の回転軸1の回転中心からの距離も軸の外径に取り付けたラジアル軸受に比べると極めて小さいので回転軸1の回転による摩擦トルクは極めて小さい。凹球面受け部3の偏芯量が大きいと該凹球面受け部3と転動球体5との接触点及び凹球面部2と転動球体5との接触点の移動距離(移動範囲は円状になるのでその半径)は大きくなるので摩擦係数は多少増加するがその動きに伴って給油量が増加し、接触面の耐久性は向上する。逆に偏芯量が小さいと摩擦トルクは減少するが耐久性も減少する可能性もある。ただし、使用する潤滑油の稠度も上記の運動状態に関係するので使用状態に応じて上記関連数値をどの程度に設定するかは理論的又経験的に最適値を追求していくことが必要である。しかし、現状でも従来品との比較値で実績として摩擦係数が数分の1の状態まで軽減できることは実証されている。
【0013】
図1に示す実施例ではケーシングの端面部4がカップ状になっているので潤滑油の保持が容易であるが回転軸1を水平に近い状態とした場合は潤滑油の保持がやや難しくなるのでグリースの使用など対策を考慮する必要があるがこれらの技術は現状の軸受に採用されている技術で充分対処できるものである。
【0014】
図2に示す実施例ではラジアル荷重がごく小さい場合に於いてはラジアル軸受6を取り除いて回転軸1の両端の凹球面部2、凹球面受け部3、軸受端面部4、転動球体5のみによって構成することも可能である。
その場合、回転軸1振れ回り誤差が発生することとなるので高速回転部分には適さないが摩擦トルクを最小にすることが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0015】
以上の説明で明らかな如く本発明のスラスト軸受は簡単な構造できわめておおきな回転摩擦トルク低減効果を有するものであり、風力発電装置、波力発電などの自然エネルギー利用装置などに応用した場合その効果が特に大きく、また一般の機器への応用においても動力損失の軽減効果は大きく環境改善上の効果も極めて著しい。
【符号の説明】
【0016】
1 回転軸
2 凹球面部
3 凹球面受け部
4 ケーシング端面部
5 転動球体
6 ラジアル軸受
7 ケーシング筒部
図1
図2